JP3137910B2 - 耐指紋性に優れた表面処理鋼板およびその製造方法 - Google Patents

耐指紋性に優れた表面処理鋼板およびその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自動車、家庭電気
製品、鋼製家具等の外板材や建築材料等に適用すること
ができる表面処理鋼板に関し、詳細には、特に加工ある
いは組立て時等において、素手で触ったとしても、指紋
の痕跡が目立たない耐指紋性に優れた表面処理鋼板に関
するものである。本発明鋼板は、クロメート被覆層が形
成されたクロメート処理鋼板や、ケイ酸塩及び/又は有
機樹脂を含む被覆層が形成された鋼板に適用することが
でき、VTR,オーディオ,コンピューター,複写機部
品等のシャーシ類の如く、加工後の組立て工程において
指紋の付着を嫌う部品や深絞り等の加工がなされる部品
等に、特に好適に使用される。
【0002】
【従来の技術】従来、自動車、家庭電気製品、鋼板家具
等の外板材や建築材料等には、亜鉛系めっき鋼板が広く
用いられている。これらの亜鉛系めっき鋼板は、そのま
までは、耐食性や塗装性が不十分な為、クロメート処理
やりん酸塩処理が施されることが多く、更に高度な耐食
性や意匠性を要求される場合には、スプレー、電着ある
いは粉体塗装などの方法により塗装が施される。これら
の未処理の亜鉛系めっき鋼板や処理済亜鉛系めっき鋼板
は、加工後、無塗装のまま最終製品まで組立てられるこ
とがあり、そのとき、組立て工程中に作業者が手で触れ
た箇所に指紋(指からの分泌物による痕跡)が付着し、
外観が著しく損なわれるという問題があった。また、別
ライン等で塗装後に製品化される場合であっても、塗装
前の製品の価値が低くなり、あるいは指紋の除去作業が
必要となって、コスト高につながるというデメリットが
生じる。
【0003】また、加工工程後においても部品搬送時に
おける台との接触、或いは単純な曲げ加工において金型
と鋼板が擦れる等して鋼板表面に擦り疵などの疵付きが
発生することがあり、製品外観及び皮膜性能が損なわれ
て商品価値が低下する。特に、上記鋼板に深絞り加工等
の厳しい加工を施した場合には、摺動部の鋼板表面が著
しく疵付くため、製品外観や皮膜性能は更に損なわれる
ことになる。
【0004】そこで、指紋の付着による外観劣化の改
善、更には深絞り加工等を施した場合における疵付きに
よる製品外観や皮膜性能の劣化を防止する為の潤滑性の
改善、特に深絞り性の改善を目的として種々の検討がな
されている。
【0005】例えば、特公昭61−36587号には、
皮膚からの分泌物が亜鉛めっきの微細な凹凸を埋め、こ
の部分は光の散乱反射を起こさずに光を吸収してしまう
ため、黒っぽい模様として指紋の付着部分が際立って見
える、として、指紋を目立たなくするために、亜鉛めっ
き結晶の凹凸を予め埋め込んで平滑にすればよいことが
記載されている。そして、カルボキシル化ポリエチレン
樹脂にコロイダルシリカを添加した水性液を、樹脂付着
量として0.3〜4g/m2 (ただしクロメート皮膜1
0〜60mg/m2 との合計量である)塗布することに
より、指紋付着による汚れが目立たず、耐食性、塗料密
着性、皮膜硬度に優れた塗膜が得られることを開示して
いる。
【0006】また特開昭59−140050号には、亜
鉛系めっき鋼板上に、クロム水和酸化物皮膜と、有機高
分子化合物の樹脂皮膜(100〜3000mg/m2
を設けることにより、耐食性、塗装性および耐指紋性に
優れた亜鉛系めっき鋼板が得られることが、そして特開
昭62−124297号には、亜鉛系めっき鋼板上に下
地クロメート皮膜、塗布型クロメート皮膜と、有機樹脂
皮膜(0.3〜2g/m2 )を形成した耐食性に優れた
表面処理鋼板が開示されている。
【0007】前記従来技術における耐指紋性についての
共通する考え方は、有機樹脂層によって耐指紋性を向上
させることであり、有機樹脂層の厚みが薄過ぎると耐指
紋性は改善されないため、亜鉛系めっき鋼板の凹凸を埋
めるために有機樹脂層を特定厚さ設ける必要がある、と
いうものである。
【0008】しかし、たとえめっき鋼板上の亜鉛結晶の
微細な凹凸を予め樹脂皮膜層で埋めて平滑にしても、指
紋が付着してしまうことが本発明者等によって確認され
た。これは、亜鉛結晶の微細な凹凸よりも、亜鉛めっき
鋼板自体の粗さのレベルが大きいので、樹脂の塗布量を
多くして樹脂皮膜を相当厚くしなければ亜鉛めっき鋼板
自体の凹凸が埋まらないことによるものと考えられる。
従って、有機樹脂を単に厚く塗布すればよいとも考えら
れるが、樹脂皮膜によって亜鉛めっき鋼板表面全てが覆
われた場合には、有機樹脂層の電気絶縁性によって、家
庭電気製品のVTR,オーディオ,コンピューター部
品、或いはカセットシャーシ等に要求されるアース性能
が極端に劣化したり、静電気の蓄積等によりノイズが発
生するという問題点が新たに起こってきた。
【0009】更に、部品によってはシース溶接やプロジ
ェクション溶接、スポット溶接等が行われるが、その
際、樹脂皮膜の抵抗によって火花や爆破音が発生した
り、溶接電極の寿命が短くなる等の問題も生じる。
【0010】他方、深絞り性が要求される材料として
は、特開昭58−153785号公報や特開昭58−1
77476号公報に有機系皮膜処理鋼板が提案されてい
るが、いずれも上述したアース性の問題を有している。
また、アース性の問題を解決する為に、特開平6−57
441号公報には、無機高分子化合物及び固形潤滑剤と
水性樹脂よりなる皮膜が、また、特開平57−5744
2号公報には無機高分子化した皮膜処理鋼板が提案され
ている。これらの公報に開示された鋼板によってアース
性や深絞り加工時における耐疵付性は改善されるが、い
ずれも無機高分子化した皮膜処理鋼板を使用しているこ
とから、鋼板へ処理溶液を塗布する際にはじき等が発生
したり、皮膜の透水性が高い為に黒点状の錆や白錆が発
生し易くなったり、或いは塗装を施すと塗膜の密着性が
劣化する等の問題が生じる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】そこで本発明では、指
紋が付着しにくい層として有機樹脂皮膜を単に設ける、
という発想をさらに進めて、指紋が付着しにくく、しか
も付着しても汚れとして目立たなければ問題にならない
のではないか、という観点から検討することとし、表面
処理皮膜が完全に原板を覆わなくても耐指紋性が良好で
あり、しかも、原板の表面粗さに関係なく、指紋が付着
した後の外観変化が少ないためにその痕跡が目立ちにく
い、という独特の特性を有する表面処理鋼板の提供を課
題とするものである。更には、上述した耐指紋性に加え
て、アース性やシーム溶接性、プロジェクション溶接
性、スポット溶接性といった溶接性を備えると共に、深
絞り加工性も兼ね備えた表面処理鋼板、および該鋼板を
効率よく製造することのできる方法の提供を課題とする
ものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決すること
のできた本発明の耐指紋性に優れた本発明の表面処理鋼
板は、耐指紋性向上のための被覆層が少なくとも片面に
設けられた表面処理鋼板において、該表面処理鋼板の被
覆面の全反射率R1 と、表面処理前の原板の全反射率R
0 が、下記関係式(1)を満足するところに要旨を有す
るものである。 R1 ≦0.80R0 …(1) ここで、 R0 :原板の全反射率 R1 :表面処理鋼板の全反射率 更に本発明では、耐指紋性を明確に表すことのできる評
価基準として、50℃の白色ワセリン−アセトン飽和溶
液からなる人工指紋液を表面処理鋼板に塗布したときの
塗布面の全反射率R2 が、下記関係式(2)を満足する
ことが好ましい。 R2 ≧0.90R1 …(2) ここで、 R1 :表面処理鋼板の全反射率 R2 :人工指紋液塗布後の全反射率
【0013】尚、本発明の表面処理鋼板における「表面
処理前の原板」には、電気純亜鉛めっき鋼板を始め、溶
融めっき法、電気めっき法、あるいは蒸着めっき法等の
製造方法によって作製された亜鉛または亜鉛合金めっき
鋼板(Zn−Niめっき、Zn−Feめっき、Zn−C
rめっき等)や、さらには、りん酸塩処理やクロメート
処理等の化成処理が施された亜鉛系めっき鋼板等が含ま
れる。
【0014】本発明の表面処理鋼板は、具体的には、耐
指紋性向上のための被覆層が、実質的に有機樹脂から
なる鋼板(本発明の第1の表面処理鋼板)、実質的に
ケイ酸塩からなる鋼板(本発明の第2の表面処理鋼
板)、ケイ酸アルカリ金属塩、またはケイ酸アルカリ
金属塩とケイ酸コロイドを含み、更に有機樹脂及び固形
潤滑剤を含むものであり、該ケイ酸アルカリ金属塩がケ
イ酸リチウムで、且つ該被覆層中に占めるLiとSiの
原子比:Li/Siが0.2〜0.6、有機樹脂の含有
量が0.5〜10重量%、固形潤滑剤の含有量が0.2
5〜2重量%である鋼板(本発明の第3の表面処理鋼
板)、クロメート被覆層からなる鋼板(本発明の第4
の表面処理鋼板)が挙げられる。このうち上記の被覆
層からなる本発明の第3の表面処理鋼板は、表面処理前
