JP3120880B2 - 歯磨剤組成物 - Google Patents

歯磨剤組成物

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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は歯磨剤組成物に関し、さ
らに詳しくは、水酸化アルミニウムを含有する歯磨剤組
成物において、特に多孔性のシリカ系研磨剤を水酸化ア
ルミニウムに対して一定の配合比範囲で配合することに
より得られる、使用感の極めて良好な歯磨剤組成物に関
する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】歯磨剤
は虫歯、歯周疾患、口臭等の予防を目的とし、長年にわ
たり汎用されている。特にその使用感については、歯磨
チューブからの押し出し性や、歯ブラシ上に絞り出され
た際の外観、さらには口中でのテクスチュアーの良し悪
しがその歯磨剤の使用意向を左右する。一般に、歯磨剤
組成物には、研磨剤が処方中20〜50重量%配合され、水
および湿潤剤として配合されるソルビトール、グリセリ
ン等の多価アルコールの混合液中に分散されている。し
かし、水や湿潤剤の混合液だけでは多量の粉体である研
磨剤を安定に分散させることは不可能であり、通常0.5
〜2重量%程度の水溶性高分子を粘結剤として混合液中
に溶解・膨潤させることにより、適当な粘度を液成分に
付与している。このようにして調製された歯磨剤組成物
の粘度は、調製直後においては500〜2000PSであるが、
その後徐々に上昇し、調製後1カ月では約3500〜6000PS
程度となるのが普通である。
【0003】ところで、歯磨剤組成物の使用意向を左右
する使用感のうち、特に口中でのテクスチュアーについ
ては歯磨剤組成物の粘度が大きく関与するが、その他に
唾液との混合分散性という尺度を考慮に入れる必要があ
る。すなわち、実際に口中の洗浄を行うにあたり、歯磨
剤組成物と口中より分泌される唾液との混合・分散がす
みやかであるほど、歯磨剤組成物中の各成分の分散が早
く、よって泡立ち、香味の立ちなどの嗜好的因子が良好
となり、使用意向は著しく向上する。
【0004】単純に歯磨剤組成物と唾液との混合分散性
を向上させることだけを目的とするならば、研磨剤ある
いは湿潤剤の配合比を高めるなどして、粘結剤の配合比
をできるだけ下げてやればよいが、この場合、歯磨剤組
成物としての保型性、安定性等の性質が満足されない。
【0005】従って、本発明は、保型性、安定性等の性
質を損なうことなく唾液との混合分散性を向上させ、使
用感に優れた歯磨剤組成物の提供を目的とするものであ
る。
【0006】
【課題を解決するための手段】かかる実情において、本
発明者らは、鋭意研究を行った結果、水酸化アルミニウ
ムと特に多孔性のシリカ系研磨剤を、一定の配合比範囲
で配合することにより、唾液との混合分散性が良好で、
かつ保型性、安定性等の歯磨剤組成物としての基本的性
質が損なわれることのない、総じて使用感の極めて良好
な歯磨剤組成物を得、本発明を完成するに至ったもので
ある。
【0007】すなわち、本発明は、研磨剤、粘結剤、湿
潤剤及び水を含有する歯磨剤組成物において、研磨剤と
して、水酸化アルミニウム及び嵩密度0.1g/cc以下のシ
リカ系研磨剤を、(水酸化アルミニウムの重量)/(シ
リカ系研磨剤の重量)の値が2.7〜33となる範囲で含有
することを特徴とする歯磨剤組成物を提供するものであ
る。
【0008】本発明の歯磨剤組成物において研磨剤とし
て配合される水酸化アルミニウム及びシリカ系研磨剤
は、歯磨剤組成物原料としてすでに知られているもので
あるが、本発明においては、両者を一定の配合比範囲、
すなわち(水酸化アルミニウムの重量)/(シリカ系研
磨剤の重量)の値が2.7〜33、好ましくは3〜25となる
範囲で配合することにより、使用感の極めて良好な歯磨
剤組成物が得られたものである。この値が2.7未満では
保存安定性の面で問題が生じ、33を超えると唾液との混
合分散性が低下し、本発明の目的が達成されない。
【0009】本発明の歯磨剤組成物に使用されるシリカ
系研磨剤は、その嵩密度が0.1g/cc以下、好ましくは0.0
6g/cc以下のものである。嵩密度が0.1g/ccを超えると歯
磨剤組成物の唾液との混合分散性が低下し、良好な使用
感が得られない。また、その平均粒子径が5μm以下、
特に2μm以下であるのが好ましい。シリカ系研磨剤と
しては、ニップシール(日本シリカ工業社製)、サイロ
イド、サイロピュア(以上、富士デビソン社製)、チキ
ソシル(コフラン社製)、トクシール(徳山曹達社
製)、ソーボシル(クロスシールドケミカル社製)等の
商品名で市販されている嵩密度が0.1g/cc以下、平均粒
