JP3121192B2 - 酸化物単結晶の製造方法 - Google Patents

酸化物単結晶の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は酸化物単結晶の製造方
法、特にはチョクラルスキー法によって弾性表面波素子
や光導波路などの光学素子の基板として有用とされるタ
ンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウムなどの酸化物単結
晶の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム
などの酸化物単結晶は高周波誘導加熱によるチョクラル
スキー法で製造することが一般的なものとされており、
これは貴金属ルツボの回りを耐火物で囲み、ルツボまた
は耐火物の上にルツボ上部の温度勾配を適切に保つため
のアフターヒーターを配置する構造とすることが一般的
なものとされている(特公平4-77708 号公報参照)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、この単結晶を
まっすぐに長く引き上げるには、軸方向の温度勾配を大
きくとる必要があるのであるが、タンタル酸リチウムや
ニオブ酸リチウムなどの結晶は大きな温度勾配による熱
歪によってクラックが発生し易いので、アフターヒータ
ーによってルツボ上部の温度勾配を小さくする必要があ
る。しかし、結晶の長尺化と歩留り向上は相反する関係
にあることから、アフターヒーターの形状をテーパー状
やドーム状に加工することも提案されている(特公昭57
-50756号公報参照)が、従来技術では結晶下部がねじれ
易く、大口径結晶である3〜4インチ径では長さが80〜
100mmの結晶しか得られないという欠点がある。
【0004】そのため、本発明者らはさきにルツボ内の
保温を強化し、結晶の内部歪を緩和してクラックの発生
を防ぎ、歩留りを向上させる目的で、ルツボ上端に外径
がルツボ径よりも大きく、内径が引き上げる結晶径より
も大きいドーナツ板状の貴金属製リフレクターをのせ、
さらにその上にルツボと同じ径の円筒状の貴金属製アフ
ターヒーターを設置した炉内構造を用いて、タンタル酸
リチウム及びニオブ酸リチウム単結晶の引き上げを行な
うこととし、この貴金属としてはイリジウム、白金、白
金ロジウム等を引き上げる結晶の融点に応じて選択した
結果、ルツボ径、ルツボ高さ、メルト量等を適切に設定
し、引き上げ後半で直胴部の上端がリフレクターの上部
に出るようにすれば、結晶自体の伝熱を利用してルツボ
内の固液界面付近の熱を(結晶のコーン部を通して)リ
フレクター上部に放散できるため、適度な温度勾配が維
持されて結晶はねじれることなく長尺化できることがわ
かり、3インチ径で 130mmの直胴長の結晶が得られるこ
とを確認した(特願平5-180366号明細書参照)が、この
場合には冷却中にクラックの発生が比較的多いという不
利のあることが見出された。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は従来法による上
記したような不利、欠点を解決した酸化物単結晶の製造
方法に関するものであり、これは高周波加熱によるチョ
クラルスキー法により酸化物単結晶を育成する方法にお
いて、この炉内構造を貴金属ルツボの上端にドーナツ板
状のリフレクターを設置すると共に、その上に円筒状の
アフターヒーターを配置したものとし、アフターヒータ
ーの径がルツボの直径よりも小さいものを用いて単結晶
を引き上げることを特徴とするものである。
【0006】すなわち、本発明者らはタンタル酸リチウ
ム、ニオブ酸リチウムなどの酸化物単結晶をチョクラル
スキー法により、長尺で良質の結晶として得る方法につ
いて種々検討した結果、これについてはチョクラルスキ
ー法における炉内構造を貴金属ルツボの上端にドーナツ
板状のリフレクターを設置し、その上に円筒状のアフタ
ーヒーターを配置したものとすると、長尺でねじれの少
ない良質な結晶を得ることができるけれども、このアフ
ターヒーターの径をルツボ直径よりも小さいものとする
と、リフレクター上部での温度勾配が適宜に緩和される
ので、結晶の長尺化の実現と共にクラックなどの欠陥の
ない良質な結晶を高歩留りで得ることができることを見
出して本発明を完成させた。以下にこれをさらに詳述す
る。
【0007】
【作用】本発明は酸化物単結晶の製造方法に関するもの
であり、これは前記したようにチョクラルスキー法にお
ける炉内構造を、貴金属ルツボの上端にドーナツ板状の
リフレクターを設置すると共に、その上方に円筒状のア
フターヒーターを配置したものとし、アフターヒーター
の径をルツボ直径よりも小さいものとして単結晶を引き
上げることを特徴とするものであるが、これによればク
ラックの発生がなく、欠陥の少ない良質な酸化物単結晶
をねじれもなく、長尺なものとして得ることができると
いう有利性が与えられる。
