JP3139469B2 - 磁気記録媒体 - Google Patents

磁気記録媒体

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JP3139469B2
JP3139469B2 JP10287601A JP28760198A JP3139469B2 JP 3139469 B2 JP3139469 B2 JP 3139469B2 JP 10287601 A JP10287601 A JP 10287601A JP 28760198 A JP28760198 A JP 28760198A JP 3139469 B2 JP3139469 B2 JP 3139469B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は電磁変換特性に優れ
る高記録密度磁気記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】現在、
磁気記録媒体の主流は磁性層に含まれる強磁性粉末の磁
化容易軸を磁性層の面内に配向させたものである。一
方、高記録密度化のために磁性層の磁化容易軸を斜めな
いし垂直に配向させる数多くの提案がされている。例え
ば特開平5−334652号公報には、磁性層に含まれ
る強磁性粉末の磁化容易軸が10〜65度の角度で斜め
配向した磁気記録媒体が記載されている。しかし、上記
公報記載の磁気記録媒体においては、上層磁性層の強磁
性粉末を斜め配向させることに起因して、高密度記録に
必要な磁性層の表面性が得にくくなり、また、出力の向
上に限界がある。また使用する磁性粉末の種類が制限さ
れたり、製造方法が煩雑である。
【0003】従って、本発明の目的は、生産性に優れ、
表面性および電磁変換特性が良好な高記録密度磁気記録
媒体を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、支持体上
に下層磁性層と最上層磁性層とを有する重層型磁気記録
媒体における最上層磁性層に含まれる磁性粉末の磁化容
易軸を面内に配向させ、且つ下層磁性層に含まれる磁性
粉末の磁化容易軸の配向および磁気特性を制御して、磁
気記録媒体に垂直方向の外部磁場を印加したときの最大
磁化率χmax と8kA/mの外部磁場を印加したときの
磁化率χ8 との比を特定の値以上とすることで、上記目
的が達成されることを知見した。
【0005】本発明は上記知見に基づくもので、支持体
上に、強磁性金属粉末を結合剤に分散させた塗料を塗設
してなる最上層磁性層およびこれに隣接する下層磁性層
が設けられた磁気記録媒体において、上記最上層磁性層
の平均乾燥厚みが0.03〜0.5μmであり、該最上
層磁性層に含まれる上記強磁性金属粉末が上記磁気記録
媒体の水平方向に配向しており、上記磁気記録媒体は、
その水平方向の保磁力が120kA/m以上で、且つそ
の垂直方向に外部磁場を印加したときの最大磁化率χ
max と、該垂直方向に8kA/mの外部磁場を印加した
ときの磁化率χ8 との比(χmax /χ8 )が1.3以上
である磁気記録媒体を提供することにより上記目的を達
成したものである。
【0006】
【発明の実施の形態】本発明の磁気記録媒体の好ましい
実施形態は、重層の塗布型磁気記録媒体であり、支持体
上に下層磁性層と、これに隣接して最上層磁性層(以
下、単に上層磁性層ともいう)が設けられており、また
支持体の裏面にバックコート層が設けられている構成で
ある。
【0007】本発明の磁気記録媒体における上層磁性層
は、強磁性金属粉末が結合剤に分散されて形成されてい
る。そして該強磁性金属粉末は、磁気記録媒体の水平方
向に配向している。本明細書において水平方向とは、磁
気記録媒体の平面に平行な方向を意味する。また、水平
方向に配向しているとは、上層磁性層に含まれる上記強
磁性金属粉末の磁化容易軸(長軸)の平均傾きが20度
以下であることを意味する。磁化容易軸の傾きがこの範
囲を超えると磁性層表面が荒れやすくなり、高出力が得
られない。上記傾きは15度以下、特に10度以下が好
ましい。上記傾きの測定方法は後述する。
【0008】上層磁性層に含まれる上記強磁性粉末の磁
化容易軸は、磁気記録媒体の水平方向に配向していれ
ば、水平面内において何れの方向に向いていてもよい。
好ましい形態は、磁気記録媒体が磁気テープの場合に
は、上記磁化容易軸がテープの長手方向に配向した形態
であり、磁気記録媒体が磁気ディスクの場合には、上記
磁化容易軸がディスクの水平面内においてランダムに分
布している形態である。
【0009】上層磁性層は平均乾燥厚みが0.03〜
0.5μmである。厚みが0.5μmを超えると自己減
磁が大きくなり高密度記録時に十分な出力を得るのが困
難となる。一方、厚みが0.03μm未満の塗膜は、S
/N比が著しく低下する。平均乾燥厚みは、0.03〜
0.3μm、特に0.05〜0.2μmであることが好
ましい。
【0010】上記磁気記録媒体は、その水平方向の保磁
力が120kA/m以上である。該保磁力が120kA
/mに満たないと短波長域での出力が不十分である。上
記保磁力は、130〜270kA/m、特に140〜2
50kA/mであることが好ましい。尚、本明細書にお
いて、水平方向の保磁力とは、磁気記録媒体が磁気テー
