次に、本考案に係る座椅子につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照して以下に説明する。ここで、座椅子において、使用者がのる面を表面といい、この表面と反対側の面を裏面という。また、座椅子は、使用者の足側を前とすると共に頭側を後として、特に断りがない限り、各部を倒伏させてベッド状にした姿勢(図3参照)で方向を指称する。
図1〜図3に示すように、実施例に係る座椅子10は、使用者の臀部を支持する座部12と、この座部12に対して複数段階で角度調節可能に設けられ、使用者の腰部および背中を支持する背もたれ部14と、この背もたれ部14に対して複数段階で角度調節可能に設けられ、使用者の頭部を支持する頭支持部16とを備えている。頭支持部16の表面側には、使用者の頭部を受ける頭枕18が着脱可能に取り付けられている。また、座椅子10は、座部12に対して複数段階で角度調節可能に設けられ、使用者の大腿部を支持する大腿支持部20と、この大腿支持部20に対して複数段階で角度調節可能に設けられ、使用者のふくらはぎを支持する小腿支持部22とを備えている。小腿支持部22には、使用者のふくらはぎを受ける脚枕24が表面側に配設されている。更に、座椅子10の座部12は、該座部12と背もたれ部14との連設部分から後方へ延出して、背もたれ部14の下側に延在するように形成された転倒規制部26を備えている。すなわち、座椅子10は、背もたれ部14および大腿支持部20を起立させた際に、転倒規制部26を含んだ座部12によって荷重を受けて、背もたれ部14側に力をかけても転倒規制部26によって後傾が規制されるようになっている。
前記座椅子10は、背もたれ部14、頭支持部16、大腿支持部20および小腿支持部22を床面(設置面)に沿うように寝かせた倒伏姿勢(図3参照)や、背もたれ部14を起立させた姿勢や、大腿支持部20を起立させると共に小腿支持部22を略水平にした脚載せ姿勢などに変更可能になっている。図2に示すように、座椅子10は、背もたれ部14の起立姿勢において、背もたれ部14を表裏方向に複数段階で角度調節し得ると共に、脚載せ姿勢において大腿支持部20を表裏方向に複数段階で角度調節し得るようになっている。また、座椅子10は、頭支持部16を背もたれ部14の延長線に沿って延在させたり、頭支持部16を背もたれ部14に対して表面側に傾けたりまたは裏面側に傾けたりすることが可能に構成される。更に、座椅子10は、小腿支持部22を大腿支持部20の延長線に沿って延在させたり、小腿支持部22を大腿支持部20に対して裏面側へ傾けたりすることが可能に構成される。このように、実施例の座椅子10は、各部12,14,16,20,22の連設部分で曲げ伸ばし可能に構成して、使用者のニーズに応じて様々な姿勢に変更可能である。
図4および図5に示すように、座椅子10は、該座椅子10の骨格となるフレームFと、このフレームFに配設されたクッションC1〜C4と、フレームFおよびクッションC1〜C4を覆うカバー70とから構成される。図8および図9に示すように、フレームFは、左右方向に離間して並行配置され、前後方向に夫々延在する一対の縦枠28a,30a,32a,34a,36a,38aと、両縦枠28a,30a,32a,34a,36a,38aの間に架設された横枠30b,32b,34b,36b,38bとを組み合わせて構成される。縦枠28a,30a,32a,34a,36a,38aおよび横枠30b,32b,34b,36b,38bは、円筒形の金属パイプなどの剛性を有するものが用いられる。フレームFは、ヒンジH1〜H4を介して縦枠28a,32a,34a,36a,38a同士が回動可能に連結される。各ヒンジH1〜H4は、一方の縦枠28a,32a,36aに対向配置された一対の連結板39,39の間に挿入した他方の縦枠32a,34a,36a,38aを回転可能に軸支するように構成される。また、各ヒンジH1〜H4には、一方の縦枠28a,32a,36aに対して他方の縦枠32a,34a,36a,38aを角度調節可能に支持するラチェット機構(図示せず)が両連結板39,39の間に収容配置される。
