JP3157944B2 - 電気用金属箔張り積層板 - Google Patents

電気用金属箔張り積層板

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JP3157944B2
JP3157944B2 JP04417293A JP4417293A JP3157944B2 JP 3157944 B2 JP3157944 B2 JP 3157944B2 JP 04417293 A JP04417293 A JP 04417293A JP 4417293 A JP4417293 A JP 4417293A JP 3157944 B2 JP3157944 B2 JP 3157944B2
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壮一 堀端
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敏夫 淡路
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Nippon Shokubai Co Ltd
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Nippon Shokubai Co Ltd
Matsushita Electric Works Ltd
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    • H05ELECTRIC TECHNIQUES NOT OTHERWISE PROVIDED FOR
    • H05KPRINTED CIRCUITS; CASINGS OR CONSTRUCTIONAL DETAILS OF ELECTRIC APPARATUS; MANUFACTURE OF ASSEMBLAGES OF ELECTRICAL COMPONENTS
    • H05K1/00Printed circuits
    • H05K1/02Details
    • H05K1/03Use of materials for the substrate
    • H05K1/0313Organic insulating material
    • H05K1/032Organic insulating material consisting of one material
    • H05K1/0326Organic insulating material consisting of one material containing O

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  • Reinforced Plastic Materials (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、耐水性、電気特性、
耐熱性等に優れ、しかも折り曲げ加工が可能な電気用金
属箔張り積層板に関する。
【0002】
【従来の技術】プリント配線基板等に用いる電気用金属
箔張り積層板には、紙、ガラス繊維、合成繊維等の強化
材にフェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステ
ル樹脂等を含浸し、硬化させて得られる繊維強化プラス
チックを基材とした硬質タイプと、ポリイミドやポリエ
ステル等のフィルムを基材としたフレッキシブルタイプ
とがある。
【0003】前記硬質タイプの積層板は、剛性が高いた
め、実装できる電子部品の種類や数に高い自由度を持っ
ており、従来から、広く使用されている。しかし、近年
の電子機器の小型化に対応して、限られた空間内に、こ
の硬質タイプの積層板から得られたプリント配線基板を
収納しようとすると、高い剛性のために折り曲げること
ができず、そのため、基板を分割し、各分割基板を接続
するという煩雑な工程と、この基板接続等のための余分
な部品を要することになる。
【0004】一方、前記フレッキシブルタイプの積層板
は自由に折り曲げが可能であり、そのため、このタイプ
の積層板から得られたプリント配線基板は、電子機器の
形状に合わせて容易に収納することができる。しかし、
フレッキシブルタイプの積層板は、極めて低い剛性のた
めに、実装できる電子部品の種類や数に大きな制約があ
り、用途も限定されている。
【0005】上記の問題に対して、エポキシ樹脂を一度
溶剤に溶解させて強化材に含浸後、残留溶剤を乾燥除去
して得られた基材を銅箔とともに積層し、一体化してな
る、折り曲げ加工が可能な電気用金属箔張り積層板が提
案されている(特開昭59−184587号、特開昭6
2−213193号の各公報参照)。しかし、この積層
板は、上述のように、その製造過程において、エポキシ
樹脂を強化材に含浸させるために溶剤を使用する必要が
あるとともに、含浸後は溶剤を乾燥除去する必要がある
ため、防災上、あるいは、省資源、省エネルギーの観点
から、好ましくない。
【0006】溶剤を用いずに単独で容易に強化材へ含浸
させることができる樹脂としては、不飽和ポリエステル
樹脂やビニルエステル樹脂がよく知られている。不飽和
ポリエステル樹脂およびビニルエステル樹脂は、一般
に、耐熱性、機械的物性、電気的特性、耐水性、耐薬品
性等も優れていることから、硬質タイプの電気用金属箔
張り積層板に用いられている(特開昭55−4838
号、特開昭60−84350号の各公報参照)。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】ところが、前述の不飽
和ポリエステル樹脂やビニルエステル樹脂は、剛性が高
いため、折り曲げ加工が可能な電気用金属箔張り積層板
に適用することはできない。柔軟性に富んだ不飽和ポリ
エステル樹脂やビニルエステル樹脂も知られてはいる
が、これらは、耐水性や耐薬品性が低く、電気特性も劣
り、さらには難燃性にも乏しいため、電気用金属箔張り
積層板に用いることは困難であった。
【0008】そこで、この発明は、製造過程において樹
脂を強化材へ含浸させるために溶剤を使用する必要がな
く、そのため含浸後の溶剤除去処理も不要であるととも
に、耐熱性、耐水性、耐薬品性、電気特性等に優れ、か
