JP3149970B2 - 散気材及びそれを用いたガスの散気方法 - Google Patents

散気材及びそれを用いたガスの散気方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、水中に気泡を分散させ
るための散気材及びそれを用いた散気方法に関するもの
である。
【0002】
【従来の技術及びその問題点】水中に空気等のガスの微
細気泡を分散させるために散気材が使用される。この散
気材は、排水処理を初めとし、バイオリアクター、発酵
槽、培養槽に対する通気手段として利用され、さらに、
腐食性液体の通気撹拌手段、養魚場に対する通気手段等
として広く利用されている。この散気材としては、多孔
質プラスチック、焼結ガラス、焼結金属、多孔質セラミ
ックス等が用いられているが、未だ満足すべきものでは
ない。例えば、多孔質プラスチックでは、その素材の疎
水性のために、散気により発生する気泡径は3mm以上
となり、極めて大きな気泡しか得ることができないとい
う問題がある。一方、多孔質セラミックのような親水性
材料では、1mm以下の気泡径を得ることができるもの
の、セラミックス内部への水の浸入が起るため、散気を
行わせる初期圧力が高くなるという問題がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、従来の散気
材に見られる前記問題点を解決し、初期圧力が低くかつ
気泡径の小さな気泡を生じさせる散気材及びそれを用い
た散気方法を提供することをその課題とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記課題
を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、多孔質フッ素樹脂
材料において、その一方の表面のみに親水基を有する含
フッ素高分子を付着結合させて親水化したものは、散気
材として極めて有利な特性を示すことを見出し、本発明
を完成するに至った。即ち、本発明によれば、多孔質フ
ッ素樹脂材料からなり、その片面の表面部のみに親水基
を有する含フッ素高分子を付着結合させて親水化させた
ことを特徴とする散気材が提供される。また、本発明に
よれば、水又は水溶液中にガスを微細気泡として分散さ
せるに際し、前記散気材を、その親水化側の表面を水又
は水溶液と接触させた状態で、ガスをその散気材の非親
水化側の表面から供給することを特徴とする散気方法が
提供される。さらに、本発明によれば、多孔質フッ素樹
脂チューブの外周面に、全体が親水基を有する含フッ素
高分子を付着結合させて親水化された多孔質フッ素樹脂
フィルムを巻成固定化してなる散気管が提供される。
【0005】本発明において散気材の基本素材として用
いる多孔質フッ素樹脂材料は、平均細孔直径が100μ
m以下の連続した微細孔(透孔)を有するものであれば
よく、その細孔を形成させる手段も特に限定されず、延
伸や拡張、発泡、抽出等が採用される。また、フッ素樹
脂の種類は特に限定されず、各種のものが用いられる。
本発明で用いる好ましいフッ素樹脂は、ポリテトラフル
オロエチレンであるが、その他、テトラフルオロエチレ
ン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリフッ化ビ
ニル、ポリフッ化ビニリデン等も使用し得る。本発明に
おいては、多孔質ポリテトラフルオロエチレン、特に延
伸された多孔質ポリテトラフルオロエチレンの使用が好
ましい。
【0006】本発明で好ましく用いる多孔質フッ素樹脂
材料は、ポリテトラフルオロエチレンの延伸物からな
り、平均細孔直径:100μm以下、好ましくは50μ
m以下、空孔率:50〜95%、好ましくは60〜80
%を有するものである。このような素材については、特
公昭56−45773号、特公昭56−17216号、
