JP3138316B2 - 水溶性グラフト重合体 - Google Patents

水溶性グラフト重合体

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JP3138316B2 JP04058763A JP5876392A JP3138316B2 JP 3138316 B2 JP3138316 B2 JP 3138316B2 JP 04058763 A JP04058763 A JP 04058763A JP 5876392 A JP5876392 A JP 5876392A JP 3138316 B2 JP3138316 B2 JP 3138316B2
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    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61LMETHODS OR APPARATUS FOR STERILISING MATERIALS OR OBJECTS IN GENERAL; DISINFECTION, STERILISATION OR DEODORISATION OF AIR; CHEMICAL ASPECTS OF BANDAGES, DRESSINGS, ABSORBENT PADS OR SURGICAL ARTICLES; MATERIALS FOR BANDAGES, DRESSINGS, ABSORBENT PADS OR SURGICAL ARTICLES
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    • A61L33/06Use of macromolecular materials
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    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C08ORGANIC MACROMOLECULAR COMPOUNDS; THEIR PREPARATION OR CHEMICAL WORKING-UP; COMPOSITIONS BASED THEREON
    • C08FMACROMOLECULAR COMPOUNDS OBTAINED BY REACTIONS ONLY INVOLVING CARBON-TO-CARBON UNSATURATED BONDS
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、優れた血液適合性を有
する水溶性セルロース誘導体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】現在、慢性腎不全患者の延命法として血
液透析、血液濾過などの血液浄化法が用いられており、
我国における血液浄化法適用患者は10万人を超える。血
液浄化の原理は血液と透析液とを薄膜を介して接触さ
せ、血液中の老廃物や代謝産物を透析液中に拡散除去
し、更に余剰の水分を圧力差を利用して取り除くことに
よる。血液浄化を行う場合には血液浄化器が用いられて
いる。これは中空糸を束ねた血液回路がハウジングに収
められているもので、中空糸の内部を血液が、外側を透
析液が流れる構造となっている。従来、血液浄化を行う
場合には血液浄化器内での血液凝固反応を抑制するため
にヘパリンに代表される血液抗凝固剤の連続投与が行わ
れてきた。しかしながら、血液浄化器の溶質除去性能が
改良され、20年に及ぼうとする長期延命が可能になって
きた現在、ヘパリンを使用する問題が次々と指摘されて
きている。特に、ヘパリンの長期間投与による脂質代謝
異常などの肝臓障害、出血時間の延長あるいはアレルギ
ー反応は、患者に対する副作用として認められている。
このような観点から、血液浄化療法の際に抗凝固剤の使
用量を低減させるか、あるいは全く使用しなくても血液
凝固を引き起こさない血液浄化器の開発が急務であっ
た。更に、抗血栓性の血液浄化器は、装置全体のポータ
ブル化も可能にし、在宅治療に大きな進展が期待できる
ため一週間に2〜3日間、5時間程度病院に拘束されて
いる患者の社会復帰を促すことになる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、血液適合性
とセルロースに対する親和性の双方を併せ持つ新規な高
分子材料を提供することを目的とする。これまでセルロ
ース系中空糸の血液適合性を改善する試みはセルロース
膜素材の有する補体活性化の抑制に注目して行われてお
り、ポリエチレンオキシドのような親水性高分子を表面
に共有結合したり、第3級アミノ基を有する高分子で表
面を処理する方法などが報告されている。しかしなが
ら、これらの中空糸では血液凝固を抑制することが難し
く、抗凝固剤の投与を余儀なくされた。本発明者らは血
液適合性高分子について鋭意開発努力を重ね、更にセル
ロース中空糸に対して親和性を有する性質を組み込むこ
とによりセルロース表面の血液適合性を格段に改善しえ
る高分子を合成することに成功し、本発明を完成するに
至った。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明の水溶性セルロー