の原板に、ケイ酸塩等の無機層および有機樹脂等の有機
層が被覆されていることから、無機・有機複合皮膜処理
鋼板と言うことができ、この鋼板は、耐指紋性に加え
て、耐食性や深絞り性、塗装性、アース性に優れたもの
である。また、上記の被覆層からなる本発明の第4の
表面処理鋼板は、表面処理前の原板にクロメート皮膜が
被覆されていることから、クロメート処理鋼板と言うこ
とができ、耐指紋性に加えて、耐食性や塗装性、アース
性に優れたものである。
【0015】上記第1の表面処理鋼板において、被覆層
によって被覆された部分の体積が、原板表面の凹部の体
積に対して80%以上100%未満であり、かつ被覆さ
れた部分の表面積は、被覆後の表面処理鋼板の全表面積
の70%以上100%未満であるもの、上記第2若しく
は第3の表面処理鋼板において、被覆層によって被覆さ
れた部分の表面積が、被覆後の表面処理鋼板の全表面積
の70%以上100%未満であるもの、上記第4の表面
処理鋼板において、被覆層によって被覆された部分の表
面積が、被覆後の表面処理鋼板の全表面積の80%以上
100%未満であるものは、電気伝導性を有し、かつ良
好な耐指紋性を発揮することができる。
【0016】更に上記第3の表面処理鋼板において、該
被覆層中に不純物として存在するNa及び/又はKの含
有量を合計で1.0重量%以下に抑制したり、被覆層の
付着量を、Si重量にて0.025〜0.5g/m2
制御したり、被覆層中に含まれる固形潤滑剤の粒径を
0.10〜1μmに調整すること、更に該被覆層中にシ
ランカップリング剤を1.0〜100重量%含有させる
こと;或いは、上記第4の表面処理鋼板において、クロ
メート皮膜の付着量を金属Cr換算で10〜250mg
/m2 に制御したり、クロメート処理液中の無機コロイ
ド化合物を、クロム酸換算値1に対して1.0〜10、
リン酸化合物を、クロム酸換算値1に対して0.05〜
0.5、シランカップリング剤を、クロム酸換算値1に
対して0.5〜5に調整することにより、耐指紋性や耐
食性、塗装性、溶接性等を一段と向上させることができ
る。
【0017】また、上記第4のクロメート処理鋼板の製
造方法は、クロムの還元率:Cr3+/(Cr3++C
6+)が0.10〜0.5であるクロム酸を主体とし、
更に無機コロイド化合物、リン酸化合物、およびシラン
カップリング剤を含むクロメート処理液を原板表面に塗
布して乾燥するところに要旨を有する。
【0018】
【発明の実施の形態】本発明の表面処理鋼板は、表面処
理鋼板の被覆面の全反射率R1 と、表面処理前の原板の
全反射率R0 が、上記関係式(1)を満足するものであ
るところに最大の特徴を有するものである。これの意味
するところは、要するに、原板と、原板の少なくとも片
面に設けられた耐指紋性を向上させるための被覆層から
なる表面処理鋼板において、表面処理後の被覆層側の全
反射率が、原板の全反射率の80%以下である、という
ことである。
【0019】ここで「全反射率」とは、JIS−K71
05等で規定される光の物性の一つであり、その定義
は、物体に入射する光量に対して、物体によって反射す
る全方向の光量の割合である。全反射率は、例えば日本
電色株式会社製色差計あるいは株式会社島津製作所製可
視紫外分光光度計を用い、被験物体から反射した光を積
分球を用いて集光する方法等により測定することができ
る。
【0020】本発明者等が検討した結果、指紋の付着し
た痕跡が汚れとして目立つのは指紋の痕跡の反射率が低
いためである、という知見が得られ、これを元にさらに
検討した結果、上記(1)式を満足すれば、指紋が付着
しても、指紋が付着していない部分の全反射率が低いた
め、指紋が付着していない部分と指紋が付着した部分の
反射率の差が小さく、結果として、外観上指紋の痕跡が
目立たないことが明らかとなり、上記要件を必須要件と
して定めたものである。被覆層の全反射率が原板の全反
射率の80%を超える場合は、指紋の付着している部分
と付着していない部分の反射率の差が大きいため、指紋
の痕跡が明確に目視できる様になって好ましくない。
【0021】本発明の表面処理鋼板は、この様に指紋が
付着しにくい、という特性と共に、指紋が付着しても目
立たない、という独特の特性を有している。この様な独
特の耐指紋性を明確に表すことのできる評価基準とし
て、50℃の白色ワセリン−アセトン飽和溶液からなる
人工指紋液を表面処理鋼板に塗布したときの塗布面の全
反射率が、鋼板の構成に応じて上記関係式(2)を満足
する、という要件を設定した。
【0022】上式(2)は、耐指紋性に優れるという性
質の本質を述べたものであり、50℃の白色ワセリン−
アセトン飽和溶液からなる人工指紋液(指紋模擬液)を
一定量付着させた場合、指紋模擬付着物と被覆層を通し
た光の全反射率が、指紋模擬液塗布前の全反射率に対し
て90%以上であれば、この被覆層を施した表面処理鋼
板は、指紋が付着していない部分と指紋が付着した部分
の反射率差が小さく、指紋が付着していても、外観上認
識されず、良好な耐指紋性を示すのである。
【0023】ここで使用した人工指紋液は、白色ワセリ
ンの50℃におけるアセトン飽和溶液である。この飽和
溶液中に表面処理鋼板を1分浸漬したときに、該鋼板に
付着した指紋模擬付着物が実際の指紋に近い外観変化を
示すことから、この方法は、耐指紋性を評価する試験法
として一般的に用いられるが、反射率を組み合わせた上
記要件は、本発明における「指紋が付着しても目立たな
い」という特性を評価するために本発明において設定さ
れた要件である。なお、人工指紋液の液組成、液温度、
浸漬時間等の評価試験条件は耐指紋性を比較するために
用いた一条件として認識されるべきものであって、上記
関係式(2)によって設定される要件は、本発明に含ま
れる表面処理鋼板の中でも最も優れた耐指紋性を示す鋼
板がこの要件を満足することを示すものである。
【0024】この様に本発明の表面処理鋼板は、上述し
た原板の反射率と表面処理鋼板の反射率の関係を特定範
囲内に制御することにより、指紋の痕跡を目立たなくさ
せ、結果的に耐指紋性の向上を図ろうとする点にその技
術的思想が存在するものである。以下、この技術的思想
を適用することのできる表面処理鋼板について、具体的
に詳述する。
【0025】本発明の第1の表面処理鋼板は、上記反射
率の要件を満足するために、実質的に有機樹脂からなる
被覆層を選択するものである。有機樹脂からなる皮膜を
被覆層として設けた後の全反射率が、原板の反射率の8
0%以下(後述の反射率の規定要件)になるのは、これ
らの皮膜が、指紋に類似した屈折率を有するためと考え
られる。
【0026】有機樹脂皮膜を構成する樹脂の種類として
は、特に限定されず、ポリエチレン等のポリオレフィン
系、ポリウレタン系、ポリエステル系、エポキシ系、ア
クリル系等の樹脂が挙げられ、これらの1種または2種
以上の混合物を用いることができる。樹脂皮膜を構成す
るときの塗布液の状態は、有機溶剤溶液系、水溶液系、
水分散液系、無溶剤系等、特に限定されないが、2種以
上の樹脂を混合する場合や、樹脂に加えて更にケイ酸塩
を混合して用いる場合には、水分散液(エマルジョン)
系が好ましい。
【0027】塗布液の調製に当たっては、被覆層の性能
を高めるため、本発明の表面処理鋼板の外観および色調
を大きく変化させない範囲で、顔料、部分架橋剤、希釈
溶媒、皮張り防止剤、レベリング剤、消泡剤、浸透剤、
造膜助剤、増粘剤、潤滑剤等の各種添加剤や、密着性向
上や耐食性向上のための微粉シリカ、コロイダルシリ
カ、シランカップリング剤等を適宜添加することができ
る。なお、これらの添加剤が添加されていても、主成分
が有機樹脂であれば、被覆層は「実質的に有機樹脂から
なる」ものとする。
【0028】また本発明では、電気伝導性の確保と良好
な耐指紋性の両立について検討し、被覆された部分の体
積が原板表面に存在する凹部の体積に対して80%以上
100%未満であり、かつ被覆された部分の表面積が被
覆後の表面処理鋼板の全表面積の70%以上100%未
満であれば、通電点を確保しながら、しかも良好な耐指
紋性が得られることを見出した。
【0029】すなわち、原板表面を完全に被覆層で覆っ
てしまうと、もちろん耐指紋性は良好となるが、電気伝
導性はなくなる。しかし本発明の上記要件を満足する様
に被覆層を設けることによって、被覆されていない部分
は原板が露出しているので通電点となり、電気伝導性は
確保できる。しかも、被覆後の全反射率が原板に対して
80%以下となるため、指紋の付着も目立つことはな
い。
【0030】図1に凹部の体積と被覆された体積を説明
するための断面図を示す。なお、原板表面の凹部の体積
は、3次元粗さ計を用いて凹部1個の体積を求め、10
個の凹部の結果を平均し、求めた値である。3次元粗さ
計として、レーザー顕微鏡を用いると、触針式粗さ計に
比べて原板表面の微小な凹凸部の粗さを求めることがで
きる上に、被覆層によって被覆された後でもレーザーが
皮膜を通して原板に到達し得る場合には、被覆層形成後
の原板の粗さを求めることも可能である。レーザー顕微
鏡を用いた具体的な測定方法は、まずサンプル表面に対
