JP3167495B2 - スキャナーシステム、及びそれを具備した走査型プローブ顕微鏡 - Google Patents

スキャナーシステム、及びそれを具備した走査型プローブ顕微鏡

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JP3167495B2 JP06635993A JP6635993A JP3167495B2 JP 3167495 B2 JP3167495 B2 JP 3167495B2 JP 06635993 A JP06635993 A JP 06635993A JP 6635993 A JP6635993 A JP 6635993A JP 3167495 B2 JP3167495 B2 JP 3167495B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、走査型プローブ顕微鏡
において走査手段として使用するスキャナーシステムに
関する。
【0002】
【従来の技術】原子レベルの高い縦横方向分解能を有す
る表面検査装置として走査型プローブ顕微鏡(SPM)
が提案されている。SPMとしては、走査型トンネル顕
微鏡(STM)と原子間力顕微鏡(AFM)がよく知ら
れており、AFMは絶縁体や半導体のパターン検査装置
としても使用できることから近年とくに注目されてい
る。
【0003】一般にSPMでは、その走査手段には移動
量を高精度に制御できる圧電体スキャナーを用いてい
る。圧電体スキャナーは、基本的に圧電体とその表面に
設けた電極とで構成され、電極に印加する電圧を制御す
ることによりnmオーダーで変位を制御することができ
る。圧電体スキャナーの中でも、円筒形状の圧電体を使
用したチューブスキャナーと呼ばれるものは、円筒形状
であることから剛性が高く、最近では圧電体スキャナー
の主流になっている。次にこのチューブスキャナーにつ
いて図面を参照しつつ説明する。
【0004】チューブスキャナー12は、図4に示すよ
うに、円筒形状の圧電体セラミックス14と、その内周
面に設けた共通電極16と、外周面に設けた四つの駆動
電極22、24、26、28とを有している。チューブ
スキャナー12のXY方向への駆動は、対向した二つの
電極22と24あるいは26と28には絶対値の等しい
逆極性の電圧を印加して行ない、その移動量(変位)は
印加電圧に基づく推定により算出している。例えば、共
通電極16を0電位に保ち、駆動電極22に+φ(例え
ば+100V)、駆動電極に−φ(例えば−100V)
を印加する。すると、駆動電極22の側の圧電体は伸
び、駆動電極24の側の圧電体は縮むため、その上端部
(SPMではここに試料台を取り付ける)が矢印aの方
向に変位する。このようなチューブスキャナー12で
は、共通電極16と四つの駆動電極22、24、26、
28に印加する電圧の比を適当に変えることにより、上
端部を三次元的に移動させることができる。これによ
り、SPMにおいてプローブと試料の間で所望の走査が
行なえるようになる。
【0005】チューブスキャナーとその周辺回路とから
なるスキャナーシステムは、チューブスキャナーとその
駆動回路とで開ループを構成する場合と、これにチュー
ブスキャナーの変位センサーを付加して閉ループを構成
する場合とがある。開ループの場合、構成が簡単なため
比較的安価にスキャナーシステムを構成できるという利
点がある。閉ループの場合、圧電体のヒステリシス等の
影響を除去できるため、高精度の走査を行なえるという
利点がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】一般にチューブスキャ
ナー12の圧電体14は、図4(B)に示すように、厚
さが均一でなく、場所によるばらつきがある。このよう
なばらつきは製造上避けられないもので、現在入手でき
るチューブスキャナーでは5%程度のばらつきがあるの
が普通である。このような圧電体14の厚さの不均一は
移動量(変位)の誤差の原因となる。例えば、共通電極
16を0電位とし、四つの駆動電極22、24、26、
28に同じ電圧ψ(例えば+100V)に印加した場
合、駆動電極22の側と駆動電極24の側では圧電体1
4の内部に発生する電界の大きさが異なり、伸びる量が
異なってしまう。つまり、圧電体14の厚さが理想的に
均一であればまっすぐ伸びるべきところが、厚さがばら
つきがあるためにまっすく伸びずに横方向(XY方向)
の変位成分を含んでしまい、不所望な変位となってしま
う。この現象は、図5において、圧電体14のヒステリ
シスが、電極22の側ではd+のようになっているが、
電極24の側ではd−のようになっているためであると
説明することができる。