つ、折り曲げ加工が可能な電気用金属箔張り積層板を提
供することを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するた
め、発明者らは、種々検討を重ねた。その結果、強化材
へ含浸させる樹脂として、後で詳しく述べる、長鎖二塩
基酸、多官能エポキシ樹脂およびエポキシ基含有(メ
タ)アクリレートを所定の当量比で反応させて得られる
不飽和エステルと、ラジカル重合開始剤とを必須成分と
して含有する熱硬化性樹脂組成物を用いればよいことを
実験で確認して、この発明を完成した。
【0010】したがって、この発明にかかる電気用金属
箔張り積層板は、酸基に含まれる以外の炭素原子の合計
が1分子当たり12個以上である長鎖二塩基酸(a)、
1分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ樹脂
(b)および1分子中に1個のエポキシ基を有する(メ
タ)アクリレート(c)を、前記(b)および(c)の
有するエポキシ基の合計が前記(a)の有する酸基1当
量当たり0.8〜1.2当量である割合、かつ、前記
(b)の有するエポキシ基と前記(c)の有するエポキ
シ基との当量比が2:1〜1:2である割合で反応させ
て得られる不飽和エステル(A)と、ラジカル重合開始
剤(B)とを必須成分として含有する熱硬化性樹脂組成
物の硬化物がシート状の繊維材で強化されてなる繊維強
化樹脂層と、その少なくとも一方の側に積層されて、こ
の繊維強化樹脂層と一体化されている金属箔とを有する
ものである(以下、電気用金属箔張り積層板を「積層
板」と略記することがある)。
【0011】以下では、まず、この発明で用いられる熱
硬化性樹脂組成物について説明する。この熱硬化性樹脂
組成物は、その硬化物がシート状の繊維材で強化される
ことによって繊維強化樹脂層を構成する。この熱硬化性
樹脂組成物は、不飽和エステル(A)とラジカル重合開
始剤(B)とを必須成分として含有する。
【0012】上記不飽和エステル(A)は、酸基に含ま
れる以外の炭素原子の合計が1分子当たり12個以上で
ある長鎖二塩基酸(a)、1分子中にエポキシ基を2個
以上有するエポキシ樹脂(b)および1分子中に1個の
エポキシ基を有する(メタ)アクリレート(c)を後述
の所定の当量比で反応させて得られるものである。不飽
和エステル(A)の原料の一つとして用いられる、酸基
に含まれる以外の炭素原子の合計が1分子当たり12個
以上である長鎖二塩基酸(a)(以下、これを「長鎖二
塩基酸(a)」と略称する)とは、1分子中に2個の酸
基を有し、かつ、これらの酸基に含まれる以外の炭素原
子の合計が1分子当たり12個以上である長鎖状の分子
構造を有する化合物である。この長鎖二塩基酸(a)
は、不飽和エステル(A)の分子構造中、積層板に折り
曲げ加工性(可撓性)を付与するソフトセグメントの部
分を構成するために用いられる。もしも、酸基に含まれ
る以外の炭素原子の合計が1分子当たり12個未満のも
のを使用した場合は、積層板の可撓性が不充分となり、
積層板を任意に折り曲げることができなくなるので好ま
しくない。また、1分子中に3個以上の酸基を有する化
合物の併用は可能であるが、この化合物の使用量が多す
ぎると積層板の可撓性が低下したり不飽和エステル
(A)の製造時にゲル化物が生じたりするため、あまり
好ましくない。
【0013】長鎖二塩基酸(a)は、直鎖状のものであ
ってもよいし、分岐や置換基を有するものであってもよ
い。前記置換基としては、特に限定はされないが、たと
えば、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、
シクロアルケニル基、フェニル基、ニトリル基等が挙げ
られる。長鎖二塩基酸(a)分子の主鎖を構成する炭素
原子数(ただし、酸基に含まれるものを除く)は、10
以上が好ましい。
【0014】長鎖二塩基酸(a)は、酸基を分子の末端
に有していてもよいし側鎖に有していてもよい。長鎖二
塩基酸(a)の有する酸基としては、特に限定はされな
いが、たとえば、カルボキシル基、スルホン基、スルフ
ィン基、スルフェン基、チオカルボキシル基、ジチオカ
ルボキシル基等が挙げられる。また、長鎖二塩基酸
(a)の有する2個の酸基は、その種類が互いに同一で
も異なっていてもよい。上記酸基の中でもカルボキシル
基を有する長鎖二塩基酸(a)が入手しやすい点から好
ましい。
【0015】長鎖二塩基酸(a)の具体例としては、特
に限定されるわけではないが、たとえば、テトラデカン
二酸、ヘキサデカン二酸、エイコサン二酸、1,16−
(6−エチルヘキサデカン)−ジカルボン酸、1,18
−(7,12−オクタデカジエン)−ジカルボン酸、
1,12−(6−エチニルドデカン)−ジカルボン酸、
1,18−(7−エチニルオクタデカン)−ジカルボン
酸、1,14−(7,8−ジフェニルテトラデカン)−
ジカルボン酸、5−(7−カルボキシヘプチル)−2−
ヘキシル−3−シクロヘキセンカルボン酸が挙げられ
る。その他にも、リノール酸等から得られるダイマー酸
や水添ダイマー酸(水素化ダイマー酸とも言う)、さら
には、両末端カルボキシル基含有液状ブタジエン−アク
リロニトリル共重合体、両末端カルボキシル基含有液状
ポリブタジエン、両末端カルボキシル基含有ポリアクリ
ル酸ブチル等が挙げられる。これらの中でもダイマー酸
や水添ダイマー酸の使用は、積層板の物性バランスから
みて、特に好ましい。長鎖二塩基酸(a)は、1種のみ
または2種以上併せて使用される。
【0016】不飽和エステル(A)の原料の一つであ
る、1分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ樹
脂(b)(以下、これを「多官能エポキシ樹脂(b)」
と称する)は、不飽和エステル(A)の分子構造中、積
層板に耐熱性、耐水性、耐薬品性、電気特性等の諸性能
を付与するハードセグメントの部分を構成するために用
いられる。多官能エポキシ樹脂(b)は、分子量が14
0〜3000の範囲、エポキシ当量が70〜1500
(g/当量)の範囲のものが好ましい。
【0017】多官能エポキシ樹脂(b)としては、特に
限定はされないが、たとえば、ビスフェノールA型エポ
キシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェ
ノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポ
キシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、エポ
キシ化ポリブタジエン、テトラグリシジルジアミノジフ
ェニルメタン、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル
−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート等
が挙げられる。これらの中でも、ビスフェノールA型エ
ポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノ
ールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック
型エポキシ樹脂等の芳香族系のエポキシ樹脂が好まし
い。特に、臭素置換ビスフェノールA骨格を有する多官
能エポキシ樹脂を用いた場合は、熱硬化性樹脂組成物の
硬化物の分子骨格に臭素原子が導入され、前記硬化物の
難燃性が向上して、積層板に高い難燃性が付与されるた
め、好ましい。
【0018】多官能エポキシ樹脂(b)は、1種のみま
たは2種以上併せて使用される。不飽和エステル(A)
の原料の一つである、1分子中に1個のエポキシ基を有
する(メタ)アクリレート(c)(以下、これを「エポ
キシ基含有(メタ)アクリレート(c)」と称する。ま
た、この明細書中、「(メタ)アクリレート」はアクリ
レートおよび/またはメタクリレートを意味する。)
は、不飽和エステル(A)に炭素−炭素不飽和二重結合
を持たせるために用いられる。このエポキシ基含有(メ
タ)アクリレート(c)としては、特に限定はされない
が、たとえば、グリシジルアクリレート、グリシジルメ
タクリレート、アクリル酸−3,4−エポキシブチル、
メタクリル酸−3,4−エポキシブチル、メタクリル酸
−4,5−エポキシペンチル、アクリル酸−6,7−エ
ポキシペンチル、2−メチルグリシジルアクリレート、
2−メチルグリシジルメタクリレート等が挙げられる。
これらの中でも、特に、グリシジルアクリレート、グリ
シジルメタクリレート等が好ましい。エポキシ基含有
(メタ)アクリレート(c)は、1種のみまたは2種以
上併せて使用される。
【0019】長鎖二塩基酸(a)、多官能エポキシ樹脂
(b)およびエポキシ基含有(メタ)アクリレート
(c)の反応は、(b)および(c)の有するエポキシ
基の合計が(a)の有する酸基1当量あたり0.8〜
1.2当量である割合、かつ、(b)の有するエポキシ
基と(c)の有するエポキシ基との当量比が2:1〜
1:2である割合で、これら(a)、(b)、(c)を
用いて行われる。もしも、上記の割合を外れる使用量で
反応を行うと、熱硬化性樹脂組成物の硬化物の架橋密度
が低くなりすぎたり高くなりすぎたりして積層板の折り
曲げ加工性、耐熱性、耐水性、耐薬品性、電気特性等の
物性バランスが損なわれ、好ましくないからである。
【0020】不飽和エステル(A)の数平均分子量につ
いては、特に限定されるわけではないが、800〜10
000の範囲が好ましい。分子量が上記範囲を下回る
と、熱硬化性樹脂組成物の硬化物の架橋密度が高くなり
すぎて積層板の折り曲げ加工性等が低下し、分子量が上
記範囲を上回ると、熱硬化性樹脂組成物の硬化物の架橋
密度が低くなりすぎて積層板の耐熱性、耐水性、耐薬品
性、電気特性等が低下するからである。
【0021】不飽和エステル(A)は、反応原料とし
て、前記(a)、(b)、(c)に加え、さらに(メ
タ)アクリル酸を用いて得られるものであってもよい
(この明細書中、「(メタ)アクリル酸」はアクリル酸
および/またはメタクリル酸を意味する)。(メタ)ア
クリル酸は、積層板の、折り曲げ加工性と、耐熱性、耐
水性、耐薬品性、電気特性とのバランスを図るべく、不
飽和エステル(A)の架橋間隔を最適化する等の目的で
用いられる。(メタ)アクリル酸を用いる場合、(メ
タ)アクリル酸は、長鎖二塩基酸(a)の有する酸基に
対する(メタ)アクリル酸の有する酸基の当量比が0.
5以下の範囲、好ましくは1/99〜1/2の範囲とな
るように長鎖二塩基酸(a)の一部を(メタ)アクリル
酸に置き換えて使用される。
【0022】前記反応を行うことにより不飽和エステル
(A)を製造する方法としては、特に限定されるわけで
はないが、以下に説明する製造方法Iが好ましい。製造
方法Iは、下記2つの工程I−1およびI−2を有する
方法である。 (I−1)亜鉛の有機酸塩をエステル化触媒として用
い、長鎖二塩基酸(a)とエポキシ基含有(メタ)アク
リレート(c)とをエステル化反応させることにより、
酸基含有(メタ)アクリレートを得る工程。
【0023】(I−2)アミン類、アミンの酸付加物
類、第4級アンモニウム塩類、アミド類、イミダゾール
類、ピリジン類、ホスフィン類、ホスホニウム塩類およ
びスルホニウム塩類からなる群の中から選ばれた少なく
とも1種の化合物をエステル化触媒として用い、前記酸
基含有(メタ)アクリレートと多官能エポキシ樹脂
(b)とをエステル化反応させる工程。
【0024】製造方法Iは、上記2つの工程I−1およ
びI−2を時系列的に分割することが特徴である。工程
I−1における長鎖二塩基酸(a)とエポキシ基含有
(メタ)アクリレート(c)との反応は、エポキシ基含
有(メタ)アクリレート(c)の有するエポキシ基1当
量当たり、長鎖二塩基酸(a)の有する酸基が1.25
〜3.75当量の割合になるようにして行われることが
好ましい。長鎖二塩基酸(a)の有する酸基の当量が上
記範囲を下回ると、工程(I−2)で導入する多官能エ
ポキシ樹脂(b)の分子骨格に基づいた樹脂の物性設計
が困難となり、また、長鎖二塩基酸(a)の有する酸基
の当量が上記範囲を上回ると、硬化物の架橋密度が低下
し、樹脂物性を低下させることになるからである。
【0025】製造方法Iでは、工程I−1におけるエス
テル化反応のための触媒として、亜鉛の有機酸塩を用い
る。ここで亜鉛の有機酸塩を用いるのは、エポキシ基含
有(メタ)アクリレート(c)が共存していてもゲル化
を起こさずに、エステル化反応を促進させるためであ
る。使用されうる亜鉛の有機酸塩は、特に限定されるわ
