JP3160745B2 - 鋼管矢板継手の溶接装置 - Google Patents

鋼管矢板継手の溶接装置

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JP3160745B2
JP3160745B2 JP08457195A JP8457195A JP3160745B2 JP 3160745 B2 JP3160745 B2 JP 3160745B2 JP 08457195 A JP08457195 A JP 08457195A JP 8457195 A JP8457195 A JP 8457195A JP 3160745 B2 JP3160745 B2 JP 3160745B2
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pipe sheet
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、母管となる鋼管に継手
材を溶接してなる鋼管矢板の製造において、継手材を母
管に溶接するための溶接装置に関する。
【0002】
【従来の技術】通常の鋼管矢板は、外径400mm〜2
500mm,長さ10m〜50mの大径鋼管を母管と
し、母管の管軸方向に溶接された長さ6m〜45mの継
手材で構成される。
【0003】また鋼管矢板は、継手材の形態により図3
の(1)〜(3)に示す3種類のタイプに分類される。
(1)はC−Cタイプであり、外径165mmφ又は2
16mmφの鋼管継手材1−2を母管1−1に溶接し、
後工程でスリット加工を加えて製造する。(2)はC−
Tタイプで、前述の鋼管継手材1−2とT形鋼継手材の
溶接によって形成される。(3)はL−Tタイプで2本
のL形鋼継手材1−2と一本のT形鋼継手材の溶接で形
成される。
【0004】これら鋼管矢板を供給する製造工場では、
上述の如く大径, 長尺の母管に前記母管同様長尺の各種
タイプの継手材を溶接する必要があり、当該溶接の能率
確保及び品質確保が受注及びコスト競争上必須要件とな
っている。
【0005】本出願人等は、特公平2−23269号公
報に示す「スタビリティーバー使用による鋼管矢板製造
方法」によって、鋼管矢板の溶接方法について登録済み
であるが、以下に一般的な鋼管矢板の溶接法について図
4〜図6で説明する。
【0006】継手材1−2は、予め溶接工程前の仮付工
程において、母管1−1の円周方向及び管軸方向の所定
の位置に仮溶接した状態で溶接工程に供給される。仮溶
接は図4の如く継手両端面を含み大略500mm間隔で
CO2 溶接機等を用い手溶接でスポット的に溶接する。
この場合、母管及び継手材の変形, 曲がりに起因する隙
間Gが発生する。
【0007】以上の素材を溶接する溶接工程の構成例を
潜弧溶接法(以下SAW法と称する)を例にとり、図
5,図6に示す。鋼管矢板1はターニングロールを具備
する2台の溶接走行台車2,3にて両端部を支持され
る。この溶接走行台車2,3は同時に管軸方向への走行
機能も有する。
【0008】4は基礎上に固定された溶接装置で、鋼管
矢板の軸芯を挟む2台の溶接マニプレータ4−1を具備
し、該マニプレータは2本の溶接トーチ4−2 ,フラッ
クス供給端4−3 ,フラックス回収端4−4を有し、鋼
管矢板母管径に合わせ溶接トーチ等を適正位置に設定す
ると同時に、継手シームの上下,左右変動に対し追従す
る目的で、上下,左右の移動機能を有する。該溶接装置
4は上部にフラックス供給ホッパー4−5 ,溶接電源4
−6,芯線リール4−7, フラックス回収ホッパ4−8
等が設置される。
【0009】次にこの構成例の溶接動作について説明す
る。鋼管矢板1を例えば移載装置で溶接走行台車2, 3
のターニングロール上に移載した後、ターニングロール
を回転し2本の継手材が水平位置になるようセットす
る。次に台車2,3は管軸方向に走行し、継手材先端を
溶接トーチ4−2直下の位置に合わせる。
【0010】この位置で両側の溶接マニプレータ4−1
をそれぞれ下降及び継手側に前進させ、溶接トーチを継
手シームの狙い位置に厳密にセットする。セット後溶接
開始指令により溶接走行台車は、予め設定された溶接速
度で管軸方向に走行し、同時に溶接を開始する。継手後
端位置までの溶接終了後溶接走行台車を停止し、溶接マ
ニプレータを動作させ、溶接トーチを待機位置に退避さ
せる。
【0011】この状態で溶接走行台車を高速で後退さ
せ、再度継手材先端を溶接トーチの直下位置に停止させ
る。次にターニングロールを起動し、鋼管矢板継手材を
反転、継手材裏面を水平位置にセットし、再度溶接トー
チを継手シームの狙い位置に厳密にセットし、継手裏面
を後端位置まで溶接する。溶接終了後、溶接トーチの退
避と同時に溶接走行台車を鋼管矢板の移載位置まで高速
で後退させ、一連の溶接を終了する。
【0012】次に該溶接装置に適用される溶接法につい
て、図7(1),(2)により詳述する。
【0013】溶接トーチ4−2でαは突込角,β
(β1 ,β2 )は傾斜角と称し、この角度は継手タイプ
で異なる最適な値になるようセット後、溶接中の瞬間的
な短絡等に対し設定値が変化しないよう溶接マニプレー
タ本体に強固に固定しておく必要がある。
【0014】5は溶接芯線を示し、上述の溶接法におい
ては通常2電極法が用いられ、4.0〜4.8mmφの
太径の芯線が適用される。この溶接芯線5の母管及び継
手材に対する接触位置,所謂狙い位置は、溶接時に狙い
