JP3175589B2 - 鉄系鋳造品の被覆材料およびそれによる被覆層を備えた鉄系鋳造品およびその被覆層の形成方法 - Google Patents

鉄系鋳造品の被覆材料およびそれによる被覆層を備えた鉄系鋳造品およびその被覆層の形成方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、鉄系鋳造品の被覆
材料、この被覆材料で形成した被覆層を備えた鉄系鋳造
品、およびこの被覆層の形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】鉄系鋳造品は、高温用途に用いる場合に
は、断熱性や耐酸化性を向上させるために、表面に断熱
被覆層を形成することが知られている。この被覆層とし
ては、断熱性に優れたセラミックスを主体としたものが
種々提案されている。しかし、被覆層のセラミックスと
母材の金属とは熱膨張係数に差があるため、母材と被覆
層との接合強度が十分に得られない場合が多い。
【0003】母材と被覆層との接合強度を向上させるた
めに、本発明者らは特開平7−150368号公報にお
いて、Feを主体としCr,Zr,Ti,Si,Mn,
Nb,およびVの少なくとも1種の金属を混合した粉末
を焼結し、これらの金属の酸化物により焼結層内の空孔
を封止する技術を提案した。これにより、鉄系鋳造品の
断熱性および耐酸化性については所期の効果が得られ
る。
【0004】しかし、鉄系鋳造品が顕著な成長現象を示
す材質、典型的にはフェライト系鋳鉄などの場合には、
成長現象に起因する問題が残されていた。すなわち、A
1 点以上の温度での使用を継続すると母材が成長し、セ
メンタイト中のCが黒鉛化し、黒鉛とマトリクスとの間
の熱膨張の差による空隙の発生等に起因して体積変化が
起こる。その結果、鉄系鋳造品に寸法変化が生じたり、
割れが発生したりするという問題があった。
【0005】更に、被覆層をフェライト系鋳鉄などの鉄
系鋳造品に適用する際に、塗布・乾燥したままの塗膜
(グリーン膜)の焼成中に母材の組織が変化し、それに
より母材の熱疲労強度や衝撃値等の機械強度が低下する
ことがあるという問題があった。また、被覆層と母材と
の接合強度を更に向上させたいという要請もあった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、鉄系鋳造品
の被覆層において、上記従来の技術による断熱性および
耐酸化性を確保した上で、更に母材の成長を抑止できる
被覆材料およびそれで形成した被覆層を提供するするこ
とを目的とする。本発明は更に、塗膜焼成中の母材の組
織変化とそれによる機械強度の低下とを防止できる被覆
層の形成方法を提供することを目的とする。
【0007】本発明はまた、被覆層と母材との接合強度
を更に向上し得る被覆層の形成方法を提供することを目
的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記の目的は、本願第一
本発明によれば、鉄系鋳造品の酸化および成長を抑止す
被覆層を形成するための被覆材料であって、下記の第
1,第2,および第3の粉末:主成分としてのFeと、
Ni,Ti,およびAlのうちから選択される少なくと
も一種の耐酸化性元素とから成る第1の粉末を10〜9
0重量%、酸化物を形成して被覆層内の空孔を封止する
Cr,Zr,Ti,Si,Mn,Nb,およびVのうち
から選択される少なくとも1種の封孔元素から成る第2
の粉末を5〜30重量%、および母材中の過飽和炭素と
結合して安定な炭化物として固定し母材の成長を抑止す
るB,Co,Al,Ca,Mo,Ta,およびHfのう
ちから選択される炭化物形成元素から成る第3の粉末を
5〜20重量%、を含むことを特徴とする鉄系鋳造品の
被覆材料によって達成される。
【0009】第一発明においては、第1および第2の粉
末により特開平7−150368号公報に開示した技術
