JP3136927B2 - 耐アルカリ性に優れた高炉用炭素質レンガとその製造方法 - Google Patents

耐アルカリ性に優れた高炉用炭素質レンガとその製造方法

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JP3136927B2
JP3136927B2 JP06282236A JP28223694A JP3136927B2 JP 3136927 B2 JP3136927 B2 JP 3136927B2 JP 06282236 A JP06282236 A JP 06282236A JP 28223694 A JP28223694 A JP 28223694A JP 3136927 B2 JP3136927 B2 JP 3136927B2
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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は高炉用炭素質レンガとそ
の製造方法に関する。より詳しくは、低気孔率で耐アル
カリ性に優れ、特に高炉炉組織構造の内張りに使用した
場合に高炉寿命を改善することができる高炉用炭素質レ
ンガとその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】現在の鉄鋼製造プロセスにおいて、溶銑
の生産は溶解炉 (高炉) を用いた鉄鋼石の溶融還元が主
流である。この高炉の寿命は近年著しく長くなってきた
が、この高炉の延命には、高炉耐火物の補修技術の進歩
が大きく貢献している。一例を挙げれば、シャフト部耐
火物では、熱間における不定形耐火物の吹き付け補修法
やステーブクーラーの取り替え等の延命技術が既に確立
しており、この部分の耐火物の損耗は高炉炉命を律する
要因ではなくなってきている。
【0003】これに対し、高炉炉底部では、常時溶銑が
プールされているため、熱間での直接的な補修は非常に
困難である。このため、現在までのところ、炉底部耐火
物の直接的な補修技術は存在せず、鉄皮を介して耐火物
を冷却することにより侵食を防止するといった間接的な
延命技術に留まっており、より耐用性に優れた炉底用耐
火物の開発が望まれている。
【0004】この炉底用耐火物としては、炭素質レンガ
(ブロック) の使用が主流である。これは、炭素が他材
質に比較して融点が非常に高く、高温での強度劣化が少
ないこと、そして耐スラグ性に優れていて、熱伝導率が
良好であることから、先に述べた鉄皮を介した冷却が容
易であるといった、有利な高温特性を有するためであ
る。
【0005】炭素質レンガの主原料は、土壌黒鉛、鱗状
黒鉛、焙焼無煙炭、冶金用コークス、人造黒鉛等の炭素
原料である。これらの中でも、例えば焙焼無煙炭は耐溶
銑性に優れているが熱伝導性に劣り、それに対して人造
黒鉛は熱伝導率に優れている反面、耐溶銑性に劣り、こ
れからなるレンガは加炭溶解しやすいといったように、
それぞれに長所・短所をもっている。このためレンガ設
計の際には、必要な特性を考慮して選択した炭素原料を
1種のみ、或いは2種以上を適当な割合で混合して使用
する。炭素質レンガの製造においては、この炭素原料
を、フェノール樹脂やピッチといった有機系結合材とと
もに混練し、高圧プレスや押出成形法により所定形状に
成形後、成形体を焼成して、製品としている。焼成は、
レンガの酸化を防止するため、成形体を収容した容器内
にコークス粉を充填し、これを密閉して焼成するのが普
通である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】炭素質レンガは、前述
したように高温特性に優れているものの、耐アルカリ性
に劣るという欠点がある。これは、主原料である炭素原
料が、灰分としてAl2O3、SiO2等の酸化物成分を含んで
おり、これが炭素質レンガに持ち込まれてアルカリと反