米国特許第4187390号に詳述されている。本発明
においては、前記多孔質フッ素樹脂材料(以下単に材料
とも言う)の片面表面部の細孔内表面に、親水性物質を
付着結合させ、親水化することによって、散気材として
用いる。親水性物質としては、水又は水溶液に対して難
溶性もしくは実質的に不溶性のものが好ましい。親水化
処理方法としては、材料に対し、親水性モノマーを、レ
ーザーの照射下でグラフト重合させる方法(特開平2−
196834号)、プラズマの照射下でグラフト重合さ
せる方法(特開平2−208333号)、放射線の照射
下でグラフト重合させる方法(特開平1−98640
号)等の親水性モノマーのグラフト重合法の他、材料に
親水性ポリマー又は界面活性剤を含浸させた後、プラズ
マ処理して架橋化させる方法(特開昭56−15748
7号)、無機化合物前駆体液を材料に含浸させた後、加
水分解・化合・加熱処理する方法、界面活性剤を付着さ
せる方法(特開平2−107649号)等が挙げられ
る。本発明の場合、これらの公知の親水化方法は、材料
の片面の表面部のみに対して行う。この場合、材料の片
面のみを親水化させるには、材料の一方の面を、プラス
チックフィルムで脱着可能に被覆して前記親水化処理を
行えばよく、また、材料の一方の面のみに親水化材料を
塗布して処理すればよい。多孔質フッ素樹脂材料に対す
る特に好ましい親水化処理方法は、含フッ素親水性高分
子を材料の片面の表面部のみに付着させる方法である。
この方法について、以下に詳述する。
【0007】含フッ素親水性高分子は、その分子中にフ
ッ素を含有する疎水性部分と、親水性基を有する親水性
部分を有するもので、水又は水溶液に対して幾分の可溶
性を有するもの、好ましくは実質的に水不溶性を示すも
のの使用が好ましい。親水性基としては、例えば、ヒド
ロキシル基、カルボキシル基、スルホン基、シアノ基、
ピロリドン基、イソシアネート基、イミダゾール基、リ
ン酸基、N−置換されていてもよいアミド基、N−置換
されていてもよいアミノ基、スルホンアミド基等を挙げ
ることができる。また、またそれらの親水基の活性水素
には、アルキレンオキシド、例えばエチレンオキシドや
プロピレンオキシドが付加反応されていてもよい。前記
含フッ素親水性高分子は、フッ素含有エチレン性不飽和
モノマーと、フッ素を含まない親水基含有ビニルモノマ
ーを共重合化させることにより得ることができる。フッ
素含有モノマーとしては、例えば、テトラフルオロエチ
レン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、モノクロロト
リフルオロエチレン、ジクロロジフルオロエチレン、ヘ
キサフルオロプロピレン等が挙げられる。
【0008】好ましいフッ素含有モノマーは、次の一般
式で示すことができる。 CXY=CFZ (1) 前記式中、Zはフッ素又は水素を示し、X及びYは水
素、フッ素、塩素及びトリフルオロメチル(−CF3
の中から選ばれる。
【0009】また、他の好ましいフッ素含有モノマー
は、次の一般式で示すことができる。 前記式において、Rは水素、フッ素、メチル基、エチル
基、トリフルオルメチル基(CF3)又はペンタフルオ
ルエチル(C25)である。Rfは炭素数4〜21のパ
ーフルオロアルキル基を示す。
【0010】一方、親水基含有モノマーとしては、前記
した各種の親水基を有するビニルモノマー及びそれらの
親水基の活性水素にアルキレンオキシド、例えばエチレ
ンオキシドやプロピレンオキシドを付加反応させたモノ
マーも好適のものである。酢酸ビニルのように、共重合
化後、加水分解することにより親水基含有コポリマーを
与えるものも使用される。親水性モノマーの具体例とし
ては、ビニルアルコール、アクリル酸、メタクリル酸、
フマル酸、マレイン酸、イタコン酸のような不飽和カル
ボン酸の他、以下に示す如きアクリル酸やメタクリル酸