【0008】本発明による酸化物単結晶の製造はチョク
ラルスキー法による炉内構造を上記したものとし、単結
晶の引き上げを上記したように行なうものであるが、こ
の炉内構造はルツボ内の保温を強化して、結晶の内部歪
を緩和してクラックの発生を防止し、歩留りを向上させ
る目的のために、ルツボ上方に外径がルツボ径よりも大
きく、また内径が引き上げる結晶径よりも大きいドーナ
ツ板状のリフレクターを配置し、その上にさらにルツボ
直径よりも直径の小さい円筒状のアフターヒーターを設
置したものとされる。
【0009】すなわち、本発明で使用される酸化物単結
晶の製造装置は図1に示したようなものとされる。図1
はこの酸化物単結晶製造装置の縦断面図を示したもので
あるが、これはセラミックス製ルツボ台1の底部に設置
されているアルミナ台2の上に載置されたルツボ3を囲
む断熱材4の上に、耐火性アルミナ5を設置しルツボま
たは耐火性アルミナの上にドーナツ板状のリフレクター
6を取りつけると共に、このリフレクターの上方にルツ
ボ直径よりも直径の小さい円筒状のアフターヒーター7
を取りつけたものであり、これは加熱コイル8でルツボ
3を誘導加熱して原料を融解してこれを融液9とし、こ
れに種子回転軸10に取りつけた種子結晶11を浸漬し、こ
れを引き上げて結晶12を育成するようにしたものであ
る。
【0010】なお、この場合このリフレクター、アフタ
ーヒーターは貴金属製のものとし、この貴金属としてイ
リジウム、白金、白金−ロジウムなどを引き上げる単結
晶の融点に応じて選択したものとしたところ、クラック
の発生がなく、ねじれの少ない良質な結晶が得られるけ
れども、この場合ルツボの上部に設置されるアフターヒ
ーターをその直径がルツボ直径とほぼ同じか、これより
大きいものとすると、リフレクター上下での温度差が大
きくなり、温度勾配が大きくなって結晶のコーン部から
直胴部にかけての領域での結晶歪が大きくなり、冷却中
にこの結晶にクラックの発生することが多くなるという
不利の生ずることが判った。
【0011】そこで、このアフターヒーターの直径をル
ツボ直径より小さいものとして種々検討したところ、こ
れについてはアフターヒーターの直径をルツボ直径の97
%以下として単結晶の引き上げを行なったところ、リフ
レクター上部での温度勾配が適宜に緩和されるので、結
果において結晶の長尺化を実現しつつ、クラックなどの
欠陥の少ない良質の結晶を高い歩留りで得られることが
見出された。
【0012】すなわち、上記したように従来公知の製造
装置にリフレクターを取りつけると共に、その上に円筒
状のアフターヒーターを取りつけ、このルツボを直径が
150mmφで高さが 150mmφのものとし、アフターヒータ
ーを直径が 130mmφのものと150mmφのものとしてルツ
ボ加熱温度におけるルツボ底からの距離0〜250mm にお
ける炉内の空焼時の温度をしらべたところ、本発明にし
たがってアフターヒーターの直径をルツボ直径より小さ
い 130mmのものとしたときには図2のA曲線による結果
が得られ、これらを公知例にしたがってアフターヒータ
ーとルツボの直径が同一の 150mmφのものとしたときに
はこれが図2のB曲線のようになることが確認された。
【0013】なお、このアフターヒーターの直径につい
ては、これをルツボ直径の80%以下とすると、アフター
ヒーターが結晶に接近しすぎるためにアフターヒーター
内が保温されてリフレクター上下の温度が小さくなり、
結晶自体の伝熱を利用してルツボ内の固液界面の熱を逃
がすことができなくなるので、結晶がねじれ、長尺結晶
が得られなくなるので、このアフターヒーターとルツボ
との直径比は97〜80%の範囲のものとすることが必要と
される。
【0014】したがって、本発明により酸化物単結晶を
製造する場合には、この炉内構造を貴金属ルツボの上端
にドーナツ板状のリフレクターを乗せ、この上に円筒状
のアフターヒーターを配置したものとすると共に、この
アフターヒーターの直径をルツボ直径の97〜80%のもの
とするとすれば、クラックの発生が少なく、95%もの高
い歩留りで良質の結晶を得ることができるが、この場合
にはコーン部がリフレクターの上部に出てからの保温が
適切となるので、内部歪が極めて少なく、脈理など結晶
内の屈折率不均一部分や欠陥のない、特に光学用途に適
した良質の結晶が容易に得ることができるという有利性
が与えられる。
【0015】
【実施例】つぎに本発明の実施例、比較例をあげる。 実施例1 直径 150mmφ、高さ 150mmのイリジウム製ルツボに外径
155mmφ、内径 120mmφ、厚さ2mmのドーナツ板状のイ
リジウム製リフレクターを配置し、さらにこの上に直径
130mmφ、高さ 170mmの円筒状のイリジウム製アフター
ヒーターを配置した。ついで、このルツボ内に 9.5kgの
原料融液をチャージし、チョクラルスキー法で3インチ
径のタンタル酸リチウム単結晶 5.5kgを引き上げたとこ
