JP3144697B2 - フィルム転写薄肉成形品の製造方法 - Google Patents

フィルム転写薄肉成形品の製造方法

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  • Injection Moulding Of Plastics Or The Like (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、溶融樹脂の射出成形時
に、その成形品の表面に転写フィルムに形成された転写
皮膜を一体成形するフィルム転写薄肉成形品の製造方法
に関する。詳しくは、基材フィルムの表面に文字や図形
などの転写皮膜を形成した転写フィルムを金型内にイン
サートし、溶融樹脂の射出成形時に、その成形品の表面
に転写フィルムの転写皮膜を一体成形するフィルム転写
薄肉成形品の製造方法に関する。例えば、自動車用やプ
ラント用計器類などの表示板の製造に利用できる。
【0002】
【背景技術】射出成形品の表面に文字や図形などの絵柄
を装飾する方法として、成形品の表面に絵柄を加熱、加
圧することにより転写するホットスタンピング法やシル
クスクリーン法などが知られている。しかし、これらの
方法は、成形品を射出成形した後、その成形品の表面に
文字や図形などを転写するものであるため、成形品の成
形工程と転写工程との2工程を必要とする。しかも、転
写工程の前処理である表面清浄作業中に成形品に傷が入
りやすい上、転写工程において精度の高いセット治具が
必要である、などの問題がある。
【0003】そこで、これらの問題を解決する方法とし
て、特開昭48−16958号公報および特開昭57−
74137号公報などの製造方法が提案されている。こ
れらの製造方法は、表面にインキによって模様を印刷し
たフィルムを金型内にセットした後、その金型内に溶融
樹脂を射出充填することによって、溶融樹脂による成形
品の表面に模様を一体的に転写するようにしたものであ
る。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】従来の一体的製造法で
は、成形品の厚みが2mmを超える厚物であれば、転写
フィルムとの一体成形も比較的成形条件が広くとれスム
ーズに成形することができるものの、厚みが2mm以下
の薄肉射出成形品の場合には、ゲート近傍において、射
出時の溶融樹脂の流動抵抗が大きいことから、溶融樹脂
による衝撃によって転写フィルムの転写皮膜が剥離する
という問題が生じている。特に、成形品断面にリブ構造
を有することなく、かつ、平滑な外平面または外曲面を
有する平均厚さが2mm以下の薄肉射出成形品の場合に
は、上記問題は一層顕著である。
【0005】ここに、本発明の目的は、このような従来
の問題を解消し、転写フィルムとの一体成形品を安定し
た品質で能率的に製造できるフィルム転写薄肉成形品の
製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】そのため、本発明のフィ
ルム転写薄肉成形品の製造方法は、基材フィルムの表面
に文字や図形などの転写皮膜を形成した転写フィルムを
固定型と移動型とからなる金型内にセットするフィルム
セット工程と、転写フィルムがセットされた固定型と移
動型とを所定の圧縮代を見込んで型締めする型締め工程
と、型締め後の金型内に溶融樹脂を射出充填する充填工
程と、前記圧縮代を再型締めして金型内の溶融樹脂を圧
縮成形する圧縮工程とを備え、前記型締め工程におい
て、前記溶融樹脂の射出充填時のゲート近傍の剪断速度
が80〜130 sec-1の範囲に入るように前記圧縮代を
調整した、ことを特徴とする。
【0007】ここで、フィルムセット工程において、金
型内にセットする転写フィルムは、基材フィルムの表面
に例えば印字用インキによって文字や図形などの転写皮
膜を印字したものである。基材フィルムとしては、材質
がポリエステルで、かつ、厚みが50〜70μmが好ま
