JP2020043403A - 弾性波共振器、フィルタおよびマルチプレクサ - Google Patents

弾性波共振器、フィルタおよびマルチプレクサ Download PDF

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Abstract

【課題】弾性波共振器の特性を向上させること。【解決手段】圧電基板と、前記圧電基板上に設けられ、複数の電極指を各々備える一対の櫛型電極と、前記圧電基板の前記一対の櫛型電極が設けられた面と反対の面に接して設けられ、前記圧電基板と異なる材料を主成分とする第1層と、前記第1層の前記圧電基板と反対の面に設けられ、前記圧電基板と異なる材料を主成分とする第2層と、前記第1層と前記第2層との間に前記第2層と接して設けられ、前記第2層の構成元素を主成分とする第1アモルファス層と、を備える弾性波共振器。【選択図】図1

Description

本発明は、弾性波共振器、フィルタおよびマルチプレクサに関し、例えば一対の櫛型電極を有する弾性波共振器、フィルタおよびマルチプレクサに関する。
スマートフォン等の通信機器に用いられる弾性波共振器として、弾性表面波共振器が知られている。弾性表面波共振器を形成する圧電基板を支持基板に張り付けることが知られている。圧電基板と支持基板の表面にアモルファス層を形成し、常温において圧電基板と支持基板とを接合することが知られている(例えば特許文献1)。常温接合した圧電基板の厚さを弾性表面波の波長以下とすることが知られている(例えば特許文献2)。圧電基板と支持基板との間に高音速膜と低音速膜を設けることが知られている(例えば特許文献3)。
特開2005−252550号公報 特開2017−034363号公報 特開2015−73331号公報
圧電基板を支持基板に接合することにより、弾性表面波共振器の温度特性が向上する。さらに、圧電基板の厚さを弾性表面波の波長以下とすることにより、スプリアスが抑制できる。しかしながら、支持基板と圧電基板との間にアモルファス層が形成されると、損失が大きくなる。
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、弾性波共振器の特性を向上させることを目的とする。
本発明は、圧電基板と、前記圧電基板上に設けられ、複数の電極指を各々備える一対の櫛型電極と、前記圧電基板の前記一対の櫛型電極が設けられた面と反対の面に接して設けられ、前記圧電基板と異なる材料を主成分とする第1層と、前記第1層の前記圧電基板と反対の面に設けられ、前記圧電基板と異なる材料を主成分とする第2層と、前記第1層と前記第2層との間に前記第2層と接して設けられ、前記第2層の構成元素を主成分とする第1アモルファス層と、を備える弾性波共振器である。
上記構成において、前記第1層と前記第1アモルファス層との間に前記第1層および前記第1アモルファス層と接して設けられ、前記第1層の構成元素を主成分とする第2アモルファス層を備える構成とすることができる。
上記構成において、前記第1層と前記第1アモルファス層との間に前記第1層の構成元素以外の層を主成分とする層は設けられていない構成とすることができる。
上記構成において、前記圧電基板と前記第1層との間にはアモルファス層が実質的に設けられていない構成とすることができる。
上記構成において、前記圧電基板の厚さは、前記一対の櫛型電極の一方の櫛型電極の電極指の平均ピッチより小さい構成とすることができる。
上記構成において、前記第1層は、前記圧電基板より薄い構成とすることができる。
上記構成において、前記第2層は支持基板であり、前記支持基板の前記複数の電極指の配列方向の線膨張係数は前記圧電基板の前記配列方向の線膨張係数より低い構成とすることができる。
上記構成において、前記第2層の前記第1層と反対の面に設けられた支持基板を備え、前記支持基板の前記複数の電極指の配列方向の線膨張係数は前記圧電基板の前記配列方向の線膨張係数より低い構成とすることができる。
上記構成において、前記第1層と前記第2層の主成分は同じである構成とすることができる。