けではないが、たとえば、オクチル酸亜鉛、ナフテン酸
亜鉛、ラウリル酸亜鉛、リシノール酸亜鉛、安息香酸亜
鉛、サリチル酸亜鉛、パラオキシ安息香酸亜鉛、クレソ
チン酸亜鉛、2,3−オキシナフトエ酸亜鉛等が挙げら
れる。これらは1種のみまたは2種以上併せて使用され
る。ここで、有機酸は、原料である、長鎖二塩基酸
(a)、多官能エポキシ樹脂(b)あるいはエポキシ基
含有(メタ)アクリレート(c)や反応生成物に対して
溶解性がある亜鉛塩を形成する有機酸であればよい。
【0026】亜鉛の有機酸塩の使用量は、たとえば、金
属亜鉛に換算して、反応物すなわち長鎖二塩基酸(a)
とエポキシ基含有(メタ)アクリレート(c)の総重量
に対し、0.005〜3.0重量%の比率であることが
好ましい。この範囲を上回ると、硬化樹脂物性を低下さ
せるおそれがあり、下回ると、エステル化反応速度が遅
くなり、実質的に目的物が得られないおそれがあるから
である。
【0027】工程I−1でのエステル化反応は、たとえ
ば、必要により、トルエンやキシレン等の不活性溶剤中
で、より好ましくは、反応終了後に除去が不必要でその
まま樹脂組成物の成分として用いることのできるスチレ
ン、ビニルトルエン、メチル(メタ)アクリレート、ジ
アリルフタレート等の後述のラジカル重合性不飽和単量
体(C)中で、空気、ハイドロキノンやベンゾキノンな
どのようなラジカル重合禁止剤の存在下、70〜130
℃の温度範囲という条件で行われる。この反応は実質的
にエポキシ基が消失するまで反応を行うのが好ましい。
【0028】このエステル化反応により、酸基含有(メ
タ)アクリレートが得られる。この酸基含有(メタ)ア
クリレートは、1分子中に、1個の酸基を有していると
ともに、1個の(メタ)アクリロイル基を有している。
工程I−2では、この酸基含有(メタ)アクリレートと
多官能エポキシ樹脂(b)とをエステル化反応させる。
なお、この工程I−2では、さらに(メタ)アクリル酸
を用い、この(メタ)アクリル酸および前記酸基含有
(メタ)アクリレートと、多官能エポキシ樹脂(b)と
をエステル化反応させる場合も含まれる。
【0029】工程I−2での反応触媒としては、アミン
類、アミンの酸付加物類、第4級アンモニウム塩類、ア
ミド類、イミダゾール類、ピリジン類、ホスフィン類、
ホスホニウム塩類およびスルホニウム塩類からなる群の
中から選ばれた少なくとも1種の化合物が用いられる。
これらの化合物の各具体例は下記の通りである。アミン
類としては、特に限定はされないが、たとえば、トリエ
チルアミン、N,N−ジメチルアニリン、ジメチルベン
ジルアミン、トリエタノールアミン、トリブチルアミ
ン、ジメチルラウリルアミン、トリプロピルアミン、ジ
エチルアミノエチルメタクリレート、ヘキサメチレンジ
アミン、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデ
セン−7、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール
等が挙げられ、これらは1種のみまたは2種以上併せて
使用される。
【0030】アミンの酸付加物類としては、アミンに対
して有機酸および無機酸のうちの一方または両方が付加
したものであれば特に限定はなく、たとえば、ジメチル
アミン塩酸塩、ジエチルアミン塩酸塩、トリエチルアミ
ン塩酸塩、ジメチルアミン酢酸塩、ジエチルアミン酢酸
塩、トリエチルアミン酢酸塩等が挙げられ、これらは1
種のみまたは2種以上併せて使用される。
【0031】第4級アンモニウム塩類としては、特に限
定はされないが、たとえば、テトラメチルアンモニウム
クロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、ト
リメチルドデシルアンモニウムクロライド、トリメチル
ベンジルアンモニウムクロライド、トリエチルベンジル
アンモニウムクロライド等が挙げられ、これらは1種の
みまたは2種以上併せて使用される。
【0032】アミド類としては、特に限定はされない
が、たとえば、ホルムアミド、N−メチルホルムアミ
ド、N−エチルホルムアミド、アセトアミド、ベンズア
ミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチ
ルアセトアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド等が
挙げられ、これらは1種のみまたは2種以上併せて使用
される。
【0033】イミダゾール類としては、特に限定はされ
ないが、たとえば、1−メチルイミダゾール、2−メチ
ルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル
−4−メチルイミダゾール、2−メチル−1−ビニルイ
ミダゾール、2−エチル−5−メチルイミダゾール等が
挙げられ、これらは1種のみまたは2種以上併せて使用
される。
【0034】ピリジン類としては、特に限定はされない
が、たとえば、ピリジン、ピリジン塩酸塩、ビニルピリ
ジン、p−ジメチルアミノピリジン、γ−ピコリン等が
挙げられ、これらは1種のみまたは2種以上併せて使用
される。ホスフィン類としては、特に限定はされない
が、たとえば、トリフェニルホスフィン、トリ(2−メ
チルフェニル)ホスフィン、トリ(3−メチルフェニ
ル)ホスフィン、トリ(4−メチルフェニル)ホスフィ
ン等が挙げられ、これらは1種のみまたは2種以上併せ
て使用される。
【0035】ホスホニウム塩類としては、特に限定はさ
れないが、たとえば、トリフェニルメチルホスホニウム
ヨーダイド、トリメチルフェニルホスホニウムブロマイ
ド、トリフェニルメチルホスホニウムブロマイド、トリ
メチルベンジルホスホニウムブロマイド等が挙げられ、
これらは1種のみまたは2種以上併せて使用される。ス
ルホニウム塩類としては、特に限定はされないが、たと
えば、トリフェニルスルホニウムクロライド、トリメチ
ルスルホニウムクロライド、ジメチルフェニルスルホニ
ウムクロライド等が挙げられ、これらは1種のみまたは
2種以上併せて使用される。
【0036】工程I−2での反応触媒の使用量は、たと
えば、反応物すなわち酸基含有(メタ)アクリレートと
多官能エポキシ樹脂(b)の総重量((メタ)アクリル
酸を用いる場合はその重量が加算される)に対し、0.
