以下、本発明を実施した好ましい形態の一例について、図1に示す自動二輪車1を例に挙げて説明する。但し、本発明に係る車両は、図1に示す自動二輪車1に限定されるものではない。本発明に係る車両は、V型エンジンを備える車両であれば特に限定されるものではない。本発明に係る車両は、四輪車であってもよいし、鞍乗型車両であってもよい。ここで、「鞍乗型車両」とは、ライダーがシート(鞍)に跨って乗る車両のことをいう。鞍乗型車両としては、自動二輪車以外に、ATV(All Terrain Vehicle)などが挙げられる。また、自動二輪車も、図1に示す所謂アメリカンタイプに限定されない。本発明において、自動二輪車は、狭義のモーターサイクル、モペット、スクーター、オフロード車などを含む。また、本明細書において、自動二輪車には、前輪及び後輪の少なくとも一方が一体に回転する複数の車輪により構成されており、車両を傾斜させて進行方向を変更する車両も含まれるものとする。
なお、以下の説明において、前後左右の方向は、シート14に着座した間から見た方向を言うものする。
(自動二輪車1の概略構成)
図1は、自動二輪車1の概略側面図である。図1に示すように、自動二輪車1は車体フレーム10と、車体カバー13と、シート14とを備えている。車体カバー13は、車体フレーム10の一部を覆っている。シート14は、車体フレーム10の上に配置されている。
車体フレーム10は、メインフレーム11と、リアフレーム12とを備えている。メインフレーム11は、ヘッドパイプ15から後方に向かって延びる左右一対のフレーム部11a,11bを有している。メインフレーム11には、ヘッドパイプ15が回転可能に取り付けられている。ヘッドパイプ15の上端部には、ハンドル16が図示しないハンドルフォルダによって固定されている。ハンドル16には、スロットル操作子としてのスロットルグリップ17が設けられている。スロットルグリップ17は、スロットルワイヤ18によってアクセル開度センサ(APS:Accelerator Position Sensor)51に接続されている。このため、スロットルグリップ17がライダーによって操作されると、スロットルワイヤ18が動かされ、アクセル開度センサ51によって、スロットルグリップ17の操作量がアクセル開度として検出される。
また、ヘッドパイプ15には、左右一対のフロントフォーク20が固定されている。フロントフォーク20は、前方に向かって斜め下方向に延びている。フロントフォーク20の下端部には、前輪21が回転可能に取り付けられている。
車体フレーム10の後端部には、ピボット軸22が取り付けられている。ピボット軸22には、リアアーム23が揺動可能に取り付けられている。リアアーム23の後端部には、後輪24が回転可能に取り付けられている。後輪24は、図示しないドライブシャフトなどの動力伝達機構により、後述するエンジンユニット30の出力軸に接続されている。これにより、エンジンユニット30の動力が後輪24に伝達され、後輪24が回転する。
図1及び図2に示すように、メインフレーム11には、エンジンユニット30が懸架されている。エンジンユニット30は、V型のエンジン31と、スロットルボディアッセンブリー50と、図示しないクラッチ及び変速機構などとを備えている。
スロットルボディアッセンブリー50は、エンジン31の上に配置されている。図4に示すように、スロットルボディアッセンブリー50は、平面視において、左右一対のフレーム部11a,11bの間に配置されている。
エンジンユニット30とスロットルボディアッセンブリー50との間には、インシュレーター48が配置されている。インシュレーター48と、エンジン31と、スロットルボディアッセンブリー50とは、車幅方向両側に配置されたXメンバー82a,82bによって、相互に固定されている。
図3に示すように、インシュレーター48には、連絡経路48a,48bが形成されている。この連絡経路48a,48bによって、エンジン31の吸気ポート42a,42bと、スロットルボディアッセンブリー50の各気筒55,56とが接続されている。
図2に示すように、スロットルボディアッセンブリー50の上には、吸気系部品としてのエアクリーナー49が配置されている。このエアクリーナー49を介してスロットルボディアッセンブリー50に外気が供給される。なお、本実施形態では、吸気系部品としてエアクリーナー49が設けられている例について説明するが、エアクリーナー49のかわりに、吸気系部品としてエアチャンバを配置してもよい。