プの場合にはテープ長手方向に関して測定されたものを
意味し、磁気ディスクの場合にはディスクの水平面内に
関してランダムに測定された保磁力のうち最も値の大き
いものを意味する。
【0011】本発明の最大の特徴は、上記磁気記録媒体
は、その垂直方向に外部磁場を印加したときの最大磁化
率χmax と、該垂直方向に8kA/mの外部磁場を印加
したときの磁化率χ8 との比(χmax /χ8 、以下、磁
化率比という)が1.3以上である点である。磁気記録
媒体の磁化率比が1.3以上であり、且つ上層磁性層の
強磁性金属粉末が上述の水平面内配向状態を有し、更に
上述の範囲の乾燥厚みを有することによって、磁気記録
媒体の電磁変換特性が良好となり、後述する実施例から
も明らかなように、短波長記録時の出力が高くなる。
尚、本明細書において、磁化率とは、磁気記録媒体に対
してその垂直方向に印加された外部磁場Hと、該磁気記
録媒体の磁化Mとから得られる初期磁化曲線(M−Hカ
ーブ)を、外部磁場Hで微分することにより得られる値
(dM/dH)である。その具体的な測定方法は後述す
る実施例において詳述する。また垂直方向とは、磁気記
録媒体の平面に垂直な方向を意味する。
【0012】磁性粉末の磁化容易軸が磁気記録媒体の水
平方向に配向した従来の磁気記録媒体では、その磁化率
−印加磁場曲線(χ−Hカーブ)は図1(b)に示すよ
うに明確なピークをもたず、その磁化率比は1.0〜
1.1程度である。これに対して、本発明の磁気記録媒
体の磁化率−印加磁場曲線は図1(a)に示すように、
ピークを有する上に凸の曲線となり、その磁化率比が
1.3以上となる。磁化率比は2.4以上であることが
好ましい。該磁化率比の上限値に特に制限はないが、現
状で実現が容易に可能な値は4.0程度である。また、
最大磁化率χmax は、印加外部磁場が80〜400kA
/m、特に100〜320kA/mの範囲で現れること
が好ましい。
【0013】本発明の磁気記録媒体の出力特性が向上す
るメカニズムは、既存の磁気記録媒体との対比で以下の
様に推察される。先ず、最も一般的である水平配向の単
層型磁気記録媒体(イ)では、記録波長が例えば1μm
以下のように短くなると、自己減磁損失や厚み損失によ
り出力の低下が顕著になってくる。そこで、これらの損
失を改善するために下層非磁性層を設けて磁性層を薄く
したタイプの重層型磁気記録媒体(ロ)が開発された。
しかし、この(ロ)の磁気記録媒体においても、進行し
つつある更なる高密度記録に対して出力が不十分であ
る。(イ)の磁気記録媒体に対する別の提案は磁性粉末
の磁化容易軸を斜めないし垂直に配向させる磁気記録媒
体(ハ)である。しかし、この(ハ)の磁気記録媒体に
は、材料や製造設備上の問題および短波長記録に重要な
高表面性を得にくいという問題がある。また、(ハ)の
磁気記録媒体の変形として、下層磁性層を設け、その中
に含まれる磁性粉末の磁化容易軸を水平方向に配向させ
た磁気記録媒体(ニ)も提案されているが、出力特性の
向上効果は小さく、また(ハ)の磁気記録媒体と同じ問
題点をもつ。これらに対して、本発明の磁気記録媒体
は、上層磁性層に含まれる上記強磁性金属粉末が水平方
向に配向しているので高表面平滑性が得られ易い。また
それに隣接する下層磁性層は垂直方向に強い磁束成分を
持つので上層磁性層の磁化反転領域における垂直磁化を
助け、磁気ヘッドが拾う出力が高められる。特に短波長
記録(例えば、0.5μm以下)、即ち、高密度記録の
場合、良好な電磁変換特性が得られる。
【0014】上記磁化率比χmax /χ8 を上記の値以上
とするには、下層磁性層に含まれる強磁性粉末の磁化容
易軸を磁気記録媒体の水平方向に対して斜めないし垂直
方向に配向させることが有効であり、具体的には下記関
係式(1)を満たす様に下層磁性層を形成することが好
ましい。
【0015】 0.9≦Hc⊥(下)/Hc(下) (1)
【0016】上記式(1)において、Hc(下)は磁気
記録媒体の水平方向における下層磁性層の保磁力〔kA
/m〕を表し、Hc⊥(下)は磁気記録媒体の垂直方向
における下層磁性層の保磁力〔kA/m〕を表す。Hc
⊥(下)/Hc(下)の値が0.9未満であると垂直方
向の磁化成分が小さくなり、下層磁性層の寄与が不十分
で、出力向上効果が小さくなる。Hc⊥(下)/Hc
(下)の値は1.0以上であると更に好ましい。
【0017】また、Hc⊥(下)の最適範囲は使用され
る最短記録波長λ〔μm〕によって異なることを本発明
者らは知見した。そこで、本発明の磁気記録媒体が下記
関係式(2)を満たすと、下層磁性層の磁化状態が安定
し、各記録波長での出力向上効果が顕著となり好まし
い。
【0018】 190×λ1/5 −50≦Hc⊥(下)≦190×λ1/5 +50 (2)
【0019】更に、下層磁性層においては、磁気記録媒
体の水平方向における該下層磁性層の残留磁束密度Br
(下)〔T(テスラ)〕と、t〔μm〕とが下記関係式
(3)を満たすと、磁化率比が上記の値以上である本発
明の磁気記録媒体の、下層磁性層の効果を最も有効に活
用できるので好ましい。
【0020】 0.02≦Br(下)×t≦0.3 (3)
【0021】Br(下)×tの値が0.02に未満だ
と、下層磁性層の磁気的寄与が発現しにくくなり、0.
