JP3161595B2 - 非汚染塗料用組成物 - Google Patents

非汚染塗料用組成物

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JP3161595B2
JP3161595B2 JP33350097A JP33350097A JP3161595B2 JP 3161595 B2 JP3161595 B2 JP 3161595B2 JP 33350097 A JP33350097 A JP 33350097A JP 33350097 A JP33350097 A JP 33350097A JP 3161595 B2 JP3161595 B2 JP 3161595B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、主に、金属、ガラ
ス、磁器タイル、コンクリート、サイディングボード、
押出成型板、プラスチック等の各種素材の表面仕上げに
使用される非汚染塗料用組成物に関する。
【0002】
【従来技術】従来、建築物、土木構築物等の躯体の保
護、意匠性の付与および、美観の向上のため塗装仕上げ
が行われている。特に、近年フッソ樹脂塗料、アクリル
シリコン樹脂塗料あるいはポリウレタン樹脂塗料等の高
耐久性塗料の出現により、躯体の保護においては大きな
進歩を遂げた。しかしながら、これら高耐久性塗料で
は、その優れた耐久性により、かえって塗膜表面の汚染
の問題がクローズアップされる結果となった。すなわ
ち、これら高耐久性塗料以前の塗料によって形成される
塗膜は、太陽光の紫外線によって表面が劣化するため、
汚染物質の付着が生じたとしても、塗膜表面の劣化部分
と共に剥落除去されていたのであるが、塗膜の耐久性が
向上したため、塗膜表面の劣化剥落の機構が機能できな
くなったのである。特に最近は都心や都市近郊部におい
て、自動車等からの排出ガスにより、大気中に油性の汚
染物質が多く浮遊している状況であり、それら油性の汚
染物質が、高耐久性塗料から形成された塗膜表面に付着
した場合には、著しいすす状あるいは筋状の汚染(雨筋
汚れ)を生じ、都市景観の向上のため施した塗装仕上げ
が、意味をなさない場合があった。
【0003】これに対して、塗膜表面を親水性にし、付
着した油性の汚染物質を降雨時の雨水が塗膜表面に広が
る作用によって剥離し洗い流してしまう非汚染形塗料が
各種発表されている。例えば、特開平4−370176
号公報には、ポリアルキレンオキサイドセグメントなど
の親水性セグメントとポリシロキサンなどの疎水性セグ
メントとを含むセグメント化ポリマーを塗料に含めるこ
とで、塗膜表面に疎水性と親水性を同時に付与し、汚染
物質の付着の抑制および降雨による洗浄効果を期待した
ものがある。即ち塗膜表面の親水性により、降水等に由
来する水が塗膜と汚染物質との界面に浸透、流入し、そ
の水と共に汚染物質を洗い流す効果(ソイルリリース効
果)が得られるものである。
【0004】上記のソイルリリース効果を利用した非汚
染塗料として、特願平6−506632(国際公開WO
94/06870号公報)が知られており、その特徴は
塗料中にオルガノシリケートを混合し、それらの反応に
よって塗膜表面に親水性化、硬度の向上の双方を図った
ものである。一般にオルガノシリケートは、化2に示す
ように、酸触媒による加水分解反応によりアルコキシシ
リル基がシラノール基を生成する第1段反応と、シラノ
ール基が脱水縮合反応してシロキサン結合を形成する第
2段反応を起こし、これらのシラノール基やシロキサン
結合が、塗膜表面の親水性の要因となる。従って、塗膜
表面の親水性化、硬度の向上のためには酸触媒の存在に
よる加水分解反応である第1段反応が第2段反応より遅
く、第1段反応が律速となる。このような理由から上記
塗料においては、当該オルガノシリケートの反応を進行
させるために、酸などの表面処理が必要となるが、実際
の建物外壁への塗装を考慮すると、酸性雨などにより、
反応は進行するとは考えられるが、ソイルリリース効果
を十分に発揮するに必要な親水性表面となるには、塗膜
形成後かなりの長期間を必要とする。
【化2】
【0005】また、特開平6−145453号公報に
は、アクリルシリコン樹脂にオルガノシリケートを混合
し、親水性塗膜を得る方法が示されている。アクリルシ
リコン樹脂は、その硬化に寄与する官能基が、オルガノ
シリケートと類似した加水分解性シリル基のため硬化機
構も同様であり、塗膜形成のためには通常、酸または塩
基が硬化触媒として混合される。これらの触媒は当該オ
ルガノシリケートの反応も同時に進行させるため、塗膜
表面の親水性化は比較的早く得られる。しかしながら、
特開平6−145453号公報記載のように、本来その
分子中の一部に加水分解性シリル基を含有させ、塗膜の
架橋度合いを調整するアクリルシリコン樹脂に対して、
架橋部位の多いオルガノシリケートを多量に配合する
と、塗膜の架橋密度が高くなりすぎ、塗膜が脆くなると
共に、イオン結合性が強く、酸または塩基による加水分
解性の高いシロキサン結合が多数導入される結果、塗膜
の耐薬品性の低下を招き、これらの結果として塗膜の耐
候性が低下する。従って、親水性向上のためにはオルガ
ノシリケートの多量配合が必要であるが、多量に入れる
と塗膜物性が損なわれるという矛盾があった。
【0006】これに対して、本発明者らは特開平9−3
1401号に記載のように、アルキレンオキサイド鎖を
含有するアルコキシシラン化合物を、アクリルシリコン
樹脂およびアルキルシリケート(オルガノシリケート)
と共に混合することにより、当該組成物から形成される
塗膜表面において、親水性化が比較的初期から発揮する
ことを見出し、なおかつ塗膜物性を損ねる程のオルガノ
シリケートの多量配合を必要としないため、塗膜耐久性
にも優れたものとすることができた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】このように従来からの
非汚染型塗料によって形成される塗膜のうち、表面の親
水性化に長期を要するものは、塗膜形成後の初期におけ
る非汚染性の低さから、塗装工事施工終了後、ごく短期
間において雨筋汚れ等を生じる結果となっていた。
【0008】本来、非汚染型塗料とは汚染しないことを