【0007】このように円筒形状の圧電体に厚さのばら
つきは、場所による圧電体の伸縮量の不均一を引き起こ
し、チューブスキャナーの特性のばらつきの原因とな
る。このようなチューブスキャナーの特性のばらつき
は、高精度の位置制御が要求されるSPMにとっては極
めて好ましくない。
【0008】ところで、特願平4−222902に記載
のスキャナーのXY方向の変位測定用のセンサーを用い
てチューブスキャナーを閉ループ回路で駆動する場合、
xy方向に関してフィードバック制御が行なわれるた
め、チューブスキャナーの特性にばらつきがあってもx
y方向の変位はよい精度で定められる。チューブスキャ
ナーでは円筒状の圧電体が反ることで変位が生じるた
め、xy方向に正方形に走査した場合、チューブスキャ
ナー上のある点の軌跡は理想的なチューブスキャナーで
あっても実際には球面となり、z方向の動きが伴う。更
に実際のチューブスキャナーでは、特性のばらつきのた
め球面が歪んでしまう。従って、この閉ループ回路によ
る駆動では、瞬間瞬間のxy座標値は正しいが、z座標
値は理想値とは異なったものになっている。
【0009】このような現象は、xyz方向のいずれの
方向にも高い精度での測定が可能であるとされているS
PMでは、z方向での定量性を確保する上で甚だ好まし
くない。本発明は、円筒状圧電体の厚さのばらつきに起
因する動作誤差のないスキャナーシステムを提供するこ
とにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明のスキャナーシス
テムは、円筒形状の圧電体、その内周面に設けた一つの
共通電極、外周面に設けた複数の駆動電極で構成される
チューブスキャナーと、チューブスキャナーの複数の駆
動電極にその特性に応じた互いに独立な走査信号を供給
する手段とを備えている。
【0011】
【作用】本発明では、チューブスキャナーの各駆動電極
の部分の特性を予め調べておいて、その特性に応じて、
それぞれの部分の特性が揃うような互いに独立した走査
信号を各駆動電極に供給する。つまり、各駆動電極に
は、その部分の圧電体の厚さのばらつき等による影響を
予め考慮した走査信号が供給される。従って、チューブ
アクチュエーターは、特性のばらつきの影響を含んでい
ない動作をする。
【0012】
【実施例】次に図面を参照しながら本発明の第一実施例
について説明する。本実施例のスキャナーシステムは、
図1に示すように、固定台52に固定したチューブスキ
ャナー12と、四つの走査信号発生回路32、34、3
6、38と、各走査信号発生回路32、34、36、3
8からの信号を増幅する高圧アンプ42、44、46、
48とを有している。チューブスキャナー12は、図4
に示したように、円筒形状の圧電体14と、その内周面
に設けた共通電極16と、外周面に設けた四つの駆動電
極22、24、26、28とを有している。駆動電極2
2、24、26、28には、それぞれ高圧アンプ42、
44、46、48から走査信号が供給される。
【0013】 チューブスキャナー12の特性検査を予
め行い、駆動電極22、24、26、28の各部分につ
いて印加電圧と変位の関係を調べておく。走査信号発生
回路32、34、36、38は、この検査結果に基づい
て、それぞれの電極22、24、26、28の部分の動
作特性が揃うような走査信号を出力する。この走査信号
は高圧アンプ42、44、46、48を介して増幅され
た後、チューブスキャナー12の駆動電極22、24、
26、28に供給される。
【0014】これによりチューブスキャナー12は、そ
の変位に駆動電極22、24、26、28の各部分の特
性のばらつきによる誤差を含まない理想的な動作を行な
うようになる。
【0015】本実施例では、走査信号発生回路は四系統
用意したが、x方向とy方向の二系統にまとめ、それぞ
れから出力される信号を反転増幅および非反転増幅する
ことにより、四つの走査信号を得てもよい。ただし、こ
の場合はチューブスキャナー12の各駆動電極22、2
4、26、28の部分の特性に合わせるため、高圧アン
プ42、44、46、48のゲイン調整をそれぞれに対
して行なう必要がある。さらに、理想的な駆動を実現す
るためには、調整の自由度を上げるため、駆動電極の数
を四つから八つに増やすことも有効である。
【0016】続いて、本発明の第二実施例について図2
を参照しつつ説明する。本実施例のスキャナーシステム
は、上述した第一実施例の構成に加えて、走査信号発生
回路32、34、36、38を制御するコンピューター
58が設けられている。また、チューブスキャナー12
は固定台52とその内部に設けたROM54と共に一体
化されていて、一つのユニットを構成している。ROM
