JP2004238418A - 高耐候性ハードコート組成物及び塗装物品 - Google Patents

高耐候性ハードコート組成物及び塗装物品 Download PDF

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Masahiro Furuya
昌浩 古屋
Masaaki Yamatani
正明 山谷
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Abstract

【解決手段】(A)酸化チタンを主成分として含む金属酸化物微粒子を被覆して、該微粒子の表面の水酸基が加水分解性有機ケイ素化合物及び/又はその部分加水分解縮合物との間で化学結合を形成した状態で該有機ケイ素化合物の被覆層が形成され、平均粒径が1〜300nmで、上記有機ケイ素化合物被覆前後でのケイ素含有量増加分が、
5<S−S<65
(Sは有機ケイ素化合物被覆後のSiO換算ケイ素含有量(重量%)、Sは有機ケイ素化合物被覆前の同ケイ素含有量(重量%)を示す)
であるケイ素化合物被覆金属酸化物微粒子を水及び/又は有機溶剤に分散してなるゾル、
(B)硬化性シリコーン化合物
を必須成分とする高耐候性ハードコート組成物。
【効果】本発明のハードコート組成物によれば、耐候性、耐擦傷性、密着性に優れたハードコート膜を形成できる。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種基材に高耐候性のハードコート膜を形成するために用いられる高耐候性ハードコート組成物、及びその硬化物層が形成された物品に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、有機樹脂基材、例えばポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、PET樹脂などは軽量で安価、透明性、耐衝撃性に優れるなどの利点を生かして、建築材料や構造材料、眼鏡レンズ等の光学物品に使用されるようになってきた。例えば、自動車の窓ガラスにおいて、従来の無機ガラスの代わりにこれらの透明有機樹脂が適用されることによって、軽量化が達成され、燃費が向上するという大きな利点をもたらす。しかしながら、これらの有機樹脂基材は表面が傷つき易く、透明性を損ねたりすることから、通常、高硬度のコーティングで被覆されるのが一般的である。このコーティングとしては、シリカ分散液と加熱硬化型シロキサン樹脂からなるハードコート組成物が好適であるということは、古くから知られており、公知である。これは、シロキサン樹脂が、一般的には太陽光、及び紫外線による劣化が少なく、長期間にわたる表面保護には極めて適しているからである。しかしながら、いくつかの欠点も有している。例えば、ハードコート層自体は、シロキサン樹脂とシリカが主成分であるため、紫外線をカットする能力に乏しく、樹脂基材、プライマー、それらの界面等が紫外線で劣化・変色するという現象が見られる。これを防止するため、上記プライマー層に紫外線吸収剤を添加する方法、及び、プライマーを構成する有機樹脂中に、紫外線吸収性の有機置換基を、化学結合を介して導入する方法が提案されている。ここでいう紫外線吸収剤、及び置換基とは、例えばベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール、トリアジン等の置換基、及びそれらを含有する有機化合物のことを指す(特許文献1:特開平4−106161号公報、特許文献2:特許第3102696号公報、特許文献3:特開2001−47574号公報参照)。
【0003】
上記方法は、プライマー層に有機系の紫外線吸収剤を含ませ、紫外線カットする方法であるが、本来、プライマー層は、下地基材とハードコート層との密着性向上を主目的としており、上記紫外線吸収剤の添加量が多くなりすぎると、密着力低下や透明性低下といった問題が生じる。また、長期間にわたる屋外曝露試験、促進耐候性試験において、プライマー層だけでの紫外線カットでは、有機樹脂基材の劣化、変色防止に対して十分ではないことが明らかとなってきた。
【0004】
これら欠点を補う方法として、一方では、ハードコート層にも有機系紫外線吸収剤を添加する方法も以前から行われてきた。しかしながら、これらの化合物をハードコート組成物にただ添加しただけでは、塗膜とした後の耐久性、即ち長期曝露後の紫外線吸収剤の表面からのブリード、流出が発生し、持続性に乏しいものであることが判明した。そこで、ハードコート層の主成分であるシロキサン化合物と化学結合が形成できるような、シリル変性した有機系紫外線吸収剤を用いる方法もこれまで開示されている(特許文献4:特公昭61−54800号公報、特許文献5:特公平3−14862号公報、特許文献6:特公平3−62177号公報、特許文献7:特開平7−278525号公報参照)。これは、紫外線吸収剤がハードコート層のシロキサンマトリックスに強固に結合しているため、持続性は向上したが、その一方、本来のハードコート層の耐擦傷性が大幅に低下、或いは可撓性低下によるミクロクラックの発生が顕著になる結果となった。このように、有機系の紫外線吸収剤を用いる方法には、耐候性を伸ばすため添加量を増やすほどハードコート膜の硬度が低下するという本質的な欠点ある。
【0005】
一方、金属酸化物微粒子は、ハードコート組成物に添加されることで、塗膜に機能性を付与することができるものとして以前から検討されている。中でも、粒径300nm以下の酸化チタン微粒子は、ハードコート塗膜内で均一に分散し、透明性を維持したまま塗膜を高屈折率化することができるため、眼鏡用プラスチックレンズのハードコートに適用されている(特許文献8:特許第3203142号公報、特許文献9:特開2000−204301号公報参照)。また、この微粒子は230〜320nm付近の紫外線も吸収することができるため、紫外線吸収剤として作用することも知られており、これは上記特許の中にも記載されている。しかしながら、酸化チタン微粒子をそのままの状態でハードコート組成物へ適用した場合、酸化チタンが紫外線にて活性化されるため、バインダーの分解劣化、下地との密着性低下などの耐候性低下が生じるので、不適である。そこで、上記特許では、酸化チタンと酸化ジルコニウムを複合化させることにより、耐候性を向上する方法が提案されている。しかしながら、このような複合化した微粒子を使用した場合でも、長期にわたる屋外曝露、或いは促進耐候性試験において、塗膜にクラックが発生し、紫外線による活性化の防止は十分ではない。
また、上記特許には、酸化チタン微粒子の表面を酸化ケイ素で被覆する技術に関しても記載がある。酸化チタンを含む金属酸化物微粒子を核粒子とし、酸化ケイ素で表面を被覆することによって、塗膜の硬度が向上、反射防止膜との密着性が向上するという報告がなされているが、耐候性に関しては言及されていない。また、酸化ケイ素の被覆量に関しても、明確な記載がない。酸化チタン微粒子を有機ケイ素化合物、又はアミン類で処理する改質に関しても、ハードコート組成物中での分散状態を安定化する効果のみに言及しているにすぎない。
【0006】
【特許文献1】
特開平4−106161号公報
【特許文献2】
特許第3102696号公報
【特許文献3】
特開2001−47574号公報
【特許文献4】
特公昭61−54800号公報
【特許文献5】
特公平3−14862号公報
【特許文献6】
特公平3−62177号公報
【特許文献7】
特開平7−278525号公報
【特許文献8】
特許第3203142号公報
【特許文献9】