その効果とするものであり、また、使用するユーザー、
塗装工事を依頼する施主は、その効果を期待しているも
のである。従って、塗膜形成後初期であっても、汚れの
発生を生じることは、これらユーザーや施主の期待を一
時的にせよ裏切るものであり、また長期間においての非
汚染効果にまで不安感を与えるものとなる。
【0009】さらに、本発明者らによる特開平9−31
401号に記載の発明においても、塗膜表面の親水性化
については比較的初期から発揮することが可能となり、
雨筋汚れは従来の非汚染型塗料に比較して良好なレベル
となったが、より非汚染性や塗膜の耐久性のレベルが高
いものに対する要望が強いのが現状である。
【0010】また、従来の非汚染塗料において使用され
ているアルキルシリケート(オルガノシリケート)は、
前述のようにその配合量や、使用する樹脂の種類との組
み合わせによっては、形成される塗膜の脆さにつなが
り、塗膜物性において割れ等の欠陥を生じるおそれがあ
る。
【0011】一方、このようなアルキルシリケート(オ
ルガノシリケート)は、塗料原材料として見た場合に非
常に高価であり、塗料メーカーにとっては、原材料コス
ト面において大きな問題となっていた。
【0012】従って本発明が解決しようとする課題は、
塗膜形成後に生ずる降雨等の作用により、初めて塗膜が
親水性となるのではなく、塗膜形成直後より、その表面
が親水性を発揮し、汚染物質を洗い流すソイルリリース
効果を有し、特に耐雨筋汚れ性に優れた効果を有し、か
つ、特定の架橋構造により強固でありながら脆くなら
ず、耐候性、その他の塗膜物性の良好な非汚染型の塗膜
を提供する非汚染塗料用組成物を得ることである。ま
た、このような効果を発揮させるために配合する高価な
シリケート化合物の添加量を少量にしても、同様な効果
を生じさせ、さらにコストダウンにも寄与することであ
る。
【0013】
【課題を解決するための手段】このような課題を解決す
るために、本発明者らは鋭意検討の結果、耐候性に優れ
た塗膜を形成するアクリルシリコン樹脂において、オル
ガノシリケートの官能基に特定の変性を加えた変性シリ
ケートを配合し、さらに場合により、特定のポリアルキ
レンオキサイド鎖含有アルコキシシラン化合物を配合す
ることで、塗膜形成初期より表面が親水性となるととも
に、耐雨筋汚れ性を向上させ、また変性シリケートのア
クリルシリコン樹脂への配合量が少量になる結果、塗膜
の脆さも解決できることを見出し本発明を完成した。
【0014】すなわち、本発明は下記の非汚染塗料用組
成物に係るものである。 1.(A)一般式
【化3】 で表される基を含有する、アルコキシシリル基含有アク
リル共重合体樹脂の固形分100重量部に対して、 (B)テトラアルコキシシランの平均縮合度4〜20の
縮合物であり、該縮合物中のアルキル基が炭素数1〜2
と炭素数3〜10のものが混在しているものとし、その
混在比率が炭素数3〜10のアルキル基が該縮合物中の
全アルキル基の5〜50%である化合物を、SiO
算で1.0〜20.0重量部含有する非汚染塗料用組成
物。
【0015】2.(B)成分として、テトラアルコキシ
シランの平均縮合度4〜20の縮合物であり、該縮合物
中のアルキル基が炭素数1〜2と炭素数3〜10のもの
が混在しているものとし、その混在比率が炭素数3〜1
0のアルキル基が該縮合物中の全アルキル基の5〜50
%である化合物を、SiO2 換算で1.0〜10.0重
量部含有する1.に記載の非汚染塗料用組成物。
【0016】3.さらに、(C)重量平均分子量150
〜3500であって繰り返し単位の数が2〜40のポリ
アルキレンオキサイド鎖を含有する、アルコキシシラン
化合物を固形分で0.1〜20重量部含有する1.また
は2.に記載の非汚染塗料用組成物。
【0017】
【発明の実施の態様】本発明の非汚染塗料組成物におけ
る1成分である(A)アルコキシシリル基含有アクリル
共重合体(以下、(A)成分という。)は、一般式
【化4】 で表されるアルコキシシリル基を1分子中に少なくとも
1個、好ましくは2個以上有する重合体である。このア
ルコキシシリル基は、(A)成分の主鎖の末端または、
側鎖に含まれていても良く、双方に含まれていても良
い。(A)成分1分子中のアルコキシシリル基の個数が
1個未満では、本発明の組成物から得られる硬化物すな
わち塗膜の耐溶剤性が低下しやすくなる。
【0018】化4において式中、R1 は炭素数1〜1
0、好ましくは1〜4のアルキル基であるが、R1 の炭
素数が10を越えると、アルコキシシリル基の反応性が
低下し、R1 がアルキル基以外、例えばフェニル基、ベ
ンジル基の場合にも反応は低下する。
【0019】R1 で表されるアルキル基の具体例として
は、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソ
プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基等があげられ
る。また前記式中R2 は、水素原子、または炭素数1〜
10、好ましくは1〜4のアルキル基、アリール基、ア
ラルキル基よりなる群から選ばれた1価の炭化水素基で
ある。
【0020】R2 で表される炭化水素基において、アル
キル基の具体例としては、R1 と同様の基が挙げられ、
アリール基の具体例としては、例えばフェニル基などが
挙げられ、アラルキル基の具体例としては、例えばベン
ジル基などが挙げられる。
【0021】前記、化4で表されるアルコキシシリル基
の具体例としては、例えば後述するアルコキシシリル基
含有モノマーに含まれる基が挙げられる。
【0022】(A)成分は、その主鎖が実質的にアクリ
ル共重合体鎖からなるために、その硬化物の耐候性、耐
薬品性、耐水性などに優れている。さらに、(A)成分
において、アルコキシシリル基が炭素原子に結合してい
れば、得られる硬化物の耐水性はより一層優れたものと
なり、耐アルカリ性、耐酸性なども優れたものとなる。
【0023】また、(A)成分の数平均分子量は、本発
明の組成物から得られる硬化物の耐久性などの物性の点
から、1000〜50000が好ましく、3000〜2
5000がさらに好ましい。
【0024】(A)成分は、例えばアクリル酸、メタク
