JP3151800B2 - 多数回印字用熱転写記録媒体及びその製造方法 - Google Patents

多数回印字用熱転写記録媒体及びその製造方法

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JP3151800B2 JP29480295A JP29480295A JP3151800B2 JP 3151800 B2 JP3151800 B2 JP 3151800B2 JP 29480295 A JP29480295 A JP 29480295A JP 29480295 A JP29480295 A JP 29480295A JP 3151800 B2 JP3151800 B2 JP 3151800B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、多数回印字に適し
た溶融転写型の熱転写記録媒体及びその製造方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】従来より、ポリエステルなどの基材上
に、カーボンブラックなどの着色剤がカルナバワックス
などの熱溶融性物質中に分散した熱溶融転写性インク層
が設けられた溶融転写型の熱転写記録媒体が広く用いら
れている。
【0003】ところで、このような溶融転写型の熱転写
記録媒体に対しては、印字コストの低減化と発生する廃
棄物の少量化等を目的として多数回印字できるようにす
ることが求められており、そのために、インク層全体も
しくはインク層の表層領域を多孔質化して熱転写時に熱
溶融転写性インクがインク層から徐々にしみ出すように
した多数回印字用熱転写記録媒体が提案されている(特
開平2−150385号公報、実開昭64−25161
号公報等)。
【0004】このような多数回印字用熱転写記録媒体の
多孔性インク層は、各種ワックス類などの熱溶融性物質
とカーボンブラックなどの着色剤とから調製された熱溶
融転写性インク粒子と、熱転写時の熱エネルギーでは熱
溶融転写しない非熱転写性樹脂と、メチルエチルケトン
(MEK)などの揮発性溶媒とからなるインク組成物
を、基材上に塗布し乾燥することにより形成されてい
る。この場合、多数回印字用熱転写記録媒体の生産効率
を向上させるために、多孔性インク層をグラビアコータ
ーなどで塗布し、100〜120℃程度の温風を大量に
吹き付けて迅速に乾燥することが試みられている。
【0005】このように形成された多孔性インク層は、
多孔性の非熱転写性樹脂マトリックスの孔中に熱溶融転
写性インク粒子が充填されたような構造を有していると
考えられる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかし、多孔性インク
層を上述のように迅速に乾燥して形成した場合には、イ
ンク粒子の凝集が抑制され、そのため多孔性インク層に
形成される孔の大きさが小さくなり、多孔性インク層の
表面に非熱転写性樹脂の比較的緻密な被膜が形成され、
その結果、多孔性インク層の表面から熱により溶融した
インク粒子がしみ出しにくくなるという問題が生じる。
このため、熱転写を繰り返すに従って画像濃度が大きく
低下し、多数回印字特性に問題があった。しかも、印字
の濃淡ムラが生じ、印字品位の点でも問題があった。
【0007】この問題に対し、熱溶融転写性インク粒子
の大きさを大きくすることが考えられるが、インク組成
物中においてインク粒子の分散状態を安定的に保持する
ことができずに沈降してしまい、広い面積に亘って均一
にインク組成物を塗工することができないという問題が
生ずる。
【0008】本発明は、以上の従来技術の課題を解決し
ようとするものであり、多数回印字用熱転写記録媒体の
多孔性インク層を、多数回印字特性及び印字品位を低下
させずに高い生産効率で形成できるようにすることを目
的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者は、多孔性イン