3を超えると反磁界のため上層磁性層に対して悪影響を
及ぼすことがある。Br(下)×tの値は0.04以上
0.3以下であることが更に好ましく、0.05以上
0.25以下であることが一層好ましい。
【0022】更に、磁気記録媒体の水平方向における上
層磁性層の保磁力Hc(上)〔kA/m〕に対し、上述
したHc⊥(下)が下記関係式(4)を満たすと、特に
0.5μm以下の短波長で記録した場合の出力特性の向
上が顕著なので、高密度記録にとって好ましい。
【0023】 0.6≦Hc⊥(下)/Hc(上)≦1.7 (4)
【0024】Hc⊥(下)/Hc(上)の値が0.6未
満では下層磁性層の磁化が不安定になる場合があり、
1.7を超えると通常の磁気ヘッドでは下層磁性層に磁
気記録が十分にできない場合がある。Hc⊥(下)/H
c(上)の値は更に好ましくは0.7以上1.5以下で
ある。尚、Hc(上)の値自体は、130kA/m以
上、特に135〜250kA/mであることが好まし
い。
【0025】上記磁気記録媒体において上層磁性層に含
まれる上記強磁性金属粉末の磁化容易軸を水平方向に配
向させ、また下層磁性層の垂直磁化成分を高めるには、
例えば以下の〜に示す上下層磁性層に配合させる成
分面からのアプローチから1つ以上と、〜に示す磁
気記録媒体の製造面からのアプローチから1つ以上とを
組み合わせることによって達成できる。しかし、これら
の方法に限定されるものではない。
【0026】下層磁性層に含まれる強磁性粉末の磁気
特性、形状等を適当に選択する。 下層磁性層に、表面に多数の突起をもつ非磁性粉末を
含有させる。 上下層磁性層に互いに異なる結合剤を含有させる。 下層磁性層および上層磁性層を形成するための塗料
(以下、それぞれ下層塗料および上層塗料という)を塗
布した後、乾燥前の塗膜に対する磁場配向条件を制御す
る。 上下層塗料調製時の混練工程前に予備分散工程を行い
各成分の混合状態を制御する。 上層塗料の乾燥速度を制御する。
【0027】の方法においては、下層磁性層に針状や
紡錘状で且つその長軸方向に磁化容易軸を有する強磁性
粉末を用いてもよいが、製造プロセスが煩雑になり、磁
気記録媒体の表面平滑性が不十分となる場合がある。こ
れに対して、六角板状の強磁性六方晶系フェライト粉末
を用いると、下層塗料塗布時の剪断力によって板面が支
持体に対して水平に配向し易いので、(a) 後述の製造方
法と組み合わせることで下層磁性層の垂直磁化成分が強
く発生し易くなる、(b) 同時重層塗布法を用いた場合に
上下層塗料にそれぞれ含まれる強磁性粉末の配向状態を
同時に制御できるので生産性が良好である、(c) 磁気記
録媒体の表面性が良好となることから好ましい。上記フ
ェライト粉末としては、バリウムフェライト又はそのF
e原子の一部をTi,Co,Ni,Zn若しくはV等の
原子で置換したもの、ストロンチウムフェライト等が好
ましい。また該フェライト粉末に、上層磁性層に含まれ
る強磁性金属粉末に施される表面処理(これについては
後述する)を施してもよい。該フェライト粉末の形状
は、板径10〜100nm、板状比2〜10が好まし
い。また、BET比表面積は20〜50m2 /gである
ことが好ましい。更に、磁気特性は、保磁力が120〜
220kA/m、特に130〜200kA/mであるこ
とが好ましく、飽和磁化が30〜70Am2 /kg、特
に45〜70Am 2 /kgであることが好ましい。
【0028】の方法においては、下層塗料の塗膜の磁
場配向処理時に、該下層塗料に含まれる強磁性粉末の磁
化容易軸の水平方向への配向が妨げられ、ランダム配向
に近いものとすることができる。
【0029】の方法においては、下層磁性層の結合剤
に含まれる極性基量を、上層磁性層の結合剤のそれより
も多くしたり、或いは下層磁性層の結合剤として上層磁
性層に含有させる結合剤よりも分子量の高いものを用い
ることによって、下層磁性層の垂直磁化成分を増すこと
ができる。
【0030】の方法においては、例えば同時重層塗布
を用いる場合には、通常、磁場の印加状態下で塗膜面側
に熱風を吹き付けて該塗膜をその最表面より乾燥させる
が、本発明においては、まず塗膜全体が未乾燥の内に垂
直方向へ配向磁場を印加した状態下で該塗膜と反対側の
支持体面から加熱し、下層塗膜を先ず乾燥させて該下層
塗膜中の強磁性粉末の磁化容易軸を垂直方向に配向し固
定する。次いで、下層塗膜中の溶媒濃度が下層塗料にお
ける溶媒濃度の30〜50重量%になった時点で水平方
向の配向磁場を印加して上層塗膜中の強磁性金属粉末の
磁化容易軸を水平方向に配向させる。上記加熱は例えば
熱風、赤外線、遠赤外線、加熱ロール等により行うこと
ができるが、これらに限定されるものではない。また、
下層磁性層および上層磁性層における強磁性粉末の磁化
容易軸の配向状態は、例えば印加する配向磁場の強度、
乾燥温度および塗膜中の溶媒濃度と配向磁場の印加のタ
イミングとを選択することにより制御できる。
【0031】の方法においては、各塗料の分散性、特
に上層塗料の分散性を上げることで水平面内磁場配向処
理条件を緩くでき、上層磁性層の水平面内配向性を損な
わずに下層磁性層の垂直磁束成分を強めることができ
る。塗料の調製は、上記強磁性粉末及び結合剤を溶剤の
一部とともにプラネタリーミキサー等に投入し予備分散
を行い、得られた予備分散物を混練し、次いで上記溶剤
の一部で希釈し、サンドミル等で分散処理した後、潤滑
剤等の成分を混合し、濾過し、更に硬化剤や残余の溶剤
を混合することで行う。本発明者らは、予備分散終了後
の、少なくとも粉末及び結合剤を含む予備分散物の嵩密
度〔g/ml〕を、該粉末の平均比重で除した値が0.
11〜0.20であると、その後の混練が良好になり、
分散性の優れた塗料が得られることを知見した。しかも
磁化率比を1.3以上に制御し易くなり、磁気記録媒体
の表面性が良好になる。上記嵩密度は、粉末のみを粉砕
した時の時間、温度若しくは粉砕機の回転数の調整、ま
たは予備分散時に加える結合
【0032】また、予備分散に先立ち強磁性粉末又は非
磁性粉末を、塗料調製に用いるのと同種の溶剤で予め湿
潤させる前処理を行うと分散性がより向上する。具体的
には、これらの粉末を溶剤中で15〜80℃の環境下に
