JP3165242B2 - 過給機付エンジンの吸気制御装置 - Google Patents

過給機付エンジンの吸気制御装置

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JP3165242B2
JP3165242B2 JP16913592A JP16913592A JP3165242B2 JP 3165242 B2 JP3165242 B2 JP 3165242B2 JP 16913592 A JP16913592 A JP 16913592A JP 16913592 A JP16913592 A JP 16913592A JP 3165242 B2 JP3165242 B2 JP 3165242B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、吸気を過給する過給機
を備えるとともに、吸気弁閉時期を遅く設定した過給機
付エンジンの吸気制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来から、機械式または排気ターボ式等
の過給機によって吸気を過給することにより、吸気の充
填量を増大してエンジンの出力アップを図るようにした
過給機付エンジンは一般に知られている。例えば、特開
平3−222819号公報には、吸気通路に機械式過給
機およびインタクーラが配設されるとともに、過給機を
バイパスするバイパス通路に、低負荷時に開くバイパス
バルブが設けられ、スロットル弁が略全開となる高負荷
時に、上記バイパスバルブが全閉となることにより過給
圧が高められるようにしたものが示されている。
【0003】また、過給機およびインタクーラを備えた
エンジンにおいて、吸気弁閉時期を一般のエンジンと比
べてかなり遅く設定し、この吸気弁遅閉じにより圧縮仕
事を少なくする手法(所謂ミラーサイクル)と、過給機
による吸気過給との組合せにより、ノッキングや排気温
度の上昇を避けつつ出力アップを図るようにしたものが
ある(例えば特開平2−119620号公報)。つま
り、吸気の吹き返しが生じる程度にまで吸気弁の閉時期
を遅くすればシリンダ内部での圧縮仕事が少なくなっ
て、圧縮行程での温度上昇が小さくなり、この圧縮仕事
の減少を過給機による外部仕事で補い、かつ過給機で加
圧された空気は吸気通路でインタクーラ等により十分に
冷却されるようにしておくことにより、圧縮上死点温度
および排気温度の上昇を抑制しつつ、過給圧を高めるこ
とで充填効率を高め、有効に出力アップを図ることがで
きるものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記のよう
に所謂ミラーサイクルと過給機とを組み合わせる場合
に、吸気弁を遅閉じに設定するとともに、これによる圧
縮仕事の減少を補いつつ充填効率を高めるように過給圧
はかなり高く設定されるが、このような吸気弁閉時期お
よび過給圧の設定条件が一定であると、高負荷域におけ
る高速側では、低速側と比べ、吸気弁開弁角のうちの無
効開弁角が増大すること等により吸気の吹き返し量が減
少し、従って上記ミラーサイクルによる温度上昇抑制の
作用が低下するため、排気温度が上昇し易くなる。
【0005】これに対する対策として、吸気弁遅閉じを
より大きくすることでミラーサイクルによる温度上昇抑
制作用を強めることが考えられる。しかし、高速域で
は、吸気弁遅閉じを大きくすることで温度上昇を抑制し
つつ過給圧を高めるようにしても、それに伴って過給機
の駆動ロスが急激に増大するため、ある程度以上になれ
ば過給圧上昇による出力アップが上記駆動ロスにより打
ち消されてしまう結果となり、しかも、高速域で高い過
給圧とされると過給機やベルト等の過給機駆動系統の負
担が増大し、信頼性の面で好ましくない。なお、低速側
の領域におけるノッキング等の防止のために圧縮上死点