応するためであると考えられている。より詳しく説明す
ると、高炉炉内ではコークス等の装入原料に由来するア
ルカリ成分(主にカリウム)が高炉の操業とともに蓄積
され、蒸発・凝固を繰り返して炉内を循環している。こ
の一部は炉底部にも達し、炭素質レンガ内に浸透・蓄積
する。レンガ内に侵入したアルカリ成分は、炭素質レン
ガ中に存在するAl2O3、SiO2等の酸化物と反応して、ア
ルカリ珪酸塩を生成する。この反応は体積膨張を伴うた
め、レンガ組織に亀裂が発生し、組織を脆化させること
が知られている。
【0007】このアルカリによる脆化層の発生(以下、
アルカリ脆化ということがある)を防止する手段とし
て、灰分含有量の少ない石油コークス、石炭コークス等
を炭素原料に使用することで、アルカリとの反応を防止
することが公知である(特開昭59−195580号公報)。し
かし、本発明者らが、各種レンガ材を試作し、カリウム
ガスを添加した不活性雰囲気の炉内でレンガに人為的に
アルカリ脆化を発生させる試験を種々の温度で実施した
ところ、灰分含有量の極めて低い高純度黒鉛を原料とし
た場合でも、カリウムの液相存在温度でアルカリ脆化が
進行するという知見を得た。
【0008】また、同じ試験法でAl2O3 レンガを試料に
用いたところ、見掛気孔率の大小が脆化の程度と一致す
ることが分かった。即ち、見掛気孔率が13%程度のAl2O
3 レンガでは、膨潤、亀裂の発生、剥離といった脆化特
有の変化が認められたのに対し、同組成であっても、見
掛気孔率がほぼ0%の緻密質Al2O3 セラミックス材では
アルカリ脆化の発生は認められなかった。
【0009】これら試験結果から、前述のアルカリ珪酸
塩の発生による炭素質レンガの脆化は、アルカリ脆化要
因の一つであるものの、灰分量の低減だけでは十分でな
く、開気孔を介したレンガ内へのアルカリの浸透・蓄積
を防止することがアルカリ脆化の抑制に必要であること
が判明した。
【0010】炭素質レンガの気孔の低減については、レ
ンガへの溶銑浸透を防止する観点から、これまでにも検
討が行われている。特に、高炉の解体調査において、1
μm程度の大きさの気孔にも溶銑が浸透していることが
分かっており、レンガ中の1μm以上の気孔量を減少さ
せる手段がいくつか提案されている。
【0011】例えば、製銑研究第331 号 (1988) p.1-6
には、炭素質レンガの製造工程において金属Siを添加
し、焼成工程でこれを雰囲気ガスと反応させることで、
気孔中にSi−O−N系化合物の繊維状結晶を生成させ
て、気孔を細孔化させることが提案されている。この方
法によれば、レンガの見掛気孔率自体は低減しないもの
の、全気孔率に占める1μm以下の気孔の割合が増加し
たことが報告されている。しかし、この方法を適用し、
気孔の細孔化を図っている市販の黒鉛−SiC系レンガに
ついて、前記したアルカリ脆化試験を実施したところ、
このレンガでも脆化が進行することが確認された。従っ
て、アルカリ脆化を抑制するには、気孔の細孔化のみな
らず、気孔率の低減を図ることが重要であることが分か
った。
【0012】また、特開平2−172882号公報には、耐酸
化性の向上を目的として、平均粒径1μm以下の金属超
微粉を含んだ溶液を炭素質レンガに加圧含浸すること
で、開気孔を充填することが提案されている。しかし、
大型高炉の炉底部に用いる炭素質ブロックは600 mm×70
0 mm×3000 mm といった大型ブロックであるため、1μ
m以下の超微粉であってもブロックの中心部にまで均等
に含浸が行われ、効果的に開気孔の充填が図れるかは疑
問である。
【0013】ここに、本発明の目的は、アルカリ脆化が
抑制された、耐アルカリ性に優れた高炉内張り用炭素質
レンガとその製造方法を提供することである。具体的に
は、脆化層の発生原因となる炭素質レンガの開気孔の量
(気孔率) を低減することによって上記目的を達成する
