JP5074911B2 - 親水化コーティング剤 - Google Patents

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Description

本発明は、親水化コーティング剤、該親水化コーティング剤の製造方法、該親水化コーティング剤を用いた親水化方法、および、該親水化コーティング剤から形成される親水化コーティング膜に関する。
屋外に設置される物品において、その表面を親水化すると、降雨時に汚れが洗い流されるので、美観を保つことができる。塗膜表面を親水化する方法としては、アルキルシリケート化合物を含有する塗料をコーティングする方法が一般的に用いられている。しかしながら、該方法においては、降雨によるアルキルシリケート化合物の加水分解によって塗膜表面が親水化されるので、コーティング後初期の耐汚染性が不十分であるという問題があった。
このような問題を解決するために、シリケート化合物の加水分解物、ノニオン系界面活性剤、水、および親水性有機溶剤を含む親水化処理剤が提案されている(特許文献1)。該親水化処理剤は、コーティング後すぐに基材表面を親水化し得るが、その効果を長期にわたって維持できないという問題を有する。
特開2002−265924号公報
本発明は上記従来の問題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、コーティング直後から長期にわたって基材表面を親水化することが可能な親水化コーティング剤を提供することにある。
本発明の親水化コーティング剤は、(a)テトラアルコキシシランおよび/またはその縮合物の加水分解体、(b)アルコキシシリル基を有するポリエチレンオキサイド化合物および/またはその加水分解体、(c)水、ならびに(d)親水性有機溶媒を含み、該アルコキシシリル基を有するポリエチレンオキサイド化合物が有するポリエチレンオキサイドユニットの平均分子量が400〜2000であり、該化合物におけるポリエチレンオキサイドユニットの含有率が40〜75質量%であり、アルコキシシリル基の含有率が15〜40質量%である。
別の実施形態においては、本発明の親水化コーティング剤は、(a)テトラアルコキシシランおよび/またはその縮合物の加水分解体、(b)アルコキシシリル基を有するポリエチレンオキサイド化合物および/またはその加水分解体、(c)水、ならびに(d)親水性有機溶媒を混合して得られる、親水化コーティング剤であって、該アルコキシシリル基を有するポリエチレンオキサイド化合物が有するポリエチレンオキサイドユニットの平均分子量が400〜2000であり、該化合物におけるポリエチレンオキサイドユニットの含有率が40〜75質量%であり、アルコキシシリル基の含有率が15〜40質量%である。
好ましい実施形態においては、親水化コーティング剤中における上記(a)成分の含有量が、0.05〜10質量%である。
好ましい実施形態においては、親水化コーティング剤中における上記(b)成分の含有量が、0.02〜10質量%である。
好ましい実施形態においては、上記(b)アルコキシシリル基を有するポリエチレンオキサイド化合物が、シランカップリング剤と、該シランカップリング剤が有する反応性基と反応し得る官能基を有するポリエチレンオキサイド化合物とを反応させて得られるものである。
好ましい実施形態においては、上記親水化コーティング剤は、(e)ノニオン系界面活性剤を、上記(c)成分100質量部に対して0.02〜10質量部さらに含み、該(e)ノニオン系界面活性剤がアルキレンオキサイドユニットを有し、1分子中におけるアルキレンオキサイドユニットの質量が40〜75質量%である。
好ましい実施形態においては、上記親水化コーティング剤は、(f)有機アルミニウム化合物および/またはその加水分解体をさらに含む。
本発明の別の局面によれば、上記親水化コーティング剤の製造方法が提供される。該製造方法は、(a)テトラアルコキシシランおよび/またはその縮合物の加水分解体と、(b)アルコキシシリル基を有するポリエチレンオキサイド化合物および/またはその加水分解体とを、(d)親水性有機溶媒に溶解する工程、および得られた溶液に(c)水を添加する工程を有する。
本発明のさらに別の局面によれば、親水化コーティング膜が提供される。該親水化コーティング膜は、上記親水化コーティング剤を基材表面に塗布することによって得られる。
本発明のさらに別の局面によれば、基材表面の親水化方法が提供される。該親水化方法は、上記親水化コーティング剤を基材表面に塗布する工程を有する。
本発明によれば、コーティング後の初期段階から長期にわたって基材表面を親水化することが可能な親水化コーティング剤が提供される。
〔1.親水化コーティング剤〕
本発明の親水化コーティング剤は、(a)テトラアルコキシシランおよび/またはその縮合物の加水分解体、(b)アルコキシシリル基を有するポリエチレンオキサイド化合物および/またはその加水分解体、(c)水、ならびに(d)親水性有機溶媒を含む。該アルコキシシリル基を有するポリエチレンオキサイド化合物が有するポリエチレンオキサイドユニットの平均分子量が400〜2000であり、該化合物におけるポリエチレンオキサイドユニットの含有率が40〜75質量%であり、アルコキシシリル基の含有率が15〜40質量%である。また、該親水化コーティング剤は、ノニオン系界面活性剤、有機アルミニウム化合物および/またはその加水分解体、コロイダルシリカ等をさらに含み得る。
本発明の親水化コーティング剤が、コーティング後の初期段階から長期にわたって基材表面を親水化し得るメカニズムは、明らかではないが、以下のように推測される。第1に、(b)成分が有するポリエチレンオキサイドユニットが基材表面への親水性付与に寄与することにより、コーティング後の初期段階で基材表面を親水化することが可能になると考えられる。第2に、本発明の親水化コーティング剤は、(c)水を含むため、アルコキシシリル基を有するポリエチレンオキサイド化合物を(b)成分として用いた場合であっても、該化合物が有するアルコキシシリル基の少なくとも一部は、加水分解されてヒドロキシシリル基になると考えられる。すなわち、アルコキシシリル基を有するポリエチレンオキサイド化合物を用いた場合であっても、その加水分解体を用いた場合であっても、親水化コーティング剤中において、(b)成分はヒドロキシシリル基を有することになる。このような親水化コーティング剤からコーティング膜を形成した場合、(a)成分が有するヒドロキシシリル基と(b)成分が有するヒドロキシシリル基とが反応(代表的には、脱水縮合反応)し得るので、降雨等の水との接触による(b)成分の流出が防止され、その結果、ポリエチレンオキサイドユニットの親水化能が長期にわたって維持され得ると考えられる。
親水化コーティング剤の固形分濃度は、好ましくは0.1〜15質量%、より好ましくは0.1〜10質量%、さらに好ましくは0.5〜5質量%である。このような固形分濃度であれば、コーティングする際の作業性に優れるので、スプレー等の簡易で効率的なコーティング方法を適用し得る。なお、上記固形分濃度は計算によって求められ得る。親水化コーティング剤の溶媒である水の揮散とともに縮合が進行するため、溶液の固形分濃度を実測することが困難だからである。
(a)テトラアルコキシシランおよび/またはその縮合物の加水分解体
テトラアルコキシシランおよび/またはその縮合物の加水分解体としては、任意の適切なものが採用され得る。なかでも、ポリヒドロキシシロキサンが好ましく、実質的にアルコキシ基を有さない(すなわち、実質的に全てのアルコキシ基が加水分解された)テトラアルコキシシランおよび/またはその縮合物の加水分解体がより好ましい。このような加水分解体は、コーティング膜表面の親水化能に優れるからである。なお、「実質的にアルコキシ基を有さない」とは、核磁気共鳴分析(H−NMR)または赤外分光分析(IR)で、アルコキシ基に基づくピークが観察されないことをいう。