図1に示すように、エンジン31の後方には、燃料タンク19が配置されている。燃料タンク19は、図示しない燃料供給ホースにより、図4に示すスロットルボディアッセンブリー50の燃料ニップル82に接続されている。このため、燃料タンク19に溜められた燃料は、燃料供給ホースを経由してスロットルボディアッセンブリー50に供給される。
スロットルボディアッセンブリー50に供給された空気と燃料とは、スロットルボディアッセンブリー50内において混合され、混合気が生成される。そして、その混合気がスロットルボディアッセンブリー50からエンジン31へと供給される。
なお、図4に示すように、平面視した際にメインフレーム11に囲まれた空間内において、スロットルボディアッセンブリー50のすぐ後方には、エンジンユニット30やスロットルボディアッセンブリー50に対して電力を供給するバッテリー47が搭載されている。
(エンジン31)
次に図1〜図3を主として参照しながら、エンジン31の形態について説明する。本実施形態においてエンジン31は水冷式4サイクルのV型4気筒エンジンである。ただし、本発明において、エンジン31はV型のエンジンである限りにおいて特に限定されない。例えば、エンジン31は空冷式エンジンであってもよい。エンジン31は2サイクルエンジンであってもよい。また、エンジン31は3気筒以下または5気筒以上のV型エンジンであってもよい。
なお、ここで、「V型エンジン」とは、Vバンクをなすように配置された前側シリンダと後側シリンダとを有するエンジンをいう。「前側シリンダと後側シリンダとがVバンクをなすように配置されている」とは、前側シリンダと後側シリンダとが、前側シリンダの中心軸と後側シリンダの中心軸とがクランク軸の軸心を中心に斜めに交わるように配置されていることをいう。
図2に示すように、エンジン31は、クランクケース32を備えている。クランクケース32には、図示しないクランクシャフトが収納されている。クランクケース32には、前側シリンダボディ33と、後側シリンダボディ35とが取り付けられている。前側シリンダボディ33と後側シリンダボディ35とは、側面視において、クランクシャフトを中心とするV字状に配置されている。前側シリンダボディ33の上には、前側シリンダヘッド36が取り付けられている。前側シリンダヘッド36のさらに上には、前側ヘッドカバー38が取り付けられている。同様に、後側シリンダボディ35の上には、後側シリンダヘッド37が設けられている。後側シリンダヘッド37の上には後側ヘッドカバー39が取り付けられている。
図3に示すように、前側シリンダボディ33の内部には、略円柱状の前側シリンダ34が形成されている。一方、後側シリンダボディ35の内部には、略円柱状の後側シリンダ29が形成されている。前側シリンダ34と後側シリンダ29とは、Vバンクをなすように配置されている。より具体的には、前側シリンダ34が上方に向かって斜め前方向に延びるように配置されている一方、後側シリンダ29は上方に向かって斜め後ろ方向に延びるように配置されている。図1に示す、前側シリンダ34の中心軸と後側シリンダ29の中心軸とのなす角θ0は、エンジン31から生じるエンジン音や、得ようとするエンジン31の特性などを考慮した上で、前側シリンダ34と後側シリンダ29とが位置的に干渉しない程度の大きさ以上に設定される。θ0は、通常10°以上170°以下、好ましくは30°以上150°以下、さらに好ましくは45°以上100°以下程度に設定される。
図3に示すように、前側シリンダ34及び後側シリンダ29のそれぞれには、それぞれクランクシャフトに接続されたコンロッド40a,40bが収納されている。コンロッド40a,40bの先端部には、ピストン41a,41bが取り付けられている。このピストン41a,41bと、シリンダ34,29と、シリンダヘッド36,37とによって、燃焼室47a,47bが区画形成されている。
前側シリンダヘッド36及び後側シリンダヘッド37のそれぞれには、吸気ポート42a,42b及び排気ポート43a,43bが形成されている。吸気ポート42a,42bには、吸気ポート42a,42bの開閉を行う吸気弁44a,44bが配置されている。この吸気弁44a,44bは、吸気弁44a,44bの上面に配置された吸気カム46a,46bによって駆動される。一方、排気ポート43a,43bには、排気ポート43の開閉を行う排気弁45a,45bが配置されている。この排気弁45a,45bは、図示しない排気カムによって駆動される。