ことが本発明の課題である。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
を解決するために研究した結果、炭素質レンガの製造原
料に、微細な金属Al粉末を添加して特定雰囲気中で焼成
を行うと、繊維状のAl 2O3 またはAlN が生成して、これ
が開気孔を充填する結果、炭素質レンガの気孔率が大き
く低減し、アルカリ脆化が起こりにくくなることを見出
し、本発明に到達した。
【0015】ここに、本発明により、開気孔の一部が繊
維状のアルミニウム酸化物および/または窒化物によっ
て充填されている、見掛け気孔率が11%以下、耐アルカ
リ性試験での膨張率が0.5 以下の、低気孔率で耐アルカ
リ性に優れた高炉用炭素質レンガが提供される。ここ
で、耐アルカリ性試験での膨張率とは、詳しくは、実施
例1において説明するように、カリウムガスを含有する
アルゴン雰囲気中で600 ℃に1時間保持した後の、成形
方向と同方向での膨張率を意味する。
【0016】本発明の高炉用炭素質レンガは、1種また
は2種以上の炭素原料、平均粒径が25μm以下の金属ア
ルミニウム粉末、および有機系結合材を含む混合物を混
練・成形後、CO (一酸化炭素) 含有還元性雰囲気中ま
たは窒素含有不活性雰囲気中で焼成することにより製造
できる。好適態様にあっては、金属アルミニウム粉末の
配合量が炭素原料と金属アルミニウム粉末との合計量に
基づいて 0.1〜20wt%の範囲である。
【0017】
【作用】以下、本発明の炭素質レンガとその製造方法に
ついて詳細に説明する。本発明の炭素質ブロックの主原
料となる炭素原料としては、従来と同様に、土壌黒鉛、
鱗状黒鉛、焙焼無煙炭、人造黒鉛、冶金用コークス等か
ら選択できるが、これらに限定されるものではない。よ
り灰分の少ない石油コークス、石炭ピッチコークス、カ
ーボンブラックなども使用可能である。炭素原料は、1
種もしくは2種以上を使用できる。好ましい炭素原料
は、人造黒鉛および焙焼無煙炭の一方または両方であ
る。
【0018】結合材は、成形時に炭素原料を結合して成
形を可能にすると共に、焼成時には炭化して、生成した
炭化組織によって、骨材である炭素原料を結合する作用
を果たす。この作用を発揮しうる任意の有機物を結合材
として使用することができるが、好ましい結合材はフェ
ノール樹脂およびピッチ (例、タールピッチ) の一方ま
たは両方である。結合材の配合量は、主原料である炭素
原料に対して1〜20wt%の範囲が適当である。
【0019】本発明によれば、炭素原料と結合材に加え
て、金属アルミニウム粉末 (以下、Al粉末という) をさ
らに配合する。Al粉末としては、平均粒径が25μm以下
の微粉末を使用する。それにより、焼成後に得られた炭
素質レンガの気孔率が著しく低減し、耐アルカリ性の顕
著な向上が得られる。
【0020】平均粒径が25μmを超える比較的粗大なAl
粉末を使用すると、得られた炭素質レンガの気孔率は低
下するものの、耐アルカリ性は十分に改善されない。ま
た、粗大なAl粉末では、レンガ内部にAl蒸発による閉気
孔が発生するため、得られたレンガの強度が著しく低下
する。Al粉末ではなく、Si粉末を配合した場合には、25
μm以下の微粉末を使用しても、気孔率の低下と耐アル
カリ性の向上のいずれの効果も得られない。
【0021】特に、成形後の焼成雰囲気がCO含有還元
性雰囲気である場合には、平均粒径20μm以下、より好
ましくは15μm以下のより微細なAl粉末を使用すること
が好ましい。焼成雰囲気がN2 含有不活性雰囲気の場合
には、好ましくは平均粒径が20μm以下のAl粉末を使用
する。なお、使用するAl粉末の平均粒径が大きすぎる時
には、成形前の混合時に粉砕を行うことで、本発明に規
定する平均粒径を満たすようにAl粉末の粒径を低減させ
てもよい。
【0022】Al粉末の配合量は、炭素原料の合計重量に
基づいて 0.1〜20wt%の範囲が好ましく、より好ましく
