JP3404514B2 - 抗血栓性再生セルロース系膜 - Google Patents

抗血栓性再生セルロース系膜

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JP3404514B2 JP04651994A JP4651994A JP3404514B2 JP 3404514 B2 JP3404514 B2 JP 3404514B2 JP 04651994 A JP04651994 A JP 04651994A JP 4651994 A JP4651994 A JP 4651994A JP 3404514 B2 JP3404514 B2 JP 3404514B2
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正彦 山下
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、人工腎臓に用いられる
抗血栓性が改善された再生セルロース系膜に関する。
【0002】
【従来の技術】現在、慢性腎不全患者の延命法として血
液透析、血液ろ過などの血液浄化法が用いられており、
我が国における血液浄化法適用患者は10万人を超え
る。血液浄化の原理は、血液と透析液とを膜を介して接
触させ、血液中の老廃物や代謝産物を透析液中に拡散除
去し、さらに余剰の水分を圧力差を利用して取り除くこ
とによるものである。
【0003】周知のように、特に人工透析療法におい
て、再生セルロース膜、とりわけ銅アンモニウム法再生
セルロース膜は広く用いられ、透析装置や透析技術の進
歩と共に、腎不全患者の延命、社会復帰に大きな役割を
果たしている。これは、再生セルロース膜が優れた透析
性能や機械的強度を有すると共に、長年の実績に裏づけ
られた高い安全性を有しているからに他ならない。
【0004】しかしながら、透析療法の進歩にもかかわ
らず、透析に伴う種々の問題がまだ未解決で残されてい
る。その1つに、抗凝固剤の長期大量投与のために生じ
ると考えられる種々の副作用の問題がある。従来、人工
透析を行なう場合には、人工透析器内での血液凝固反応
を抑制するためにヘパリンに代表される抗血液凝固剤の
連続投与が行なわれてきた。しかしながら、人工透析器
の溶質除去性能が改良され、20年に及ぼうとする長期
延命が可能になってきた現在、ヘパリンを使用すること
による問題が次々と指摘されてきている。
【0005】特に、ヘパリンの長期間投与による脂質代
謝異常などの肝臓障害、出血時間の延長或いはアレルギ
ー反応は、患者に対する副作用として認められている。
このような観点から、人工透析療法の際に抗凝固剤の使
用量を低減させるか或いは全く使用しなくても血液凝固
を引き起こさない人工透析器の開発が急務であった。
【0006】さらに、抗血栓性の人工透析器は、装置全
体のポータブル化も可能にし、在宅医療に大きな進展が
期待できるために、一週間に2〜3日間、5時間程度病
院に拘束されている患者の社会復帰を促すことになる。
合成高分子からなる膜の中に、抗血栓性が優れていると
提案されているものもあるが、合成高分子からなる膜で
は、機械的強度が弱くピンホールが発生し易いこと、耐
熱性が十分でないため滅菌法が限定されること、及び性
能のバランス、即ち透水量と物質透過のバランスが悪
く、その使用方法が限定されるといった欠点がある。
【0007】一方、再生セルロース膜の他の優れた性能
を損なわず、抗血栓性を改善する方法が提案されてい
る。例えば、膜表面をヘパリン化することにより抗血栓
性を付与する方法が特開昭51−194号公報で提案さ
れているが、十分な効果が得られず、又コストも割高に
なるため実用化されていない。
【0008】これまで再生セルロース膜を改善する試み
は、主に再生セルロース膜で血液透析を行なった場合の
一過性の白血球減少や、補体活性化の抑制に注目して行
なわれており、第3級アミノ基を有する高分子を表面に
固定したり、ポリエチレンオキシド鎖のような親水性高
分子鎖を表面に共有結合したりする方法なども報告され
ているが、血液凝固の抑制については不十分であった。
【0009】ところで、抗血栓性材料を得るために、リ
ン脂質極性基を用いる試みもあり、例えば、特開昭54
−63025号公報には、2ーメタクリロイルオキシエ
チルホスホリルコリン(MPC)が提案されている。リ
ン脂質極性基であるホスホリルコリン基を有する高分子
が血液凝固を有効に抑制するのは、この高分子表面が生
体膜に類似しており、表面に血漿タンパク質が吸着され
ず、血小板の粘着、活性化などが誘起されないためであ
ると考えられている〔生体材料、8,231−237
(1990),J.Biomed.Mater.Re
s.,25,1397−1407(1991)〕。
【0010】特開平3−39309号公報に開示されて
いるように、重合可能なこの単量体とメタクリル酸エス
テルやスチレンとの共重合体の抗血栓性は極めて優れて
おり、再生セルロース系膜にこの共重合体を固定する方
法も考えられる。固定方法の1つとしてコーティング法
があるが、再生セルロース系膜のように親水的な基材に