リル酸、それらの誘導体などのアクリル系モノマーと、
アルコキシシリル基含有モノマーとの共重合により得る
ことができる。
【0025】アクリル系モノマーには、特に限定はな
く、その具体例としては、メチル(メタ)アクリレー
ト、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アク
リレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、
ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)ア
クリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ト
リフルオロエチル(メタ)アクリレート、ペンタフルオ
ロプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロシクロ
ヘキシル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニト
リル、グリシジル(メタ)アクリレート、ジメチルアミ
ノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル
(メタ)アクリレート、メタクリルアミド、α−エチル
メタクリルアミド、N−ブトキシメチルメタクリルアミ
ド、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリロイルモ
ルホリン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレー
ト、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、N
−メチロールメタクリルアミド、アクリル酸のヒドロキ
シアルキルエステル類などのα,β−エチレン性不飽和
カルボン酸のヒドロキシアルキルエステル類とリン酸も
しくはリン酸エステル類との縮合生成物であるリン酸エ
ステル基含有ビニル系化合物、ウレタン結合やシロキサ
ン結合を含む(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0026】また、前記アルコキシシリル基含有モノマ
ーとしては重合性二重結合を有しているという事以外と
くに限定はなく、その具体例としては、例えば、
【化5】
【化6】 などが挙げられ、末端にアルコキシシリル基をウレタン
結合あるいはシロキサン結合を介して有するアクリレー
トまたはメタアクリレートなども含まれる。
【0027】(A)成分中におけるアルコキシシリル基
含有モノマーの割合は、組成物の硬化性や塗膜の耐久性
などの点から5〜90%が好ましく、10〜70%がさ
らに好ましい。
【0028】(A)成分中には、50%を越えない範囲
で、主鎖にウレタン結合やシロキサン結合により形成さ
れたセグメントを含んでいてもよく、メタクリル酸誘導
体以外のモノマーに由来するセグメントを含んでいても
よい。
【0029】このモノマーに限定はなく、その具体例と
して、例えばスチレン、α−メチルスチレン、クロロス
チレン、スチレンスルホン酸、4−ヒドロキシスチレ
ン、ビニルトルエンなどの芳香族炭化水素系ビニル系化
合物、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などの不飽和
カルボン酸、それらの塩(アルカリ金属塩、アンモニウ
ム塩、アミン塩など)、それらの酸無水物(無水マレイ
ン酸など)、または、それらと炭素数1〜20の直鎖ま
たは分岐のアルコールとのジエステルまたはハーフエス
テルなどの不飽和カルボン酸のエステル、酢酸ビニル、
プロピオン酸ビニル、ジアリルフタレートなどのビニル
エステルやアリル化合物、ビニルピリジン、アミノエチ
ルビニルエーテルなどのアミノ基含有ビニル系化合物、
イタコン酸ジアミド、クロトンアミド、マレイン酸ジア
ミド、フマル酸ジアミド、N−ビニルピロリドンなどの
アミド基含有ビニル化合物、2−ヒドロキシエチルビニ
ルエーテル、メチルビニルエーテル、シクロヘキシルビ
ニルエーテル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、クロロプ
レン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン、フルオロ
オレフィンマレイミド、N−ビニルイミダゾール、ビニ
ルスルホン酸などのその他のビニル系化合物などが挙げ
られる。
【0030】これらアルコキシシリル基含有モノマーの
少なくとも1種以上と、ラジカル重合性モノマーの少な
くとも1種を、非反応性の適当な溶媒中で混合し、ラジ
カル重合開始剤を用いて共重合させることによってアル
コキシシリル基含有アクリル共重合体を得ることができ
る。
【0031】ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベ
ンゾイルパーオキサイド、ジクロルベンゾイルパーオキ
サイド、2,5−ジ(パーオキシベンゾエート)ヘキシ
ン−3,1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロ
ピル)ベンゼン、t−ブチルパーベンゾエートなどのパ
ーエステル化合物、アゾビスイソブチロニトリルおよび
ジメチルアゾブチレートなどのアゾ化合物、および有機
過酸化物などが挙げられる。
【0032】本発明で使用される(B)特定構造のテト
ラアルコキシシラン低縮合物(以下、「(B)成分」と
いう)は、テトラアルコキシシランの平均縮合度4〜2
0の縮合物であり、該縮合物中のアルキル基が炭素数1
〜2と炭素数3〜10のものが混在しているものとし、
その混在比率が炭素数3〜10のアルキル基が該縮合物
中全アルキル基の5〜50%の化合物である。
【0033】(B)成分は、テトラアルコキシシランの
低縮合物であるが、高縮合度(平均縮合度が20より大
きいもの)、高分子量のものは、製造が難しく、粘度上
昇等により取り扱いが不便であるため好ましくない。逆
に、平均縮合度が3以下で、低分子量のものは、揮発性
が高くなりやはり取り扱いが不便であるため好ましくな
い。