ク層を形成するためのインク組成物の溶媒として、熱溶
融転写性インク粒子を実質的に溶解しないが非熱転写性
樹脂を室温下で膨潤又は溶解させることができ且つ沸点
が120℃以上の溶媒を、非熱転写性樹脂からインク粒
子の分離を促進させる相分離促進剤として使用すること
により、100〜120℃程度の温風を大量に吹き付け
て乾燥した場合でも、インク層表面の溶媒の揮発速度を
ある程度抑制して熱溶融転写性インク粒子の凝集を促進
し、それによりインクのしみ出しに適した大きさの孔の
形成を促進させることができ、その結果、上述の目的を
達成できることを見出し、本発明を完成させるに至っ
た。
【0010】
【0011】 即ち、本発明は、熱溶融性物質と着色剤
とからなる熱溶融転写性インク粒子が非熱転写性樹脂マ
トリックス中に分散されてなる多孔性インク層が、基材
上に形成されている多数回印字用熱転写記録媒体の製造
方法において、熱溶融転写性インク粒子と、熱溶融転写
性インク粒子を室温下で実質的に溶解させないが非熱転
写性樹脂を室温下で膨潤又は溶解させることができ且つ
沸点が120℃以上の第1の溶媒と、熱溶融転写性イン
ク粒子を室温下で実質的に溶解させないが非熱転写性樹
脂を室温下で膨潤又は溶解させることができ且つ沸点が
120℃未満の第2の溶媒と、非熱転写性樹脂とを含有
するインク組成物を、基材上に塗布し乾燥することによ
り多孔性インク層を形成することを特徴とする製造方法
提供する。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明の多数回印字用熱転
写記録媒体とその製造方法とを図面を参照しながら詳細
に説明する。
【0013】図1は、本発明の多数回印字用熱転写記録
媒体の断面図である。この記録媒体は、基材1の表面
に、多孔性インク層2が形成された構造を有する。通
常、基材1と、多孔性インク層2との間には、ウレタン
系接着剤などからなる接着剤層3が設けられ、基材1の
裏面には耐熱滑性層4が設けられている。
【0014】多孔性インク層2は、熱溶融性物質と着色
剤とからなる熱溶融転写性インク粒子が非熱転写性樹脂
マトリックス中に分散した構造となっている。この構造
は、熱溶融転写性インク粒子と、その熱溶融転写性イン
ク粒子を室温下で実質的に溶解させないが非熱転写性樹
脂を室温下で膨潤又は溶解させることができ且つ沸点が
120℃以上の溶媒(第1の溶媒)と、非熱転写性樹脂
とを含有するインク組成物を、基材上に塗布し乾燥する
ことにより形成されたものである。このような第1の溶
媒をインク組成物において使用することにより、インク
組成物の塗工物に100〜120℃程度の温風を大量に
吹き付け乾燥することにより高い生産効率で多孔性イン
ク層を形成した場合でも、溶媒の揮発速度をある程度抑
制して熱溶融転写性インク粒子の凝集を促進し、それに
よりインクのしみ出しに適した大きさの孔の形成を促進
させることができる。従って、多孔性インク層の多数回
印字特性及び印字品位を改善することができる。
【0015】多孔性インク層2の層厚としては、薄過ぎ
ると多数回印字に十分なインク量を確保することができ
ず、厚過ぎると熱転写時に基材1の耐熱滑性層4側から
供給される熱エネルギーが多孔性インク層2に十分に供
給されず、転写濃度が不足する傾向があるので、3μm
以上、好ましくは5〜15μmとする。
【0016】多孔性インク層2の形成に使用する熱溶融
転写性インク粒子は、公知の手法により調製することが
できる。例えば、熱溶融性物質と着色剤とを、両者を溶
解しない媒体中で撹拌しながら熱溶融性物質の溶融する
温度に加熱し、その後撹拌を続けながら冷却することに
より調製することができる。
【0017】熱溶融転写性インク粒子の粒子径として
は、インク組成物中におけるその一次粒子径(即ち、イ
ンク組成物の調製時の粒子径)が小さ過ぎると製造が困
難となり、大き過ぎると均一な転写性を確保しにくくな
るので、好ましくは0.1〜20μの範囲のものを使用
する。
【0018】なお、この範囲の粒子径の熱溶融転写性イ