しX−Z方向に2次元粗さを測定し、次にY方向にサブ
ミクロンずつレーザーの走査を移動させながら、3次元
(X−Y−Z)粗さ曲線を求め、得られた3次元粗さ曲
線の最低部の地点を基準として2次元粗さ曲線の凹部面
積を積分することによって、原板の凹部の体積を求め
る、という手順で行う。
【0031】また表面被覆率は、表面処理鋼板の表面に
おいて被覆層皮膜が占める割合であり、SEMと画像解
析装置を用いて求めることができる。すなわち、表面処
理鋼板の微小部の画像をSEMを用いて写真撮影し、こ
のSEM観察写真を画像解析装置にかけて、被覆部分と
被覆されていない部分の面積を求めれば良い。参考まで
に、図2に、被覆された表面部の概略図を示す。しかし
SEMで撮影した写真において被覆部分と被覆されてい
ない部分の境界が不鮮明な場合は画像解析が困難なた
め、被覆層の成分Cおよび/またはSi元素についてE
PMAによる面分析を行い、被覆部分とそうでない部分
の境界を明確にして、その後、画像解析装置にかけて被
覆率を求める。この被覆率は、単位面積1×10-62
の任意の微小部分を10か所選択して測定し、平均を求
めている。なお、EPMAでも微小部分の写真撮影は可
能であるがSEMの解像度の方が優れているため、本発
明ではSEMを用いた。
【0032】本発明における「被覆された部分の体積が
原板表面に存在する凹部の体積に対して80%以上10
0%未満であり、かつ被覆された部分の表面積が被覆後
の表面処理鋼板の全表面積の70%以上100%未満で
ある」という要件は、耐指紋性に優れ、かつ電気伝導性
を有する表面処理鋼板、すなわち被覆後の全反射率が原
板に対して80%以下である表面処理鋼板を製造する際
に重要であり、上記要件を満足する様に被覆層を設けれ
ば、指紋の付着が目立たず、かつ電気伝導性を持つ表面
処理鋼板が得られることを示すものである。この様な表
面処理鋼板は、例えばVTRシャーシ等の部材の様な耐
指紋性と共にアース特性が要求される分野において好ま
しく適用できる。
【0033】次に、上述した本発明に係る表面処理鋼板
の製造方法について説明する。表面処理鋼板は、有機樹
脂を主成分として含む塗布液を、任意の塗布方法によっ
て、原板表面に塗布して乾燥することによって、製造す
ることができる。塗布液の塗工方法には一切制限がな
く、例えば、原板表面を清浄化したり、塗装前処理(例
えばリン酸塩処理、クロメート処理)等を施した原板の
長尺帯の表面に、ロールコーター法、スプレー法、カー
テンフローコーター法等の公知の塗工手段を採用すれば
よい。
【0034】皮膜厚さの均一性や処理コスト、塗布効率
等を総合的に考慮すると、実用上最も好ましいのは、ロ
ールコーターで塗布する方法である。被覆層は、原板の
片面のみ、あるいは両面に形成することができる。
【0035】本発明の第2の表面処理鋼板は、上記反射
率の要件を満足するために、実質的にケイ酸塩からなる
被覆層を選択するものである。ケイ酸塩からなる皮膜を
被覆層として設けた後の全反射率が、原板の反射率の8
0%以下(後述の反射率の規定要件)になるのは、これ
らの皮膜が、指紋に類似した屈折率を有するためと考え
られる。
【0036】ケイ酸塩の種類としては、ケイ酸リチウ
ム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム等が挙げられ、
単独で、あるいはこれらの2種以上の混合物を用いるこ
とができる。これらのケイ酸塩は水溶性であるので、水
溶液状態で種々の塗工方法を用いれば、原板上に簡単に
被覆層を形成することができる。
【0037】塗布液の調製に当たっては、被覆層の性能
を高めるため、本発明の表面処理鋼板の外観および色調
を大きく変化させない範囲で、顔料、部分架橋剤、希釈
溶媒、皮張り防止剤、レベリング剤、消泡剤、浸透剤、
造膜助剤、増粘剤、潤滑剤等の各種添加剤や、密着性向
上や耐食性向上のための微粉シリカ、コロイダルシリ
カ、シランカップリング剤等を適宜添加することができ
る。なお、これらの添加剤が添加されていても、主成分
がケイ酸塩であれば、被覆層は「実質的にケイ酸塩から
なる」ものとする。
【0038】本発明における「被覆された部分の表面積
が被覆後の表面処理鋼板の全表面積の70%以上100
%未満である」という要件は、耐指紋性に優れ、かつ電
気伝導性を有する表面処理鋼板、すなわち被覆後の全反
射率が原板に対して80%以下である表面処理鋼板を製
造する際に重要であり、上記要件を満足する様に被覆層
を設ければ、指紋の付着が目立たず、かつ電気伝導性を
持つ表面処理鋼板が得られることを示すものである。こ
の様な表面処理鋼板は、例えばVTRシャーシ等の部材
の様な耐指紋性と共にアース特性が要求される分野にお
いて好ましく適用できる。
【0039】次に、上述した本発明に係る表面処理鋼板
の製造方法について説明する。表面処理鋼板は、被覆層
構成成分を含む塗布液を主成分として含む塗布液を、任
意の塗布方法によって、原板表面に塗布して乾燥するこ
とによって、製造することができる。塗布液の塗工方法
には一切制限がなく、例えば、上記本発明の第1の表面
処理鋼板と同様の方法を採用することができる。皮膜厚
さの均一性や処理コスト、塗布効率等を総合的に考慮す
ると、実用上最も好ましいのは、ロールコーターで塗布
する方法である。被覆層は、原板の片面のみ、あるいは
両面に形成することができる。
【0040】本発明の第3の表面処理鋼板(無機・有機
複合皮膜処理鋼板)は、上記反射率の要件を満足するた
めに、ケイ酸アルカリ金属塩、またはケイ酸アルカリ金
属塩とケイ酸コロイドを含み、更に有機樹脂及び固形潤
滑剤を含むものであり、該ケイ酸アルカリ金属塩がケイ
酸リチウムで、且つ、該皮膜中に占めるLiとSiの原
子比(Li/Si):0.2〜0.6、有機樹脂の含有
量:0.5〜10重量%、固形潤滑剤の含有量:0.2
5〜2重量%からなる無機・有機複合皮膜を選択するも
のである。この様な無機・有機複合皮膜を被覆層として
設けた後の全反射率が、原板の反射率の80%以下(前
述の反射率の規定要件)になるのは、これらの皮膜が、
指紋に類似した屈折率を有するためと考えられる。この
様な要件を満足する鋼板は、良好な深絞り加工性に加え
て、深絞り加工性、耐食性、塗装性、アース性にも優れ
たものである。以下、上記規定理由について順次説明す
る。
【0041】まず、ガラス質皮膜中に占めるLiとSi
の原子比(Li/Si)は0.2〜0.6が好ましい。
0.2未満では皮膜の造膜性が低下し、皮膜中に微小ク
ラックが発生する為、皮膜の造膜性が低下し、密着性に
優れた皮膜を形成することができず、深絞り加工性が著
しく劣化する他、耐食性や塗装性も劣化する。一方、L
i/Siが0.6を超えると、塗装後の塗膜密着性が劣
化すると共に、皮膜の屈折率が小さくなる為、原板に対
する全反射率は大きくなる傾向を示し、上式(1)の要
件を満足することができず、耐指紋性が劣化してしま
う。
【0042】また、ガラス質皮膜中には、不純物として
ケイ酸ナトリウムおよび/またはケイ酸カリウムが含ま
れる場合がある。これらは、ケイ酸リチウムに比べると
鋼板との濡れ性が悪いため、処理液を塗布して無機・有
機複合皮膜を形成する際、処理液の塗布時にはじき等を
生じて均一な皮膜が得られず、皮膜に欠陥が生じるた
め、耐指紋性、深絞り加工性および耐食性等が劣化す
る。その為、本発明においては、皮膜中に含まれるNa
および/またはKの含有量を合計で1.0重量%以下に
抑制することが好ましい。より好ましくは0.8重量%
以下に抑制する。
【0043】更に有機樹脂は、皮膜の造膜性および耐食
性の改善を目的として添加される。有機樹脂の含有量が
0.5重量%より少ないと、上述した作用を有効に発揮
させることができない。より好ましくは4重量%以上添
加する。一方、10重量%を超えると、深絞り加工を行
う際、摺動面で樹脂が剥離して黒化現象を生じるため、
加工後の外観に劣る。より好ましくは8重量%以下であ
る。
【0044】尚、本発明に用いられる有機樹脂は特に限
定されないが、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリ
エチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂が
好ましい。
【0045】また固形潤滑剤は、皮膜に潤滑性を付与さ
せることによって、深絞り加工時における金型と鋼板と
の滑り性を高め、金型による無機・有機複合皮膜の疵付
きを防止し、皮膜の損傷低減を図る為に添加される。固
形潤滑剤の添加量が0.25重量%未満では、皮膜表面
積に対する固形潤滑剤の割合が少なくなり、潤滑性の改
善効果が充分得られない。より好ましくは0.4重量%
以上添加する。一方、2重量%を超えると、皮膜の耐食
性および塗装性が劣化する。より好ましくは1重量%以
下である。
【0046】尚、添加される固形潤滑剤の粒径は0.1
0〜1μmであることが好ましい。粒径が0.10μm
より小さいと、皮膜中に潤滑剤が埋もれていしまい、潤
滑性能向上作用が充分得られない。より好ましくは0.