【0034】また、(B)成分中のアルキル基が、炭素
数1〜2と炭素数3〜10のものが混在していることに
より、(A)成分との相溶性が飛躍的に向上し、表面配
向性に優れ、塗膜物性の優れた非汚染塗膜が形成できる
ものである。
【0035】アルキル基の部分が炭素数1〜2のアルキ
ル基のみの場合、(A)成分との相溶性が悪く、表面配
向性が悪いので好ましくない。また、炭素数が3〜10
のアルキル基のみの場合は、非汚染効果が著しく悪くな
り好ましくない。炭素数11以上のアルキル基が存在す
る場合も、耐汚染性がなくなるので好ましくない。ま
た、アルキル基の炭素数が大きくなればなるほど、前述
した加水分解反応は起こりにくくなる傾向にあるので、
炭素数が大きいアルキル基ばかりが存在することは好ま
しくない。
【0036】(B)成分は、該低縮合物全体のアルキル
基のうち、約5〜50%が炭素数3〜10のアルキル基
となるようにしたものが(A)成分との相溶性、塗膜の
耐汚染性に優れるため好ましいものとなる。
【0037】本発明の(B)成分は以下のような方法に
より製造することが可能であるが、これに限定されるも
のではない。 一般式
【化7】 (式中、R3 〜R6 は炭素数1〜2のアルキル基と炭素
数3〜10のアルキル基が混在しているものとする)で
表されるテトラアルコキシシランを平均縮合度4〜2
0、重量平均分子量が500〜2500となるように縮
合させる。縮合方法は、公知の方法による。
【0038】式中、R3 〜R6 のアルキル基の部分が、
炭素数1〜2のものと炭素数3〜10のものが混在して
いることにより、(A)成分との相溶性が飛躍的に向上
し、表面配向性に優れ、塗膜物性の優れた非汚染塗膜が
形成できるものである。
【0039】このようなテトラアルコキシシランを縮合
して、低縮合物とした際に、全体のアルキル基のうち、
約5〜50%が炭素数3〜10のアルキル基となるよう
にしたものが(A)成分との相溶性、塗膜の耐汚染性に
優れるため好ましいものとなるが、炭素数3〜10のア
ルキル基が全体の約5〜50%となるようにするため
に、縮合の際に、他のアルキルシリケート(アルキル基
の炭素数は1〜2であるもの)を混合して縮合するのは
有効な手段である。
【0040】具体例としては、モノブトキシトリメトキ
シシラン、モノペントキシトリメトキシシラン、モノヘ
トキシトリメトキシシラン、ジブトキシジエトキシシラ
ン等の低縮合物があげられるが、これに限定されるもの
ではない。
【0041】(a)一般式
【化8】 (式中、Rは炭素数1〜2のアルキル基とし、nは
4〜20の整数とする)で表されるアルキルシリケート
低縮合物(以下、「(a)成分」という)を、 (b)一般式
【化9】 (式中、Rは炭素数3〜10のアルキル基とする)
で表されるアルコール(以下、「(b)成分」という)
を用いて、(a)成分のアルキル基部分の約5〜50%
をエステル交換する。
【0042】(a)成分としては、具体的にはテトラメ
チルシリケート、テトラエチルシリケート、テトラ−n
−プロピルシリケート、テトラ−i−プロピルシリケー
トなどの低縮合物があげられる。特に、テトラメチルシ
リケートやテトラエチルシリケートが一般的である。平
均縮合度は4〜10が好ましく、平均縮合度が大きくて
も小さくても、取り扱いが不便になるので好ましくな
い。
【0043】(b)成分としては、具体的にはn−ブチ
ルアルコール、n−アミルアルコール、n−ヘキシルア
ルコール、n−ヘプチルアルコール、n−オクチルアル
コール、n−ノニルアルコール、n−デシルアルコール
が例示できる。
【0044】(a)成分を(b)成分によりエステル交
換する際には、(a)成分の全てのアルキル基(R7
を(b)成分のアルキル基(R8 )にエステル交換して
しまうのではなく、(a)成分のアルキル基全体の約5
〜50%をエステル交換したものを使用する。
【0045】その交換比率は、(a)成分1モルに対し
て、(b)成分を0.5〜12モル用いて、エステル交
換させるとよい。この交換比率は、(a)成分の平均縮
合度によって適宜調整するが(a)成分のアルキル基全
体の約5〜50%をエステル交換することにより、
(A)成分との相溶性や、塗膜の耐汚染性が優れたもの
とすることができる。このエステル交換率が低くなる
と、相溶性が悪くなり、表面配向性が十分でなくなる。
また、エステル交換率が高くなると、加水分解反応を起
こしにくくなり、塗膜が親水性になりにくく、耐汚染性
が悪くなる傾向にある。
【0046】このようにして製造した(B)成分は、
(A)成分の樹脂固形分100重量部に対して、SiO
2 換算で1.0〜20.0重量部、好適には1.0〜1
0.0重量部配合することができる。これは、1.0重
量部未満では塗膜の親水性が十分でないため耐汚染性に
劣り、20.0重量部を越えると、硬化塗膜の外観が悪
化したり、クラックが発生するといった問題が出てくる
ためである。また、好適な範囲が1.0〜10.0とい
うのは、このような添加量の少ない範囲においても十分
な耐雨筋汚染性を発揮するため、結果として原料コスト
の削減に寄与できるためである。
【0047】ここでSiO2 換算とは、アルコキシシラ
ンやシリケートなどのSi−O結合を有する化合物を、
完全に加水分解した後に、900℃で焼成した際にシリ
カ(SiO2 )となって残る重量分にて表したものであ
る。
【0048】一般に、アルコキシシランやシリケート
は、水と反応して加水分解反応が起こりシラノールとな
り、さらにシラノール同士やシラノールとアルコキシに
より縮合反応を起こす性質を持っている。この反応を究
極まで行うと、シリカ(SiO2 )となる。これらの反
応は
【化10】 という反応式で表されるが、この反応式をもとに残るシ
リカ成分の量を換算したものである。
【0049】実際の計算は、
【数1】 の式により行った。
【0050】次に、本発明においては(A)成分、
(B)成分にさらに、(C)ポリアルキレンオキサイド
鎖含有アルコキシシラン化合物(以下、(C)成分とい
う。)を配合することにより、さらに初期からの耐雨筋
汚れ性の向上が得られる。かかる(C)成分のポリアル
キレンオキサイド繰り返し単位は、そのアルキレン部分
の炭素数は2〜4であり、繰り返し単位の数は2〜4