ンク粒子の中で比較的小さい粒径のものは、多孔性イン
ク層2中においては、凝集して二次粒子を形成する。ま
た、比較的大きい粒径のものは、多孔性インク層2の形
成の際の加熱乾燥中に溶融することなどにより粒径が小
さくなる。従って、熱溶融転写性インク粒子の多孔性イ
ンク層2中における二次粒子径の大きさは、多孔性イン
ク層2に十分な強度を付与し、且つ熱転写時に均一な転
写性と適当なインクしみ出し量を確保する点から、好ま
しくは0.5〜15μm、より好ましくは1〜10μm
とする。
【0019】熱溶融性物質としては、従来の熱溶融転写
型インクリボンにおいて用いられているような熱溶融性
物質を使用することができ、例えば融点が40〜150
℃の木ロウ、カルナバワックス、キャンデリラワック
ス、モンタンワックスなどの天然ワックス、パラフィン
ワックス、マイクロクリスタリンワックスなどの石油系
ワックス、酸化ワックス、エステルワックス、低分子量
ポリエチレン、フィッシャートロプシュワックスなどの
合成ワックス等を使用することができる。
【0020】着色剤としては、従来の熱溶融転写型イン
クリボンにおいて用いられているような公知の顔料や染
料などを使用することができ、例えばカーボンブラッ
ク、フタロシアニン系顔料、直接染料、酸性染料、塩基
性染料、分散染料、油溶性染料等を使用することができ
る。
【0021】熱溶融転写性インク粒子における熱溶融性
物質と着色剤との重量比率は、特に制限はなく、使用す
る熱溶融性物質及び着色剤の種類などにより適宜選択す
る。
【0022】一方、多孔性インク層2のマトリックスを
構成する非熱転写性樹脂としては、従来の多数回印字用
熱溶融転写型インクリボンの多孔性インク層を構成する
ものと同じ樹脂を使用することができる。例えば、ガラ
ス転移点が65℃以上の塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−
酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリエステル樹脂、セルロー
ス系樹脂などを使用することができる。
【0023】多孔性インク層2中における熱溶融転写性
インク粒子と非熱転写性樹脂との含有比は、前者が少な
過ぎると十分な転写濃度が得られず、逆に多過ぎると多
孔性インク層2のマトリックスを構成する非熱転写性樹
脂の比率が相対的に低減して多孔性インク層2の強度が
大きく低下するので、好ましくは重量比で9:1〜5:
5、より好ましくは7:3とする。
【0024】多孔性インク層2を形成するためのインク
組成物に使用する第1の溶媒としては、前述したように
熱溶融転写性インク粒子を室温下で実質的に溶解させな
いが非熱転写性樹脂を室温下で溶解させることができ且
つ沸点が120℃以上の溶媒を使用する。ここで、「熱
溶融転写性インク粒子を室温下で実質的に溶解しない」
という意味は、25℃で第1の溶媒100g当たりに溶
解する熱溶融物質が3g程度以下であることを意味す
る。
【0025】なお、第1の溶媒としては、前述のよう
に、その沸点が120℃以上のものを使用するが、凝集
効果の点からより高沸点、好ましくは150℃以上の沸
点のものを使用することが好ましい。この場合、高沸点
の第1の溶媒を蒸発しやすくするために、後述するよう
に、比較的低沸点の第2の溶媒と併用することが好まし
い。特に、互いに混和する同種の低沸点溶媒と併用する
ことが好ましい。また、第1の溶媒の沸点が高過ぎると
揮発しにくくなり多孔性インク層2においてブロッキン
グが生ずることが懸念されるので、好ましくは170℃
以下とする。
【0026】本発明において、第1の溶媒の好ましい例
としては、ジアセトンアルコール(bp168.1
℃)、シクロヘキサノン(bp155.65℃)、ジイ
ソブチルケトン(bp168.1℃)、1−ヘキサノー
ル(bp157.1℃)、2−メチル−1−ペンタノー
ル(bp148.0℃)、酢酸イソペンチル(bp14
2.0℃)、3−メトキシブチルアセテート(bp17