上記構成において、前記圧電基板は、タンタル酸リチウム基板またはニオブ酸リチウム基板であり、前記第1層は酸化シリコン層、シリコン層、酸化アルミニウム層または窒化アルミニウム層である構成とすることができる。
本発明は、上記弾性波共振器を含むフィルタである。
本発明は、上記フィルタを含むマルチプレクサである。
本発明によれば、弾性波共振器の特性を向上させることができる。
図1は、実施例1に係る弾性波共振器の斜視図である。 図2(a)は、実施例1における弾性波共振器の平面図、図2(b)は、図2(a)のA−A断面図である。 図3(a)から図3(e)は、実施例1に係る弾性波共振器の製造方法を示す断面図である。 図4(a)から図4(d)は、実施例1における支持基板と圧電基板との接合方法を示す模式図である。 図5は、比較例1に係る弾性波共振器の断面図である。 図6は、実験1における厚さT2aに対する損失を示す図である。 図7は、実験2における厚さT2に対する損失を示す図である。 図8は、実験3における中間層の厚さに対する反り量を示す図である。 図9は、実施例1の変形例1に係る弾性波共振器の断面図である。 図10(a)は、実施例2に係るフィルタの回路図、図10(b)は、実施例2の変形例1に係るデュプレクサの回路図である。
以下、図面を参照し本発明の実施例について説明する。
図1は、実施例1に係る弾性波共振器の斜視図、図2(a)は、実施例1における弾性波共振器の平面図、図2(b)は、図2(a)のA−A断面図である。電極指の配列方向をX方向、電極指の延伸方向をY方向、支持基板および圧電基板の積層方向をZ方向とする。X方向、Y方向およびZ方向は、圧電基板の結晶方位のX軸方向およびY軸方向とは必ずしも対応しない。
図1、図2(a)および図2(b)に示すように、圧電基板12の下面に中間層13が設けられている。支持基板10の上面と中間層13の下面とが接合されている。支持基板10と中間層13との間にはアモルファス層11が設けられている。アモルファス層11はアモルファス層10aおよび13aを備える。アモルファス層13aは非常に薄いまたは設けられていなくてもよい。アモルファス層10aは支持基板10上に設けられ支持基板10の構成元素を主成分とする。アモルファス層13aは中間層13の下面に設けられ中間層13の構成元素を主成分とする。支持基板10、アモルファス層10a、13a、中間層13および圧電基板12の厚さをそれぞれT1、T1a、T3a、T3およびT2とする。
圧電基板12上に弾性波共振器20が設けられている。弾性波共振器20はIDT22および反射器24を有する。反射器24はIDT22のX方向の両側に設けられている。IDT22および反射器24は、圧電基板12上の金属膜14により形成される。
IDT22は、対向する一対の櫛型電極18を備える。櫛型電極18は、複数の電極指15と、複数の電極指15が接続されたバスバー16と、を備える。一対の櫛型電極18の電極指15が交差する領域が交差領域25である。交差領域25の長さが開口長である。一対の櫛型電極18は、交差領域25の少なくとも一部において電極指15がほぼ互い違いとなるように、対向して設けられている。交差領域25において複数の電極指15が励振する弾性波は、主にX方向に伝搬する。同じ櫛型電極18の電極指15のピッチがほぼ弾性波の波長λとなる。ピッチは電極指15の2本分のピッチとなる。反射器24は、IDT22の電極指15が励振した弾性波(弾性表面波)を反射する。これにより弾性波はIDT22の交差領域25内に閉じ込められる。
圧電基板12としては、例えば、単結晶タンタル酸リチウム(TaLiO)基板または単結晶ニオブ酸リチウム(NbLiO)基板であり、例えば回転YカットX伝搬タンタル酸リチウム基板または回転YカットX伝搬ニオブ酸リチウム基板である。支持基板10は、例えばサファイア基板、スピネル基板、シリコン基板、水晶基板、石英基板またはアルミナ基板である。サファイア基板は単結晶Al基板であり、スピネル基板は多結晶MgAl基板であり、シリコン基板は単結晶Si基板であり、水晶基板は単結晶SiO基板であり、石英基板は多結晶SiO基板であり、アルミナ基板はAlの焼結体(焼結セラミックス)基板である。支持基板10のX方向の線膨張係数は圧電基板12のX方向の線膨張係数より小さい。これにより、弾性波共振器の周波数温度依存性を小さくできる。