1〜48時間湿潤させることが好ましい。結合剤や他の
添加剤もこの前処理に付すことがより好ましい。
【0033】の方法においては、上層塗料に配合する
混合溶媒の一種として少なくとも沸点130℃以上で、
且つ主となる結合剤に対する良溶媒を用い、更に塗工時
の上層塗料の固形分を28重量%以下、特に25重量%
以下とすることが好ましい。特に、結合剤の主成分が塩
化ビニル系樹脂であるときは、混合溶媒の一成分として
シクロヘキサノンを多量に用い、これを塩化ビニル系樹
脂100重量部に対して1000重量部以上、特に15
00重量部以上配合することにより、厚みの薄い上層磁
性層においても強磁性金属粉末の配向性を良好にするこ
とができ、且つその表面性を高くすることができる。
【0034】上記磁気記録媒体の各層について詳述す
る。まず、上層磁性層中の強磁性粉末は平均長軸長が
0.15μm以下が好ましく、更に好ましくは0.10
μm以下、一層好ましくは0.02〜0.08μmであ
る。特に平均長軸長が0.10μm以下という微小な強
磁性粉末を用いると、本発明の磁気記録媒体の出力向上
効果が、従来の磁気記録媒体に同様の微小な強磁性粉末
を配合した場合よりも顕著となる。平均長軸長の測定方
法は後述する。尚、強磁性粉末の平均粒径は、小さいほ
ど出力向上効果が高いと思われるが、現状技術で可能な
最小の粒径は0.02μm程度である。上記強磁性金属
粉末の形状は表面平滑性が得られやすい針状又は紡錘状
が好ましい。また、上記強磁性金属粉末の軸比は3〜2
0、特に4〜10が好ましく、BET比表面積は30〜
70m2 /gが好ましい。
【0035】上記強磁性金属粉末の磁気特性としては、
保磁力が115〜300kA/m、特に130〜250
kA/mであることが好ましく、飽和磁化が110〜2
00Am2 /kg、特に125〜180Am2 /kgで
あることが好ましい。
【0036】上記強磁性金属粉末の具体例としては特開
平9−293230号公報の第11欄15行〜第12欄
32行に記載の鉄を主体とする強磁性金属粉末が挙げら
れる。
【0037】上記結合剤としては公知のものが使用で
き、具体的には特開平9−35246号公報の第4欄第
25〜32行に記載のものが挙げられる。これらのう
ち、分子内に硫酸塩基、スルホン酸塩基、エポキシ基、
水酸基、カルボキシル塩基等の極性基を有する、ポリウ
レタン系樹脂および塩化ビニル系樹脂ならびにニトロセ
ルロース系樹脂が好適に使用される。また、上述のの
方法に関して詳述した結合剤を用いることも好ましい。
結合剤の配合量は、上記強磁性金属粉末100重量部に
対して5〜30重量部であることが好ましい。特に、上
記ポリウレタン系樹脂と上記塩化ビニル系樹脂とを併用
し且つ両者の比率(前者/後者)を20/80〜70/
30とすることが好ましい。
【0038】上層磁性層に、上記成分に加えて脂肪酸や
脂肪酸エステル等の潤滑剤、α−アルミナ及び酸化クロ
ム等のモース硬度が7以上の物質の粉末からなる研磨材
(粒径が0.03〜0.6μm、特に0.05〜0.3
μmのもの)、帯電防止剤としてのカーボンブラック、
イソシアネート系化合物等の硬化剤などを任意に含有さ
せることにより、磁気記録媒体の性能を一層向上させる
ことができる。これらの成分の好ましい添加量は、上記
強磁性金属粉末100重量部に対してそれぞれ以下の通
りである。 ・潤滑剤:1〜10重量部 ・研磨材:1〜20重量部、特に3〜15重量部 ・カーボンブラック:0.5〜10重量部 ・硬化剤:5重量部以下、特に2重量部以下
【0039】下層磁性層は、各種粉末が結合剤に分散さ
れて構成されている。該粉末としては、強磁性粉末、非
磁性粉末、研磨材、カーボンブラック等が用いられる。
【0040】上記強磁性粉末としては、上層磁性層に用
いられる強磁性金属粉末のほか、強磁性六方晶系フェラ
イト粉末および強磁性酸化鉄系粉末等が挙げられる。特
に、上述した通り、上記強磁性粉末として強磁性六方晶
系フェライト粉末を用いることが好ましい。
【0041】非磁性粉末の具体例としては特開平9−3
5246号公報の第9欄第44行〜第10欄24行に記
載されている無機粉末等が挙られる。該無機粉末として
は、α−酸化鉄、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜
鉛、酸化アルミニウム、炭酸カルシウムが好ましい。該
無機粉末は、針状の形状を有することが特に好ましく、
その場合の粒径(長軸長)は0.005〜0.4μm、
特に0.02〜0.2μmであることが好ましく、軸比
は2〜20であることが好ましい。
【0042】下層磁性層には、これらの粉末成分の他に
結合剤、潤滑剤、硬化剤等の成分が含有される。これら
各種成分については、上層磁性層に含有される当該成分
と同様のものが使用できる。特に、結合剤として、上述
のの方法に関して述べたものを用いることが好まし
い。これらの成分の好ましい配合量は、強磁性粉末と非
磁性粉末との合計量100重量部に対してそれぞれ以下
の通りである。 ・結合剤:5〜50重量部、特に10〜30重量部 ・潤滑剤:1〜20重量部、特に3〜10重量部 ・研磨材:1〜30重量部、特に2〜18重量部 ・カーボンブラック:0.3〜30重量部、特に1〜2
0重量部 ・硬化剤:0〜12重量部、特に0〜8重量部
【0043】下層磁性層の乾燥厚みは、上記式(3)と
も関係するが、好ましくは0.2〜3.0μm、更に好
ましくは0.5〜2.5μmである。乾燥厚みが0.2
μmに満たないと上層磁性層のカレンダー特性の劣化や
接着性、対衝撃性、耐久性等の劣化がみられる場合があ
り、3.0μmを超えると過剰なカッピングが生じる。
【0044】尚、下層磁性層および下層塗料に関して特
に説明しなかった点については、上述の上層磁性層及び
上層塗料に関して詳述した説明が適宜適用される。
【0045】本発明の磁気記録媒体が磁気テープの場合
には、バックコートを設けることが好ましく、該バック
コート層としては、磁気記録媒体で用いられる公知のも
のが使用できる。具体的には、例えば特開平9−352
46号公報の第5欄41行〜第9欄4行に記載のものが
使用できる。その厚みは0.05〜0.8μm、特に
【0046】支持体は磁気記録媒体用であれば公知の支