対して表面処理のために異なる高分子をコーティングす
ることは、処理高分子の脱落、溶出を招くなど問題が多
い。
【0011】又、特開平5−220218号公報には、
再生セルロース系膜に、MPCをグラフトさせた水溶性
セルロースを固定させる方法が開示されている。この方
法では、処理高分子の脱落、溶出の問題はないが、中空
糸膜をモジュールに組み込んだ後に固定処理を行わなけ
ればならず、生産性に問題がある。
【0012】一方、基材に対して高分子鎖を反応させた
り、グラフトさせたりする方法は脱落、溶出を抑えると
いう観点からは有効で、公知の技術として、例えばMP
Cをセルロース膜にグラフト重合させる技術(BIO
INDUSTRY,8(6),412−420(199
1))がある。
【0013】しかし、この方法は重合時にセルロース膜
を無酸素雰囲気下に置かなければならないことや、重合
開始剤として用いるセリウムイオンをセルロース膜から
除去しなければならないことのため、反応操作が非常に
煩雑になる。又、MPCには拡散性があり、ポアの内部
まで入りこんで膜全体に反応が起こるため、膜の透過性
能が低下したり、セリウムイオンにより膜が損傷を受
け、機械的強度が低下したり、反応が不均一に進行し
て、血小板の粘着抑制にばらつきが生じたりする問題が
残される。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上記
従来の技術の欠点を克服し、抗血栓性を改善させた再生
セルロース系膜を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、生体安全
性、生体親和性、経済性、化学反応性などを考慮して、
抗血栓性を有し、かつセルロース膜に大きな形態変化を
起こさせない溶媒に可溶で、セルロース膜表面の水酸基
との結合が可能な新規な高分子について種々検討を重ね
た結果、本発明を完成するに至った。
【0016】即ち、本発明は; 再生セルロースから
なる高分子膜に、2−メタクリロイルオキシエチルホス
ホリルコリン、カルボキシル基を有する単量体及びその
他の単量体の共重合体である分子量1000〜100万
の高分子酸がエステル結合している、抗血栓性再生セル
ロース系膜を提供する。また、 高分子酸が、2−メ
タクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、メタクリ
ル酸アルキルエステル及びカルボキシル基を有する単量
体の共重合体である点にも特徴を有する。また、 高
分子酸が、10〜50モル%の2−メタクリロイルオキ
シエチルホスホリルコリン、35〜89.9モル%のメ
タクリル酸アルキルエステル、及び0.1〜15モル%
のカルボキシル基を有する単量体の共重合体である点に
も特徴を有する。
【0017】以下、本発明を詳細に説明する。本発明で
使用する再生セルロースとは、天然セルロースを一旦化
学的或いは物理的に変化させた後再生したものであっ
て、例えば、銅アンモニウム法セルロース、ビスコース
レーヨン、セルロースエステルをけん化したもの等が含
まれるが、透析性能及び長年の実績に裏付けられた高い
安全性等から銅アンモニウム法再生セルロースが好んで
用いられる。
【0018】再生セルロースの形状は、平膜または中空
糸膜等何れの形状に成型されたものも用いることができ
るが、中空糸膜が好ましい。例えば、特開昭50−40
168号公報及び特開昭59−204912号公報に開
示されているような、膜厚が数μm〜60μmであり、
外径が10μm〜数百μmの横断面を有する中空糸膜等
が用いられる。
【0019】高分子酸としては、2−メタクリロイルオ
キシエチルホスホリルコリン(MPC)、カルボキシル
基を有する単量体及びその他の単量体との共重合体が用
いられる。該共重合体は、高分子酸の溶解性の点から、
タクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−ヘキシル、
メタクリル酸オクチル、メタクリル酸2−(エチルヘキ
シル)、メタクリル酸シクロヘキシル等のメタクリル酸
アルキルエステルを含むことが好ましい。すなわち、メ
タクリル酸アルキルエステルは、アルキル基の炭素数が
4〜18、特に6〜12のメタクリル酸アルキルエステ
ルであることが好ましい。
【0020】該共重合体は、セルロース膜と反応させて
エステル結合を形成させるためにカルボキシル基を有
する単量体を用いることが必要である具体的には、M
PCとメタクリル酸、アクリル酸等のカルボキシル基を
有する単量体を共重合したものでも良いし、MPCをカ
ルボキシル基を有する開始剤を用いて重合して得られ
、末端にカルボキシル基を有する共重合体でも良い。
さらに、MPCとその他の単量体とを共重合したのち、
官能基変換により、カルボキシル基を導入したものでも
良い。反応性や、合成の容易さから、MPCにカルボキ
シル基を有する単量体を共重合したものが好ましい。
【0021】従って、高分子酸としては、2−メタクリ
ロイルオキシエチルホスホリルコリン、メタクリル酸ア
ルキルエステル、及びカルボキシル基を有する単量体
の共重合体が好ましい。更に、抗血栓性及び溶解性の点