中間層13は、例えば酸化シリコン層、シリコン層、酸化アルミニウム層または窒化アルミニウム層であり、多結晶である。金属膜14は、例えばAl(アルミニウム)またはCu(銅)を主成分とする膜であり、例えばAl膜またはCu膜である。電極指15と圧電基板12との間にTi(チタン)膜またはCr(クロム)膜等の密着膜が設けられていてもよい。密着膜は電極指15より薄い。電極指15を覆うように絶縁膜が設けられていてもよい。絶縁膜は保護膜または温度補償膜として機能する。
厚さT1は例えば50μmから500μmである。厚さT2は例えば0.5μmから5μmであり、例えば弾性波の波長λ以下である。厚さT3は例えば10nmから1μmである。厚さT1aおよびT3aは例えば各々0.1nmから10nmであり例えばT3a<T1aである。
[実施例1の製造方法]
図3(a)から図3(e)は、実施例1に係る弾性波共振器の製造方法を示す断面図である。図3(a)に示すように、圧電基板12上に中間層13を成膜する。中間層13の成膜には、例えばスパッタリング法、真空蒸着法またはCVD(Chemical Vapor Deposition)法を用いる。
図3(b)に示すように、中間層13の下面(図では上面)にイオン54を照射する。これにより、中間層13の下面にアモルファス層13aが形成される。図3(c)に示すように、支持基板10の上面にイオン54を照射する。これにより、支持基板10の上面にアモルファス層10aが形成される。
図3(d)に示すように、支持基板10の上面と中間層13の下面とを常温にて接合する。これにより、アモルファス層10aと13aとが接合する。図3(e)に示すように、圧電基板12の上面を平坦化することにより、圧電基板12を所望の厚さとする。その後、金属膜14等を形成する。
図3(b)から図3(d)の支持基板10上面に中間層13の下面を貼り付ける方法について詳細に説明する。図4(a)から図4(d)は、実施例1における支持基板と圧電基板との接合方法を示す模式図である。図4(a)に示すように、支持基板10では、支持基板10を構成する元素の原子50aが規則的に配列されている。支持基板10の上面に自然酸化膜10bが形成されている。自然酸化膜10bは原子50aと酸素とから構成される。図4(b)に示すように、中間層13では、中間層13を構成する元素の原子52aが規則的に配列されている。中間層13の下面に自然酸化膜13eが形成されている。自然酸化膜13eは原子52aと酸素とから構成される。
図4(a)および図4(b)に示すように、真空中において、支持基板10の上面および中間層13の下面にイオン54等を照射する。イオン54は例えばAr(アルゴン)イオン等の不活性元素(例えば希ガス元素)のイオンである。イオン54等をイオンビーム、中性化したビームまたはプラズマとして、照射する。これにより、支持基板10の上面および中間層13の下面が活性化される。Arイオンを用いる場合、例えばArイオンの電流を25mAから200mAとし、Arイオンの照射時間を30秒から120秒程度とする。
図4(c)に示すように、支持基板10の上面および中間層13の下面に、それぞれアモルファス層10aおよび13aが形成される。アモルファス層10aは支持基板10の構成元素の原子50aとイオン54とを含む。アモルファス層13aは中間層13の構成元素の原子52aとイオン54とを含む。アモルファス層10aおよび13aの表面には未結合の結合手が形成される(すなわち活性化される)。
図4(d)に示すように、真空を維持した状態で、アモルファス層10aと13aとを張り合わせると、未結合手同士が結合し、強固な結合となる。これにより、支持基板10と中間層13がアモルファス層11を介し接合される。このような接合は常温(例えば100℃以下かつ−20℃以上、好ましくは80℃以下かつ0℃以上)で行われるため熱応力を抑制できる。常温で接合されたか否かは、残留応力の温度依存性により確かめることができる。すなわち、接合された温度において、残留応力が最も小さくなる。