親水化コーティング剤中におけるテトラアルコキシシランおよび/またはその縮合物の加水分解体の含有量は、好ましくは0.05〜10質量%、より好ましくは0.05〜5質量%、さらに好ましくは0.05〜3質量%である。含有量が0.05質量%未満であると、基材表面に十分な親水性を付与できない場合がある。また、含有量が10質量%を超えると、得られるコーティング膜の外観が低下する場合がある。
テトラアルコキシシランおよび/またはその縮合物の加水分解体のpHとしては、特に制限はなく、他の成分の種類等に応じて適切に選択され得る。1つの実施形態において、テトラアルコキシシランおよび/またはその縮合物の加水分解体のpHは、酸性、好ましくは5以下、より好ましくは2〜5、さらに好ましくは2.5〜4.5、特に好ましくは3〜4であり得る。別の実施形態において、テトラアルコキシシランおよび/またはその縮合物の加水分解体のpHは、塩基性、すなわち、7より大きく、好ましくは8以上、より好ましくは8〜13、さらに好ましくは8〜12、特に好ましくは8〜11であり得る。一般に、テトラアルコキシシランおよび/またはその縮合物の加水分解体は、pHが5を超え7以下の環境下で不安定な状態となり、析出、ゲル化等の現象が生じ易いからである。
テトラアルコキシシランおよび/またはその縮合物の加水分解体は、任意な適切なテトラアルコキシシランおよび/またはその縮合物(以下、まとめてアルコキシシラン化合物と称する場合がある)を加水分解することにより得られる。例えば、アルコキシシラン化合物、親水性有機溶媒、該アルコキシシラン化合物が有するアルコキシ基の当量(モル)以上の水、および、酸性触媒を混合することにより、酸性のアルコキシシラン化合物の加水分解体溶液が得られ得る(第1の調製方法)。また、該酸性溶液を塩基に添加することにより、塩基性のアルコキシシラン化合物の加水分解体溶液が得られ得る(第2の調製方法)。また、アルコキシシラン化合物を、塩基性触媒を含む水または水と親水性有機溶媒との混合溶媒中に添加することにより、塩基性のアルコキシシラン化合物の加水分解体溶液が得られ得る(第3の調製方法)。
(a−1)第1の調製方法
第1の調製方法は、酸性のアルコキシシラン化合物の加水分解体溶液を得る方法である。
a−1−1.アルコキシシラン化合物
アルコキシシラン化合物は、通常、単一の化合物ではなく、代表的には、縮合度、分岐や架橋の有無等の点で、種々の構造を有するものの混合物である。このため、本明細書においては、アルコキシシラン化合物を、模式的に式(1)によって表す。式(1)は、アルコキシシラン化合物が分岐や架橋を有さない場合を示している。
Figure 0005074911
式(1)において、アルコキシシラン化合物の縮合度nは平均値である。nは、1以上であり、1〜50が好ましく、1〜20がより好ましい。該縮合度は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により求めることができる。
式(1)において、Rは、それぞれ独立して、置換もしくは非置換の直鎖状または分岐状アルキル基であり、好ましくは炭素数1〜4の置換もしくは非置換の直鎖状または分岐状アルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜4の非置換の直鎖状または分岐状アルキル基であり、さらに好ましくは非置換の炭素数1〜2のアルキル基である。Rが上記好ましいアルキル基である場合、加水分解性が向上するので、効率良く加水分解体を得ることができる。
上記Rの具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基が挙げられる。なかでも、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、およびn−ブチル基が好ましく、メチル基およびエチル基がより好ましく、メチル基がさらに好ましい。
したがって、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−iso−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシランまたはこれらの縮合物が好ましく用いられる。なかでも、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、およびこれらの縮合物が好ましく、テトラメトキシシランおよびその縮合物がより好ましい。本発明においては、テトラアルコキシシランおよびその縮合物を1種のみ用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
テトラアルコキシシランの縮合物としては、好ましくは6個以上、より好ましくは6〜102個、さらに好ましくは12〜42個のアルコキシ基を有するものが用いられる。加水分解により適度な数のヒドロキシシリル基が得られるので、硬度が高いコーティング膜を得ることができるからである。上記のとおり、テトラアルコキシシランの縮合物は、種々の縮合度を有するものを含み得ることから、当該アルコキシ基の数は、それらの平均値である。テトラアルコキシシランの縮合物が有するアルコキシ基の数は、上記縮合度から求めることができる。
上記Rが置換基を有する場合、テトラアルコキシシランまたはその縮合物が有する置換基の数はアルコキシ基の数の半分以下であることが好ましい。置換基としては、任意の適切なものを用いることができる。具体的には、例えば、クロル、ブロム等のハロゲン原子、メトキシ、エトキシ、ブトキシ等のアルコキシ基、シアノ基、ジメチルアミノ基が挙げられる。このような置換基を有する場合には、置換アルキル基の炭素数の合計は1〜6であることが好ましい。また、上記アルキル基は、アルキレンオキサイドユニットを有する化合物で置換されていてもよい。アルキレンオキサイドユニットの種類としては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラメチレンオキサイドが挙げられる。
上記テトラアルコキシシランの縮合物は、任意の適切なテトラアルコキシシランを加水分解縮合することにより調製することができる。また、市販製品を用いてもよい。当該市販製品としては、例えば、三菱化学社製、商品名「MKCシリケートMS51」、「MKCシリケートMS56」、「MKCシリケートMS57」、「MKCシリケートMS60」(いずれもテトラメトキシシランの縮合物)、コルコート社製、商品名「エチルシリケート40」、「エチルシリケート48」(いずれもテトラエトキシシランの縮合物)が挙げられる。また、含有するアルキル基が異なるテトラアルコキシシランの縮合物の市販製品の例としては、例えば、三菱化学社製、商品名「MKCシリケートMS56B15」、「MKCシリケートMS56B30」、「MKCシリケートMS58B15」、「MKCシリケートMS56I30」、「MKCシリケートMS56F20」、コルコート社製、商品名「EMS−485」が挙げられる。
テトラアルコキシシランとその縮合物とを組み合わせて用いる場合には、含有するアルキル基が同一であってもよく、異なっていてもよい。含有するアルキル基が異なる場合の具体例としては、テトラメトキシシランの縮合物と、モノマーのテトラエトキシシランとを含む場合を挙げることができる。なお、モノマーのテトラアルコキシシランの配合量は、テトラアルコキシシランの縮合物100質量部に対して100質量部以下であることが好ましい。
a−1−2.親水性有機溶媒