のアルキレンオキシド付加体が挙げられる。 前記式中、Rは水素又はメチル基であり、n及びmは1
以上の整数である。含フッ素モノマー及び親水基含有モ
ノマーはいずれも一種又は二種以上であってもよい。ま
た、前記含フッ素モノマーと親水基含有モノマーには、
必要に応じ、さらに、他のビニルモノマー、例えば、ア
クリル酸やメタクリル酸のアルキルエステル、トリメチ
ロールプロパンの如き多価アルコールとアクリル酸又は
メタクリル酸とのエステル等を併用することができる。
【0012】含フッ素親水性高分子として好ましく用い
られるビニアルコールとフッ素含有モノマーとのコポリ
マーは、ビニルアセテートとフッ素含有モノマーとのコ
ポリマーをケン化し、コポリマーに含まれるアセテート
基をヒドロキシル基に変換することにより得ることがで
きる。この場合、コポリマーに含有されるアセテート基
は、必ずしもその全てをヒドロキシル基に変換させる必
要はなく、アセテート基のヒドロキシル基への変換はコ
ポリマーが親水性を有する程度まで行えばよい。含フッ
素親水性コポリマーのフッ素含有率量は、重量基準で、
通常2%〜60%、好ましくは10%〜60%、更に好
ましくは20%〜60%である。含フッ素親水性コポリ
マーのフッ素含有率が多すぎると、耐熱性は良くなるも
ののポリマーの親水性が低下する。一方、フッ素含有率
が少なすぎると含フッ素親水性コポリマーの材料に対す
る接着性が小さくなり、耐熱性も小さくなる。材料の親
水性化のために好ましく用いる含フッ素親水性コポリマ
ーにおいて、その親水基当量は、一般に、45〜70
0、好ましくは60〜500である。この親水基当量が
45未満の場合、含フッ素親水性コポリマーの溶解度が
非常に大きくなり、そのコポリマーは水で材料から溶出
されやすくなり、一方、親水基当量が700より大きく
なると親水性が小さくなりすぎて、材料の親水性化を達
成できなくなる。
【0013】表1〜表2にいくつかのコポリマーについ
て、そのコポリマー中の含フッ素モノマー単位のモル
%、フッ素重量%(F−wt%)及び親水基当量(Eq
−W)を示す。VOHはビニルアルコールである。
【0014】なお、本明細書における親水基当量(Eq
−W)とは、コポリマーの分子量を、親水基の数で割っ
た値である。以下に示した親水基当量は、次式により算
出される。 式中、A・xは、含フッ素モノマーの分子量にそのモル
数xをかけた値であり、一方、B・yは親水基含有モノ
マーの分子量にそのモル数yをかけた値である。
【0015】
【表1】 コポリマー コポリマー中 コポリマー中の のモル比 含フッ素モノマー F-wt% Eq-W 単位のモル% (CF2=CF2)x/(VOH)y X=1, Y=40 2.4 4.2 45.5 1, 30 3.2 5.5 46.4 1, 20 4.8 7.9 48.0 1, 10 9.1 14.3 53 1, 4 20 27.5 68 1, 1 50 53.1 143 10, 1 91 72.8 1043 (CF2=CFH)x/(VOH)y X=1, Y=40 2.4 2.1 44.6 1, 30 3.2 2.8 45.2 1, 20 4.8 4.1 46.2 1, 10 9.1 7.5 49 1, 4 20 − − 1, 1 50 33.6 107 10, 1 91 55.6 683 (CFH=CH2)x/(VOH)y X=1, Y=40 2.4 1.1 44.2 1, 30 3.2 1.4 45.6 1, 20 4.8 2.1 45.3 1, 10 9.1 4.0 47.6 1, 4 20 − − 1, 1 50 21.3 89 10, 1 91 37.8 503
【0016】