図8に示すように、座部12は、左右方向に離間配置された一対の座部縦枠28a,28aからなる座部フレーム28と、この座部フレーム28の下側に配設された支持フレーム30とを備えており、各座部縦枠28aにおける前端部および後端部の夫々にヒンジH1,H2が設けられている。実施例の支持フレーム30は、金属パイプを折り曲げて平面視で略矩形状の環状に形成される。支持フレーム30は、左右方向に離間する一対の支持縦枠30a,30aの間隔が、座部フレーム28と同じに設定されると共に(図6参照)、前後方向に離間する一対の支持横枠30b,30bの間隔が、座部フレーム28より長く設定される(図4および図5参照)。支持フレーム30は、座部フレーム28における左右の座部縦枠28a,28aの下側(裏面側)に、対応する側の支持縦枠30aを重ね合わせて配設され、座部フレーム28よりも下側に延在している。実施例の座部12において、座部フレーム28は支持フレーム30に載置され、座部フレーム28および支持フレーム30は、溶接や結束バンドなどによって互いに固定される。また、支持フレーム30は、座部縦枠28aの後端部に設けられた背部ヒンジH1の下側(裏面側)に延在すると共に、背部ヒンジH1を越えて後側へ延出するように配設される。更に、支持フレーム30は、座部縦枠28aの前端部に設けられた大腿ヒンジH2の下側に延在すると共に、大腿ヒンジH2を越えて前側へ延出するように配設される。すなわち、座部12において、ヒンジH1,H2およびこのヒンジH1,H2が設けられた座部フレーム28は、支持フレーム30によって床面から離れるように支持されて、座部フレーム28から床面に荷重を直接かけない構成になっている。ここで、支持フレーム30は、座部フレーム28の後端部からの延出寸法が該座部フレーム28の前端部からの延出寸法よりも大きく設定される。そして、座部12では、座部フレーム28の後端部(背部ヒンジH1)から後方へ延出する該支持フレーム30の後方延出部位(延出部位)が、前記転倒規制部26の骨格となる。また、座部フレーム28の前端部(大腿ヒンジH2)から前方へ延出する前方延出部位は、座部12および大腿支持部20の厚みの範囲に収容される。
図8に示すように、背もたれ部14には、前端部が対応する側の背部ヒンジH1に回動可能に夫々軸支された一対の背部縦枠32a,32aと、左右方向に離間する両縦枠32a,32aの間に架設された背部横枠32bとからなる背部フレーム32が配設される。背部フレーム32は、前後方向に離間配置された2本の背部横枠32b,32bを備え、各背部横枠32bは、背部縦枠32aの表裏方向の厚み範囲内に収まるように配設されている。背部フレーム32の各背部縦枠32aには、後端部(背部ヒンジH1との連結端と反対側の端部)に頭部ヒンジH3が設けられる。頭支持部16には、前端部が対応する側の頭部ヒンジH3に回動可能に夫々軸支された一対の頭部縦枠34a,34aと、左右方向に離間する両頭部縦枠34a,34aの間に架設された頭部横枠34bとからなる頭部フレーム34が配設される。なお、実施例の頭部フレーム34は、金属パイプ等を折り曲げて平面視で背部フレーム32側に開放した略「コ」字形状に形成される。
図8に示すように、大腿支持部20には、後端部が対応する側の大腿ヒンジH2に回動可能に夫々軸支された一対の大腿縦枠36a,36aと、左右方向に離間する両大腿縦枠36a,36aの間に架設された大腿横枠36bとからなる大腿フレーム36が配設される。大腿フレーム36の大腿横枠36bは、大腿縦枠36aの表裏方向の厚み範囲内に収まるように配設される。大腿フレーム36の各大腿縦枠36aには、前端部(大腿ヒンジH1との連結端と反対側の端部)に小腿ヒンジH4が設けられる。小腿支持部22には、後端部が対応する側の小腿ヒンジH4に回動可能に夫々軸支された一対の小腿縦枠38a,38aと、左右方向に離間する両小腿縦枠38a,38aの間に架設された小腿横枠38bとからなる小腿フレーム38が配設される。なお、実施例の小腿フレーム38は、金属パイプ等を折り曲げて平面視で大腿フレーム36側に開放した略「コ」字形状に形成される。