親水性有機溶媒としては、上記アルコキシシラン化合物を、その加水分解反応が進行する程度に溶解し得る限り、任意の適切なものを用いることができる。例えば、アルコール、グリコール、グリコールのエーテルまたはエステル、ケトン等が挙げられる。具体的には、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、R−O−(CHCH(R)O)−H(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基であり、RはHまたはCHであり、mは1〜3の整数である。)、CH−O−(CHCH(R)O)−CH(式中、RはHまたはCHであり、lは1または2である。)、アセトン、メチルエチルケトン、ジアセトンアルコール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール等が好ましく用いられ得る。親水性有機溶媒は、1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記親水性有機溶媒の水への溶解度(20℃)としては、好ましくは5g/100gHO以上、より好ましくは20g/100gHO以上、さらに好ましくは100g/100gHO以上である。このような溶解度を有する親水性有機溶媒を用いることにより、該親水性有機溶媒と水と水に対する溶解性が十分でないアルコキシシラン化合物とを含む系を均一化することができる。その結果、効率的にアルコキシシラン化合物の加水分解反応を進行させ得る。
上記親水性有機溶媒の使用量は、アルコキシシラン化合物を溶解し得る量以上であればよい。当該混合量は、例えばアルコキシシラン化合物の質量の0.5〜20倍、好ましくは0.5〜15倍、さらに好ましくは1〜15倍である。混合量が当該好適範囲にある場合、後述の第2の調製方法で好適に用いられ得る加水分解体の酸性溶液が得られる。
a−1−3.水
上記水としては、任意の適切なものを用いることができる。例えば、水道水、イオン交換水、および純水が好ましく用いられる。
上記水の使用量は、アルコキシシラン化合物が有するアルコキシ基の当量(モル)以上である。当該量の水を用いることにより、上記アルコキシシラン化合物の加水分解反応を十分に進行させ得る。その結果、アルコキシ基を実質的に有さないアルコキシシラン化合物の加水分解体を得ることができる。
上記水の使用量は、好ましくはアルコキシシラン化合物が有するアルコキシ基の20倍当量(モル)以下であり、より好ましくは10倍当量(モル)以下である。当該量の水を用いることにより、加水分解反応中におけるアルコキシシラン化合物またはその加水分解体の析出を防止し得るとともに、得られる加水分解体の貯蔵安定性を向上させ得る。
a−1−4.酸性触媒
上記酸性触媒としては、アルコキシシラン化合物が有するアルコキシ基の加水分解反応に対して触媒作用を有するプロトン酸類やルイス酸類であれば、任意の適切なものを使用することができる。具体的には、例えば、塩酸、硝酸、硫酸等の無機酸;酢酸、パラトルエンスルホン酸等の有機酸;チタン、アルミニウム、ジルコニウム等の金属アルコキシドまたはキレート化合物;が挙げられる。触媒作用が適度であるので、生成した加水分解体の縮合が進行し難いからである。なかでも、アルミニウム触媒が好ましく用いられる。アルミニウム触媒としては、例えば、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレートが挙げられる。
上記酸性触媒の使用量としては、アルコキシシラン化合物が有するアルコキシ基の加水分解反応に対して触媒作用を発揮する量以上であればよい。具体的には、当該使用量は、上記アルコキシシラン化合物100質量部に対して、好ましくは0.1〜10質量部、より好ましくは0.1〜5質量部である。
a−1−5.混合方法
混合方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。好ましくは、アルコキシシラン化合物と酸性触媒と親水性有機溶媒とを混合した混合液に、水を加える方法が用いられる。このような方法で混合することにより、得られる混合液の白濁、沈殿の生成、またはゲル化を防止し得る。水は、少量ずつ添加することが好ましく、滴下によって添加することがより好ましい。なお、混合中に副生成物として析出物等が生成する場合、濾過等の任意の適切な方法によって除去し、目視で濁りのない状態にすればよい。
上記混合液中においては、アルコキシシラン化合物の加水分解反応が進行することから、加水分解体が得られる。加水分解反応の好適な条件としては、例えば、以下の条件が挙げられる。すなわち、反応温度は、好ましくは10〜100℃、より好ましくは20〜80℃、さらに好ましくは40〜60℃である。水の添加が終了してからの反応時間は、好ましくは0.5〜10時間、より好ましくは1〜8時間、さらに好ましくは2〜6時間である。当該条件を採用することにより、加水分解反応を十分に進行させて目的の加水分解体を生成させ得ると共に、生成した加水分解体同士の縮合を抑制し得る。
上記混合により、酸性のアルコキシシラン化合物の加水分解体溶液が得られる。該溶液のpHは、通常2〜5、好ましくは2.5〜4.5、より好ましくは3〜4である。また、該溶液中における加水分解体濃度は、好ましくは1〜25質量%である。加水分解体濃度が1質量%未満であると、濃度が低くてコーティング剤として用いることができない場合がある。該濃度が25質量%を超えると、ゲル化により製造できない場合がある。
(a−2)第2の調製方法
第2の調製方法は、酸性のアルコキシシラン化合物の加水分解体溶液を塩基に添加することにより、塩基性のアルコキシシラン化合物の加水分解体溶液を得る方法である。
a−2−1.酸性のアルコキシシラン化合物の加水分解体溶液
酸性のアルコキシシラン化合物の加水分解体溶液としては、任意の適切なものが採用され得る。例えば、上記第1の調製方法によって得られる酸性溶液を用いることができる。この場合、該酸性溶液は、アルコキシシラン化合物の加水分解体と、親水性有機溶媒と、水と、触媒と、アルコキシ基が加水分解されて生じたアルコールとを含む。好ましい実施形態においては、後述する塩基へ添加する前に、該酸性溶液からアルコールや親水性有機溶媒を除去する。これらの除去方法としては、任意の適切な方法を採用し得る。代表的には、除去すべきアルコールおよび親水性有機溶媒の沸点以上の温度に加熱し、系外に除去した量が所定量に達した段階で加熱を終えればよい。該除去は、常圧下で行ってもよいし、減圧下で行ってもよい。
a−2−2.塩基への添加
塩基としては、任意の適切な塩基が用いられ得る。好ましくは水溶性の塩基である。なかでも、アンモニア、エタノールアミン、ジエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド等のモノアミン類が好ましく、アンモニア、エタノールアミン、ジエタノールアミンがより好ましく、アンモニアがさらに好ましい。
塩基の使用量としては、アルコキシシラン化合物の加水分解体が有するヒドロキシシリル基の1〜20モル%が好ましく、1〜10モル%がより好ましく、3〜10モル%がさらに好ましい。このような使用量であれば、ヒドロキシシリル基が残存する状態で塩基性のアルコキシシラン化合物の加水分解体溶液を得ることができる。
上記酸性溶液の塩基への添加は、少量ずつ行うことが好ましく、滴下によって行うことがより好ましい。このように酸性溶液を塩基に徐々に添加することで、不安定な状態となるpH5〜7を実質的に経ることなく、塩基性溶液を調製し得る。中和熱の影響を避けるために、好ましくは冷却条件下で添加を行う。取り扱いを容易にする観点から、塩基は水溶液としておくことが好ましい。塩基水溶液の量は、得られる塩基性溶液中の加水分解体濃度を1〜25質量%にし得る量が好ましい。代表的には、添加する酸性溶液と同量程度である。
(a−3)第3の調製方法
第3の調製方法は、塩基性のアルコキシシラン化合物の加水分解体溶液を得る方法である。
a−3−1.アルコキシシラン化合物
アルコキシシラン化合物としては、上記a−1−1項で説明したアルコキシシラン化合物が使用され得る。
a−3−2.塩基性触媒