特開2000−204301号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来技術の欠点を解決したもので、耐候性、耐紫外線性に優れ、耐擦傷性も良好な上、基材に密着のよいハードコート膜を形成することができる高耐候性ハードコート組成物、及びその硬化物層が形成された物品を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段及び発明の実施の形態】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、酸化チタンを主成分として含む金属酸化物微粒子を特定の有機ケイ素化合物によって特定の被覆量で処理、被覆することで得られるケイ素化合物被覆金属酸化物微粒子のゾルを硬化性シリコーン化合物に配合することにより、高耐候性、耐擦傷性であり、密着性の良好なハードコート膜を形成し得ることを知見し、本発明に至ったものである。
【0009】
即ち、本発明は、下記高耐候性ハードコート組成物及び物品を提供する。
[I](A)酸化チタンを主成分として含む金属酸化物微粒子を被覆して、該微粒子の表面の水酸基が下記一般式(1)
SiX4−a (1)
(式中、Rは炭素数1〜18の1価の有機基、Xは上記微粒子表面の水酸基と反応可能な1価の基、aは0,1又は2である。)
で表される有機ケイ素化合物及び/又はその部分加水分解縮合物との間で化学結合を形成した状態で該有機ケイ素化合物の被覆層が形成され、平均粒径が1〜300nmの範囲であり、かつ上記有機ケイ素化合物被覆前後でのケイ素含有量増加分が、
5<S−S<65
(但し、Sは有機ケイ素化合物被覆後のケイ素含有量(重量%)、Sは有機ケイ素化合物被覆前のケイ素含有量(重量%)を示すが、ケイ素含有量は酸化ケイ素(SiO)換算にて算出した値である。)
の範囲にあるケイ素化合物被覆金属酸化物微粒子を水及び/又は有機溶剤に分散してなるゾル、
(B)硬化性シリコーン化合物
を必須成分とすることを特徴とする高耐候性ハードコート組成物。
[II]一般式(1)におけるXが、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アシル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、又は−NR(R、Rは互いに同一であっても異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜6の1価炭化水素基を示す。)で示されるものである[I]記載のハードコート組成物。
[III]一般式(1)におけるXが、水酸基、メトキシ基又はエトキシ基であり、aが0又は1である[I]記載のハードコート組成物。
[IV]ケイ素含有量増加分が、
8<S−S<55
(但し、S、Sは上記と同様の意味を示す。)
である[I]、[II]又は[III]記載のハードコート組成物。
[V](A)成分のゾルが、金属酸化物微粒子の水及び/又は有機溶剤分散液に式(1)の有機ケイ素化合物及び/又はその部分加水分解縮合物を添加し、加熱下に撹拌熟成することにより得られたものである[I]〜[IV]のいずれか1項記載のハードコート組成物。
[VI](B)成分の硬化性シリコーン化合物が、下記一般式(2)
SiY4−b (2)
(式中、Rは炭素数1〜18の有機基、Yは加水分解性基、bは0,1又は2である。)
で表される加水分解性有機ケイ素化合物の1種又は2種以上(但し、b=0のみの場合及びb=2のみの場合を除く)の加水分解縮合物であって、重量平均分子量が300以上である[I]〜[V]のいずれか1項記載のハードコート組成物。
[VII]加水分解縮合物が、加水分解性有機ケイ素化合物をシリカゾル共存下にて加水分解・縮合することにより得られたものである[VI]記載のハードコート組成物。
[VIII](B)成分の固形分100重量部に対する(A)成分の固形分量が0.1〜30重量部である[I]〜[VII]のいずれか1項記載のハードコート組成物。
[IX]基材上に[I]〜[VIII]のいずれか1項記載のハードコート組成物の硬化物層が形成されてなることを特徴とする物品。
[X]基材と上記ハードコート組成物の硬化物層との間にアクリル樹脂を主成分とするプライマー層が形成されてなることを特徴とする[IX]記載の物品。
【0010】
本発明によれば、紫外線吸収成分である酸化チタンを主成分とする金属酸化物微粒子を核とし、その粒子表面を式(1)の反応性ケイ素化合物で被覆したもののゾル(分散液)(A)をハードコート成分に添加してなる組成物より形成される塗膜は、紫外線吸収能が非常に高く、プラスチック基材の黄変、基材、プライマー層界面での劣化を大幅に遅らせることができる。
【0011】
また、上記ゾル(分散液)(A)に含まれる被覆金属酸化物微粒子は、被覆最外層にケイ素原子に結合した加水分解性基が残存しており、これとマトリックスである硬化性シリコーン化合物(B)中のシラノール基等とからシロキサン結合を形成することが可能で、これにより、硬化塗膜の耐擦傷性は低下せず、また経時でのブリード、流出を防止できる。
【0012】
更に、上記ゾル(分散液)(A)に含まれる被覆金属酸化物微粒子は、本来酸化チタンが有する光触媒機能を著しく低下させることができる。酸化チタンの光触媒能は、チタン表面にて起こる反応であり、ケイ素化合物にて十分に被覆することによって、その発生を防止することができる。例えば、未被覆の酸化チタンを含有するハードコート塗膜を屋外に長期曝露した場合、クラック等の劣化、下地層との密着性低下などが早期に発生するため好ましくないが、本発明に係る被覆酸化チタンを用いた場合、この光触媒能はほぼ完全に防止され、クラック、密着性の低下を抑制することができる。
【0013】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
成分(A)
(A)成分は、主成分として酸化チタンを含む金属酸化物微粒子を核とし、その表面をケイ素化合物にて被覆した粒子の水及び/又は有機溶剤のゾルである。本発明の酸化チタン含有ゾルは、太陽光中に含まれる近紫外光を高い効率で吸収することが可能で、更にその持続性にも優れている。以下に核粒子、被覆剤であるケイ素化合物、被覆方法、被覆された微粒子、分散媒について順次説明する。
【0014】
核粒子
核となる金属酸化物は、紫外線を吸収、遮断する本発明の目的を達成できるものであれば、いかなるものでも使用可能である。チタン以外の金属を含有してもよく、ケイ素、ジルコニウム、ハフニウム、亜鉛、鉄、アンチモン、スズ、セリウム、アルミニウム、タングステン、ニオブ、クロム、ルテニウム等の酸化物やこれら金属とチタンとの複合酸化物などが適用可能である。核となる金属酸化物中、酸化チタン含有量は30重量%以上、好ましくは50重量%以上である。
【0015】
核粒子の一次粒子平均径は、約1〜300nmの範囲にあるものが好ましい。より好ましくは1〜100nmがよい。この粒子は被覆した後、ハードコート組成物として塗布して得た塗膜が透明であることが好ましく、そのためには、可能な限り二次凝集は少ない方が好ましい。
【0016】
核粒子の酸化チタンの結晶型は特に問わないが、より好ましくは光触媒活性が高いアナターゼ型ではなく、比較的低いルチル型が好適である。
【0017】
酸化チタン含有金属酸化物微粒子は、水、或いは水を含有もしくは非含有の有機溶剤を分散媒としたコロイド分散液として入手可能である。具体的な商品名としては、触媒化成工業製「オプトレイク1120Z、1130Z」、多木化学製「タイノックス」等が挙げられる。
【0018】
また、核粒子となり得るゾルは、公知技術を用いて製造することも可能である。以下に代表的な製造方法について述べる。