の温度を低下させる手法としては、点火時期のリタード
あるいは空燃比のリッチ化を採用することもできるが、
高速側での上記問題に対しては、これらの手法は却って
排気温度の上昇および異常燃焼を招くので採用し難い。
【0006】本発明は、上記の事情に鑑み、吸気遅閉じ
と過給機による過給作用とでノッキング等を防止しつつ
出力アップを図るようにした装置において、高負荷域に
おける高速側の運転領域で、出力性能を確保しつつ排気
温度の上昇を抑制し、かつ過給機等の信頼性を高めるこ
とができる過給機付エンジンの吸気制御装置を提供する
ことを目的とする。
【0007】上記目的を達成するために、第1の発明
(請求項1記載)は、吸気を過給する過給機を備えると
ともに、少なくともエンジンの高負荷域における低速側
の運転領域で、吸気弁の閉時期を吸気の吹き返しが生じ
る程度に遅く設定した過給機付エンジンにおいて、高負
荷域における高速側の運転領域ではエンジン速度が高く
なるにつれて過給圧を低下させる過給圧調整手段を設け
るとともに、少なくとも高負荷域において高速側の運転
領域では低速側の運転領域と比べて吸気弁閉時期を早く
設定したものである。
【0008】
【0009】
【0010】第の発明(請求項記載)は、第1の発
明において、過給機下流の吸気通路に連通するリリーフ
通路を形成するとともに、このリリーフ通路に、過給圧
が所定のリリーフ圧力以上に上昇したときに開き、かつ
過給機より上流の吸気通路内の圧力に応じて、この圧力
が低くなるほど上記リリーフ圧力が低下するようにした
リリーフ弁を設けることにより、過給圧調整手段を構成
したものである。
【0011】第の発明(請求項記載)は、第の発
明において、過給機の上流にスロットル弁を配置し、こ
のスロットル弁よりも上流の吸気通路内の圧力をリリー
フ弁に導くようにしたものである。
【0012】第の発明(請求項記載)は、第また
は第の発明において、過給機をエンジン出力軸で駆動
される機械式過給機とし、吸気通路の過給機下流側と上
流側とを連通するリサーキュレーション通路を形成し、
このリサーキュレーション通路に、エンジン低負荷側で
開いて高負荷側で閉じる制御弁を設けるとともに、この
制御弁をバイパスするようにリリーフ通路を形成し、こ
のリリーフ通路にリリーフ弁を設けたものである。
【0013】第1の発明によると、高負荷域における低
速側の運転領域では、吸気弁遅閉じによりシリンダ内で
の圧縮仕事が少なくされて圧縮行程での温度上昇が抑制
されつつ、過給機で吸気が過給されることにより十分に
高い充填効率が得られる。一方、高負荷域における高速
側の運転領域では、低速側と比べ、上記吸気遅閉じによ
る作用が不十分となって排気温度が上昇する傾向がある
ことに対し、過給圧の低下によりこの傾向が是正され、
さらに過給機等の負担が軽減される。さらに、高速側の
運転領域で低速側と比べて吸気弁閉時期が早くされるこ
とにより、吸気弁遅閉じが小さくなることによる吸気の
吹き返しの減少によっても過給圧が低下し、過給機等の
負担を軽減する作用が高められる。
【0014】
【0015】第の発明によると、過給機より上流の吸
気通路内の圧力は、高負荷域であっても高速側では吸気
流通抵抗増大により低下することから、この圧力の変化
が上記の過給圧調整に利用される。とくに第の発明に
よると、過給機の上流のスロットル弁よりも上流の吸気
通路内の圧力が過給圧調整に利用される。
【0016】第の発明によると、負荷に応じた制御弁
の作動により低負荷時に過給気のリサーキュレーション
が行なわれるとともに、上記リリーフ弁により高負荷域
でのエンジン速度に応じた過給圧の調整が行なわれる。
【0017】
【実施例】本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の一実施例による過給機付エンジンの吸気
装置の全体構造を示し、この図において、1は複数のシ