0、好ましくは2〜20である。
【0051】このような(C)成分は、そのポリアルキ
レンオキサイド鎖の両末端がアルコキシシリル基であっ
てもよく、一端がアルコキシシリル基であって、他端が
その他の官能基であってもよい。このような片末端に有
することのできる官能基としては、例えば、ビニル基、
ヒドロキシル基、エポキシ基、アミノ基、イソシアネー
ト基、メルカプト基等が挙げられる。特にヒドロキシル
基(水酸基)であるものの使用が好ましい。また、該官
能基は、アルコキシシリル基との間にウレタン結合、尿
素結合、シロキサン結合、アミド結合、エーテル結合等
を介して結合されたものであっても良い。
【0052】これらの(C)成分は、例えば、ポリアル
キレンオキサイド鎖含有化合物と、アルコキシシリル基
含有化合物(以下カップリング剤という。)を反応させ
て合成したものが使用できる。
【0053】前記ポリアルキレンオキサイド鎖含有化合
物は、重量平均分子量150〜3500が好ましく、2
00〜1500がさらに好ましい。重量平均分子量が1
50未満の場合、最終的に得られる硬化塗膜の親水性に
劣り、降雨による汚染物質の洗浄効果が得られず、重量
平均分子量が3500を越える場合、硬化物の耐水性や
硬度が低下する。
【0054】このようなポリアルキレンオキサイド鎖含
有化合物としては、ポリエチレングリコール、ポリエチ
レン−プロピレングリコール、ポリエチレン−テトラメ
チレングリコール、ポリエチレングリコールジグリシジ
ルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエ
ーテル、ポリオキシエチレンジグリコール酸、ポリエチ
レングリコールビニルエーテル、ポリエチレングリコー
ルジビニルエーテル、ポリエチレングリコールアリルエ
ーテル、ポリエチレングリコールジアリルエーテルなど
が挙げられる。また、該ポリアルキレンオキサイド鎖含
有化合物は、1種もしくは2種以上の組み合わせから選
択することができる。2種以上のモノマーを使用する場
合は、ランダム共重合体であってもブロック共重合体で
あっても構わない。
【0055】一方、カップリング剤は、例えば、一分子
中に、少なくとも1個以上のアルコキシシリル基とその
ほかの置換基を有する化合物である。カップリング剤と
しては具体的には、例えば、β−(3、4エポキシシク
ロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシド
キシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキ
シプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチ
ル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N
−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメト
キシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、
γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、イソシアネー
ト官能性シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメト
キシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエト
キシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシ
シランなどが挙げられる。
【0056】(C)成分の合成は、特に限定されない
が、ポリアルキレンオキサイド鎖含有化合物とカップリ
ング剤とを別々に用意し、例えば重合性二重結合を有す
る各化合物についてはラジカル重合開始剤を用いて共重
合させる他、アミノ基/エポキシ基、イソシアネート基
/水酸基またはイソシアネート基/アミノ基等の付加反
応など公知の方法によって合成することができる。
【0057】また、第1級、第2級アミノ基等の活性水
素基を有するアルコキシシリル化合物にエチレンオキサ
イドを開環付加せしめる方法によっても合成可能であ
る。
【0058】ラジカル重合開始剤を用いて共重合させる
場合は、重合性二重結合を有するポリアルキレンオキサ
イド鎖含有化合物の少なくとも1種以上と、カップリン
グ剤の少なくとも1種以上を非反応性の適当な溶媒中で
反応させて得ることができる。この際、使用されるラジ
カル重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキ
サイド、ジクロルベンゾイルパーオキサイド、2,5−
ジ(パーオキシベンゾエート)ヘキシン−3,1,3−
ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、
t−ブチルパーベンゾエートなどのパーエステル化合
物、アゾビスイソブチロニトリルおよびジメチルアゾブ
チレートなどのアゾ化合物、および有機過酸化物などが
挙げられる。
【0059】重合性二重結合を有するポリアルキレンオ
キサイド鎖含有化合物としては、例えば、ポリエチレン
グリコールビニルエーテルを用いることができ、カップ
リング剤には、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキ
シシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキ
シシランおよびγ−メタクリロキシプロピルトリエトキ
シシランなどを単独もしくは2種以上の組み合わせで使
用できる。
【0060】イソシアネート/ポリオールの付加反応に
より合成する場合、例えばポリアルキレンオキサイド鎖
含有化合物には、ポリエチレングリコールなどの末端に
ヒドロキシル基を有する化合物と、カップリング剤には
イソシアネート含有カップリング剤などのイソシアネー
ト基を有する化合物を混合し合成させる。この合成方法
においては、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズ
ジマレートまたはジオクチルスズジマレートなどの、ポ
リウレタン合成の分野において周知の有機金属系反応触
媒を使用することも可能である。
【0061】上述の反応によって合成される(C)成分
としては、ポリアルキレンオキサイド鎖含有化合物の両
末端又は片末端にカップリング剤を付加したものが得ら
れるが、これらは、それぞれ単独で使用してもよく、ま
た混合物として使用してもよい。
【0062】これら(C)成分の中で、アルキレンオキ
サイド鎖がエチレンオキサイド鎖であり片末端が水酸基
であるものが、本発明の汚染防止効果、すなわち耐汚染
性ならびに染み込み抵抗性等が高いため最も好ましい。
【0063】(C)成分の配合割合は、(A)成分の樹
脂固形分100重量部に対し、固形分で0.1〜20重
量部、好ましくは0.2〜10重量部である。0.1重
量部未満では効果が見られず、20重量部を越えると、
樹脂との相溶性、硬化物の耐水性などが劣る結果とな
る。
【0064】本発明に必要に応じて使用される(D)ア
ルコキシシリル基の加水分解・縮合用触媒(以下(D)
成分という)の具体例としては、ジブチル錫ジラウレー
ト、ジブチル錫ジマレート、ジオクチル錫ジラウレー
ト、ジオクチル錫ジマレート、オクチル酸スズなどの有
機スズ化合物、リン酸、モノメチルホスフェート、モノ
エチルホスフェート、モノブチルホスフェート、モノオ
クチルホスフェート、モノデシルホスフェート、ジメチ
ルホスフェート、ジエチルホスフェート、ジブチルホス
フェート、ジオクチルホスフェート、ジデシルホスフェ
ートなどのリン酸エステル、プロピレンオキサイド、ブ
チレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、グリシ
ジルメタクリレート、グリシドール、アクリルグリシジ
ルエーテル、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシ
ラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、
γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、エ
ポキシ化合物とリン酸および/またはモノ酸性リン酸エ
ステルとの付加反応物、マレイン酸、アジピン酸、アゼ
ライン酸、セバシン酸、イタコン酸、クエン酸、コハク
酸、フタル酸、トリメット酸、ピロメット酸、これらの
酸無水物、p−トルエンスルホン酸、などの酸性化合物
が挙げられる。
【0065】また、これらの酸性触媒とアミンとの混合
物または反応物も含まれる。例えば、ヘキシルアミン、
N,N−ジメチルドデシルアミン、ドデシルアミンなど
のアミン類が挙げられるが、有機スズ化合物が好まし
く、特に塗膜形成初期における塗膜表面の親水性化に優
れることからマレート系有機スズ化合物がより好ましく
用いられる。
【0066】(D)成分の使用量には特に限定はない
が、(A)成分の樹脂固形分100重量部に対して、通
常0.1〜20重量部が適当であり、0.1〜10重量
部がさらに好ましい。これは、(D)成分の使用量が
0.1重量部未満になると、硬化性が低下する傾向があ
り、20重量部を超えると塗膜の外観性が低下する傾向
があるためである。
【0067】なお、本発明の非汚染塗料用組成物に、脱
水剤および/またはアルキルアルコールを添加すること
ができ、本発明の非汚染塗料用組成物の長期保存安定性
が確保できるためこれらを添加することがより好まし
い。
【0068】脱水剤の具体例としては、例えば、オルト
ギ酸メチル、オルトギ酸エチル、オルト酢酸メチル、オ
ルト酢酸エチル、メチルトリメトキシシラン、γ−メタ
クリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメ
トキシシランなどの加水分解性エステル化合物が挙げら
れる。
【0069】一方、アルキルアルコールとしては、例え
ば、メタノール、エタノールのような低分子量アルコー
ルが挙げられる。
【0070】これら、脱水剤およびまたはアルキルアル
コールは、アルコキシシリル基含有共重合体(A)中に
添加しておくのが好ましいが、(A)成分の重合に際
し、重合前または重合後、或いは重合時に添加できる。
また、脱水剤および/またはアルキルアルコールの使用
量に特に限定はないが、(A)成分の樹脂固形分100
重量部に対し、0.5〜20重量部、さらに2〜10重
量部が好ましい。なお、脱水剤とアルキルアルコールを
併用すれば、保存安定性に顕著な効果が見られ、好まし
い。
【0071】本発明の組成物では、(A)、(B)、
(C)、及び(D)成分による透明(クリヤー)塗膜の
他に、着色顔料を配合して、着色(エナメル)塗膜とし
てもよい、このような着色顔料としては、酸化チタン、
酸化亜鉛、カーボンブラック、酸化第二鉄(ベんが
ら)、クロム酸鉛、モリブデードオレンジ、黄鉛、黄色
酸化鉄、オーカー、群青、コバルトグリーン等の無機系
顔料、アゾ系、ナフトール系、ピラゾロン系、アントラ
キノン系、ペリレン系、キナクリドン系、ジスアゾ系、
イソインドリノン系、ベンツイミダゾール系、フタロシ
アニン系、キノフタロン系等の有機顔料が使用できる。
【0072】また、重質炭酸カルシウム、クレー、カオ
リン、タルク、沈降性硫酸バリウム、炭酸バリウム、ホ
ワイトカーボン、珪藻土等の体質顔料を使用することも
可能である。特に、艶消し塗膜を形成する場合には、塗
膜表面における非汚染効果を損なうことの最も少ないホ
ワイトカーボン、珪藻土を使用することが最適である。
なお、これらの無機質を塗料に添加する際に、粉体表面
をカップリング剤で処理したり、塗料にカップリング剤
を添加することは好ましい手段である。
【0073】さらに、用途に応じて希釈剤、紫外線吸収
剤、光安定剤、酸化防止剤、沈降防止剤、レベリング剤
などの添加物、ニトロセルロース、セルロースアセテー
トブチレートなどの繊維素、エポキシ樹脂、メラミン樹
脂、塩化ビニル樹脂、塩素化ポリプロピレン、塩化ゴ
ム、ポリビニルブチラールなどの樹脂、充填剤などを添
加しても何ら問題はなく、公知の塗料用添加剤を使用す
ることができる。
【0074】さらに、各種塗装、特に、浸漬、吹き付