54には、そのユニットのチューブスキャナー12の各
駆動電極22、24、26、28の部分の特性情報が書
き込まれており、この特性情報をコンピューターへと取
り出すためのコネクタ56が設けられている。
【0017】SPM装置においてはチューブスキャナー
12の交換はユニットごと行なわれる。新しいユニット
を所定位置に配置した後、ユニット内のROM54はコ
ネクタ56を介してコンピューター58に接続する。コ
ンピューター58はROM56に書き込まれている情報
を読み込んで演算を行ない、チューブスキャナー12の
各駆動電極22、24、26、28の部分の特性に合っ
た走査信号を各走査信号発生回路32、34、36、3
8が出力するように制御する。
【0018】このように、チューブスキャナーをユニッ
ト化し、その特性情報をROM等のメモリー素子に予め
書き込んでおくことにより、故障などによりチューブス
キャナーを交換する際、装置への組み込みが簡単に行な
えるとともに、組み込み後の走査特性もすぐに理想的な
状態とすることができる。
【0019】本実施例では、コンピューター58は各走
査信号発生回路32、34、36、38を制御している
が、演算結果に基づいて高圧アンプ42、44、46、
48のゲイン調整を行なうようにしてもよい。例えば、
図中の高圧アンプ42、44、46、48は帰還抵抗を
調整することでゲイン調整できるようになっているが、
その抵抗を多回転の高精度可変抵抗器とし、その回転制
御をコンピューターからの指示に従ってモーターにより
行なうようにすれば、同様な効果が自動化されて実現で
きる。もちろん、ゲインがプログラマブルな高圧アンプ
を用いてもよい。
【0020】本発明の第三実施例として、第一実施例の
スキャナーシステムを組み込んだAFMを図3に示す。
本実施例のAFMでは、臨界角方式の光学式変位センサ
ーを用いてカンチレバー64の変位を測定している。こ
の光学式センサーは基本的に、半導体レーザー68、コ
リメーターレンズ70、偏光ビームスプリッター72、
1/4波長板74、ダイクロイックミラー76、対物レ
ンズ78、臨界角プリズム80、二分割フォトダイオー
ド82aと82b、差動増幅器84で構成されている。
【0021】半導体レーザー68から射出されたレーザ
ー光は、コリメーターレンズ70により平行光になり、
偏光ビームスプリッター72で反射され、1/4波長板
74を通過して円偏光となり、ダイクロイックミラー7
6で反射され、対物レンズ78により、探針62の反対
側のカンチレバー64の自由端部上面に集光される。そ
の反射光は、対物レンズ78を通過し、ダイクロイック
ミラー76で反射され、1/4波長板74を通過し、半
導体レーザー68の射出する光とは偏光方向が90°異
なる直線偏光となって、偏光ビームスプリッター72を
通過し、臨界角プリズム80で反射され、二分割フォト
ダイオード82aと82bに入射する。二分割フォトダ
イオード82aと82bは受光光量に応じた電圧信号を
出力し、その差信号が差動増幅器84から出力される。
【0022】臨界角法では、カンチレバー64の変位は
二分割フォトダイオード82aと82bへの入射光量の
差として検出され、その差信号は差動増幅器84から変
位信号として出力される。この変位信号はサーボコント
ロール回路86に入力され、サーボコントロール回路8
6は、測定試料Sの凹凸に応じて生じるカンチレバー6
4の変位を一定に保つように、チューブスキャナー12
を駆動するスキャナードライバー10を制御する。ま
た、スキャナードライバー10はコンピューター88か
らの信号に基づいてxy方向の走査信号をチューブスキ
ャナー12に供給する。差動増幅器84からの変位信号
はサーボコントルール回路86を介してコンピューター
88に入力され、コンピューター88はこの変位信号を
スキャナードライバー10から入力した走査信号に同期
させて処理してAFM像を構成し、モニター90に表示
する。
【0023】またAFMは、測定試料Sを光学的に観察
する観察光学系を備えている。観察光学系は基本的に、
対物レンズ78、照明光源92、照明調光回路92、レ
ンズ96、ハーフミラー98、接眼レンズ100、CC
D固体撮像素子102、CCDコントロールユニット1
04、テレビモニター106で構成されている。
【0024】照明光源94から射出された照明光はレン
ズ96を通過した後、ハーフミラー98で反射され、ダ
イクロイックミラー76を通過し、対物レンズ78によ
り集光され、試料Sの視野全体を照明する。試料Sから
反射光は、対物レンズ78、ダイクロイックミラー7
6、ハーフミラー98を通過し、結像レンズ100で結
像され、CCD固体撮像素子102で映像信号に変換さ
