JP3185093B2 - 射出成形品に配向を付加させる製造方法及び製造装置 - Google Patents

射出成形品に配向を付加させる製造方法及び製造装置

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JP3185093B2
JP3185093B2 JP28899096A JP28899096A JP3185093B2 JP 3185093 B2 JP3185093 B2 JP 3185093B2 JP 28899096 A JP28899096 A JP 28899096A JP 28899096 A JP28899096 A JP 28899096A JP 3185093 B2 JP3185093 B2 JP 3185093B2
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正明 尾本
直樹 森
博之 都
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株式会社メイホー
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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、機械的強度に優れた射
出成形品を得るための製造方法及び製造装置並びに射出
成形品に関する。さらに詳しくは、射出充填時に配向を
付加することにより機械的強度に優れた射出成形品を得
るための製造方法及び製造装置並びに射出成形品に関す
る。
【0002】
【従来の技術】従来、機械的強度の必要な成形品を射出
成形する際に使用される樹脂材料には、強化繊維が混入
されている複合材料を用いることが多い。これらの複合
材料を用いて成形した場合の強化繊維の配向は、一般に
金型表層部では流動方向に配向し、内部では流動方向に
対し直角方向に配向する。また、分子の配向については
流動方向に配列する。このような成形品の機械的強度
は、複合材料に混入されている充填材や強化繊維による
異方性のため流動方向により差があり、流れに沿う方向
では割れ易いという欠点がある。更に、射出充填の過程
において樹脂が合流するために発生するウエルドライン
と呼ばれる機械的強度の弱い部分も存在する。一般に、
射出成形品の機械的強度および耐久性の向上は延伸・配
向によって発現する。すなわち、延伸・配向されない成
形品の一部は脆く機械的強度が低いばかりでなく、寸法
精度も低いといった不都合があった。
【0003】これを改善するため、型の一部を回転させ
延伸・配向せしめる方法が提案されている。(特開昭6
0−145817号公報、特公昭60−4770号公
報、特公平8−2537131号公報)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記従
来技術の特開昭60−145817号公報の方法は、コ
アの回転速度、回転トルクの記載はあるが、回転に関す
る制御については明確にされていない。また、特公昭6
0−4770号公報の方法は、回転シール・ベアリング
組立体に関することが主体であり、回転に対する具体的
手段については明確にされていない。さらに、特公平8
−2537131号公報の方法は、トルクを検出する手
段であるが、回転開始時期および回転時間の制御につい
ては明確にされていない。これらの方法では、回転は樹
脂の射出充填開始直前に行われ射出が完了するまで回転
し続けるために、回転部と非回転部の境界に相当する成
形品の端部にバリが発生し易く、軸受部の耐久性が低下
し、金型のメンテナンスが必要となる。このため、バリ
取りの工数増加によって成形品がコスト高になるという
問題があるばかりでなく、樹脂注入口からの距離により
機械的強度に差があるという問題もあった。また、金型
の度重なるメンテナンスは金型管理費用の増加を招くこ
とになる。
【0005】本発明は、前記従来の問題を解決するた
め、成形過程において金型の内側部および外側部の少な
くとも一方が回転する角度、回転速度、回転トルクおよ
び回転開始時間を制御することにより射出成形品に配向
を付加させ機械的強度に優れ、かつ安定した高品質の射
出成形品を取得する製造方法および製造装置並びに射出
成形品を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するた
め、本発明の機械的強度に優れた射出成形品の製造方法
は、溶融された樹脂を金型内に射出充填すると同時に、
あるいは、充填される段階、更には充填完了直後に、円
筒形状品において金型の内側部および外側部の少なくと
も一方を円周方向に回転させて樹脂を配向させているこ
とを特徴とする。前記製造方法においては、回転成形金
型は内側部および外側部の両方に水冷管、またはヒータ