とするアーク移行点となるものであり、α, β, 狙い位
置の設定は、溶接電流, 溶接電圧の設定同様、鋼管矢板
継手材をこの方法で溶接する場合、L及びT継手材の水
平隅肉溶接においては脚長の確保及びアンダーカットの
防止、C継手材においてはビード形成とアンダーカット
等の外観品質確保上重要な因子となる。
【0015】なおこの溶接トーチ4−2は、前述の鋼管
矢板の溶接走行時、長大スパンでの支持形態及び母管曲
りに起因する約100mmの垂直方向撓み,鋼管矢板母
管の曲り,真円度変形及び溶接中の熱変形に起因する±
約50mmの水平方向の変形がもたらす非常に大きな溶
接線変化に対し、溶接芯線の狙い位置が変動しない様厳
密に追従させる必要があり、上下水平の追従機能,所謂
上下水平倣い機能が必須である。
【0016】SAW法においては、狙い位置精度を±
1. 0mm程度に確保することが溶接品質上必須となる
が、3次元的に変化している溶接線を直接検出し精度良
く自動追従可能な実用的検出技術がなく、左右2台の溶
接ヘッドにそれぞれ要員を配置し目視監視に頼っている
のが実情である。
【0017】4−3はフラックス供給端であり、溶接ト
ーチに先行しシーム部にフラックスの散布を行う。4−
4はフラックス回収端で溶接後スラグ化せず残留したフ
ラックス6をこの回収端を通じフラックス回収ホッパー
に回収するものである。
【0018】なお7は、別に設置した装置又は人手によ
ってフラックス散布の前にシーム上に散布されたカット
ワイヤで、C継手溶接に使用され、この溶接法において
は、溶融量を増加させ高速でビード余盛量を確保すると
同時に、溶接アークが鋼管矢板継手溶接特有の隙間の多
いシーム部に直接作用し、溶落ちが発生する事を防止す
る目的で使用される。このカットワイヤは、L及びT継
手溶接にも散布する場合もある。
【0019】
【発明が解決しようとする課題】ここで従来法による鋼
管矢板継手溶接の特性を説明する。
【0020】図8に、鋼管矢板継手の種々の溶接部断面
詳細を示す。尚C継手では、(1)図の如く母管と継手
材の中間に充填材8を挿入し溶接する場合と、(2)図
の如く母管と継手材とを直接溶接する場合があり、この
充填材は仮付工程で継手材仮付と同時に取り付けられ
る。又いずれの場合も、溶融補助材としてカットワイヤ
を使用する。
【0021】第1の特徴は、鋼管矢板製品の継手強度の
保証要件として所謂アンダーカット, ブローホール, 割
れ等の欠陥がないことは当然ながら、一般的に下に示す
ビード幅及び脚長の如き余盛量、即ちビード寸法の保証
が求められ、大溶着量溶接が必要となる。
【0022】C継手: ビード幅9mm以上, L継手: 脚長 8mm以上, T継手: 脚長 9mm以上
【0023】第2の特徴は、母管と継手材の仮付け形態
にあり、母管と継手材は前述の図4に示す如く約500
mm間隔で仮溶接された状態で溶接工程に搬入される
が、母管は通常スパイラル溶接鋼管が使用され、継手材
がスパイラルビードと交錯する結果、このビード近傍の
継手シームは、スパイラル溶接鋼管特有のピーキングに
起因する母管と継手材間の隙間G及び溶接中の熱変形に
よる隙間が発生し、最大2. 5mm規模の隙間に対応す
る必要がある。
【0024】第3の特徴は、L及びT継手の形態と溶接
姿勢にあり、両側の継手の同時溶接が必要となる結果、
継手材水平状態,即ち母管側の壁面がほぼ垂直状態での
溶接で縦方向脚長確保が求められる所謂水平隅肉溶接が
必須となる。特にT継手では、溝形をなす該継手フラン
ジ高さに対し、ウエブ寸法が30mmしかなく、溶接ト
ーチに十分な突込角が設定できない制約が加わる。
【0025】第4の特徴は、C継手の形態にあり、母管
と継手材が小角度で突合わされた所謂フレア開先状態を
呈していることにあり、この開先溶接の欠点である凝固
ワレや母管及び継手側の予熱作用が不足し、溶鋼との濡
れ性悪化によるビード形成が難しい。
【0026】第5の特徴は、極めて長大な溶接長に対
し、母管のターニングロールのみによる両端支持の溶接
で、母管及び継手材の曲りによる約100mmの垂直方
向撓みと、母管の真円度変形及び熱変形による±約50
mmの水平方向変位がもたらす溶接線変化に安定して対
応する必要がある。
【0027】このような特性を有する鋼管矢板の継手溶
接に対し従来法の特徴は、1台の溶接装置で全長に渡り
溶接することを前提にし、高速下で所定の脚長, ビード
幅を達成する必要から、太径の芯線を使い大電流且つ多
電極の溶接により大溶着量を確保する溶接法を採用して
いることにある。
【0028】これら方式は、継手シーム条件が安定し大
電流溶接に耐え、且つ基本的に溶込深さの確保に重点を
置き、余盛量は極力抑えて平滑なビード外観が要求され
る一般的な溶接,例えば平板の突合わせ溶接等において
は効果を発揮するが、溶接継手の形態が隙間が多く極め
て不安定で、C継手の如くフレア開先の特異な形態があ
り、又溶込深さより余盛量の確保が要求される。
【0029】更に溶接姿勢もTタイプの如く姿勢制約下
の水平隅肉溶接での対応が必要となる鋼管矢板の継手溶
接においては、さらに下記の如き欠点があり、溶接速度
の向上が望めないばかりでなく、従来レベルの溶接速度
においても品質的な問題があった。
【0030】(イ) 1. 0m/minを越える高速下
で、大脚長, 大ビード幅達成が必要となる結果、800
A規模の大電流で且つ2電極または3電極の複数電極溶
