JP3187231U - 複合基板 - Google Patents
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Abstract
【課題】加熱プロセス時に割れや剥離を生じない耐熱性に優れた複合基板を提供する。
【解決手段】複合基板10は、圧電基板12と、支持基板14とを備えている。圧電基板と支持基板とは、互いのオリエンテーションフラット12a,14aのなす角度θが2°〜60°である。また、互いの接合面に沿った方向のうち圧電基板のオリエンテーションフラット12aに沿った方向を第1方向、第1方向に垂直な方向を第2方向としたときに、互いの中心12b,14b間の第1方向の距離である第1距離D1,第2方向の距離である第2距離D2のどちらか一方が圧電基板の直径の0%超過1%以下であり、他方が0%以上1%以下である。圧電基板と支持基板とは、Arを含有するアモルファス層を介して接合されている。また支持基板は、シリコン製であり、方位(111)面で圧電基板に接合されている。
【選択図】図2
【解決手段】複合基板10は、圧電基板12と、支持基板14とを備えている。圧電基板と支持基板とは、互いのオリエンテーションフラット12a,14aのなす角度θが2°〜60°である。また、互いの接合面に沿った方向のうち圧電基板のオリエンテーションフラット12aに沿った方向を第1方向、第1方向に垂直な方向を第2方向としたときに、互いの中心12b,14b間の第1方向の距離である第1距離D1,第2方向の距離である第2距離D2のどちらか一方が圧電基板の直径の0%超過1%以下であり、他方が0%以上1%以下である。圧電基板と支持基板とは、Arを含有するアモルファス層を介して接合されている。また支持基板は、シリコン製であり、方位(111)面で圧電基板に接合されている。
【選択図】図2
Description
本考案は、複合基板に関する。
従来より、携帯電話等に使用されるフィルタ素子や発振子として機能させることができる弾性表面波デバイスや、圧電薄膜を用いたラム波素子や薄膜共振子(FBAR:Film Bulk Acoustic Resonator)などの弾性波デバイスが知られている。こうした弾性波デバイスとしては、弾性波を伝搬させる圧電基板とこの圧電基板よりも小さな線熱膨張係数(以下「熱膨張係数」という)を持つ支持基板とを接合した数インチの大きさの複合基板を作製し、その複合基板にフォトリソグラフィ技術を用いて多数の櫛歯電極を設けたあと、ダイシングにより切り出したものが知られている。このような複合基板を利用することにより、温度が変化したときの圧電基板の大きさの変化が支持基板によって抑制されるため、弾性波デバイスとしての周波数特性が安定化する。例えば、特許文献1には、圧電基板であるLT基板(LTはタンタル酸リチウムの略)と支持基板であるシリコン基板とをエポキシ接着剤からなる接着層によって貼り合わせた構造の弾性波デバイスが提案されている。また、特許文献2には、圧電基板と支持基板との接合面にイオンビームを照射して活性化させ、接合面で圧電基板と支持基板とを直接接合した構造の弾性波デバイスが提案されている。
しかしながら、上述した特許文献1,2の複合基板では耐熱性が不十分のため、ウェハー状態における加熱プロセス時に割れや剥離が発生するという問題があった。
本考案は、上述した課題に鑑みなされたものであり、耐熱性の優れた複合基板を提供することを主目的とする。
本考案の複合基板は、
オリエンテーションフラットを有し、線熱膨張係数及びヤング率の少なくとも一方に異方性を有する圧電基板と、
オリエンテーションフラットを有し、前記圧電基板に接合され、線熱膨張係数及びヤング率の少なくとも一方に異方性を有する支持基板と、
を備え、
前記圧電基板と前記支持基板とは、互いの接合面に沿った方向のうち前記圧電基板のオリエンテーションフラットに沿った方向を第1方向、該第1方向に垂直な方向を第2方向としたときに、互いの中心の前記第1方向の距離である第1距離D1と前記第2方向の距離である第2距離D2との一方が前記圧電基板の直径の0%超過1%以下,他方が前記圧電基板の直径の0%以上1%以下、となるように接合されている、
ものである。
オリエンテーションフラットを有し、線熱膨張係数及びヤング率の少なくとも一方に異方性を有する圧電基板と、
オリエンテーションフラットを有し、前記圧電基板に接合され、線熱膨張係数及びヤング率の少なくとも一方に異方性を有する支持基板と、
を備え、