リンダ2を備えたエンジン本体、3は上記エンジン本体
1に対する吸気通路であり、この吸気通路3には吸気を
加圧供給する過給機4が設けられている。この過給機4
はリショルム型過給機等の機械式過給機であって、その
回転軸端部に設けられたプーリ等の伝動用部分4aが図
外のエンジン出力軸にベルト等を介して連結されること
により、エンジン出力軸で駆動されるようになってい
る。
【0018】また、エンジン本体1の各シリンダ2の吸
気ポート5に設けられている吸気弁6は、図外の動弁装
置により一定のタイミングで作動されるが、その吸気弁
閉時期は、通常エンジンと比べてかなり遅く設定され、
例えばクランク角で下死点から50°以上遅くされる。
このような吸気弁遅閉じにより、低負荷時にポンピング
ロスが低減されるとともに、高負荷時には吸気過給と関
連して有効に充填効率が高められるようになっている。
【0019】吸気通路3における過給機4の上流には、
アクセルペダルの操作等によって開度が調節されるスロ
ットル弁7が設けられ、さらに吸気通路3の上流端側に
はエアクリーナ8が配置されている。また、吸気通路3
における過給機4の下流には、過給気を冷却するインタ
ークーラ9が設けられている。インタークーラ9より下
流の吸気通路3にはサージタンク3aが形成され、この
サージタンク3aの下流の分岐吸気通路3bがエンジン
本体1の各シリンダ2の吸気ポート5に連なっている。
【0020】また、過給圧調整手段として、過給機下流
の吸気通路に連通するリリーフ通路10が形成されると
ともに、このリリーフ通路10にリリーフ弁11が設け
られている。当実施例では、低負荷時に過給気をリサー
キュレートするために過給機4の下流側と上流側とを連
通するリサーキュレーション通路20が形成され、この
リサーキュレーション通路20に制御弁25が設けられ
るとともに、この制御弁25をバイパスするように上記
リリーフ通路10が形成されている。さらに、上記イン
タークーラ9をバイパスするインタークーラバイパス通
路21が形成されるとともに、バイパス弁23が設けら
れている。
【0021】図1と要部の拡大図である図2とに示す構
造を具体的に説明すると、上記リサーキュレーション通
路20とインタークーラバイパス通路21とは、吸気通
路3の過給機4とインタークーラ9との間の部位から、
共通の通路部分22を経て互いに分岐しており、リサー
キュレーション通路20の流出側端部が吸気通路3の過
給機4の直上流に至る一方、インタークーラバイパス通
路21の下流端部が吸気通路3のインタークーラ9下流
部分に至るように、これらの通路20,21が形成され
ている。
【0022】上記制御弁25は、リサーキュレーション
通路20に介設された弁体収容部26内に弁体27を備
えている。この弁体27にはダイヤフラム28がロッド
29を介して連結され、このダイヤフラム28の両側
に、第1圧力室30および第2圧力室31が形成されて
いる。そして、上記弁体27に対して片側から過給機下
流の吸気圧力P3 が開弁方向に作用するとともに、反対
側から過給機上流でスロットル弁下流の圧力P2 が作用
し、一方、上記第1圧力室30に、過給機下流の吸気圧
力P3 が上記ロッド29の内部に形成された導通路32
を通して導入されるとともに、第2圧力室31に、導通
路33を介し、スロットル弁上流の圧力P1 が導入され
ている。さらに上記両圧力室30,31には、ダイヤフ
ラム28を両側から押圧するスプリング34,35が具
備されている。
【0023】この制御弁25の構造によると、過給機下
流の圧力P3 は上記弁体27に片側から作用するととも
に第1圧力室30に導入されてダイヤフラム28にも作
用することにより打ち消されるため、ダイヤフラム28
および弁体27にそれぞれ作用するスロットル弁上流の
圧力P1 とスロットル弁下流の圧力P2 との圧力差(P
1 −P2 )に応じて弁体27が移動する。これにより、