005〜3.0重量%の比率であることが好ましい。こ
の範囲を上回ると、硬化樹脂物性を低下させる恐れがあ
り、下回ると、エステル化反応速度が遅くなり、実質的
に目的物が得られない恐れがあるからである。
【0037】工程I−2では、酸基含有(メタ)アクリ
レートと多官能エポキシ樹脂(b)、あるいは、酸基含
有(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸と多官能
エポキシ樹脂(b)は、たとえば、酸基含有(メタ)ア
クリレートの有する酸基((メタ)アクリル酸を用いる
場合は酸基含有(メタ)アクリレートおよび(メタ)ア
クリル酸の有する酸基の総計)と、多官能エポキシ樹脂
(b)の有するエポキシ基との当量比が、0.8:1〜
1.2:1の範囲でエステル化反応に供せられることが
好ましい。また、(メタ)アクリル酸を併用する場合に
は、多官能エポキシ樹脂(b)と(メタ)アクリル酸と
の比率は、たとえば、多官能エポキシ樹脂(b)の有す
るエポキシ基1当量当たり、(メタ)アクリル酸の有す
るカルボキシル基が0.5当量以下の範囲、好ましくは
0.01〜0.5当量の範囲であり、目的とする不飽和
エステル(A)の分子量分布や硬化物の架橋密度の程度
により任意に選択される。
【0038】工程I−2でのエステル化反応は、たとえ
ば、必要によりトルエンやキシレンなどのような不活性
溶剤中で、より好ましくは、工程I−1でのエステル化
反応と同様にスチレン、ビニルトルエン、メチル(メ
タ)アクリレート、ジアリルフタレート等の後述のラジ
カル重合性不飽和単量体(C)中で、空気、ハイドロキ
ノンやベンゾキノンなどのようなラジカル重合禁止剤の
存在下、70〜130℃の温度範囲という条件で行われ
る。
【0039】工程I−2でのエステル化反応により、不
飽和エステル(A)が得られる。この不飽和エステル
(A)は、1分子中に、2個以上の(メタ)アクリロイ
ル基を有している。以上に述べた製造方法Iによれば、
得られる不飽和エステル(A)に、多官能エポキシ樹脂
(b)に由来するハードセグメントだけでなく、長鎖二
塩基酸(a)に由来するソフトセグメントも導入するこ
とが容易になり、不飽和エステル(A)の分子設計の自
由度が高くなる。また、工程I−2において(メタ)ア
クリル酸も使用した場合は、不飽和エステル(A)の分
子設計の自由度がさらに高くなる。このため、製造方法
Iによれば、所望の物性を有する不飽和エステル(A)
を容易に得ることができる。
【0040】この発明で用いられる熱硬化性樹脂組成物
に含有されるラジカル重合開始剤(B)としては、特に
限定はされないが、たとえば、メチルエチルケトンパー
オキサイドやシクロヘキサノンパーオキサイド等のケト
ンパーオキサイド類;クメンハイドロパーオキサイドや
t−ブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオ
キサイド類;ベンゾイルパーオキサイドやラウロイルパ
ーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類;1,1−
ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチ
ルシクロヘキサノン等のパーオキシケタール類;t−ブ
チルパーオキシベンゾエートやt−ブチルパーオキシオ
クトエート等のパーオキシエステル類;ジクミルパーオ
キサイド等のジアルキルパーオキサイド類;ジミリスチ
ルパーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネ
ート類等が用いられる。ラジカル重合開始剤(B)は、
1種のみまたは2種以上を併せて使用される。
【0041】さらには、必要により、コバルト塩、三級
アミン等のような促進剤の併用も可能である。熱硬化性
樹脂組成物中、ラジカル重合開始剤(B)の含有量は、
特に限定はされないが、不飽和エステル(A)(後述の
ラジカル重合性不飽和単量体(C)を用いる場合は、こ
の(C)と不飽和エステル(A)の総計)に対して0.
05〜5重量%の範囲が好ましい。開始剤(B)の含有
量が上記範囲を下回ると、硬化が不完全となり、積層板
が所望の物性を発揮できず、(B)の含有量が上記範囲
を上回ると、(B)が硬化物中に残存して積層板の物性
低下を引き起こすからである。
【0042】この発明で用いられる熱硬化性樹脂組成物
には、必要に応じて、さらにラジカル重合性不飽和単量
体(C)が含有されていてもよい。ラジカル重合性不飽
和単量体(C)とは、1分子中に少なくとも1個のビニ
ル性不飽和基を有する常温では液体の化合物を指す。こ
の単量体(C)を用いた場合は、これが溶剤の役目をし
て、熱硬化性樹脂組成物を繊維材へ含浸させることがさ
らに容易になるとともに、単量体(C)が、熱硬化性樹
脂組成物の硬化の際に硬化物の架橋構造の中に組み込ま
れるため、これを除去する必要がなく、しかも硬化物の
架橋密度が高くなるので、好ましい。
【0043】ラジカル重合性不飽和単量体(C)の具体
例としては、特に限定はされないが、たとえば、スチレ
ン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、α−メチルス
チレン、クロロスチレン等の芳香族ビニル化合物類;酢
酸ビニル、アジピン酸ジビニルエステル等のビニルエス
テル類;ジアリルフタレート;(メタ)アクリル酸;メ
チル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレー
ト、オクチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコ
ールジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル
(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル
類等が挙げられる。これらの中でも、スチレンは、その