【表2】 コポリマー コポリマー中 コポリマー中の のモル比 含フッ素モノマー F-wt% Eq-W 単位のモル% (CF2=CFCl)x/(VOH)y X=1, Y=40 2.4 3.1 46.0 1, 30 3.2 4.0 46.9 1, 20 4.8 5.8 48.9 1, 10 9.1 10.4 54.6 1, 4 20 − − 1, 1 50 35.8 159 10, 1 91 47.2 1208 (CF2=CCl2)x/(VOH)y X=1, Y=40 2.4 2.0 46.6 1, 30 3.2 2.7 47.7 1, 20 4.8 3.8 50.0 1, 10 9.1 6.7 57 1, 4 20 − − 1, 1 50 20.8 183 10, 1 91 26.3 1442 (CF2=CFCF3)x/(VOH)y X=1, Y=40 2.4 6.1 46.8 1, 30 3.2 7.9 48.0 1, 20 4.8 11.3 50.5 1, 10 9.1 19.6 58 1, 4 20 − − 1, 1 50 59.0 193 10, 1 91 73.9 1543
【0017】材料の片面表面部に含フッ素親水性高分子
を付着結合させるためには、例えば含フッ素親水性コポ
リマーを、アルコール、ケトン、エステル、アミドある
いは炭化水素のような有機溶媒中に溶解し、その溶液中
に材料をその片面をプラスチック材料で被覆して浸漬す
るか、あるいはその溶液をスプレー又はローラーを用い
たコーティング法により材料の片面にその溶液を含浸さ
せた後、乾燥させる。このようにして、含フッ素親水性
高分子材料が片面表面部に付着し、片面のみが親水化さ
れた材料を得ることができる。材料に対する含フッ素親
水性高分子の付着量は、材料の片面表面部のみを親水化
させるに十分な量であればよく、使用する材料の多孔性
等により変化するが、通常、最終生成物の重量に対し
て、0.5〜5重量%、好ましくは1〜3重量%であ
る。材料に対する処理液として用いる含フッ素高分子溶
液中のその高分子濃度は、0.5〜2重量%の範囲に規
定するのがよい。この溶液中の高分子濃度が高すぎる
と、塗布や含浸処理に際して、材料の微細孔を塞ぎ、材
料の通気性が損われる。
【0018】また、親水性化多孔質フッ素樹脂材料は、
これに含フッ素モノマーと親水基に変換可能な酢酸ビニ
ルのような疎水性モノマーからなるコポリマーの有機溶
媒溶液を含浸させ、材料を乾燥し、次いでそのアセテー
ト基の少なくとも一部を親水基に変換することにより製
造することもできる。
【0019】前記のようにして得られる親水性多孔質フ
ッ素樹脂材料は、親水性含フッ素高分子がその片面表面
部に膜状又は粒子状に結合している構造を有する。これ
により材料の片面表面部が親水化される。親水性含フッ
素高分子の親水基当量を適度な範囲に規定し、高分子の
水に対する溶解性をコントロールすることにより、高分
子そのものの材料からの溶離を防ぐことできる。含フッ
素親水性コポリマーの多孔質フッ素樹脂材料への付着結
合力は、そのコポリマー中のフッ素原子の作用によって
強力なものとなり、その耐久性も安定した状態で長期間
にわたって維持される。
【0020】本発明の散気材は、従来の散気材と同時
に、チューブ状やフィルム状、板体状等の種々の形状で
使用される。チューブ状の場合、外表面部のみが親水化
される。また、本発明の散気材は、非親水化の多孔質フ
ッ素樹脂チューブあるいはその他の通気性チューブに対
して、その周面に巻成して使用することもでき、さら
に、通気性板体に固定支持させて用いることもできる。
本発明の散気材を用いて水や水溶液中に気泡を分散させ
るには、その散気材の親水化表面側を水や水溶液と接触
させた状態で、空気や酸素、その他の所定のガスを、そ
の散気材の非親水化表面側(疎水表面側)から供給し、
その親水化表面側から水や水溶液中に放散させればよ
い。
【0021】本発明によれば、多孔質フッ素樹脂からな
るチューブの周面に、全体を親水化した多孔質フッ素樹
脂フィルムを巻成固定化して形成した散気管が提供され
る。この散気管も、表面部のみが親水化された構造にな