接が必なる結果、品質, 能率問題として下記のような課
題がある。
【0031】(1) 隙間の多い継手シーム部に強大な溶接
アークと大量の溶鋼が集中的に作用する結果、溶着量に
対する溶込効果が過大となり、溶落ちが発生し易く、C
継手ではカットワイヤに加え充填材を使用しても溶落ち
が発生し易い。
【0032】(2) 深溶込みとなる結果、C継手において
は溶接ビードの凝固形態から凝固ワレを誘発し易く、更
に全継手共通問題として、継手シーム隙間から巻き込ま
れた空気及び母管, 継手材の錆による水素が浮上しにく
くなり、ブローホール, ピット等の欠陥が多発する。
【0033】(3) 複数電極の大電流溶接のため、溶着鋼
の凝固距離,所謂溶融プール長が長くなり、L及びT継
手の如き水平隅肉溶接では湯流れにより外観品質悪化と
縦脚長確保が難しく、特殊な湯流れ抑制用フラックスを
使用する必要がある。また例えフラックスを使用して
も、溶接速度は1. 5m/minを越えると品質確保が
難しい。さらに溶接開始時及び終了時,継手材端部から
の溶着鋼の流れ落ちを防止するため、溶接開始及び終了
位置を継手端部から十分離す必要があり、結果的に継手
材両端の未溶接長が長くなり、補修溶接長が増大する。
【0034】(4) 高速溶接のため、母管, 継手のアーク
ガウジング溝周辺のアークによる予熱作用が低下し、特
にC継手の如きフレア開先溶接では母管及び継手と溶着
鋼の濡れ性が悪化し、ビード外観品質保持には特殊なフ
ラックスの使用が必要となるが、該フラックスを使用し
ても溶接速度は1. 5m/min が限界である。また継手全
体としてアークガウジング溝への溶着鋼の充足が不安定
となり、アンダーカット等の欠陥が多発する。また上記
理由から、この溶接方法においては、継手シームに対す
る芯線狙い位置の極めて厳格な監視が必要となる。
【0035】(5) この溶接方法でのC継手溶接は、カッ
トワイヤの散布が必須となるが、一方ではカットワイヤ
散布が均質に実施されない場合、過大時は融合不良、過
少時はビード幅不足等重大な欠陥発生につながる。また
散布自体も機械散布の場合はトーチ回りの複雑化,人手
散布の場合は散布要員が必要となり、また散布により溶
材コストも悪化する。
【0036】(6) この溶接方法で溶接速度の向上を指向
する場合、必然的に各電極の溶接電流を増加するか電極
数の増加が必要となり、以上の欠点が更に助長される結
果、溶接速度が1. 5m/min を越えると品質の悪化が大
きく、実用的ではない。その結果、従来方式の鋼管矢板
継手の溶接工程における作業時間は長時間を要し、製造
工場の能率低下をきたし、生産性を悪化させている。
【0037】(ロ) 太径芯線による大電流且つ多電極
溶接が前提となり、溶接トーチ外径の増大とトーチ保持
機構の強度確保、芯線供給機構の大型化、給電ケーブル
の太径化等により溶接マニプレータが大型化すると共に
多電極化により該マニプレータが複雑化する結果、作業
及び環境面として下記のような課題がある。
【0038】(1) 突込角, 傾斜角等、3次元的設定が必
要となる鋼管矢板継手溶接に対し、これら溶接品質に影
響を及ぼすトーチ設定機構の機械化が基本的に困難で、
角度ゲージ等による人力セットが必要となる。そのため
C−T及びL−Tタイプの如き左右の継手タイプが異な
る場合、反転毎に角度等の緊急な設定替えが必要とな
り、能率低下及び精度不良につながる。
【0039】(2) カットワイヤの厳格な散布及び管理技
術、3次元的に微妙に変化する継手シームに対し、この
溶接方法にマッチする厳格なシーム検出技術と追従技術
の不足、SAW法においてはフラックスの散布と回収等
の機械化問題から、この溶接方法においては自動化の実
現が困難で、機側作業, 監視が前提となり、作業者は左
右両側の溶接ヘッドに配置が必要となる。
【0040】(3) 上記結果SAW法の場合、作業者はフ
ラックス粉塵下での作業となり、衛生的にも問題が多
い。
【0041】(4) また溶接後工程においても、SAW法
の場合は付着したスラグの剥離作業が必要となり、要員
増を招くとともに環境も悪化する。
【0042】
【課題を解決するための手段】本発明は、鋼管矢板継手
溶接に対する従来技術の欠点を改良し、高能率で且つ高
品質の溶接を実現する鋼管矢板継手の溶接装置を提供す
る。
【0043】本発明は、芯線径2.4mm以下の細径芯
線を使用し、且つCO2 ,Ar,He又はこれらの混合
ガスをシールドガスとして使用し、ウイービング又は回
転方式による運棒機能を有する溶接トーチを具備し、鋼
管矢板管軸方向への移動機能を有し、鋼管矢板継手長さ
に応じて適正な間隔になる如く配置可能な溶接装置を、
前記鋼管矢板の管軸を挟む両継手側にそれぞれ複数台設
置してなる鋼管矢板継手の溶接装置である。
【0044】即ち、鋼管矢板継手の溶接工程て採用され
ている従来型の太径芯線, 多電極,大電流溶接機を前提
とした重装備,単一配置型溶接方法では、基本的に高能
率、且つ高品質の継手溶接は達成出来ず、その理由が、
溶接継手の形態として極めて特異な鋼管矢板継手を高品
質で溶接するには、溶込深さ, 溶融プール長を抑える必
要があり、溶接電流, 溶接電極数を制約すべきである
が、単一配置型溶接方法では、規定のビード寸法を高速
度で達成する必要から、結果的に溶接電流, 溶接電極数
が増加することにあった。
【0045】このように本発明の特徴とするところは、
小電流溶接機を前提とした軽装備,複数配置型溶接方