上記圧力差が大きい低負荷時には制御弁25が全開とな
り、エンジン負荷の上昇(スロットル弁の開度増大)に
伴い上記圧力差が小さくなるにつれ、制御弁25が次第
に閉じられるようになっている。なお、図示の例では所
定負荷以上の高負荷時に制御弁25を確実に全閉とする
ため、上記導通路33に三方電磁弁36が介設され、上
記高負荷時に、バキュームタンク37に通じる負圧通路
38から上記三方電磁弁36を介して上記第2圧力室3
1に負圧が導かれるようになっている。
【0024】上記バイパス弁23は、上記通路部分22
に設けられ、図外の作動手段により運転状態に応じて作
動され、低負荷時に開いて高負荷時に閉じるようになっ
ている。そして、このバイパス弁23と上記制御弁25
とが開いているときは、過給機4から吐出された吸気が
インタクーラ9とインタクーラバイパス通路21とに分
流し、かつ吸気の一部がリサーキュレーション通路20
を通って過給機4の上流に戻される。上記バイパス弁2
3が閉じられると、過給機4から吐出された吸気が全て
インタクーラ9を通るが、この状態で制御弁25が全閉
でないときは、吸気の一部がインタクーラ9の下流から
バイパス通路21およびリサーキュレーション通路20
を通って過給機4の上流に戻される。また、上記リリー
フ弁11が開かれたときは、図2中に矢印で示すよう
に、吸気の一部がインタクーラ9の下流からバイパス通
路21およびリリーフ通路10を通って過給機4の上流
に戻されるようになっている。
【0025】上記リリーフ弁11は、リリーフ通路10
に配置された弁体12と、この弁体12にロッドを介し
て連結されたダイヤフラム13とその片側に位置する圧
力室14およびスプリング15により構成され、上記弁
体12には過給圧(過給機下流の圧力P3 )が開弁方向
に作用している。そして、上記圧力室14内の圧力とス
プリング15の力とが弁体閉方向に作用してこれらの力
でリリーフ圧力が定まり、このリリーフ圧力以上に過給
圧が上昇するとリリーフ弁11が開くようになってい
る。
【0026】上記圧力室14には、少なくとも過給機4
より上流でエアクリーナ8より下流の吸気通路3内の圧
力が導入され、当実施例では、スロットル弁7の上流の
吸気通路内の圧力P1 が導入されている。このスロット
ル弁上流の圧力P1 は、高負荷域で、エンジン回転数に
応じて図3のように変化し、つまり、低速側の運転領域
では略大気圧となるが、高速域ではエアクリーナ8での
流通抵抗により圧力が低下する。これにより、上記リリ
ーフ弁11のリリーフ圧力が高速域で低下するようにな
っている(図4)。なお、図4にリリーフ圧力(実線)
と過給圧(破線)とを示すように、高負荷域における低
速域では非リリーフ状態での過給圧よりもリリーフ圧力
の方がある程度高くなり、高負荷域における高速域では
上記スロットル弁上流の圧力の低下に伴ってリリーフ圧
力が非リリーフ状態での過給圧よりも低くなるように、
予め上記スプリングの荷重等が設定されている。
【0027】以上のような当実施例の吸気制御装置の作
用を、次に説明する。
【0028】エンジンの高負荷時には、上記リサーキュ
レーション通路20の制御弁25が閉じられるととも
に、上記バイパス弁23も閉じられ、また過給圧がリリ
ーフ圧力を超えない限り上記リリーフ弁11も閉じられ
た状態で、過給機4から吐出された吸気がインタクーラ
9を通ってエンジン本体1の各シリンダ2に供給され
る。そして、エンジン本体1においては吸気の吹き返し
が生じる程度にまで吸気弁6の閉時期が遅くされてお
り、この吸気弁遅閉じと過給作用とで、ノッキングが防
止されつつ有効に充填効率が高められる。
【0029】つまり、吸気弁遅閉じによりシリンダ内で
の圧縮仕事が少なくされ、その圧縮仕事減少分が外部の
過給機による過給で補われて充填量が確保されつつ、過
給による温度上昇分はインタクーラ9による冷却作用で
打ち消されるので、圧縮上死点温度が引き下げられてノ