っているため、前記した表面部のみが親水化された多孔
質フッ素樹脂チューブと同様に、低い初期圧で気泡径の
小さい気泡を放出させることができる。なお、全体が親
水化された多孔質フッ素樹脂フィルムを得るには、前記
した親水化処理を、そのフィルム全体に対して適用すれ
ばよい。本発明の散気材には、チューブ状で用いる場
合、その肉厚は、0.1〜5mm、好ましくは0.1〜
2mmである。また、フィルム状で用いる場合、その厚
さは0.025〜3mm、好ましくは0.025〜1m
mであり、板体状で使用する場合、その厚さは1〜20
mm、好ましくは1〜10mmである。
【0022】
【発明の効果】本発明の散気材は、多孔質フッ素樹脂を
基材として用いたことから、耐薬品性、耐熱性、非溶出
性にすぐれるとともに、その片面表面部のみを親水化さ
せたことから、散気を行うための初気圧力は低くてす
み、ランニングコストも少なくてすむ上、親水性表面部
から気泡が放出されるので、放出される気泡径は非常に
小さく、1mm以下の気泡径を得ることができる。ま
た、本発明による多孔質フッ素樹脂からなるチューブの
周面に、全体が親水化されたフッ素樹脂フィルムを巻成
固定化して形成した散気チューブも、低い初期圧で微細
な気泡を放出させることができる。
【0023】
【実施例】次に本発明を実施例によりさらに詳細に説明
する。なお、以下において示す各項目は、次のようにし
て測定及び評価されたものである。
【0024】(1)厚さ 厚さは1/1000mmの精度を有するダイアル測厚ゲ
ージにて測定した。 (2)エタノールあわだち点(EBP) 材料(膜)のサンプルの表面にエタノールを広げ、その
サンプルを固定装置に水平におき、EBPを評価した。
この場合、空気を底面から吹きつけた。EBPは、空気
泡が反対側の表面から連続して出た際の初期圧力(kg
/cm2)である。 (3)空孔率 親水性高分子の含浸以前(以下、単に含浸前材料とも言
う)の材料の空孔率は材料の密度を測定して得た。材料
(ポリテフトラフルオロエチレン)の密度は2.2g/
cm3である。空孔率は以下の式を用いて算出した。 空孔率=(2.2−サンプル密度)÷2.2×100 親水性高分子の含浸後の材料(以下、単に含浸後の材料
とも言う)の空孔率の計算においては、密度として2.
2g/cm3の替りに2.1g/cm3を採用した。 (4)流れ時間 流れ時間は、200mlの水を1気圧真空下で35mm
厚のサンプルを通して通過させるに必要な時間である。
サンプルを水平に固定し、水を上から注ぐ。次いで下部
から吸引する。含浸前材料の測定の場合には、サンプル
を先ずエタノールで含浸して材料に親水性を付与する。 (5)耐久性 含浸処理後の材料の耐久性は、5回の流れ時間試験(1
回毎に乾燥)後、又は流れ試験機及び方法を用いて10
リットルの水の流通後の親水性で示される。 (6)フッ素及び水酸基含量 フッ素含量及び水酸基含量は計算で求める。 (7)水透過性(WP) WPは次式により求める。 WP=200÷(流れ時間−60×(1.75)2×3.14) (8)耐熱性 耐熱性は膜を枠に固定した後、材料を試験温度に制御し
た空気オーブン中に所定時間置いた後、親水性を下記に
従って測定することにより求める。 (9)ガーレイ値(GN) GNは、100cm3の空気が6.45cm3のサンプル
面積を12.4cm水圧下で通過するに必要な時間を測
定することにより求める。 (10)耐酸、耐アルカリ及び耐溶剤性 サンプルを実施例中に示した時間液中に浸漬する。乾燥
後親水性を下記に従って測定する。 (11)親水性 初期親水性は高さ5cmのところから水滴をサンプル表
面に落し、水滴が吸収されるまでにかかる時間を測定す
ることにより求める。親水性は次のように評価する。 A:1秒以内に吸収 B:自然に吸収 C:加圧してのみ吸収 D:吸収されないが接触角は減少 E:吸収されない。即ち、水を撥ねる。このE評価は多