を備え所望する温度に温度調節することが好ましい。
【0007】次に本発明の機械的強度の優れた射出成形
品の製造方法は、金型の内側部および外側部の少なくと
も一方を円周方向に回転させる段階で、回転制御装置を
介した回転手段、例えばモータにて金型の内側部および
外側部の少なくとも一方が回転する角度、回転速度、回
転トルクおよび回転開始時間を任意に設定できることを
特徴とする。
【0008】前記構成においては、溶融された樹脂が金
型内に射出充填され、樹脂肉厚中央部が固化する直前に
金型の内側部および外側部の少なくとも一方を回転させ
て樹脂の中心層を積極的に配向させるように金型の内側
部および外側部の少なくとも一方が回転する角度、回転
速度、回転トルクおよび回転開始時間を設定してもよ
い。
【0009】前記構成においては、金型の内側部および
外側部の少なくとも一方が回転する角度として回転必要
時間としてもよい。
【0010】次に本発明の射出成形品は、円周方向の機
械的強度が樹脂注入口からの距離に関係なく機械的強度
の差がないことを特徴とする。また、ターボチャージャ
に使用される回転中心に軸を挿入するための中空部を有
する回転羽根車などの回転部品および有底品を含む円筒
形状成形品において、中心の軸周辺部の強度が配向によ
って向上したことを特徴とする。
【0011】
【作用】前記した本発明の製造方法の構成によれば、溶
融された樹脂が射出充填すると同時に、あるいは、充填
される段階、更には充填完了直後に、回転制御装置より
出力された回転条件に準じて金型の内側部および外側部
の少なくとも一方が回転することにより配向が付加さ
れ、機械的強度が向上した円筒形状の射出成形品を取得
することができる。
【0012】また、溶融された樹脂が射出充填すると同
時に、あるいは、充填される段階、更には充填完了直後
に、金型の内側部および外側部の少なくとも一方をタイ
ミングよく回転して、未固化樹脂部に流動を起こすよう
にしてやれば、射出充填開始以前より射出完了時まで金
型の内側部および外側部の少なくとも一方を回転し続け
なくても配向の効果を得ることができる。
【0013】また、本発明の製造装置の構成によれば、
金型の内側部および外側部の少なくとも一方が回転する
コアを内蔵している成形金型と、配向を制御する回転制
御装置を具備した回転手段を備えているので、連続した
工程で最適な配向条件を精度よく、かつ繰り返し再現さ
せることができる。
【0014】また、本発明の製造方法の構成によって成
形された射出成形品の機械的強度は、樹脂注入口からの
距離に関係なくこれらの差がないことより、成形品の部
位による強度のバラツキが無くなる。
【0015】また、本発明の製造方法の構成によると、
金型の内側部および外側部の少なくとも一方を連続回転
させた場合と比較して極めて低い回転角度設定あるいは
回転時間設定で同等の配向を得ることができるので成形
品端部のバリを最小限におさえることができ、また軸受
部の耐久性を向上させることができる。すなわち、成形
品バリ取りの工数が削減でき、成形品のコストダウンが
可能となり、さらに成形金型のメンテナンスも容易とな
る。
【0016】
【実施例】以下実施例を用いて本発明をさらに具体的に
説明する。
【0017】(実施例1)図1は本発明の一実施例の射
出成形品に配向を付加させる製造方法の簡略構成図を示
す。1は射出成形機、2は制御盤、3はサーボ・コント
ローラ、4はエンコーダ、5はサーボモータである。樹
脂は融点以上の温度で溶融され、射出成形機1から配向
を付加させる金型の内側部および外側部の少なくとも一
方が回転するコアを内蔵する金型内に射出される。制御
盤2は射出成形機1から出力された射出信号をサーボ・
コントローラ3へ送信すると共に、金型の内側部および
外側部の少なくとも一方の回転方向を選択できる機能を
持つ。サーボ・コントローラ3は金型の内側部および外
側部の少なくとも一方が回転する角度、回転速度、回転
トルクおよび回転開始時間を任意に設定できる機能を持
つ。制御盤2より送信された射出信号を受信すると同時
に回転開始時間(タイマー)が作動し、回転開始時間
(タイマー)が完了するとエンコーダ4を介して先に設
定した回転条件にてサーボモータ5を回転させる指令を
出力する。サーボモータ5はサーボ・コントローラ3か
らの回転指令に準じて回転し、金型の内側部および外側
部の少なくとも一方を回転させ、同時に射出成形機1よ
り射出された樹脂を回転方向に延伸・配向させる。
【0018】図2は同実施例における回転制御のタイム
チャートである。回転開始時間は射出開始時から射出完
了時の間において任意に設定してよい。また、金型の内
側部および外側部の少なくとも一方が回転する角度につ
いても任意に設定してよい。さらに、射出時間内に金型
の内側部および外側部の少なくとも一方を回転完了させ
ることが望ましい。因みに以上のような射出成形条件を