(スロットルボディアッセンブリー50)
−前側スロットルボディ53及び後側スロットルボディ54−
次に、主として図4〜図9を参照しながらスロットルボディアッセンブリー50について詳細に説明する。スロットルボディアッセンブリー50は、第1の前側スロットルボディ53a及び第2の前側スロットルボディ53bを備えている。なお、以下の説明において、「第1の前側スロットルボディ53a及び第2の前側スロットルボディ53b」を総称して「前側スロットルボディ53」とすることがある。
第1の前側スロットルボディ53aと第2の前側スロットルボディ53bとは、車幅方向に配列されている。第1の前側スロットルボディ53aには、略円柱状の第1の前側気筒55aが形成されている。一方、第2の前側スロットルボディ53bには、略円柱状の第2の前側気筒55bが形成されている。前側気筒55aと後側気筒55bとは、それぞれ上下方向に延びている。なお、以下、第1の前側気筒55aと第2の前側気筒55bとを総称して「前側気筒55」とすることがある。
前側スロットルボディ53a,53bのそれぞれは、前側スロットル弁57a,57bを有している。なお、以下の説明において、「前側スロットル弁57a,57b」を総称して「前側スロットル弁57」とすることがある。
前側スロットル弁57aと前側スロットル弁57bとは、弁軸65によって連結されている。この弁軸65が、後述するモータ60によって回転させられることにより、前側スロットル弁57aと前側スロットル弁57bとが同時に動かされ、前側気筒55a,55bの開閉が行われる。
前側スロットルボディ53a,53bの後方には、第1の後側スロットルボディ54a及び第2の後側スロットルボディ54bが配置されている。なお、以下の説明において、「第1の後側スロットルボディ54a及び第2の後側スロットルボディ54b」を総称して「後側スロットルボディ54」とすることがある。
第1の後側スロットルボディ54aと第2の後側スロットルボディ54bとは車幅方向に配列されている。第1の後側スロットルボディ54aは、第1の前側スロットルボディ53aのほぼ後方に配置されている。一方、第2の後側スロットルボディ54bは、第2の前側スロットルボディ53bのほぼ後方に配置されている。ただし、コンロッド40a,40bの配置の関係上、前側スロットルボディ53a,53bと後側スロットルボディ54a,54bとは、車幅方向に若干ずらされて配置されている。
なお、本実施形態では、第1の前側スロットルボディ53aの上端と、第2の前側スロットルボディ53bの上端と、第1の後側スロットルボディ54aの上端と、第2の後側スロットルボディ54bの上端とが同じ高さに位置している。
第1の後側スロットルボディ54aには、略円柱状の第1の後側気筒56aが形成されている。一方、第2の後側スロットルボディ54bには、略円柱状の第2の後側気筒56bが形成されている。なお、以下の説明において、「第1の後側気筒56a及び第2の後側気筒56b」を総称して「後側気筒56」とすることがある。
後側スロットルボディ54a,54bのそれぞれは、後側スロットル弁58a,58bを有している。以下、「後側スロットル弁58a,58b」を総称して「後側スロットル弁58」とすることがある。
後側スロットル弁58aと後側スロットル弁58bとは、弁軸66によって連結されている。このため、後述するモータ60により、弁軸66が回転させられることにより、後側スロットル弁58a,58bが同時に動かされ、後側気筒56a,56bの開閉が行われる。
図2に示すように、前側気筒55の上端部と後側気筒56の上端部とは、エアクリーナー49に接続されている。一方、前側気筒55の下端と後側気筒56の下端とは、図3に示すように、吸気ポート42a,42bに接続されている。これにより、エアクリーナー49から吸気された空気が、スロットルボディアッセンブリー50を介して、エンジン31に供給される。
−インジェクタ75,76及び燃料供給管81−