法、即ち継手材長手方向の溶接長が概略均等になる如く
複数の溶接装置を配置し、個々の溶接装置は品質上最適
となる溶接条件に基づく、個別溶接速度での溶接を可能
とし、この個別溶接速度と台数によって決定される複合
溶接速度で高能率溶接を実現するもので、実現上の技術
課題を克服すると共に、最適な溶接条件, 機器構成を実
験により確認し実現を可能にしたものである。
【0046】本発明の特徴である軽装備,複数配置型溶
接機による鋼管矢板の継手溶接法は、これまで実用化が
困難なため実機化例は皆無であった。その理由は、複数
台配置され且つ管軸方向に任意に移動可能な溶接装置を
必要とすることから、従来方式の如く各溶接装置毎に操
作要員を配置する事は、労務コストの面で本発明による
方式採用が無意味となり、また安全面の問題もあるから
である。
【0047】その解決のためには、溶接開始時の継手シ
ームへの溶接芯線のセット、継手シームの3次元的変形
に対する溶接開始後の芯線追従、C−T及びL−Tタイ
プ等左右の継手タイプが異なる場合の、継手反転毎のト
ーチ角度設定替え、左右継手長さが異なる場合の継手反
転毎の各溶接装置間隔の設定替え等、完全自動化技術の
確立及びこれら条件を満足し、1層で所定のビード幅及
び脚長を確保可能な溶接法の選定と溶接条件確立が必要
である。
【0048】この場合、自動化の障害となるフラックス
使用の省略、及び均一性を要求されるカットワイヤ散布
作業の省略をも実現しなければならない。
【0049】発明者等は、これら課題に対し公知の回転
アーク又はウイービング方式の運棒機能を有する1. 0
mm〜2. 4mmの細径芯線を前提としたガス溶接法に
着目し、実験によって溶接及び操業上の課題を解決し実
用化したものであり、以下にその内容について説明す
る。
【0050】細径芯線溶接法に着目した理由は、この方
式が溶接電源及び溶接ヘッドが小型化し完全自動化に有
利な事によるが、芯線細径化は相対的溶着量の低下と熱
源線状化を招き、ビード幅及び脚長確保が困難となる。
その問題解決即ち溶接電流条件を確立することが第1の
課題であり、T継手及びC継手の溶接試験結果を下に記
す。
【0051】 溶接電流450A→達成溶接速度0. 5m/min, 溶接電流500A→達成溶接速度0. 6m/min, 溶接電流600A→達成溶接速度0.7m/min
【0052】この結果から、目標とする総合溶接速度と
設置台数の関係は表1の如く整理され、例えば450A
規模の実効電流を達成出来る細径芯線溶接としては、大
電流の溶接電源を適用すれば、片側4台で2. 0m/m
inの総合溶接速度の達成が可能となる。
【0053】
【表1】
【0054】また現在実用的に最大規模の600A電源
であれば、更に高能率溶接を実現することができる。但
しこれら高電流電源を鋼管矢板の継手溶接に適用する場
合、以下の条件が必要である。
【0055】 細径芯線を使う結果熱源が線状化し、
電流密度の高いアークが集中し、溶込深さは深くなり、
隙間の多いこれら鋼管矢板継手では溶落ち発生につなが
り、且つこれら個別速度ではビード幅が狭くかつ中高ビ
ードとなって、規定の余盛寸法を達成できない。
【0056】その改善のためには、少なく共ウイービン
グ又は回転アークによる運棒を実施し、熱源の拡散を図
る事が必須である。その場合該継手溶接は、一本毎の溶
接長が非常に長く且つ生産本数も多いことから、揺動が
前提となるウイービング方式は機構的に不利であり、回
転アーク方式が望ましい。
【0057】実験では、最適条件として芯線先端での回
転径3〜4mm, 回転数50〜100rev/secを
採用した。また回転方向については、常に溶融金属を母
管側にかきあげる如く回転するほうが、L及びT爪溶接
時の縦方向脚長確保に有利である。これら機能を具備す
ることは、後述の完全自動化実現のための有力な手段と
もなる。
【0058】次に芯線径の適正範囲について説明する。
【0059】鋼管矢板継手溶接は細径芯線溶接として高
電流,高溶着量溶接を必要とする結果、必然的に芯線送
給速度が増大する。芯線送給速度が大きくなると送給モ
ータの負荷が増加し、更に送給量制御特性も悪化するこ
とから実用的に30m/min以下が望ましく、450
A規模電源においては1. 0mmφが限界となる。
【0060】加えて更に細径化は、熱源線状化を更に助
長し好ましくない。一方芯線径が増加すると送給速度か
らの制約は緩和されるが、芯線送給負荷が増加するばか
りでなく、所定の溶着量を確保するための溶接電流が増
加し、溶接トーチの大型化が必要となり、その結果トー
チ運棒機能導入制約及び個別に配置する溶接装置の自動
セット機能が制約され、芯線径が2. 4mmを越える
と、本発明への適用は困難である。実験結果によれば、
1. 2〜1. 6mmの芯線径が送給性, アーク安定性か
ら最適である。
【0061】 C継手は従来カットワイヤ散布が必須
であったが、カットワイヤ散布は前述の如く機械化が極
めて難しく自動化例がなく、特に本発明の如く複数台の
溶接装置を前提とする場合、トーチ設定等必須機能の自
動化のためには極力軽装備化が必要であり、フラックス
散布, 回収と共にその省略が重要な要素となる。
【0062】省略を前提とする場合、深いV形の溝形状
をなすシーム部全体を芯線の溶融のみにより満たし、所
定のビード幅を確保することは困難である。
【0063】この解決のため図8−(1)の充填材方式
において、前記特公平2−223269号で開示したビ