しい。厚みが30μm以下の薄いものでは成形時に皺の
発生が多く、また、100μm以上の厚いものでは剛性
が高く三次元曲面に追従しにくいからである。印字用イ
ンキとしては、ウレタン系塗料などがよく、単色、多色
を問わない。
【0008】また、充填工程において、金型内に射出充
填される溶融樹脂としては、特に限定されることはない
が、例えば、ポリカーボネート樹脂やメチルアクリレー
ト樹脂などが好ましい。なお、金型は、固定型と移動型
とを備え、固定型に対して移動型が型締装置などによっ
て進退でき、更に、再型締めできる構造を備えるもので
あればいずれでもよい。
【0009】また、型締め工程において、固定型と移動
型との間の圧縮代については、溶融樹脂の射出充填時の
ゲート近傍の剪断速度γが80〜130sec-1、好まし
くは、90〜115sec-1の範囲内に入るように、調整
する。ここで、剪断速度γが80sec-1より小さいと成
形品の一部に欠落が生じ、また、130sec-1を超える
と転写フィルムの転写皮膜に溶融剥離が生じる。一般
に、剪断速度γは、樹脂が通過する部位の肉厚に反比例
する(幅一定の場合)。つまり、樹脂が通過する部位の
断面積に反比例する。本発明の場合、ゲートの厚みが圧
縮代を見込んだ厚みとなっている関係から、つまり、圧
縮代によってゲートの断面積が変化する構造となってい
から、圧縮代を変えることによって剪断速度γを変化さ
せることができる。ちなにみ、図6(A)に示すよう
に、厚さH、幅Wの矩形断面内を流れる樹脂の壁面aで
の剪断速度γは、一般的に、 γ=6Q/WH 2 ………(2) で表される。ここで、Q:樹脂流量、W≫Hである。
た、ゲートから出る樹脂の流動形状が、矩形状より半円
状に近い場合、前記式(2)を次のように近似させる。
たとえば、金型内のキャビティ形状が図4に示すような
円板状で、ゲートから出る樹脂の流動形状が半円状に近
いの場合、図6(B)に示すように、幅WをW=πr
(r:流動距離)に置き換える必要があり、このように
すると、 γ=6Q/WH 2 → 6Q/πrH 2 ………(3) が得られる。ゲートから出た樹脂の流動形状を半円とみ
なして、上記式(3)の係数「6」を「3」とすると、 γ=3Q/πrH 2 ……………(1) の近似式が得られる。 従って、このような式(1)また
は(2)を基に、剪断速度γが80〜130sec -1 、好
ましくは、90〜115sec -1 の範囲内に入るように、
圧縮代を調整すればよい。
【0010】従って、溶融樹脂の射出充填時のゲート近
傍の剪断速度γが80〜130sec-1、好ましくは、9
0〜115sec-1の範囲内に入るように、厚さH(成形
品の厚さt+圧縮代δ)を調整する。ここで、厚さHは
成形品の厚みtと圧縮代δの和であり、成形品の厚みt
は目的とする製品の厚みで変更できないから、圧縮代δ
を調整して溶融樹脂の射出充填時のゲート近傍の剪断速
度γが上記範囲内に入るように調整する。
【0011】
【作用】成形に当たって、まず、基材フィルムの表面に
文字や図形などの転写皮膜を形成した転写フィルムを固
定型と移動型とからなる金型内にセットする。続いて、
溶融樹脂の射出充填時のゲート近傍の剪断速度γが上記
範囲に入るように圧縮代を見込んで固定型と移動型とを
型締めする。その後、その金型内に溶融樹脂を射出充填
した後、前記圧縮代を再型締めして金型内の溶融樹脂を
圧縮成形れば、転写フィルムの転写皮膜が表面に一体的
に転写された薄肉射出成形品を得ることができる。
【0012】
【実施例】以下、本発明の製造方法の一例を図面を参照
しながら詳細に説明する。本発明で用いる金型10は、
図1に示す如く、固定型11と、可動盤16に取り付け
られ前記固定型11に対して接近・離反する移動型12
と、この移動型12の周囲に設けられ前記固定型11と
の間に転写フィルム20をセットする移動側型13とを
含み構成されている。
【0013】これらの型11,12,13によって溶融
樹脂が射出充填されるキャビティ14が形成されてい