け、刷毛塗りなどの常法により、被塗物に本発明の塗料
用組成物を塗布し、硬化させることにより被塗物の表面
に密着性、耐久性などに優れた塗膜を形成することが出
来る。
【0075】
【作用】本発明における塗膜形成初期より発生する塗膜
表面の親水性および耐雨筋汚れ性の効果は、構成成分の
親水性部位およびその配向性に起因するものと思われる
が、分子の表面自由エネルギーのみを考慮した場合に
は、表面自由エネルギーの大きな親水性部位が、塗膜表
面に初期より分布することは考えられない。したがっ
て、本発明の効果が得られる機構は定かでないが、本発
明の構成、特に特定の変性を加えたテトラアルコキシシ
ランの縮合物、特定のポリアルキレンオキサイド鎖を含
有するアルコキシシラン化合物が含有されていることに
よってのみ生じる何らかの特異性により、塗膜表面に親
水性部位が押し出されているものと推察される。このよ
うな効果により、初期より塗膜の非汚染効果(ソイルリ
リース効果)を発揮し、特に雨筋汚れにおいてその効果
が顕著となり、さらに、その他の成分の架橋構造との絡
み合いにより、耐久性や耐候性に優れる塗膜を形成して
いるものと思われる。
【0076】
【実施例】以下に実施例及び比較例を示し、本発明の特
徴をより明確にする。 (合成例I)アルコキシシラン縮合物1〜8合成例 重量平均分子量1000、平均縮合度約8、不揮発分1
00%のメチルシリケート(以下、「メチルシリケート
A」という)100重量部に対して、アルコール類を所
定量、並びに触媒であるジブチル錫ジラウレート0.0
3重量部を添加し、混合後、75℃で8時間脱メタノー
ル反応を行い、アルコキシシラン縮合物1〜8を合成し
た。得られたアルコキシシラン縮合物について、使用し
たアルコールの種類と添加量、エステル交換率、および
900℃にて焼成することにより得られるシリカ残量比
率を以下の表1に示した。
【表1】
【0077】(合成例II) ポリアルキレンオキサイド鎖含有アルコキシシラン化
合物合成例1 加熱装置、撹拌器、還流装置、脱水装置、温度計を備え
た反応槽に、ポリエチレングリコール200(平均分子
量200;和光純薬株式会社製)20重量部と、イソシ
アネート含有シランであるY−9030(日本ユニカー
株式会社製)54.3重量部と、ジブチルスズジラウレ
ート0.05重量部とを仕込み、50℃にて8時間反応
させ、淡黄色のポリエチレンオキサイド鎖含有アルコキ
シシラン化合物を得た。このポリエチレンオキサイド鎖
含有アルコキシシラン化合物1の重量平均分子量は、ゲ
ル浸透クロマトグラフィー(以下GPCという)のポリ
スチレン換算により測定した結果800であった。(表
2、表3においては「PEO−アルコキシシラン化合物
1」と表示した。)
【0078】ポリアルキレンオキサイド鎖含有アルコ
キシシラン化合物合成例2 加熱装置、攪拌器、還流装置、脱水装置、温度計を備え
た反応槽に、ポリエチレングリコールグリシジルエーテ
ルであるエポライト40E(平均分子量170;共栄社
化学株式会社製)100重量部と、アミノ基含有シラン
であるA−1100(日本ユニカー株式会社製)63.
0重量部とを仕込み、50℃にて8時間反応させ、淡黄
色のポリエチレンオキサイド鎖含有アルコキシシラン化
合物2を得た。このポリエチレンオキサイド鎖含有アル
コキシシラン化合物の重量平均分子量は、ゲル浸透クロ
マトグラフィー(以下GPCという)のポリスチレン換
算により測定した結果980であった。(表2、表3に
おいては「PEO−アルコキシシラン化合物2」と表示
した。)
【0079】試験塗料の配合は、実施例については表2
に、また比較例については表3にそれぞれまとめて示し
た。尚、アルコキシシリル基含有アクリルシリコン樹脂
としては、鐘淵化学工業株式会社製「ゼムラック」(平
均分子量15000、ガラス転移温度30℃、樹脂固形
分50%)を使用した。
【0080】1.水浸漬後の接触角測定 表2または表3に示した配合にて塗料組成物を作製し、
以下の通り評価を行った。即ち、作製した塗料組成物
を、150×75×0.8mmのアルミ板に乾燥膜厚が
40μmとなるようにスプレー塗装し試験体を作製し
た。作製した試験体を、標準状態で7日間乾燥養生した
後、脱イオン水に3時間浸漬した。取り出したアルミ板
を水洗いの後、18時間乾燥させ、塗膜表面に、0.2
ccの脱イオン水を滴下し、20℃にて滴下直後の接触
角を協和界面科学株式会社製CA−A型接触角測定装置
にて測定した(以下、接触角測定は同様にして行っ
た)。水浸3時間、乾燥18時間、接触角測定を1サイ
クルとして4サイクル行った。結果は表4に示す。この
試験は、実際の降雨の条件を人工的に作り出したもので
あり、酸性雨ではなく通常のpHの雨であることを想定
している。
【0081】2.耐汚染性試験 300×150×3.0mmのアルミニウム板にSK#
1000プライマー(エスケー化研株式会社製、エポキ
シ樹脂系プライマー)を、乾燥膜厚が約30μmとなる
ようにスプレー塗装し、標準状態で8時間乾燥させた。
次いで、作成した塗料組成物を、前述のプライマー塗装
を行なったアルミニウム板上に、乾燥膜厚が約40μm
となるようにスプレー塗装を行ない、標準状態で7日間
乾燥し、暴露テスト用試験体とした。作製した試験体
は、大阪府茨木市において、南面向き、45度の角度で
屋外暴露を実施し、1ヶ月後、3ヶ月後、6ヶ月後、1
年後の明度差(ΔL値)を測定し、耐汚染性試験の評価
を行なった。ΔL値の測定は、TC−1800型色差計
(東京電色株式会社製)を使用して行なった。ΔL値の
絶対値が小さいほど明度変化が少なく、耐汚染性に優れ
た塗料である。
【0082】3.雨筋汚染性評価 300×150×3.0mmのアルミニウム板を図1に
示すように上方から3分の1の長さで角度αが135度
になるように折り曲げたもの(以下、「暴露用板」とい
う)の凸面に、SK#1000プライマー(エスケー化
研株式会社製、エポキシ樹脂系プライマー)を、乾燥膜
厚が約30μmとなるようにスプレー塗装し、標準状態
で8時間乾燥させた。(暴露用板は凸面を表面とする)
次に、2.と同様にして塗料組成物を作製し、作製した
塗料組成物を前述のプライマーを塗装した暴露用板に乾
燥膜厚が約40μmとなるようにスプレー塗装し、標準