ード幅確保の為の底上げ機能と溶落ち軽減を主目的とし
ていた充填材幅を最適化し、充填材自身の溶融によって
カットワイヤ同様の溶融補助材としての機能を持たせる
ことでカットワイヤ散布の省略を実現した。
【0064】一方シーム間隙による溶落ちは、細径芯線
溶接の特徴として溶融プール長が約30mmと従来方式
に比し大幅に短く、従って溶融金属の凝固が早く、また
前述の芯線運棒機能との組合せで溶込み深さが緩和さ
れ、試験結果によれば、2. 6mmのギャップまで許容
可能である。
【0065】実験においては、図9に示す如き充填材8
を使用したが、寸法Lについては165mmφタイプで
は、55〜65mm, 216mmφタイプでは60〜7
0mmが望ましく、これは例えば165mmφタイプで
寸法Lを55mm以下とした場合、溶込みが所謂梨型ビ
ードとなり、凝固割れにつながりカットワイヤ省略は難
しいからである。
【0066】一方寸法Lの拡大は凝固割れ軽減には有利
であるが、過大になると爪又は母管との融合不良につな
がる。実験においては、最適値として165mmφタイ
プで60mm, 216mmφタイプで63mmを採用し
た。
【0067】なお上記寸法Lの適正値は平行部板厚t1
との相関で決まり、例えばt1 が5mmより薄い場合、
L寸法は増大すべきである。上記の結果、図10−
(1),(3)の如く、C継手においてフラックス, カ
ットワイヤ散布なしにこの溶接法の採用を可能とした。
【0068】 図10−(2)の如く、T継手の水平
隅肉溶接に当該法を適用する場合、シールドガスの供給
方法としては、一般的に使用される溶接チップ位置に同
芯状にセットするガスシールドノズルの方式では該ノズ
ルの外径のみで約30mmφを必要とし、該継手の溶接
部に挿入不可能であるため、図10−(3)の如く溶接
チップの横方向から供給するサイドノズル方式を採用し
た。
【0069】一方このサイドノズル方式を採用しても、
溶接トーチの突込角αは最大15°までしか許容不可能
であるが、前述の電流, 芯線径, 運棒方式の導入によ
り、フラックス等の湯流れ抑制手段を使用することな
く、1層で規定の脚長達成を可能とした。
【0070】次に完全自動化を実現した手段について説
明する。
【0071】 C−T,L−Tタイプの如く、継手タ
イプ毎または反転する毎に設定変更の必要なトーチ角度
は、細径芯線溶接法の採用により自動化は全く問題無く
実現可能で、実験では一般的な多関節型ロボットを採用
した。また溶接終了毎の芯線先端の切断も、公知のエア
ーニッパを採用した。
【0072】 鋼管矢板は、ターニングロールの両端
支持で母管を支える結果、撓み防止用の中間支持装置等
を考慮しても約100mmの下方向撓み、及び母管の真
円度変形による±約50mmの水平方向変位が発生す
る。従ってこれら矢板の長手方向に複数台配置する溶接
装置は、溶接スタート時それぞれの位置の変位に応じて
正確に該矢板の継手シームに溶接トーチをセットする必
要がある。
【0073】しかしながらこの変位は、鋼管矢板1本毎
及び継手反転毎に異なるため、一般的なティーチングプ
レイバックによる教示方式では対応不可能であり、それ
ぞれの位置において継手シーム位置を確実にセンシング
する機能が必須となる。
【0074】このセンシング法としては、例えばレーザ
光を使い継手シームを直接検出する方法も採用不可能で
はないが、溶接装置とは別に、光源, 受光器を狭隘なこ
れら継手部に溶接トーチと近接して設置する必要があ
り、溶接装置の他の自動機能実現の障害となり、また画
像処理器等を各溶接装置毎に必要とする結果、設備費,
軽量化ニーズから好ましくない。
【0075】このような問題に対し、前述のロボットと
公知の溶接トーチに高電圧を付加するタッチセンシング
方式を活用し、図11−(1),(2)に例示の如く、
4点の検出動作で、それぞれの溶接装置位置の継手シー
ム(5) に正確に芯線をセット可能であることを確認し採
用した。
【0076】即ち継手上面及び側面を溶接トーチ本体の
接触による粗センシングで検出し、この位置を基準にし
て、継手シームを溶接芯線先端による精密センシングで
検出するものである。粗センシングによる継手材位置認
識後、直接シーム位置に芯線をセットする方法も考えら
れるが、継手材は一般的に±2mmの圧延時の断面寸法
誤差に加え仮付時の形状変形があり、全体で約±5mm
の誤差が発生し、精密センシング省略は困難である。
【0077】実験では、粗センシング後母管側及び爪側
の2点を検出すれば、継手シームに正確に芯線をセット
可能なことを確認し採用した。精密センシング位置は、
極力シーム位置に近接することが望ましく、実験は高さ
方向約20mm位置で実施した。またセンシング点数の
増加は、検出精度の向上につながるが時間ロス増を考慮
する必要がある。
【0078】実験では粗センシングを側面接触から行っ
たが、上面側を先にしても差し支えなく、精密センシン
グの順序を変えても問題はない。又応用例として、継手
の上面及び側面のみの粗センシングを溶接トーチと別置
きの検出装置で認識し、精密センシングのみを溶接トー
チで行う方法もあるが、装置がやや複雑化する。
【0079】実験におけるセンシング動作の進行は、予
め溶接マニプレータのCPUに母管外径と継手タイプ別
に教示した (1)〜 (5)の基準動作を、実際の接触点で補
正しつつ順次動作を進めていく方式を採用した。この方
式の場合、鋼管矢板の図面上の継手位置と実際の継手材