孔性フッ素樹脂材料に特有である。
【0025】参考例1 テトラフロロエチレン/ビニルアルコール共重合体(テ
トラフロロエチレン/ビニルアルコール共重合体のケン
化合物;ケン化度100%;フッ素含量27重量%;水
酸基含量14.5ミリモル/g)を1リットルのメタノ
ールに溶かし、0.2重量%メタノール溶液を調製し
た。厚さ40μm、空孔率80%の多孔質フッ素樹脂膜
を上記メタノール溶液中に浸漬して含浸した後、枠に固
定し、50℃で5分間乾燥した。同様な工程を5回繰返
し、親水性がA評価で、流れ時間が60秒の親水性多孔
質膜を得た。このものの厚さは30μmで、空孔率は7
0%、細孔直径は0.2μm、WPは20cm3/cm2
・分であった。耐熱温度120℃において、この良好な
親水性は24時間後も維持されていたが、135℃にお
いては親水性は失なわれた。
【0026】また、この膜を水中に浸漬したところ、水
中への物質の溶解は起らなかった(コポリマーの溶出な
し)。沸騰水中に浸漬した場合も変化は見られなかっ
た。上記の膜は、12規定塩酸(室温)や1規定塩酸
(80℃)などの酸に対し高い耐酸性を示し、また、5
規定水酸化ナトリウム(室温)や1規定水酸化ナトリウ
ム(80℃)などのアルカリに対しても高い耐アルカリ
性を示した。
【0027】参考例2 テトラフロロエチレン/酢酸ビニルコポリマーをメチル
エチルケトンに溶かし、0.3重量%溶液を調製した。
厚さ40μm、空孔率80%の多孔質ポリテトラフロロ
エチレン膜を上記溶液で含浸した後枠に固定し、60℃
で5分間乾燥した。同様な工程を5回繰返した。得られ
た膜をナトリウムメトキシド含有エタノール中に浸漬し
て30分加熱処理してケン化を行ったケン化処理した親
水性膜を水洗した。この膜は参考例1のフィルムと同様
な特性を示した。
【0028】参考例3 厚さ48μm、GN6.1秒、EBP1.15kg/c
2、空孔率76%、流れ時間36秒の多孔質ポリテト
ラフロロエチレン膜を、参考例1で用いた共重合体の1
%メタノール溶液中に30秒間浸漬し、取り出してから
枠に固定した後、室温で1時間乾燥した。得られた膜の
物性は次の通りであった。膜のコポリマー含量:0.7
5kg/m2、膜厚:36μm、GN:10.4秒、E
BP:1.2kg/cm2、空孔率:71%、流れ時
間:56秒、WP速さ:20cm3/m2・分。
【0029】参考例4 次に、前記参考例1〜3で得た親水性膜について、その
物性を以下のようにして評価した。 (耐久性試験)親水性膜に200mlの水を5回通じ
(1回毎に乾燥)るか(方法1)、又は10lの水を連
続して通じた(方法2)後、親水性試験を行った。結果
は次の通りである。
【0030】親水性膜を5回流れ時間試験に供した。
尚、各試験毎に乾燥を行った。次いで、この膜について
親水性試験を行ったところ、Aの評価が得られた。ま
た、別の含浸膜サンプルについて、流れ時間試験機及び
試験法を用いて、10リットルの水を連続して通じた。
この膜の親水性試験結果はAであった。
【0031】(耐熱性)親水性膜を次下の温度、時間で
加熱処理した後、親水性試験を行ったところ、次の結果
を得た。 温度 時間 親水性試験結果 100℃ 30時間 A 120℃ 5時間 B(60秒後に吸収) 120℃ 24時間 B(60秒後に吸収) 120℃ 48時間 B(120秒後に吸収) 120℃ 2時間 C又はD 150℃ 24時間 D 200℃ 1時間 D
【0032】(耐酸化性)親水性膜を以下に示す酸化条
件下に以下に示す時間浸漬した後、親水性試験を行った
とろ、次の結果を得た。 酸化剤 温度 時間 親水性試験結果 1N塩酸 80℃ 2時間 A 3N硝酸 室温 350時間 A 12N硝酸 室温 1時間 A
【0033】(耐アルカリ性)親水性膜を以下に示すア
ルカリ性条件下で以下に示す時間浸漬した後、親水性試