る。また、前記移動側型13と前記可動盤16との間に
は、移動側型13を固定型11へ向かって押圧し転写フ
ィルム20をその間に保持するための押圧力を与えるス
プリング15が介装されている。なお、可動盤16は、
図示しない型締シリンダなどの作動によってガイドロッ
ド17に沿って往復移動される。
【0014】前記転写フィルム20は、図2および図3
に示す如く、厚みが50〜70μmからなるポリエステ
ル基材フィルム21の表面に、ウレタン系塗料などの印
字用インキで文字や図形などの転写皮膜22を印字した
もので、金型10を挟んで繰り出し側23および巻取り
側24でそれぞれロール状に巻かれている。1回の射出
圧縮成形が行われるごとに、転写フィルム20は、繰り
出し側23から巻取り側24へ所定長さずつ間欠的に巻
き取られるようになっている。
【0015】成形に当たっては、まず、転写フィルム2
0を金型10内にセットする(フィルムセット工程)。
つまり、転写フィルム20を固定型11と移動側型13
との間にスプリング15の押圧力によってセットする。
続いて、固定型11と移動型12とを所定の圧縮代δを
見込んで型締めする(型締め工程)。このとき、溶融樹
脂の射出充填時のゲート近傍の剪断速度γが上記(1)
式において80〜130 sec-1、好ましくは、90〜1
15 sec-1の範囲内に入るように、圧縮代δを決める。
続いて、その金型10のキャビテイ14内に溶融樹脂を
射出充填し(充填工程)、その後、前記圧縮代δを再型
締めして圧縮成形(圧縮工程)した後、溶融樹脂の冷却
硬化後に、基材フィルム21を剥離すれば、平滑な外平
面または外曲面を有する平均厚さ2mm以下の薄肉射出
成形品の表面に基材フィルム21の転写皮膜22が一体
的に転写された成形品を安定した品質で能率的に製造す
ることができる。
【0016】そこで、図1に示す金型10(センターピ
ンゲート、ゲート径1.0mm)を用いて、図4に示す
計器用文字板を実際に成形した例について説明する。成
形に当たって、まず、金型10の固定型11と移動側型
13との間に厚さ70μmのポリエステル転写フィルム
20をセットした後、固定型11と移動型12とを所定
の圧縮代δを見込んで型締めする。続いて、その金型1
0のキャビティ14内にポリカーボネート溶融樹脂を射
出充填し、その後、前記圧縮代δを再型締めして圧縮成
形し、肉厚1.5mm、直径100mmの円盤表面に転
写フィルム20の転写皮膜22が一体的に形成された計
器用文字盤を得た。そのとき、成形条件を種々変えて成
形した結果を次の表1に示す。
【0017】
【表1】
【0018】なお、表1において、比較例1〜5は通常
の射出成形法で成形した結果、比較例6〜9および実施
例1〜7は射出圧縮成形法で成形した結果をそれぞれ示
す。また、成形品の品質欄に記載された内容のうち、 溶融剥離;ゲート近傍を中心として直径10mm程度が
剥離状態 やや剥離;ゲート近傍を中心として直径5mm程度が剥
離状態 僅か剥離;ゲート近傍を中心として直径1mm程度が剥
離状態 剥離なし;ゲート近傍での剥離が全くない状態 である。また、ショートは成形品の一部に欠落が生じて
いる状態である。
【0019】まず、通常の射出成形法の場合、成形温
度、金型温度および充填時間を変えて成形したところ
(比較例1,2,3,4,5参照)、比較例1および比
較例4ではゲート付近の溶融樹脂が転写フィルムに最初
にぶつかる位置周辺部で転写フィルムの転写皮膜が溶融
剥離された。これは、図5に示す如く、ゲート近傍の溶
融樹脂の高速流体による衝撃が大きかったために転写フ
ィルムの転写皮膜が溶融し基材フィルムから剥離したも
のと考えられる。
【0020】また、比較例2,3,5では、射出充填速
度を僅かに下げて(つまり、充填時間を増して)成形し
たところ、転写フィルムの転写皮膜に溶融剥離が解消さ
れないまま成形品の一部が欠落(ショート)した不良品
しか得られなかった。これは、溶融樹脂が金型内で流動
中最端部にまで行き渡る前に冷却固化したものと考えら
