JP3122483B2 - インモールド射出同時絵付装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、特公昭４３−２７４８
８号公報等に開示されているような、雌雄両型内に挿入
された絵付シートを射出熔融樹脂の熱と圧力とによって
雌型内壁に密着せしめることにより、樹脂の射出と同時
に樹脂形成品表面に絵付けを行う、いわゆるインモール
ド射出同時絵付装置に関する。なお、雌型の内壁に予め
絵付シートを真空形成した後にキャビティ内に熔融樹脂
を射出充填する特公昭５０−１９１３２号公報等に記載
された方式は別の技術に属するものである。

【０００２】

【従来の技術】一般に、インモールド射出同時絵付装置
は、図１０に示すように可動の雌型１００と、この雌型
１００に対して固定された雄型１０１とを有し、この両
金型１００，１０１の間を絵柄が所定ピッチで形成され
た連続絵付シートＳが供給ロール１０２と巻取ロール１
０３間を走行するようになっており、上記供給ロール１
０２の近傍にはピンチローラー１０４が設けられ、この
ピンチローラー１０４の下方には上記雌型１００のキャ
ビティの所定位置に絵付シートＳを位置決めするための
センサー１０５が設けられている。

【０００３】このようなインモールド射出同時絵付装置
においては各種形状、例えば図１１に示すような型の製
品１０６が形成され、製品１０６の曲面をなす絵付面に
は絵柄Ｐが形成される。このような成形品１０６を形成
するためには図１２に示すように雌型１００にはキャビ
ティ１０８が形成され、このキャビティ１０８の内壁に
は図１３に示すように上記雌型１００に雄型１０１を重
ね合わせた後射出したときの射出圧によって上記連続絵
付シートＳがキャビティの形状１０８に沿った形で押付
けられる。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】ところが、上述のよう
に連続絵付シートを押付ける際には、射出される樹脂の
圧力や熱によって急激に絵付シートが変形延伸されるた
めにキャビティの隅部に対応するシート部分にシワＷが
形成されたり（図１３参照）、その部分に破れが生じた
りするといった問題点がある。また、特にキャビティが
深かったりすると、連続絵付シートを射出圧によって３
次元形状に著しく延伸させるのでシワ、破れが生じ易い
といった問題点がある。さらに、キャビティ内に残留エ
アー溜まりが生じるために成形品にエアー溜まり跡が発
生するといった問題点もある。

【０００５】本発明は、上述のような問題点に鑑みてな
されたものであって、射出成形前に絵付シートとキャビ
ティ間の空気を排気し、同時に連続絵付シートをキャビ
ティの内壁方向に一部引付けたるませておくことがで
き、シワ、破れ等が生じることがなく、正確な絵付模様
が形成され、特にエアー溜まりによるエアー溜まり跡が
生じない成形品を得ることができるインモールド射出同
時絵付装置を提供することを目的とする。

【０００６】

【課題を解決するための手段】本発明は、協働してキャ
ビティを形成する雌型および雄型を備え、絵柄を有する
連続絵付シートを雌型に向けて供給し、キャビティ内に
射出される樹脂の熱と圧力とによって絵付シートを雌型
の内壁に沿わせ、樹脂の圧力で最終的に連続絵付シート
をキャビティ表面に密着させて絵付成形品を製造するイ
ンモールド射出同時絵付装置において、雌型にはキャビ
ティと外部とを連通する孔が形成され、孔を介して排気
することにより絵付シートと雌型との間を真空に吸引し
つつキャビティ内に樹脂を射出することにより絵付シー
トを雌型の内壁に密着させて樹脂形成品の表面に絵付け
することを特徴とする。

【０００７】

【作用】絵付シートを雌型の所望の位置に位置せしめ、
雌型に形成された孔を介して排気すると、雌型と絵付シ
ート間の空気が排気され連続絵付シートは雌型内壁の方
向に吸引される。ここで、雌型と雄型とを合体させると
キャビティが形成され、且つキャビティ内の絵付シート
が雌型の方向に引き付けられて絵付シートが雌型内壁に
接近した状態となる。この状態でキャビティ内に熔融樹
脂を注入し、樹脂の圧力で最終的に連続絵付シートを雌
型内壁に密着し沿わせることによって、所望の絵付形成
品を得ることができる。