主として図8に示すように、前側スロットルボディ53a,53bのそれぞれには、前側インジェクタ75a,75bが取り付けられている。一方、後側スロットルボディ54a,54bのそれぞれには、後側インジェクタ76a,76bが取り付けられている。以下、「前側インジェクタ75a,75b」を総称して「前側インジェクタ75」とすることがある。「後側インジェクタ76a,76b」を総称して「後側インジェクタ76」とすることがある。
図2や図3に示すように、前側インジェクタ75と後側インジェクタ76とは、それぞれの上端部において燃料供給管81に接続されている。図4に示すように、燃料供給管81は、前側気筒55と後側気筒56との間において、車幅方向に延びている。詳細には、燃料供給管81は、前後方向において、その中心軸A2が前側気筒55の中心軸A4,A5と後側気筒56の中心軸A6,A7との中央に位置するように配置されている。また、上下方向に関しては、燃料供給管81は、前側スロットルボディ53の上端及び後側スロットルボディ54の上端よりも低く、前側スロットルボディ53の下端及び後側スロットルボディ54の下端よりも高い位置に配置されている。なお、本実施形態とは異なり、前側スロットルボディ53の上端と後側スロットルボディ54の上端との高さが異なる場合は、燃料供給管81は、前側スロットルボディ53の上端と後側スロットルボディ54の上端とのうちの高い方よりも低い位置に配置されることが好ましい。
図4に示すように、燃料供給管81には、燃料ニップル82が接続されている。燃料ニップル82は、第1の後側気筒56aと第2の後側気筒56bとの間において、燃料供給管81から後方に延びている。燃料ニップル82は、図示しない燃料供給パイプによって図1に示す燃料タンク19に接続されている。これにより、燃料タンク19に貯められた燃料が、燃料供給パイプ、燃料ニップル82及び燃料供給管81を介して前側インジェクタ75及び後側インジェクタ76に供給される。
また、図4及び図8に示すように、燃料供給管81には、パルセーションダンパ83が取り付けられている。パルセーションダンパ83は、燃料供給管81の後方やや斜め下に位置している。このパルセーションダンパ83によって、前側インジェクタ75及び後側インジェクタ76に供給される燃料の脈動が抑制されている。
なお、図3に示す、前側インジェクタ75の先端に取り付けられたノズル73は、前側インジェクタ75から噴射される燃料が、前側気筒55の中心軸方向を中心として噴射されるように調整されている。後側インジェクタ76の先端のノズル74も同様に、後側気筒56の中心軸方向を中心として燃料が噴射されるように調整されている。
図6及び図8に示すように、前側インジェクタ75a,75bは、インジェクタ本体68a,68bと、第1の前側コネクタ77a,77bとを備えている。一方、後側インジェクタ76a,76bは、インジェクタ本体69a,69bと、第1の後側コネクタ78a,78bとを備えている。以下、「インジェクタ本体68a,68b」を「インジェクタ本体68」と総称することがある。「第1の前側コネクタ77a,77b」を「前側コネクタ77」と総称することがある。「インジェクタ本体69a,69b」を「インジェクタ本体69」と総称することがある。「第1の後側コネクタ78a,78b」を「後側コネクタ78」と総称することがある。
コネクタ77,78は、図10に示すECU(Electronic Control Unit)80に接続されている。このECU80から、コネクタ77,78を介して、前側インジェクタ75及び後側インジェクタ76に制御信号が出力されることによって、前側インジェクタ75と後側インジェクタ76とからの燃料噴射が制御されている。なお、図6はスロットルボディアッセンブリー50の右側面図であるが、コネクタ77,78の態様を図示する便宜上、図4に示す右側固定プレート88aの描画は省略している。
図8に示すように、インジェクタ本体68,69は、平面視において前後方向に延びている。一方、コネクタ77,78は、平面視において前後方向に対して斜めに延びている。具体的に、第1の前側コネクタ77aと第2の前側コネクタ77bとは、車幅方向に関して、相互に反対方向に向かって斜め後方に延びている。より具体的には、第1の前側コネクタ77aと第2の前側コネクタ77bとのそれぞれは、車幅方向外側に向かって斜め後方に延びている。第1の後側コネクタ78aと第2の後側コネクタ78bとは、車幅方向に関して、相互に反対方向に向かって斜め後方に延びている。より具体的には、第1の後側コネクタ78aと第2の後側コネクタ77bとのそれぞれは、車幅方向外側に向かって斜め後方に延びている。