このように、支持基板10と中間層13とを接合すると、中間層13が酸化シリコン膜のとき、アモルファス層13aは、Si(シリコン)およびO(酸素)を主成分とし、Arを含む。中間層13がシリコン膜のとき、アモルファス層13aは、Siを主成分とし、Arを含む。中間層13が酸化アルミニウム膜のとき、アモルファス層13aは、Al(アルミニウム)およびOを主成分とし、Arを含む。中間層13が窒化アルミニウム膜のとき、アモルファス層13aは、AlおよびN(窒素)を主成分とし、Arを含む。アモルファス層13aは、支持基板10の構成元素のうち中間層13の構成元素以外の元素をほとんど含まない。
支持基板10がサファイア基板またはアルミナ基板のとき、アモルファス層10aは、AlおよびOを主成分とし、Arを含む。支持基板10がスピネル基板のとき、アモルファス層10aは、Mg(マグネシウム)、AlおよびOを主成分とし、Arを含む。支持基板10がシリコン基板のとき、アモルファス層10aはSi(シリコン)を主成分とし、Arを含む。支持基板10が水晶基板および石英基板のとき、アモルファス層10aは、SiおよびOを主成分とし、Arを含む。アモルファス層10aは、中間層13の構成元素のうち支持基板10の構成元素以外の元素をほとんど含まない。
TEM(Transmission Electron Microscope)観察では、中間層13とアモルファス層13aとで濃淡が異なる。支持基板10とアモルファス層10aとで濃淡が異なる。これにより、アモルファス層10aおよび13aの厚さを測定できる。中間層13を酸化シリコン膜とした場合、TEM法ではアモルファス層13aを観察できなかった。これは、CVD法またはスパッタリング法を用い形成された酸化シリコン膜は、アモルファスまたは粒径の小さい多結晶となるためと考えられる。中間層13がCVD法またはスパッタリング法を用い形成された酸化シリコン膜の場合、アモルファス層13aが非常に薄い、または、アモルファス層13aは存在するがTEMでアモルファス層13aを観察できない、のいずれかと考えられる。
上記において例示した酸化シリコン膜以外の材料では、中間層13とアモルファス層13aとの境界、および支持基板10とアモルファス層13aとの境界をTEM法観察で同定できる。例えば、中間層13をスパッタリング法で形成した酸化アルミニウム膜とした場合、および支持基板10をサファイア基板またはスピネル基板とした場合には、アモルファス層13aまたは10aをTEM観察できた。
[比較例1]
比較例1における実験1を行った。図5は、比較例1に係る弾性波共振器の断面図である。支持基板10の上面に圧電基板12の下面が接合されている。支持基板10の上面にアモルファス層10aが形成され、圧電基板12の下面にアモルファス層12aが形成されている。アモルファス層10a、12aおよび圧電基板12の厚さをそれぞれT1a、T2aおよびT2とする。その他の構成は実施例1と同じであり説明を省略する。
比較例1においては、IDT22が弾性表面波を励振するときに、圧電基板12内にバルク波が励振される。バルク波はアモルファス層11において反射されるとスプリアスの原因となる。また、バルク波の発生によりエネルギーの損失が生じる。そこで、特許文献2に記載されているように、圧電基板12の厚さT2を弾性波の波長λより小さくする。これにより、バルク波の圧電基板12の厚さ方向の伝搬が抑制されるものと考えられる。よって、スプリアスが抑制されかつ損失が抑制される。
[実験1]
比較例1に係る弾性波共振器の作製条件は以下である。
支持基板10:単結晶サファイア基板
圧電基板12:T2=3.5μmの42°回転YカットX伝搬タンタル酸リチウム基板
アモルファス層10a:T1a=1.0nm〜1.8nm
圧電基板12の下面に照射するArイオンの電流および時間を変えることにより、アモルファス層12aの厚さT2aを変化させた。