溶剤性能、重合反応性等が特に良く好ましい。ラジカル
重合性不飽和単量体(C)は、1種のみまたは2種以上
を併せて使用される。
【0044】ラジカル重合性不飽和単量体(C)が熱硬
化性樹脂組成物に含有される場合、その含有量は、特に
限定はされないが、不飽和エステル(A)と単量体
(C)との合計に対して5〜50重量%の範囲が好まし
い。単量体(C)の含有量が上記範囲を下回ると、不飽
和エステル(A)の分子量によっては熱硬化性樹脂組成
物の粘度が高くなって繊維材に対する熱硬化性樹脂組成
物の含浸性が低下し、単量体(C)の含有量が上記範囲
を上回ると、不飽和エステル(A)の構造に基づく物性
が発揮されにくくなるからである。
【0045】熱硬化性樹脂組成物は、上に述べた成分に
加えて、必要に応じ、従来の不飽和ポリエステル樹脂組
成物に含まれる種々の添加剤、たとえば、水酸化アルミ
ニウム、クレー、タルク等の充填剤;アクリルシラン等
のシランカップリング剤;顔料や着色剤;難燃剤や耐炎
剤;消泡剤;湿潤剤等を含んでいてもよい。さらに、所
望により、この発明の目的の達成を阻害しない範囲内
で、熱可塑性樹脂、エラストマー等を配合することがで
きる。
【0046】この発明にかかる積層板の有する繊維強化
樹脂層は、前述した熱硬化性樹脂組成物の硬化物がシー
ト状の繊維材で強化されてなるものである。強化材とし
て用いられるシート状の繊維材としては、特に限定はさ
れないが、たとえば、ガラス繊維、天然繊維、合成繊維
等の単独使用あるいはこれら繊維の2種以上の併用によ
り得られる不織布や織布等が用いられる。シート状の繊
維材の厚さは、0.05〜1.0mmの範囲が好ましい。
シート状の繊維材は、通常、複数枚を適宜組み合わせ、
繊維強化樹脂層の全厚が、たとえば、0.1〜2.0mm
になるように積層される。しかし、これに限定されず、
シート状の繊維材は、1枚のみ使用してもよい。なお、
シート状の繊維材を複数枚使用する場合、これら複数枚
の繊維材は、すべて同一種類であってもよいし、異なる
種類のものが混ざっていてもよい。
【0047】繊維強化樹脂層を構成する、熱硬化性樹脂
組成物の硬化物とシート状の繊維材との重量比率は、9
5:5〜50:50の範囲が好ましい。この重量比率が
上記範囲を下回ると(上記硬化物の重量比率が低すぎる
と)、積層板としての寸法安定性が低下し、上記範囲を
上回ると(上記硬化物の重量比率が高すぎると)、積層
板の折り曲げ加工性が低下するからである。
【0048】繊維強化樹脂層の全厚は、0.1〜2.0
mmの範囲が好ましい。この範囲を下回ると、積層板の剛
性が低くなりすぎ、積層板への部品の搭載時に問題が生
じることとなり、上記範囲を上回ると、積層板の折り曲
げ加工性が低下するからである。繊維強化樹脂層に積層
されて、この繊維強化樹脂層と一体化される金属箔の材
料としては、特に限定はされないが、たとえば、銅、ア
ルミニウム等が挙げられる。金属箔は、繊維強化樹脂層
の片側のみに積層されていてもよいし繊維強化樹脂層の
両側に積層されていてもよい。金属箔の厚さは、5〜1
00μmの範囲が好ましい。金属箔の厚さが上記範囲を
下回ると、金属箔の強度が低下し、積層板の折り曲げ加
工時に金属箔に欠陥が生じやすくなり、上記範囲を上回
ると、積層板の折り曲げ抵抗が大きくなり、好ましくな
いからである。
【0049】この発明の積層板を製造する方法として
は、特に限定はされないが、たとえば、下記、の方
法を採用することができる。 シート状の繊維材に熱硬化性樹脂組成物を浸漬法等
により含浸させて得られた含浸体(プリプレグ)の所定
枚を金属箔の上に積層するか、あるいは、金属箔の上に
熱硬化性樹脂組成物を散布した後、その上にシート状の
繊維材をのせて繊維材に熱硬化性樹脂組成物を含浸させ
るかすることにより(必要に応じ、さらにその上に金属
箔を積層してもよい)、熱硬化性樹脂組成物が含浸され
たシート状の繊維材と、金属箔とからなる積層体を得た
後、この積層体を所定温度で硬化、一体化させる方法等
のようなバッチ式の製造方法。なお、この方法では、原
料の金属箔とシート状の繊維材は所定寸法に予め裁断し
ておいたものを用いてもよいし、上記積層体の硬化、一
体化後に積層板を所定の寸法に裁断するようにしてもよ
い。
【0050】 シート状の繊維材のロール体から繊維
材を送り出しながら、この繊維材に熱硬化性樹脂組成物
を浸漬法等により連続的に含浸させ、次いで、得られた
含浸体を所望の構成(熱硬化性樹脂組成物が含浸された
シート状の繊維材1枚のみからなるものでもよいし、そ
の複数枚を互いに積層したものでもよい)にし、その片
面または両面に、金属箔のロール体から送り出される金
属箔を連続的に積層して、熱硬化性樹脂組成物が含浸さ
れた繊維材と、金属箔とからなる積層体を連続的に得た
後、この積層体を所定温度で連続的に硬化、一体化させ
る手法等のような連続方式の製造方法。
【0051】なお、上記、の方法において、熱硬化
性樹脂組成物が含浸された繊維材と、金属箔とからなる
積層体は、必要に応じ、硬化前に、所定間隔の2つのロ
ールの間を通過させる手法等により加圧して所定の厚さ
に調整してもよい。また、この発明で用いられる熱硬化
性樹脂組成物は、溶剤等の揮発成分を含む必要がなく、
しかも硬化が速いため、積層板の製造方法としては、上
記のバッチ式よりも上記の連続方式の方が有利であ
り、好ましい。
【0052】
【作用】積層板の繊維強化樹脂層の硬化樹脂原料とし
て、長鎖二塩基酸(a)、多官能エポキシ樹脂(b)お
よびエポキシ基含有(メタ)アクリレート(c)を所定
の当量比で反応させて得られる不飽和エステル(A)
と、ラジカル重合開始剤(B)とを必須成分として含有
する熱硬化性樹脂組成物を用いると、この樹脂組成物を
繊維材に含浸させる際、この樹脂組成物が希釈溶剤なし
でも繊維材に容易に含浸させることが可能であるため、
繊維材への含浸にあたって溶剤を使用する必要がなくな
り、しかも含浸後の溶剤除去処理も不要になる。そのた
め、防災上の問題がなくなるとともに資源およびエネル
ギーの節約になる。
【0053】前記熱硬化性樹脂組成物が含有する不飽和