4μm以上である。一方、1μmを超えると、処理液中
での固形潤滑剤の均一分散性および液安定性が劣化し、
鋼板へ均一に塗布することが困難になる。より好ましく
は0.8μm以下である。
【0047】上記固形潤滑剤の種類は特に限定されず、
ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、酸
化ポリプロピレンワックス、カルナバワックス、パラフ
ィンワックス、モンタンワックス、ライスワックス、テ
フロンワックス、二硫化モリブデン、二硫化炭素、グラ
ファイト等の通常使用される固形潤滑剤のなかから、1
種または2種以上を任意に選択することができる。潤滑
性能および処理液中での分散状態を考慮すれば、上述し
たワックスタイプの潤滑剤を水分散型ワックスの状態で
塗布液中に添加することが推奨される。
【0048】無機・有機複合皮膜の付着量は、Si重量
にて0.025〜0.5g/m2 の範囲が好ましい。皮
膜付着量が0.025g/m2 未満の場合は、形成され
る皮膜の厚みが薄くなりすぎるため、上式(1)の要件
を満足することができず、付着した指紋が目視でも容易
に目立ってしまう他、深絞り加工性に関しては、金型摺
動に耐え得る程の強靭で硬いガラス質の皮膜が得られな
いため、著しく劣化する。より好ましい付着量は0.0
5g/m2 以上である。一方、付着量の増加に伴って耐
食性は向上し、また上式(1)の規定にも悪影響を及ぼ
さないが、0.5g/m2 を超えると、皮膜抵抗値が大
きくなりアース性が劣化してしまう。より好ましい付着
量は0.4g/m2 以下である。
【0049】尚、上記本発明鋼板の被覆層中に、シラン
カップリング剤を含有させれば塗装後の密着性(一次密
着性)のみならず、塗装後に沸騰水に浸漬した後の塗膜
密着性(二次密着性)も向上させることが可能である。
このようなシランカップリング剤が有する塗膜密着性の
改善機構については完全に解明されたわけではないが、
シリコンに結合するアルコキシ基が水溶液中で加水分解
することによりアルコール基とシラノール基が生成し、
生成したシラノール基が塗装後の塗膜との結合力を強め
るためと推定される。
【0050】尚、シランカップリング剤は一般に、メト
キシ基やエトキシ基等のアルコキシ基;メチル基やエチ
ル基等のアルキル基;ビニル基、グリシドキシ基、メタ
クリロキシ基、アミノ基、メルカプト基等の官能基がア
ルキレン基を介してまたは介さずにSiに結合したもの
であるが、上記本発明鋼板に用いられるシランカップリ
ング剤としては、上記(3)式または(4)式で示され
るシランカップリング剤を用いることが推奨され、これ
らの1種または2種以上を組合せて用いることができ
る。
【0051】シランカップリング剤においてシリコンに
結合しているアルコキシ基に関しては、塗膜密着性の改
善効果が、アルコキシ基の加水分解により生成するシラ
ノール基によるものと推定されることから、加水分解可
能なメトキシ基やエトキシ基等の低級アルコキシ基であ
ることが好ましい。その中でも特に加水分解後の生成す
るアルコールが皮膜の造膜性に悪影響を与えることを考
慮すると、加水分解により生成するアルコールの沸点が
低いメトキシ基であることがより好ましい。具体的に
は、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルト
リメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメトキシ
シラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシ
ラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げ
られる。
【0052】上述の通り本発明は、含有させるシランカ
ップリング剤の種類を限定するものではないが、水溶液
中での分散性や相溶性等の観点からは、なかでも上記
(5)式または(6)式に示すような末端にグリシドキ
シ基を有するシランカップリング剤を用いることが好ま
しく、これらの1種または2種以上を組合せて用いるこ
とができる。具体例としては、γ−グリシドキシプロピ
ルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチ
ルジメトキシシラン等が挙げられる。
【0053】但し、シランカップリング剤の含有量が
1.0%よりも少ない場合には、塗膜の密着性の改善効
果が不充分であり、塗装後の塗膜密着性、特に二次密着
性に優れる鋼板が得られず、一方10%よりも多い場合
には、塗膜密着性、特に二次密着性の改善効果が飽和す
ると共に、形成される皮膜が脆くなり加工性に悪影響を
与えることになるので、シランカップリング剤の含有量
は1.0〜10%とすることが推奨される。
【0054】上述した様に、シランカップリング剤は塗
装後の塗膜の二次密着性改善に著しい効果を示すが、シ
ランカップリング剤の添加のみで十分な効果が得られる
わけではなく、主体とするケイ酸アルカリ金属塩として
ケイ酸リチウムを選択し、皮膜中のLi/Si比を制御
すると共に、ケイ酸アルカリ金属塩中に含まれるNa及
びKの含有量を最適化することにより、はじめて塗装後
の一次密着性,二次密着性に優れた表面処理金属板が得
られることは言うまでもない。
【0055】この様な本発明の無機・有機複合皮膜処理
鋼板は、指紋が付着し難いという特性と共に、指紋が付
着しても目立たないという独特の特性を有している。さ
らに硬く強靭な皮膜を形成するため、優れた加工性、特
に深絞り加工性を有しており、かつ、耐食性、塗装性お
よびアース性といった相反する特性も備えている。
【0056】本発明において、「上述した被覆層(無機
・有機機複合皮膜)によって被覆された部分の表面積
が、被覆後の無機・有機複合皮膜処理鋼板の全表面積の
70%以上、100%未満である」という要件は、耐指
紋性および深絞り加工性に優れ、かつ、耐食性、塗装
性、アース性、および溶接性も良好な鋼板、すなわち、
無機・有機複合皮膜被覆後の全反射率が原板に対して8
0%以下である無機・有機複合皮膜処理鋼板を製造する
際に重要であり、上記要件を満足する無機・有機複合皮
膜を形成すれば、付着した指紋が目立たず、かつ、深絞
り加工性に優れ、耐食性、塗装性およびアース性といっ
た相反する特性を満足させることができる無機・有機複
合皮膜処理鋼板が得られることを示すものである。この
ような無機・有機複合皮膜処理鋼板は、例えば、VTR
やオーディオ等のシャーシ類、およびアース性が要求さ
れるコンピューター関係の部材など、家庭電化製品の分
野において好ましく適用できる。
【0057】次に、上述した本発明に係る無機・有機複
合皮膜処理鋼板の製造方法について説明する。本発明で
は、ケイ酸リチウム、またはケイ酸リチウムとケイ酸コ
ロイドの混合物に、上述した有機樹脂と固形潤滑剤を添
加した無機・有機複合皮膜処理液を原板表面に塗布した
後、所定温度に加熱し、乾燥させることにより、微細な
シリカ粒子の強固な乾燥ゲルからなるガラス質皮膜を形
成することができる。
【0058】ケイ酸リチウムは、リチウムシリケートと
して市販されており、リチウムシリケート35、リチウ
ムシリケート45、リチウムシリケート75[日産化学
(株)製]等の市販品を好適に用いることができる。
【0059】またケイ酸コロイドも、コロイダルシリカ
やコロイドゾルとして市販されており、スノーテックス
30、スノーテックス40、スノーテックスUP、スノ
ーテックスN、スノーテックスXS、スノーテックス
K,PC−500[日産化学(株)製]等の市販品を好
適に用いることができる。
【0060】この様な無機・有機複合皮膜処理液を原板
表面に塗布・乾燥して得られた無機・有機複合皮膜は、
上式(1)の要件を満足し、かつ、無機・有機複合皮膜
処理鋼板は、優れた耐指紋性に加えて、良好な深絞り加
工性、耐食性、塗装性、アース性を有する。
【0061】本発明の第4の表面処理鋼板(クロメート
処理鋼板)は、上記反射率の要件を満足するために、ク
ロメート皮膜からなる被覆層を選択するものであり、ク
ロメート皮膜を被覆層として設けた後の全反射率が、原
板の反射率の80%以下(前述の反射率の規定要件)に
なるのは、上記皮膜が、指紋に類似した屈折率を有する
ためと考えられる。
【0062】クロメート皮膜の付着量は、金属Cr換算
で10〜250mg/m2 が好ましい。皮膜付着量が1
0mg/m2 より少ない場合は、上記(1)式を満足す
るクロメート処理鋼板の全反射率R1 が得られず、付着
した指紋が目立ってしまい、目的とする優れた耐指紋性
が得られない他、耐食性や塗装性の劣化も著しくなる。
より好ましくは15mg/m2 以上である。一方、付着
量が250mg/m2を超えると、上記(1)式を満足
する反射率R1 が得られる為、耐食性や塗装性の向上効
果は顕著に認められるが、皮膜付着量の増加に伴って無
機コロイド化合物(後記する)の含有量も増加するた
め、皮膜抵抗が大きくなりアース性や溶接性が著しく劣
化するという不具合が生じる。より好ましくは150m
g/m2 以下である。
【0063】上述した本発明鋼板において、「クロメー
ト皮膜によって被覆された部分の表面積が、被覆後のク
ロメート処理鋼板の全表面積の80%以上100%未満
である」という要件は、耐指紋性に優れると共に、耐食
性、塗装性、アース性および溶接性を向上させたクロメ
ート処理鋼板、即ち、クロメート皮膜被覆後の全反射率
が原板に対して80%以下であるクロメート処理鋼板を
製造する際に重要であり、上記要件を満足する様にクロ
メート処理皮膜を形成すれば、付着した指紋が目立た
ず、且つ、耐食性、塗装性およびアース性、溶接性と言
った相反する特性を満足させることができるクロメート
処理鋼板が得られることを示すものである。このような
クロメート処理鋼板は、例えばVTRやオーディオ等の
シャーシ類、アース性を要求されるコンピューター関係
の部材など、家庭電化製品の分野において好ましく適用
できる。
【0064】次に、上述した本発明のクロメート処理鋼
板の製造方法について説明する。本発明では、上記反射
率の要件を満足させるために、クロムの還元率:Cr+3
/(Cr3++Cr6+)が0.10〜0.5であるクロム
酸を主体とし、更に無機コロイド化合物、リン酸化合
物、およびシランカップリング剤を含むクロメート処理
液を用いることが必要である。
【0065】上述したクロムの還元率が0.10〜0.