の誤差が非常に大きいことから、少なくとも継手材の粗
センシングエリアの設定が重要である。
【0080】粗センシングエリアを過小にすると、待機
位置からの高速動作時,継手端部が近かった場合は溶接
トーチの衝突と破損が生じ、遠かった場合は検出不能に
よる次動作停止となる。過大の場合は、粗センシング開
始から継手端部接触までの時間ロスが増大する。実施例
では、図面寸法位置に対し水平方向では±100mm、
垂直方向では−50〜+150範囲に設定した。この結
果、溶接トーチ待機位置から芯線セットまで約40se
cで終了可能である。
【0081】 溶接開始後、それぞれの溶接装置は鋼
管矢板継手シームの前述の初期変位に加え、溶接入熱に
よる変動に合わせ正確にシーム上を追従し走行する必要
がある。このセンシング法としては、前述の光学的な方
法もあるが、光学的方法には前述の問題以外に、溶接中
のアーク光, スパッタ, 及び溶接ヒューム等の問題もあ
り、長期の信頼性に欠ける。
【0082】これら課題に対する対策として、下記条件
によって芯線運棒機能を活用した公知のアークセンシン
グ方式の採用により解決した。C継手の溶接で充填材を
使用するタイプ図10−(1)では、充填材と継手側に
Vで示す浅いV溝をなすギャップが発生し、それは継手
材曲り等により3. 5〜6mmにも達する。
【0083】アークセンシング方式でのテスト結果、こ
のギャップが4mm以上になると、ギャップと継手表面
及び充填材エッジ部での突出した周期的な電流又は電圧
変動が発生する。そのため芯線の狙い位置が母管側寄り
となるような制御指令を挿入しても、芯線は実質的にこ
れらギャップのV溝を開先と認識し移動する。その結果
継手材側はアークが直接作用し確実に融合されるが、母
管側はアークはまず充填材エッジ部に作用し、エッジ部
及び上面部を溶融した後に母管壁を溶融する現象が生じ
る。
【0084】従って実施例に示すタイプの充填材では、
板厚t1 が過大になると母管側の融合不良につながる。
従って板厚t1 の上限は7mmが限界であり、4〜5m
mが最適である。
【0085】なお充填材8を図12の如き形状とし、充
填材と継手間ギャップを0もしくは4mm以下にすれ
ば、芯線は母管及び継手材の中間位置を移動し、上記の
問題,ひいては板厚t1 の上限制約は拡大するが、充填
材の製作が難しくなりコスト増を招く。但しこの場合も
アークの広がりの限界から、充填材上面の幅過大は母管
又は継手材側の融合不良発生につながり、9mmが限界
である。
【0086】
【実施例】以下に本発明の実施例を、図1に従って説明
する。
【0087】図において、符号2, 3は2台の走行台車
であり、上部に設置したターニングロールで鋼管矢板1
の両端を支持する。この走行台車2, 3は、鋼管矢板1
を受入位置から溶接位置に高速=30m/minで移動
し、且つ鋼管矢板継手端部を基準位置aに正確に位置決
めする低速=2m/minの走行機能を有する。
【0088】符号4は、本発明にかかる複数台の溶接装
置であり、本実施例では片側4台を設置し、個別溶接速
度0.7m/minに対応し、複合溶接速度で最大2.
8m/minの達成が可能である。
【0089】該溶接装置4は鋼管矢板1の管軸方向に平
行に敷設したレール上を走行する。また溶接装置は、1
0m〜45mの任意の継手材の長さに対し予めインプッ
トした長さ情報に基づき溶接長が原則4等分になるよう
に自動的に配置可能である。この配置動作は25m/m
inの高速走行で行う。また本装置は、インプット区間
の溶接走行のため個別溶接速度範囲で任意の速度で走行
可能である。
【0090】本装置の溶接前の自動配置及び溶接開始後
の溶接長の位置認識は、全て基準位置aを起点にした距
離認識機能により行う。なお本装置の自動配置後の溶接
動作を、鋼管矢板側、即ち走行台車2, 3を移動して達
成することも可能であるが、40t に及ぶ大重量の鋼管
矢板1を個別溶接長に合わせ精度よく移動するには解決
すべき課題が増加する。
【0091】次に溶接装置に積載する主要機器について
記述する。
【0092】符号4−1は溶接マニプレータであり、公
知の6軸多関節ロボットを使用したが、直行タイプでも
差し支えない。4−6はいわゆるMAG溶接電源で、6
00A電源を採用した。4−2は回転アーク機能を有す
る溶接トーチで、T継手に対応するため図10に示す如
きサイドシールド方式を採用した。
【0093】4−7は溶接芯線カセット、4−10は溶
接毎に芯線先端を切断するエアーニッパ、4−9は溶接
毎に溶接チップ及びサイドノズル先端に付着したスパッ
タ除去を目的としたワイヤブラシ、4−11は溶接マニ
プレータと溶接関連の制御装置である。
【0094】溶接マニプレータ4−11及び溶接トーチ
4−2以外の機器は、本溶接装置を極力小型化するうえ
で地上配置することが望まれるが、継手長に対応して最
大で45mの走行範囲を必要とする当該装置において
は、これらは溶接装置上配置が必須となる。なおMAG
ガスのみは、地上の集合装置からホースにより溶接位置
に供給した。
【0095】次に本溶接装置による動作および作用を、
図1,図2により説明する。
【0096】鋼管矢板1は、例えば移載装置等で、2台
の走行台車2, 3のターニングロールに両管端を支持す
る如く移載される。移載完了後ターニングロールを駆動
し、両側の継手を水平位置に合わせ、更に該走行台車は
溶接装置側に高速で走行後、図1に示す継手基準端位置