による被覆層/母材界面の接合強度が確保され、更に第
3の粉末により母材の成長が抑止される。B,Co,A
l,Ca,Mo,Ta,およびHfのうちから選択され
る炭化物形成元素は、塗膜の熱処理中および高温での使
用中に上記B等の炭化物形成元素が被覆層から母材中に
拡散浸透し、母材を高温で使用中にセメンタイトが分解
して生ずる過飽和の炭素を安定な炭化物にして固定す
る。これにより母材の黒鉛化が防止され、成長が抑止さ
れる。また、炭化物形成元素の拡散浸透により母材の表
面近傍のみを高硬度化でき、また母材表面の内部応力を
圧縮応力とすることができるので、母材の熱疲労強度が
向上する。炭化物形成元素のうち特にBは、Fe中での
拡散速度がCの4.6倍と非常に大きいので、母材中へ
拡散浸透して炭化物を形成する上で最も有利である。
【0010】Feと耐酸化性元素(Ni,Ti,Alか
ら選択)とから成る第1粉末の量を10〜90重量%に
限定したのは、耐酸化性の効果を得るには10重量%以
上必要であり、第2,第3の粉末を有効量存在させる配
合バランス上から90重量%以下とすべきだからであ
る。封孔元素(Cr,Zr,Ti,Si,Mn,Nb,
Vから選択)から成る第2粉末の量を5〜30重量%に
限定したのは、焼結した被覆層内の空孔を封止するのに
必要な量の酸化物を生成するには5重量%以上が必要で
あり、第1,第3の粉末を有効量存在させる配合バラン
ス上から30重量%以下とすべきだからである。
【0011】炭化物形成元素(B,Co,Al,Ca,
Mo,Ta,Hfから選択)から成る第3の粉末の量を
5〜20重量%に限定したのは、セメンタイトの分解で
生ずる過飽和の炭素を炭化物として固定するのに5重量
%以上が必要であり、20重量%を超えると焼結性が悪
くなり、良好な被覆層を安定して形成できないからであ
る。
【0012】第一発明の望ましい態様においては、被覆
層の上に更に耐酸化層を備えることにより、塗膜の焼成
中および高温での使用中に被覆層中の炭化物形成元素の
酸化を防止し、炭化物形成元素の母材中への拡散浸透に
よる上記の効果をより安定して得られるようにする。上
記の目的は、本願第二発明によれば、第一発明の被覆材
料で鉄系鋳造品の表面に被覆層を形成する方法であっ
て、該被覆材料のスラリーを鉄系鋳造品の表面に塗布し
乾燥した後、非酸化性雰囲気中で900℃以上で3時間
以上加熱し、次いで酸化性雰囲気中で900℃以下で3
時間以上加熱することを特徴とする被覆層の形成方法に
よって達成される。
【0013】非酸化性雰囲気中での加熱により被覆層を
焼結させた後、酸化性雰囲気での加熱により封孔金属を
酸化させて焼結層内の空孔を封止する。非酸化性雰囲気
での熱処理を900℃以上で3時間以上行うのは、拡散
接合により母材との接合強度を確保するために必要だか
らである。温度・時間共に上限は限定する必要はなく、
被覆材料主材の溶融防止等を考慮して適宜決定できる。
【0014】酸化性雰囲気での熱処理を900℃以下で
3時間以上行うのは、焼結により形成した被覆層を余分
に焼成せず且つ封孔に必要な酸化を効率的に進行させる
のに必要だからである。なお、上記各加熱中には、炭化
物形成元素の一部が母材中へ拡散浸透する。本願第三発
明においては、第二発明における酸化性雰囲気中での加
熱により封孔を行った後に、鉄系鋳造品のA1 点以下に
まで不活性ガスで冷却する。これにより母材を空冷し、
変態時に過飽和の炭素を黒鉛とはせずにパーライトとし
て析出させ、黒鉛析出による機械強度の劣化を防止し、
良好な機械強度を確保する。過飽和炭素をパーライトと
して析出させるために、不活性ガスでの冷却を5〜50
℃/分の冷却速度で行うことが望ましい。不活性ガスを
用いるのは、既に所定の性状を備えて形成されている被
覆層の不要な酸化を防止するためである。
【0015】本願第四発明においては、第二発明におけ