は 0.5〜5wt%の範囲である。Al粉末の配合量が0.5 wt
%以下では、気孔率の低減が不十分である。一方、20wt
%を超える多量のAl粉末を配合すると、焼成時の体積膨
張でレンガに亀裂が発生する可能性がある。Al粉末の純
度は特に制限されないが、95wt%以上のものが好まし
い。
【0023】炭素質レンガの製造工程のうち、混練と成
形は従来と同様に行う。即ち、上記の炭素原料とAl粉末
を混合し、必要であれば粉砕する。この混合物に有機系
結合材を加えて混練し、必要により熟成した後、油圧プ
レス、静水圧プレス、押出成形などの適当な手段で所望
形状に加圧成形する。なお、炭素質レンガの性能に著し
い悪影響を及ぼさない範囲で、上記以外の任意添加成分
を、粉末混合時または混練時に添加することができる。
このような任意添加成分の例としては、SiCなどの金属
炭化物粉末、Si粉末などのAl以外の金属粉末、さらにSi
3N4 等の窒化物粉末などが挙げられる。
【0024】得られた成形体を乾燥後に焼成するのであ
るが、本発明では、焼成はCO含有還元性雰囲気中ま
たは窒素含有不活性雰囲気中で行う。CO含有還元性
雰囲気は、COガス単独か、またはCOと他の還元性ガ
ス (例、水素) および不活性ガス (例、N2 、アルゴ
ン、ヘリウム等) から選んだ1種もしくは2種以上との
混合ガスの雰囲気でよく、この雰囲気を成形体の周囲に
流通させるか、或いは成形体をこの雰囲気の密閉容器内
に収容して焼成を行うことができる。
【0025】また、従来技術と同様、密閉した焼成容器
内に成形体をコークス粉と一緒に充填することによって
も、CO含有還元性雰囲気を生じさせることができる。
即ち、この場合には、コークス粉が空気中の酸素と反応
するため、焼成時の雰囲気はCO(g) 、CO2(g)、N
2(g)の混合ガスとなる。1000℃以上ではCO2 はさらに
コークスと反応し、COとなり、この混合ガス雰囲気は
CO含有還元性雰囲気となる。従って、この場合には成
形体の周囲雰囲気は空気のままでよく、焼成時の加熱中
にCO含有還元性雰囲気が生成する。
【0026】一方、窒素含有不活性雰囲気としては、N
2 ガス単独か、またはN2 ガスと他の不活性ガス (アル
ゴン、ヘリウム等) との混合ガスの雰囲気が使用でき
る。焼成温度は1000〜2000℃、好ましくは1200〜1500℃
の範囲が適当であり、焼成時間は成形体の大きさにもよ
るが通常は24時間以上である。
【0027】本発明では、焼成する成形体がAl粉末を含
有する。焼成時には、このAl粉末が周囲の炭素原料のC
と反応し、次の(1) 式に従って炭化アルミニウム(Al
4C3) が生成する。 4 Al(s)+3C(s) → Al4C3(s) ‥‥ (1) 焼成雰囲気がCO含有還元性雰囲気である場合、この反
応で生成したAl4C3(s)が雰囲気中のCO(g) と反応し
て、Al2O3(s)が生成する。ただし、実際には、この反応
はAl粉末の蒸発により生成したAl(g) が関与して起こ
る。即ち、Al4C3(s)は安定であり、Al4C3(s)と平衡に存
在する気相種の中でAl(g) の分圧が最も高く、実際には
Al(g) とCO(g) が反応してAl2O3(s)が発生する。この
反応は気相反応であるため、反応生成物のAl2O3(s)は、
気相の拡散経路である開気孔に沿った繊維状結晶とな
り、この開気孔を効果的に充填する。
【0028】図1に、熱力学的に計算したAl2O3(s)が生
成するCOガス分圧と温度との関係を示す。図中の平衡
曲線より上部がAl2O3(s)の安定領域であり、この図か
ら、例えば1400℃でCOガス分圧が10-3(atm) 以上であ
ればAl2O3(s)が安定して生成することが分かる。従っ
て、Al2O3 の生成による開気孔低減のためには、焼成雰
囲気中のCOガス分圧がこの図中のAl2O3 安定領域にな
るように選択すべきである。ただし、これに必要なCO