前記圧電基板と前記支持基板とは、互いの接合面に沿った方向のうち前記圧電基板のオリエンテーションフラットに沿った方向を第1方向、該第1方向に垂直な方向を第2方向としたときに、互いの中心の前記第1方向の距離である第1距離D1と前記第2方向の距離である第2距離D2との一方が前記圧電基板の直径の0%超過1%以下,他方が前記圧電基板の直径の0%以上1%以下、となるように接合されている、
ものである。
本考案の複合基板によれば、圧電基板と支持基板との第1距離D1,第2距離D2を上記の範囲にすることにより、耐熱性が向上する。この理由は不明だが、実際に圧電基板と支持基板との第1距離D1,第2距離D2の少なくとも一方をずらして接合した複合基板では割れや剥離の発生数が少なかった。実験的手法による評価からこのようにして接合された複合基板は熱応力が小さくなっていると考えられる。熱応力が小さい範囲は第1距離D1と第2距離D2との一方が圧電基板の直径の0%超過1%以下,他方が圧電基板の直径の0%以上1%以下であった。
本考案の複合基板において、前記第1距離D1及び前記第2距離D2は、いずれも前記圧電基板の直径の0.3%以上1.0%以下とすることが好ましい。こうすれば、圧電基板と支持基板との外周の交点が少なくなるため、加熱時の熱応力をより小さくすることができる。
本発明の複合基板において、前記圧電基板と前記支持基板とは、互いのオリエンテーションフラットのなす角度θが2°〜60°となるように接合されていてもよい。これにより、複合基板の耐熱性をより向上させることができる。
本考案の複合基板において、前記圧電基板と前記支持基板とは、Arを含有するアモルファス層を介して接合されていてもよい。こうすることで、複合基板の加熱時にアモルファス層が緩衝材となりバッファー層の役割を果たすため、加熱時の熱応力を緩和することができる。これにより、複合基板の耐熱性をより向上させることができる。
本考案の複合基板において、前記支持基板は、シリコン製であり、方位(111)面で前記圧電基板に接合されていてもよい。こうすることで、加熱時の熱応力がXYZ軸方向に3等分されるため、各々の分力が小さくなる。また、(111)面であれば結晶構造は最密充填となるため、接合時の支持基板の接触面積が結晶構造の視点から最大となる。このため、接合強度が向上し支持基板の剥離が生じにくい。これらにより、複合基板の耐熱性をより向上させることができる。
次に、本考案の実施形態について、図面を用いて説明する。図1は、本考案の一実施形態である複合基板10の斜視図である。図2は、図1のA視図(図1の上面図)である。図3は、図1のB−B断面図(部分断面図)である。複合基板10は、圧電基板12と、支持基板14と、を備えている。また、複合基板10は、アモルファス層13を備えており、このアモルファス層13を介して圧電基板12と支持基板14とが接合されている。
圧電基板12は、オリエンテーションフラット(OF)12aを有する略円盤状の基板であり、熱膨張係数及びヤング率の少なくとも一方に異方性を有するものである。圧電基板12は、特に限定されないが、例えば、タンタル酸リチウム(LT)、ニオブ酸リチウム(LN)、ニオブ酸リチウム−タンタル酸リチウム固溶体単結晶、水晶、ホウ酸リチウム、酸化亜鉛、窒化アルミニウム、ランガサイト(LGS)又はランガテイト(LGT)であることが好ましく、このうち、LT又はLNであることがより好ましい。LTやLNは、弾性表面波の伝搬速度が速く、電気機械結合係数が大きいため、高周波数且つ広帯域周波数用の弾性表面波デバイスとして適しているからである。圧電基板12の大きさは、特に限定するものではないが、例えば、直径が50〜150mm、厚みが10〜50μmである。
支持基板14は、オリエンテーションフラット(OF)14aを有する略円盤状の基板であり、熱膨張係数及びヤング率の少なくとも一方に異方性を有するものである。支持基板14は、圧電基板12よりも熱膨張係数が小さいことが好ましい。また、圧電基板12と支持基板14との熱膨張係数差は10ppm/K以上であってもよい。この場合、両者の熱膨張係数差が大きいため加熱時に割れが発生しやすく、本考案を適用する意義が高いからである。この支持基板14は、特に限定されないが、例えば、シリコン、サファイヤ、砒化ガリウム、窒化ガリウム又は水晶であることが好ましく、このうち、シリコン又はサファイヤであることがより好ましい。シリコンやサファイヤは、半導体デバイス作製用として広く実用化されているからである。