5であるクロム酸溶液は、無水クロム酸の水溶液または
還元率0.5の還元クロム酸水溶液を用い、一般的に使
用されている無機還元剤や有機還元剤により還元するこ
とによって還元率を調整することができる。クロムの還
元率が0.10未満では、形成されるクロメート皮膜の
色調はCr+6に起因する黄色を呈し、付着した指紋は目
立たなくなる傾向を示すが、湿潤環境下において皮膜中
のCr+6が水分を吸湿溶解し、亜鉛めっきを局部的に腐
食してしまうので微細な緑色の斑点状汚れが生じてしま
う。一方、クロムの還元率が0.5を超えると、クロメ
ート処理剤の安定性が著しく劣化し、鋼板への均一な塗
布が困難となり、上式(1)の要件が得られなくなる。
より好ましくは0.4以下である。
【0066】また、クロメート処理液には無機コロイド
化合物を添加することが必要である。これは、クロメー
ト皮膜の耐食性を向上させると共に、鋼板に対するクロ
メート処理液のはじき(塗布むら)を防止するためであ
る。無機コロイド化合物としては、コロイダルシリカが
好ましいが、その他にアルミナゾル、チタニアゾル、ジ
ルコニアゾル等も用いることができ、これらを併用する
ことも可能である。尚、無機コロイド化合物は、クロム
酸換算値1に対して1.0〜10の割合で含まれること
が好ましい。無機コロイド化合物の含有割合がクロム酸
換算値1に対して1.0未満では、耐食性の向上効果が
認められず、鋼板に対するクロメート処理液のはじき防
止効果を有効に発揮することができない。即ち、原板表
面との濡れ性が悪いクロメート処理液を原板表面に塗布
すると、表面張力により凝集してはじきを生じるが、ク
ロメート処理液中に無機化合物を含有させておけば、該
処理液中に分散している無機コロイド化合物が表面張力
による凝集を抑制し、はじきの発生を防止することがで
きると考えられる。より好ましくは1.5以上である。
一方、無機コロイド化合物の割合がクロム酸換算値1に
対して10を超えると、クロメート皮膜の造膜性が悪く
なり、耐食性が劣化してしまう他、上式(1)の要件が
得られなくなる。
【0067】更に、クロメート処理液中に添加されるリ
ン酸化合物は、耐食性をより一層向上させる作用があ
り、この様な作用を有効に発揮させる為には、クロム酸
換算値1に対して0.05以上添加することが好まし
い。より好ましくは0.08以上である。一方、0.5
を超えると、クロメート皮膜の吸湿性が増加してしま
い、耐食性向上効果が得られない。尚、本発明において
添加するリン酸化合物の種類は特に限定されず、オルト
リン酸や各種の縮合リン酸、およびそれらのアンモニウ
ム塩やアルカリ土類金属塩等が好ましく用いられる。
【0068】また、クロメート処理液中に添加されるシ
ランカップリング剤は、クロム酸換算値1に対して0.
5〜5の範囲が好ましい。クロム酸換算値1に対して
0.5未満の場合は、クロメート皮膜中の可溶性Cr6+
が溶出し、原板表面にむら状の汚れを呈してしまう為、
クロメート処理鋼板の外観が著しく劣化する。より好ま
しくは0.8以上である。一方、クロム酸換算値1に対
して5を超えて添加しても、可溶性Cr6+の溶出防止効
果が飽和してしまい、経済的に無駄である。尚、上記本
発明鋼板に用いられるシランカップリング剤としては、
可溶性Cr6+の溶出防止効果に優れているという点で、
メトキシ基を有するシランカップリング剤を使用するこ
とが好ましい。具体例としては、ビニルトリメトキシシ
ラン、γ−(メタクリロキシプロピル)トリメトキシシ
ラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、
N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキ
シシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン
等が挙げられ、これらの1種または2種以上を組合せて
用いることができる。
【0069】上述した組成からなるクロメート処理剤
を、任意の方法によって原板表面に塗布して乾燥するこ
とによりクロメート皮膜を製造することができる。尚、
クロメート処理剤の塗布方法は特に限定されず、例え
ば、ロールコーター法、スプレー法、カーテンフローコ
ーター法等の公知の塗布方法を採用すればよい。
【0070】以下実施例によって本発明をさらに詳述す
るが、下記実施例は本発明を制限するものではなく、前
・後記の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施することは全
て本発明の技術範囲に包含される。
【0071】
【実施例】下記の実施例において用いた評価方法は以下
の通りである。 (1)表面処理前後の全反射率の変化度 日本電色株式会社製色差計を用い、JIS−K7105
に基づいて、供試材の全反射率を測定した。硫酸バリウ
ム粉末(和光純薬工業株式会社製の試薬特級)を成形し
たサンプルの標準白色面の560nmにおける全反射率
を100%基準として求めた。供試材における表面処理
前後の全反射率変化を表すため、原板の全反射率Ro
対する被覆後の全反射率R1 の割合を、全反射率変化
度:R1 /Ro とした。なお実施例2及び3では、原板
として、全反射率約83%の亜鉛めっき鋼板を用い、実
施例1,4〜6では、原板として、全反射率約72%の
反応型クロメート処理鋼板を用いた。
【0072】(2)人工指紋液塗布前後の全反射率の変
化度 被覆層を設けた後の表面処理鋼板の一部を切出し、50
℃で白色ワセリン(和光純薬工業株式会社製試薬一級)
を飽和させたアセトン(和光純薬工業株式会社製試薬特
級)飽和溶液(人工指紋液)中に1分間浸漬した後の全
反射率R2 を上記(1)と同様にして測定し、人工指紋
液塗布前後の全反射率変化を表す指標として、全反射率
の変化度R2 /R1 を算出した。
【0073】(3)被覆層の被覆率 (3−1)表面凹部の被覆率(体積分率) 表面凹部の被覆率は、被覆層が原板の表面凹部をどれだ
け被覆しているか、という体積分率である。まず原板に
ついて、レーザーテック製走査型レーザー顕微鏡を用い
て、倍率392倍で1×10-62 当たりの凹凸を観察
し、3次元断面曲線における10点平均の凹部の全体積
03 を求めた。原板と被覆処理後の表面処理鋼板の
重量差から付着量Wg/m2 が求まるので、有機樹脂の
比重を1.1×10-6g/m3 、ケイ酸塩の比重を2.