塩基性触媒としては、水溶性の塩基性化合物であれば任意の適切なものが用いられ得る。例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等の無機水酸化物類;アンモニア;モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、n−ブチルアミン等のアミン類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のエタノールアミン類;N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン等のアミノアルコール類;ピリジン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン等のアミノ基を有するその他の有機化合物類等が挙げられる。上記アミン類はモノアミン類であることが好ましい。これらの塩基性触媒は、1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
アルコキシシラン化合物の加水分解反応は、塩基性触媒を含む溶媒中で行われる。その際、塩基性触媒は、後述する、水または水と親水性有機溶媒との混合溶媒中に溶解して使用される。塩基性触媒の使用量は、触媒の有する塩基性の程度(pKb)によって決定され、代表的には、アルコキシシラン化合物を添加する前のpHが9〜11の範囲内になるように調整される。
a−3−3.水または水と親水性有機溶媒との混合溶媒
第3の調製方法で使用される溶媒としては、水または水と親水性有機溶媒との混合液が用いられる。溶媒として水を用いた場合は、アルコキシシラン化合物の加水分解反応が速いという利点がある。一方、溶媒として水と親水性有機溶媒との混合液を用いた場合は、水への溶解度が十分でないテトラアルコキシシランの縮合物を溶解し易いという利点がある。親水性有機溶媒としては、上記a−1−2項で説明したものが利用可能である。
水はアルコキシシラン化合物の加水分解に使用される。そのため、水の使用量は、アルコキシシラン化合物が有するアルコキシ基の当量(モル)以上である。水と親水性有機溶媒との混合溶媒を使用する場合、水の比率を50質量%以上とし、水と親水性有機溶媒との混合溶媒の使用量を、得られる塩基性溶液中の加水分解体濃度を1〜25質量%にし得る量とすれば、必然的に水の使用量はアルコキシシラン化合物が有するアルコキシ基の当量(モル)以上となる。
a−3−4.添加方法
上記アルコキシシラン化合物を、塩基性触媒を含む水または水と親水性有機溶媒との混合溶媒中に添加することにより、アルコキシシラン化合物の加水分解反応が進行する。添加時間は、2時間以内であることが好ましい。添加方法は、全量を一挙に添加してもよく、所定の時間で連続的に添加してもよく、少量ずつを分割して添加してもよい。アルコキシシラン化合物がテトラアルコキシシランの縮合物を含む場合、アルコキシシラン化合物を親水性有機溶媒に溶解した溶液として添加することが好ましい。加水分解反応が穏やかに進行するからである。なお、混合中に副生成物として析出物等が生成する場合、上記a−1−5項と同様、濾過等の任意の適切な方法によって除去し、目視で濁りのない状態にすればよい。
アルコキシシラン化合物の添加時の反応温度および反応時間は、上記a−1−5項における反応温度および反応時間の記載内容が適用される。
上記第2または第3の調製方法により、塩基性のアルコキシシラン化合物の加水分解体溶液が得られる。該溶液のpHは、通常8〜13、好ましくは8〜12、より好ましくは8〜11である。
(b)アルコキシシリル基を有するポリエチレンオキサイド化合物および/またはその加水分解体
アルコキシシリル基を有するポリエチレンオキサイド化合物(以下、「化合物(b)」と称する場合がある。)としては、ポリエチレンオキサイドユニットの平均分子量が400〜2000であり、該化合物におけるポリエチレンオキサイドユニットの含有率が40〜75質量%であり、アルコキシシリル基の含有率が15〜40質量%である限り、任意の適切なものが採用され得る。(b)成分を含むことにより、基材表面への親水性付与および均一な塗布が可能となる。化合物(b)においては、加水分解性の点から、アルコキシシリル基のSi原子が、酸素原子ではなく、炭素原子を介してポリエチレンオキサイドユニットを含む部分と結合していることが好ましい。
化合物(b)は、好ましくは分子の末端にアルコキシシリル基を有し、より好ましくは両末端にアルコキシシリル基を有する。アルコキシシリル基は、好ましくはジアルコキシシリル基またはトリアルコキシシリル基、より好ましくはトリアルコキシシリル基である。トリアルコキシシリル基は酸素原子を介してジアルコキシシリル基に結合していてもよい。アルコキシシリル基において、Si原子に結合するアルコキシ基は、好ましくは炭素数1〜4の直鎖または分岐アルコキシ基、より好ましくはメトキシ基またはエトキシ基である。
ポリエチレンオキサイドユニットの平均分子量は、400〜2000、好ましくは400〜1000である。400未満であると、基材表面に十分な親水性を付与できない場合や均一な塗布ができない場合がある。また、2000を超えると、化合物(b)が固形化し、取り扱いに問題が生じる場合がある。
化合物(b)におけるポリエチレンオキサイドユニットの含有率は、40〜75質量%、好ましくは45〜70質量%である。40質量%未満であると、基材表面に十分な親水性を付与できない場合や均一な塗布ができない場合がある。また、75質量%を超えると、塗布時に濡れ性を付与することができず、塗装作業性が低下する場合がある。
化合物(b)におけるアルコキシシリル基の含有率(化合物(b)が2個以上のアルコキシシリル基を有する場合は、それらの合計含有率)は、15〜40質量%、好ましくは15〜35質量%、より好ましくは15〜30質量%である。15質量%未満であると、長期にわたって親水化することができない場合がある。また、40質量%を超えると、初期の親水化が不十分となる場合がある。
化合物(b)が、その他の部分、すなわち、アルコキシシリル基およびポリエチレンオキサイドユニット以外の部分に、ポリプロピレンオキサイドユニット等のポリエチレンオキサイド以外のポリアルキレンオキサイドを有する場合、該ポリアルキレンオキサイドユニットの分子量は、好ましくはポリエチレンオキサイドユニットの分子量の30%以下である。30%を超えると、基材表面に十分な親水性を付与できない場合があるからである。
化合物(b)は、代表的には、アルコキシシリル基含有化合物とポリエチレンオキサイド化合物とを反応させて得られる。このような反応の具体例としては、以下の調製方法a〜cが挙げられる。調製方法aにおいては、アルコキシシリル基とアルコキシシリル基以外の反応性基とを有するアルコキシシリル基含有化合物(以下、「シランカップリング剤」と称する場合がある。)と、シランカップリング剤が有する反応性基と反応し得る官能基を有するポリエチレンオキサイド化合物とを反応させる。調製方法aは、反応が単純であるので好ましい。調製方法bにおいては、シランカップリング剤と、シランカップリング剤が有する反応性基と同じ官能基を有するポリエチレンオキサイド化合物と、該反応性基を2つ有する二官能性化合物とを反応させる。調製方法cにおいては、テトラアルコキシシランおよび/またはその縮合物と、これと反応し得る官能基を有するポリエチレンオキサイド化合物とを反応させる。調製方法cは、得られた化合物(b)から加水分解によって、ポリエチレンオキサイドユニットが脱離しやすいという問題点を有する。なお、調製方法a〜cにおいて、目的とする化合物(b)を得るための、反応性基と官能基との組み合わせ、それらを有する化合物の選択、反応条件の設定等は、当業者によって適切に行われ得る。
上記シランカップリング剤の具体例としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基含有シランカップリング剤;γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基含有シランカップリング剤;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、スチリルトリメトキシシラン等のビニル基含有シランカップリング剤;γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等のメルカプト基含有シランカップリング剤;γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン等のイソシアネート基含有シランカップリング剤;等が挙げられる。