から、10〜50モル%、好ましくは20〜40モル%
の2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、
35〜89.9モル%、好ましくは48〜77モル%の
メタクリル酸アルキルエステル、及び0.1〜15モル
%、好ましくは3〜12モル%のカルボキシル基を有す
る単量体の共重合体であることが好ましい。
【0022】共重合の様式は、ランダム共重合、ブロッ
ク共重合、グラフト共重合等が可能であるが、セルロー
ス膜に対する反応の均一性の点から、ランダム共重合体
が好ましい。高分子酸の分子量は、反応性の点から、1
000〜100万が採用され、2万〜50万が好まし
。再生セルロース膜の表面へのエステル結合は、膜表
面に存在する水酸基とのエステル化反応によって行わ
れ、公知の低分子のアルコールと低分子のカルボン酸又
はその酸の官能性誘導体との反応が適用できる。
【0023】エステル結合は、使用時に高分子が脱落し
なければよく、高分子酸中のカルボキシル基の1ヶ所以
上がセルロース膜にエステル結合していれば良い。本発
明では、固定された高分子酸量は1〜100μg/cm
2 の範囲であることが好ましく、10〜70μg/cm
2 の範囲が特に好ましい。なお、エステル結合により固
定された高分子酸量は、高分子酸及び高分子酸を固定し
た再生セルロース膜を各々過塩素酸で分解して無機リン
の定量を行うことにより求められる。
【0024】ここで、固定された高分子酸の2−メタク
リロイルオキシエチルホスホリルコリンのうちには、再
生セルロース膜の膜表面に突出せず、膜内部にもぐり込
んでいるものもあると考えられ、これらは膜の抗血栓化
への寄与が低いと考えられる。すなわち、抗血栓性に関
しては、再生セルロース系膜の膜表面における2−メタ
クリロイルオキシエチルホスホリルコリンの量も重要で
ある。
【0025】本発明では、膜表面をESCAで測定し、
炭素とリンの原子数百分率を求めれば、次式(1)によ
り、再生セルロース膜の膜表面における、2−メタクリ
ロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)のセル
ロースのグルコース単位に対するモル分率R(モル%)
が得られる。
【0026】
【数1】 R=p/〔p+(c−11p)/6〕 ・・・(1) c:炭素の原子数百分率(モル%) p:リンの原子数百分率(モル%) MPC=C1122NO6 P グルコース単位=C6 105 Rは、10〜80モル%の範囲であることが好ましく、
25〜80モル%の範囲であることが、特に好ましい。
【0027】
【実施例】次に、実施例により本発明の内容をさらに詳
細に述べるが、これらは本発明の範囲を制限しない。な
お、以下の実施例中に記載されている測定項目は、各々
次の方法で測定したものである。 (1)高分子酸中の単量体組成(モル%) (1−1)MPC含量(モル%) 高分子酸8.0mgを試験管に入れた。これに市販の過
塩素酸(70%)を260μl加えて180℃にて20
分間加熱した。冷却後、蒸留水1.90ml、1.25
重量%モリブデン酸アンモニウム0.40ml、及び5
重量%L−アスコルビン酸0.40mlを加え、さらに
100℃にて5分間加熱した。青色に発色した溶液の吸
光度(797nm)を測定し、リン酸水素ナトリウムを
用いた検量線により、リンを定量した。この値から、高
分子酸中のリンの含有量を求め、これより高分子酸中の
MPC含量(モル%)を求めた。
【0028】(1−2)メタクリル酸含量(モル%) 高分子酸0.1gを含む高分子酸の塩化メチレン溶液を
採取し、カルボキシル基のモル数の約3倍の0.01N
水酸化ナトリウム水溶液を加え、一晩撹拌反応させた。
その後、pHメーターを用い、0.01N塩酸で逆滴定
を行った。この値から、高分子酸中のメタクリル酸含量
(モル%)を求めた。
【0029】(2)セルロース膜にエステル結合した高
分子酸量 高分子酸を固定したセルロース膜約10mgを細断して
試験管に入れた。これについて(1−1)と同様にして
リンの定量を行い、この値と高分子酸中のMPC含量と
からセルロース膜面積当たりの高分子酸重量(単位μg
/cm2 )を求めた。
【0030】(3)膜表面上に存在するMPCのモル分
率 高分子酸を反応させたセルロース膜のよく乾燥させた膜
表面をESCA〔ESCA−750(島津社製)〕で測
定し、炭素とリンの原子数百分率を求め、次式(1)に
より、再生セルロース膜の膜表面における、MPCのセ
ルロースのグルコース単位に対するモル分率〔R(モル
%)〕を得た。 R=p/〔p+(c−11p)/6〕 ・・・(1) c:炭素の原子数百分率(モル%) p:リンの原子数百分率(モル%) MPC=C1122NO6 P グルコース単位=C6 105
【0031】(4)補体消費率 フィルムを2.5×2.5mm2の細片としポリエチレ
ン管に入れ、これにGVバッファーで4倍に希釈したモ
ルモット補体(コーディス・ラボ社製)200μlを加
え、37℃で1時間撹拌しながらインキュベートした。
補体価は、マイヤー変法(エム・エム・マイヤー(M.