2g/m3 とし、被覆層の組成を計算に入れて、被覆さ
れた部分の体積V13 を算出し、V1 /V0 を求めて
表面凹部の被覆率(体積分率:%)とした。
【0074】(3−2)表面積被覆率(面積率) 表面積被覆率は、日本電子株式会社製の走査型電子顕微
鏡JSM−T200を用いて、倍率100倍で観察し、
単位面積1×10-62 の部分についてさらにCarl
−Zeiss製画像解析装置IBASを用いて10ケ所
解析することにより、表面処理皮膜が施された部分の1
0点平均の単位面積に対する面積比率を算出し、表面積
被覆率とした。
【0075】その部分に皮膜が施されているかどうかの
確認は、日本電子株式会社製の電子線マイクロアナリシ
ス装置(EPMA)JXA−8621MXを用いて行っ
た。被覆層の主成分がケイ酸の場合はSi元素強度を、
有機樹脂の場合はC元素強度を、両者混合皮膜では両方
調べて、皮膜が施されている部分と施されていない部分
に分けた。EPMAは、加速電圧:20KVで、皮膜が
施されている部分を白点、皮膜のない部分を黒点で表せ
る様に、元素の検出レベルを調整した。
【0076】(4)耐指紋性 50℃で白色ワセリンを飽和させたアセトン溶液を人工
指紋液として用い、供試材を人工指紋液中に1分間浸漬
した。浸漬による色調変化を、実施例1では目視で観察
し、下記基準にて評価した。 <耐指紋性の評価> ◎優れる:指紋(人工指紋液)の付着が全く目立たな
い。 ○良 好:指紋の付着がほとんど目立たない。 ×劣 る:指紋の付着が目立つ。 実施例2〜5では、浸漬による色調変化を、日本電色株
式会社製色差計で測定し、下記の計算式に基づいてΔE
値を算出して耐指紋性を評価した。
【0077】
【数1】
【0078】<耐指紋性の評価> ◎優れる:ΔE=1未満 →指紋の付着が全く目立た
ない。 ○良 好:ΔE=1〜3未満 →指紋の付着がほとんど目
立たない。 ×劣 る:ΔE=3以上 →指紋の付着が目立つ。
【0079】(5)耐食性 エッジシールした供試材について、JIS−Z2371
に準じて平板の塩水噴霧試験を行った。 <耐食性の評価> ◎優れる:塩水噴霧経過時間168hrで白錆発生1%
以下 ○良 好:塩水噴霧経過時間120hrで白錆発生1%
以下 ×劣 る:塩水噴霧経過時間120hrで白錆発生1%
以上
【0080】(6)塗装性(一次密着性) 下記条件にてアクリル系塗料をバーコート塗装した後、
その塗膜密着性を以下の基準で評価した。 <塗装条件> ・塗 料:マジクロン1000(関西ペイント社
製) ・塗 膜 厚 :20±1μm ・焼き付け条件:160℃×20分間 <塗膜密着性の評価> ・1mmの塗装板にカッターで1mmの基盤目を100
マス入れ、そのまま或いは6mm高さのエリクセン張出
し成形を行った後、テープ剥離試験を行い、塗膜剥離後
の残存マス目を測定し、下記基準により評価した。 ◎優れる:塗膜残存マス目数100% ○良 好:塗膜残存マス目数90%以上100%未満 ×劣 る:塗膜残存マス目数90%未満
【0081】(7)塗装性(二次密着性) 塗装後の各試験片を沸水に1時間浸漬後、1時間常温で
放置した後、一次密着性と同様の方法で塗膜残存率を測
定し、以下の基準により二次密着性の評価を行った。 ◎:塗膜残存率 100% ○:塗膜残存率 80%以上 100%未満 △:塗膜残存率 40%以上 80%未満 ×:塗膜残存率 40%未満 尚、以下の記載において単に塗装性と記載する場合に
は、塗装性(一次密着性)を意味するものとする。
【0082】(8)アース性 供試材の表面抵抗を、三菱化学株式会社製の表面抵抗計
ロレスターMPで測定し、下記基準により評価した。 <アース性の評価> ◎優れる:表面抵抗値=0.5Ω未満 ○良 好:表面抵抗値=0.5〜1.0Ω未満 ×劣 る:表面抵抗値=1.0Ω以上
【0083】(9)溶接性 ドーム型(先端径6mm,40mmR),材質:1%C
r−Cuの電極を用い、加圧力2156N(220kg
f)、電流8kA、通電時間12サイクル(60Hz)
の条件下で1000打点のスポット溶接試験を実施し、
全溶接点に対する良溶接点の百分率比を溶接性の尺度と
した。また、全打点における表散り(表面スパーク)の
発生状況を目視で評価した。 <溶接性の評価> ◎優れる:良溶接点100%,表散りの発生は極く僅
か。 ○良 好:良溶接点95〜100%未満,表散りの発生
が少ない。 ×劣 る:良溶接点95%未満,表散りの発生が多い。
【0084】(10)深絞り加工性 80トンのクランクプレス装置を用いて単発のプレス試
験を実施し、成形後の成形品の摺動面の型かじりおよび
黒化現象(耐黒化性)を目視にて観察し、以下の基準で
深絞り加工性を評価した。 <深絞り加工性の評価> ◎優れる:成形品の摺動面の型かじりや黒化現象の発生
なし。 ○良 好:成形品の摺動面の型かじりや黒化現象が僅か
に発生。 ×劣 る:成形品の摺動面の型かじりや黒化現象が顕著
に発生。
【0085】(11)摩擦係数 摺動試験装置を用い、加圧力46kgf/cm2 、引き
抜き速度300mm/minにて試験を実施した時の引
き抜き荷重を測定し、該引き抜き荷重から動摩擦係数を
測定した。動摩擦係数は両面同時に測定したが、測定結
果は両面の平均で表した。
【0086】実施例1 本実施例は、本発明の第1および第2の表面処理鋼板に
ついて検討したものである。被覆層形成用として、表1
に示した組成の塗布液A〜Dを調製した。このうち塗布
液BおよびCを使用して得られる鋼板は本発明の第1の
表面処理鋼板に相当し、塗布液AおよびDを使用して得
られる鋼板は本発明の第2の表面処理鋼板に相当する。
ケイ酸塩水溶液としては、固形分としてSiO2 を20
重量%含有し、SiO2 /Na2 O比が10/1〜4/
1であるケイ酸ナトリウム水溶液を用いた。またポリエ
チレン系樹脂およびポリウレタン系樹脂はいずれも固形
分20重量%のエマルジョンを用いた。
【0087】
【表1】
【0088】次に、電気亜鉛めっき鋼板(亜鉛付着量:
20g/m2 )にクロメート処理(Cr付着量:20m
g/m2 )を行って、原板を得た。原板の全反射率は8
3%であった。表1に示した各種塗布液A〜Dを、この
原板表面にロールコーターにて種々の被覆率になる様に
付着量を変化させて塗布した後、熱風乾燥炉内を移送さ
せて乾燥させた。得られた各種鋼板の性能評価結果につ
いて、表2に本発明の第1の表面処理鋼板の結果を、表
3に本発明の第2の表面処理鋼板の結果を夫々示す。
【0089】
【表2】
【0090】表2から以下の様に考察することができ
る。No.1〜5、8〜12は、表面処理後の全反射率変
化度が本発明で規定された範囲である0.80以下を満
足する実施例であり、人工指紋液塗布後の全反射率変化
度が本発明で規定された範囲である0.90以上とな
り、優れた耐指紋性を有していることが分かる。但し、
No.5や12の様に被覆率が100%になると、アース
性に劣る様になる。
【0091】これに対し、No.6,7,13,14は、
表面処理後の全反射率変化度が0.80を超える比較例
であり、被覆率が本発明で規定する範囲をはずれてお
り、人工指紋液塗布後の全反射率変化度も0.90未満
になり、耐指紋性に劣ることが分かる。
【0092】
【表3】
【0093】表3から以下の様に考察することができ
る。No.1〜5、8〜12は、表面処理後の全反射率変
化度が本発明で規定された範囲である0.80以下を満
足する実施例であり、人工指紋液塗布後の全反射率変化
度が本発明で規定された範囲である0.90以上とな
り、優れた耐指紋性を有していることが分かる。但し、
No.5や12の様に被覆率が100%になると、アース
性に劣る様になる。
【0094】これに対し、No.6,7,13,14は、
表面処理後の全反射率変化度が0.80を超える比較例
であり、被覆率が本発明で規定する範囲をはずれてお
り、人工指紋液塗布後の全反射率変化度も0.90未満
になり、耐指紋性に劣ることが分かる。
【0095】実施例2 本実施例及び後記実施例3は、本発明の第4の表面処理
鋼板について検討したものである。被覆層形成用とし
て、表4に示したクロメート処理液を調製した。無機コ
ロイド化合物としては、日産化学工業(株)製コロイダ
ルシリカ「スノーテックス40」を、リン酸化合物とし
てオルトリン酸を、また、シランカップリング剤として
は、信越化学工業(株)製のβ−(3,4エポキシシク
ロヘキシル)エチルトリメトキシシランを夫々用いた。
尚、クロメート処理液中の無機コロイド化合物の含有量
は、クロム酸に対するSiO2 の比で表し、クロメート
処理液中のリン酸化合物の含有量は、クロム酸に対する
3 PO4 の比で表した。
【0096】次に、全反射率約83%である電気亜鉛め
っき鋼板(亜鉛付着量:20g/m 2 )を原板として、
上記クロメート処理液を塗布し、クロメート被覆層の付
着量が金属Cr換算で5〜300mg/m2 の範囲にな
る様に制御した後、熱風乾燥炉にて100℃で1分間乾
燥することにより供試材を作製した。得られた供試材の