ガス分圧の下限は、焼成温度が1600℃でも10-2 atmと小
さいので、COガスを1%以上含有していれば十分であ
る。
【0029】上記のようにAl4C3(s)と平衡に存在するAl
(g) が反応して消費されるにつれて、Al4C3(s)が分解し
てAl(g) を供給し、最終的に成形体中のAl粉末は、Al4C
3(s)を経て、炭素質レンガの開気孔を埋めたAl2O3(s)の
繊維状結晶となる。ただし、Al粉末のうち開気孔に隣接
するものは、Al4C3(s)を生成せず、固体または液体のAl
が雰囲気中のN2(g)やCO(g) と直接反応して、固体の
窒化物 (AlN)や酸化物(Al2O3)を生成し、やはり開気孔
を充填する。このうち、AlN は、最終的にCO(g) と反
応してAl2O3(s)を生成する。金属Alは蒸気圧が比較的高
いため、上記のAl(g) が関与する反応を受けやすく、効
果的に気孔を充填することができるため、細孔化のみな
らず、気孔量の低減も可能になるものと推測される。
【0030】焼成雰囲気がN2 含有不活性雰囲気、即
ち、COを含んでいない場合も、上記の(1) 式に従っ
て、Al粉末と周囲の炭素原料中のCとの反応でAl4C3(s)
が生成する。ただし、この場合には、Al4C3(s)と平衡に
存在する気相種の中で最も分圧の高いAl(g) がN2(g)と
反応してAlN(s)が生成し、COが存在しないため、AlN
(s)が最終生成物になる。即ち、上の場合と同様に、Al
粉末の大半はAl4C3(s)を経てAlN(s)になるが、AlN(s)の
生成反応が気相反応であるため、生成したAlN(s)は、気
相の拡散経路である開気孔に沿った繊維状結晶となり、
この開気孔を効果的に充填する。また、開気孔に隣接し
て存在するAl粉末は、Al4C3(s)を生成せず、固体または
液体Alが雰囲気中のN2(g)と直接反応してAlN(s)を生成
し、開気孔を充填する。
【0031】焼成雰囲気がN2 に加えてCOを含有して
いると、生成したAlN(s)は上記のようにCOと反応して
Al2O3(s)に変化するが、生成したAl2O3 がAlN に固溶
し、酸窒化アルミニウムが生ずる場合もある。従って、
本発明の方法で焼成後に得られた炭素質レンガの開気孔
を充填しているのは、繊維状のアルミニウム酸化物(Al2
O3) と窒化物(AlN) さらにこれらの固溶体である酸窒化
アルミニウムのいずれかとなる。
【0032】AlN はAl2O3 に比べて熱伝導率膨張率が黒
鉛材に近いことから、炭素質レンガの持つ高熱伝導性を
損なうことが少なく、加熱・急冷時の母材との膨張差に
よる亀裂発生の傾向も低くなる。その意味では、開気孔
をAlN で充填することになるN2 含有不活性雰囲気での
焼成の方が好ましい。しかし、実施例に示すように、C
O含有還元性雰囲気で焼成して開気孔をAl2O3 で充填し
ても、本発明の目的は十分に達成することができる。
【0033】なお、いずれの焼成雰囲気でも焼成時に中
間体として生成するAl4C3 は、常温で空気中の水分と反
応して分解する。従って、Al4C3 が残留しないように焼
成時間を十分にとることが望ましいが、焼成後にタール
などを炭素質レンガの表面に塗布することでレンガ内の
水分の侵入を防止できるので、必要であれば、このよう
な処置をとる。
【0034】
【実施例】以下、実施例により本発明を具体的に説明す
る。実施例中、%および部は特に指定のない限り重量%
および重量部である。
【0035】(実施例1)炭素原料として粒径範囲2〜
0.002mm の人造黒鉛を単独で使用し、この炭素原料95%
とAl粉末 (平均粒径12μm、純度99.5%) 5%とを混合
した。この粉末混合物100 部に結合材としてタールピッ
チ10部を加えてアイリッヒミキサーにより混練し、次い
で油圧プレスを使用して、800 kg/cm2の加圧下に直径30
mm ×高さ40 mm の円筒状に成形した。この成形体を、