る鉄系鋳造品のA1 点以下にまで冷却した後、A1 点直
下で30〜120分保持する。これにより、パーライト
中のセメンタイトを微細球状化し、特に母材の靱性を高
める。本願第五発明においては、第一発明の被覆材料で
鉄系鋳造品の表面に被覆層を形成する際に転写法を用
い、具体的には鉄系鋳造品の形状を有する鋳型キャビテ
ィーの壁面に該被覆材料を塗布し乾燥した後、該鉄系鋳
造品の母材溶湯を鋳型内に注湯して鋳造を行う。転写法
を用いることにより、被覆材料中の封孔金属が溶湯と反
応して母材金属と合金化するため、鋳造後に塗布・焼成
により被覆層を形成する場合のように焼結層(被覆層)
内に空孔は発生しない。また、封孔金属が母材金属との
合金化により鋳造品の表面に均一に分布した状態となる
ので、この上に断熱層を形成する場合に接合強度を向上
させることができる。
【0016】本願第六発明においては、第一発明の被覆
材料において、主成分としてのFeと、Ni,Ti,お
よびAlのうちから選択される少なくとも一種の耐酸化
性元素とから成る第1の粉末がNiを50重量%以上含
有する。これにより、被覆層と母材との間の濃度勾配が
大きくなるため、拡散反応が促進され接合強度が向上す
る。
【0017】
【発明の実施の形態】以下に、実施例により本発明を更
に詳細に説明する。 〔実施例1〕表1に示す3種類のスラリー1,2,2’
を調製した。スラリー1は比較例であり、従来と同じく
炭化物形成元素を添加していない。スラリー2およびス
ラリー2' は本発明により炭化物形成元素としてそれぞ
れBおよびCoを添加したものである。
【0018】表1中の組成に従って各粉末を秤量し、ナ
イロンボールミルにて3時間混合した。得られた混合粉
末に蒸留水を加えて攪拌し、粘度を1000〜4000
cpsのスラリーに調製した。母材としてJIS−FC
DA1を用い、ディップ法により膜厚が100μm程度
になるように塗布した後、表2に示した成膜法3により
焼成を行い被覆層を形成した。
【0019】上記スラリー1,2,2’によりそれぞれ
被覆層を形成した母材を大気中で700℃に保持した際
の保持時間と母材の成長率の関係を図1に示す。図1か
ら分かるように、従来と同じく炭化物形成元素を添加し
ないスラリー1により被覆層を形成した場合には、保持
時間に対して顕著な成長が認められ、50時間の保持に
より1.25%の成長が認められた。
【0020】これに対し、本発明により炭化物形成元素
を添加したスラリー2,2’により被覆層を形成した場
合には、母材の成長が抑止されており、炭化物形成元素
による成長抑止効果が明らかに認められる。特に炭化物
形成元素としてBを添加した場合には成長がほとんど認
められず、成長抑止効果が大きいことが分かる。また、
炭化物形成元素としてCoを添加した場合でも、50時
間保持の成長率が0.5%であり、炭化物形成元素を添
加しない従来の場合に比べて成長率が40%にまで抑止
されている。
【0021】〔実施例2〕母材としては実施例1と同じ
くJIS−FCDA1を用い、図2に示したように実施
例1のスラリー2による塗膜(第1層)の上に、更にス
ラリー1による耐酸化層用塗膜(第2層)を形成して2
層構造の塗膜とした。塗布方法および塗膜厚さは実施例
1と同様とした。その後、実施例1と同じく表2の成膜
法3により2層構造の被覆層を形成した。
【0022】図3に、成膜後の第1層近傍の母材内のB
分布をエネルギー分散型X線分析装置(EDS)により
測定した結果を示す。図3中には、比較のためにスラリ
ー2による第1層のみの場合の測定結果も併せて示して
ある。図3の結果から、耐酸化層として第2層を形成し
2層構造の被覆層とすることにより、第1層中のBの酸
化による消耗が抑制されるため、1層のみの被覆層の場
合よりも母材中へのBの拡散浸透深さが増加しており、
母材の成長抑止に対するBの効果が向上することが分か
る。
【0023】〔実施例3〕母材としては実施例1と同じ