【0019】
酸化チタンゾル前駆体である含水酸化チタンゲルは、希釈した硫酸チタン或いは四塩化チタンを原料とし、以下の方法で合成できる。即ち、(1)加熱加水分解した後、中和・洗浄する方法、或いは(2)アンモニア水、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム等のアルカリ成分で中和分解・洗浄する方法である。得られた含水ゲルを十分洗浄し、イオン分を除去した後、必要に応じて水熱処理し、結晶を成長させる。再び水に分散させるには、これらのゲルに過酸化水素や、ヒドロキシカルボン酸等の化合物を作用させる方法が知られている。他の金属酸化物と複合化する場合は、この酸化チタンゾルと、他金属、例えば酸化スズゾルを混合し、加熱することにより複合化できる。
【0020】
被覆剤であるケイ素化合物
前述した酸化チタン含有金属酸化物微粒子を核粒子として、これに下記一般式(1)で示される有機ケイ素化合物から選択される1種以上の化合物及び/又はその部分加水分解縮合物を添加することにより、被覆層を形成する。
SiX4−a (1)
(式中、Rは炭素数1〜18の1価の有機基、Xは上記微粒子表面の水酸基と反応可能な1価の基、aは0,1又は2である。)
【0021】
の炭素数1〜18の有機基としては、特に炭素数1〜10の置換又は非置換の1価炭化水素基が好ましい。これらの1価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、デシル基、シクロヘキシル基、1,1,2−トリメチルプロピル基等の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基等のアルケニル基等が例示され、またこれらの基の水素原子の一部又は全部がエポキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アミノアルキルアミノ基、メルカプト基、(メタ)アクリロキシ基、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子、シアノ基等で置換されたものも挙げられる。具体的にはグリシドキシプロピル基、アミノプロピル基、メルカプトプロピル基、(メタ)アクリロキシプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等が例示される。この中ではメチル基、グリシドキシプロピル基が好ましい。
【0022】
また、Xの水酸基と反応可能な1価の基としては、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アシル基、−OR(Rは炭素数1〜6の1価炭化水素基)で示されるアルコキシ基、又は−NR(R、Rは互いに同一であっても異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜6の1価炭化水素基を示す。)で示されるものであることが好ましい。なお、炭素数1〜6の1価炭化水素基としては、アルキル基が挙げられる。また、Xが複数個ある場合、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0023】
上記金属酸化物微粒子表面には、M−OH(Mは金属)結合の状態で水酸基が存在しており、ケイ素化合物(1)の反応性置換基Xは、この水酸基と反応し得る基である。ここで、金属Mは核粒子に含まれる金属であればいずれでもよいが、含有量が多いことから、主にチタンである場合が多い。Xが加水分解性基の場合、即ちハロゲン原子、アシル基、アルコキシ基、窒素含有基の場合、系内の水で加水分解してシラノール(Si−OH)を生じ、その後M−OHと脱水縮合してM−O−Si結合が生成することもあり得る。或いは、加水分解を経由せず、下記反応式のようにHXが脱離してM−O−Si結合が生成する場合もあるが、本発明の被覆過程においてはどちらでも構わない。例えば、Xがアルコキシ基である場合、脱アルコール反応で進む。
M−OH + Si−X → M−O−Si + HX
Xが水素原子の場合、M−OHとの間で脱水素縮合反応にてM−O−Si結合の生成も可能である。反応性の観点から、Xは好ましくはアルコキシ基、特に好ましくはメトキシ基、エトキシ基である。
【0024】
上記一般式(1)を満たすケイ素化合物としては、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジクロルシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、5−ヘキセニルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−ジメトキシメチルシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−ジエトキシメチルシラン、3−(4−ビニルフェニル)プロピルトリメトキシシラン、4−ビニルフェニルメチルトリメトキシシラン、4−ビニルフェニルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシエラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン等のいわゆるシランカップリング剤以外に、テトラクロルシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン、メチルトリクロルシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、メチルトリイソプロペノキシシラン、エチルトリクロルシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリクロルシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリクロルシラン、ブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリクロルシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリクロルシラン、デシルトリメトキシシラン、フェニルトリクロルシラン、フェニルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリクロルシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、プロピルメチルジクロルシラン、プロピルメチルジメトキシシラン、ヘキシルメチルジクロルシラン、ヘキシルメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジクロルシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリクロルシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルメチルジクロルシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルメチルジメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリクロルシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン等が挙げられる。また、Si−H基を有するシラン類、即ちヒドロトリクロルシラン、ヒドロトリメトキシシラン、ヒドロトリエトキシシラン、ヒドロジメトキシメチルシラン、ヒドロメトキシジメチルシラン、ジヒドロジクロルシラン、ジヒドロジメトキシシラン、ジヒドロジエトキシシラン、ジヒドロメトキシメチルシラン、ジヒドロメチルエトキシシラン、ジヒドロジメチルシラン、フェニルヒドロジクロルシラン、フェニルヒドロジメトキシシラン、フェニルヒドロジエトキシシラン、フェニルヒドロジメチルシラン、フェニルジヒドロメトキシシラン、フェニルジヒドロメチルシラン、フェニルトリヒドロシラン、シクロペンチルトリヒドロシラン、シクロヘキシルトリヒドロシラン等が使用可能である。