100 %COガスを流通させた雰囲気(COガス分圧1at
m)中、1400℃で24時間焼成して、炭素質レンガを作製し
た。
【0036】得られた炭素質レンガの内部構造をSEM
で観察した結果、レンガ内の開気孔内が繊維状結晶で充
填されていた。また、この繊維状結晶はEDXによりAl
2O3であることが確認された。この炭素質レンガは嵩密
度が1.7 g/cm3 であり、JISR 2205により測定した見掛
け気孔率は10.2%、JIS R 2206に従って測定した圧縮強
さは350 Kg/cm2であった。さらに、この炭素質レンガの
耐アルカリ性と耐溶銑侵食性を次の方法で試験した。
【0037】耐アルカリ性試験 耐アルカリ性はCAMP-ISIJ vol.6(1993)-932 に記載のカ
リウムと炭素質レンガの反応試験で評価した。この時の
レンガ試料温度は600 ℃、炉内雰囲気はArであり、1時
間保持した。耐アルカリ性の評価は試験後、炉外に取り
だした試料の膨張率および外観変化により評価した。膨
張率は成形方向に対して平行方向 (円筒の中心軸方向)
での膨張率を試験前の長さで割った値である。
【0038】耐溶銑侵食性試験 レンガの試料をアルゴン雰囲気下、1500℃の溶銑中に2
時間浸漬した後、サンプルの残存厚みを比較して行っ
た。評価は、実施例1での結果を100 とした相対値であ
る耐溶銑侵食性指数により表す。この数値が大きいほ
ど、耐溶銑侵食性に優れている。試験結果は、炭素質レ
ンガの製造条件およびその特性とともに、表1にまとめ
て示す。
【0039】(実施例2)粉末混合物の配合割合を、人
造黒鉛80%とAl粉末20%に変えた以外は、実施例1と同
様に炭素質レンガを作製した。
【0040】(実施例3)炭素原料として実施例1で用
いたのと同様の人造黒鉛と粒径0.3 mm以下の焙焼無煙炭
を使用し、人造黒鉛70%、焙焼無煙炭25%、およびAl粉
末5%からなる粉末混合物を用いて、実施例1と同様に
炭素質レンガを作製した。
【0041】(比較例1)実施例1と同じ配合割合で同
様に炭素質レンガを作製したが、用いたAl粉末は平均粒
度が30μm、純度95.5%のものであった。
【0042】(比較例2)Al粉末に代えてSi粉末 (平均
粒径15μm、純度99.5%)を使用し、実施例1と同じ配
合割合で同様に炭素質レンガを作製した。これらの試験
結果と製造条件も、表1に併せて示す。
【0043】
【表1】
【0044】(実施例4)炭素原料として粒径範囲2〜
0.002mm の人造黒鉛と粒径0.3 mm以下の焙焼無煙炭を使
用した。人造黒鉛70%、焙焼無煙炭25%、およびAl粉末
(平均粒径15μm、純度95.5%) 5%からなる粉末混合
物100 部に、結合材としてタールピッチ10部を加えてア
イリッヒミキサーにより混練し、次いで油圧プレスを使
用して、800 kg/cm2の加圧下に230 ×114 ×65 mm の並
形レンガを成形し、100 %N2 ガスを流通させた雰囲気
(N2 ガス分圧1atm)中、1400℃で24時間焼成して、炭
素質レンガを作製した。
【0045】得られた炭素質レンガの内部構造をSEM
で観察した結果、レンガ内の開気孔内が繊維状結晶で充
填されていた。また、この繊維状結晶はEDXによりAl
N であることが確認された。この炭素質レンガは嵩密度
が1.74 g/cm3、見掛け気孔率は10.3%、圧縮強さは370
Kg/cm2であった。また、JIS R 2213に準じて測定した曲
げ強さは160 Kg/cm2、レーザーフラッシュ法で測定した
常温での熱伝導率と25〜1000℃での線膨張率は、それぞ
れ42 W/mK および0.4 %であった。
【0046】さらに、この炭素質レンガの耐アルカリ性
と耐溶銑侵食性を実施例1に記載した方法で試験した。
なお、以下の実施例および比較例での耐溶銑侵食性指数
は、この実施例4での結果を100 とした場合の相対値と
して示す。
【0047】(実施例5)粉末混合物の配合割合を、人造