また、本実施形態のように支持基板14がアモルファス層13を介して圧電基板12に接合される場合には、支持基板14はシリコンであることが好ましい。支持基板14は、シリコン製であり、方位(111)面で圧電基板12に接合されていることがより好ましい。すなわち、支持基板14がシリコン製であり、圧電基板12側の面が方位(111)面であることがより好ましい。支持基板14の大きさは、特に限定するものではないが、例えば、直径が50〜150mm、厚みが100〜500μmである。なお、本実施形態では、圧電基板12と支持基板14の直径は同じであり、OF12aとOF14aも含めて、圧電基板12と支持基板14との形状は少なくとも厚み以外が同じとした。ただし、これに限らず例えば圧電基板12と支持基板14との直径が異なっていてもよい。
アモルファス層13は、Arを含有する層であり、圧電基板12と支持基板14との間に存在して両者を接着している層である。アモルファス層13は、厚みが4nm〜12nmであることが好ましい。こうすれば、例えば300℃以上の耐熱性を確保することができるなど、複合基板10の耐熱性をより向上させることができる。
このアモルファス層13は、図3に示すように1つの層からなるものとしてもよいし、2層や3層からなるものとしてもよい。なお、アモルファス層13が1つの層からなる場合において、アモルファス層13内部のArの含有率が例えば厚さ方向で滑らかに変化するなど、アモルファス層13内部のArの含有率は連続的に変化していてもよい。すなわち、アモルファス層13内でArの含有率は一定ではないが2層,3層など各層の境界を明確に定められなくともよい。同様に、アモルファス層13が2層以上からなる場合においても、各層の内部のArの含有率が例えば厚さ方向で滑らかに変化していてもよい。
図4は、アモルファス層13が3層からなる場合のアモルファス層13の拡大断面図である。図4では、アモルファス層13は、圧電基板12から支持基板14に向かって第1層13a、第2層13b及び第3層13cを有している。このとき、第1層13aは、第2層13b及び第3層13cに比べて圧電基板12を構成する元素を多く含有することが好ましい。また、第3層13cは、第1層13a及び第2層13bに比べて支持基板14を構成する元素を多く含有することが好ましい。第2層13bは、第1層13a及び第3層13cに比べてArを多く含有することが好ましい。アモルファス層13がこのように3層からなる場合には、例えばアモルファス層13が2層からなる場合に比べて、圧電基板12と支持基板14との接合強度を十分高くすることができる。また、アモルファス層13が3層からなる場合には、第3層13cは、第1層13a及び第2層13bに比べて厚みが厚いことが好ましい。この場合、第3層13cは、第1層13aの厚みと第2層13cの厚みとの和よりも厚くなっていてもよい。
アモルファス層13に含まれるArは3atm%〜10atm%であることが好ましい。なお、アモルファス層13が2層以上からなる場合も、アモルファス層13全体におけるAr含有量が3atm%〜10atm%であることが好ましい。
この複合基板10では、圧電基板12と支持基板14とが、図1,2に示すように相対的に回転し且つ互いの接合面に沿った方向(図2における紙面に沿った方向)にずれて接着されている。より具体的には、圧電基板12と支持基板14とは、互いのOF12a,OF14aのなす角度θが2°〜60°となるように相対的に回転した状態で接合されている(図2)。なお、図2では、圧電基板12に対して支持基板14が反時計回りに角度θだけ回転しているが、時計回りに角度θだけ回転してもよい。また、圧電基板12と支持基板14とは、第1距離D1と第2距離D2との一方が圧電基板12の直径(ウェハー径)の0%超過1%以下,他方が圧電基板12の直径の0%以上1%以下となるように接合されている(図2の拡大部分)。ここで、第1距離D1とは、圧電基板12と支持基板14との接合面に沿った方向のうち圧電基板12のOF12aに沿った方向(図2の左右方向)を第1方向としたときに、圧電基板12の中心12bと支持基板14の中心14bとの第1方向の距離である。また、第2距離D2とは、圧電基板12と支持基板14との接合面に沿った方向のうち圧電基板12のOF12aに垂直な方向(図2の上下方向)を第2方向としたときに、圧電基板12の中心12bと支持基板14の中心14bとの第2方向の距離である。すなわち、本実施形態では、圧電基板12と支持基板14とは、中心12bと中心14bとが第1距離D1だけ第1方向にずれており、且つ、第2距離D2だけ第2方向にずれている。なお、上記のように第1距離D1と第2距離D2との一方は値0mm(0%)となりうるため、中心12bと支持基板14bとが第1方向にのみずれていたり、第2方向にのみずれていたりしてもよい。また、図2では、中心12bに対して14bが左方向且つ下方向にずれているが、右方向にずれてもよいし、上方向にずれてもよい。