れ、テレビモニター106に表示される。
【0025】スキャナードライバー10は、図1の走査
信号発生回路32、34、36、38と高圧アンプ4
2、44、46、48で構成されている。スキャナード
ライバー10は、チューブスキャナー12の特性のばら
つきを考慮した走査信号を駆動電極22、24、26、
28に供給する。さらにスキャナードライバー10は、
走査信号に重畳させて、カンチレバー64の変位を一定
に保つようにz方向位置を制御するz方向駆動信号を供
給している。
【0026】このように、共通電極16を一定の電位に
保ち、z方向駆動信号を駆動電極22、24、26、2
8に供給しているので、z方向に関しては、z方向駆動
信号を共通電極に供給した場合には特性のばらつきが原
因で発生するxy方向への不所望な変位を含まない動作
が得られる。
【0027】なお、z方向駆動信号を共通電極に印加す
るとともに、z方向駆動信号を反映させたxy走査信号
を駆動電極に印加しても、上述したような理想的な走査
を実現できる。この場合、制御は複雑になるがスキャナ
ー駆動用の高圧アンプに耐圧の低い安価なものが使用で
きるという利点がある。
【0028】また、本実施例のAFMにチューブスキャ
ナー12のxyz方向の変位を測定する変位センサーを
組み込み、この変位センサーを用いてフィードバック制
御を行なえば、さらに良好な走査が実現できる。
【0029】
【発明の効果】本発明によれば、チューブスキャナーの
各駆動電極の部分の特性のばらつきの影響を含まない理
想的な動作を行なうスキャナーシステムが提供される。
これは、高精度の位置制御が要求されるSPM等に非常
に有益であり、測定精度の向上に効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のスキャナーシステムの第一実施例の構
成を示す。
【図2】本発明のスキャナーシステムの第二実施例の構
成を示す。
【図3】図1のスキャナーシステムを組み込んだAFM
の構成を示す。
【図4】チューブスキャナーの構成を示す斜視図(A)
と上面図(B)である。
【図5】チューブスキャナーの特性を示すヒステリシス
曲線である。
【符号の説明】
12…チューブスキャナー、14…圧電体、16…共通
電極、22、24、26、28…駆動電極、32、3
4、36、38…走査信号発生回路。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 伊東 修一 東京都渋谷区幡ヶ谷2丁目43番2号 オ リンパス光学工業株式会社内 (72)発明者 八木 明 東京都渋谷区幡ヶ谷2丁目43番2号 オ リンパス光学工業株式会社内 (56)参考文献 特開 平1−101403(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G01B 21/00 - 21/32 G01B 7/00 - 7/34 102 G01N 13/10 - 13/24 H01L 41/00 - 41/113

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 円筒形状の圧電体、その内面に設けた一
    つの共通電極、外周面に設けた複数の駆動電極で構成さ
    れるチューブスキャナーと、 チューブスキャナーの複数の駆動電極に前記圧電体の
    性に応じた互いに独立な走査信号を供給する手段を備
    、特性のばらつきの影響を含まない動作をするスキャ
    ナーシステム。
  2. 【請求項2】 前記チューブスキャナーと、各駆動電極
    の特性情報を書き込んだROMとを一体的に構成したこと
    を特徴とする請求項1に記載のスキャナーシステム。
  3. 【請求項3】 前記ROMに書き込まれている情報を読み
    込んで演算を行うコンピューターを備え、各駆動電極の
    特性にあった走査信号を出力することを特徴とする請求
    項2に記載のスキャナーシステム。
  4. 【請求項4】 前記演算の結果に基づいて走査信号を増
    幅する高圧アンプのゲイン調整を行うことを特徴とする
    請求項1ないし3のいずれか一つに記載のスキャナーシ
    ステム。
  5. 【請求項5】 前記高圧アンプのゲインがプログラマブ
    ルであることを特徴とする請求項4に記載のスキャナー
    システム。
  6. 【請求項6】 請求項1ないし4のいずれか一つに記載
    のスキャナーシステムを具備したことを特徴とする走査
    型プローブ顕微鏡。
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