が基準位置aに正確に一致する如く停止する。
【0097】一方溶接装置4は、この受入れ動作と併行
して、予めインプットされた鋼管矢板の継手タイプ, 左
右の継手の長さ, 母管端面からの位置等の情報に基づ
き、原則として溶接長が均等に4等分される如く、基準
位置aを起点にそれぞれ溶接装置の溶接開始位置に高速
で配置走行する。
【0098】なお左右の継手の長さが異なる場合、左右
の溶接装置の配置位置はそれぞれ非対称としても良い
が、表面溶接から裏面溶接の反転毎に左右の溶接装置全
ての配置位置を変更する煩わしさが発生する。
【0099】本実施例では、図1に示す如く長尺側継手
で決定される配置位置で左右対称配置に展開する方式を
採用した。これは鋼管矢板の溶接時間が長尺側継手の溶
接長によって決定されることから採用したもので、この
方式では、反転毎の溶接スタート位置配置は、反基準位
置の最少台のみの移動で可能となる。
【0100】これら展開終了後は、各溶接装置の溶接マ
ニプレータ4−1は、図11に示す手順に基づき溶接開
始位置の継手シームのセンシシングをし、溶接芯線を継
手シーム位置にセットすると同時に、それぞれ図1矢印
の方向に溶接を開始する。この場合溶接トーチ4−2
は、予めインプットした継手タイプ情報に基づく突込
角,傾斜角,溶接電流, 電圧及び個別溶接速度に自動的
にセットされる。
【0101】左右の継手タイプが異なる場合、左右の溶
接装置はそれぞれの継手タイプの条件にセットされる。
下記に代表的なCタイプ継手の溶接条件を例示する。
【0102】芯線径 :1. 4mm, 溶接電流 :600A, 溶接電圧 :43V, スピン径 :3mm, 回転数 :100Hz, 溶接速度 :0.7m/min, 突込み角 :5°, 傾斜角 :0°,
【0103】溶接中は、継手シームの水平及び垂直方向
の変形に対し、溶接トーチはアークセンシングで自動的
に追従する。継手両端部を除き各溶接装置の溶接継ぎ目
は未溶接が発生しない様ラップさせる必要があるが、本
溶接法の特徴として、溶融プール長が非常に短いことか
ら、ラップ長さは約20mmあれば良い。このラップ長
さは、溶接装置の距離認識機能で調整可能である。
【0104】各溶接装置は、図示矢印の規定の個別溶接
長の溶接を終了すると自動的に停止し、溶接トーチを退
避させた後、裏面側溶接に備え各トーチをスパッタ除去
装置4−9位置に移動し、溶接チップ及びサイドノズル
下面に付着したスパッタを除去する。またエアーニッパ
4−10位置でこれらチップからの芯線突き出し長さが
一定となる如く芯線を切除する。
【0105】左右の継手長が異なる場合は、これら動作
と同時に反基準側の溶接装置は裏面溶接のための溶接開
始位置に移動し、図2に示す如く裏面側溶接開始位置に
展開する。一方一連の溶接装置のこれら動作と併行し、
走行台車のターニングロールを駆動し、鋼管矢板を反転
後裏面側継手を水平位置に正確にセットする。
【0106】再度継手シームのセンシング後、裏面側溶
接を図2矢印の如く開始するが、左右の継手タイプが異
なる場合、左右の溶接装置のセシング動作及び溶接姿勢
は自動的に切替えられる。裏面溶接の方向は実施例では
前述の表面側溶接と対向方向に移動する方式とし、溶接
装置の反転毎の展開を最少としたが、表面溶接開始位置
に復帰後同方向に溶接しても問題はない。
【0107】裏面溶接終了後、溶接装置は次の鋼管矢板
の溶接準備に移り、同時に走行台車は高速で後退し、移
載装置等で溶接の終わった鋼管矢板を搬出し、一連の溶
接作業を終了する。
【0108】
【発明の効果】以上説明したように本発明の鋼管矢板継
手の溶接装置は、溶接継手の形態が隙間が多く極めて不
安定で、C継手の如くフレア開先の特異な形態にあり、
又溶込深さより余盛量の確保が要求され、更に溶接姿勢
もTタイプの如く姿勢制約下の水平隅肉溶接での対応が
必要となる鋼管矢板の継手溶接に最適な方式として適用
できる装置であり、従来方式の品質問題の改善ばかりで
なく、溶接能率の大幅な向上と作業環境の改善も同時に
達成可能である。
【0109】1. 複数の溶接装置で、低電流かつ回転ア
ーク等の運棒機能により、入熱を分散しつつ適正な個別
溶接速度での溶接が可能となった結果、大脚長, 大ビー
ド幅要求に対し、下記の品質および能率向上の効果を得
た。
【0110】(1) 隙間の多い鋼管矢板継手シーム部に
対し、溶接アークの作用が分散する結果溶着量に対する
溶込効果が抑制され、2. 6mmまでの隙間に対し溶落
ち発生が皆無であり、C継手ではカットワイヤ散布省略
が可能となった。
【0111】(2) 上記の効果の結果、C継手において
は充填材寸法の適正化で凝固ワレ抑止が可能となり、更
に全継手で継手シーム隙間から巻き込まれた空気および
母管,継手材の錆による水素の浮上が容易になり、ブロ
ーホール, ピット等の発生が大幅に減少した。
【0112】(3) 単一電極の小電流溶接のため、溶着
鋼の凝固距離,所謂溶融プール長が約30mmと短く、
運棒効果も作用してL及びT継手の如き水平隅肉溶接で
は、フラックスを使用することなく高品質の外観が得ら
れ、縦脚長の確保が可能となった。また溶接開始及び終
了位置は継手端部約10mmを残せば良く、継手材両端
の未溶接長が短く、補修溶接長の短縮が可能となった。
【0113】(4) 水平隅肉, フレア開先条件に対し適
正な個別溶接速度での溶接が可能となり、母管, 継手の
アークガウジング溝周辺のアークによる予熱作用が向上