中心12bと中心14bとは、このように第1距離D1,第2距離D2がそれぞれ所定範囲内となるように離れており、互いに距離D(=√(D12+D22))だけ離れている。なお、圧電基板12は円盤状であるため、圧電基板12の中心12bは圧電基板12の外周の円(OF12aは無視する)の中心に位置する。支持基板14の中心14bについても同様である。また、本実施形態のように圧電基板12と支持基板14との直径が同じ場合には、図2のように圧電基板12の表面に垂直な方向から複合基板10を見ると、圧電基板12に対して支持基板14が距離Dだけ径方向にはみ出すことになる。
圧電基板12と支持基板14との角度θ、第1距離D1、第2距離D2が上述した範囲になるように接合されていることで、加熱時の熱応力がより小さいものとなる。第1距離D1及び第2距離D2は、いずれも圧電基板12の直径の0.3%以上1%以下であることが好ましい。加熱時の熱応力は角度θ、第1距離D1、第2距離D2、圧電基板12,支持基板14の材質や結晶方位によっても変化するが、例えば下記のように実験的に評価することができる。上述のように角度θ、第1距離D1、第2距離D2、アモルファス層の形成の有無、支持基板14の結晶方位をパラメータとして作製された複合基板を水準別に20枚用意して、350℃のオーブンで1時間加熱する。加熱によるウェハーの割れや剥離の発生数から歩留まりを調査し、熱応力の大小を求める。なお、耐熱性の高い複合基板についてはさらに高温に加熱して水準別の歩留まりに差が出るように加熱温度を設定する必要がある。
こうした複合基板10の製造方法について、図5を用いて以下に説明する。図5は、複合基板10の製造工程を模式的に示す説明図である。まず、圧電基板22と支持基板14とを用意する(図5(a))。圧電基板22は、研磨により圧電基板12となるものであり、厚み以外は圧電基板12と同様のものである。
そして、圧電基板22のオリエンテーションフラット(OF)22aの方位に対して支持基板14のOF14aの方位が角度θをなすように、支持基板14を回転させて位置決めする(図5(b)参照)。角度θは、上述したように2°〜60°の範囲の値とする。これにより、圧電基板22と支持基板14との互いのOF22a,OF14aのなす角度θが2°〜60°となる。
続いて、圧電基板22と支持基板14との接合面に沿った方向(=支持基板14の表面に沿った方向)のうち圧電基板22のOF22aに沿った方向を第1方向とし、OF22aに垂直な方向を第2方向として、圧電基板22に対して支持基板14を第1距離D1,第2距離D2だけ移動させて位置決めする。第1距離D1,第2距離D2は、上述したように一方が圧電基板22の直径(ウェハー径)の0%超過1%以下、他方が圧電基板22の直径の0%以上1%以下の範囲の値とする。これにより、圧電基板22と支持基板14との互いの中心22bと中心14bとが第1距離D1及び第2距離D2だけずれて、中心22bと中心14bとが圧電基板22と支持基板14との接合面に沿った方向に距離Dだけ離れることになる(図5(c))。なお、支持基板14を第1距離D1,第2距離D2だけ移動させる際には、OF22aとOF14aとの角度θは変わらないようにする。
次に、圧電基板22と支持基板14との位置関係(角度θ,第1距離D1,第2距離D2)を維持したまま、圧電基板22の裏面と支持基板14の表面とを直接接合して貼り合わせ基板20とする(図5(d))。両基板を直接接合する方法としては、以下の方法が例示される。すなわち、まず、両基板の接合面を洗浄し、接合面に付着している不純物(酸化物や吸着物等)を除去する。次に、Ar等の不活性ガスのイオンビームを両基板の接合面に照射することで、残留した不純物を除去すると共に接合面を活性化させる。その後、両基板を冷却し(例えば20〜50℃,20〜30℃,常温など)、真空中で加圧して両基板を貼り合わせる。なお、Arを含有するアモルファス層13を介して圧電基板22と支持基板14とを接合する場合には、両基板の接合面に真空中でAr中性原子ビーム又はArイオンビームを照射し、両基板を冷却した後、加圧して両基板を接合することが好ましい。アモルファス層13が3層構造になりやすいため、Ar中性原子ビームを使用することがより好ましい。