【0025】
より好ましくは、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、及びこれらの加水分解体、及びその縮合物オリゴマーが使用可能である。
【0026】
被覆方法
被覆方法は、前述のように核粒子表面と添加される式(1)のケイ素化合物との間で化学結合が生成する方法である。また、被覆層自体は単分子層とは限らず、M−O−Si結合で固着したケイ素化合物の上に、また別のケイ素化合物分子が結合し、層をなしても構わない。一般的には、ケイ素化合物に縮合可能な反応基が2個以上ある場合、被覆層内でSi−O−Si結合が生成し、多分子層となり得る。実際の被覆量に関しては、被覆前後の元素分析法にて算出することができる。元素分析は蛍光X線分析にて測定可能である。また、被覆層内の有機基含有量は、熱重量減少を測定することで算出できる。以下に、好適な被覆工程を説明する。
工程(1):金属酸化物微粒子の水及び/又は有機溶剤分散液に式(1)の有機ケイ素化合物及び/又はその部分加水分解縮合物を添加する工程。必要に応じて被覆層形成触媒として、酸性或いはアルカリ性化合物を添加してもよい。
工程(2):室温(0〜30℃)或いは加熱下(30〜300℃)にて撹拌し、微粒子表面に添加されたケイ素化合物を固着させる工程。
工程(3):分散媒を濃縮或いは希釈して、微粒子の固形分含有量を調節する工程。
【0027】
工程(1):
核粒子は、ハードコート組成物として透明性のある塗膜を形成するために、凝集体の少ない分散液(ゾル)の形態のものを使用するのが好ましい。粉体、ペースト状の粒子は、多量に二次凝集体を含んでいるため、塗膜とした時の透明性に欠けるおそれがある。
【0028】
この場合、分散液(ゾル)中の金属酸化物微粒子含有量は、1〜50重量%、特に5〜40重量%であることが好ましい。なお、この分散液の分散媒として有機溶剤を用いる場合、有機溶剤としては、後述する通りのものが使用され得る。
【0029】
核粒子のゾルを撹拌中、前述のケイ素化合物を徐々に添加していく。この際、被覆反応を促進するための触媒を添加してもよい。触媒としては、酢酸、ギ酸、シュウ酸、塩酸、硫酸、メタンスルホン酸等の酸性化合物;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、アンモニア、トリエチルアミン、プロピルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、エタノールアミン、トリエタノールアミン、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキサイド、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、ギ酸ナトリウム、ギ酸カリウム等のアルカリ性化合物;炭酸アンモニウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化アンモニウム、フッ化テトラブチルアンモニウム等の塩化合物が使用可能である。より好ましくは炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、アンモニア等のアルカリ性化合物が好適である。
【0030】
なお、これらの触媒の使用量は触媒量であり、通常、有機ケイ素化合物100重量部に対し0.01〜10重量部、特に0.05〜8重量部であることが好ましい。
【0031】
また、被覆反応時、被覆反応を完全に進行させるため、金属化合物を共存させてもよい。添加可能な金属化合物の例としては、トリス(アセチルアセトナート)アルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、ジイソプロピル(エチルアセトアセテート)アルミニウム、テトラブトキシジルコニウム、テトラプロピルジルコニウム、テトラプロポキシチタン、テトラブトキシチタン等が好適である。その使用量は、有機ケイ素化合物100重量部に対して0.01〜10重量部、特に0.05〜5重量部であることが好ましい。
【0032】
工程(2):
ケイ素化合物の滴下温度、滴下後の熟成温度は、0〜300℃程度が好ましい。より好ましくは50〜150℃、更に好ましくは80〜130℃がよい。核粒子が分散液の場合、その分散媒の沸点が低く温度が上げられない場合、加圧下で反応させてもよい。
反応時間は、通常、0.5〜200時間、好ましくは1〜100時間程度である。
被覆反応において、水の添加は必須ではない。前述したように、金属M−OHとケイ素化合物との反応は、水を介さなくても進行し得るからである。
【0033】
工程(3):
反応後、微粒子の固形分含有量を調整することが好ましい。ハードコート組成物とする場合、固形分含有量は10〜40重量%が好ましい。被覆反応時、核粒子分散液を希釈した場合は、減圧にて溶媒を留去して調節することができ、低沸点溶媒が揮発した場合は、新たに分散媒を添加して調節することができる。40重量%を超えて濃縮すると、微粒子の二次凝集が生じ易くなり、ハードコート塗膜としたときの透明性を損なうため不適である。
【0034】
被覆された微粒子
ケイ素化合物の被覆量については、被覆前後での微粒子に含有されるケイ素含有量増加分が、5<S−S<65、特に8<S−S<55、とりわけ10<S−S<40の範囲内にあることが好ましい。
但し、S:被覆後のケイ素含有量(重量%)、S:被覆前のケイ素含有量(重量%)である。
ここで、ケイ素含有量は酸化ケイ素(SiO)換算にて算出した値を示す。5重量%未満では、被覆量が少なすぎて本発明の効果が十分発揮できない。65重量%を超えると、被覆量が多すぎて、酸化チタン含有量が低下し、紫外線吸収能が低下する。
【0035】
実際の被覆量に関しては、被覆前後の元素分析法にて算出することができる。元素分析は蛍光X線分析にて測定可能である。また、被覆層内の有機基含有量は、熱重量減少を測定することで算出できる。有機基が分解する温度以上で加熱処理した試料について、元素分析を行うことによって、容易に酸化ケイ素量の変化を測定できる。
【0036】
被覆された微粒子の一次平均粒径は、1〜300nmの範囲である。1nmより小さいものは分散安定性に乏しく、300nmより大きいものは、ハードコート塗膜とした場合、塗膜透明性が低下する。より好ましくは1〜100nmが好適である。また、核粒子と同様、被覆粒子も二次凝集物が少ない方が、ハードコート塗膜の透明性に優れるので好ましい。
【0037】
分散媒