図9に示すように、背部ヒンジH1は、左右方向に対向する一対の連結板39,39が、座部縦枠28aの後端部から表面側(座部12では上方)へ延出するように設けられ、背部縦枠32aの回動中心が、座部縦枠28aにおける表裏方向(座部12では上下方向)の中央ラインより上側になるように、両連結板39,39間で背部縦枠32aを軸支する。背部フレーム32は、背部ヒンジH1によって座部フレーム28よりも表面側に延在するように支持されて、背部ヒンジH1に軸支される前端部と支持フレーム30との間に隙間があくように構成される。背部フレーム32は、座部フレーム28の後側に倒伏させた姿勢から表面側に向けて回動させた際に、背部ヒンジH1によって複数の角度で裏面側への変位が規制されて起立姿勢での傾きを調節し得るようになっている。
図9に示すように、大腿ヒンジH2は、左右方向に対向する一対の連結板39,39が、座部縦枠28aの前端部から表面側(座部12では上方)へ延出するように設けられ、大腿縦枠36aの回動中心が、座部縦枠28aにおける表裏方向(座部12では上下方向)の中央ラインより上側になるように、両連結板39,39間で大腿縦枠36aを軸支する。そして、大腿フレーム36は、大腿ヒンジH2によって支持フレーム30よりも表面側に延在するように支持される。大腿フレーム36は、座部フレーム28の前側に倒伏させた姿勢から表面側に向けて回動させた際に、大腿ヒンジH2によって複数の角度で裏面側への変位が規制されて起立姿勢での傾きを調節し得るようになっている。
図9に示すように、頭部ヒンジH3は、左右方向に対向する一対の連結板39,39が、背部縦枠32aの後端部から裏面側へ延出するように設けられ、頭部縦枠34aの回動中心が、背部縦枠32aにおける表裏方向の中央ラインより裏面側に位置するように、両連結板39,39間で頭部縦枠34aを軸支する。すなわち、背部フレーム32から裏面側に突出するよう形成された頭部ヒンジH3に支持された頭部フレーム34は、背部フレーム32よりも裏面側へオフセットされている。頭部フレーム34は、頭部ヒンジH3によって背部フレーム32よりも裏面側に延在するように支持される。ここで、頭部ヒンジH3は、背部フレーム32を倒伏させた姿勢において、連結板39の下端部(裏面側の端部)が支持フレーム30の下面に揃うように設定される(図9(b)参照)。頭部フレーム34は、背部フレーム32の延長線に沿って延在させた姿勢から表面側にまたは裏面側に向けて回動可能に構成され、頭部ヒンジH3によって複数の角度で裏面側への変位が規制されて背部フレーム32に対する傾きを調節し得るようになっている。また、頭部フレーム34は、倒伏させた姿勢にある背部フレーム32に対して回動することができる。倒伏させた姿勢にある背部フレーム32を支持フレーム30よりも上側に延在させた状態で、頭部フレーム34は、その一部または全部の高さ位置が支持フレーム30と合うように構成される。
図9に示すように、小腿ヒンジH4は、左右方向に対向する一対の連結板39,39が、大腿縦枠36aの前端部から表面側へ延出するように設けられ、小腿縦枠38aの回動中心が、大腿縦枠36aにおける表裏方向の中央ラインより表面側に位置するように、両連結板39,39間で小腿縦枠38aを軸支する。小腿フレーム38は、小腿ヒンジH4によって大腿フレーム36よりも表面側に延在するように支持される。小腿フレーム38は、大腿フレーム36の延長線に沿って延在させた姿勢から裏面側に向けて回動可能に構成され、小腿ヒンジH4によって複数の角度で裏面側への変位が規制されて大腿フレーム36に対する傾きを調節し得るようになっている。また、小腿フレーム38は、倒伏させた姿勢にある大腿フレーム36に対して回動することで、大腿フレーム36を支持フレーム30よりも上側に延在させた状態で、その一部を支持フレーム30と高さ位置を合わせることが可能に構成される(図9(b)参照)。
前記クッションC1〜C4は、硬さなどの物性が異なる複数の弾性体を組み合わせて構成される。弾性体としては、ポリウレタンフォーム、ポリエチレン等のポリオレフィン系フォーム、ゴムスポンジ等の発泡体を用いることができ、この中でも、作り易さや取り扱い性等の観点からポリウレタンフォームが最適である。また、発泡体は、柔軟性および復元性(塑性変形しない)を有する軟質フォームであって、気泡が連通する連泡構造であるのが望ましい。すなわち、クッションC1〜C4は、荷重が付与された際に圧縮変形や曲げ変形などが生じ、かつ荷重が解除されると元の形状に弾性復帰するようになっている。