ろ、直胴部の長さが 130mmでねじれのないものが得られ
たが、同じ方法で20本の単結晶を引き上げたところ、1
本が冷却中にクラックの発生で割れてしまったが、19本
は欠陥の少ない良質な結晶であり、この歩留りは95%と
いう高いものであった。
【0016】比較例1 比較のために、図3に示したように、直径 150mmφ、高
さ 150mmのイリジウム製ルツボの上にリフレクターを用
いずに、直接直径 150mmφ、高さ 170mmの円筒状のイリ
ジウム製アフターヒーターを配置し、このルツボ内に
8.5kgの原料融液をチャージし、3インチ径のタンタル
酸リチウム単結晶 4.5kgを引き上げたところ、この場合
には得られた単結晶の直胴部が 105mmのものであった
が、これは結晶下部のねじれがひどく有効長は85mmであ
った。なお、これについて同様の方法で20本の単結晶を
作ったところ、5本が冷却中にクラック発生で割れてし
まい、残りの15本もマイクロクラックによる不良が5%
あり、歩留りは70%であった。
【0017】比較例2 直径 150mmφ、高さ 150mmのイリジウム製ルツボに外径
155mmφ、内径 120mmφ、厚さ2mmのドーナツ板状のイ
リジウム製リフレクターを配置し、さらにこの上に図4
に示したように直径 150mmφ、高さ 170mmの円筒状のイ
リジウム製アフターヒーターを配置した。ついで、この
ルツボ内に 9.5kgの原料融液をチャージし、チョクラル
スキー法で3インチ径のタンタル酸リチウム単結晶 5.5
kgを引き上げ、同様の方法で20本の単結晶を引き上げた
ところ、3本が冷却中にクラックの発生で割れてしま
い、この歩留りは85%であった。
【0018】
【発明の効果】本発明は酸化物単結晶の製造方法に関す
るものであり、これは前記したように高周波加熱による
チョクラルスキー法により酸化物単結晶を育成する方法
において、この炉内構造を貴金属ルツボの上方にドーナ
ツ板状のリフレクターを設置すると共に、その上に円筒
状のアフターヒーターを配置したものとし、アフターヒ
ーターの径がルツボの直径より小さいものを用いて単結
晶を引き上げることを特徴とするものであるが、これに
よれば結晶の大幅な長尺化が可能となり、クラックなど
の欠陥のない良質な大型単結晶を高い歩留りで得ること
ができるという有利性が与えられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で使用される酸化物単結晶製造装置の縦
断面図を示したものである。
【図2】リフレクターとアフターヒーターを取りつけた
単結晶製造装置において、アフターヒーターの直径を 1
30mmφ、 150mmφとしたもののルツボ底からの距離と空
焼時の温度との関係図を示したものである。
【図3】比較例1で用いられた従来公知の酸化物単結晶
製造装置の縦断面図を示したものである。
【図4】比較例2で用いられた従来公知の酸化物単結晶
製造装置の縦断面図を示したものである。
【符号の説明】 1…耐火性ルツボ台、 2…アルミナ台、3…ル
ツボ、 4…断熱材、5…耐火物アルミ
ナ、 6…リフレクター、7…アフターヒータ
ー、 8…加熱用コイル、9…融液、
10…種子回転軸、11…種子結晶、
12…育成結晶。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 流王 俊彦 群馬県安中市磯部2丁目13番1号 信越 化学工業株式会社 精密機能材料研究所 内 (56)参考文献 特開 平5−294783(JP,A) 特開 平5−221779(JP,A) 特開 平1−100086(JP,A) 特公 昭58−50956(JP,B2) 特公 昭61−9280(JP,B2) 特公 昭57−50756(JP,B2) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C30B 1/00 - 35/00

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】高周波加熱によるチョクラルスキー法によ
    り酸化物単結晶を育成する方法において、この炉内構造
    を貴金属ルツボの上端にドーナツ板状のリフレクターを
    設置すると共に、その上に円筒状のアフターヒーターを
    配置したものとし、アフターヒーターの径がルツボの直
    径よりも小さいものを用いて単結晶を引き上げることを
    特徴とする酸化物単結晶の製造方法。
  2. 【請求項2】アフターヒーターの直径(AH径)とルツ
    ボの直径との比が97%〜80%のものである請求項1に記
    載した酸化物単結晶の製造方法。
  3. 【請求項3】酸化物単結晶がタンタル酸リチウムまたは
    ニオブ酸リチウムである請求項1に記載した酸化物単結
    晶の製造方法。
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