し、特にC継手の如きフレア開先溶接では、溶着鋼の濡
れ性が改善し、特殊なフラックスを使用することなく高
品質のビード形成が可能となった。また継手全体として
もアークガウジング溝への溶着鋼の充足が安定し、アン
ダーカット等の欠陥が大幅に減少した。またこれら効果
及び運棒効果から、これら溶接方法においては、継手シ
ームに対する芯線狙い位置は一般的アークセンシング倣
いの範囲で十分であり、機側監視が不要となった。
【0114】(5) 本発明装置による溶接方法でのC継
手溶接は、カットワイヤの散布が省略可能となった結
果、カットワイヤ過大時の融合不良,過少時のビード幅
不足等重大な欠陥発生の恐れがなく、又溶材コストも低
減できた。
【0115】(6) 本発明装置による溶接方法による溶
接能率は、例えば実施例の個別溶接速度0.7m/mi
n, 溶接装置片側4台では、複合溶接速度2.8m/m
inの達成が可能であり、鋼管矢板製造工場の生産性の
大幅向上が可能となった。
【0116】2. 継手タイプ別の突込角, 傾斜角等溶接
トーチの設定替え、溶接開始時の継手シームへの溶接芯
線セット、溶接中の継手シームへの該芯線の追従、フラ
ックス及びカットワイヤ散布等従来の手動及び機側監視
作業が不要で溶接工程の完全自動化が実現した結果、下
記の作業環境の改善等の効果を得た。
【0117】(1) 継手タイプ別の溶接トーチの角度設
定,溶接電流, 電圧等溶接条件は、基本的にCPUへの
プリセット値を鋼管矢板仕様によって呼び出し、自動的
に設定される結果、溶接品質の作業者による個人差が解
消され、且つ溶接に関する熟練技能を不要とした。
【0118】(2) フラックス粉塵又は強烈なアーク光
とスパッタ等に晒されることなく、運転室での遠隔操作
及び集中監視のみで作業可能であり、所謂3K作業の改
善効果につながった。
【0119】(3) 従来法でのスラグ剥離作業又は大粒
で強固に付着したスパッタの除去作業が不要となり、溶
接後工程の作業負荷及び作業環境の改善も可能となっ
た。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の鋼管矢板継手溶接装置の構成例を示す
平面図である。
【図2】図1に示す継手溶接装置の作動を説明する平面
図である。
【図3】鋼管矢板の継手形態の各種の態様を示し、
(1)はC−Cタイプ,(2)はC−Tタイプ,(3)
はL−Tタイプの断面図である。
【図4】従来の継手材と母管を仮溶接した状態を説明す
る斜視図である。
【図5】従来のターニングロール設備を具備する鋼管矢
板溶接装置の一例を示す側面図である。
【図6】図5に示す溶接装置の正面図である。
【図7】2電極法による潜弧溶接法を説明する図面であ
り、(1)は正面図,(2)は側断面図である。
【図8】鋼管矢板継手の溶接部のビード仕様を示し、
(1),(2)はC継手,(3)はT継手,(4)はL
継手の場合の詳細断面図である。
【図9】充填材形状の一例を示す図面である。
【図10】シールドガス溶接を説明する図面であり、
(1),(3)はC継手,(2)はT継手の場合の溶接
法を示す。
【図11】(1),(2)は、4点の検出動作で継手シ
ーム正確に芯線をセットするタッチセンシングを説明す
る図面である。
【図12】継手間とのギャップを小さくする充填材を例
示する図面である。
【符号の説明】
1,1−1 鋼管矢板 1−2 継手材 2,3 溶接走行台車 4 溶接装置 4−1 溶接マニプレータ 4−2 溶接トーチ 4−3 フラックス供給端 4−4 フラックス回収端 4−5 フラックス供給ホッパー 4−6 溶接電源 4−7 芯線リール 4−8 フラックス回収ホッパ 4−9 ワイヤブラシ 4−10 エアニッパ 4−11 制御装置 5 溶接芯線 6 残留したフラックス 7 カットワイヤ 8 充填材 a 走行台車の基準位置 g 継手材の隙間
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI B23K 9/16 B23K 9/16 J E02D 5/08 E02D 5/08 (56)参考文献 特開 平6−198443(JP,A) 特開 平5−200550(JP,A) 特開 平6−15449(JP,A) 特開 昭51−120945(JP,A) 特開 昭50−40438(JP,A) 特開 昭51−6832(JP,A) 特開 昭53−131936(JP,A) 実開 昭52−63125(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B23K 9/028 B23K 9/00 B23K 9/12 B23K 9/127 B23K 9/16 E02D 5/08

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 芯線径2.4mm以下の細径芯線を使用
    し、且つCO2 ,Ar,He又はこれらの混合ガスをシ
    ールドガスとして使用し、ウイービング又は回転方式に
    よる運棒機能を有する溶接トーチを具備し、鋼管矢板管
    軸方向への移動機能を有し、鋼管矢板継手長さに応じて
    適正な間隔になる如く配置可能な溶接装置を、前記鋼管
    矢板の管軸を挟む両継手側にそれぞれ複数台設置してな
    る鋼管矢板継手の溶接装置。
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