ッキングが防止される。とくに、低速側の運転領域で
は、予め上記リリーフ弁11のリリーフ圧力が十分に高
く設定され、過給機4の過給能力に応じて過給圧が高め
られて、吸気弁遅閉じによる所謂ミラーサイクルと吸気
過給とによる上記作用が十分に発揮されることにより、
ノッキングが避けられつつ有効にエンジン出力が高めら
れる。
【0030】一方、高負荷域における高速側の運転領域
では、上記リリーフ弁11の圧力室14に導かれるスロ
ットル弁上流の圧力P1 が低下することに伴い、リリー
フ圧力が非リリーフ時の過給圧よりも低下し、リリーフ
弁11が開かれて過給気の一部がリリーフされることに
より、過給圧が引き下げられる。これにより、排気温度
の上昇が防止されるとともに、信頼性、耐ノック性など
が向上され、かつ、このようにしても、低速域と比べ、
吸気弁遅閉じによる吸気の吹き返し量が少なくなる関係
で、吸気充填効率が低下することがない。この作用を、
図5乃至図7によって具体的に説明する。
【0031】図5(a)は機械式過給機の体積効率とエ
ンジン回転数との関係を示しており、この図のように、
機械式過給機の体積効率は低速側で低下し、高速側で高
くなる。これは、機械式過給機におけるクリアランスか
らの漏れ量が、漏れ時間の違いにより低速側で多く、高
速側で減少するためである。図5(b)はエンジンの体
積効率とエンジン回転数との関係を示しており、この図
のように、エンジンの体積効率はエンジン回転数の上昇
につれて増大する。これは、エンジン回転数が高なるに
つれ、吸気の慣性が増大するとともに、吸気弁開弁角の
うちの無効角が増大することにより、吸気の吹き返し量
が減少するためである。つまり、吸気弁閉時期が一定の
遅閉じに設定されていても、高速域では上記ミラーサイ
クル機能が低減することにより、体積効率が高くなる反
面、圧縮仕事の増大により圧縮上死点温度および排気温
度の上昇を招き易くなる。
【0032】このような傾向に対し、仮に吸気弁閉時期
をより大きく遅らせてミラーサイクル機能を強めること
で温度上昇を抑制しつつ過給圧を高くしたとしても、高
速域では、過給圧を高めるにつれて過給機の駆動ロスが
著しく増大するので、過給圧上昇による出力アップが上
記駆動ロスで打ち消され、出力性能の向上には役立たな
い。そこで当実施例の装置では、上記リリーフ弁11の
リリーフ圧力を変化させることにより過給圧を図6に示
すように調整し、つまり高速側の運転領域で高速となる
につれて過給圧が低下するようにしている。この過給圧
低下により、圧縮上死点温度および排気温度の上昇が抑
制されるとともに、過給機および過給機駆動用のベルト
等の負担が軽減される。そして、このようにした場合の
エンジンの充填効率は図7のようになり、高速域では上
記のような吸気の吹き返し量の減少による体積効率増加
傾向と過給圧の低下との対応で所定の充填効率が確保さ
れる。
【0033】また、このようなエンジン速度に応じた過
給圧の調整が、過給機より上流の吸気通路内の圧力を利
用した簡単な構造で達成される。
【0034】なお、上記実施例では、スロットル弁上流
の圧力をリリーフ弁11に導入しているが、スロットル
弁7が略全開の高負荷域ではスロットル弁7の上流でも
下流でも圧力は同程度になるので、過給機4より上流で
あればスロットル弁7の下流の吸気通路内圧力をリリー
フ弁11に導入してもよい。
【0035】図8は本発明の別の実施例を示す。この実
施例では、エンジン本体1の各シリンダの吸気ポート5
に設けられた吸気弁6に対する動弁装置に、吸気弁6の
閉時期を可変とする吸気弁閉時期可変機構40が設けら
れている。この吸気弁閉時期可変機構40は、例えばバ
ルブタイミングの位相を所定範囲内で変更可能とし、図
示の構造によると、吸気弁用動弁カムが配設されている
カムシャフト41とエンジン出力軸に連動するカムプー
リ42との間に、ヘリカルギヤ等を介して両者を連結す