径5μm以下である多孔性のもの等が適宜選定され、配
合、使用されるが、その中でも、サイロイド244、チキ
ソシル33K等が特に好ましい。
【0010】また、本発明の歯磨剤組成物に使用される
水酸化アルミニウムは、粒径、精製度、白色度等におい
て特に限定されるものではなく、通常の方法で製造され
た市販品を用いることができる。なお、使用する水酸化
アルミニウムの平均中心粒子径が20μmを上回ると、歯
牙に対する為害性が強いため、20μm以下、特に15μm
以下とすることが好ましい。また、香味性の安定性の面
から、精製度の高いもの、すなわち精製度を表す水溶性
付着酸化ナトリウムの残留量の少ないものが好ましい
が、付着酸化ナトリウム含量が0.2重量%程度のもので
あっても充分使用することができる。更に、外観の点か
ら白色度の高いものが好ましいが、ハンター白度が90に
満たないものであっても、歯磨剤組成物としての外観を
損なうことなく、使用することができる。
【0011】上記研磨剤の配合量は、合計で全組成中15
〜60重量%、特に30〜50重量%であることが好ましい。
【0012】本発明の歯磨剤組成物には、上記研磨剤の
他、通常の練歯磨に使用される粘結剤、湿潤剤及び水が
配合される。
【0013】粘結剤としては、例えばカルボキシメチル
セルロース及びその塩類、メチルセルロース、ヒドロキ
シエチルセルロース、カラギーナン、ポリアクリル酸ナ
トリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシ
メチルヒドロキシエチルセルロースナトリウム、アルギ
ン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエス
テル、キサンタンガム、トラガカントガム、カラヤガ
ム、アラビヤガム、ポリビニルアルコール、ポリビニル
ピロリドン、ビーガム、ラポナイト等が挙げられる。粘
結剤の配合量は、全組成中1.5重量%以下、特に1重量
%以下であることが好ましい。粘結剤の配合量が1.5重
量%を超えると、歯磨剤組成物と唾液との混合分散性が
低下し、良好な使用感が得られない。
【0014】また湿潤剤としては、例えばグリセリン、
ソルビット、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリ
コール、エチレングリコール、ポリエチレングリコー
ル、ポリプロピレングリコール、キシリット、マルチッ
ト、ラクチット等が挙げられる。湿潤剤の配合量は特に
限定されないが、全組成中15〜65重量%、特に25〜45重
量%であることが好ましい。
【0015】本発明歯磨剤組成物への水の配合量は、特
に限定されないが、1〜50重量%、特に5〜40重量%が
好ましい。
【0016】また、本発明の歯磨剤組成物には、その目
的に応じて種々の公知成分を配合することができる。例
えば、モノフルオルリン酸ナトリウム、フッ化スズ、フ
ッ化ナトリウム等の歯質強化剤;クロルヘキシジンの塩
類、塩化セチルピリジニウム、トリクロサン、トリクロ
ロカルバニリド等の殺菌剤;リン酸ナトリウム等のpH調
整剤;デキストラナーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ、
リゾチーム、ムタナーゼ等の酵素類;塩化ナトリウム、
ヒノキチオール、ε-アミノカプロン酸、トラネキサム
酸、アラントイン類、トコフェロール類、ジヒドロコレ
ステロール、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸及び
その塩類、グリセロホスフェート、クロロフィル、水溶
性無機リン酸化合物、アズレン、カミツレ、当帰、川▲
きゅう▼、生薬類等の抗炎症剤・血行促進剤;ラウリル
硫酸塩、ミリスチル硫酸塩、α-オレフィンスルホン酸
塩、N-アシルアミノ酸塩、アシルモノグリセリド硫酸
塩、石鹸、脂肪酸モノグリセリド、脂肪酸モノアルカノ
ールアミド、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エス
テル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、アルキルグリ
コシド、イミダゾリニウムベタイン、アルキルベタイ
ン、アルキルアミドベタイン、スルホベタイン、アミン
オキサイド等の界面活性剤;サッカリンナトリウム、ス
テビオサイド、タウマチン、アスパラチルフェニルアラ
ニンメチルエステル等の甘味剤;p-オキシ安息香酸、p-
オキシ安息香酸エチル、p-オキシ安息香酸プロピル、p-
オキシ安息香酸ブチル、安息香酸ナトリウム等の防腐
剤;二酸化チタン等の着色剤・色素類;ペパーミント
油、スペアミント油、メントール、カルボン、アネトー
ル、オイゲノール、サリチル酸メチル、リモネン、オシ