例示すれば次のようである。 型締力 30ton以上 射出圧力 350〜1000kg/cm 射出速度 5〜30mm/sec 金型温度 30℃以上 射出時間 0.3〜10.0sec 射出率 100〜400cm/sec コア回転角度 45°〜720° コア回転速度 100〜500rpm コア回転トルク 0.5〜10.0kg・m コア回転開始時間 0.0〜5.0sec(射出開始
後)
【0019】(実施例2)図3は本発明の一実施例の射
出成形品を示すものである。図3において、6はスプル
ー部樹脂、7は樹脂注入口、8は円筒形状成形品であ
る。円筒形状成形品8の主要寸法は、外形18mm、内
径9mm、高さ33mm、抜き勾配0°であり、樹脂と
して液晶ポリマーの充填材無混入グレードを使用した。
また、樹脂注入口7の位置は円周上すなわちヘリカル方
向へ設置した。
【0020】図4は機械的強度を測定するための方法を
示すものである。図4において、11は圧入ピンであ
り、ピン先端は10°の勾配がある。12は円筒形状成
形品8を樹脂注入口7から任意の距離にて厚さ3mmに
輪切り加工した試験片9および10であり、13は試験
片保持具、14は圧入試験機の平面台である。圧入ピン
11を上方より2mm/minの速度にて下降させて試
験片12に圧入させ、試験片12が破壊するまでの応力
および伸びを測定する。
【0021】以上のようにして測定した結果を図5に示
す。図5(a)は試験片9における配向品を示すもの
で、同図(b)は試験片10における配向品を示すもの
である。
【0022】比較例として、通常の金型を静置した射出
成形(回転金型を使用しないもの)方法で成形した無配
向成形品の試験片12が破壊するまでの応力および伸び
の測定結果を図6に示す。図6(a)は試験片9におけ
る無配向品を示すもので、同図(b)は試験片10にお
ける無配向品を示すものである。
【0023】以上の測定結果より、成形品に延伸・配向
を付加させることにより応力にて3.5倍〜4.5倍の
強度向上が確認された。また、伸びについても2倍〜3
倍の向上が確認された。さらに、配向品においては、樹
脂注入口からの距離に関係なく応力および伸びに差がな
いことも確認された。
【0024】図7は回転制御の方法の違いによる応力お
よび伸びを測定した結果である。図7における回転方法
は、樹脂の射出充填開始直前に回転を開始させ、射出充
填完了するまで回転し続ける連続回転方法である。図7
(a)は試験片9における配向品を示すもので、同図
(b)は試験片10における配向品を示すものである。
【0025】以上の測定結果より、本発明による強度は
連続回転方法の場合と同等の結果であり、本発明による
製造方法並びに製造装置の有効性が確認された。
【0026】図8は前記した図5から図7までの強度測
定結果において、試験片破断時における破断応力と伸び
について示すものである。
【0027】図9は前記従来技術における、樹脂の射出
充填開始直前に回転を開始させ、射出充填完了するまで
回転し続ける連続回転方法(特公平8−2537131
号公報)の製造装置図を示す。15は射出成形機ノズル
部、16は溶融ポリマーの通路、17はランナー、18
は回転コア金型、19は外金型、20はパイプ成形部
(キャビティー)、21は回転軸受け、22はチェー
ン、23はモータ、24は突き出しピン、25は下部外
金型、26は軸受けである。
【0028】
【発明の効果】以上説明したとおり、本発明の射出成形
品に配向を付加させる製造方法によれば、溶融された樹
脂が金型内に射出充填すると同時に、あるいは、充填さ
れる段階、更には充填完了直後に、回転制御装置より出
力された回転条件に準じて金型の内側部および外側部の
少なくとも一方が回転することにより配向が付加され、
機械的強度が向上した円筒形状の射出成形品を取得する
ことができる。また、金型の内側部および外側部の少な
くとも一方をタイミングよく未固化樹脂部に流動を起こ
すようにしてやれば、射出充填開始以前より射出完了時
まで金型の内側部および外側部の少なくとも一方を回転
し続けなくても半回転から2回転程度の極めて低い回転
角度設定、もしくは回転時間設定によって配向の効果を
得ることができる。
【0029】次に、本発明の射出成形品に配向を付加さ
せる製造装置によれば、金型の内側部および外側部の少
なくとも一方が回転するコアを内蔵している成形金型
と、配向を制御する回転制御装置を具備した回転手段を
備えているので、連続した工程で最適な配向条件を精度
よく、かつ繰り返し再現させることができる。
【0030】次に、本発明の射出成形品の機械的強度
は、樹脂注入口からの距離に関係なくこれらの差がない
ことにより、成形品の部位による強度のバラツキが無く
なる。
【0031】また、本発明の射出成形品では、樹脂が合
流するために発生するウエルドラインが認められないた