持体が使用でき、具体的には特開平9−35246号公
報の第2欄30〜42行に記載のものが使用できる。こ
れらのうちでも、ポリエチレンテレフタレート(PE
T)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリアミ
ド(PA)等の非磁性材料が好適である。支持体の厚み
は、8μm以下、特に6μm以下であることが、磁気記
録媒体の高容量化のために好ましい。また、支持体の表
面に易接着層を設け、下層磁性層やバックコート層との
接着性を高めてもよい。
【0047】次に 上記実施形態の磁気記録媒体の好ま
しい製造方法の概略を説明する。先ず、支持体上に上層
塗料と下層塗料とを、各層が所定の厚みとなるようにウ
エット・オン・ウエット方式により同時重層塗布し、上
層磁性層および下層磁性層の塗膜を形成する。即ち、上
層磁性層の塗膜は、下層磁性層の塗膜の湿潤時に塗設・
形成されることが好ましい。次いで、これらの塗膜に対
して磁場配向処理を行った後に乾燥処理を行い巻き取
る。この磁場配向処理および乾燥処理を、上述したの
方法に従い行うことで、上層磁性層および下層磁性層に
それぞれ含有される強磁性粉末の配向状態を好ましいも
のとすることができる。この後、カレンダー処理を行
う。更に、本発明の磁気記録媒体が磁気テープの場合に
は、支持体の反対側の面上にバックコート塗料を塗布し
所定温度で乾燥させてバックコート層を形成する。次い
で、40〜80℃下で6〜100時間エージング処理
し、幅広の磁気記録媒体原反を得る。そして、この原反
をその長手方向に沿って所定幅に裁断する。
【0048】以上、本発明の磁気記録媒体をその好まし
い実施形態に基づき説明したが、本発明は上記実施形態
に制限されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において
種々の変更が可能である。例えば本発明の磁気記録媒体
は、DVCテープや8mmビデオテープやDATテープ
などの画像音声記録用テープ、DLT、DDSテープ、
1/4インチデータカートリッジテープ、データ8mm
テープなどのデータ記録用テープ等の磁気テープとして
好適であるが、フレキシブルディスクのような磁気ディ
スク等の他の磁気記録媒体としても適用することもでき
る。
【0049】
【実施例】以下、実施例により、本発明を更に詳細に説
明する。しかしながら、本発明の範囲は斯かる実施例に
制限されるものではない。尚、以下の例中、「部」及び
「%」はそれぞれ「重量部」及び「重量%」を意味す
る。
【0050】実施例および比較例に先立ち、実施例およ
び比較例で用いた上層塗料および下層塗料の調製法を説
明する。塗料の調製 強磁性粉末等の粉末成分に、結合剤および溶剤の一部を
加えて、プラネタリーミキサーで予備分散した。得られ
た粉体状の予備分散物における(嵩密度/平均比重)の
値が0.13〜0.17となるように、この予備分散物
の固形分を調整した(配合組成により固形分は75〜9
3%の間で調整)。次に該予備分散物を強力な剪断を付
与できる固練り機(連続式二軸混練用押し出し装置)で
混練したあと、溶剤の一部を添加して固形分を20〜5
0%にし、サンドミルによる分散処理を行った。その
後、残余の溶剤を加え、塗料特性を調整し、その後絶対
濾過精度1μmの濾過フィルターを用いて濾過した。最
後に、濾過した塗料に潤滑剤および硬化剤を添加し、上
層塗料および下層塗料をそれぞれ調製した。これらの塗
料における固形分、(溶剤として加えたシクロヘキサノ
ンの重量/塩化ビニル系樹脂の重量)の値(上層塗料の
み)および各層の乾燥厚みを表1に示す。尚、予備分散
物の嵩密度及び粉末の平均比重は以下のようにして測定
した。
【0051】<予備分散物の嵩密度及び粉末の平均比重
の測定法>混練前の予備分散物を200mlのメスシリ
ンダーの標線まで投入し、軽く3回底をたたき、充填体
積V(ml)を読み取り、またこの予備分散物の重量M
(g)を測定した。嵩密度はM/Vにより求め、5回の
平均値とした。粉末の比重はJIS K5101に基づ
き、各粉末の比重を比重びんにより測定し、5回の平均
値を求めた。そして配合される粉末の平均比重は下記式
により求めた。尚、ここで言う粉末とは溶剤により溶解
しない磁性粉末、カーボンブラック、研磨材等の粉末を
意味する。
【0052】
【式1】
【0053】〔実施例1〕 〔I〕塗料の調製 上述の調製法に従い、下記配合の上層塗料および下層塗
料をそれぞれ得た。 <上層塗料> ・鉄を主成分とする針状強磁性金属磁性粉末 100部 (保磁力158kA/m、飽和磁化143Am2 /kg、平均長軸長0.11μ m、軸比6) ・α−アルミナ(粒径0.2μm) 9部 ・カーボンブラック(粒径50nm) 0.4部 ・硫酸塩基含有塩化ビニル系樹脂 10部 (硫酸塩基濃度3×10-4当量/g、GPC数平均分子量17000) ・スルホン酸塩基含有ポリウレタン樹脂 7部 (スルホン酸塩基濃度3×10-5当量/g、GPC数平均分子量22000) ・ステアリン酸 2部 ・2−エチルヘキシルオレート 1.5部 ・ポリイソシアネート系硬化剤(固形分75%) 4.4部 ・メチルエチルケトン 132部 ・トルエン 88部 ・シクロヘキサノン 210部
【0054】 <下層塗料> ・強磁性六方晶系フェライト粉末 60部 (六角板状バリウムフェライト、保磁力153kA/m、飽和磁化58Am2 / kg、BET比表面積36m2 /g、平均板径0.03μm、板状比5) ・針状のα−Fe23 40部 (長軸長0.10μm、軸比10、比表面積;48m2 /g) ・α−アルミナ(粒径0.2μm) 6部 ・カーボンブラック(粒径20nm) 2部 ・硫酸塩基含有塩化ビニル系樹脂 12部 (硫酸塩基濃度4×10-4当量/g、GPC数平均分子量20000) ・スルホン酸塩基含有ポリウレタン樹脂 8部 (スルホン酸塩基濃度4×10-5当量/g、GPC数平均分子量25000) ・ステアリン酸 4部 ・2−エチルヘキシルオレート 1.5部 ・ブチルステアレート 2部 ・ミリスチン酸 2部 ・ポリイソシアネート系硬化剤(固形分75%) 4部 ・メチルエチルケトン 90部 ・トルエン 60部 ・シクロヘキサノン 90部