3.0℃)、メチルセロソルブ(bp124.6℃)、
エチルセロソルブ(bp135.6℃)等を挙げること
ができる。
【0027】このような第1の溶媒のインク組成物中の
含有量は、少な過ぎるとインク凝集不足となり、多過ぎ
るとインク凝集過剰となるので、インク組成物中の固形
分100重量部に対し好ましくは30〜100重量部、
より好ましくは50〜80重量部とする。
【0028】本発明においては、上述の第1の溶媒に加
えて、インク組成物に、熱溶融転写性インク粒子を室温
下で実質的に溶解させないが非熱転写性樹脂を室温下で
膨潤又は溶解させることができ且つ沸点が120℃未
満、特に90℃以下の溶媒(第2の溶媒)を更に含有さ
せることが好ましい。これにより、インク組成物の乾燥
速度を早めることができる。
【0029】このような第2の溶媒としては、メチルエ
チルケトン(bp79.6℃)、イソプロピルアルコー
ル(bp82.4℃)、酢酸エチル(bp77.1℃)
などを挙げることができる。
【0030】第1の溶媒と第2の溶媒との好ましい組み
合わせ例としては、第1の溶媒がジアセトンアルコール
又はシクロヘキサノンであり、第2の溶媒がメチルエチ
ルケトンである組み合わせを挙げることができる。
【0031】多孔性インク層2を形成するための上述し
たようなインク組成物は、熱溶融転写性インク粒子と、
第1の溶媒と、非熱転写性樹脂とを均一に混合すること
により調製することができる。
【0032】多孔性インク層2は、このようなインク組
成物を公知の塗工方法並びに乾燥方法に従って基材上に
塗工し乾燥することにより形成することができる。
【0033】本発明の多数回印字用熱転写記録媒体の基
材1としては、従来の熱転写記録媒体に用いられている
ものと同様の基材を使用することができ、例えばポリエ
ステルフィルムなどを好ましく使用することができる。
また、接着剤層3や耐熱滑性層4についても、従来の熱
転写記録媒体において用いられている公知の接着剤層や
耐熱滑性層を利用することができる。
【0034】図1の多数回印字用熱転写記録媒体は、イ
ンク層が多孔性インク層2の単層からなる態様を例示し
たが、本発明の多数回印字用熱転写記録媒体は、この態
様に限られることなく、図2に示すように、基材1と多
孔性インク層2との間に、熱溶融性物質と着色剤とから
なる非多孔性の熱溶融性インク層5が更に形成されてい
る態様を含む。このような構造とすることにより、熱転
写時に多孔性インク層2中に熱溶融性インク層5からイ
ンクが供給され、熱転写記録媒体の多数回印字特性が向
上する。
【0035】この場合、多孔性インク層2は、インクの
熱溶融転写量を制御するに足る層厚があればよく、多数
回印字に必要な量のインクをすべて保持するに足る層厚
は必要ない。よって、多孔性インク層2の層厚は、図1
に示した態様での層厚よりも薄い3μm未満、通常1〜
2.5μm程度とすることができる。また、このように
多孔性インク層2を薄く形成する場合、その塗工したイ
ンク組成物の乾燥時間も速まるので、それに相応してイ
ンク組成物中の第1の溶媒の含有量を、図1の場合に比
べ多くすることが好ましく、具体的にはインク組成物中
の固形分100重量部に対し70〜100重量部とする
ことが好ましい。
【0036】熱溶融性インク層5としては、従来の一般
的な熱溶融転写型インクリボンのインク層と同様の構成
とすることができ、前述したような熱溶融性物質中に着
色剤を均一に分散して常法により成膜したものを使用す
ることができる。熱溶融性インク層5の層厚は、多数回
印字特性と転写濃度とを考慮すると、3〜10μm程度
とすることが好ましい。
【0037】また、非多孔性の熱溶融性インク層5は、
図3に示すように、熱転写時の溶融粘度の互いに異なる
低溶融粘度インク層5aと高溶融粘度インク層5bとの
2層構造とすることが好ましい。この場合、高溶融粘度
インク層5bを基材側に配設する。このような構造とす
ることにより、多孔性インク層2へのインクの供給をよ
り安定的に行うことができる。即ち、図3の態様の場合