め、ウエルドラインによる機械的強度の低下を防ぐこと
ができる。
【0032】さらに、本発明の射出成形品では、回転中
心部に軸を挿入するための中空部を有する回転部品およ
び有底品を含む円筒形状成形品において、回転中心の軸
周辺の機械的強度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例の射出成形品に配向を付加さ
せる製造方法を示す簡略構成図である。
【図2】本発明の一実施例の射出成形品に配向を付加さ
せる回転制御を示すタイムチャート図である。
【図3】本発明の一実施例の射出成形品である。
【図4】射出成形品の強度測定方法を示す図である。
【図5】本発明の一実施例の強度測定結果図である。
【図6】比較例の強度測定結果図である。
【図7】従来技術の強度測定結果図である。
【図8】破断時における応力および伸びに関する図であ
る。
【図9】従来技術におけるパイプの製造装置図である。
【符号の説明】
1 射出成形機 2 制御盤 3 サーボ・コントローラ 4 エンコーダ 5 サーボモータ 6 スプルー部樹脂 7 樹脂注入口 8 円筒状成形品 9 試験片 10 試験片 11 圧入ピン 12 試験片 13 試験片保持具 14 圧入試験機の平面台 15 射出成形機ノズル部 16 溶融ポリマーの通路 17 ランナー 18 回転コア金型 19 外金型 20 パイプ成形部(キャビティー) 21 回転軸受け 22 チェーン 23 モータ 24 突き出しピン 25 下部外金型 26 軸受け
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭60−145817(JP,A) 特開 昭52−4770(JP,A) 特開 平7−9495(JP,A) 特開 平6−126780(JP,A) 実開 平5−47616(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B29C 45/17 - 45/37 B29C 45/46 - 45/56 B29C 45/76 - 45/80

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 溶融された樹脂を金型内に射出充填する
    と同時に、あるいは、充填される段階、更には充填完了
    直後に、円筒形状品において金型の内側部および外側部
    の少なくとも一方を円周方向に回転させて樹脂を配向さ
    せる円筒形状の射出成形品の製造方法において、溶融樹
    脂が金型内に射出充填すると同時に、あるいは、充填さ
    れる段階、更には充填完了直後に、回転制御装置を具備
    した回転手段により円周方向に回転する金型の内側部お
    よび外側部の少なくとも一方が回転する角度、回転速
    度、回転トルクおよび回転開始時間を制御する手段を有
    することを特徴とする円筒形状の射出成形品の製造方
    法。
  2. 【請求項2】 金型の内側部および外側部の少なくとも
    一方が回転する角度および角速度の微調整が設定できる
    ことを特徴とする請求項1に記載の円筒形状の射出成形
    品の製造方法。
  3. 【請求項3】 溶融された樹脂が金型内に射出充填さ
    れ、樹脂肉厚中央部が固化する直前に金型の内側部およ
    び外側部の少なくとも一方を回転させて樹脂の中心層を
    積極的に配向させることを特徴とする請求項1に記載の
    円筒形状の射出成形品の製造方法。
  4. 【請求項4】 サーボコントローラとロータリーエンコ
    ーダおよびモータを主体とし、金型の内側部および外側
    部の少なくとも一方が回転する角度、回転速度、回転ト
    ルクおよび回転開始時間を任意に設定できるように構成
    された請求項1に記載の円筒形状の射出成形品の製造方
    法を実施するための製造装置。
  5. 【請求項5】 請求項1の方法で製造された射出成形品
    の円周方向の機械的強度が注入口からの距離に関係なく
    これらの差がないことを特徴とする円筒形状の射出成形
    品。
  6. 【請求項6】 請求項1の方法で製造された射出成形品
    において、ターボチャージャに使用される回転中心に軸
    を挿入するための中空部を有する回転羽根車などの回転
    部品および有底品を含む円筒形状成形品において、回転
    中心の軸周辺部の強度が配向によって向上したことを特
    徴とする円筒形状の射出成形品。
JP28899096A 1996-09-24 1996-09-24 射出成形品に配向を付加させる製造方法及び製造装置 Expired - Lifetime JP3185093B2 (ja)

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