【0055】〔II〕磁気記録媒体の製造 エクストルージョン型ダイコーターを用い、厚さ4.5
μmのPENフィルム上に上層塗料と下層塗料とを乾燥
厚みがそれぞれ表1に示す値となるように、塗工速度3
00m/minにてウエットオンウエット方式により同
時重層塗布を行い、上層磁性層および下層磁性層の塗膜
を形成した。塗膜が湿潤状態のうちに0.4Tの磁場強
度のソレノイド磁石中を通過させ水平方向に磁場配向を
かけ、その後60〜100℃にて乾燥処理を行った後、
巻き取った。次いで、ロール表面温度90℃、ロール線
圧3kN/cm、ライン速度150m/minの条件で
スーパーカレンダー処理を行った。更に、PENフィル
ム裏面上に下記配合のバックコート塗料を乾燥厚みが
0.5μmとなるように塗布速度200m/minで塗
布し、90℃にて乾燥処理を行った後巻き取った。その
後50℃にて16時間エージング処理し、更に8mm幅
にスリットして磁気テープを得た。
【0056】 <バックコート塗料> ・カーボンブラック(粒径28nm) 38部 ・カーボンブラック(粒径52nm) 2部 ・「ニッポラン2301」 50部 (商品名、日本ポリウレタン工業(株)製のポリウレタン、固形分40%) ・ニトロセルロース 20部 (Hercules Powder Co. 製の粘度表示1/2秒のもの) ・ポリイソシアネート系硬化剤(固形分75%) 4部 ・銅フタロシアニン 5部 ・ステアリン酸 2部 ・メチルエチルケトン 120部 ・トルエン 120部 ・シクロヘキサノン 120部
【0057】〔実施例2〕実施例1の下層塗料におい
て、針状のα−Fe2 3 を用いず、且つ強磁性六方晶
系フェライト粉末として表1記載の特性を有するものを
100部用いた。また、下層磁性層の厚みを表1に示す
通りとした。これ以外は実施例1と同様にして磁気テー
プを得た。
【0058】〔実施例3〕実施例1の下層塗料におい
て、強磁性六方晶系フェライト粉末の配合量を10部と
し、且つ針状のα−Fe2 3 の配合量を90部とする
以外は実施例1と同様にして磁気テープを得た。
【0059】〔実施例4及び5〕実施例1の下層塗料に
おいて、強磁性六方晶系フェライト粉末として表1記載
の特性を有するものを用いる以外は実施例1と同様にし
て磁気テープを得た。
【0060】〔実施例6〕実施例1の下層塗料におい
て、カーボンブラックの配合量を4部とし、スルホン酸
塩基含有ポリウレタン樹脂としてスルホン酸塩基濃度6
×10-5当量/g、GPC数平均分子量30000のも
のを用い、強磁性六方晶系フェライト粉末として表1記
載の特性を有するものを70部用い、且つ針状のα−F
2 3 の配合量を30部とした。また、下層磁性層の
厚みを表1に示す通りとした。これ以外は実施例1と同
様にして磁気テープを得た。
【0061】〔実施例7〕下層磁性層の厚みを表1に示
す通りとし、磁場配向を以下の方法に変更した以外は実
施例1と同様にして磁気テープを得た。即ち、同時重層
塗布により上層磁性層および下層磁性層の塗膜を形成
後、湿潤状態のうちに、垂直方向磁場強度0.2Tのソ
レノイド磁石中を通過させ、垂直方向に磁場配向をかけ
ながら、垂直磁場中および該ソレノイド磁石の出口以降
の位置で、塗布面と反対側の支持体面側から赤外線ラン
プにより下層塗膜の溶媒濃度が下層塗料の溶媒濃度の5
0%になるまで乾燥させ、次いで水平方向磁場強度0.
5Tのソレノイド磁石により水平方向に磁場配向をかけ
た。
【0062】〔実施例8〕実施例1の上層塗料におい
て、鉄を主成分とする針状強磁性金属磁性粉として、保
磁力188kA/m、飽和磁化147Am2 /kg、平
均長軸長0.065μm、BET比表面積61m2 /g
のものを用いた。また、実施例1の下層塗料において、
強磁性六方晶系フェライト粉末の配合量を50部とし、
且つ針状のα−Fe2 3 の配合量を50部とした。更
に、下層磁性層の厚みを表1に示す通りとした。これ以
外は実施例1と同様にして磁気テープを得た。
【0063】〔実施例9〕実施例8で用いた上層塗料の
予備分散物に対して、予め以下のような予備分散の前処
理工程を更に行った。即ち、上記針状強磁性金属粉末1
00部に対してメチルエチルケトン/トルエン/シクロ
ヘキサノン(6/6/1)混合溶剤5部を加え、25℃
環境下で5時間保持した後、予備分散工程に供した。更
に、磁気記録媒体の製造時において、磁場配向条件を以
下のようにして行った。即ち、塗膜が湿潤状態のうちに
0.3T及び0.2Tの磁場強度を有するソレノイド磁
石2組を組み合わせて水平方向に磁場配向をかけ、その
後30〜110℃にて乾燥処理を行った後、巻き取っ
た。上記以外は実施例8と同様にして磁気テープを得
た。
【0064】〔比較例1〕実施例1の下層塗料に代えて
下記配合のものを用い、下層磁性層の厚みを表1に示す
通りとする以外は実施例1と同様にして磁気テープを得
た。
【0065】 <下層塗料> ・針状のCo−FeOx粉末(1.4≦x≦1.5) 100部 (保磁力71kA/m、飽和磁化78Am2 /kg、平均長軸長0.15μm) ・カーボンブラック(粒径50nm) 0.4部 ・硫酸塩基含有塩化ビニル系樹脂 10部 (硫酸塩基濃度3×10-4当量/g、GPC数平均分子量17000) ・スルホン酸塩基含有ポリウレタン樹脂 7部 (スルホン酸塩基濃度3×10-5当量/g、GPC数平均分子量22000) ・ステアリン酸 2部 ・2−エチルヘキシルオレート 1.5部 ・ポリイソシアネート系硬化剤(固形分75%) 4.5部 ・メチルエチルケトン 70部 ・トルエン 40部 ・シクロヘキサノン 110部
【0066】〔比較例2〕実施例1の下層塗料におい
て、強磁性六方晶系フェライト粉末を用いず、且つ針状
のα−Fe2 3 の配合量を100部とする以外は実施
例1と同様にして磁気テープを得た。この磁気テープは
磁性/非磁性の重層構造である。
【0067】〔比較例3〕実施例1の下層塗料に含まれ
る強磁性六方晶系フェライト粉末を下記のものに代え、
その配合量を100部とし、且つ針状のα−Fe2 3
は配合しないで表1に示す乾燥厚みになるように単層塗
布した。それ以外は実施例1と同様にして磁気テープを