れる。特に、比較例5では、金型温度を60℃から80
℃に変更しても、やはり一部欠落の不良品しか得られな
かったことから、安定した良品が得られる成形条件の範
囲がきわめて狭いものと考えられる。
【0021】一方、射出圧縮成形法の場合、充填時間を
一定(0.6sec )のまま圧縮代を徐々に拡げることに
より剪断速度を下げていったところ(比較例6,7,
8,9および実施例1,2,3参照)、剪断速度117
sec-1で品質が僅か剥離の成形品が得られ(実施例
1)、続いて、剪断速度106 sec-1以下で剥離が全く
ない良品が得られた(実施例2,3)。更に、、剪断速
度75 sec-1で成形品の一部欠落(ショート)が生じた
(比較例9)。
【0022】また、充填時間を僅かずつ増大(1.0〜
1.3sec)させて剪断速度を下げていったところ(実施
例4,5,6,7参照)、剪断速度125 sec-1でやや
剥離、剪断速度119 sec-1で僅か剥離の品質であるも
のの、共に良品として許容できる成形品が得られ(実施
例4,6)、続いて、剪断速度110 sec-1以下で剥離
が全くない良品が得られた(実施例5,7)。
【0023】これらの結果から、剪断速度を管理すれ
ば、厚みが2mm以下の成形品でも、安定して良品が得
られる成形条件の範囲が比較的広い範囲で存在すること
が判る。つまり、剪断速度が略80〜130 sec-1の範
囲に入るように圧縮代δを調整すれば、一定の歩留率で
良品として許容できる成形品が安定して得られることが
判る。なかでも、剪断速度が略90〜115 sec-1の範
囲に入るように圧縮代δを調整すれば、剥離が全くない
高品質な成形品が安定して得られることが判る。
【0024】以上、本発明について説明したが、本発明
は上記例に限定されるものでなく、次の変形例も含む。
例えば、上記実施例では、計器用文字板について説明し
たが、成形品としては、これに限られるものでなく、他
の自動車用の表示板やプラント用計器類の表示板などの
製造にも適用できる。
【0025】
【発明の効果】以上の通り、本発明のフィルム転写薄肉
成形品の製造方法によれば、表面に転写フィルムの転写
皮膜を一体成形した成形品を安定した品質で能率的に製
造できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で用いる金型を示す図である。
【図2】転写フィルムを示す正面図である。
【図3】図2のII−II線断面図である。
【図4】成形品を示す正面図である。
【図5】成形品の一部に溶融剥離が生じている状態を示
す図である。
【図6】 剪断速度の式を導き出す根拠を説明する図であ
る。
【符号の説明】
10 金型 11 固定型 12 移動型 13 移動側型
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭63−126712(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B29C 45/00 - 45/84

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】基材フィルムの表面に文字や図形などの転
    写皮膜を形成した転写フィルムを固定型と移動型とから
    なる金型内にセットするフィルムセット工程と、転写フ
    ィルムがセットされた固定型と移動型とを所定の圧縮代
    を見込んで型締めする型締め工程と、型締め後の金型内
    に溶融樹脂を射出充填する充填工程と、前記圧縮代を再
    型締めして金型内の溶融樹脂を圧縮成形する圧縮工程と
    を備え、前記型締め工程において、前記溶融樹脂の射出
    充填時のゲート近傍の剪断速度が80〜130 sec-1
    範囲に入るように前記圧縮代を調整した、ことを特徴と
    するフィルム転写薄肉成形品の製造方法。
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