上記シランカップリング剤が有する反応性基と反応し得る官能基を有するポリエチレンオキサイド化合物の具体例としては、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリエチレンポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル等の水酸基含有化合物;ポリオキシエチレンジアミン等のアミノ基含有化合物;ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル等のエポキシ基含有化合物;等が挙げられる。
上記二官能性化合物としては、任意の適切なジオール、ジアミン、ジカルボン酸、ジエポキシド等を用いることができる。
アルコキシシリル基を有するポリエチレンオキサイド化合物の加水分解体(以下、「加水分解体(b)」と称する場合がある。)は、代表的には、上記化合物(b)を加水分解して得られる。加水分解条件は、用いる化合物(b)の種類等に応じて、適切に設定され得る。例えば、後述の水または水と親水性有機溶媒との混合溶媒に化合物(b)を溶解し、20〜60℃で、0.5〜8時間程度攪拌することにより、加水分解体(b)を得ることができる。また、上記(a)成分の調製において、アルコキシシラン化合物の加水分解反応時に化合物(b)を共存させることにより、加水分解体(b)を得ることができる。
親水化コーティング剤中における(b)成分の含有量は、好ましくは0.02〜10質量%であり、より好ましくは0.05〜10質量%である。0.02質量%未満であると、基材表面に十分な親水性を付与できない場合や、親水化コーティング剤を均一に塗布することができない場合がある。一方、10質量%を超えても、効果の向上が認められず、塗膜性能に劣る場合がある。
(c)水および(d)親水性有機溶媒
水としては、上記a−1−3項に記載したものと同様のものが採用され得る。親水性有機溶媒としては、上記a−1−2項に記載したものと同様のものが採用され得る。水および親水性有機溶媒の使用量は、それぞれ、親水化コーティング剤が含有する各成分を溶解して均一な溶液とし得、各成分の含有量を所望の範囲にし得る量であればよい。ただし、他の成分が水溶液や、親水性有機溶媒含有溶液の状態で用いられる場合は、これらに含まれる水および親水性有機溶媒も、それぞれ(c)成分および(d)成分に該当するものとする。水と親水性有機溶媒との質量比は、例えば、5/95〜95/5とすることができる。
(e)ノニオン系界面活性剤
本発明の親水化コーティング剤は、好ましくはノニオン系界面活性剤(ただし、上記(b)成分に該当するものを除く。)をさらに含む。ノニオン系界面活性剤を含むことにより、基材表面の親水化能をさらに向上することができる。特に、ノニオン系界面活性剤は、コーティング後すぐの基材表面の接触角を低下させる能力に優れるので、降雨等による加水分解反応を経ることなく、基材表面に親水性を付与し得る。さらに、ノニオン系界面活性剤は、親水化コーティング剤の表面張力を低下させるので、スプレー等の簡易で効率的なコーティング方法による均一な塗布を可能にし得る。
ノニオン系界面活性剤としては、任意の適切なものが採用され得る。好ましいノニオン系界面活性剤としては、アルキレンオキサイドユニットを有する界面活性剤が挙げられ、1分子中におけるアルキレンオキサイドユニットの質量が40〜75質量%である界面活性剤がより好ましい。
アルキレンオキサイドユニットとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラメチレンオキサイドが挙げられる。なかでも、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドが好ましい。また、1分子中のアルキレンオキサイドユニットの数は7〜15であることが好ましい。
1分子中におけるアルキレンオキサイド部の質量は、好ましくは40〜75質量%であり、より好ましくは40〜70質量%である。40質量%未満であると、他の成分との相溶性が低下し、コーティング膜が白濁する場合がある。75質量%を超えると、均一に塗布できない場合がある。
ノニオン系界面活性剤としては、エーテル型、エーテル・エステル型のいずれであってもよい。好ましいエーテル型ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルが挙げられる。アルキルエーテルのアルキル基の炭素数は、好ましくは10〜18、より好ましくは12〜18である。好ましいエーテル・エステル型ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステルが挙げられる。脂肪酸エステル部(エステルカルボニル基を含む)の炭素数は、好ましくは10〜18、より好ましくは12〜18である。このようなポリアルキレングリコール脂肪酸エステルとしては、花王(株)製、商品名「エマノーン1112」(ポリエチレングリコールモノラウレート)が市販されている。
また、アセチレン基を中央に有するノニオン系界面活性剤も使用可能である。具体例としては、日信化学工業社製、商品名「サーフィノール440」(2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール−ジポリオキシエチレンエーテル)、商品名「サーフィノール465」、商品名「ダイノール604」(2,5,8,11−テトラメチル−6−ドデシン−5,8−ジオール−ジポリオキシエチレンエーテル)が挙げられる。アセチレン基を中央に有するノニオン系界面活性剤は、基材表面の接触角を低下させる能力が高いという長所を有する。
親水化コーティング剤中におけるノニオン系界面活性剤の含有量は、(c)成分100質量部に対して、好ましくは0.02〜10質量部、より好ましくは0.02〜5質量部、さらに好ましくは0.02〜1質量部である。0.02質量部未満であると、基材表面に十分な親水性を付与できない場合や、親水化コーティング剤を均一に塗布することができない場合がある。一方、10質量部を超えても、効果の向上が認められず、タック性が発現する等の塗膜性能の低下が生じる場合がある。
(f)有機アルミニウム化合物および/またはその加水分解体
本発明の親水化コーティング剤は、好ましくは有機アルミニウム化合物および/またはその加水分解体をさらに含む。特に、親水化コーティング剤が(e)ノニオン系界面活性剤を含む場合、有機アルミニウム化合物および/またはその加水分解体を共に含むことが好ましい。得られる親水化コーティング膜の親水性を長期にわたって高く維持し得るからである。このような効果が奏される具体的なメカニズムは明らかではないが、以下のとおり推測される。すなわち、コーティング膜の形成時において、加水分解体(b)の全てが(a)成分と反応するわけではなく、未反応の加水分解体(b)が存在すると考えられる。ここで、有機アルミニウム化合物の加水分解体が複数のヒドロキシシリル基とキレート結合して架橋構造を形成することにより、(a)成分と反応しなかった(b)成分や結合部位を持たない(e)成分が、降雨等の水によってコーティング膜から流出しにくい膜構造を形成することが期待される。
有機アルミニウム化合物および/またはその加水分解体としては、任意の適切なものが採用され得る。例えば、アルミニウムキレート化合物および/またはその加水分解体、アルミニウムアルコレート化合物および/またはその加水分解体が挙げられる。なかでも、取扱いが容易であることから、アルミニウムキレート化合物および/またはその加水分解体が好ましい。有機アルミニウム化合物および/またはその加水分解体は、1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