得た。 ・強磁性六方晶系フェライト粉末 六角板状バリウムフェライト(保磁力159kA/m、
飽和磁化57Am2/kg、BET比表面積37m2
g、平均板径0.035μm、板状比2.5)
【0068】〔比較例4〕上層塗料として実施例8と同
様のものを用い、また下層塗料としては比較例2と同様
のものを用いた。それ以外は、実施例1と同様にして磁
気テープを得た。
【0069】<性能評価>実施例および比較例で得られ
た磁気テープの性能を評価するために、表1に示す強磁
性粉末の平均長軸長および表2に示す評価項目について
それぞれ測定・評価した。測定、評価方法は以下の通り
である。
【0070】<1.表面粗さ>光学式表面粗さ計(Zy
go社製、型式Maxim・3D5700)により、フ
ィゾーレンズ40倍を使用し、Cylinder補正を
して5点測定し、その平均値を表面粗さ(Ra)とし
た。
【0071】<2.上下層磁性層の厚み>ミツトヨ製レ
ーザーホローゲージ測定子(LGH−110:分解能
0.01μm)を用いた。各厚み測定はそれぞれ10回
ずつ行い、10点の平均値を各測定での厚みとした。先
ず、磁気テープ全体について測定を行った(測定値D0
とする)。次にメチルエチルケトン(MEK)を含浸さ
せた綿棒にて磁気テープから上下層磁性層を除去し(こ
のとき反対の面にMEKが回り込まないように気をつけ
る)ベースフィルムを露出させた状態にし、同様に測定
を行った(測定値をt 1 とする)。磁気テープ全体の厚
みt0 からt1 引いて上下層磁性層全体の厚みtm とし
た(tm =t0 −t1 )。上層磁性層の厚みt(上)
は、下記のTEM観察で得られた長手方向縦断面の5万
倍写真の上下層磁性層の厚み比をノギスにて20点測定
し、その平均値から求めた上下層磁性層の厚み比と、段
差計により得られた上記tm から上下層各層の厚みt
(上)、t(下)を算出した。
【0072】<3.上層磁性層における強磁性粉末の平
均長軸長および平均傾きの測定>得られた磁気テープを
約0.1μmの厚さにダイヤモンドカッターでスライス
し、長手方向の縦断面を透過型電子顕微鏡にて観察し
た。任意の数ヵ所について3万倍で写真撮影を行い、こ
れを30万倍に拡大して焼き付け、上層磁性層における
強磁性粉末の平均長軸長および配向状態観察用のサンプ
ル写真とした(但し、比較例3のみ平均板径)。サンプ
ル写真1枚毎に、各強磁性粉末の長軸長と傾きを測定す
る。強磁性粉末の傾きは下層磁性層とベースフィルムと
の界面を基準面として測定を行う。ここでの傾きの角度
は、この基準面に対し強磁性粉末の磁化容易軸(全実施
例及び比較例1、2、4においては長軸方向、比較例3
においては板面と垂直な方向)として写る軸がなす角度
を絶対値(0〜90°)として求める。このとき、測定
する強磁性粉末が、研磨材近傍に存在しているものに偏
らないように注意する。一枚の写真に写った強磁性粉末
の長さと角度を集計し、その最大長さを求め、その長さ
の80%以上の長さを有する粒子を選出する。他のサン
プル写真でも写っている粒子について同様の作業を行
い、一つの磁気テープサンプルにつき100点の粒子を
選出する。選出された粒子100点の長さの加算平均
と、角度の加算平均を求め、前者を当該磁気テープの上
層磁性層における強磁性粉末の平均長軸長とし、後者を
平均傾きとする。なお、本発明では透過型電子顕微鏡と
して日立製作所(株)製II−7000を用い、加速電圧
は100kVで行った。
【0073】<4.磁気特性の測定>東英工業製の試料
振動型磁力計(型式VSM−P7−15PC)を用いて
最大印加磁場796kA/m(=10kOe)にて測定
し、反磁界補正は行わなかった。試料は、11mm径の
円板状に打ち抜いたものを用いた。VSMの校正は装置
が十分安定した後に同一形状のニッケル板を用いて行っ
た。尚、磁気テープの幅が11mm以下の場合には、こ
れらを隙間のないように非磁性の粘着テープでつなぎ合
わせ、11mm以上の幅とした後、同様に試料を打ち抜
いた。
【0074】<4.1 測定サンプルの作成>磁気テー
プの磁気特性を測定する場合は、磁気テープを上記の通
りに円板状に打ち抜いて測定した。上下層磁性層全体の
厚みは、上記のtm の値とした。下層磁性層を測定する
場合は、磁気テープの磁性層面を研磨することにより上
層磁性層を削り取り下層磁性層のみとして測定した。研
磨の方法は例えばダイヤモンド粉末等を用いて磁気テー
プをポリッシュする方法又は研磨テープを用いる方法の
何れかによった。上層磁性層が削り取られたことの確認
にはオージェ電子分光分析装置を用い、上層磁性層特有
の元素の有無にて確認した。磁気特性測定用のサンプル
片は、上層磁性層を除去し下層磁性層のみとなったとこ
ろで上記と同様に円板状に打ち抜いて作成した。このと
きの下層磁性層の厚みは、上記の<2.上下層磁性層の
厚み>の項に記載の方法(レーザーホローゲージ測定子
使用)で測定し、更に、水平方向の保磁力Hc(下)、
垂直方向の保磁力Hc⊥(下)、水平方向の飽和磁化M
s(下)、水平方向の残留磁化Mr(下)を測定し、こ
れらの値から水平方向の残留磁束密度Br(下)を算出
した。上層磁性層の磁気特性の測定は直接行わず、磁気
テープの磁気特性の測定値ならびに下層磁性層のみの磁
気特性の測定値および上下層の厚みから計算により求め
た。即ち、磁気テープ全体の磁気特性から下層磁性層の
磁気特性を差し引くことにより求めた。
【0075】<4.2 初期磁化曲線、磁化率曲線、χ
max の測定>上記形状に打ち抜いた磁気テープ片を交流
消磁し、サンプル片円板面の法線方向と平行に磁場がか
かるように試料をVSMの所定の位置に設置し、時定数
0.3秒、磁場掃引速度79.6kA/m/min(=
1kOe/min)で、印加磁場の上昇幅を3.98k
A/m(=50Oe)として796kA/m(=10k
Oe)まで連続的に上昇させた。印加磁場の上昇幅ごと
に、印加磁場および磁化をデータとしてコンピューター
に記録し、そのデータを元に、横軸に印加磁場、縦軸に
磁化をとり、各点をプロットすることにより初期磁化曲
線を得た。更に、このようにして得られた初期磁化曲線
のデータにおける磁化の値に関して、3.98kA/m
(=50Oe)ごとに差分をとり、この差分を磁場3.