比較例1の弾性波共振器を用いラダー型フィルタを作製した。ラダー型フィルタの作製条件は以下である。
ラダー型フィルタ:LTE(Long Term Evolution)バンド26(受信帯域:814から849MHz)の送信フィルタ、6段(直列共振器が6個および並列共振器が5個)
電極指15のデュティ比:50%
図6は、実験1における厚さT2aに対する損失を示す図である。ドットは測定点であり、直線は近似直線である。図6に示すように、アモルファス層12aを厚くすると損失が劣化する。近似直線をT2a=0に外挿すると損失は−0.2dBとなる。このようにアモルファス層12aの厚さT2aが損失に影響する理由は明確ではないが、例えば以下のように考えられる。圧電基板12が薄くなると、弾性表面波はアモルファス層12aまで達する。アモルファス層12aの厚さT2aが大きいと、支持基板10との界面付近における圧電基板12の圧電性が低下する。これにより、弾性表面波がアモルファス層12aの影響を受け損失が低下するものと考えられる。
以上の考察から、圧電基板12にアモルファス層12aを設けないことが考えられる。しかし、アモルファス層12aを設けないと圧電基板12を支持基板10に接合することが難しい。また、アモルファス層12aに弾性表面波が達しないように圧電基板12を厚くすることが考えられる。しかしながら、圧電基板12を厚くすると、バルク波に起因した損失およびスプリアスが増加する。
実施例1では、圧電基板12と支持基板10との間に中間層13を設ける。支持基板10と中間層13とを常温接合する。これにより、圧電基板12内に意図的にアモルファス層12aを形成しない。これにより、損失を抑制できる。
[実験2]
実施例1において、厚さT2および厚さT3を変えて弾性波共振器の損失を測定した。弾性波共振器の作製条件は以下である。
支持基板10:単結晶サファイア基板
圧電基板12:42°回転YカットX伝搬タンタル酸リチウム基板
中間層13:CVD法を用い成膜した酸化シリコン膜
アモルファス層10aの厚さT1a:1.0nm〜1.8nm
電極指ピッチλ:約5.0μm
共振周波数fr:約800MHz
TEM法ではアモルファス層13aを観察できなかった。
図7は、実験2における厚さT2に対する損失を示す図である。損失は弾性波共振器の共振周波数における損失であり、実験1と単純に比較はできない。厚さT1およびT3を0.2λ、0.4λおよび0.6λとした。ドットは測定点であり、曲線は近似曲線である。図7に示すように、圧電基板12の厚さT2および中間層13の厚さT3が大きくなると損失は小さくなる。これは、アモルファス層10aと圧電基板12の表面との距離が大きくなると、アモルファス層10aに達する弾性波のエネルギーが小さくなるためと考えられる。
[実験3]
図3(a)において圧電基板12に中間層13を形成したときの圧電基板12の反りを測定した。圧電基板12の反りが大きいと、図3(d)において、支持基板10に圧電基板12を接合することが難しくなる。実験条件は以下である。
圧電基板12:42°回転YカットX伝搬タンタル酸リチウム基板
圧電基板12の厚さT1:500μm
圧電基板12のウエハの大きさ:4インチ
中間層13:CVD法を用い成膜した酸化シリコン膜
反り量は、圧電基板12のウエハの外周に対する中心の凹み量であり、中心が凹んでいる場合を正とした。
図8は、実験3における中間層の厚さに対する反り量を示す図である。ドットは測定点であり、直線はドットをつなぐ直線である。図8に示すように、厚さT3が大きくなると反り量が大きくなる。点線のように外挿すると、反り量が約0となるのは厚さT3が約0.2μmのときである。
[実施例1の変形例1]
図9は、実施例1の変形例1に係る弾性波共振器の断面図である。図9に示すように、支持基板10と中間層13との間に中間層13bが設けられている。中間層13bとアモルファス層13aとの間にアモルファス層13cが設けられている。アモルファス層13cは中間層13bの構成元素を主成分とする。中間層13bの厚さT3bは例えば10nmから1μmである。アモルファス層13cの厚さT3cは例えば各々0.1nmから10nmであり例えばT3b<T3cである。その他の構成は実施例1と同じであり説明を省略する。