図4および図5に示すように、クッションは、フレームFの表面側に配設された主クッションC1と、主クッションC1の表面側に配設された表クッションC2と、フレームFの裏面側に配設された裏クッションC3とから基本的に構成され、表裏方向に複数のクッションC1〜C3が重なっている。主クッションC1は、座部フレーム28、背部フレーム32、大腿フレーム36および小腿フレーム38の表面側に重なるように配設され、左右の縦枠28a,32a,36a,38a間の幅よりも幅広に形成される。ここで、主クッションC1は、その後端部が背部フレーム32の背部縦枠32aの一部に接合されると共に、その前端部が小腿フレーム38の小腿縦枠38aの一部に接合される。このように、実施例の主クッションC1は、頭部フレーム34の表面側を覆わず、また座部フレーム28および大腿フレーム36に接合されていない。
図6に示すように、表クッションC2および裏クッションC3は、主クッションC1の左右幅よりも幅広に形成され、対向する主クッションC1に接合されると共に、主クッションC1よりも延出する部位同士が互いに接合される。ここで、裏クッションC3は、座部フレーム28の後方に延出する支持フレーム30の後縁で折り返して後方延出部位の裏面側および表面側を覆い、座部フレーム28と背部フレーム32との連結部位で折れ曲がって背部フレーム32の裏面に沿って延在するように配設される(図4および図5参照)。座部12、背もたれ部14、大腿支持部20および小腿支持部22には、主クッションC1と、この主クッションC1の表裏を挟む表裏のクッションC2,C3とからなる3層の弾性体が配設される。また、実施例では、主クッションC1よりも薄い補助クッションC4が頭部フレーム34の表面側に配設され、頭支持部16には、表クッションC2、裏クッションC3および補助クッションC4からなる3層の弾性体が配設される。ここで、表裏のクッションC2,C3および補助クッションC4は、主クッションC1の主要部分よりも柔軟な弾性体が用いられる。なお、実施例では、表裏のクッションC2,C3および補助クッションC4としては、スラブ発泡品を裁断して得られたウレタンフォームであって、物性が同じものが用いられる。
図4および図5に示すように、主クッションC1は、座部12に配設される座部受体40と、背もたれ部14に配設される背部受体42と、大腿支持部20に配設される大腿受体44と、小腿支持部22に配設される小腿受体46とを有し、隣り合う受体40,42,44,46間が連結体48によって接続される。連結体48は、頭部ヒンジH3を除くヒンジH1,H2,H4の表面側に配置され、受体40,42,44,46よりも柔軟な弾性体が用いられている。実施例の連結体48としては、表裏のクッションC2,C3および補助クッションC4と同じ物性を有するウレタンフォームが採用される。これに対して、受体40,42,44,46は、比較的高い反発弾性を有するように硬めに構成される。実施例の背部受体42、大腿受体44および小腿受体46は、チップ状に破砕したウレタンフォームを接着剤や熱成形等によって接合して板状に形成した再生ウレタンが用いられる。また、背部受体42には、板状の本体部分の表面に、使用者の腰位置に合わせて腰支持部42aが設けられる。図1に示すように、腰支持部42aは、左右両側が突出して表面側に開放する略「U」字形状に形成され、背部受体42において座部12側に偏倚して設けられる。また、大腿受体44および小腿受体46は、表面が平坦に形成された板状に形成される。
図5に示すように、座部受体40は、基材50と、この基材50の表面側に重ね合わせて配設された支持材52とから構成され、全体として表面側が平らな板状体になっている。座部受体40において、基材50としては背部受体42などと同様に再生ウレタンが用いられ、基材50に、表面側に開放する凹状に形成された設置凹部50aに支持材52を嵌め込んで接合してある。ここで、実施例の座部12には、座部受体40の下側で裏クッションC3の上側に位置して、座部フレーム28および支持フレーム30の両縦枠28a,30a間に補助受体41が配設される。補助受体41は、基材50と同様に再生ウレタンからなる板状体であって、座部フレーム28および支持フレーム30の表裏方向の厚み寸法と略同じ厚さに設定される。