ス誘導体は、水溶性セルロースに2−メタクリロイルオ
キシエチルホスホリルコリン (以下「MPC」とい
う。) をグラフト重合させることによって得ることがで
きる物質であって、次式 (I) :
【0005】
【化2】 (式中、nは正の整数を表す。)で示される構造単位を含
む水溶性セルロース誘導体である。本発明の水溶性セル
ロース誘導体としては、ゲルパーミエーションクロマト
グラフィーによる分子量がポリエチレングリコール換算
で1.0×104〜1.0×106であるものが好ましい。分子量
が前記下限未満であると安定な被覆ができず、前記上限
より大きいと溶解性が悪くなる。
【0006】本発明の水溶性セルロース誘導体におい
て、グラフトされたMPC量は、好ましくは5〜70重量
%である。5重量%未満では抗血栓性が乏しくなり、70
重量%を超えると基材との親和性が悪くなる。本発明の
水溶性セルロース誘導体は、例えば、水溶性セルロース
にMPCをグラフト重合させることによって得ることが
できる。
【0007】ここで用いる水溶性セルロースは、例え
ば、セルロース微結晶を無水酢酸−硫酸でアセチル化と
同時に加水分解し、次いでアルカリ存在下で脱アセチル
化することにより合成できる (セルロースハンドブッ
ク、祖父江寛編(朝倉書店、1958))。また、MPCは、
例えば、公知の方法で2−ヒドロキシエチルメタクリレ
ートと2−クロロ−2−オキソ−1, 3, 2−ジオキサ
ホスホランとの縮合物をアセトニトリル中60℃にて15時
間トリメチルアミンと反応させることにより合成できる
(Polym.J., 22巻 355〜360 (1990)) 。
【0008】MPCの水溶性セルロースへのグラフト重
合反応は、例えば、水溶液系で水溶性セルロース上にラ
ジカルを生成するセリウムイオンや過酸化水素のような
過酸化物を開始剤を用いて行うことができる。反応温度
はセルロースの分解、MPCの単独重合を抑制し、セル
ロース上にラジカルを生成させるために、通常30〜65
℃、好ましくは40℃〜50℃である。重合時間は、通常30
分〜3時間で、MPCのグラフト重合収率を考慮すると
1〜2時間が望ましい。MPCの使用割合は、セルロー
スに対して10〜1000倍(重量比)とすることが望まし
く、これより少ないと充分なグラフト量が得られず、多
いと単独重合体の生成量が著しく多くなる。
【0009】
【実施例】以下、実施例、参考例及び試験例により本発
明を更に詳細に説明するが、これらは本発明の範囲を何
ら制限するものではない。
【0010】
【実施例1】 MPCのセルロースへのグラフト化反応 セルロース微粉末10gを無水酢酸38mlと氷酢酸38mlに分
散させ、これに濃硫酸4mlを加えた。混合物を50℃にて
1時間攪拌すると、透明の液体となった。これをアセト
ン中に滴下して再沈澱させ、濾過することにより低分子
化合物を除去した後、真空乾燥してアセチルセルロース
9.5gを得た。このアセチルセルロース2.5gに1N炭
酸ナトリウム水溶液50mlと3N水酸化ナトリウム水溶液
100ml を加え、攪拌して脱アセチル化した。反応液に塩
酸を加えて中和し、その溶液を透析膜内に入れ水中で3
日間透析して低分子物質を除去し、水溶性セルロース水
溶液を得た。溶液の一部を取り、加熱乾燥してセルロー
スの重量濃度を決定し、水により希釈して0.5重量%の
溶液とした。この溶液10mlに硝酸セリウムアンモニウム
0.17g及び0.1N硝酸3mlを加えた。更にMPC 0.9g
を加えた溶液をアルゴンで10分間置換した。容器に密栓
をし40℃にて1時間攪拌してグラフト重合を行った。反
応終了後、透析膜内に入れ、水に対して透析し、MPC
グラフトセルロースを精製した。セルロースにグラフト
されたMPC量はリンの定量により求めた結果、10.1重
量%であった。またゲルパーミエーションクロマトグラ
フィーにより求めた分子量はポリエチレングリコール換
算で1.2×105 であった。
【0011】
【実施例2〜5】用いたMPCの量以外は実施例1と同
様に反応を行い、MPCグラフトセルロースを得た。結
果を表1に示す。 表1. 水溶性MPCグラフトセルロースの合成結果 MPC グラフトされた 分子量 (g) MPCの重量% (×105 ) 実施例2 1.2 11.3 1.4 〃 3 1.8 17.4 1.3 〃 4 2.4 23.8 1.2 〃 5 3.0 37.5 1.4 〔参考例1〜4〕キュプラアンモニウム法により製造さ
れた再生セルロース製中空糸 (内径200μm、長さ10c
m) に実施例2〜5で得たポリマー水溶液を流速5ml/
分で通過させた。内部にポリマー水溶液を満たした状態
で10分間放置後、溶液を空気により押し出し、そのまま
ただちに室温にて3時間真空乾燥した。被覆されたポリ
マーの量を表2に示す。
【0012】 表2. セルロース中空糸の0.5重量%MPCグラフトセルロース 水溶液による被覆結果 使用したポリマー 被覆されたポリマー量 μg/cm2 参考例1 実施例2 8.6 〃 2 〃 3 6.3 〃 3 〃 4 12.6 〃 4 〃 5 10.4 〔参考例5〜7〕ポリマー濃度を1重量%とし、ポリマ
ー溶液の中空糸への通過速度を10ml/分にした以外は参
考例1と同様に中空糸へのポリマーの被覆を行った。被
覆されたポリマーの量を表3に示す。