実施例1の変形例1の製造方法は以下である。図3(c)の代わりに、支持基板10の上面に中間層13bを中間層13と同様の方法で成膜する。中間層13bの上面にイオン54を照射することでアモルファス層13cを形成する。図3(d)の代わりに、アモルファス層13cの上面とアモルファス層13aの下面とを接合する。その他の製造方法は実施例1と同じである。
実施例1において、支持基板10と中間層13との接合性が悪い場合、実施例1の変形例1のように、中間層13bを設けることで、支持基板10と圧電基板12とを良好に接合することができる。
実施例1およびその変形例によれば、中間層13(第1層)は、圧電基板12の一対の櫛型電極18が設けられた面と反対の面に接して設けられ、圧電基板12と異なる材料を主成分とする。実施例1の支持基板10および実施例1の変形例1の中間層13b(第2層)は、中間層13の圧電基板12と反対の面に設けられ、圧電基板12と異なる材料を主成分とする。実施例1のアモルファス層10aおよび実施例1の変形例1のアモルファス層13c(第1アモルファス層)は、中間層13と支持基板10または中間層13bとの間に支持基板10または中間層13bと接して設けられ支持基板10または中間層13bの構成元素を主成分とする。
このように、支持基板10の上面に中間層13を常温接合することで、圧電基板12内に比較例1のようなアモルファス層12aがほとんど形成されない。よって、中間層13の界面付近の圧電基板12の圧電性は比較例1のようには低下しない。これにより、弾性表面波が圧電基板12の下面に達してもアモルファス層12aの影響を受け損失が低下することを抑制できる。
アモルファス層13a(第2アモルファス層)は、中間層13と実施例1のアモルファス層10aおよび実施例1の変形例1のアモルファス層13cとの間に中間層13およびアモルファス層10aまたは13cと接して設けられ、中間層13の構成元素を主成分とする。これにより、支持基板10と中間層13とを常温にて接合できる。
中間層13が酸化シリコン膜のように、TEM観察でアモルファス層13aが同定できない場合であっても、アモルファス層13aが非常に薄い、または中間層13の構成元素を主成分とするアモルファス層13aが設けられている。すなわち、中間層13とアモルファス層10aとの間に中間層13の構成元素以外の層を主成分とする層は設けられていない。アモルファス層13aが非常に薄い場合、中間層13とアモルファス層10aとは実質的に接している。
ここで、主成分とは、図4(a)および図4(b)において活性化のために用いた元素(例えばAr)および意図しない不純物を除く成分である。例えば、アモルファス層10aは支持基板10の構成元素(例えばスピネル基板の場合Al、MgおよびO)を合計で50原子%以上含み、アモルファス層13aは中間層13(例えば酸化アルミニウム膜の場合AlおよびO)を合計で50原子%以上含む。
圧電基板12と中間層13との間にはアモルファス層が実質的に設けられていないことが好ましい。これにより、比較例1のような損失の低下を抑制できる。ここで、アモルファス層が実質的に設けられていないとは、圧電基板12の下面の活性化処理のような意図的に形成されたアモルファス層が設けられていないとの意味である。
アモルファス層13aを観察できる場合、アモルファス層13aの厚さT3aはアモルファス層10aの厚さT1a(またはT3a)より小さいことが好ましく、T1aまたはT3cの0.9倍以下が好ましく、0.8倍以下がより好ましく、0.7倍以下がさらに好ましい。これにより、損失をより抑制できる。アモルファス層13aが薄すぎると、中間層13の下面は活性がされない。このことから、アモルファス層13aの厚さT3aはT1aまたはT3cの0.1倍以上が好ましい。
アモルファス層13aの厚さT3aが大きいと損失が悪化することから厚さT3aは、3nm以下が好ましく、2nm以下がより好ましく、1nm以下がさらに好ましい。中間層13の下面を活性するため、厚さT3aは0.1nm以上が好ましく、0.2nm以上がより好ましい。