【０００８】

【実施例】以下、添付図面を参照して本発明の一実施例
について説明する。図１において、本発明のインモール
ド射出同時絵付装置Ｍは、可動な雌型１と、この雌型１
に対して固定されている雄型２とを有している。この雌
型１と雄型２との間には図中上下方向に絵柄が形成され
た連続絵付シートＳが走行可能に設けられている。上記
絵付シートＳは図中上部に設けられたシートロール３か
ら供給され、このシートロール３から供給された絵付シ
ートＳは装置の図中下部に設けられた巻取ロール４によ
って巻取られる。シートロール３の水平方向に離間した
位置にはニップロール５が設けられ、このニップロール
５の下方には絵付シートＳをキャビティに対して所定位
置に位置決めするためのセンサ６，６が設けられてい
る。このセンサ６の図中下方にはガイドバー７が設けら
れ、このガイドバー７の中央部分には湾曲したガイド部
７ａが設けられている。このガイドバー７は走行する絵
付シートＳを雌型１の内側方向にガイド部７ａに沿って
凹ませる。このガイド部７ａはスムースに絵付シートＳ
を凹み面１２にガイドするようになっている。巻取ロー
ル４の上方にはニップロール９が設けられている。雌型
１の中央部分には絵付シートＳの走行方向と成形金型第
１方向とを一致させ、且つ走行方向全長に亘って成形品
の絵付面に対応する凹み面１２が形成されている。ま
た、雌型１の内側上下にはバー溝１０，１０が形成さ
れ、このバー溝１０に係合及び離脱できるクランプバー
８，８が設置されている。このクランプバー８はその中
央部分に上記ガイドバー７のガイド部７ａによって予め
ガイド変形された絵付シートＳを雌型１の凹み面１２に
クランプするためのクランプ部８ａを有し、上記ガイド
バー７に類似の形状を呈している。このクランプ部８ａ
の曲率はガイドバー７のガイド７ａよりも小さくなって
いる。なお、雌型１の中央部には孔１１が穿設されてお
り、この孔１１には管材１３が接続されている。さら
に、この管材１３には真空発生装置（図示せず）が接続
されている。また、雄型２は図２に示すように、上記雌
型１の凹み面１２の上下を閉塞するように凹み面１２の
形状に対応した凸部２０，２０が設けられ、この凸部２
０，２０間にコア部２２が形成され、このコア部２２と
上記雌型１の凹み面１２とでキャビティＣが形成され
る。上記雄型２にはこの雄型２と雌型１とを重ね合わさ
せた際にクランプバー８を収納するためのバー溝２１，
２１が形成されている。なお、金型の第１方向は、絵付
シートの走行方向と直交させることも可能である（図示
せず）。

【０００９】上述のような構造を呈するインモールド射
出同時絵付装置は、特に図３（ａ）に示すような蒲鉾形
状の成形品３０あるいは図３（ｂ）に示すような両側に
湾曲部を有するような湾曲板４０のような形状を形成す
るのに便利である。即ち、図３に示すような形状の曲面
は、第一方向即ちＸ方向には直線であるがこれと直交す
る第二方向即ちＹ方向には曲線をなす絵付面３０ａある
いは４０ａを有している。所謂、円柱、放物線柱、双曲
線柱等の柱面はその代表的なものである。係る装置によ
って成形される成形品は湾曲面を有するのみならず例え
ば直方体のような直線的平面のみの結合からなる成形品
であってもよい。

【００１０】また、雄型２の側面には図４に示すように
ランナ５０が設けられ、このランナ５０には横方向に伸
びる湯管５２が接続され、この湯管５２の両側には湯溜
部５１が設けられ、湯溜部５１は湯道５３に接続され、
この湯道５３は雄型１内において図において上方に屈曲
しキャビティＣの端面において互いに離間したゲート５
４，５４が形成されている。図５に示すキャビティＣの
形状は図３（ｂ）に示した成形品４０に対応したもので
あるが、射出樹脂はゲート５４，５４からキャビティＣ
の一端から他端に向って順次層流を形成しつつ充填され
るようになっている。

【００１１】このように射出樹脂をキャビティＣの一端
面から他端面に向って順次流しこむ方法としては図５に
示すように、キャビティ６０の一端部にリブ部６１を形
成し、このリブ部６１の側面にピンゲート６２，６２，
６２を設けるようにしてもよい。このようにリブ部６１
を設ければゲート６２からの射出樹脂がリブ部６１内に
一端貯溜し、その後キャビティ６０内に流れこむので、
流れる樹脂が層流をなし、しかも流れる樹脂が順次他端
面に向って絵付シートを押付けながら流れていくので、
絵付シートＳとキャビティの内壁間にガスが残ることが
なくガスが完全にキャビティから排出されるというガス
ベント効果を有する。しかも樹脂の流れが層流なので絵
付シートにシワが生ずることなくまた上記リブ部６１内
では、高い射出圧で流入した熔融樹脂の圧力が下がり圧
の下がった熔融樹脂が絵付シートの絵柄部分に接するの
でインク流れが起こらない。