図5に示すように、支持材52は、板状のベース部54の裏面に裏面側へ突出形成された複数の支持体56を備え、座部12にかかる荷重を弾力的に支持するよう構成される。支持材52には、基本的に同じ形状および大きさで形成された複数の支持体56が、前後および左右方向に並べて配置されている。また、支持材52は、隣り合う支持体56,56の間を繋いで該支持体56よりも低く形成されたリブ58を備えている(図7参照)。支持材52は、ベース部54、支持体56およびリブ58などの全体がモールド成形によって同時に形成されて、ベース部54、支持体56およびリブ58が継ぎ目なく同一のポリウレタンフォームなどの発泡体から一体的に形成される。また、支持材52には、モールド成形に際して成形型の成形面に規定される面(支持体56が突出する側の外面)に、気泡が破泡または圧縮されて空隙が少なく見掛け密度が高い層である所謂スキン層が形成されている。
図7に示すように、支持体56は、突端が平らな面状に形成された凸状部分であり、この突出端面が円形に形成されている。支持体56は、ベース部54に連なる根元側に設けられた支持基部60と、この支持基部60の突出端面側に連ねて設けられた支持胴部62と、この支持胴部62から突出端面にかけて設けられた支持端部64とを備えている。支持体56は、略裁頭円錐形状の支持基部60の突出端面側に、略円柱形状の支持胴部62が連なると共に、支持胴部62の突出端面側に略裁頭円錐形状の支持端部64が連なり、突出端側が根元側と比べて細くなっている。そして、支持材52において、前後または左右方向に隣り合う支持体56,56は、支持基部60の一部が互いに繋がるように配置される一方、斜め方向に隣り合う支持体56,56は、互いに繋がらないように間をあけて配置される。支持基部60は、水平方向に破断した支持断面が、根元側から突出端面側に向かうにつれて小さくなるように形成され、根元側と比べて突出端面側が細くなる形状になっている。支持胴部62は、水平方向に破断した支持断面が表裏方向において略一定になるよう形成される。支持端部64は、水平方向に破断した支持断面が、根元側から突出端面側に向かうにつれて小さくなるように形成され、根元側と比べて突出端面側が細くなる形状になっている。支持材52には、隣り合う4つの支持体56およびこれらの支持体56を繋ぐリブ58に囲まれた凹部に臨んで、ベース部54を表裏方向に貫通する通孔66が形成される。このように、支持材52は、ベース部54の表裏に連通する通孔66を有しているので、表面にスキン層を有していても、通孔66により通気性を確保することができる。
前記カバー70は、布(実施例)や皮やその他の可撓性を有するシート状物を縫合または接着等により接合することで構成された袋状体であって、クッションC1〜C4の外側を覆って座椅子10の外面を構成している。カバー70は、座部12の転倒規制部26の骨格をなす支持フレーム30の後方延出部位および該後方延出部位を覆う裏クッションC3に合わせて形成され、座部12から背もたれ部14および頭支持部16に対応する部分と転倒規制部26に対応する部分とに分岐している(図4参照)。カバー70には、小腿支持部22の裏面に略「コ」字状に延在する切れ目72が設けられ(図10)、この切れ目72がファスナー等の開閉具74により開閉可能に構成される。カバー70は、開閉具74で切れ目72を開放することで、フレームFおよびクッションC1〜C4に対して着脱可能に構成されると共に、図10に示すように、例えば小腿支持部22に対応する部分のみを裏返して、脚枕24の内面側を表に向けることができる。
前記脚枕24は、小腿支持部22の表面側に設けられ、小腿支持部22よりも柔軟に形成される。脚枕24は、チップウレタンやビーズなどの軟質発泡体からなる小片を、布等からなる柔軟な袋状体内に流動可能に封入した脚部クッション76を主体とし、この脚部クッション76をカバー70と小腿受体48との間に配設して構成される。脚枕24は、カバー70を表面側に押し上げるように小腿受体48の表面側に配設された脚部クッション76によって、左右方向に頂部が延在すると共に前後方向に裾が広がる略山形状に膨出形成される。すなわち、図3に示すように、脚枕24は、小腿支持部22および大腿支持部20を床面に沿って倒伏した姿勢において、大腿支持部20の表面よりも表面側(上方)に大きく膨らんでいる。