支持基板10または中間層13bと中間層13との接合強度の観点から、厚さT1aまたはT3cは、0.5nm以上が好ましく、1nm以上がより好ましく、2nm以上がさらに好ましい。厚さT11aまたはT3cは10nm以下が好ましく、5nm以下がより好ましい。
圧電基板12の厚さT1を一方の櫛型電極18の電極指15の平均ピッチ(すなわち波長λ)より小さくする。これにより、バルク波に起因するスプリアスおよび/または損失を抑制できる。圧電基板12の厚さT2は電極指15の平均ピッチの0.9倍以下が好ましく、0.8倍以下がより好ましく、0.7倍以下がさらに好ましい。図7のように、損失を抑制するため、厚さT2は電極指15の平均ピッチの0.1倍以上が好ましく、0.2倍以上がより好ましい。電極指15の平均ピッチは、弾性波共振器20のX方向の長さを電極指15の対数(電極指15の本数の1/2)で除することにより算出できる。例えば波長λを5μmとすると、圧電基板12の厚さT2は例えば0.5μmから5μmである。
図8のように、支持基板10の反り量を抑制するため、中間層13の厚さT3は、圧電基板12の厚さT2より小さいことが好ましく、厚さT2の0.8倍以下がより好ましく、0.5倍以下がさらに好ましい。図7のように、損失を抑制するため、厚さT3は厚さT2の0.1倍以上が好ましく、0.2倍以上がより好ましい。
実施例1のように、中間層13が接合する第2層は支持基板10であり、支持基板10のX方向(電極指15の配列方向)の線膨張係数は圧電基板12のX方向の線膨張係数より低い。これにより、弾性表面波共振器の温度特性が向上する。
実施例1の変形例1のように、中間層13b(第2層)の圧電基板12と反対の面に設けられた支持基板10を備えている。このように、中間層13bを設けることで、支持基板10と中間層13とを接合することができる。また、支持基板10のX方向の線膨張係数は圧電基板12のX方向の線膨張係数より低い。これにより、弾性表面波共振器の温度特性が向上する。
中間層13と13bの主成分を同じとする。これにより、中間層13と13bとを強固に接合できる。よって、支持基板10と圧電基板12とを強固に結合できる。なお、中間層13と13bを酸化シリコン膜とすると、アモルファス層13aおよび13cがともに非常に薄くなる場合がある。この場合常温接合ができない場合がある。このため、中間層13と13bとを同じ材料とする場合、中間層13および13bは、シリコン膜、酸化アルミニウム膜または窒化アルミニウム膜であることが好ましい。
圧電基板12は、単結晶基板であり、タンタル酸リチウム基板またはニオブ酸リチウム基板を用いることができる。中間層13および13bは、多結晶層であり、酸化シリコン層、シリコン層、酸化アルミニウム層または窒化アルミニウム層とすることができる。支持基板10は、単結晶、多結晶または焼結体であり、例えば、サファイア基板、スピネル基板、シリコン基板、水晶基板、石英基板、またはアルミナ基板とすることができる。
アモルファス層10aまたは13cにおける、支持基板10の構成元素のうち酸素以外の元素の原子濃度は、中間層13の構成元素のうち酸素以外の元素の原子濃度より高い。アモルファス層13aにおける、中間層13の構成元素のうち酸素以外の元素の原子濃度は、支持基板10または中間層13bの構成元素のうち酸素以外の元素の原子濃度より高い。これにより、損失等の特性を改善できる。
IDT22がSH(Shear Horizontal)波を励振する場合、IDT22はバルク波を励振しやすい。よって、IDT22はSH波を励振することが好ましい。このため、圧電基板12は、20°から48°回転YカットX伝搬タンタル酸リチウム基板であることが好ましい。圧電基板12が回転YカットX伝搬タンタル酸リチウム基板の場合、X方向は結晶方位のX軸方向となる。