微粒子は、水、或いは水含有又は水非含有有機溶剤に分散したゾルの形態が使用に適する。使用可能な有機溶剤としては、粒子の分散安定性、及び(B)成分の硬化性シリコーン化合物の溶解性の観点から、極性の高い有機溶剤が好ましい。具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール等のアルコール類、エチレングリコール、エチルセロソルブ、プロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、酢酸セロソルブ、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等のグリコール類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノアセテート等のエステル類が好ましく、中でもメタノール、エタノール、イソプロパノール、イソブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルが好ましい。
【0038】
分散媒が水或いは水含有有機溶剤の場合、液のpHは好ましくは2以上11以下、より好ましくは3以上9以下である。この範囲外の場合、(B)成分の硬化性シリコーン化合物との混合後、(B)成分が反応し、変化してしまうおそれがある。
【0039】
成分(B)
本発明の成分(B)は、硬化性シリコーン化合物であり、硬化性シリコーン化合物としては、下記一般式(2)
SiY4−b (2)
(式中、Rは炭素数1〜18の有機基、Yは加水分解性基、bは0,1又は2である。)
で表される少なくとも1種の加水分解性ケイ素化合物(但し、b=0のみの場合及びb=2のみの場合を除く)を、加水分解性基Y1モルに対し、特に1モル以上の水で加水分解・縮合させた加水分解縮合物であることが好ましい。
【0040】
この加水分解縮合物のGPC測定における重量平均分子量は8,000以下、特に5,000以下、とりわけ3,000以下であることが好ましい。なお、その下限は適宜選定されるが、300以上、特に500以上、とりわけ700以上であることが好ましい。
【0041】
ここで、Rは炭素数1〜18の有機基であり、特に炭素数1〜10の置換又は非置換の1価炭化水素基が好ましい。これらの1価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、デシル基、シクロヘキシル基、1,1,2−トリメチルプロピル基等の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基等のアルケニル基等が例示され、またこれらの基の水素原子の一部又は全部がエポキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アミノアルキルアミノ基、メルカプト基、(メタ)アクリロキシ基、クロル原子等のハロゲン原子、シアノ基等で置換されたものも挙げられる。具体的にはグリシドキシプロピル基、アミノプロピル基、メルカプトプロピル基、(メタ)アクリロキシプロピル基等が例示される。この中ではメチル基、グリシドキシプロピル基が好ましい。
【0042】
Yは加水分解性基であり、炭素数1〜6の加水分解性基、クロル原子等が挙げられる。炭素数1〜6の加水分解性基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、フェノキシ基、イソプロペノキシ基等のアルコキシ基、アリールオキシ基、アルケニルオキシ基、メトキシエトキシ基等のアルコキシアルコキシ基や、アセトキシ基等のアシルオキシ基、ブタノキシム基等のオキシム基等を挙げることができる。この中ではクロル原子、アルコキシ基が好ましく、特に操作性、副産物の留去の容易さ、安定性から炭素数1〜4のアルコキシ基が好ましく、とりわけメトキシ基、エトキシ基が好ましい。
【0043】
上記一般式(2)を満たす加水分解性ケイ素化合物としては、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジクロルシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、5−ヘキセニルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−ジメトキシメチルシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−ジエトキシメチルシラン、3−(4−ビニルフェニル)プロピルトリメトキシシラン、4−ビニルフェニルメチルトリメトキシシラン、4−ビニルフェニルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシエラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン等のいわゆるシランカップリング剤以外に、テトラクロルシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン、メチルトリクロルシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、メチルトリイソプロペノキシシラン、エチルトリクロルシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリクロルシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリクロルシラン、ブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリクロルシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリクロルシラン、デシルトリメトキシシラン、フェニルトリクロルシラン、フェニルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリクロルシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、プロピルメチルジクロルシラン、プロピルメチルジメトキシシラン、ヘキシルメチルジクロルシラン、ヘキシルメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジクロルシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリクロルシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルメチルジクロルシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルメチルジメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリクロルシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン等が挙げられる。加水分解性ケイ素化合物は1種単独で又は2種以上を使用してもよいが、分岐構造を有する必要がある。従って、b=2のもののみを用いた場合は加水分解・縮合物は直鎖状のオイルとなって、高硬度、耐擦傷性の劣るものとなり、b=0のみを用いた場合はクラックが発生し易くなるため、b=0のもののみを単独で用いる場合、b=2のもののみを単独で用いる場合を除く。従って、b=0のものとb=2のものとを組み合わせて用いるか、又はb=1のもののみを用いるか、b=1のものとb=0やb=2のものとを組み合わせて用いるものであり、好ましくは少なくともb=1のものを含む加水分解性ケイ素化合物が使用される。
【0044】
また、操作性、副生物の留去のし易さの点から、メトキシシラン、エトキシシランが好ましく、ハードコート組成物の硬度、耐摩耗性、密着性の観点から、3官能性加水分解性シラン(b=1のシラン)が40モル%以上含まれることが好ましい。
【0045】