アルミニウムキレート化合物としては、例えば、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アセチルアセトネートアルミニウムジイソプロピレート、ジエチルマロネートアルミニウムジイソプロピレート、ビス(アセチルアセテート)アルミニウムイソプロピレート、ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウムイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)が挙げられる。
アルミニウムアルコレート化合物としては、例えば、アルミニウムエチレート、アルミニウムプロピレート、アルミニウムイソプロピレート、sec−ブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムsec−ブチレート、アルミニウムsec−アミレートが挙げられる。
有機アルミニウム化合物の加水分解体は、代表的には、上記有機アルミニウム化合物を水に溶解し、加水分解することにより得られる。このとき、有機アルミニウム化合物と水とを直接混合すると、局所的な加水分解反応が生じて凝集体が生成する場合がある。そのため、有機アルミニウム化合物を前述の親水性有機溶媒に溶解し、得られた溶液と水とを混合することが好ましい。
有機アルミニウム化合物および/またはその加水分解体を含む場合の含有量としては、その水酸化アルミニウム換算質量が、上記(a)成分の含有量に対して好ましくは5〜30質量%、より好ましくは5〜28質量%、さらに好ましくは5〜26質量%、特に好ましくは5〜20質量%である。該含有量が5質量%未満であると、得られる親水化コーティング膜の親水性を長期にわたって高く維持できない場合がある。また、該含有量が30質量%を超えると、得られるコーティング膜にクラックが生じ、外観が低下する場合や、親水化コーティング剤の安定性が低下する場合がある。なお、(a)成分の含有量は、アルコキシシラン化合物が、縮合反応せずに完全に加水分解したものとして、計算により決定され得る。また、ここで、水酸化アルミニウム換算質量とは、(f)成分に含まれるアルミニウム原子が全て水酸化アルミニウムになったとして計算される質量である。(f)成分が使用される場合、有機アルミニウム化合物の加水分解体である水酸化アルミニウムが主として機能し、アルミニウム原子に結合しているアルコキシ基やキレート基の種類は、親水化機能の発現に直接的に関与しないと推測されるからである。なお、酸性の(a)成分溶液の調製において、上記a−1−4項の酸性触媒として有機アルミニウム化合物が用いられる場合、(a)成分溶液に含まれる有機アルミニウム化合物(酸性触媒)は、(f)成分としてその含有量に合算される。したがって、酸性触媒として使用される有機アルミニウム化合物の量が、上記所定量に達していない場合、所定量となるように別途(f)成分を添加することが好ましい。また、酸性触媒としての使用量が上記所定量の範囲に入っていた場合においても、上限値を上回らない量を追加して用いることも可能である。
(g)コロイダルシリカ
本発明の親水化コーティング剤は、必要に応じて、コロイダルシリカをさらに含み得る。コロイダルシリカを含むことにより、親水化コーティング剤の貯蔵安定性または親水化能がさらに向上され得る。コロイダルシリカとしては、任意の適切なものが採用され得る。例えば、酸性の(a)成分を用いる場合は、酸性コロイダルシリカが好ましく用いられる。塩基性の(a)成分を用いる場合は、塩基性コロイダルシリカが好ましく用いられる。中和反応に起因して貯蔵安定性向上効果が損なわれるのを回避するためである。なお、中性コロイダルシリカは、(a)成分のpHに関わらず、用いることができる。
コロイダルシリカの平均粒子径は、通常、1〜100nmであり、好ましくは10〜20nmである。
酸性コロイダルシリカは、例えば、通常のコロイダルシリカ、すなわち、ナトリウム塩部分やアンモニウム塩部分等の塩基性部分を有し、塩基性を示すコロイダルシリカにおいて、これらの塩基性部分をシラノール基化することにより得られる。酸性コロイダルシリカの市販品としては、例えば、日産化学工業社製、商品名「スノーテックスOXS」、「スノーテックスOS」、「スノーテックスO」、「スノーテックスO−40」、「スノーテックスOL」、「スノーテックスOUP」、「スノーテックスPS−SO」、「スノーテックスPS−MO」が挙げられる。これらは、いずれも水分散体である。また、水分散体の水を有機溶剤に置換したものも、オルガノシリカゾルシリーズとして市販されている。この中では、アルコール等の親水性有機溶剤で置換したものが好ましく用いられる。
塩基性コロイダルシリカとしては、例えば、ケイ酸塩化合物から合成され、ナトリウム塩部分やアンモニウム塩部分等の塩基性部分を有するものが用いられる。このような塩基性コロイダルシリカの市販品としては、例えば、日産化学工業社製、商品名「スノーテックスXS」、「スノーテックスS」、「スノーテックス20」、「スノーテックス30」、「スノーテックス40」、「スノーテックス50」、「スノーテックスN」、「スノーテックスNXS」、「スノーテックス20L」、「スノーテックスOL」、「スノーテックスXL」、「スノーテックスZL」、「スノーテックスUP」、「スノーテックスPS−S」、「スノーテックスPS−M」が挙げられる。
中性コロイダルシリカは、例えば、アルコキシシランを原料としたゾルゲル法によって得られる。このような中性コロイダルシリカの市販品としては、例えば、扶桑化学工業社製、商品名「PL−1」、「PL−3」、「PL−7」が挙げられる。
親水化コーティング剤中におけるコロイダルシリカの含有量は、上記(a)成分100質量部に対し、好ましくは固形分で10〜300質量部であり、より好ましくは50〜100質量部である。10質量部未満であると、目的とする効果が得られない場合がある。一方、300質量部を超えても、含有量に見合う効果が得られず、かえって得られる膜に不具合が生じる場合がある。
(h)その他の成分
本発明の親水化コーティング剤は、その機能を阻害しない限り、その他の成分として、樹脂成分、種々の添加剤、その他の溶剤などを含むことができる親水化コーティング剤中におけるこれらのその他の成分の含有量は、通常、0〜10質量%である。
〔2.親水化コーティング剤の製造方法〕
本発明の親水化コーティング剤は、(a)テトラアルコキシシランおよび/またはその縮合物の加水分解体、(b)アルコキシシリル基を有するポリエチレンオキサイド化合物および/またはその加水分解体、(c)水、(d)親水性有機溶媒、および、必要に応じてその他の成分を、所望の含有量となるように混合することにより得られる。好ましくは、本発明の親水化コーティング剤は、(a)テトラアルコキシシランおよび/またはその縮合物の加水分解体と、(b)アルコキシシリル基を有するポリエチレンオキサイド化合物および/またはその加水分解体とを、(d)親水性有機溶媒に溶解する工程、および、得られた溶液に(c)水を添加する工程を経て得られる。このような工程を経ることにより、均一な溶液として親水化コーティング剤を得ることができる。
本発明の親水化コーティング剤が、有機アルミニウム化合物を含む場合、有機アルミニウム化合物は、水への溶解性が低いので、有機アルミニウム化合物と水とを直接混合すると、局所的に加水分解反応が生じて凝集体が生成するおそれがある。したがって、このような場合においては、予め有機アルミニウム化合物を親水性有機溶媒に溶解し、次いで、得られた溶液と他の成分(例えば、水)とを混合することが好ましい。特に、上記第2または第3の調製方法等で調製された塩基性の(a)成分溶液は、水を多く含み、また、強塩基性であり得るので、有機アルミニウム化合物は(a)成分溶液との混合前に親水性有機溶媒に溶解しておくことが好ましい。一方、上記第1の調製方法で調製された酸性の(a)成分溶液は、通常、親水性有機溶剤を多く含むので、該酸性溶液に各成分を任意の順序で添加し、混合することにより、親水化コーティング剤を製造することが可能である。
〔3.親水化コーティング膜〕