脚枕24は、荷重をある程度支持しつつ沈み込むように比較的高反発弾性に設定された座部12等の他の部位と比べて、体圧分散性を優先して柔軟でかつ低反発弾性になるように構成される。ここで、カバー70における小腿支持部22の表面側に対応する部位には、裏張り部78が内面側に設けられ、小腿支持部22の表面側はカバー70と裏張り部78との二重構造になっている。そして、カバー70および裏張り部78の間に形成された収納部80に、脚部クッション76を収納して位置決め可能になっている。なお、カバー70は、小腿支持部22の表面側部位が脚枕24に合わせて縫製等により形成される。また、裏張り部78には、ファスナー等の留め具81によって開閉可能な開口部78aが設けられ、この開口部78aを介して脚部クッション76を収納部80に挿入したり、収納部80から出したりすることが可能になっている。そして、座椅子10は、図10に示すように、切れ目72で開いたカバー70を小腿受体48から外して裏返すことで、裏張り部78の開口部78aを表に向けることができ、この状態で開口部78aを介して脚部クッション76を収納部80に挿脱することができる。
前記頭枕18は、頭支持部16の表面側に設けられ、座部12や背もたれ部14などよりも柔軟に形成される。頭枕18は、チップウレタンやビーズなどの軟質発泡体からなる小片を、布等からなる柔軟な袋状体内に流動可能に封入して構成される。頭枕18は、布等の可撓性を有するシート材からなる取付片19を有し(図11参照)。取付片19の端部に設けた面ファスナー等の取付部19aを、頭支持部16の裏面に設けられた面ファスナー等の取付受部82に対して取り付ける。そして、頭枕18は、取付片19を、頭支持部16の端縁を介して表面側に回り込ませることで、表面側で保持される。頭枕18は、取付片19を取付受部82から外すことで取り外すことができると共に、取付受部82に取り付けたまま頭支持部16の裏面側に退避させることもできる。
〔実施例の作用〕
次に、実施例に係る座椅子10の作用について説明する。座椅子10は、座部フレーム28と、該座部フレーム28および背部フレーム32を連結する背部ヒンジH1との下側に支持フレーム30が延在しているので、座部12の下側を構成する裏クッションC3やカバー70などに対して、座部フレーム28の後端縁または背部フレーム32の前端縁や背部ヒンジH1からの荷重の付加を防止することができる。すなわち、座椅子10は、荷重を座部フレーム28を介して最終的に支持フレーム30で受ける構成であるから、角張っているフレーム28,32の端縁や背部ヒンジH1が裏クッションC3等に強く干渉することを回避し得る。特に座椅子10は、大腿支持部20を起立させると共に小腿支持部22を折り曲げた脚載せ姿勢で使用した際に、座部12の後端部に荷重が集中するが、支持フレーム30が背もたれ部14よりも後側に延出して転倒規制部26の骨格を構成しているので、荷重を適切に受け止めることができる。このように、前記座椅子10によれば、座部フレーム28または背部フレーム32や背部ヒンジH1の負荷に起因する裏クッションC3やカバー70の破損や床面の傷付けなどの不具合の発生を防止することができる。更に、転倒規制部26の骨格をなす支持フレーム30が、座部フレーム28および該座部フレーム28に背部ヒンジH1を介して支持された背部フレーム32の下側に延在しているので、背部フレーム32が支持フレーム30に邪魔されず、背もたれ部14をフラットに近い状態まで倒伏できる。
前記座椅子10は、座部フレーム28と、該座部フレーム28および大腿フレーム36を連結する大腿ヒンジH2との下側に支持フレーム30が延在しているので、座部12の下側を構成する裏クッションC3やカバー70などに対して、座部フレーム28の前端縁または大腿フレーム36の後端縁や大腿ヒンジH2からの荷重の付加を防止することができる。すなわち、座椅子10は、座部フレーム28または大腿フレーム36や大腿ヒンジH2の負荷に起因する裏クッションC3やカバー70の破損や床面の傷付けなどの不具合の発生を防止することができる。