くJIS−FCDA1を用い、実施例2と同じく図2に
示したようにスラリー2による塗膜(第1層)の上に、
更にスラリー1による耐酸化層用塗膜(第2層)を形成
して2層構造の塗膜とした。塗布方法および塗膜厚さは
実施例1と同様とした。その後、表2に示した成膜法
1,2,3の3種類の成膜法を用い2層構造の被覆層を
形成した。
【0024】上記3種類の被覆層を形成した試料と、比
較用の被覆層なしの試料について、エフィン型熱疲労試
験を行った。試験条件は、最低温度は200℃(一
定)、最高加熱温度を700℃および900℃の2水準
とした。試験機剛性は4t/mmであった。図4に、熱
疲労試験結果を示す。同図から分かるように、成膜法3
により図2の2層構造被覆層を形成した試料が最も良好
な熱疲労強度を示した。成膜法3は、非酸化性雰囲気と
してAr気流中での第1段階の焼成を行った後に、酸化
性雰囲気として大気中での第2段階の焼成を行ったもの
である。その際、大気中で行った第2段階の焼成により
耐酸化層である第2層内の封孔が進行し、第1層中のB
の酸化が抑止されると共に、COやCO2 等の炭素を含
有する気体の分圧が上昇し母材からのCの脱離およびこ
の脱離炭素によるBの炭化が抑止される。すなわち、第
1層中のBが酸化および炭化により消費されずに高いB
量が確保され、高温での使用時に母材中に拡散浸透して
炭素を固定するBの効果が高レベルで確保され、熱疲労
強度が著しく向上する。
【0025】〔実施例4〕母材としては実施例1と同じ
くJIS−FCDA1を用い、実施例2と同じく図2に
示したようにスラリー2による塗膜(第1層)の上に、
更にスラリー1による耐酸化層用塗膜(第2層)を形成
して2層構造の塗膜とした。塗布方法および塗膜厚さは
実施例1と同様とした。その後、実施例1と同じく表2
の成膜法3により行い2層構造の被覆層を形成した。た
だし、成膜法3の第2段階(大気中焼成)に続いて、表
3の熱処理1または熱処理2を加えた。熱処理1の窒素
ガス冷却は、母材JIS−FCDA1のA1 点である7
38℃より低い720℃まで行い、熱処理2は同じくA
1 点より低い700℃での保持を行った。
【0026】図5に、上記により得られた試料の硬さお
よび衝撃値を示す。同図には、比較のために表2の成膜
法3のみを行い表3の熱処理を行わなかった試料の結果
も併せて示す。同図に示したように、成膜法3のみを行
い熱処理を行わなかった場合には、成膜処理する前の母
材(生材)に対して硬さおよび靱性が共に低下している
が、熱処理1を加えた場合には硬さが、また熱処理2を
加えた場合には硬さおよび靱性が共に、生材と同等に回
復または生材よりも向上している。
【0027】図6(a)および(b)に、(a)熱処理
1を施した試料および(b)熱処理2を施した試料のミ
クロ組織を示す。熱処理1によりパーライトが網目状に
析出し(同図(a))、このパーライトが更に熱処理2
により微細球状化している(同図(b))。このよう
に、焼成を非酸化性雰囲気中での第1段階と酸化性雰囲
気での第2段階との2段階焼成とし、且つ第2段階焼成
温度から不活性ガスにより母材のA1点以下の温度にま
で冷却することにより、あるいはこの冷却後更にA1
以下の温度で保持することにより、耐熱性と耐熱疲労性
に加えて耐摩耗性および/または靱性が特に要求される
部材に対して、本発明の被覆層を有利に適用することが
できる。
【0028】〔実施例5〕母材としては実施例1と同じ
くJIS−FCDA1を用い、実施例2と同じく図2に
示したようにスラリー2による塗膜(第1層)の上に、
更にスラリー1による耐酸化層用塗膜(第2層)を形成
して2層構造の塗膜とした。塗布方法および塗膜厚さは
実施例1と同様とした。その後、実施例1と同じく表2
の成膜法3により2層構造の耐酸化・成長抑止被覆層を
形成した。
【0029】更に、上記の2層構造の上に、断熱層を形