本発明の親水化コーティング膜は、上記親水化コーティング剤を基材表面に塗布することによって得られる。上記(a)〜(d)成分を含む親水化コーティング剤を基材表面に塗布することにより、コーティング後の初期段階から長期にわたって該表面を親水化することができ、結果として、耐汚染性を付与することができる。
基材としては、親水化コーティング剤によってその表面が浸食されない限り、任意の適切なものが採用され得る。例えば、金属、コンクリート、プラスチック、ガラス等の材料から形成された基材、および、このような材料の表面に形成された塗膜を基材とすることができる。塗膜としては、一般的には、建築用、自動車用、工業用等の各種分野の上塗り塗膜が挙げられる。これら上塗り塗膜は、溶剤系、水性、粉体、UV硬化系等の種々の塗料により形成することができる。また、塗布により耐汚染性が付与されることから、橋梁や建物の外側に使用される部材、住宅用外装材、自動車、産業機械、自動販売機、ガードレール等、通常、屋外で使用される物品を構成する材料の表面に形成された塗膜であることが好ましい。上塗り塗膜は、親水性または親水化可能な塗膜であっても、通常の塗膜であっても構わない。上塗り塗膜が親水性または親水化可能な塗膜である場合、後述の塗膜の親水化方法は、親水性付与の補助的手段となる。一方、上記上塗り塗膜が通常の塗膜である場合は、該塗膜の親水化方法は、塗膜への新しい機能付与手段となる。
塗布方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。例えば、スプレー塗装、ロールコーター法、刷毛塗り、浸漬塗装、ワイプ塗装、シャワーカーテン塗装が挙げられる。塗布した後の乾燥方法としては、室温で乾燥するまで放置してもよく、40〜100℃で1〜30分程度加熱することにより行ってもよい。
親水化コーティング膜の乾燥膜厚は、特に規定されるものではない。ただし、あまり厚くなると、塗膜の透明性に劣ったり、ワレなどの塗膜欠陥が生じたりするおそれがある。例えば、0.01〜1μmとすることができる。
親水化コーティング膜の水接触角は、好ましくは35°以下、より好ましくは30°以下である。
〔4.親水化方法〕
本発明の別の局面によれば、基材表面の親水化方法が提供される。該親水化方法は、上記親水化コーティング剤を基材表面に塗布する工程を有する。該親水化方法によれば、基材表面の水接触角を好ましくは35°以下、より好ましくは30°以下にすることができる。基材および塗布方法については、上記3.項における基材および塗布方法と同様の説明が適用され得る。
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、特に明記しない限り、実施例における部および%は質量基準である。
実施例で行った各測定の測定条件を以下に示す。
<接触角の測定>
協和界面科学社製CA−A型接触角測定装置を用いて測定した。
[参考例1−1 アルコキシシリル基を有するポリエチレンオキサイド化合物の調製1]
100mLフラスコに、30部の商品名「PEG600」(平均分子量600のポリエチレングリコール、和光純薬社製)と49.48部の商品名「KBE−9007」(γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、信越化学工業社製)とを仕込み、塩化カルシウム管をつけた蛇管冷却管を取り付け、90℃で8時間加熱攪拌した。放冷後、得られた反応物にIRスペクトルでOH基の吸収が残っていることを確認したので、さらに8時間加熱攪拌した。IRスペクトルで得られた反応物のOH基の吸収がほぼ消失したことを確認した後、冷却した。得られた黄色液を500mL分液ロートに移し、ヘキサン約200mLで3回抽出を行った。得られた黄色液体のIRスペクトルにイソシアネート基の吸収がないことを確認した後、エバポレーターで残存ヘキサンを減圧留去した。これにより、アルコキシシリル基を有するポリエチレンオキサイド化合物(PEG600のKBE−9007両末端付加体)50gを黄色液体として得た。収率は91.3%であった。
[参考例1−2 アルコキシシリル基を有するポリエチレンオキサイド化合物の調製2]
100mLフラスコに、72.8部の商品名「エマノーン1112」(ポリエチレングリコールモノラウリルエステル、EO=68.9%、分子量640、花王社製)と24.74部の商品名「KBE−9007」とを仕込み、塩化カルシウム管をつけた蛇管冷却管を取り付け、90℃で12時間加熱攪拌した。IRスペクトルで得られた反応物のOH基の吸収がほぼ消失したことを確認した後、冷却した。これにより、アルコキシシリル基を有するポリエチレンオキサイド化合物(エマノーン1112のKBE−9007片末端付加体)86gを無色透明液体として得た。収率は88.1%であった。
[参考例1−3 アルコキシシリル基を有するポリエチレンオキサイド化合物の調製3]
100mLフラスコに、17.9部の商品名「KBM−903」(γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業社製)とエタノール20部とを仕込み、窒素気流下、35.15部のポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(分子量703)を20分で滴下した。滴下後、室温で3時間攪拌した。得られた溶液を減圧濃縮して、アルコキシシリル基を有するポリエチレンオキサイド化合物(両末端付加体)51gを淡黄色液体として得た。収率は96.1%であった。
[参考例1−4 アルコキシシリル基を有するポリエチレンオキサイド化合物の調製4]
200mLフラスコに、16.8部のヘキサメチレンジイソシアネートとアセトン15部の溶液を仕込み、30部の商品名「PEG600」とアセトン30部の溶液を窒素気流下、20分で滴下した。滴下後、室温で1時間、40℃で3時間攪拌した。得られた溶液を水冷し、室温下に17.9部の商品名「KBM−903」を滴下した。滴下後、室温で3時間攪拌した。得られた溶液を減圧濃縮して、アルコキシシリル基を有するポリエチレンオキサイド化合物(両末端付加体)64gを淡黄色液体として得た。収率は96.2%であった。
[参考例1−5 アルコキシシリル基を有するポリエチレンオキサイド化合物の調製5]
30部の商品名「PEG600」の代わりに50部の商品名「PEG1000」(平均分子量1000のポリエチレングリコール、和光純薬社製)を用いたこと、および、49.48部の商品名「KBE−9007」の代わりに41.0部の商品名「SILQUEST Y−5187 SILANE」(γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、モメンティブ・パフォーマンス・ジャパン社製)を用いたこと以外は、参考例1−1と同様にして、アルコキシシリル基を有するポリエチレンオキサイド化合物(PEG1000のSILQUEST Y−5187 SILANE両末端付加体)66gを黄色液体として得た。収率は93.0%であった。
[参考例1−6 アルコキシシリル基を有するポリエチレンオキサイド化合物の調製6]
30部の商品名「PEG600」の代わりに10部の商品名「PEG200」(平均分子量200のポリエチレングリコール、和光純薬社製)を用いたこと以外は、参考例1−1と同様にして、アルコキシシリル基を有するポリエチレンオキサイド化合物(PEG200のKBE−9007両末端付加体)32g(収率92.1%)を黄色液体として得た。収率は92.1%であった。
参考例1−1〜1−6の結果を表1にまとめて示す。
Figure 0005074911
[参考例2−1 アルコキシシラン化合物の加水分解体の調製1]
1Lコルベンに、商品名「MKCメチルシリケート51」(三菱化学社製、テトラメトキシシランの縮合物)141部、商品名「アルミキレートD」(川研ファインケミカル社製 アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)・イソプロパノール溶液、固形分76%)6部、商品名「エキネンF6」(日本アルコール販売社製 エタノールとメタノールの混合物(EtOH/MeOH=89/11))341部を仕込み、攪拌しながら40℃に加温した。次いで、該コルベンにイオン交換水512部を2時間で滴下した。さらに40℃で2時間加温攪拌した後、室温まで冷却することにより、アルコキシシラン化合物の加水分解体溶液を得た。得られた溶液のpHは3.4であった。