図10(a)は、実施例2に係るフィルタの回路図である。図10(a)に示すように、入力端子Tinと出力端子Toutとの間に、1または複数の直列共振器S1からS3が直列に接続されている。入力端子Tinと出力端子Toutとの間に、1または複数の並列共振器P1およびP2が並列に接続されている。1または複数の直列共振器S1からS3および1または複数の並列共振器P1およびP2の少なくとも1つに実施例1の弾性波共振器を用いることができる。ラダー型フィルタの共振器の個数等は適宜設定できる。フィルタは、多重モード型フィルタでもよい。
[実施例2の変形例1]
図10(b)は、実施例2の変形例1に係るデュプレクサの回路図である。図10(b)に示すように、共通端子Antと送信端子Txとの間に送信フィルタ40が接続されている。共通端子Antと受信端子Rxとの間に受信フィルタ42が接続されている。送信フィルタ40は、送信端子Txから入力された高周波信号のうち送信帯域の信号を送信信号として共通端子Antに通過させ、他の周波数の信号を抑圧する。受信フィルタ42は、共通端子Antから入力された高周波信号のうち受信帯域の信号を受信信号として受信端子Rxに通過させ、他の周波数の信号を抑圧する。送信フィルタ40および受信フィルタ42の少なくとも一方を実施例2のフィルタとすることができる。
マルチプレクサとしてデュプレクサを例に説明したがトリプレクサまたはクワッドプレクサでもよい。
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
10 支持基板
10a、11、12a、13a、13c アモルファス層
12 圧電基板
13、13b 中間層
15 電極指
18 櫛型電極
20 弾性波共振器
22 IDT

Claims (12)

  1. 圧電基板と、
    前記圧電基板上に設けられ、複数の電極指を各々備える一対の櫛型電極と、
    前記圧電基板の前記一対の櫛型電極が設けられた面と反対の面に接して設けられ、前記圧電基板と異なる材料を主成分とする第1層と、
    前記第1層の前記圧電基板と反対の面に設けられ、前記圧電基板と異なる材料を主成分とする第2層と、
    前記第1層と前記第2層との間に前記第2層と接して設けられ、前記第2層の構成元素を主成分とする第1アモルファス層と、
    を備える弾性波共振器。
  2. 前記第1層と前記第1アモルファス層との間に前記第1層および前記第1アモルファス層と接して設けられ、前記第1層の構成元素を主成分とする第2アモルファス層を備える請求項1に記載の弾性波共振器。
  3. 前記第1層と前記第1アモルファス層との間に前記第1層の構成元素以外の層を主成分とする層は設けられていない請求項1に記載の弾性波共振器。
  4. 前記圧電基板と前記第1層との間にはアモルファス層が実質的に設けられていない請求項1から3のいずれか一項に記載の弾性波共振器。
  5. 前記圧電基板の厚さは、前記一対の櫛型電極の一方の櫛型電極の電極指の平均ピッチより小さい請求項1から4のいずれか一項に記載の弾性波共振器。
  6. 前記第1層は、前記圧電基板より薄い請求項1から5のいずれか一項に記載の弾性波共振器。
  7. 前記第2層は支持基板であり、前記支持基板の前記複数の電極指の配列方向の線膨張係数は前記圧電基板の前記配列方向の線膨張係数より低い請求項1から6のいずれか一項に記載の弾性波共振器。
  8. 前記第2層の前記第1層と反対の面に設けられた支持基板を備え、
    前記支持基板の前記複数の電極指の配列方向の線膨張係数は前記圧電基板の前記配列方向の線膨張係数より低い請求項1から6のいずれか一項に記載の弾性波共振器。
  9. 前記第1層と前記第2層の主成分は同じである請求項8に記載の弾性波共振器。
  10. 前記圧電基板は、タンタル酸リチウム基板またはニオブ酸リチウム基板であり、前記第1層は酸化シリコン層、シリコン層、酸化アルミニウム層または窒化アルミニウム層である請求項1から9のいずれか一項に記載の弾性波共振器。
  11. 請求項1から10のいずれか一項に記載の弾性波共振器を含むフィルタ。
  12. 請求項11に記載のフィルタを含むマルチプレクサ。
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