成し、試料Aとした。断熱層の組成、スラリー形成法、
塗布方法、塗膜厚さ、成膜法は下記のとおりであった。
表4に示した配合比(重量比)で断熱層用スラリーを形
成した。同表中に示したように、Fe2 3 粉末(粒子
径2μmおよび20〜40μm)とCr粉末との合計を
100としたとき、これに対してZrO2 多孔質球(粒
径50μm)が30.7、バインダーが100の配合比
である。なお、断熱層のCr含有量を4水準に変化させ
た。これは、同表に示したように、Fe2 3 粉末とC
r粉末との合計配合比は100に固定し、その中でCr
配合比率を4水準に変化させることにより行った。
【0030】表4の配合比により、Fe2 3 粉末(粒
子径20〜40μm)に、同じくFe2 3 粉末(粒子
径2μm)、Cr粉末、およびバインダーを加えて、ボ
ールミル中で1時間混合した後、ZrO2 多孔質球を加
えて更に攪拌、混合、脱泡を行ってスラリーとした。こ
のスラリーを刷毛塗り、ディップコート等により母材に
塗布後、80〜100℃×1時間加熱+300℃×1時
間加熱を行う、塗布・加熱サイクルを繰り返して、厚さ
1mmの断熱層を形成した。
【0031】これとは別に、転写法により被覆層を形成
するために、鋳造用金型のキャビティー壁面に図2に示
したスラリー2による塗膜第1層とスラリー1による塗
膜第2層とを塗布・乾燥した。塗布はフローコート法に
より行い、塗膜厚さは実施例1と同様とした。この金型
内に母材JIS−FCDA1の溶湯を注湯して鋳造を行
った。これにより表面に図2に示した2層構造の耐酸化
・成長抑止被覆層を備えた鋳物が得られた。
【0032】この2層構造の上に、前記の試料Aと同様
に断熱層を形成し、試料Bとした。鋳造後に2層構造の
耐酸化・成長抑止被覆層を形成し更にその上に断熱層を
形成した試料Aと、転写法により鋳造時に2層構造の耐
酸化・成長抑止被覆層を形成し更にその上に断熱層を形
成した試料Bについて、2層構造の耐酸化・成長抑止被
覆層と断熱層と間の接合強度を図8に示す。
【0033】図8に示したように、試料Bの接合強度が
試料Aに比べて約2倍に向上していることが分かる。こ
れは、転写法による試料Bにおいて、封孔金属としての
Crと母材金属(溶湯)とが鋳造時に合金化したことに
より鋳造品の表面に均一に分散した状態になり、酸化に
より耐酸化・成長抑止被覆層の表面にCr2 3 が均一
に生成し、断熱層との接合点が増加したためであると考
えられる。
【0034】更に、断熱層中のCr含有量の増加に伴い
2層構造/断熱層間接合強度が増加するのも、両者間の
接合点となるCr2 3 が増加するためであると考えら
れる。 〔実施例6〕母材としてJIS−SCH21M1(高N
i耐熱鋳鋼)を用い、この表面に実施例1と同じくスラ
リー2(Fe−Ni50wt%合金粉末使用)による被覆
層を形成した試料と、表1のスラリー3(Ni粉末使
用)による被覆層を形成した試料とを作成した。スラリ
ー塗布方法、塗膜厚さ、成膜法は実施例1と同様とし
た。
【0035】被覆層/母材間接合強度を測定した結果、
スラリー2による被覆層は3MPaと低かったのに対
し、スラリー3による被覆層は52MPaと著しく向上
していた。更に、表1のスラリー3の成分のうちNi粉
末の代わりに、Ni濃度が65wt%および80wt%であ
る2種類のFe−Ni合金粉末を用い、他の成分はスラ
リー3と同様とした2種類のスラリーを準備し、上記と
同様に被覆層を形成した試料を作成し、被覆層/母材間
接合強度を測定した。
【0036】図9に、Fe−Ni合金粉末中のNi濃度
(Ni粉末の場合は濃度100wt%)と被覆層/母材間
接合強度との関係を示す。実験に用いたNi濃度50wt
%以上の全てのNi濃度範囲について、Ni濃度の増加
に伴い接合強度が向上することが分かる。実際の用途と
して自動車用鋳鉄製エキゾーストマニホールドに適用す