そして、研磨機にて貼り合わせ基板20のうち圧電基板22の表面を研磨する。研磨機としては、まず圧電基板22の厚みを薄くし、その後鏡面研磨を行うものを用いる。この結果、研磨前の圧電基板22が研磨後の圧電基板12になり、上述した複合基板10が完成する(図5(e))。
こうして得られた複合基板10は、この後、一般的なフォトリソグラフィ技術を用いて、多数の弾性表面波デバイスの集合体としたあと、ダイシングにより1つ1つの弾性表面波デバイスに切り出される。複合基板10を弾性表面波デバイスである1ポートSAW共振子30の集合体としたときの様子を図6に示す。1ポートSAW共振子30は、フォトリソグラフィ技術により、圧電基板12の表面に弾性表面波を励振可能な一対のIDT(Interdigital Transducer)電極32,34(櫛形電極、すだれ状電極ともいう)と反射電極36とが形成されたものである。なお、複合基板10をダイシングする際には、図6に示すように、圧電基板12を基準として(例えばOF12aを基準として)行うことが好ましい。
以上詳述した本実施形態の複合基板10によれば、圧電基板12と支持基板14との角度θが2°〜60°,第1距離D1と第2距離D2との一方が圧電基板12の直径の0%超過1%以下、他方が圧電基板12の直径の0%以上1%以下であることにより、それ以外の範囲で作製した複合基板に比べ複合基板10の加熱時の熱応力をより小さくすることができる。そのため、複合基板10は加熱時の割れや剥離の発生が抑制されて、耐熱性が向上する。なお、第1距離D1を圧電基板12の直径の0.3%以上1%以下,第2距離D2を圧電基板12の直径の0.3%以上1%以下とすることで、圧電基板12と支持基板14との図1のA視である図2のウェハー外周の交点が少なくなるため複合基板10の加熱時の熱応力をより小さくできる。すなわち、例えば図2では圧電基板12と支持基板14とのウエハー外周の交点は2箇所(図2の上側と下側に1箇所ずつ)であるが、圧電基板12と支持基板14との位置関係によっては交点が4箇所になるなどの場合もある。このような圧電基板12と支持基板14とのウエハー外周の交点を少なくするほど、複合基板10の加熱時の熱応力をより小さくできる。
また、複合基板10において、圧電基板12と支持基板14とは、Arを含有するアモルファス層13を介して接合されている。そのため、複合基板10の加熱時にアモルファス層13が緩衝材となりバッファー層の役割を果たすため、加熱時の熱応力を緩和することができる。これにより、複合基板10の耐熱性をより向上させることができる。
さらに、複合基板10において、支持基板14をシリコン製とし、支持基板14が方位(111)面で圧電基板12に接合されていれば、加熱時の熱応力をより小さくすることができる。これは、支持基板14が(100)面や(110)面で圧電基板12に接合されているときにはX軸方向やXY軸方向に熱応力が加わるが、(111)面で接合されているときにはXYZ軸方向に熱応力が3等分され、各々の分力が小さくなるためである。また、(111)面であれば結晶構造は最密充填となるため、接合時の支持基板14の接触面積が結晶構造の視点から最大となる。そのため支持基板14が(100)面や(110)面で接合されている場合に比べ接合強度が向上し、研磨やダイシング、加熱プロセス時の剥離をより抑制できる。
なお、本考案は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本考案の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
例えば、上述した実施形態では、圧電基板12と支持基板14との角度θが2°〜60°,第1距離D1と第2距離D2との一方が圧電基板12の直径の0%超過1%以下、他方が圧電基板12の直径の0%以上1%以下であるものとしたが、第1距離D1と第2距離D2とがこの数値範囲を満たしていれば、角度θが2°〜60°でなくともよい。この場合でも、第1距離D1と第2距離D2とがこの数値範囲を満たしていないものに比べて複合基板10の耐熱性をより向上させることができる。ただし、角度θが2°〜60°であることがより好ましい。