(B)成分は、上記加水分解性ケイ素化合物を、加水分解性基Y1モルに対し、1モル以上の水で加水分解・縮合させた加水分解縮合物であることが好ましい。加水分解に使用する水量は、加水分解性基Y1モルに対し1モル以上、好ましくは1.2モル以上である。水量が1モル未満だと、加水分解性基の加水分解が部分的にしか進行せず、加水分解性基が未反応のまま、比較的多量に残存することになる。本来、ハードコート組成物中で(B)成分は(A)成分の金属酸化物微粒子のバインダーとしての役割を果たしていると考えられるので、未反応の加水分解性基が残存すると、その分架橋密度が下がり、硬度、耐擦傷性、密着性が低下する。なお、水量の上限に制限はないが、通常10モル以下、特には5モル以下である。
【0046】
加水分解に使用する水には、極性有機溶剤を加えることが好ましく、極性有機溶剤としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、ジアセトンアルコール等のアルコール類、エチレングリコール、モノエチレングリコールモノエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノエーテル等が例示される。これらは(A)成分の分散媒であってもよい。
【0047】
また、加水分解触媒を使用してもよい。加水分解触媒としては、従来公知の触媒を使用することができ、特に酸性のハロゲン化水素、カルボン酸、スルホン酸、酸性或いは弱酸性の無機塩、イオン交換樹脂等の固体酸等が好ましい。これらの例としては、フッ化水素、塩酸、硝酸、硫酸、酢酸、マレイン酸に代表される有機酸、メタンスルホン酸、表面にスルホン酸基又はカルボン酸基を有するカチオン交換樹脂等が挙げられる。加水分解触媒の量は、加水分解性基Y1モルに対して0.001〜10モルが好ましい。また、加水分解は弱酸性条件下で加水分解することが好ましく、特にpH2〜7の範囲で反応させることが好ましい。加水分解を弱酸性下で行わない場合は生成するシラノール基が不安定となり、縮合反応が進み、分子量が大きくなりすぎることがある。
【0048】
また、成分(B)の硬化性シリコーン化合物はコロイダルシリカを含有してもよい。コロイダルシリカは、ハードコート塗膜に硬度、耐摩耗性と耐クラック性を付与するものとして一般に用いられるものであり、本発明にも適用可能である。添加方法としては、成分(B)とコロイダルシリカを混合しただけでもよいし、一般式(2)の加水分解性ケイ素化合物をコロイダルシリカ共存下に加水分解・縮合させてもよい。このコロイダルシリカは、市販されているものであればすべて使用可能であり、分散媒も水、アルコール、他の有機溶剤でも構わない。
【0049】
成分(A)と成分(B)の混合比は、成分(B)の固形分100重量部に対し、成分(A)の固形分で0.1〜30重量部、より好ましくは0.2〜20重量部、更に好ましくは0.3〜15重量部である。0.1重量部より少ないと、紫外線吸収効果が不十分であり、30重量部より多いと、塗膜の可撓性が不足し、クラックを生じ易くなるおそれがある。
【0050】
本発明のハードコート組成物は、上記成分(A)と成分(B)を必須成分とするが、それ以外に硬化触媒を含んでもよい。硬化触媒としては、従来公知のハードコート組成物で使用されている硬化触媒が適用できる。例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチラート、プロピオン酸ナトリウム、プロピオン酸カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、ギ酸ナトリウム、ギ酸カリウム、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキサイド、テトラメチルアンモニウムヒドロキサイド、n−ヘキシルアミン、トリブチルアミン、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、ジシアンジアミド等の塩基性化合物類;テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、チタンアセチルアセトナート、アルミニウムトリイソブトキシド、アルミニウムトリイソプロポキシド、トリス(アセチルアセトナート)アルミニウム、ジイソプロポキシ(エチルアセトアセテート)アルミニウム、過塩素酸アルミニウム、塩化アルミニウム、コバルトオクチレート、コバルトアセチルアセトナート、鉄アセチルアセトナート、スズアセチルアセトナート、ジブチルスズオクチレート、ジブチルスズラウレート等の含金属化合物類;p−トルエンスルホン酸、トリクロル酢酸等の酸性化合物類等が挙げられる。この中で特にプロピオン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、ギ酸ナトリウム、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキサイド、テトラメチルアンモニウムヒドロキサイド、トリス(アセチルアセトナート)アルミニウム、ジイソプロポキシ(エチルアセトアセテート)アルミニウムが好ましい。硬化触媒の添加量は、ハードコート成分(A)、(B)の全固形分100重量部に対し0.01〜20重量部、より好ましくは0.05〜15重量部である。
【0051】
本発明のハードコート組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、上記成分の他に、希釈剤、pH調整剤、優れた塗膜性能を付与する目的で顔料、染料、レベリング剤、保存安定剤等も使用できる。
【0052】
希釈剤としては、水、及び有機溶剤すべてを使用することができる。有機溶剤としてはアルコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類が好ましい。pH調整剤としては、緩衝剤となる酸・塩基性化合物の組み合わせ、例えば酢酸と酢酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウムとクエン酸等が挙げられる。
【0053】
また、分子内に1個以上の環状ヒンダードアミン構造を有する光安定剤を添加することにより、耐候性を向上させることができる。使用される光安定剤としては、ハードコート組成物に用いた溶剤によく溶解し、また低揮発性のものが好ましい。配合量はハードコート組成物中の固形分100重量部に対して1〜10重量部が好ましい。10重量部を超えて添加すると塗膜の密着性が低下する場合がある。
【0054】
光安定剤の具体例としては、3−ドデシル−1−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)ピロリジン−2,5−ジオン、N−メチル−3−ドデシル−1−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)ピロリジン−2,5−ジオン、N−アセチル−3−ドデシル−1−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)ピロリジン−2,5−ジオン、セバシン酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)、セバシン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジノールとトリデカノールとの縮合物、8−アセチル−3−ドデシル−7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピロ[4,5]デカン−2,4−ジオン、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β,β’−テトラメチル−3,9−(2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン)ジエタノールとの縮合物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β,β’−テトラメチル−3,9−(2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン)ジエタノールとの縮合物等が挙げられる。