る場合を想定すると、実機適用に必要な接合強度の下限
は20MPaである。図9から、この下限強度を確保す
るにはNi濃度を約70wt%以上とする必要があること
が分かる。
【0037】図10に、被覆層/母材界面周辺のNiお
よびFeの濃度分布をエネルギー分散型X線分析装置
(EDS)により測定した結果を示す。横軸は界面を垂
直に貫通する直線に沿った距離を示し、横座標0が界
面、その左側(−側)が被覆層、右側(+側)が母材に
対応する。縦軸はEDS計数値で表した濃度を示し、測
定値は被覆層材料中および母材中のNiおよびFeの初
期濃度を基準として標準化してある。
【0038】図10中の細い実線と細い破線が、スラリ
ー2による試料のNiとFeの濃度分布をそれぞれ示
し、図10中の太い実線と太い破線が、スラリー3によ
る試料のNiとFeの濃度分布をそれぞれ示す。図10
に示したように、Fe−Ni50wt%合金粉末を用いた
スラリー2により被覆層形成した試料は、界面両側の極
めて狭い帯域でのみ被覆層/母材間でのNiおよびFe
の拡散が認められるに過ぎない。
【0039】これに対し、上記合金粉末に代えてNi粉
末を用いたスラリー3により被覆層形成した試料は、被
覆層・母材間でのNiおよびFeの拡散が界面を透して
相互に深く進行していることが分かる。このように、被
覆層中のNi濃度が高いと、被覆層/母材間のNi,F
eの濃度勾配が大きくなり、相互間での拡散が促進され
る。その結果、前記のようにスラリー2よりもスラリー
3を用いた被覆層の方が接合強度が顕著に向上し、また
先に図9で示したように、被覆材料中Ni濃度の増加に
伴い被覆層/母材間接合強度が顕著に向上する。
【0040】したがって、本実施例のように母材が高N
i組成の場合には、被覆材料中のNi濃度を高くするこ
とにより、接合強度を向上させることが望ましい。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
【表3】
【0044】
【表4】
【0045】
【発明の効果】以上説明したように、本発明による鉄系
鋳造品の被覆層とそのための被覆材料により、断熱性お
よび耐酸化性を従来と同等に確保した上で、母材の成長
を抑止できる。更に、塗膜焼成中の母材の組織変化とそ
れによる機械強度の低下とを防止できる。また、被覆層
と母材との接合強度を更に向上し得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、種々の組成のスラリーにより被覆層を
形成した鋳鉄を700℃の大気中に保持したときの保持
時間と成長率の関係を示すグラフである。
【図2】図2は、本発明による被覆層の上の更に耐酸化
層を形成した2層構造の被覆層を模式的に示す断面図で
ある。
【図3】図3は、本発明による被覆層のみ、およびその
上に更に図2のように耐酸化層を形成した場合につい
て、被覆層/母材界面から母材中へのBの拡散状態を比
較して示すグラフである。
【図4】図4は、種々の処理条件で塗膜を焼成して被覆
層を形成した場合について、熱疲労特性を示すグラフで
ある。
【図5】図5は、塗膜の最終焼成温度からA1 点以下に
まで窒素ガスで冷却する熱処理および窒素ガス冷却後更
にA1 点以下で保持する熱処理をそれぞれ行った場合の
母材の硬さと衝撃値を、これらの熱処理を行わなかった
場合と比較して示すグラフである。
【図6】図6は、(a)塗膜の最終焼成温度からA1
以下にまで窒素ガス冷却する熱処理を行った場合および
(b)窒素ガス冷却後更にA1 点以下で保持する熱処理
を行った場合について、母材のミクロ組織を示す光学顕
微鏡写真である。
【図7】図7は、本発明により転写法を用いて被覆層を
形成する方法を模式的に示す断面図である。
【図8】図8は、本発明により図2のように2層構造の
被覆層を形成し、更にその上に断熱層を形成した場合の
接合強度と断熱層のCr含有量との関係を、鋳造後に被