前記座椅子10は、背もたれ部14を倒伏した際に、背もたれ部14と床面との間に、座部12の転倒規制部26を収容するために隙間が生じるが、倒伏姿勢の背もたれ部14を、座部12と背部フレーム32から裏面側に突出する頭部ヒンジH3との2箇所で支持させることで、背もたれ部14と床面との間に隙間があっても座椅子10の転倒を防止することができる。また、背もたれ部14を座部12の後側に倒伏した際に、背もたれ部14に連設された頭支持部16を床面に当接させることもできる。座椅子10は、大腿支持部20を座部12の前側に倒伏した際に、大腿支持部20に連設された小腿支持部22を床面に当接させるように角度調節できる。座部フレーム28が支持フレーム30の上側に配設されている都合上、座部フレーム28に設けられた大腿ヒンジH2を介して連結される大腿フレーム36に支持された大腿支持部20は、倒伏姿勢で床面から隙間があくことがある。しかし、座椅子10によれば、倒伏した姿勢にある大腿支持部20を、座部12と小腿支持部22の2箇所で支持し得るから、大腿支持部20と床面との間に隙間があっても座椅子10の転倒を防止することができる。
前記座部12に配設された支持材52は荷重を受けた際に、支持断面が比較的小さく形成された支持端部64から潰れるので、座部12に荷重をかけた初期段階で支持材52の圧縮に要する荷重を小さくすることができる。すなわち、座部12に荷重をかけた初期段階で、支持材52の反発力を小さくし得るので、簡単に沈み込む柔らかいクッション感をだすことができる。支持材52は、荷重を更に受けると、支持端部64の次に支持断面が小さい支持胴部62が潰れるから、初期段階から中期段階になっても圧縮に要する荷重の急激な上昇を抑えることができると共に、適切な荷重の支持感を出すことができる。しかも、支持胴部62は、支持断面が変化しないので、圧縮に要する荷重の変化がほぼ一定比率になり、座部12に荷重を加えた分だけ沈み込む好適なクッション感を出すことができる。そして、支持材52は、大きく荷重を受けた際に、支持断面が比較的大きく形成された支持基部60で支持するので、底付きを防止できる。このような支持材52が配設された座部12によれば、初期段階では柔らかく、中期段階では荷重に対して比例的に適度に圧縮し、圧縮が進行しても底づきしない、コイルスプリングのようなほどよいクッション感を得ることができる。しかも、支持材52は、発泡体から構成されているので、コイルスプリングよりも軽量で、コイルスプリングよりもへたり難い。なお、荷重と支持材52の圧縮との関係は、段階に応じて圧縮し易い部位を主に説明するものであり、支持材52全体において複合的に圧縮が生じている。
前記座椅子10は、座部12等と比べて低反発弾性に設定された脚枕24を小腿支持部22に備えているので、小腿支持部22に載せた使用者のふくらはぎを脚枕24によって柔らかく受け止めることができる。脚枕24は、チップウレタン等の小片を流動可能に封入して構成されているので、ふくらはぎに合わせて滑らかに形状が変わるので、体圧分散性に優れている。特に座椅子10は、大腿支持部20を起立させると共に小腿支持部22を折り曲げた脚載せ姿勢で使用した際に、体圧分散性に優れた脚枕24でふくらぎを受け止めることで、ふくらはぎを上げることによるリラックス効果を向上し得ると共に、ふくらはぎを上げることによる使用者の負担を軽減し得る。脚枕24を構成する脚部クッション76が収納部80に対して挿脱可能であるから、例えば、異なる硬さの脚部クッション76を配設するなど、使用者の好みに合わせて使用態様の幅を広げることができる。
前記座椅子10は、座部12等と比べて低反発弾性に設定された頭枕18を頭支持部16に備えているので、使用者の頭部を頭枕18によって柔らかく受け止めることができる。頭枕18は、頭支持部16に対して着脱可能に構成されているので、必要に応じて取り付けたりまたは取り外すことで、使用者の好みに合わせて使用態様の幅を広げることができる。
(変更例)
前述した構成に限定されず、以下のように変更することも可能である。
(1)背もたれ部、頭支持部、大腿支持部および小腿支持部は、段階的に角度調節できる構成ではなく、任意の位置で止めることができる無段階調節であってもよい。
(2)クッションは、実施例の構成に限定されず、スラブ発泡のウレタンフォームで全体を構成したり、全体を再生ウレタンで構成するなど、適宜変更可能である。