M.Mayer):イムノケミストリー(Immuno
chemistry)第2版、第133頁、シー・シー
・トーマス(C.C.Thomas)出版社、1961
年、参照)によって求めた。すなわち補体の50%溶血
価(CH50値)を求め、コントロールに対する補体消
費率を算出した。
【0032】高分子酸の合成: (実施例1) ガラス製重合用アンプルにMPC8.88g、メタクリ
ル酸(MA)0.35g、2ー(エチルヘキシル)メタ
クリレート(EHMA)17.16g、及び重合開始剤
として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIB
N)97.8mgを入れた。溶媒としてエタノール12
0mlを加えた後、溶液中にアルゴンガスを吹き込み酸
素を除去した。アンプルを溶封し、これを60℃のオイ
ルバスに入れて3時間加熱重合させた。冷却後、反応混
合液をジエチルエーテル中に滴下し、共重合体を沈澱さ
せ、撹拌洗浄した後、回収して真空乾燥した。その後、
塩化メチレンに溶解させ、14.9wt%溶液とした。
共重合体中のモノマーのモル分率は、MPC/MA/E
HMA=25/3/72であった。
【0033】(実施例2) 重合用アンプルにMPC2.21g、MA77mg、E
HMA4.28g、及びAIBN25mgを入れ、エタ
ノールを加え総体積を30mlとした。次に、重合用ア
ンプルをアルゴン置換後、溶封しオイルバス中60℃で
3時間加熱重合させた。次に冷却して反応を停止させ、
ジエチルエーテル中に反応混合物を滴下し、共重合体を
沈澱させ60分以上撹拌洗浄し、濾別後真空乾燥した。
その後、塩化メチレンに溶解させ、1.0wt%溶液と
した。共重合体中のモノマーのモル分率は、MPC/M
A/EHMA=30/12/58であった。分子量を、
クロロホルムを溶離液としたゲルパーミエーションクロ
マトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン標準換
算にて求めると7.7万であった。
【0034】(実施例3) 重合用アンプルにMPC2.66g、MA77mg、E
HMA3.98g、及びAIBN25mgを入れ、エタ
ノールを加え総体積を30mlとした。以下、実施例2
と同様にして共重合体の1.0wt%塩化メチレン溶液
を得た。共重合体中のモノマーのモル分率は、MPC/
MA/EHMA=36/12/52であり、分子量は1
2.3万であった。
【0035】抗血栓性再生セルロース系膜の製造: (実施例4) 実施例1で得られた高分子酸溶液0.68g、ジシクロ
ヘキシルカルボジイミド1.91g、及び4−(ジメチ
ルアミノ)ピリジン1.5mgに、脱水した塩化メチレ
ン100mlを加えて溶解し、予めアセトンに浸漬させ
た後風乾させたセルロースフィルム(10cm×10c
m)を24時間浸漬させた。メタノールに浸漬させて洗
浄(10分×3回)した後、風乾した。このフィルムに
固定された高分子酸量は、1.2μg/cm2 であり、
膜表面上のMPCのモル分率は33.7モル%であり、
補体消費率は、17%であった。
【0036】一方、比較として未処理フィルムの補体消
費率も測定したが、補体消費率は、47%であった。こ
の結果より、本発明によれば、補体の活性化が大幅に抑
制されることがわかる。
【0037】(実施例5〜6) 実施例2〜3で得られた高分子酸の1.0wt%塩化メ
チレン溶液10gにカルボキシル基の100倍モルのジ
シクロヘキシルカルボジイミドを加えた。この溶液に直
径15mmの円形のセルロース膜を浸漬させ、一晩反応
させた。実施例2の高分子酸を用いて得たセルロ−ス膜
において、固定された高分子酸の量は47μg/c
2 、膜表面上のMPCのモル分率は46.6モル%で
あった。また、実施例3の高分子酸を用いて得たセルロ
−ス膜において、固定された高分子酸の量は42μg/
cm2 、膜表面上のMPCのモル分率は41.8モル%
であった。
【0038】尿素による溶質透過性実験: (実施例7) 実施例5で得られたフィルムを図1のような装置にセッ
トし、蒸留水で溶解した2000mg/lの尿素水溶液
と蒸留水を60mlずつ同時に各ガラスセルに入れて2
0分おきに蒸留水側のセルから0.5ml採取して、2