覆層を形成した場合と鋳造中に転写法により形成した場
合とを比較して示すグラフである。
【図9】図9は、高Ni耐熱鋳鋼に被覆層を形成した場
合の接合強度と、被覆材料のNi濃度との関係を示すグ
ラフである。
【図10】図10は、高Ni耐熱鋳鋼を母材とし、Fe
−Ni合金粉末を用いた被覆材料で本発明の被覆層を形
成した場合と、この合金粉末に代えてNi粉末を用いた
被覆材料で本発明の被覆層を形成した場合について、被
覆層/母材界面付近のNiとFeの濃度分布を示すグラ
フである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C23C 24/08 C23C 30/00

Claims (9)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鉄系鋳造品の酸化および成長を抑止する
    被覆層を形成するための被覆材料であって、 下記の第1,第2,および第3の粉末: 主成分としてのFeと、Ni,Ti,およびAlのうち
    から選択される少なくとも一種の耐酸化性元素とから成
    る第1の粉末を10〜90重量%、 酸化物を形成して被覆層内の空孔を封止するCr,Z
    r,Ti,Si,Mn,Nb,およびVのうちから選択
    される少なくとも1種の封孔元素から成る第2の粉末を
    5〜30重量%、および母材中の過飽和炭素と結合して
    安定な炭化物として固定し母材の成長を抑止するB,C
    o,Al,Ca,Mo,Ta,およびHfのうちから選
    択される炭化物形成元素から成る第3の粉末を5〜20
    重量%、 を含むことを特徴とする鉄系鋳造品の被覆材料。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の被覆材料を塗布し焼成し
    て形成された被覆層を表面に備えた鉄系鋳造品。
  3. 【請求項3】 請求項2記載の被覆層の上に更に耐酸化
    層を備えた鉄系鋳造品。
  4. 【請求項4】 請求項1記載の被覆材料で鉄系鋳造品の
    表面に被覆層を形成する方法であって、 該被覆材料のスラリーを鉄系鋳造品の表面に塗布し乾燥
    した後、非酸化性雰囲気中で900℃以上で3時間以上
    加熱し、次いで酸化性雰囲気中で900℃以下で3時間
    以上加熱することを特徴とする被覆層の形成方法。
  5. 【請求項5】 請求項4記載の方法において、前記酸化
    性雰囲気中での加熱した後に、該鉄系鋳造品のA1 点以
    下にまで不活性ガスで冷却することを特徴とする被覆層
    の形成方法。
  6. 【請求項6】 請求項5記載の方法において、前記不活
    性ガスでの冷却を5〜50℃/分の冷却速度で行うこと
    を特徴とする被覆層の形成方法。
  7. 【請求項7】 請求項5記載の方法において、該鉄系鋳
    造品のA1 点以下にまで冷却した後、A1 点直下で30
    〜120分保持することを特徴とする被覆層の形成方
    法。
  8. 【請求項8】 転写法により請求項1記載の被覆材料で
    鉄系鋳造品の表面に被覆層を形成する方法であって、 該鉄系鋳造品の形状を有する鋳型キャビティーの壁面に
    該被覆材料を塗布し乾燥した後、該鉄系鋳造品の母材溶
    湯を鋳型内に注湯して鋳造を行うことを特徴とする転写
    法による被覆層の形成方法。
  9. 【請求項9】 請求項1記載の被覆材料において、前記
    主成分としてのFeと、Ni,Ti,およびAlのうち
    から選択される少なくとも一種の耐酸化性元素とから成
    る第1の粉末が、Niを50重量%以上含有することを
    特徴とするNi含有鉄系鋳造品用被覆材料。
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