エステル(A)は、長鎖二塩基酸(a)に由来し、折り
曲げ加工性(可撓性)を付与するソフトセグメントと、
多官能エポキシ樹脂(b)に由来し、耐熱性、耐水性、
耐薬品性、電気特性等の諸性能を付与するハードセグメ
ントとを併せ持つ分子構造を有する。そのため、この不
飽和エステル(A)を含有する樹脂組成物を積層板の繊
維強化樹脂層の硬化樹脂原料として用いると、積層板に
対し、従来の不飽和ポリエステル樹脂やビニルエステル
樹脂の使用では困難であった、折り曲げ加工性と、耐熱
性、耐水性、耐薬品性、電気特性等の諸性能とを併せて
付与することが可能になる。また、積層板の繊維強化樹
脂層は、シート状の繊維材により強化されているため、
充分な剛性が積層板に付与されるので、電気・電子部品
をその種類や数にほとんど制限なく積層板に実装するこ
とが可能になる。
【0054】
【実施例】次に、この発明の実施例と比較例を説明する
が、この発明は、下記実施例に限定されない。以下の例
中、「部」、「%」は、原則としてそれぞれ「重量
部」、「重量%」を意味する。不飽和エステルの合成 後述の実施例および比較例で用いる不飽和エステルを以
下の合成例により合成した。
【0055】−合成例1− 温度計、還流冷却管、吹込管および攪拌器を備えた反応
容器に、1,16−(6−エチルヘキサデカン)−ジカ
ルボン酸と1,12−(6−エチルドデカン)−ジカル
ボン酸との混合物「SB−20」(岡村製油製、酸価3
14)714部、水素化ダイマー酸「バーサダイム5
2」(ヘンケル白水製、酸価195)1150部、グリ
シジルメタクリレート568部、スチレン964部、ハ
イドロキノン1.5部およびオクチル酸亜鉛(亜鉛含有
量15%)4.8部を仕込み、空気を吹き込みながら、
攪拌し、110℃で5時間反応させた。この反応の終了
時、反応生成物の酸価は67であった。
【0056】次いで、テトラブロム化ビスフェノール型
エポキシ樹脂「ESB340」(住友化学製、エポキシ
当量355)1420部およびトリフェニルホスフィン
14.5部を投入し、120℃でさらに6時間反応させ
ることにより、不飽和エステル化合物(1)(酸価3.
4)のスチレン溶液(以下、この溶液を樹脂(1)と記
す)を得た。
【0057】−合成例2− 合成例1で用いたものと同様の反応容器に、ダイマー酸
「バーサダイム288」(ヘンケル白水製、酸価19
6)1717部、グリシジルメタクリレート284部、
スチレン1291部、メチルハイドロキノン1.0部お
よびナフテン酸亜鉛(亜鉛含有量8%)6部を仕込み、
空気を吹き込みながら、攪拌し、100℃で8時間反応
させた。この反応の終了時、反応生成物の酸価は70で
あった。
【0058】次いで、テトラブロム化ビスフェノール型
エポキシ樹脂「YDB400」(東都化成製、エポキシ
当量400)1291部、アクリル酸72部およびトリ
エチルアミン13部を投入し、120℃でさらに6時間
反応させることにより、不飽和エステル化合物(2)
(酸価8.0)のスチレン溶液(以下、この溶液を樹脂
(2)と記す)を得た。
【0059】−合成例3− 合成例1で用いたものと同様の反応容器に、水素化ダイ
マー酸「バーサダイム52」(ヘンケル白水製、酸価1
95)2302部、グリシジルメタクリレート568
部、ビニルトルエン1118部、ハイドロキノンモノメ
チルエーテル3.0部およびラウリル酸亜鉛(亜鉛含有
量14%)8.5部を仕込み、空気を吹き込みながら、
攪拌し、110℃で5時間反応させた。この反応の終了
時、反応生成物の酸価は58であった。
【0060】次いで、テトラブロム化ビスフェノール型
エポキシ樹脂「YDB400」(東都化成製、エポキシ
当量400)1600部およびトリフェニルホスホニウ
ムヨーダイド17部を投入し、110℃でさらに8時間
反応させることにより、不飽和エステル化合物(3)
(酸価2.7)のビニルトルエン溶液(以下、この溶液
を樹脂(3)と記す)を得た。
【0061】−合成例4− 合成例1で用いたものと同様の反応容器に、ダイマー酸
「バーサダイム228」(ヘンケル白水製、酸価19
4)2312部、グリシジルメタクリレート568部、
スチレン1050部、ハイドロキノン1.6部およびラ
ウリル酸亜鉛(亜鉛含有量14%)8.5部を仕込み、
空気を吹き込みながら、攪拌し、120℃で4時間反応
させた。この反応の終了時、反応生成物の酸価は59で
あった。
【0062】次いで、ビスフェノール型エポキシ樹脂
「エポトート−Y−127」(東都化成製、エポキシ当
量185)370部、同じくビスフェノール型エポキシ
樹脂「エポトート−YD−011」(東都化成製、エポ
キシ当量475)950部およびトリエチルベンジルア
ンモニウムクロライド13部を投入し、120℃でさら
に5時間反応させることにより、不飽和エステル化合物
(4)(酸価3.2)のスチレン溶液(以下、この溶液
を樹脂(4)と記す)を得た。
【0063】−合成例5− 合成例1で用いたものと同様の反応容器に、テトラブロ
ム化ビスフェノール型エポキシ樹脂「YDB−700」
(東都化成製、エポキシ当量700)3500部、アク
リル酸378部、スチレン1662部、ハイドロキノン
1.5部およびトリエチルアミン11部を仕込み、空気
を吹き込みながら攪拌し、110℃で8時間反応させる
ことにより、難燃性ビニルエステル(酸価3.7)のス
チレン溶液(以下、この溶液を比較樹脂(1)と記す)
を得た。
【0064】−合成例6− 温度計、パーシャルコンデンサー、吹込管および攪拌器
を備えた反応容器に、アジピン酸1840部、無水マレ
イン酸529部およびジエチレングリコール2003部
を仕込み、空気を吹き込みながら攪拌し、縮合水を除去
しながら、210℃で10時間反応させ、反応生成物の
酸価が12となった時点で100℃以下に冷却した後、
ハイドロキノン0.5部およびスチレン1350部を投
入することにより、軟質の不飽和ポリエステルのスチレ
ン溶液(以下、この溶液を比較樹脂(2)と記す)を得