例えば、上述した実施形態では、圧電基板12と支持基板14とがアモルファス層13を介して直接接合されているものとしたが、アモルファス層13を介さずに直接接合されていてもよい。また、圧電基板12と支持基板14とが有機接着層を介して間接的に接合されていてもよい。有機接着層を介して間接的に接合する方法としては、以下の方法が例示される。すなわち、まず、圧電基板と支持基板との両基板の接合面を洗浄し、該接合面に付着している不純物を除去する。次に、両基板の接合面の少なくとも一方に有機接着剤を均一に塗布する。その後、両基板を貼り合わせ、有機接着剤が熱硬化性樹脂の場合には加熱して硬化させ、有機接着剤が光硬化性樹脂の場合には光を照射して硬化させる。
上述した実施形態では、図5を用いて説明した複合基板10の製造工程において、角度θを調整するように支持基板14を回転させ、その後に第1距離D1及び第2距離D2を調整するように支持基板14を位置決めするものとしたが、これに限られない。例えば、第1距離D1,第2距離D2を調整したあとに角度θを調整してもよいし、これらを同時に調整してもよい。また、上述した実施形態では、圧電基板12を基準とし支持基板14を動かして位置決めするものとしたが、支持基板14を基準とし圧電基板12を動かして位置決めしてもよいし、圧電基板12と支持基板14とを共に動かして位置決めしてもよい。
[実施例1]
上述した複合基板10の製造方法により、実施例1の複合基板10を作製した。具体的には、以下のように行った。まず、両面研磨され厚みtが230μm,径が4インチのLT基板(圧電基板12)、及び厚みtが250μm,径が4インチで接合面が(111)面のシリコン基板(支持基板14)、をそれぞれ用意した。なお、LT基板は、弾性表面波の伝搬方向であるX軸を中心に、Y軸からZ軸に42°回転した、42°YカットX伝搬LT基板(42Y−X LT)とした。また、LT基板のOF12aの方位は、弾性表面波の伝搬方向(X軸)を示すものとした。続いて、これら基板を10-6Pa台の真空度を保つ真空チャンバーに導入し、接合面を対向させ保持した。このとき、シリコン基板はLT基板を基準に回転かつ第1方向及び第2方向にずらして保持した。回転量は反時計回り(図2における反時計回り)に10°、第1方向及び第2方向の移動量は上方向(図2における上方向)へ0.5mmとなるようにした。すなわち角度θ=10°,第1距離D1=0mm(LT基板の直径の0%),第2距離D2=0.5mm(LT基板の直径の0.5%)とした。次に、両基板の接合面にArビームを120sec間照射し、表面の不活性層を除去し活性化した。そして、互いの基板を接触させ、500kgfの荷重をかけて接合した。その後、LT基板表面をグラインダーで厚み15μmまで研削し、更にダイヤスラリー(粒径1μm)を用いて厚み2.5μmまでラップ研磨をした。ラップ後、コロイダルシリカを用いて厚み1μmまで研磨して、実施例1の複合基板10とした。断面をTEM(透過電子顕微鏡)で観察したところ、この複合基板10の接合界面にはAr含有の3層からなるアモルファス層が形成されていた。
上述した複合基板10の製造方法により、実施例1の複合基板10を作製した。具体的には、以下のように行った。まず、両面研磨され厚みtが230μm,径が4インチのLT基板(圧電基板12)、及び厚みtが250μm,径が4インチで接合面が(111)面のシリコン基板(支持基板14)、をそれぞれ用意した。なお、LT基板は、弾性表面波の伝搬方向であるX軸を中心に、Y軸からZ軸に42°回転した、42°YカットX伝搬LT基板(42Y−X LT)とした。また、LT基板のOF12aの方位は、弾性表面波の伝搬方向(X軸)を示すものとした。続いて、これら基板を10-6Pa台の真空度を保つ真空チャンバーに導入し、接合面を対向させ保持した。このとき、シリコン基板はLT基板を基準に回転かつ第1方向及び第2方向にずらして保持した。回転量は反時計回り(図2における反時計回り)に10°、第1方向及び第2方向の移動量は上方向(図2における上方向)へ0.5mmとなるようにした。すなわち角度θ=10°,第1距離D1=0mm(LT基板の直径の0%),第2距離D2=0.5mm(LT基板の直径の0.5%)とした。次に、両基板の接合面にArビームを120sec間照射し、表面の不活性層を除去し活性化した。そして、互いの基板を接触させ、500kgfの荷重をかけて接合した。その後、LT基板表面をグラインダーで厚み15μmまで研削し、更にダイヤスラリー(粒径1μm)を用いて厚み2.5μmまでラップ研磨をした。ラップ後、コロイダルシリカを用いて厚み1μmまで研磨して、実施例1の複合基板10とした。断面をTEM(透過電子顕微鏡)で観察したところ、この複合基板10の接合界面にはAr含有の3層からなるアモルファス層が形成されていた。