98kA/m(=50Oe)及び上下層磁性層の全体積
で除することにより、各印加磁場での磁化率を求めた。
そして、横軸に印加磁場、縦軸に磁化率をとり、各点を
プロットすることにより磁化率曲線を得た。磁化率曲線
における最大磁化率の値をχmax とし、印加磁場8kA
/mでの磁化率の値をχ8 とした。χmax 及びχ8 はS
I単位系に変換する。
【0076】<4.3 保磁力、残留磁束密度>上記測
定サンプル片を水平方向に印加磁場がかかるようにVS
Mの所定の位置に設置した。測定条件は、時定数は0.
03秒、最大印加磁場は796kA/m(=10kO
e)、印加磁場掃引速度398kA/m/min(=5
kOe/min)であった。垂直方向の保磁力Hc⊥を
測定する場合は試料に印加する磁場を磁性層の面の法線
方向と平行に印加し、他の条件は水平方向と同条件にて
行う。保磁力は、VSMによる測定から得られるM−H
ループ(縦軸に磁化M、横軸に印加磁場Hとして各点を
プロットしたもの)でM=0となる2点のHの値の差の
絶対値を1/2にした値である。また、残留磁束密度
は、M−HループでH=0となる2点の残留磁化Mrの
値の差の絶対値を1/2にしたものを磁性層体積で除し
た値である。
【0077】<5.磁気テープの電磁変換出力およびC
/Nの測定>Hi−8用磁気ヘッド(ヘッドギャップ
0.2μm)を使用し、ドラムテスター法にて測定し
た。測定条件は、ドラム回転速度6m/s、記録信号1
4MHzの矩形波(λ=0.43μm)とし、記録電流
は同記録信号において各テープの最高出力が得られる電
流値とした。上記周波数において、信号発振器を用いて
磁気テープに信号を記録し、同一周波数における再生出
力値(8回平均)をスペクトラム・アナライザーから読
みとり、その値を磁気テープの出力値とした。また、1
4MHzの信号を記録し、同一周波数における再生出力
値(C)(8回平均)と、(C)の記録周波数±1MH
zにおける出力の平均値(N)(8回平均)との比をC
/Nとした。但し、実施例8、9及び比較例4において
は、記録信号を20MHzの矩形波として同様の測定を
行った。
【0078】
【表1】
【0079】
【表2】
【0080】表2に示す結果から明らかなように、実施
例の磁気テープ(本発明品)は、表面性が高く、比較例
の磁気テープに比して高周波領域(短波長領域)での出
力およびC/Nが高いことが判る。
【0081】
【発明の効果】以上、詳述した通り、本発明によれば、
生産性に優れ、表面性および電磁変換特性が良好な高記
録密度磁気記録媒体が得られる。特に、高周波領域(短
波長領域)での電磁変換特性に優れた高記録密度磁気記
録媒体が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(a)は、本発明の磁気記録媒体の磁化率
−印加磁場曲線であり、図1(b)は、従来の磁気記録
媒体の磁化率−印加磁場曲線である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 宮村 猛史 栃木県芳賀郡市貝町赤羽2606 花王株式 会社研究所内 (72)発明者 吉田 修 栃木県芳賀郡市貝町赤羽2606 花王株式 会社研究所内 (56)参考文献 特開 平9−265622(JP,A) 特開 平9−251634(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G11B 5/716

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 支持体上に、強磁性金属粉末を結合剤に
    分散させた塗料を塗設してなる最上層磁性層及びこれに
    隣接する下層磁性層が設けられた磁気記録媒体におい
    て、 上記最上層磁性層の平均乾燥厚みが0.03〜0.5μ
    mであり、該最上層磁性層に含まれる上記強磁性金属粉
    末が上記磁気記録媒体の水平方向に配向しており、 上記磁気記録媒体は、その水平方向の保磁力が120k
    A/m以上で、且つその垂直方向に外部磁場を印加した
    ときの最大磁化率χmax と、該垂直方向に8kA/mの
    外部磁場を印加したときの磁化率χ8 との比(χmax
    χ8 )が1.3以上である磁気記録媒体。
  2. 【請求項2】 上記磁気記録媒体の水平方向における上
    記下層磁性層の保磁力Hc(下)と、その垂直方向にお
    ける該下層磁性層の保磁力Hc⊥(下)とが下記関係式
    (1)を満たす請求項1記載の磁気記録媒体。 0.9≦Hc⊥(下)/Hc(下) (1)
  3. 【請求項3】 上記磁気記録媒体の垂直方向における上
    記下層磁性層の保磁力Hc⊥(下)〔kA/m〕と、該
    磁気記録媒体の最短記録波長λ〔μm〕とが下記関係式
    (2)を満たす請求項1又は2記載の磁気記録媒体。 190×λ1/5 −50≦Hc⊥(下)≦190×λ1/5 +50 (2)
  4. 【請求項4】 上記磁気記録媒体の水平方向における上
    記下層磁性層の残留磁束密度Br(下)〔T(テス
    ラ)〕と、該下層磁性層の厚みt〔μm〕とが下記関係
    式(3)を満たす請求項1〜3の何れかに記載の磁気記
    録媒体。 0.02≦Br(下)×t≦0.3 (3)
  5. 【請求項5】 上記磁気記録媒体の垂直方向における上
    記下層磁性層の保磁力Hc⊥(下)と、その水平方向に
    おける上記最上層磁性層の保磁力Hc(上)とが下記関
    係式(4)を満たし、且つ上記磁気記録媒体の水平方向
    における上記最上層磁性層の保磁力Hc(上)が130
    kA/m以上である請求項1〜4の何れかに記載の磁気
    記録媒体。 0.6≦Hc⊥(下)/Hc(上)≦1.7 (4)
  6. 【請求項6】 上記強磁性金属粉末の平均長軸長が0.
    10μm以下である請求項1〜5の何れかに記載の磁気
    記録媒体。
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