【００１２】なお、ゲートとしては図６に示すように構
成してもよい。即ちキャビティ７２にはリブ部７１が形
成され、このリブ部７１に射出樹脂を帯状に流しこむた
めの接続部７４が形成され、この接続部７４はキャビテ
ィ７０の全幅に亘って伸びる横方向湯管７３に接続さ
れ、この横方向湯管７３の中央からランナ３２が伸びて
いる。

【００１３】さらに、連続絵付シートＳは、図７に示す
ような層構造を有している。即ち、２軸延伸したＰＥＴ
からなる基体シート９０の下面に界面活性剤からなる帯
電防止層９１を形成するとともに、上記基体シート９０
の上面にアクリルメラミン系の離型層９２を付着せしめ
る。この離型層９２の上面に絵柄の保護層をなす剥離層
９５を形成し、この剥離層９５の上面に絵柄Ｐが形成さ
れ、この絵柄Ｐは接着剤層９４によって覆われている。
このように連続絵付シートとしては上述の転写用シート
のほかに従来の貼合せ積層シートも使用することが可能
である。

【００１４】以下、本発明におけるインモールド射出同
時絵付装置の作用について説明する。図１において、ニ
ップロール９を回転させ、シートロール３からワンピッ
チだけ絵付シートを供給し、所定の絵柄がキャビティＣ
の正面に位置した際に、センサ６が絵付シートＳ上の位
置決めマークを検出してニップロール９を停止せしめ
る。なお、絵付シートＳを幅方向へも位置決めする場合
は、幅方向位置決めマークを幅方向センサーで検出し、
シートロール３、巻取ロール４等を左右に移動させれば
よい。これによって所定の絵柄がキャビティＣに対応す
る位置に停止する。また、連続絵付シートＳが下方に走
行する際にはガイドバー７のガイド部７ａによって予め
絵付シートＳが雌型１の凹み面１２に沿うように変形さ
れる。そして、クランプバー８が水平方向に移動し、連
続絵付シートＳの両側が雌型１の両側に形成されたバー
溝１０内に挿入される。このときにはクランプ部８ａは
雌型１の凹み面１２に予めガイドバー７によってガイド
されて凹んだ絵付シートＳがしっかりと凹み面１２に押
付けられる。この状態で上記雌型１およびシートロール
３および巻取ロール４等からなるユニットが固定側の雄
型２の方向に移動し、雄型２と雌型１とを重ね合わせ
る。このとき雄型２は上記クランプバー８に対応する位
置にバー溝２１が形成されているのでクランプバー８の
存在によって両金型１，２の接合が妨害されることはな
い。次いで、上記孔１１を介して真空発生装置（図示せ
ず）を動作させ、キャビティＣ内のエアーを吸引して、
これによって絵付シートＳを完全に凹み面１２に付着さ
せる。この状態で、キャビティＣの一端面から射出樹脂
がキャビティＣの他端面に向って供給される。このよう
に供給される熔融樹脂はキャビティＣ内で層流をなすの
で上記凹み面１２に付着された絵付シートＳにシワが生
じないばかりでなくゲート跡も残らずガスベント効果も
有効となる。その後、両金型１，２を離間せしめ、キャ
ビティＣ内に注入された樹脂によって成形品が得られ
る。なお、上記のように、真空発生装置によってキャビ
ティＣ内のエアーを吸引することにより、絵付シートＳ
を完全に凹み面１２に密着させるようにしてもよいが、
エアーの吸引のみによって絵付シートＳを完全に密着さ
せずに、熔融樹脂を射出する際に熔融樹脂の熱および圧
力によって絵付シートを凹み面１２に完全に密着させる
ようにしてもよい。本発明では熔融樹脂の熱および圧力
を利用することにより絵付シートを同時に真空形成する
ものであるから、必ずしも射出樹脂の供給に先立って絵
付シートＳを雌型１の内壁に密着させる必要はなく、最
終的に絵付シートが所望の位置に配置されればよい。例
えば、孔１１からのエアーの吸引によって絵付シートＳ
が凹み面１２に密着しないような状態で引き付けて撓ま
せ、その状態で雌型１および雄型２の係合によって形成
されるキャビティＣ内にゲート５１から熔融樹脂を射出
充填し、孔１１からの真空吸引と、射出樹脂の熱および
圧力とによって絵付シートＳを凹み面１２に完全に密着
せしめるとともに、キャビティＣ内に形成された樹脂成
形品の表面に絵付シートにより絵付けを行うようにして
もよい。