る位相変更部材43を備え、この部材がアクチュエータ
44により作動されることにより、カムプーリ42に対
するカムシャフト41の位相を変化させるようになって
いる。上記アクチュエータ44に対してコントロールユ
ニット(ECU)45から制御信号が出力されている。
【0036】上記ECU45による運転状態に応じた吸
気弁閉時期可変機構40の制御により、図9に示すよう
に、高負荷域における低速側では吸気弁遅閉じが大きい
バルブタイミングIVTL とされ、高負荷域における高
速側では、吸気弁遅閉じが小さくなるように、バルブタ
イミングIVTH が低速側と比べて早くされる。また、
吸気通路3には機械式の過給機4およびインタクーラ9
が配設されるとともに、図8では省略したが、例えば第
1の実施例と同様のリリーフ弁などで構成される過給圧
調整手段が設けられ、高負荷域における高速側で過給圧
が低くされる。
【0037】この実施例によると、高負荷域における低
速側では、吸気弁遅閉じが大きくされてシリンダ内での
圧縮仕事を減少させる作用が十分に得られつつ、高い過
給圧で吸気が過給される。一方、高負荷域における高速
側では、低速側と比べ、吸気弁遅閉じが小さくされて吸
気の吹き返しが少なくされるとともに過給圧が低くされ
る。つまり、高速域では積極的に前記ミラーサイクル機
能が弱められることにより、過給圧を低下させつつ充填
量を確保するのに有利な状態とされる。またこのように
吸気遅閉じが小さくされること自体が、過給気押し返し
による過給圧上昇を抑制することにより、過給圧を低下
させる作用を有する。
【0038】なお、上記各実施例では、過給機として機
械式過給機4が用いられているが、ターボ過給機が用い
られる場合でも、少なくとも高負荷域における低速側の
運転領域では吸気弁遅閉じにしてミラーサイクルを利用
しつつ過給圧を高めるようにし、高負荷域における高速
側の運転領域では、エンジン速度が高くなるにつれて、
吸気の吹き返しの減少に見合うように過給圧を低下させ
るようにすれば、排気温度の上昇が抑制されるととも
に、排圧の上昇が抑制されるのでエンジンおよび過給機
の信頼性が高められる。この場合に、例えば、ターボ過
給機のタービンをバイパスするウエストゲート通路に過
給圧調整用のウエストゲートバルブを設けるとともに、
このウエストゲートバルブに対し、過給圧を導くととも
に、これに対抗するように過給機上流の吸気通路内の圧
力を導くようにすれば、高速側の領域でエンジン速度が
高くなるにつれて過給圧を低下させる機能が得られる。
【0039】
【発明の効果】以上のように本発明は、吸気遅閉じとし
つつ過給機による過給を行なうようにした装置におい
て、高負荷域における高速側の運転領域でエンジン速度
が高くなるにつれて過給圧を低下させる過給圧調整手段
を設けている(請求項1)ため、高負荷域における低速
側では吸気遅閉じと過給圧を高めることとによりノッキ
ング等を招くことなく出力アップを図り、一方、高負荷
域における高速側では、出力性能を確保しつつ、排気温
度の上昇を抑制し、かつエンジンや過給機等の信頼性を
高めることができる。さらに、高負荷域における高速側
の運転領域では低速側の運転領域と比べて吸気弁閉時期
を早くしているため、高速側では出力性能を確保しつつ
過給圧を低くして信頼性を高める効果が、増強される。
【0040】
【0041】
【0042】過給圧が所定のリリーフ圧力以上に上昇し
たときに開くリリーフ弁を設けるとともに、上記リリー
フ弁が過給機より上流の吸気通路内の圧力に応じ、この
圧力が低くなると過給圧を低下させるようになっている
と(請求項、請求項)、過給機上流の圧力が高速時
に低下する傾向のあることを利用し、簡単な構造により
ながら上記効果が得られるように過給圧をエンジン速度
に応じて調整することができる。
【0043】さらに、過給機をエンジン出力軸で駆動さ
れる機械式過給機とし、過給機下流側と上流側とを連通