験を行ったところ、以下の結果を得た。 アルカリ 温度 時間 親水性試験結果 1N水酸化ナトリウム 80℃ 1時間 A 1N水酸化ナトリウム 80℃ 5時間 D 6N水酸化ナトリウム 室温 36時間 A
【0034】(耐有機溶剤性)親水性膜を以下に示す溶
剤を通じた後、親水性試験を行ったところ、次の結果を
得た。 溶剤 流通量 親水性試験結果 メタノール 300ml A エタノール 2000ml A アセトン 5000ml A メタノールは、コポリマーの良好な溶剤であるにも拘ら
ず、300mlのメタノール流通後の親水性はAであっ
た。なお、エタノール及びアセトンは上記コポリマーの
良好な溶剤ではない。
【0035】実施例1 肉厚:1mm、空孔率:50%、細孔径:0.2μmの
内径6mmの多孔質フッ素樹脂チューブ(ポリテトラフ
ルオロエチレンチューブ)の外表面を、脱脂洗浄する。
このチューブ外表面部に、テトラフルオロエチレン/ビ
ニルアルコール共重合体(テトラフルオロエチレン/酢
酸ビニル共重合体のケン化物、ケン化度:100%、フ
ッ素含有率:27重量%、水酸基含有率14.5mmo
l/g)を1.5重量%含むメチルアルコール溶液を塗
布した後、室温でメタノールをとばして外表面部のみが
親水化された散気管を得た。次に、この散気管の一方の
開口端を閉塞して水中に入れ、他方の開口部から空気を
供給して、散気管表面から気泡を放出させた。また、比
較のために、親水化処理を施していない多孔質フッ素樹
脂チューブを用いて、同様にして気泡を水中に放出させ
た。前記試験の結果、本発明の散気管を用いて気泡を形
成するときには、散気管を通過させる空気の初期圧は
0.2kg/cm2であり、得られる気泡径は1mm以
下という微細なものであった。一方、比較のための散気
管を用いた場合には、初期圧は0.05kg/cm2
小さいが、得られる気泡径は3〜4mmという大きなも
のであった。
【0036】実施例2 厚さ:50μm、空孔率:60%、細孔径:0.2μm
の多孔質フッ素樹脂フィルム(ポリテトラフルオロエチ
レンの延伸多孔質フィルム)を、実施例1で示した含フ
ッ素共重合体の2重量%溶液中に浸漬し、フィルム全体
に溶液を充分に含浸させた後、室温でメタノールを蒸発
除去した。次に、実施例1で示した非親水化多孔質フッ
素樹脂チューブの外周面に、前記で得た親水化多孔質フ
ッ素樹脂フィルムをラセン状に巻成固定化して散気管を
作製した。この散気管を用いて実施例1と同様の散気試
験を行った結果、この場合には、初期圧:0.1kg/
cm2、気泡径:1mm以下という良好な成績が得られ
た。

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 多孔質フッ素樹脂材料からなり、その片
    面の表面部のみに親水基を有する含フッ素高分子を付着
    結合させて親水化させたことを特徴とする散気材。
  2. 【請求項2】 該含フッ素親水性高分子中のフッ素含有
    率が2〜60重量%で、親水基当量が45〜700であ
    る請求項の散気材。
  3. 【請求項3】 水又は水溶液中にガスを微細気泡として
    分散させるに際し、前記請求項1〜のいずれかの散気
    材を、その親水化側の表面を水又は水溶液と接触させた
    状態で、ガスをその散気材の非親水化側の表面から供給
    することを特徴とする散気方法。
  4. 【請求項4】 外周面表面部のみが親水基を有する含フ
    ッ素高分子を付着結合させて親水化された多孔質フッ素
    樹脂チューブからなる散気管。
  5. 【請求項5】 多孔質フッ素樹脂チューブの外周面に、
    全体が親水基を有する含フッ素高分子を付着結合させて
    親水化された多孔質フッ素樹脂フィルムを巻成固定化し
    てなる散気管。
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