車幅方向外側に位置するインジェクタ本体68aの中心軸と第1の前側コネクタ77aの延びる方向との平面視におけるなす度と、インジェクタ本体69bの中心線と第2の後側コネクタ78bの延びる方向との平面視におけるなす角とは、等しくθ1に設定されている。一方、車幅方向内側に位置するインジェクタ本体68bの中心軸と、第2の前側コネクタ77bの延びる方向との平面視におけるなす角と、インジェクタ本体69aの中心軸と、第1の後側コネクタ78aの延びる方向との平面視におけるなす角とは、等しくθ2に設定されている。同じθ1とθ2とは、前側コネクタ77と後側コネクタ78とが位置的に干渉しないような範囲に設定されている。θ1とθ2の好ましい範囲は、5°〜180°である。
−モータ60−
スロットルボディアッセンブリー50は、モータ60を有している。図9に示すように、モータ60は、第1の回転軸としての回転軸60aを有している。回転軸60aの軸心A1は、車幅方向に延びている。
回転軸60aには、モータピニオンギア61が取り付けられている。モータピニオンギア61は、伝達ギア機構62と噛合している。伝達ギア機構62は、3つのアイドルギア63a,63b,63cと2つのカウンターギア64a,64bとを備えている。カウンターギア64aは、弁軸65に固定されている。一方、カウンターギア64bは弁軸66に固定されている。モータピニオンギア61は、1つのアイドルギア63aを介してカウンターギア64aに噛合している。一方、モータピニオンギア61とカウンターギア64bとは比較的離れているため、モータピニオンギア61は、2枚のアイドルギア63b,63cを介してカウンターギア64bに噛合している。これにより、モータ60が駆動され、モータピニオンギア61が回転すると、カウンターギア64a,64bが回転し、弁軸65,66が同じ方向に回転される。その結果、図4に示す前側スロットル弁57a,57bと後側スロットル弁58a,58bとが回転し、前側気筒55の開閉と気筒56の開閉とが同期して行われる。
なお、本実施形態では、モータ60と伝達ギア機構62とを、スロットル弁駆動機構59と総称するものとする。
図8に示すように、平面視において、第1の前側気筒55aの中心軸A4と、第2の前側気筒55bの中心軸A5と、第1の後側気筒56aの中心軸A6と、第2の後側気筒56bの中心軸A7とに囲まれた領域内には、アクチュエータとしてのモータ60が配置されている。図9に示すように、モータ60は、上下方向に関して、前側スロットルボディ53及び後側スロットルボディ54の上端よりも低く下端よりも高い位置に配置されている。つまり、モータ60は、前側スロットルボディ53a,53bと後側スロットルボディ54a,54bの4つのスロットルボディに囲まれた空間内に位置している。
図9及び図4に示すように、モータ60は燃料供給管81に対して前後方向にオフセットされている。具体的に、モータ60の第1の回転軸としての回転軸60aの軸心A1と、燃料供給管81の中心軸A2とが、前後方向において異なる位置に位置している。より具体的には、軸心A1は、燃料供給管81の中心軸A2よりも前方に位置している。つまり、図9に示すように、モータ60は、前後方向において、軸心A1が燃料供給管81の中心軸A2と前側気筒55の中心軸A4,A5との間に位置するように配置されている。
−ケーシング70−
図4及び図8に示すように、モータ60及び伝達ギア機構62は、ケーシング70に収納されている。図8に示すように、ケーシング70には、伝達ギア機構62に接続された弁軸65,66が挿通している。
ケーシング70は、車幅方向に付き合わされた第1のケーシング部71と第2のケーシング部72とを備えている。第1のケーシング部71と第2のケーシング部72とは、ボルトやリベットなどにより相互に固定されている。第1のケーシング部71は、伝達ギア機構62側に位置している。第1のケーシング部71は金属により形成されている。具体的には、第1のケーシング部71は、例えば、鉄やアルミニウム、ステーンレスなどの合金により形成することができる。本実施形態では、第1のケーシング部71は、アルミニウムダイキャスト製である。