には、図2の態様の場合に比して、繰り返し印字間の印
字濃度を平均化でき、従って印字回数を重ねる毎の印字
濃度の低下傾向を抑制することができ、更に印字回数を
多数回重ねても高溶融粘度インク層5bからのインク供
給が期待できるので、印字濃度を適性範囲に長期に渡っ
て維持することが可能となる。
【0038】なお、熱溶融性インク層5の粘度の調整
は、使用する熱溶融性物質の融点や使用量等を適宜調整
することにより行うことができる。
【0039】本発明の多数回印字用熱転写記録媒体は、
その多孔性インク層2を、熱溶融転写性インク粒子と第
1の溶媒と非熱転写性樹脂とを含有するインク組成物
を、公知の方法に従って基材上に塗布し乾燥することに
より形成する以外は、公知の手法を利用して製造するこ
とができる。
【0040】本発明の多数回印字用熱転写記録媒体は、
従来の溶融転写型の多数回印字用インクリボンと同様の
方法により使用することができる。
【0041】
【実施例】以下、本発明を実施例により具体的に説明す
る。
【0042】なお、以下の実施例及び比較例において使
用した溶剤は以下に示すように略称する。
【0043】 DAA: ジアセトンアルコール(第1の溶媒) ANON: シクロヘキサノン(第1の溶媒) EC: エチルセロソルブ(第1の溶媒) MIBK: メチルイソブチルケトン(第2の溶媒) MEK: メチルエチルケトン(第2の溶媒) IPA: イソプロピルアルコール(第2の溶媒) TOL: トルエン XYL: キシレン
【0044】実施例1〜7及び比較例1〜4 まず、平均粒径28nmのカーボンブラック(Rave
n1080,コロンビアンカーボン社製)30重量部
と、融点70℃のキャンデリラワックス(ミツバ貿易社
製)62.0重量部及び分散剤(ソルパーズ1700
0、5000,ICI社製)8.0重量部とを140℃
に加熱し、十分に撹拌した。この混合物を室温まで冷却
した後に粉砕して熱溶融点転写性粗インク粒子を得た。
【0045】次に、得られた熱溶融転写性粗インク粒子
10.5重量部と非熱転写性樹脂としてガラス転移点1
01℃のセルロースアセテートブチレート樹脂(CAB
551−0.2,イーストマンケミカル社製)4.5重
量部と表1に示した混合溶媒85重量部とを均一に混合
し、サンドミルにて分散することにより、平均一次粒子
径が1μmの熱溶融転写性インク粒子を含有する多孔性
インク層形成用インク組成物を得た。
【0046】次に、片面に耐熱滑性処理が施された6μ
m厚のポリエステルフィルム(帝人社製)上に、ポリウ
レタン系接着剤(NP3151,日本ポリウレタン工業
社製)をワイヤーバーを用いて塗布し、100℃の温風
により乾燥することにより0.1μm厚の接着層を形成
した。
【0047】この接着層上に、先に調製した多孔性イン
ク層形成用インク組成物を乾燥厚で8.5μmとなるよ
うにワイヤーバーを用いて塗布し、100℃の温風によ
り乾燥することにより、インク層が多孔性の単層構造の
多数回印字用熱転写記録媒体を作製した。
【0048】得られた記録媒体の多孔性インク層中の熱
溶融転写性インク粒子の平均二次粒子径を、顕微鏡を用
いて測定した。その結果を表1に示す。
【0049】なお、表1において「第1の溶媒量」と
は、インク組成物中の固形分100重量部に対する第1
の溶媒の重量部を意味する。
【0050】
【表1】 インク組成物 第1の溶剤量 二次粒子径 混合溶剤 固形分(wt%) (μm) 実施例1 DAA/MEK=7.5/92.5 15 43 5 2 DAA/MEK=15/85 15 85 7 3 ANON/MEK=15/85 15 85 5 4 DAA/MEK=5/95 15 28 3 5 DAA/MEK=20/80 15 113 10 6 ANON/DAA/MEK=7.5/7.5/85 15 85 7 7 EC/MEK=15/85 15 85 5 比較例1 TOL/MEK=33/67 15 0 ≦0.5 2 MIBK/MEK=30/70 15 0 ≦0.5 3 MIBK/IPA=30/70 15 0 ≦0.5 4 XYL/MEK=15/85 15 0 ≦0.5