【0055】
更に、光安定剤を固定化させる目的で、特公昭61−56187号公報にあるようなシリル化変性の光安定剤、例えば2,2,6,6−テトラメチルピペリジノ−4−プロピルトリメトキシシラン、2,2,6,6−テトラメチルピペリジノ−4−プロピルメチルジメトキシシラン、2,2,6,6−テトラメチルピペリジノ−4−プロピルトリエトキシシラン、2,2,6,6−テトラメチルピペリジノ−4−プロピルメチルジエトキシシラン、更にこれらの(部分)加水分解物等が挙げられ、これらの光安定剤は1種単独で又は2種以上を併用してもよい。
【0056】
また、本発明の目的を損なわない範囲で通常の紫外線吸収剤を加えてもよい。特に、主骨格がヒドロキシベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系、トリアジン系である化合物誘導体が好ましい。更に側鎖にこれら紫外線吸収剤を含有するビニルポリマー等の重合体でもよい。
【0057】
このような紫外線吸収剤としては、2,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−ベンジロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジエトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジプロポキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジブトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシ−4’−プロポキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシ−4’−ブトキシベンゾフェノン、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、2−(2−ヒドロキシ−4−ヘキシルオキシフェニル)−4,6−ジフェニルトリアジン、4−(2−アクリロキシエトキシ)−2−ヒドロキシベンゾフェノンの重合体、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールの重合体等が挙げられる。これら紫外線吸収剤は1種単独で又は2種以上を併用してもよい。
【0058】
紫外線吸収剤として用いられる上記重合体には、側鎖に加水分解性シリル基を導入することが好ましい。この場合、ハードコート塗膜硬化時、ハードコート組成物の構成成分(A)、(B)等と結合を形成することが可能で、より強固に塗膜内に固定化することができる。
【0059】
具体的には、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン等の単量体を、上記した、側鎖に上記紫外線吸収剤を含有するビニルポリマー等の重合体を構成する単量体と共重合させたものが使用可能である。
【0060】
これら紫外線吸収剤を配合する場合の配合量は適宜選定されるが、ハードコート成分(A)、(B)の全固形分100重量部に対して0.1〜20重量部、特に0.2〜10重量部であることが好ましい。
【0061】
本発明のハードコート組成物は、各種基材に塗装・硬化してなるハードコート膜として使用することができる。この場合、基材の材質は、プラスチック、セラミックス、ガラス、金属或いはそれらの複合物等が挙げられ、特に限定されるものではないが、各種プラスチック材料に好適に使用され、特にポリカーボネート、ポリスチレン、アクリル樹脂、変性アクリル樹脂、ウレタン樹脂、チオウレタン樹脂、ハロゲン化ビスフェノールAとエチレングリコールの縮重合物、アクリルウレタン樹脂、ハロゲン化アリール基含有アクリル樹脂、含硫黄樹脂等が好ましい。更に、これらの樹脂基材の表面が処理されたもの、具体的には、コロナ放電処理、酸やアルカリ液で処理されたもの、及び基材本体と表層が異なる種類の樹脂で形成されている積層体を用いることができる。積層体の例としては、共押出により製造される、ポリカーボネート樹脂基材の表層にアクリル樹脂層もしくはウレタン樹脂層が存在する積層体、又はポリエステル樹脂基材の表層にアクリル樹脂層が存在する積層体等が挙げられる。
【0062】
基材への塗布方法としては、スプレーコーティング法、ロールコーティング法、ディップコーティング法、スピンコーティング法等があるが、そのいずれを用いてもよいし、それ以外の方法でもよい。
【0063】
本発明では、基材との密着性を高めるため、ハードコート膜と基材の間にプライマー層を設けることが好ましい。
【0064】
塗膜の形成方法は、特に制限されるものではないが、従来公知のプライマー組成物を第一層として基材に塗布する工程、塗布した膜を風乾或いは加熱硬化することにより硬化させる工程、本発明のハードコート組成物をプライマー層上に塗布する工程、室温乾燥、或いは加熱してハードコート層を形成させることによって第二層とする工程を順次行う方法が好ましい。ここでいうプライマー層としては、例えば特開昭56−92059号公報及び特開平1−149878号公報に記載されたもの、アクリル系及び/又はビニル系単量体の重合体、アクリル系及び/又はビニル系単量体とアルコキシシリル基含有アクリル系単量体との共重合体、アクリル系及び/又はビニル系単量体と紫外線吸収性ビニル系単量体の共重合体等が使用可能である。
【0065】
塗膜の硬化方法は、空気中に放置して風乾させてもよいし、加熱してもよい。加熱温度、時間等も限定されるものではないが、通常、プライマー層、ハードコート層とも室温〜250℃、より好ましくは70〜150℃で、10分〜2時間、より好ましくは20分〜1.5時間加熱することにより硬化塗膜が形成される。特にプライマー層が架橋性の熱硬化樹脂である場合、硬化条件を調整し、部分的に未硬化とすることにより、ハードコート層との密着性を向上させることも可能である。
【0066】
プライマー層の膜厚は、0.01〜100μm、特に0.1〜50μmが好ましく、ハードコート層の膜厚は、0.1〜100μm、特に1〜50μmが好ましい。
【0067】
【実施例】
以下、合成例、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。
[成分(A)の製造]
[合成例1]
核粒子としては、酸化チタン含有微粒子分散液(触媒化成工業製、オプトレイク1120Z、メタノール分散、固形分含有量20重量%)を用いた。
この分散液300gに対し、28%アンモニア水2g、メタノール18gを加え、室温で撹拌した。その後、撹拌しながらテトラエトキシシラン60gを10分かけて滴下した。滴下終了後、加熱し、56℃で10時間反応させることにより被覆を行った。その結果、ケイ素化合物にて被覆された微粒子分散液(a1)を得た。被覆前後での微粒子固形物中のケイ素含有量増加分は19.1重量%であった。
【0068】
[合成例2]