第1のケーシング部71は、第1の前側スロットルボディ53aと第1の後側スロットルボディ54aに対して固定されている。具体的には、伝達ギア機構62が収納され、弁軸65,66が挿通しているケーシング70の部分が第1の前側スロットルボディ53aと第1の後側スロットルボディ54aとに直接固定されている。
第2のケーシング部72は、モータ60側に位置している。本実施形態では、第2のケーシング部72は樹脂により形成されている。具体的には、第2のケーシング部72は、例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などにより形成することができる。また、第2のケーシング部72を形成する樹脂は、例えばグラスファイバーなどを含有するものであってもよい。なお、第2のケーシング部72も、第1のケーシング部71と同様に、金属により形成されていてもよい。
第2のケーシング部72は、図8に示すように、第2の後側スロットルボディ54bに対して固定されている。具体的には、第2のケーシング部72は、金属性のステー67を介して第2の後側スロットルボディ54bに固定されている。詳細には、ステー67が、第2のケーシング部72のモータ60が収納された部分の頂部に対してボルト留めされるとともに、第2の後側スロットルボディ54bに対してもボルト留めされることにより、第2のケーシング部72が第2の後側スロットルボディ54bに対して固定されている。
−連装部材85−
図4に示すように前側スロットルボディ53a,53bと後側スロットルボディ54a,54bとは、連装部材85によって相互に固定されている。連装部材85は、2本の内側連装パイプ86a,86bと、2本の外側連装パイプ87a,87bと、右側固定プレート88a及び左側固定プレート88bとを含んでいる。
内側連装パイプ86a,86bと外側連装パイプ87a,87bとは、車幅方向に延びている。図6に示すように、内側連装パイプ86a,86bと外側連装パイプ87a,87bとは、高さ方向に関して、相互に異なる位置に配置されている。具体的には、内側連装パイプ86a,86bは、高さ方向に関して、スロットルボディ53,54の上端部とほぼ同じ位置に配置されている。一方、外側連装パイプ87a,87bは、高さ方向に関して、スロットルボディ53,54の中央部とほぼ同じ位置に配置されている。
図4及び図6に示すように、内側連装パイプ86a,86bは、前側気筒55の中心軸A4,A5と、後側気筒56の中心軸A6,A7との間に配置されている。内側連装パイプ86aは、前側気筒55の中心軸A4,A5よりも後方において、第1の前側スロットルボディ53aと第2の前側スロットルボディ53bとに固定されている。一方、内側連装パイプ86bは、後側気筒56の中心軸A6,A7よりも前方において、第1の後側スロットルボディ54aと第2の後側スロットルボディ54bとに固定されている。内側連装パイプ86aと内側連装パイプ86bとは、2つの固定部材89によって幅方向において2点で相互に固定されている。なお、以下の説明において、第1及び第2の連装パイプ86a,86b及び2つの固定部材89を総称して「内側連装部材91」とする。
外側連装パイプ87aは、前側気筒55の中心軸A4,A5よりも前方において、第1の前側スロットルボディ53aと第2の前側スロットルボディ53bとに固定されている。一方、外側連装パイプ87bは、後側気筒56の中心軸A6,A7よりも後方において、第1の後側スロットルボディ54aと第2の後側スロットルボディ54bとに固定されている。
このように、第1の前側スロットルボディ53aと第2の前側スロットルボディ53bとは、内側連装パイプ86aと外側連装パイプ87aとによって、挟み込まれるように強固に固定されている。また、第1の後側スロットルボディ54aと第2の後側スロットルボディ54bとは、内側連装パイプ86bと外側連装パイプ87bとによって挟み込まれるように強固に固定されている。
さらに、図4及び図5に示すように、前側スロットルボディ53a,53bと、後側スロットルボディ54a,54bとは、右側固定部材としての右側固定プレート88aと、左側固定部材としての左側固定プレート88bとにより相互に固定されている。
詳細には、図5に示すように、左側固定プレート88bは、第2の前側スロットルボディ53bの上部及び下部と、第2の後側スロットルボディ54bの上部及び下部との4点で固定されている。右側固定プレート88aは、第1の前側スロットルボディ53aの上部及び下部と、第1の後側スロットルボディ54aの上部及び下部の4点で固定されている。