【0051】実施例8〜16及び比較例5〜8 片面に耐熱滑性処理が施された6μm厚のポリエステル
フィルム上に、ポリアミド接着剤(トーマイド394
(50重量部)、トーマイド509(50重量部),富
士化成工業社製)100重量部と、イソプロピルアルコ
ール1667重量部とトルエン1667重量部とからな
る接着剤組成物を、塗布し乾燥して0.2μmの接着剤
層を形成した。
【0052】この接着剤層上に、平均粒径28nmのカ
ーボンブラック(Raven1080,コロンビアンカ
ーボン社製)23重量部と、融点70℃のキャンデリラ
ワックス(ミツバ貿易社製)47重量部と、融点83℃
のカルナバワックス(加藤洋行社製)15重量部と、融
点62℃のエチレン−酢酸ビニル共重合体(ウルトラセ
ン725,東ソー社製)10重量部と、分散剤(ソルス
パーズ17000、5000,ICI社製)5重量部
と、トルエン100重量部とを均一に混合することによ
り熱溶融性インク層形成用組成物を調製し、その組成物
を5μm(乾燥厚)となるように塗布し、100℃の温
風により乾燥することにより熱溶融性インク層(溶融粘
度100poise(150℃))を形成した。
【0053】更に、この熱溶融性インク層上に、表2に
示す混合溶剤を使用する以外は実施例1で使用したもの
と同じ多孔性インク層形成用組成物を乾燥厚で1.5μ
m(実施例8、11〜15及び比較例6〜8)又は2.
9μm(実施例9、10、16及び比較例5)となるよ
うに塗布し、100℃の温風により乾燥することによ
り、インク層が2層構造の多数回印字用熱転写記録媒体
を作製した。
【0054】得られた記録媒体の多孔性インク層中の熱
溶融転写性インク粒子の平均の二次粒子径を、実施例1
と同様に測定した。その結果を表2に示す。
【0055】なお、表2において「第1の溶媒量」と
は、表1の場合と同様に、インク組成物中の固形分10
0重量部に対する第1の溶媒の重量部を意味する。
【0056】
【表2】 インク組成物 第1の溶媒量 二次粒子径 混合溶剤 固形分(wt%) (μm) 実施例8 DAA/MEK=15/85 15 85 2 9 DAA/MEK=15/85 15 85 3 10 DAA/MEK=30/70 15 170 4 11 DAA/MEK=20/80 15 113 2 12 DAA/MEK=30/70 15 170 2 13 ANON/MEK=30/70 15 170 2 14 DAA/MEK=10/90 15 57 1 15 ANON/DAA/MEK=15/15/70 15 170 2 16 EC/MEK=15/85 15 85 2 比較例5 TOL/MEK=33/67 15 0 ≦0.5 6 MIBK/MEK=30/70 15 0 ≦0.5 7 MIBK/IPA=30/70 15 0 ≦0.5 8 XYL/MEK=15/85 15 0 ≦0.5
【0057】実施例17〜18及び比較例9 まず、実施例8と同様に、片面に耐熱滑性処理が施され
た6μm厚のポリエステルフィルム上に接着剤層を設け
た。
【0058】この接着剤層上に、ポリエチレンワックス
(T−10P−2,岐阜セラミック製造所製)の10%
トルエン溶液100重量部、カーボンブラック(Rav
en1080、コロンビアンカーボン社製)の30%ト
ルエン分散液16重量部、ポリアミド(トーマイド50
9,富士化成工業社製)5重量部及びイソプロピルアル
コール100重量部を均一に混合して熱溶融性インク層
形成用組成物を調製し、その組成物を2μm(乾燥厚)
となるように塗布し、100℃の温風で乾燥することに
より高溶融粘度の熱溶融性インク層(溶融粘度1000
poise(150℃))を形成した。
【0059】この高溶融粘度の熱溶融性インク層上に、
実施例8と同様の熱溶融性インク層形成用組成物を4μ
m(乾燥厚)となるように塗布し、100℃の温風によ
り乾燥することにより低溶融粘度の熱溶融性インク層