た。積層板の製造 −実施例1〜4および比較例1〜2− 前記合成例1〜6で得られた樹脂(1)〜(4)および
比較樹脂(1)〜(2)の各々100部に、アクリル酸
2部、水酸化アルミニウム20部、三酸化アンチモン1
0部および1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−
3,3,5−トリメチルシクロヘキサノン1部を配合し
て、熱硬化性樹脂組成物を得た。
【0065】得られた熱硬化性樹脂組成物を、ポリエス
テル不織布「OL−11K」(日本バイリーン製、厚さ
0.35mm)およびガラスクロス「WE03102」
(日東紡績製、厚さ0.03mm)のそれぞれに含浸させ
た。次いで、電気用積層板用銅箔(日本鉱業製、JT
C、厚さ35μm)の処理面上に、前記で熱硬化性樹脂
組成物を含浸させたポリエステル不織布とガラスクロス
をこの順に1枚ずつ積層し、さらにその上に、前記で熱
硬化性樹脂組成物を含浸させたポリエステル不織布をも
う1枚積層し、その上面をテトロンフィルムで被覆し
て、積層体を得た。
【0066】この積層体を、100℃で15分間、次い
で130℃で20分間、硬化させて一体化することによ
り、厚さ0.8mmの積層板を得た。積層板の物性評価 以上の実施例および比較例で得られた積層板について、
下記の試験方法により、最小曲げ径、表面抵抗、絶縁抵
抗、PCT半田耐熱性、ピール(剥離)強度、難燃性を
評価した。その結果を下記表1に示した。
【0067】最小曲げ径は、エッチングにより銅箔を除
去した積層板を25mm×150mmに裁断した後、これ
を、種々の半径を有するスチール棒に円周の4分の1巻
きつけた際に、微クラックの発生が認められない最小の
スチール棒の半径で評価した。表面抵抗、絶縁抵抗およ
びピール強度は、JIS−C6481に準じた。PCT
半田耐熱性は、エッチングにより銅箔を除去した積層板
を40mm×40mmに裁断し、これを、133℃で60分
間オートクレーブで強制吸湿させた後、ただちに260
℃の半田浴に浸漬し、この浸漬開始から膨れが生じるま
での時間(秒数)で評価した。
【0068】難燃性は、UL Subject 94V法および
94HB法に準じた。
【0069】
【表1】
【0070】表1にみるように、実施例の積層板は、比
較例の積層板に比べて、折り曲げ加工性に優れ、しかも
電気特性、耐水性、耐熱性にも優れており、難燃性も付
与されていることが確認された。
【0071】
【発明の効果】この発明にかかる電気用金属箔張り積層
板は、耐熱性、耐水性、耐薬品性、電気特性等の各種性
能に優れる。また、充分な剛性を有するため、電気・電
子部品をその種類や数にほとんど制約なく実装すること
ができる。この電気用金属箔張り積層板は、折り曲げ加
工が可能であるため、電子機器の小型化に対応して、限
られた空間内に収納することができる。
【0072】この電気用金属箔張り積層板は、その製造
過程において、熱硬化性樹脂組成物を強化材へ含浸させ
る際に溶剤を使用する必要がなく、そのため含浸後の溶
剤除去処理も不要であるため、防災上、あるいは、省資
源、省エネルギーの観点からも好ましいものである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 牧野 秀志 大阪府門真市大字門真1048番地松下電工 株式会社内 (72)発明者 淡路 敏夫 大阪府吹田市西御旅町5番8号 株式会 社日本触媒 樹脂技術研究所内 (72)発明者 永島 輝久 大阪府吹田市西御旅町5番8号 株式会 社日本触媒 樹脂技術研究所内 (56)参考文献 特開 昭62−225537(JP,A) 特開 昭63−105011(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B32B 15/08 C08J 5/24

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 酸基に含まれる以外の炭素原子の合計が
    1分子当たり12個以上である長鎖二塩基酸(a)、1
    分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ樹脂
    (b)および1分子中に1個のエポキシ基を有する(メ
    タ)アクリレート(c)を、前記(b)および(c)の
    有するエポキシ基の合計が前記(a)の有する酸基1当
    量当たり0.8〜1.2当量である割合、かつ、前記
    (b)の有するエポキシ基と前記(c)の有するエポキ
    シ基との当量比が2:1〜1:2である割合で反応させ
    て得られる不飽和エステル(A)と、ラジカル重合開始
    剤(B)とを必須成分として含有する熱硬化性樹脂組成
    物の硬化物がシート状の繊維材で強化されてなる繊維強
    化樹脂層と、その少なくとも一方の側に積層されて、こ
    の繊維強化樹脂層と一体化されている金属箔とを有する
    電気用金属箔張り積層板。
  2. 【請求項2】 不飽和エステル(A)が、反応原料とし
    てさらに(メタ)アクリル酸を、長鎖二塩基酸(a)の
    有する酸基に対する(メタ)アクリル酸の有する酸基の
    当量比が0.5以下の範囲となるように長鎖二塩基酸
    (a)の一部を(メタ)アクリル酸に置き換えて用いる
    ことにより得られるものである請求項1記載の電気用金
    属箔張り積層板。
  3. 【請求項3】 熱硬化性樹脂組成物がさらにラジカル重
    合性不飽和単量体(C)を含有するものであり、この単
    量体(C)の含有量が、不飽和エステル(A)と単量体
    (C)との合計に対して5〜50重量%である請求項1
    または2記載の電気用金属箔張り積層板。
  4. 【請求項4】 エポキシ樹脂(b)が臭素置換ビスフェ
    ノールA骨格を有するものである請求項1から3までの
    いずれかに記載の電気用金属箔張り積層板。
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