【００１５】なお、上述実施例においては、バー溝は雌
型１と雄型２の両方に設けたが、いずれか一方のみに設
けるようにしてもよい。また、クランプバー８は、バー
溝１０に係合していない際には、バー溝の正面に待機し
ていても良いし、雌・雄型間から離れた場所に退避する
ようにしてもよい。図８は本発明におけるインモールド
射出同時絵付装置の他の実施例を示したものである。す
なわち、上述の実施例が真空発生装置（図示せず）に接
続される孔１１を１つ設けたのに対して、本実施例はキ
ャビティＣの上下２箇所に孔１１を設けたものである。
このようにキャビティＣの上下２箇所孔１１を設け、２
箇所から吸引することにより、特にエアー溜まりが生じ
易い隅部から有効にエアーを吸引することができる。

【００１６】図９は本発明におけるインモールド射出同
時絵付装置の他の実施例を示したものである。すなわ
ち、雌型１の形状は雄型２に対向する面に凹部１４が形
成された、いわゆる従来からある形の雌型１に孔１１を
穿設し、この孔１１に真空発生装置（図示せず）を接続
することにより、上述と同様の作用、効果を期待するも
のである。また、本発明の好ましい一つの実施態様とし
て雌型のキャビティ側表面を粗面（サンドブラスト処理
等により）とする（図示せず）態様がある。このように
すると連続絵付シートと雌型側キャビティ表面との間の
間隙が少なくなった場合でも粗面の凹凸部を混して空気
が漏れるため効率良く完全な排気ができる。また、図１
４の如く本発明の更に別の実施態様として雌型表面が平
坦面であり、雄型がキャビティを形成すべき凹部を有す
るような金型の組合せを用いることもできる。

【００１７】

【発明の効果】本発明は、上述のように構成したので、
連続絵付シートの雄型と雌型とで形成されるキャビティ
の内壁にシワ、破れの発生を防止することができる。ま
た、キャビティ内に連続絵付シートをスムーズに付着す
ることができるため、正確な絵付がなされた絵付面を有
する成形品を得ることができる。さらに、キャビティ内
のエアーを吸引することができるので、エアー溜まり跡
の発生を防止することができる等の効果を奏する。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明におけるインモールド射出同時絵付装置
の概略構成図である。

【図２】雄型の斜視図である。

【図３】本発明におけるインモールド射出同時絵付装置
によって成形される成形品の斜視図である。

【図４】雄型の側面の斜視図である。

【図５】射出樹脂をキャビティ内に供給するゲート部分
を示す図である。

【図６】ゲート部分の他の実施例を示す図である。

【図７】転写絵付シートの断面図である。

【図８】本発明におけるインモールド射出同時絵付装置
の他の概略構成図である。

【図９】本発明におけるインモールド射出同時絵付装置
の他の実施例における雌型と雄型の断面図である。

【図１０】従来のインモールド射出同時絵付装置の構成
図である。

【図１１】成形品の斜視図である。

【図１２】従来の雌型の斜視図である。

【図１３】絵付シートの雌型のキャビティ内へ押付けら
れるときの状態説明図である。

【図１４】本発明におけるインモールド射出同時絵付装
置の他の実施例における雌型と雄型の断面図である。

【符号の説明】

１…雌型 ２…雄型 Ｓ…絵付シート ６…センサ ７…ガイドバー ８…クランプバー １１…孔 １２…凹み面 ２０…凸部 ２２…コア部

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭63−60718（ＪＰ，Ａ) 特開 平４−341811（ＪＰ，Ａ) 特開 平３−214416（ＪＰ，Ａ) (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) B29C 45/00 - 45/84

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 協働してキャビティを形成する雌型およ
   び雄型を備え、絵柄を有する連続絵付シートを前記雌型
   に向けて供給し、前記キャビティ内に射出される樹脂の
   熱と圧力とによって前記絵付シートを前記雌型の内壁に
   沿わせ、樹脂の圧力で最終的に連続絵付シートを前記キ
   ャビティ表面に密着させて絵付成形品を製造するインモ
   ールド射出同時絵付装置において、 前記雌型には前記キャビティと外部とを連通する孔が形
   成され、前記孔を介して排気することにより前記絵付シ
   ートと前記雌型との間を真空に吸引しつつ前記キャビテ
   ィ内に樹脂を射出することにより前記絵付シートを前記
   雌型の内壁に密着させて樹脂形成品の表面に絵付けする
   ことを特徴とするインモールド射出同時絵付装置。