(溶融粘度100poise(150℃))を形成し
た。
【0060】この低溶融粘度の熱溶融性インク層上に、
表3に示した混合溶剤を使用する以外は実施例8と同様
の多孔性インク層形成用組成物を、乾燥厚で1.5μm
(実施例17及び比較例9)又は2.9μm(実施例1
8)となるように塗布し、100℃の温風で乾燥するこ
とにより3層構造のインク層を有する多数回印字用熱転
写記録媒体を作製した。
【0061】得られた記録媒体の多孔性インク層中の熱
溶融転写性インク粒子の平均の二次粒子径を、実施例1
と同様に測定した。その結果を表3示す。
【0062】なお、表3において「第1の溶媒量」と
は、表1の場合と同様に、インク組成物中の固形分10
0重量部に対する第1の溶媒の重量部を意味する。
【0063】
【表3】 インク組成物 第1の溶媒量 二次粒子径 混合溶剤 固形分(wt%) (μm) 実施例17 DAA/MEK=15/85 15 85 2 18 DAA/MEK=15/85 15 85 2比較例9 TOL/MEK=33/67 15 0 ≦0.5
【0064】(評価)得られた実施例又は比較例の多数
回印字用熱転写記録媒体について、多数回印字特性と印
字品位とを以下に説明するように試験し評価した。
【0065】(1) 多数回印字特性試験 熱転写プリンター(GP−1000、寺岡精工社製)に
装着し、印字ラベル(Fasson 1C)に対して、
印字エネルギー50%(設定)、印字スピード100m
m/秒という条件で5回印字を行い、得られた印字の印
字濃度をマクベス濃度計により測定し、以下の評価基準
に従って評価した。得られた結果を表4及び表5に示
す。
【0066】 多数回印字特性評価基準 ランク 状態 ◎: 5回の印字の印字濃度がいずれも1.0以上である場合 ○: 5回の印字の印字濃度がいずれも0.7以上である場合 △: 5回の印字の印字濃度がいずれも実用上問題のない0.4以上であ る場合 ×: 5回の印字のいずれかの印字濃度が0.4未満である場合
【0067】(2) 印字品位試験 多数回印字特性試験の場合と同様に5回印字を行い、得
られた印字の印字品位を目視にて観察し、以下の評価基
準に従って評価した。
【0068】 印字品位評価基準 ランク 状態 ◎: 5回の印字とも濃淡ムラのほとんど無い鮮明な印字である場合 △: 5回の印字のいずれかに、印字の判読には実用上支障のない程度の 濃淡ムラがある場合 ×: 5回の印字のいずれかに、判読が困難な濃淡ムラがある場合
【0069】
【表4】
【0070】
【表5】
【0071】表4から、実施例1〜7の単層の多孔性イ
ンク層を有する熱転写記録媒体は、いずれも多数回印字
特性と印字品位との点で実用上問題のない特性を示して
いることがわかる。特に実施例4及び実施例5を考慮す
ると、第1の溶媒の好ましい使用量が、多孔性インク層
形成用組成物中の固形分100重量部に対し、30〜1
00重量部であることが類推できる。
【0072】一方、比較例1〜4の場合、実施例のよう
な第1の溶媒を使用していないので、インク粒子が十分
に凝集しないために、インク粒子の二次粒子径が十分に
大きくならず、従って多数回印字特性が不十分であるこ
とがわかる。
【0073】また、表5の例においては、熱溶融性イン
ク層上に多孔性インク層を設けた場合には、多数回印字
特性が向上した。なお、熱溶融性インク層を2層にした
実施例17及び18の場合、印字毎の濃度変化を小さく
することができた。
【0074】熱溶融性インク層上に多孔性インク層を設
け、その多孔性インク層の層厚を1.5μm程度とした
場合の第1の溶媒の使用量は、実施例14を考慮すると
多孔性インク層形成用組成物中の固形分100重量部に
対し、少なくとも70重量部とすることが好ましいこと
が類推できる。
【0075】一方、比較例5〜9の場合、実施例のよう
に第1の溶媒を使用していないので、インク粒子が十分
に凝集しないために、インク粒子の二次粒子径が十分に
大きくならず、多数回印字特性並びに印字品位が不十分
であることがわかる。