するリサーキュレーション通路にエンジン低負荷側で開
いて高負荷側で閉じる制御弁を設けるとともに、この制
御弁をバイパスするようにリリーフ通路を形成してこれ
にリリーフ弁を設けると(請求項)、エンジン負荷に
応じて低負荷時に過給気リサーキュレートさせるとと
もに、高負荷時には上記のようなエンジン速度に応じた
過給圧の調整を行なうことができ、運転状態に応じて過
給の調整を適切に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例による吸気制御装置全体の概
略図である。
【図2】要部の拡大図である。
【図3】過給機上流の吸気通路内の圧力とエンジン回転
数との関係を示す図である。
【図4】リリーフ弁のリリーフ圧とエンジン回転数との
関係を示す図である。
【図5】(a)は過給機の体積効率とエンジン回転数と
の関係を示す図であり、(b)はエンジンの体積効率と
エンジン回転数との関係を示す図である。
【図6】過給圧調整手段により調整された過給圧とエン
ジン回転数との関係を示す図である。
【図7】過給圧調整を行なった場合のエンジン充填効率
とエンジン回転数との関係を示す図である。
【図8】別の実施例による吸気制御装置の要部の概略図
である。
【図9】同装置における吸気弁のバルブタイミングを示
す図である。
【符号の説明】
1 エンジン本体 3 吸気通路 4 過給機 6 吸気弁 7 スロットル弁 9 インタークーラ 10 リリーフ通路 11 リリーフ弁 20 リサーキュレーション通路 25 制御弁 40 吸気弁閉時期可変機構
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) F02B 33/00 F02B 33/44 F02B 37/00 302

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 吸気を過給する過給機を備えるととも
    に、少なくともエンジンの高負荷域における低速側の運
    転領域で、吸気弁の閉時期を吸気の吹き返しが生じる程
    度に遅く設定した過給機付エンジンにおいて、高負荷域
    における高速側の運転領域ではエンジン速度が高くなる
    につれて過給圧を低下させる過給圧調整手段を設けると
    ともに、少なくとも高負荷域において高速側の運転領域
    では低速側の運転領域と比べて吸気弁閉時期を早く設定
    したことを特徴とする過給機付エンジンの吸気制御装
    置。
  2. 【請求項2】 過給機下流の吸気通路に連通するリリー
    フ通路を形成するとともに、このリリーフ通路に、過給
    圧が所定のリリーフ圧力以上に上昇したときに開き、か
    つ過給機より上流の吸気通路内の圧力に応じて、この圧
    力が低くなるほど上記リリーフ圧力が低下するようにし
    たリリーフ弁を設けることにより、過給圧調整手段を構
    成した請求項記載の過給機付エンジンの吸気制御装
    置。
  3. 【請求項3】 過給機の上流にスロットル弁を配置し、
    このスロットル弁よりも上流の吸気通路内の圧力をリリ
    ーフ弁に導くようにした請求項記載の過給機付エンジ
    ンの吸気制御装置。
  4. 【請求項4】 過給機をエンジン出力軸で駆動される機
    械式過給機とし、吸気通路の過給機下流側と上流側とを
    連通するリサーキュレーション通路を形成し、このリサ
    ーキュレーション通路に、エンジン低負荷側で開いて高
    負荷側で閉じる制御弁を設けるとともに、この制御弁を
    バイパスするようにリリーフ通路を形成し、このリリー
    フ通路にリリーフ弁を設けた請求項または記載の過
    給機付エンジンの吸気制御装置。
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