核粒子としては、市販の酸化チタン含有微粒子分散液(エタノール分散、固形分含有量20重量%)を用いた。
この分散液800gに対し、28%アンモニア水4g、エタノール18gを加え、室温で撹拌した。その後、撹拌しながらメチルトリメトキシシラン80gを10分かけて滴下した。滴下終了後、加熱し、78℃で10時間反応させることにより、ケイ素化合物にて被覆された微粒子分散液(a2)を得た。被覆前後での微粒子固形物中のケイ素含有量増加分は16.8重量%であった。
【0069】
[成分(B)の製造]
[合成例3]
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン78g、メチルトリエトキシシラン233g、ブタノール80g、酢酸0.2gを仕込み、氷冷下、水分散シリカゾル180g(固形分20重量%、弱酸性)、メタノール分散シリカゾル34g(固形分30重量%)を添加し、加水分解、縮合を行った。10℃以下で2時間、50℃で4時間撹拌後、プロピレングリコールモノメチルエーテル180g、ダイアセトンアルコール50gで希釈することによって、硬化性シリコーン化合物溶液(b1)を得た。また、GPCによるこの硬化性シリコーン化合物の重量平均分子量は1,220であった。
【0070】
[合成例4]
メチルトリエトキシシラン330g、ジメチルジメトキシシラン20g、エタノール100g、酢酸0.3gを仕込み、氷冷下、水分散シリカゾル220g(固形分20重量%、弱酸性)、イソプロパノール分散シリカゾル48g(固形分25重量%)を添加し、加水分解、縮合を行った。10℃以下で2時間、50℃で4時間撹拌後、プロピレングリコールモノメチルエーテル120gで希釈することによって、硬化性シリコーン化合物溶液(b2)を得た。また、GPCによるこの硬化性シリコーン化合物の重量平均分子量は1,145であった。
【0071】
[実施例1〜5]
表1に示す処方のハードコート組成物を調製し、これを用いて下記方法で塗装物品を作製し、下記方法で塗膜の物性を評価した。結果を表1に併記する。
【0072】
[比較例1,2]
実施例で用いた被覆粒子[成分(A)]の代わりに非被覆の核粒子分散液をそのまま用いた以外は実施例と同様に操作し、得られたハードコート組成物の塗装物品における塗膜の物性を評価した。結果を表1に併記する。
【0073】
塗装物品の作製
プライマー(信越化学工業製、プライマーPC−7A)の塗布方法は、表面を清浄化した0.5mmポリカーボネート樹脂板に硬化塗膜として2〜5μmになるようにフローコーティング法にて塗布し、約120℃にて約30分硬化させた後、その上に表1に示したハードコート組成物を硬化塗膜として2〜5μmになるようにフローコーティング法にて塗布し、約130℃にて約1時間硬化させた。
【0074】
[ハードコート膜評価方法]
耐摩耗性試験
テーバー摩耗試験機にて摩耗輪CS−10Fを装着し、荷重500g下で500回転後の曇価を測定した。テーバー摩耗性(%)は、(試験後の曇価)−(試験前の曇価)で示した。耐摩耗性良好(○)と判断できるのは、曇価差8.0以下とした。
密着性試験
JIS K5400に準拠し、サンプルをカミソリの刃で1mm間隔の縦横11本ずつ切り目を入れて100個のゴバン目をつくり、市販セロハンテープをよく密着させた後、90度手前方向に急激にはがした時、被膜が剥離せずに残存したます目数(X)をX/100で表示した。
促進耐候性試験
JIS K5400に準拠し、カーボンアーク式サンシャインウェザーメーターにて促進試験を行って、5,000時間後でクラックがないものを○とした。クラックは、目視、及び光学顕微鏡にて表面を観察することによって評価した。
【0075】
【表1】
Figure 2004238418
【0076】
上記の結果から認められるように、実施例の被覆した微粒子分散液を用いたものは良好な塗膜物性を示したが、比較例の非被覆の微粒子分散液を用いた場合は、耐摩耗性、耐候性が著しく低下した。
【0077】
【発明の効果】
本発明のハードコート組成物によれば、耐候性、耐擦傷性、密着性に優れたハードコート膜を形成できる。

Claims (10)

  1. (A)酸化チタンを主成分として含む金属酸化物微粒子を被覆して、該微粒子の表面の水酸基が下記一般式(1)
    SiX4−a (1)
    (式中、Rは炭素数1〜18の1価の有機基、Xは上記微粒子表面の水酸基と反応可能な1価の基、aは0,1又は2である。)
    で表される有機ケイ素化合物及び/又はその部分加水分解縮合物との間で化学結合を形成した状態で該有機ケイ素化合物の被覆層が形成され、平均粒径が1〜300nmの範囲であり、かつ上記有機ケイ素化合物被覆前後でのケイ素含有量増加分が、
    5<S−S<65
    (但し、Sは有機ケイ素化合物被覆後のケイ素含有量(重量%)、Sは有機ケイ素化合物被覆前のケイ素含有量(重量%)を示すが、ケイ素含有量は酸化ケイ素(SiO)換算にて算出した値である。)
    の範囲にあるケイ素化合物被覆金属酸化物微粒子を水及び/又は有機溶剤に分散してなるゾル、
    (B)硬化性シリコーン化合物
    を必須成分とすることを特徴とする高耐候性ハードコート組成物。
  2. 一般式(1)におけるXが、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アシル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、又は−NR(R、Rは互いに同一であっても異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜6の1価炭化水素基を示す。)で示されるものである請求項1記載のハードコート組成物。
  3. 一般式(1)におけるXが、水酸基、メトキシ基又はエトキシ基であり、aが0又は1である請求項1記載のハードコート組成物。
  4. ケイ素含有量増加分が、
    8<S−S<55
    (但し、S、Sは上記と同様の意味を示す。)
    である請求項1、2又は3記載のハードコート組成物。
  5. (A)成分のゾルが、金属酸化物微粒子の水及び/又は有機溶剤分散液に式(1)の有機ケイ素化合物及び/又はその部分加水分解縮合物を添加し、加熱下に撹拌熟成することにより得られたものである請求項1乃至4のいずれか1項記載のハードコート組成物。
  6. (B)成分の硬化性シリコーン化合物が、下記一般式(2)
    SiY4−b (2)
    (式中、Rは炭素数1〜18の有機基、Yは加水分解性基、bは0,1又は2である。)
    で表される加水分解性有機ケイ素化合物の1種又は2種以上(但し、b=0のみの場合及びb=2のみの場合を除く)の加水分解縮合物であって、重量平均分子量が300以上である請求項1乃至5のいずれか1項記載のハードコート組成物。
  7. 加水分解縮合物が、加水分解性有機ケイ素化合物をシリカゾル共存下にて加水分解・縮合することにより得られたものである請求項6記載のハードコート組成物。
  8. (B)成分の固形分100重量部に対する(A)成分の固形分量が0.1〜30重量部である請求項1乃至7のいずれか1項記載のハードコート組成物。
  9. 基材上に請求項1乃至8のいずれか1項記載のハードコート組成物の硬化物層が形成されてなることを特徴とする物品。
  10. 基材と上記ハードコート組成物の硬化物層との間にアクリル樹脂を主成分とするプライマー層が形成されてなることを特徴とする請求項9記載の物品。
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