性能評価を表5に示す。
【0097】
【表4】
【0098】
【表5】
【0099】表5から以下の様に考察することができ
る。No.1〜6は、表面処理後の全反射率変化度が本発
明で規定された範囲である0.80以下を満足する実施
例であり、人工指紋液塗布後の全反射率変化度が本発明
で規定された範囲である0.90以上となり、優れた耐
指紋性を有していることが分かる。
【0100】これに対し、No.7は、クロメート被覆層
の付着量が少ない為に表面処理後の全反射率変化度が
0.80を超えてしまい、耐指紋性に劣ることが分か
る。No.8は、表面処理後の全反射率変化度は本発明で
規定する範囲を満足しているが、クロメート被覆層の付
着量が多い為、アース性に劣っている。
【0101】実施例3 実施例2と同じ原板を用い、表4に示したクロメート処
理液の各成分比を種々変化させ、被覆率:85〜90
%、付着量:100mg/m2 の範囲でクロメート被覆
層を被覆した供試材を作製した。得られた供試材の性能
評価を表6〜表9に示す。
【0102】
【表6】
【0103】表6はクロムの還元率:Cr3+/(Cr3+
+Cr6+)の影響を調べたものであり、それ以外のクロ
メート処理液の組成は表3と同じである。No.9〜13
は、クロムの還元率が本発明の好ましい範囲を満足する
実施例であり、クロメート処理後の全反射率変化度が
0.80以下になる為、耐指紋性に優れると共に、耐食
性、塗装性、アース性、溶接性も良好である。
【0104】これに対して、クロムの還元率が少ないN
o.14は、優れた耐指紋性を有するものの、塗装性に劣
り、目的とする性能を全て具備させることができなかっ
た。また、No.15はクロムの還元率が多い例であり、
耐指紋性、耐食性、塗装性に劣っている。
【0105】
【表7】
【0106】表7は、無機コロイド化合物(SiO2
クロム酸比)の影響を調べたものであり、それ以外のク
ロメート処理液の組成は表3と同じである。No.16〜
20は、無機コロイド化合物の添加比率が本発明の好ま
しい範囲を満足する実施例であり、クロメート処理後の
全反射率変化度が0.80以下になる為、耐指紋性に優
れると共に、耐食性、塗装性、アース性、溶接性も良好
である。
【0107】これに対して、無機コロイド化合物の添加
比率が少ないNo.21は、耐指紋性は良好であるが、耐
食性や塗装性に劣っている。また、No.22は無機コロ
イド化合物の添加比率が多い例であり、全ての性能に劣
っている。
【0108】
【表8】
【0109】表8は、リン酸の影響を調べたものであ
り、それ以外のクロメート処理液の組成は表4と同じで
ある。No.23〜27は、リン酸の添加比率が本発明の
好ましい範囲を満足する実施例であり、クロメート処理
後の全反射率変化度が0.80以下になる為、耐指紋性
に優れると共に、耐食性、塗装性、アース性、溶接性も
良好である。
【0110】これに対して、リン酸の添加比率が多いN
o.29は、耐指紋性は良好であるが、耐食性や塗装性に
劣っており、また、リン酸の添加比率が少ないNo.28
は、更にアース性にも劣っている。
【0111】
【表9】
【0112】表9は、シランカップリング剤の影響を調
べたものであり、それ以外のクロメート処理液の組成は
表4と同じである。No.30〜34は、シランカップリ
ング剤の添加比率が本発明の好ましい範囲を満足する実
施例であり、クロメート処理後の全反射率変化度が0.
80以下になる為、耐指紋性に優れると共に、耐食性、
塗装性、アース性、溶接性も良好である。
【0113】これに対して、シランカップリング剤の添
加比率が少ないNo.35は、ムラがみられ、耐食性や塗
装性に劣っており、また、シランカップリング剤の添加
比率が多いNo.36では、性能向上作用が飽和している
ことが分かる。
【0114】実施例4 本実施例、後記実施例5及び実施例6は、本発明の第3
の表面処理鋼板について検討したものである。電気亜鉛
めっき鋼板(亜鉛付着量:20g/m2 )に反応型クロ
メート処理を施したクロメート処理鋼板(Cr付着量2
0mg/m2 、全反射率約72%)を原板として用い
た。原板に塗布する処理液は、表10に示す組成の無機
・有機複合皮膜処理液を使用した。尚、ケイ酸塩として
使用するケイ酸リチウムは日産化学工業(株)製の「リ
チウムシリケート45」を、ケイ酸コロイドは日産化学
工業(株)製のコロイダルシリカ「スノーテックス4
0」を用いた。また、有機樹脂としては、第一工業製薬
(株)製の「スーパーフレックス110」を、固形潤滑
剤としては、三井石油化学(株)製「ケミパールW95
0」(粒子径0.6μm)を夫々用いた。尚、無機・有
機複合皮膜中のNa濃度やK濃度は、酸溶解/ICP発
光分析法にて測定した。
【0115】
【表10】
【0116】上記原板に、この無機・有機複合皮膜処理
液を塗布して被覆層のSi付着量が0.02〜0.6g
/m2 の範囲になる様に制御した後、熱風乾燥炉いて1
00℃で1分間乾燥して供試材を作製した。得られた供
試材の性能評価を表11に示す。尚、無機・有機複合皮
膜の被覆率は、原板の粗度を種々変更することにより制
御した。
【0117】
【表11】
【0118】No.1〜6は、表面処理後の全反射率変化
度が本発明で規定された範囲である0.80以下を満足
する実施例であり、人工指紋液塗布後の全反射率変化度
が本発明で規定された範囲である0.90以上となり、
優れた耐指紋性を有していることが分かる。
【0119】これに対し、No.7及び8は、被覆層中の
Si付着量が少ない為に、表面処理後の全反射率変化度
が0.80を超える比較例であり、人工指紋液塗布後の
全反射率変化度が0.90未満になり、耐指紋性に劣る
ことが分かる。また、No.9及び10は、耐指紋性に優
れるが、被覆層中のSi付着量が多い為、アース性に劣
っている。No.11及び12は、反射率比が本発明の要
件を満足しない為に表面処理後の全反射率変化度が0.
80を超え、耐指紋性に劣る。
【0120】実施例5 実施例4と同じ原板を用い、表10に示した無機・有機
複合皮膜処理液の各成分比を種々変化させ、被覆率85
〜90%、Si付着量0.1g/m2 の範囲で無機・有
機複合被覆層を被覆した供試材を作製した。得られた供
試材の性能評価を表12〜表16に示す。
【0121】
【表12】
【0122】表12はLi/Si比の影響を調べたもの
であり、それ以外の処理液の組成は表10と同じであ
る。No.13〜17は、Li/Si比が本発明の好まし
い範囲を満足する実施例であり、複合皮膜処理後の全反
射率変化度が0.80以下になる為、耐指紋性に優れる
と共に、深絞り加工性、動摩擦係数(潤滑性)、耐食
性、塗装性、アース性も良好である。
【0123】これに対して、Li/Si比が少ないNo.
18は、複合皮膜処理後の全反射率変化度は本発明の要
件を満足するため耐指紋性に優れるものの、アース性を
除く全ての性能に劣ることが分かった。また、Li/S
i比が多いNo.19は、複合皮膜処理後の全反射率変化
度が本発明の要件を満足しない為、耐指紋性が低下し、
深絞り加工性、塗装性も劣っていた。
【0124】
【表13】
【0125】表13は、有機樹脂の添加濃度の影響を調
べたものであり、それ以外の処理液の組成は表10と同
じである。No.20〜24は、有機樹脂の添加濃度が本
発明の好ましい範囲を満足する実施例であり、無機・有
機複合皮膜処理後の全反射率変化度が0.80以下にな
る為、耐指紋性に優れると共に、深絞り加工性、潤滑
性、耐食性、塗装性、アース性も良好である。
【0126】これに対して、有機樹脂の添加濃度が低い
No.25は、耐指紋性は良好であるが、耐食性や塗装性
に劣っている。また、No.26は有機樹脂濃度が高い例
であり、深絞り加工性や塗装性、アース性に劣ってい
る。
【0127】
【表14】
【0128】表14は、固形潤滑剤の添加濃度の影響を
調べたものであり、それ以外の処理液の組成は表10と
同じである。No.27〜31は、固形潤滑剤の添加濃度
が本発明の好ましい範囲を満足する実施例であり、無機
・有機複合皮膜処理後の全反射率変化度が0.80以下
になる為、耐指紋性に優れると共に、深絞り加工性、潤
滑性、耐食性、塗装性、アース性も良好である。
【0129】これに対して、固形潤滑剤の添加濃度が高
いNo.33は、耐指紋性は良好であるが、耐食性や塗装
性に劣っており、また、固形潤滑剤の添加濃度が低いN
o.32は、潤滑改善作用が充分得られない為、更に深絞
り加工性や潤滑性にも劣っている。
【0130】
【表15】
【0131】表15は、固形潤滑剤の粒子径の影響を調
べたものであり、それ以外の処理液の組成は表10と同
じである。No.34〜38は、固形潤滑剤の粒子径が本
発明の好ましい範囲を満足する実施例であり、無機・有
機複合皮膜処理後の全反射率変化度が0.80以下にな
る為、耐指紋性に優れると共に、深絞り加工性、潤滑
性、耐食性、塗装性、アース性も良好である。これに対
して、固形潤滑剤の粒子径が小さいNo.39や多いNo.