時間の透過性実験を行った。尿素の定量は、検体0.0
2mlを採取し、尿素窒素B−テストワコー(ウレアー
ゼ・インドフェノール法)〔和光純薬工業(株)〕の測
定キットを用いて尿素の標準水溶液での検量線法により
行った。結果を表1に示す。また未処理のフィルムを用
いて同様に行った結果も表1に併せて示す。
【0039】
【表1】 表1の結果より、本発明の再生セルロ−ス系膜におい
て、実用上、膜の透過性能は維持されることがわかる。
【0040】抗血栓性評価: (実施例8) 実施例5及び6で作製した膜及び、未処理のセルロース
膜をリン酸緩衝食塩水(PBS)に1日浸漬後、PBS
を取り除き、ウサギ血小板多血漿0.7mlを室温で1
80分接触させた。次に血漿をアスピレーターで取り除
き、PBSで3回洗浄後,2.5wt%グルタルアルデ
ヒド溶液1.0mlで120分固定した。その後、2.
5wt%グルタルアルデヒド溶液をアスピレーターで取
り除き、蒸留水で4回洗浄し凍結乾燥した。その後、デ
シケーターに入れ1日真空乾燥し、SEM観察し、単位
面積当たりの粘着血小板数を計数した。
【0041】また、比較として、未処理セルロ−ス膜に
ついても粘着血小板数を計数した。その結果を下記に示
す。下記の結果より、本発明によれば抗血栓性が大幅に
改善されることがわかる。 未処理セルロース膜: 13万個/mm2 実施例5 : 0個/mm2 実施例6 : 0個/mm2
【0042】
【発明の効果】本発明によれば、抗血栓性が大幅に改善
され、補体の活性化が大幅に抑制され、膜の透過性能も
実用上維持される。また、製造に要する反応温度が低
く、セルロース膜に大きな形態変化を起こさない溶媒を
使用できるので、この点からもセルロース膜の物性が変
化することがない。さらに、製造が容易であり、用いた
試薬等を除去することも容易であるので、本発明により
経済的で安全性の高い透析膜が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例で用いた尿素透過性実験装置で
ある。
【符号の説明】
1 ガラスセル 2 2000mg/lの尿素水溶液 3 蒸留水 4 回転子 5 攪拌機 6 フィルム
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 石原 一彦 東京都小平市上水本町6−5−9−201 (72)発明者 山下 正彦 宮崎県延岡市旭町6丁目4100番地 旭化 成工業株式会社内 (72)発明者 山下 康彦 宮崎県延岡市旭町6丁目4100番地 旭化 成工業株式会社内 (56)参考文献 特開 平5−220218(JP,A) 特開 平1−307406(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A61M 1/16 - 1/18 B01D 71/14 C08B 3/12

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 再生セルロースからなる高分子膜に、2
    −メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、カル
    ボキシル基を有する単量体及びその他の単量体の共重合
    体である分子量1000〜100万の高分子酸がエステ
    ル結合していることを特徴とする抗血栓性再生セルロー
    ス系膜。
  2. 【請求項2】 高分子酸が、2−メタクリロイルオキシ
    エチルホスホリルコリン、メタクリル酸アルキルエステ
    ル及びカルボキシル基を有する単量体の共重合体である
    ことを特徴とする、請求項1記載の抗血栓性再生セルロ
    ース系膜。
  3. 【請求項3】 高分子酸が、10〜50モル%の2−メ
    タクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、35〜8
    9.9モル%のメタクリル酸アルキルエステル、及び
    0.1〜15モル%のカルボキシル基を有する単量体の
    共重合体であることを特徴とする、請求項2記載の抗血
    栓性再生セルロース系膜。
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