このように、前側スロットルボディ53a,53bと、後側スロットルボディ54a,54bとは、右側固定プレート88a及び左側固定プレート88bと、内側連装部材91とによって固定されている。平面視において、中心軸A4,A5と、中心軸A6,A7とによって囲まれた領域内には、前側スロットルボディ53a,53bと、後側スロットルボディ54a,54bとを相互に固定する連装部材として、内側連装部材91のみが配置されている。中心軸A4,A5と、中心軸A6,A7とによって囲まれた領域内において、燃料供給管81よりも下方には、前側スロットルボディ53a,53bと、後側スロットルボディ54a,54bとを相互に固定する連装部材は配置されていない。
−アクセル開度センサ51及びスロットル開度センサ52−
図4に示すように、スロットルボディアッセンブリー50には、アクセル開度センサ51とスロットル開度センサ(Throttle Position sensor)52とが設けられている。スロットル開度センサ52は、第2の前側スロットルボディ53bの左側に配置されている。スロットル開度センサ52は、弁軸65に接続さている。スロットル開度センサ52は、弁軸65の回転を検知することにより、スロットル開度を検出する。
アクセル開度センサ51は、第2の回転軸としてのAPS軸90の右側端部に接続されている。図5に示すように、APS軸90は、APS軸90の軸心A3は、前側スロットルボディ53及び後側スロットルボディ54の上端よりも低い位置に位置するように配置されている。なお、本実施形態とは異なり、前側スロットルボディ53の上端と後側スロットルボディ54の上端との高さが異なる場合は、APS軸90は、軸心A3が前側スロットルボディ53の上端と後側スロットルボディ54の上端とのうちの高い方よりも低い位置に位置するように配置されることが好ましい。
図4及び図5に示すように、平面視において、モータ60は、前側気筒55の中心軸A4,A5と後側気筒56の中心軸A6,A7とにより囲まれた領域内に配置されている一方、APS軸90は、その領域外に配置されている。具体的には、前後方向に関して、APS軸90は、APS軸90の中心軸A3が前側気筒55の中心軸A4,A5より前方に位置するように配置されている。より具体的には、主として図2に示すように、APS軸90は、側面視において、前側ヘッドカバー38とエアクリーナー49との間に配置されている。このように、前後方向において、APS軸90とモータ60とはオフセットされている。
図4に示すように、APS軸90には、プーリー92が取り付けられている。プーリー92には、図1に示すスロットルワイヤ18が巻きかけられている。このため、スロットルグリップ17が人為操作されることにより、スロットルワイヤ18が動くと、APS軸90が回転する。アクセル開度センサ51は、このAPS軸90の回転を検知することによりアクセル開度を検出する。
(自動二輪車1の制御ブロック)
次に、図10に示す自動二輪車1の制御ブロックについて詳細に説明する。自動二輪車1は、制御部としてのECU(Electronic Control Unit)80を備えている。ECU80には、前述したアクセル開度センサ51及びスロットル開度センサ52と、車速センサ94などの各種センサが接続されている。アクセル開度センサ51は、ECU80に対してアクセル開度を出力する。スロットル開度センサ52は、ECU80に対してスロットル開度を出力する。車速センサ94は、ECU80に対して車速を出力する。
ECU80には、エンジン31が接続されている。ECU80は、入力されたアクセル開度やスロットル開度、車速などに基づいてエンジン31を制御する。
また、ECU80には、スロットルボディアッセンブリー50も接続されている。具体的に、ECU80には、モータ60とインジェクタ75,76とが接続されている。ECU80は、入力されたアクセル開度、スロットル開度及び車速などに基づいてモータ60を駆動する。モータ60が駆動されることにより、弁軸65と弁軸66が回転する。これによりスロットル弁57,58が動き、前側気筒55及び後側気筒56の開閉が行われる。その結果、エアクリーナー49から吸入された空気が気筒55,56内に導かれる。