[参考例2−2 アルコキシシラン化合物の加水分解体の調製2]
1Lコルベンに25%アンモニア水9.6部を仕込み、イオン交換水838.4部を加えて希釈した。得られた希釈アンモニア水を25℃の水で水冷し、攪拌しながら、テトラメトキシシラン152部を2分30秒で滴下した。このとき、液温は38℃まで上昇した。滴下後、室温まで冷却しながら1時間攪拌した後、ろ紙でろ過することにより、アルコキシシラン化合物の加水分解体溶液を得た。得られた溶液のpHは9.4であった。
[参考例2−3 アルコキシシラン化合物の加水分解体の調製3]
1Lコルベンに商品名「MKCメチルシリケート51」(三菱化学社製)141部、商品名「アルミキレートD」(川研ファインケミカル社製)6部、商品名「エキネンF6」(日本アルコール販売社製)341部、参考例1−1で得たアルコキシシリル基を有するポリエチレンオキサイド化合物10部を仕込み、攪拌しながら40℃に加温した。次いで、該コルベンにイオン交換水502部を2時間で滴下した。さらに40℃で2時間加温攪拌したのち、室温まで冷却した。これにより、アルコキシシリル基を有するポリエチレンオキサイド化合物の加水分解体を含むアルコキシシラン化合物の加水分解体溶液を得た。得られた溶液のpHは3.5であった。
参考例2−1〜2−3において、アルコキシシラン化合物が縮合せずに全て加水分解されたとして、得られた溶液に含まれる各成分の量を計算した。結果を表2に示す。
Figure 0005074911
[実施例1−10]
(1)親水化コーティング剤の調製
表3に記載の配合比で各成分を混合することにより、親水化コーティング剤を得た。なお、表3の(c)イオン交換水および(d)エタノールの配合比は、これら以外の成分に含まれる水およびエタノールとは別に添加した水およびエタノールの配合比である。
(2)塗装
アルミ板にジュエルグレインクリヤー塗料(日本ペイント社製のアクリル樹脂系塗料)をスプレー塗装して得た塗膜を基材として用いた。該基材を50℃に加温し、基材表面に30g/mになるように親水化コーティング剤をスプレーで塗装した後、室温で風乾した。
(3)評価
[塗装評価(スプレー性)]
上記条件でスプレー塗装し、目視で塗装状態を評価した。具体的には、ウェット塗膜に問題(ハジキ、液ヨリ等)が認められない場合を○とし、問題が認められる場合を×とした。「○」と評価した中で、塗着量が1/2量の時点で基材の全面を塗装できた場合を◎とした。
[コーティング膜の外観評価]
塗装後の基材を目視で観察し、塗装前の基材と同等の光沢を有し、問題(白化、虹、クラック等)が認められない場合を◎、光沢はやや低下気味だが問題が認められない場合を○、問題が認められた場合を×とした。
[耐汚染性評価]
塗装後1日風乾したコーティング膜の水接触角(CA1)によって耐汚染性を評価した。水接触角(CA1)が30°以下の場合を耐汚染性良好とする。
[耐水性評価]
塗装後1日風乾したコーティング膜を水道水に1日浸漬した。水から引き上げて1日室温で風乾した後、コーティング膜の水接触角(CA2)を測定し、耐水性を評価した。水接触角(CA2)が30°以下の場合を耐水性良好とする。
Figure 0005074911
[比較例1−3]
表4に記載の配合比になるように、実施例と同様にして各成分を混合することにより、コーティング剤を得た。得られたコーティング剤を実施例と同様に塗装し、評価した。結果を表4に示す。
Figure 0005074911
表3に示されるとおり、本発明の親水化コーティング剤から形成されるコーティング膜は、コーティング後初期の段階から耐汚染性に優れる。また、耐水性に優れることから、耐汚染性を長期にわたって維持し得ると考えられる。一方、表4に示されるとおり、比較例1および3のコーティング剤は、塗装性に問題があった。これは、比較例1および3のコーティング剤が所定のアルコキシシリル基を有するポリエチレンオキサイド化合物を含まないので、十分な濡れ性を得られなかったためと考えられる。また、比較例2のコーティング剤は、塗装性にも耐汚染性にも問題はなかったが、耐水性が不良であった。これは、用いたポリエチレンオキサイド化合物がアルコキシシリル基を有さないので、水との接触によりコーティング膜から流出したためと考えられる。
本発明の親水化コーティング剤は、基材表面を親水化して耐汚染性を付与し得ることから、塗料の分野等で好適に用いられ得る。

Claims (10)

  1. (a)テトラアルコキシシランおよび/またはその縮合物の加水分解体、
    (b)アルコキシシリル基を有するポリエチレンオキサイド化合物および/またはその加水分解体、
    (c)水、ならびに
    (d)親水性有機溶媒を含み、
    該アルコキシシリル基を有するポリエチレンオキサイド化合物が有するポリエチレンオキサイドユニットの平均分子量が400〜2000であり、該化合物におけるポリエチレンオキサイドユニットの含有率が40〜75質量%であり、アルコキシシリル基の含有率が15〜40質量%である、
    親水化コーティング剤。
  2. (a)テトラアルコキシシランおよび/またはその縮合物の加水分解体、
    (b)アルコキシシリル基を有するポリエチレンオキサイド化合物および/またはその加水分解体、
    (c)水、ならびに
    (d)親水性有機溶媒を混合して得られる、親水化コーティング剤であって、
    該アルコキシシリル基を有するポリエチレンオキサイド化合物が有するポリエチレンオキサイドユニットの平均分子量が400〜2000であり、該化合物におけるポリエチレンオキサイドユニットの含有率が40〜75質量%であり、アルコキシシリル基の含有率が15〜40質量%である、
    親水化コーティング剤。
  3. 親水化コーティング剤中における前記(a)成分の含有量が、0.05〜10質量%である、請求項1または2に記載の親水化コーティング剤。
  4. 親水化コーティング剤中における前記(b)成分の含有量が、0.02〜10質量%である、請求項1〜3のいずれかに記載の親水化コーティング剤。
  5. 前記アルコキシシリル基を有するポリエチレンオキサイド化合物が、シランカップリング剤と、該シランカップリング剤が有する反応性基と反応し得る官能基を有するポリエチレンオキサイド化合物とを反応させて得られるものである、請求項1〜4のいずれかに記載の親水化コーティング剤。
  6. (e)ノニオン系界面活性剤を、前記(c)成分100質量部に対して0.02〜10質量部さらに含み、該(e)ノニオン系界面活性剤がアルキレンオキサイドユニットを有し、1分子中におけるアルキレンオキサイドユニットの質量が40〜75質量%である、請求項1〜5のいずれかに記載の親水化コーティング剤。
  7. (f)有機アルミニウム化合物および/またはその加水分解体をさらに含む、請求項1〜6のいずれかに記載の親水化コーティング剤。
  8. 請求項1に記載の親水化コーティング剤の製造方法であって、
    (a)テトラアルコキシシランおよび/またはその縮合物の加水分解体と、(b)アルコキシシリル基を有するポリエチレンオキサイド化合物および/またはその加水分解体とを、(d)親水性有機溶媒に溶解する工程、および
    得られた溶液に(c)水を添加する工程を有する、親水化コーティング剤の製造方法。
  9. 請求項1〜7のいずれかに記載の親水化コーティング剤を基材表面に塗布することによって得られる、親水化コーティング膜。
  10. 請求項1〜7のいずれかに記載の親水化コーティング剤を基材表面に塗布する工程を有する、基材表面の親水化方法。
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