[実施例2]
Ar以外のイオンを用いたイオンビームにより表面の不活性層を除去し活性化して、接合界面にArが含有しないアモルファス層から成る複合基板を作製した点以外は実施例1と同様にして複合基板10を作製し、実施例2とした。すなわち、実施例2では角度θ=10°,第1距離D1=0mm(LT基板の直径の0%),第2距離D2=0.5mm(LT基板の直径の0.5%),Ar非含有アモルファス層を介した接合,支持基板の接合面が(111)面とした。
Ar以外のイオンを用いたイオンビームにより表面の不活性層を除去し活性化して、接合界面にArが含有しないアモルファス層から成る複合基板を作製した点以外は実施例1と同様にして複合基板10を作製し、実施例2とした。すなわち、実施例2では角度θ=10°,第1距離D1=0mm(LT基板の直径の0%),第2距離D2=0.5mm(LT基板の直径の0.5%),Ar非含有アモルファス層を介した接合,支持基板の接合面が(111)面とした。
[実施例3]
LT基板を基準に接合面が(100)面のシリコン基板を時計回り(図2における時計回り)に45°回転させ、左方向(図2における左方向)に0.5mm,下方向(図2における下方向)に0.5mmだけ移動させた状態で両基板を接合した点以外は、実施例2と同様にして複合基板10を作製し、実施例3とした。すなわち、実施例3では、角度θ=45°,第1距離D1=0.5mm(LT基板の直径の0.5%),第2距離D2=0.5mm(LT基板の直径の0.5%),Ar非含有アモルファス層を介した接合,支持基板の接合面が(100)面とした。
LT基板を基準に接合面が(100)面のシリコン基板を時計回り(図2における時計回り)に45°回転させ、左方向(図2における左方向)に0.5mm,下方向(図2における下方向)に0.5mmだけ移動させた状態で両基板を接合した点以外は、実施例2と同様にして複合基板10を作製し、実施例3とした。すなわち、実施例3では、角度θ=45°,第1距離D1=0.5mm(LT基板の直径の0.5%),第2距離D2=0.5mm(LT基板の直径の0.5%),Ar非含有アモルファス層を介した接合,支持基板の接合面が(100)面とした。
[実施例4]
LT基板を基準に接合面が(100)面のシリコン基板を回転させず、左方向(図2における左方向)に0.5mm,下方向(図2における下方向)に0.5mmだけ移動させた状態で両基板を接合した点以外は、実施例3と同様にして複合基板を作製し、実施例4とした。すなわち、実施例4では、角度θ=0°,第1距離D1=0.5mm(LT基板の直径の0.5%),第2距離D2=0.5mm(LT基板の直径の0.5%),Ar非含有アモルファス層を介した接合,支持基板の接合面が(100)面とした。
LT基板を基準に接合面が(100)面のシリコン基板を回転させず、左方向(図2における左方向)に0.5mm,下方向(図2における下方向)に0.5mmだけ移動させた状態で両基板を接合した点以外は、実施例3と同様にして複合基板を作製し、実施例4とした。すなわち、実施例4では、角度θ=0°,第1距離D1=0.5mm(LT基板の直径の0.5%),第2距離D2=0.5mm(LT基板の直径の0.5%),Ar非含有アモルファス層を介した接合,支持基板の接合面が(100)面とした。
[実施例5]
LT基板を基準にシリコン基板を左方向(図2における左方向)に0.5mm,下方向(図2における下方向)に0.2mmだけ移動させた状態で両基板を接合した点以外は実施例3と同様にして複合基板10を作製し、実施例5とした。すなわち、実施例5では角度θ=45°,第1距離D1=0.5mm(LT基板の直径の0.5%),第2距離D2=0.2mm(LT基板の直径の0.2%),Ar非含有アモルファス層を介した接合,支持基板の接合面が(100)面とした。
LT基板を基準にシリコン基板を左方向(図2における左方向)に0.5mm,下方向(図2における下方向)に0.2mmだけ移動させた状態で両基板を接合した点以外は実施例3と同様にして複合基板10を作製し、実施例5とした。すなわち、実施例5では角度θ=45°,第1距離D1=0.5mm(LT基板の直径の0.5%),第2距離D2=0.2mm(LT基板の直径の0.2%),Ar非含有アモルファス層を介した接合,支持基板の接合面が(100)面とした。
[比較例1]