また、それと同時に、ECU80は、入力されたアクセル開度、スロットル開度及び車速などに基づいて、インジェクタ75,76からの燃料供給量を制御する。インジェクタ75,76から噴射された燃料とエアクリーナー49から供給された空気とが混合され、混合気が生成される。混合された混合気は、図3に示す吸気ポート42a,42bに供給される。
(作用及び効果)
本実施形態では、モータ60と燃料供給管81とが前後方向にオフセットされている。具体的には、モータ60において高さ寸法が最も大きくなる回転軸60aの軸心A1の位置と、燃料供給管81の中心軸A2との位置が前後方向にずらされている。このため、モータ60と燃料供給管81とを高さ方向に関して近接して配置することが可能となる。従って、スロットルボディアッセンブリー50の高さ寸法を小さくすることが可能となる。すなわち、モータ60を前後方向に関して前側スロットルボディ53と後側スロットルボディ54との間に配置すると共に、モータ60と燃料供給管81とを前後方向に関してオフセットすることで、スロットルボディアッセンブリー50の前後方向の寸法と高さ寸法との両方を小さくすることができる。従って、エンジンユニット30の前後方向の寸法と高さ寸法との両方を小さくすることができる。
なお、種々の車両のなかでも、鞍乗型車両、特に自動二輪車では、車幅及び車高が厳しく制限される。このため、スロットルボディアッセンブリー50及びエンジンユニット30の配置空間が厳しく制限される。特には、平面視において、左右一対のフレーム部11a,11bの間にスロットルボディアッセンブリー50を配置した自動二輪車では、スロットルボディアッセンブリー50及びエンジンユニット30の配置空間がさらに厳しく制限される。従って、エンジンユニット30を小型化できる本発明は、鞍乗型車両、なかでも自動二輪車に特に有用である。
ところで、特許文献1に記載のスロットルボディアッセンブリー100では、仮に燃料供給管を1本にしたとしても、スロットルボディアッセンブリーの小型化を達成することは困難である。通常、前側インジェクタと後側インジェクタとは長さが等しい。このため、前側インジェクタと後側インジェクタとを共通の燃料供給管に接続する場合、燃料供給管を前側及スロットルボディと後側スロットルボディとの中間に配置しなければならない。よって、最も高さ方向に大きいモータの中央部分と燃料供給管とが上下方向に並ぶこととなる。従って、前側及び後側スロットルボディの中間に配置されたモータと燃料供給管とが位置的に干渉しないように、燃料供給管とモータとを離して配置しなければならない。よって、スロットルボディアッセンブリーの高さ寸法が大きくなり、小型化の達成が困難となる。
また、前側インジェクタ75と後側インジェクタ76とで燃料供給管81が共通である。このため、図11及び図12に示すように、前側インジェクタ75と後側インジェクタ76とに対してそれぞれ専用の燃料供給管を設ける場合と比較して、前側インジェクタ75と後側インジェクタ76とを近づけて配置することができる。従って、スロットルボディアッセンブリー50の前後長を短くすることができる。その結果、エンジン31のVバンク角θ0を小さくすることが可能となる。
なお、本実施形態では、回転軸60aの軸心A1が燃料供給管81の中心軸A2よりも前方に配置される場合について説明したが、軸心A1を中心軸A2よりも後方に配置しても上述した効果と同様の効果が得られる。
また、図4及び図8に示すように、燃料供給管81に対して、モータ60と燃料ニップル82とが相互に別側にオフセットされている。よって、モータ60と燃料ニップル82との位置的干渉を抑制することができる。従って、スロットルボディアッセンブリー50、ひいてはエンジンユニット30をより小型化することが可能となる。
具体的に、本実施形態では、燃料ニップル82は後方に向かって延びている。このため、図1に示すように、スロットルボディアッセンブリー50よりも後方に配置された燃料タンク19と燃料ニップル82との接続が容易となる。燃料タンク19と燃料ニップル82とを接続する燃料供給ホースを短くすることができる。
また、燃料供給管81に対して、モータ60とパルセーションダンパ83とも相互に別側にオフセットされている。よって、モータ60とパルセーションダンパ83との位置的干渉を抑制することができる。従って、スロットルボディアッセンブリー50、ひいてはエンジンユニット30をより小型化することが可能となる。