状態で7日間乾燥し試験体とした。作製した試験体を、
大阪府茨木市で南面を向き、面積が広い面(a面)を垂
直にし、さらに面積の狭い面(b面)が上部になるよう
に設置して、屋外暴露を実施し、1ヶ月後、3ヶ月後、
6ヶ月後の雨筋汚れの有無を目視にて評価した。評価は
以下の通り。なお、結果は表4に示す。 ◎:垂直面に雨筋汚染なし ○:垂直面にわずかに雨筋汚れが見られる △:垂直面に雨筋汚染が見られる ×:垂直面に著しい雨筋汚れが見られる
【0083】4.汚れの染み込み抵抗性 150×75×0.8mmのアルミ板に、SK#100
0プライマー(エスケー化研株式会社製、エポキシ樹脂
系プライマー)を、乾燥膜厚が約30μmとなるように
スプレー塗装し、標準状態で8時間乾燥させた。次に、
2.と同様にして作製した塗料組成物を乾燥膜厚が40
μmとなるようにスプレー塗装し試験体を作製した。作
製した試験体を、標準状態で7日間乾燥養生した後、JI
S K5400 8.10 耐汚染性試験に準じ、塗膜面に15重量
%カーボンブラック水分散ペースト液を、直径20m
m、高さ5mmとなるように滴下し、50℃の恒温室中
に2時間放置した。その後流水中にて洗浄し、塗膜表面
の汚染の程度を目視により評価した。評価は以下の通
り。 ◎:痕跡なし ○:わずかに痕跡有り △:痕跡有り ×:著しい痕跡有り
【表2】
【表3】
【0084】<評価結果> 評価結果は表4にまとめて示した。この結果より以下の
点が指摘できる。 1)本発明の非汚染塗料用組成物(実施例1〜7)は、
実際の降雨を想定した水浸漬試験によっても接触角の低
下がみられ、優れた耐汚染性、耐雨筋汚染性が得られて
いる。 2)特に(C)成分を配合した非汚染塗料用組成物(実
施例3〜7)においては、耐雨筋汚染性において、1ヶ
月後という初期から垂直面に雨筋が見られないとの結果
が得られた。 3)本発明の(B)成分を配合しない非汚染塗料用組成
物(比較例2)では、耐汚染性の効果が見られなかっ
た。一方、比較的初期には耐雨筋汚れ性に優れるが、時
間の経過とともに雨筋汚染が顕著となった。 4)(B)成分の変性についての規定値を外れるアルコ
キシシラン縮合物を配合した非汚染塗料用組成物(比較
例1、比較例4、比較例5)は、耐汚染性の効果が見ら
れず、雨筋汚染も顕著であった。 5)(B)成分の配合量が規定値を外れるアルコキシシ
ラン縮合物を配合した非汚染塗料用組成物(比較例3)
は、塗膜が脆くなり、全面割れを発生した。 6)(B)成分の変性したシリケートではなく通常のメ
チルシリケートAを用いた非汚染塗料用組成物(比較例
6)では、その配合量が少ないため、耐雨筋汚染性にお
いて、初期からの効果の発現が十分得られなかったのに
対して、(B)成分を同様に少量配合した非汚染塗料用
組成物(実施例7)では初期より耐雨筋汚染性の効果が
顕著であり、結果として高価な原材料であるシリケート
化合物の削減により、原材料コスト削減に大きく寄与し
た。
【表4】
【0085】
【発明の効果】上述のように本発明によれば、本発明の
非汚染塗料組成物は、アルコキシシリル基含有アクリル
共重合体樹脂に、特殊な構造のテトラアルコキシシラン
縮合物と、場合により特定のポリアルキレンオキサイド
鎖を含有するアルコキシシラン化合物を配合することに
より、塗膜形成直後より、その表面が親水性を発揮し、
ソイルリリース効果を有し、油性汚れの染み込み抵抗性
や耐汚染性に優れ、とりわけ耐雨筋汚染性に優れる。ま
た、アルコキシシラン化合物の変性により、その配合量
を少なくしてもこれらの効果を得ることができるため、
塗料原材料のコスト削減に寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】暴露用板を表す斜視図
【符号の説明】
a:暴露した際に垂直となる面 b:暴露した際に上面となる面 α:折り曲げ角度(135゜)
【化3】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 軽賀 英人 大阪府茨木市清水1丁目25番10号 エス ケー化研株式会社研究所内 (72)発明者 鈴木 久志 大阪府茨木市清水1丁目25番10号 エス ケー化研株式会社研究所内 (56)参考文献 特開 平9−31401(JP,A) 特開 平8−176304(JP,A) 国際公開94/6870(WO,A1) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C09D 1/00 - 201/10

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】(A)一般式 【化1】 で表される基を含有する、アルコキシシリル基含有アク
    リル共重合体樹脂の固形分100重量部に対して、
    (B)テトラアルコキシシランの平均縮合度4〜20の
    縮合物であり、該縮合物中のアルキル基が炭素数1〜2
    と炭素数3〜10のものが混在しているものとし、その
    混在比率が炭素数3〜10のアルキル基が該縮合物中の
    全アルキル基の5〜50%である化合物を、SiO2
    換算で1.0〜20.0重量部、含有することを特徴と
    する非汚染塗料用組成物。
  2. 【請求項2】(B)成分として、テトラアルコキシシラ
    ンの平均縮合度4〜20の縮合物であり、該縮合物中の
    アルキル基が炭素数1〜2と炭素数3〜10のものが混
    在しているものとし、その混在比率が炭素数3〜10の
    アルキル基が該縮合物中の全アルキル基の5〜50%で
    ある化合物を、SiO2 換算で1.0〜10.0重量
    部、含有することを特徴とする請求項1に記載の非汚染
    塗料用組成物。
  3. 【請求項3】さらに、(C)重量平均分子量150〜3
    500であって繰り返し単位の数が2〜40のポリアル
    キレンオキサイド鎖を含有する、アルコキシシラン化合
    物を固形分で0.1〜20重量部、含有することを特徴
    とする請求項1または請求項2に記載の非汚染塗料用組
    成物。
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