黒鉛70%、焙焼無煙炭10%、およびAl粉末20%に変えた
以外は、実施例4と同様に炭素質レンガを作製した。
【0048】(実施例6)粉末混合物の配合割合を、人造
黒鉛25%、焙焼無煙炭70%、およびAl粉末5%に変えた
以外は、実施例4と同様に炭素質レンガを作製した。
【0049】(比較例3)粉末混合物の配合割合を、人造
黒鉛70%および焙焼無煙炭30%に変えた以外は、実施例
4と同様に炭素質レンガを作製した。即ち、本例では、
粉末混合物中にAl粉末を加えなかった。
【0050】(比較例4)粉末混合物の配合割合を、人造
黒鉛70%、焙焼無煙炭25%およびAl粉末 (平均粒径30μ
m、純度95.5%) 5%に変えた以外は実施例4と同様に
炭素質レンガを作製した。
【0051】以上の実施例4〜6と比較例3〜4で得ら
れた炭素質レンガの試験結果および製造条件を表2にま
とめて示す。
【0052】
【表2】
【0053】表1および表2から明らかなように、常法
によりAl粉末を配合しないで炭素質レンガを製造した比
較例2、3では、レンガの見掛け気孔率は17.4〜18.4%
で、耐アルカリ性にも劣っており、耐アルカリ性試験で
レンガに亀裂が発生し、その時の膨張率は1.2 %と大き
かった。
【0054】これに対し、本発明に従って、炭素原料に
平均粒径22μm以下の微細なAl粉末を配合して、COま
たはN2 含有雰囲気中で焼成して得た炭素質レンガは、
見掛け気孔率が11%以下と小さく、耐アルカリ性が著し
く向上して、耐アルカリ性試験でレンガ外観が変化せ
ず、膨張率は0.3 %未満と非常に低下した。また、N2
雰囲気中で焼成した場合には、開気孔内を充填する物質
がAlN であるため、強度と熱的特性も向上した。
【0055】しかし、炭素原料にAl粉末を配合しても、
Al粉末の平均粒径が25μmを超えると、比較例1、4に
示すように、見掛け気孔率は低下するものの、耐アルカ
リ性の改善は十分ではなく、特に膨張率はなお大きいま
まであった。また、Al粉末の変わりにSi粉末を配合した
場合には、平均粒径が25μm以下であっても、比較例2
に示すように、見掛け気孔率、耐アルカリ性とも、金属
粉末を配合しない比較例3と同じ結果であり、Si粉末の
配合は全く効果がないことがわかる。
【0056】以上より、本発明により、従来の炭素質レ
ンガの欠点であった耐アルカリ性が改善され、強度、熱
的性質、耐溶銑侵食性などの他の特性も同レベルに保持
されるか、やや改善される。従って、本発明の炭素質レ
ンガを高炉炉底部の内張り用に使用することによって、
高炉寿命の著しい延命を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】Al2O3(s)の安定領域を、COガス分圧と温度と
の関係で示す図である。

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 開気孔の一部が繊維状のアルミニウム酸
    化物および/または窒化物結晶によって充填されてい
    る、見掛け気孔率が11%以下、耐アルカリ性試験での膨
    張率が0.5 以下の、低気孔率で耐アルカリ性に優れた高
    炉用炭素質レンガ。
  2. 【請求項2】 1種または2種以上の炭素原料、平均粒
    径が25μm以下の金属アルミニウム粉末、および有機系
    結合材を含む混合物を混練・成形後、CO含有還元性雰
    囲気中または窒素含有不活性雰囲気中で焼成することを
    特徴とする、気孔率が低く、耐アルカリ性に優れた高炉
    用炭素質レンガの製造方法。
  3. 【請求項3】 金属アルミニウム粉末の配合量が炭素原
    料と金属アルミニウム粉末との合計量に基づいて 0.1〜
    20wt%の範囲である請求項2記載の方法。
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