LT基板を基準にシリコン基板の第1,第2方向の移動を行わずに両基板を接合した点以外は、実施例4と同様にして複合基板を作製し、比較例1とした。すなわち、比較例1では、角度θ=0°,第1距離D1=0mm(LT基板の直径の0%),第2距離D2=0mm(LT基板の直径の0%),Ar非含有アモルファス層を介した接合,支持基板の接合面が(100)面とした。
LT基板を基準にシリコン基板の第1,第2方向の移動を行わずに両基板を接合した点以外は、実施例4と同様にして複合基板を作製し、比較例1とした。すなわち、比較例1では、角度θ=0°,第1距離D1=0mm(LT基板の直径の0%),第2距離D2=0mm(LT基板の直径の0%),Ar非含有アモルファス層を介した接合,支持基板の接合面が(100)面とした。
[耐熱性の評価]
実施例1〜5及び比較例1の複合基板をそれぞれ20枚用意して、ウェハーの状態で350℃のオーブンで1時間加熱した。加熱によるウェハーの割れや剥離の発生数から実施例1〜5及び比較例1の歩留まりは次の結果となった。実施例1では歩留まりが100%,実施例2では70%,実施例3では40%,実施例4では30%,実施例5では20%,比較例1では10%となった。このことから角度θ,第1距離D1,第2距離D2を上記範囲とすること、Ar含有アモルファス層を介した接合,支持基板の接合面を(111)面とすること、が歩留まりを向上させている、すなわち耐熱性を向上させていることが確認できた。
実施例1〜5及び比較例1の複合基板をそれぞれ20枚用意して、ウェハーの状態で350℃のオーブンで1時間加熱した。加熱によるウェハーの割れや剥離の発生数から実施例1〜5及び比較例1の歩留まりは次の結果となった。実施例1では歩留まりが100%,実施例2では70%,実施例3では40%,実施例4では30%,実施例5では20%,比較例1では10%となった。このことから角度θ,第1距離D1,第2距離D2を上記範囲とすること、Ar含有アモルファス層を介した接合,支持基板の接合面を(111)面とすること、が歩留まりを向上させている、すなわち耐熱性を向上させていることが確認できた。
本考案の複合基板は、例えば、携帯電話等に使用されるフィルタ素子や発振子として機能させることができる弾性表面波デバイスなどのほか、圧電薄膜を用いたラム波素子、同じく圧電薄膜を用いた薄膜共振子(FBAR)など弾性波デバイスに利用可能である。
10 複合基板、12 圧電基板、12a オリエンテーションフラット(OF)、12b 中心、13 アモルファス層、13a〜13c 第1層〜第3層、14 支持基板、14a オリエンテーションフラット(OF)、14b 中心、20 貼り合わせ基板、22 圧電基板、22a オリエンテーションフラット(OF)、22b 中心、30 1ポートSAW共振子、32,34 IDT(Interdigital Transducer)電極、36 反射電極。
Claims (5)
- オリエンテーションフラットを有し、線熱膨張係数及びヤング率の少なくとも一方に異方性を有する圧電基板と、
オリエンテーションフラットを有し、前記圧電基板に接合され、線熱膨張係数及びヤング率の少なくとも一方に異方性を有する支持基板と、
を備え、
前記圧電基板と前記支持基板とは、互いの接合面に沿った方向のうち前記圧電基板のオリエンテーションフラットに沿った方向を第1方向、該第1方向に垂直な方向を第2方向としたときに、互いの中心の前記第1方向の距離である第1距離D1と前記第2方向の距離である第2距離D2との一方が前記圧電基板の直径の0%超過1%以下,他方が前記圧電基板の直径の0%以上1%以下、となるように接合されている、
複合基板。 - 前記第1距離D1及び前記第2距離D2は、いずれも前記圧電基板の直径の0.3%以上1%以下である、
請求項1に記載の複合基板。 - 前記圧電基板と前記支持基板とは、互いのオリエンテーションフラットのなす角度θが2°〜60°となるように接合されている、
請求項1又は2に記載の複合基板。 - 前記圧電基板と前記支持基板とは、Arを含有するアモルファス層を介して接合されている、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の複合基板。 - 前記支持基板は、シリコン製であり、方位(111)面で前記圧電基板に接合されている、
請求項1〜4のいずれか1項に記載の複合基板。
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