【0076】
【発明の効果】本発明の多数回印字用熱転写記録媒体
は、そのインク層の形成時の乾燥条件を高い生産効率と
なるように設定した場合でも、良好な多数回印字特性と
印字品位とを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の多数回印字用熱転写記録媒体の断面図
である。
【図2】本発明の多数回印字用熱転写記録媒体の断面図
である。
【図3】本発明の多数回印字用熱転写記録媒体の断面図
である。
【符号の説明】
1 基材 2 多孔性インク層 3 接着剤層 4 耐熱滑性層 5 熱溶融性インク層 5a 低溶融粘度熱溶融性インク層 5b 高溶融粘度熱溶融性インク層
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B41M 5/38 - 5/40

Claims (12)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 熱溶融性物質と着色剤とからなる熱溶融
    転写性インク粒子が非熱転写性樹脂マトリックス中に分
    散されてなる多孔性インク層が、基材上に形成されてい
    る多数回印字用熱転写記録媒体の製造方法において、熱
    溶融転写性インク粒子と、熱溶融転写性インク粒子を室
    温下で実質的に溶解させないが非熱転写性樹脂を室温下
    で膨潤又は溶解させることができ且つ沸点が120℃以
    上の第1の溶媒と、熱溶融転写性インク粒子を室温下で
    実質的に溶解させないが非熱転写性樹脂を室温下で膨潤
    又は溶解させることができ且つ沸点が120℃未満の第
    2の溶媒と、非熱転写性樹脂とを含有するインク組成物
    を、基材上に塗布し乾燥することにより多孔性インク層
    を形成することを特徴とする製造方法。
  2. 【請求項2】 第1の溶媒のインク組成物中における含
    有量が、インク組成物中の固形分100重量部に対し3
    0〜100重量部である請求項記載の製造方法。
  3. 【請求項3】 第1の溶媒の沸点が150〜170℃で
    ある請求項又は記載の製造方法。
  4. 【請求項4】 第2の溶媒の沸点が90℃以下である請
    求項のいずれかに記載の製造方法。
  5. 【請求項5】 第1の溶媒がジアセトンアルコール又は
    シクロヘキサノンであり、第2の溶媒がメチルエチルケ
    トンである請求項又は記載の製造方法。
  6. 【請求項6】 基材と多孔性インク層との間に、熱溶融
    性物質と着色剤とからなる非多孔性の熱溶融性インク層
    を更に形成する請求項記載の製造方法。
  7. 【請求項7】 第1の溶媒のインク組成物中の含有量
    が、インク組成物中の固形分100重量部に対し70〜
    100重量部である請求項記載の製造方法。
  8. 【請求項8】 第1の溶媒の沸点が150〜170℃で
    ある請求項又は記載の製造方法。
  9. 【請求項9】 第2の溶媒の沸点が90℃以下である請
    求項のいずれかに記載の製造方法。
  10. 【請求項10】 第1の溶媒がジアセトンアルコール又
    はシクロヘキサノンであり、第2の溶媒がメチルエチル
    ケトンである請求項又は記載の製造方法。
  11. 【請求項11】 非多孔性の熱溶融性インク層を、熱転
    写時の溶融粘度の互いに異なる低溶融粘度インク層と高
    溶融粘度インク層とから形成し、高溶融粘度インク層を
    基材側に配設する請求項10のいずれかに記載の製
    造方法。
  12. 【請求項12】 インク組成物中の熱溶融転写性インク
    粒子の一次粒子径が0.1〜20μmであり、多孔性イ
    ンク層中の熱溶融転写性インク粒子の二次粒子径が0.
    5〜15μmである請求項11のいずれかに記載の
    製造方法。
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