【0013】 表3. セルロース中空糸の1.0重量%MPCグラフトセルロース 水溶液による被覆結果 使用したポリマー 被覆されたポリマー量 μg/cm2 参考例5 実施例1 8.9 〃 6 〃 3 10.2 〃 7 〃 5 12.7 〔試験例1〜6〕 血液適合性の評価 セルロース製中空糸を480本束ねたモジュール (総膜面
積0.1m2 ) を用いて、家兎の頸動脈からクエン酸ナト
リウム (0.38%) を抗凝固剤として採取した新鮮血を流
速0.5ml/分で1時間通過させた。その後、生理食塩水
で中空糸内部をリンスし、最後に1.25%のグルタルアル
デヒドを含む生理食塩水を満たして2時間放置した。内
部を純水で置換し凍結乾燥した。金蒸着のあと、走査型
電子顕微鏡 (SEM) で中空糸内面を観察し、粘着して
いる血小板数を計測した。結果を表4に示す。また、試
験例4及び比較例についてのSEM写真をそれぞれ図1
及び図2に示す。
【0014】 表4. MPCグラフトセルロース中空糸の血小板粘着実験結果 用いた中空糸 血小板粘着数 個/mm2 試験例1 参考例1 0 〃 2 〃 3 0 〃 3 〃 6 0 〃 4 〃 7 0 比較例 未処理のセルロース中空糸 7.98×104 セルロース製中空糸を480本束ねたモジュールを家兎の
頸動静脈間に形成した血液回路に接続し、血流速が2ml
/分になるように調節した。抗血液凝固剤を投与しない
状態で血液が中空糸内で凝固するまでの時間を計測し
た。結果を表5に示す。実験終了後、中空糸の内面を前
記と同じ操作によりSEMで観察した。試験例6及び比
較例についてのSEM写真をそれぞれ図3及び図4に示
す。
【0015】 表5. MPCグラフトセルロース中空糸の全血凝血時間 用いた中空糸 凝固時間 試験例5 参考例4 >60分 〃 6 〃 7 >60分 比較例 未処理のセルロース中空糸 40分 〔試験例7〜9〕 物質透過性の測定 尿素及びクレアチニンの透析性能をそれぞれ測定した。
即ち、尿素の場合は200mg/dlの水溶液を調製し、この
溶液を60分間中空糸内を通過させた。モジュール内の中
空糸の外側に30mlの純粋を循環させ、中空糸内から透過
してきた尿素量を求めた。クレアチニンの場合は26mg/
dlの溶液を用い、尿素の場合と同様の操作で透過量を算
出した。結果を表6に示す。
【0016】 表6. MPCグラフトセルロース中空糸の溶質透過実験結果 用いた中空糸 透過量(mg) 尿 素 クレアチニン 試験例7 参考例3 9.8 0.68 〃 8 〃 4 8.7 0.59 〃 9 〃 7 9.5 0.63 比較例 未処理のセルロース中空糸 10.8 0.72
【0017】
【発明の効果】本発明の水溶性セルロース誘導体は、血
液適合性とセルロースに対する親和性の双方を併せ持
ち、その水溶液をセルロース系中空糸の内側を通過さ
せ、次いで室温で真空乾燥するだけで安定な被覆が可能
である。
【図面の簡単な説明】
【図1】未処理のセルロース中空糸内を60分間血小板多
血漿を通過させた後の内面の走査型電子顕微鏡写真であ
る。
【図2】本発明の水溶性セルロース誘導体で被覆された
セルロース中空糸内を60分間血小板多血漿を通過させた
後の内面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図3】未処理のセルロース中空糸内を全血を通過させ
た後の内面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図4】本発明の水溶性セルロース誘導体で被覆された
セルロース中空糸内を全血を通過させた後の内面の走査
型電子顕微鏡写真である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭61−45775(JP,A) 特開 平1−195863(JP,A) BIO INDUSTRY Vol. 8 No.6 p.412−p.420、 (1991−6−1発行)、編集発行 株式 会社シーエムシー (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08B 15/06 CA(STN)

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 水溶性セルロースに2−メタクリロイル
    オキシエチルホスホリルコリンをグラフト重合させるこ
    とによって得ることができる物質であって、次式 (I)
    : 【化1】 (式中、nは正の整数を表す。)で示される構造単位を含
    む水溶性セルロース誘導体。
  2. 【請求項2】 ゲルパーミエーションクロマトグラフィ
    ーによる分子量がポリエチレングリコール換算で1.0
    ×104〜1.0×106である請求項1記載の水溶性セ
    ルロース誘導体。
  3. 【請求項3】 グラフトされた2−メタクリロイルオキ
    シエチルホスホリルコリンの量が5〜70重量%である
    請求項1記載の水溶性セルロース誘導体。
  4. 【請求項4】 請求項1〜3のいずれか1項に記載の水
    溶性セルロース誘導体の水溶液をセルロース系中空糸の
    内側を通過させ、次いで乾燥させることを特徴とするセ
    ルロース中空糸の被覆方法。
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