40は、深絞り加工性や潤滑性、耐食性、塗装性に劣っ
ている。
【0132】
【表16】
【0133】表16は、皮膜中に存在するNaやKの影
響を調べたものであり、それ以外の処理液の組成は表1
0と同じである。No.41〜45は、NaやKの濃度が
本発明の好ましい範囲を満足する実施例であり、無機・
有機複合皮膜処理後の全反射率変化度が0.80以下に
なる為、耐指紋性に優れると共に、深絞り加工性、潤滑
性、耐食性、塗装性、アース性も良好である。
【0134】これに対して、NaやKの濃度がやや高い
No.46は、耐食性や塗装性に劣り、更に、No.46に
比べて上記濃度の高いNo.47では、耐指紋性や深絞り
加工性にも悪影響が見られた。
【0135】実施例6 本実施例はシランカップリング剤の添加による影響を調
べたものであり、実施例4においてSi付着量を0.2
5g/m2 としたこと以外は実施例4と同様にして供試
材を作製した。得られた供試材の性能評価を表17に示
す。
【0136】
【表17】
【0137】先ず、表の結果から明らかな様に、シラン
カップリング剤の添加による耐指紋性への影響は全く見
られなかった。No.1〜8は、シランカップリング剤の
含有量が本発明の好ましい範囲を満足する実施例であ
り、複合皮膜処理後の全反射率変化度が0.80以下に
なる為、耐指紋性に優れると共に、深絞り加工性および
塗装性も良好である。
【0138】これに対して、シランカップリング剤を添
加しないNo.9やその含有量が少ないNo.10は、複合
皮膜処理後の全反射率変化度は本発明の要件を満足する
ため耐指紋性に優れるものの、二次密着性に劣ることが
分かった。また、シランカップリング剤の含有量が多い
No.11〜13は、深絞り加工性が低下した。
【0139】
【発明の効果】本発明は以上の様に構成されており、表
面処理被覆層が完全に原板を覆わなくても耐指紋性が良
好であり、しかも、原板の表面粗さに関係なく、指紋が
付着した後の外観変化が少ないためにその痕跡が目立ち
にくい、という独特の特性を有する表面処理鋼板を提供
することができた。
【0140】その結果、クロメート被覆層が設けられた
表面処理鋼板の場合には、耐指紋性に加えて、優れた耐
食性、塗装性、アース性および溶接性を兼ね備えたもの
になり、また、ケイ酸アルカリ金属塩及び有機樹脂を含
有する無機・有機複合皮膜が設けられた表面処理鋼板の
場合には、上述した耐指紋性や耐食性等に加えて、優れ
た加工性、特に深絞り加工性を具備することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】凹部の体積と被覆された体積を説明するための
断面図である。
【図2】被覆された表面部を説明するための概略図であ
る。
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平4−108569(JP,A) 特開 平5−331657(JP,A) 特開 平6−335705(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C23C 30/00

Claims (23)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 耐指紋性向上のための被覆層が少なくと
    も片面に設けられた表面処理鋼板において、 該表面処理鋼板の被覆面の全反射率R1 と、表面処理前
    の原板の全反射率R0が、下記関係式(1)を満足する
    ものであることを特徴とする耐指紋性に優れた表面処理
    鋼板。 R1 ≦0.80R0 …(1) ここで、 R0 :原板の全反射率 R1 :表面処理鋼板の全反射率
  2. 【請求項2】 50℃の白色ワセリン−アセトン飽和溶
    液からなる人工指紋液を表面処理鋼板に塗布したときの
    塗布面の全反射率R2 が、下記関係式(2)を満足する
    ものである請求項1に記載の表面処理鋼板。 R2 ≧0.90R1 …(2) ここで、 R1 :表面処理鋼板の全反射率 R2 :人工指紋液を表面処理鋼板に塗布した後の塗布面
    の全反射率
  3. 【請求項3】 表面処理前の原板は、亜鉛若しくは亜鉛
    合金めっき鋼板、または該鋼板にクロメート処理が施さ
    れた化成処理鋼板である請求項1または2に記載の表面
    処理鋼板。
  4. 【請求項4】 耐指紋性向上のための被覆層が、実質的
    に有機樹脂からなる請求項1〜3のいずれかに記載の表
    面処理鋼板。
  5. 【請求項5】 被覆層によって被覆された部分の体積
    が、原板表面の凹部の体積に対して80%以上100%
    未満であり、かつ被覆された部分の表面積は、被覆後の
    表面処理鋼板の全表面積の70%以上100%未満であ
    る請求項4に記載の表面処理鋼板。
  6. 【請求項6】 耐指紋性向上のための被覆層が、実質的
    にケイ酸塩からなる請求項1〜3のいずれかに記載の表
    面処理鋼板。
  7. 【請求項7】 被覆層によって被覆された部分の表面積
    は、被覆後の表面処理鋼板の全表面積の70%以上10
    0%未満である請求項6に記載の表面処理鋼板。
  8. 【請求項8】 耐指紋性向上のための被覆層が、ケイ酸
    アルカリ金属塩、またはケイ酸アルカリ金属塩とケイ酸
    コロイドを含み、更に有機樹脂及び固形潤滑剤を含むも
    のであり、 該ケイ酸アルカリ金属塩がケイ酸リチウムで、且つ該被
    覆層中に占めるLiとSiの原子比:Li/Siが0.
    2〜0.6、有機樹脂の含有量が0.5〜10重量%、
    固形潤滑剤の含有量が0.25〜2重量%である請求項
    1〜3のいずれかに記載の表面処理鋼板。
  9. 【請求項9】 被覆層によって被覆された部分の表面積
    は、被覆後の表面処理鋼板の全表面積の70%以上10
    0%未満である請求項8に記載の表面処理鋼板。
  10. 【請求項10】 前記被覆層中に不純物として存在する
    Na及び/又はKの含有量が合計で1.0重量%以下に
    抑制されたものである請求項8または9に記載の表面処
    理鋼板。
  11. 【請求項11】 前記被覆層の付着量が、Si重量にて
    0.025〜0.5g/m2 である請求項8〜10のい
    ずれかに記載の表面処理鋼板。
  12. 【請求項12】 固形潤滑剤の粒径が0.10〜1μm
    である請求項8〜11のいずれかに記載の表面処理鋼
    板。
  13. 【請求項13】 上記被覆層中にシランカップリング剤
    が1.0〜10重量%含有される請求項8〜12のいず
    れかに記載の表面処理鋼板。
  14. 【請求項14】 シランカップリング剤が下記(3)式
    または(4)式で表されるシランカップリング剤よりな
    る群から選択される1種以上である請求項13に記載の
    表面処理鋼板。 【化1】 (式中、A1 およびA5 は低級アルキル基、 A2 ,A3 およびA4 は低級アルコキシ基を表す)
  15. 【請求項15】 シランカップリング剤が下記(5)式
    または(6)式で表されるシランカップリング剤からな
    る群より選択される1種以上である請求項13に記載の
    表面処理鋼板。 【化2】 (式中、A0 はグリシドキシ基、 A6 は低級アルキレン基を表し、 A2 ,A3 ,A4 およびA5 は前と同じ意味である)
  16. 【請求項16】 耐指紋性向上のための被覆層が、クロ
    メート被覆層である請求項1〜3のいずれかに記載の表
    面処理鋼板。
  17. 【請求項17】 被覆層によって被覆された部分の表面
    積は、被覆後の表面処理鋼板の全表面積の80%以上1
    00%未満である請求項16に記載の表面処理鋼板。
  18. 【請求項18】 クロメート被覆層の付着量が金属Cr
    換算で10〜250mg/m2 である請求項16または
    17に記載の表面処理鋼板。
  19. 【請求項19】 クロメート被覆層は、クロムの還元
    率:Cr3+/(Cr3++Cr6+)が0.10〜0.5で
    あるクロム酸を主体とし、更に無機コロイド化合物、リ
    ン酸化合物、およびシランカップリング剤を含むクロメ
    ート処理液を原板表面に塗布して乾燥することによって
    形成されるものである請求項16〜18のいずれかに記
    載の表面処理鋼板。
  20. 【請求項20】 クロメート処理液中の無機コロイド化
    合物は、クロム酸換算値1に対して1.0〜10含まれ
    ているものである請求項19に記載の表面処理鋼板。
  21. 【請求項21】 クロメート処理液液中のリン酸化合物
    は、クロム酸換算値1に対して0.05〜0.5含まれ
    ているものである請求項19または20に記載の表面処
    理鋼板。
  22. 【請求項22】 クロメート処理液中のシランカップリ
    ング剤は、クロム酸換算値1に対して0.5〜5含まれ
    ているものである請求項19〜21のいずれかに記載の
    表面処理鋼板。
  23. 【請求項23】 クロムの還元率:Cr3+/(Cr3+
    Cr6+)が0.10〜0.5であるクロム酸を主体と
    し、更に無機コロイド化合物、リン酸化合物、およびシ
    ランカップリング剤を含むクロメート処理液を原板表面
    に塗布して乾燥することを特徴とする請求項16〜22
    のいずれかに記載の表面処理鋼板の製造方法。
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