メン、n-デシルアルコール、シトロネロール、α-テル
ピネオール、メチルアセテート、シトロネリルアセテー
ト、メチルオイゲノール、シネオール、リナロール、エ
チルリナロール、ワニリン、チモール、アニス油、レモ
ン油、オレンジ油、セージ油、ローズマリー油、桂皮
油、ピメント油、桂葉油、シソ油、冬緑油、丁子油、ユ
ーカリ油等からなる香料等を適宜使用することができ
る。
【0017】本発明の歯磨剤組成物は、常法により製造
することができ、練歯磨とすることができる。
【0018】
【実施例】以下、試験例及び実施例を挙げて更に詳細に
説明するが、本発明はこれらに限定されるものではな
い。
【0019】試験例 本発明者らは、歯磨剤組成物の保型性、安定性を損なう
ことなく唾液との混合分散性を良くするために、粘結剤
を含まない歯磨剤組成物配合系においていかに保型性を
維持することが可能であるかについて試験を行った。 (試験1)水酸化アルミニウム(市販品,中心粒径8μ
m)をグリセリン中に50重量%の割合で分散させ、さら
に歯磨剤処方中にて増粘剤として用いられるシリカ系研
磨剤(すべて市販品)を該分散系全体の2重量%加えて
均一ペーストになるまで混合した。用いたシリカはそれ
ぞれ平均粒径、BET表面積、嵩密度の異なるものであ
る。平均粒径はレーザー回折法にて測定し、BET表面積
は1×10-4mmHg以上、105℃で5時間前処理後、77Kで
測定し、嵩密度はJIS K 6722の方法に従って算出した。
得られたペーストについてはB8H型粘度計ローター7を
用いて粘度を測定した。回転数は5rpm及び50rpmで測定
し(測定温度25℃にて1分間測定)、5rpm粘度/50rpm
粘度を構造粘性係数として算出した。シリカの分析値及
び構造粘性係数の値を表1に示す。
【0020】
【表1】
【0021】構造粘性係数は、低速回転時粘度と高速回
転時粘度の比であり、この比の値が大きいほど高シェア
時の粘度低下が著しく、よって口腔内適用時に唾液との
混合性が良好となり、使用感に優れるものである。表1
に示した如く、嵩密度が0.1g/cc以下であるシリカB及
びCを用いた系において特に高い構造粘性係数が得られ
た。
【0022】(試験2)次に、水酸化アルミニウムとシ
リカB又はCとの組合せの系において、水酸化アルミニ
ウムに対する各シリカの添加重量%を任意に変えて構造
粘性係数を求めた。ここでは、分散媒としてソルビトー
ル50%水溶液を用いたが、各シリカの添加比を高めるに
伴い、ソルビトール水溶液の量を適宜増量して、50rpm
での粘度が全試料にてほぼ同じ値を示すように調整し、
試験1と同様にして5rpm粘度/50rpm粘度を構造粘性係
数として算出した。この結果を表2及び3に示す。
【0023】
【表2】
【0024】
【表3】
【0025】表2及び3より、シリカを水酸化アルミニ
ウムに対して4重量%以上添加することにより、すなわ
ち(水酸化アルミニウムの重量)/(シリカの重量比)
の値を33よりも小さくすることにより構造粘性係数が大
きくなり、分散性が改善された。
【0026】実施例1 表4に示す歯磨剤組成物を調製し、口腔内分散性、保存
安定性、保型性について下記基準に従い評価を行い、ま
た処方全体から研磨剤を除いた粘液成分の粘度を測定し
た。 評価基準 口腔内分散性 ◎:口腔内での分散性が大変良好であり、使用感に優れ
る。 ○:口腔内での分散性は良好であり、使用感に問題はな
い。 △:口腔内での分散性がやや悪く、使用感が優れない。 ×:口腔内での分散性が悪く、不快である。 保存安定性 ◎:チューブに詰め、40℃で1カ月保存後も離水が全く
観察されない。 ○:チューブに詰め、40℃で1カ月保存後、離水がかす
かに観察される。 △:チューブに詰め、40℃で1カ月保存後、離水が観察
される。 ×:チューブに詰め、40℃で1カ月保存後、離水が著し
い。 保型性 ◎:歯ブラシ上に絞り出した時、型くずれが観察されな
い。 ○:歯ブラシ上に絞り出した時、若干の型くずれが観察
される。 △:歯ブラシ上に絞り出した時、徐々に垂れてくる。 ×:歯ブラシ上に絞り出した時、流れ落ちる。 粘液粘度 B8H型粘度計、ローター5使用。回転速度2.5rpm、25℃
にて測定。
【0027】
【表4】
【0028】表4に示した如く、水酸化アルミニウムと
嵩密度が0.1g/cc以下であるシリカを組合せて調製した
歯磨剤は、使用感のすこぶる良好なものであるが、水酸
化アルミニウムに対するシリカの配合比が大きくなり過
ぎると、すなわち(水酸化アルミニウムの重量)/(シ
リカの重量)の値が2.7を下回ると、保存安定性の面で
問題が生じる。また水酸化アルミニウムとシリカBを組
合せて調製した歯磨剤処方系では特に粘結剤の配合比1
重量%以下でも保存安定性の良好な処方を得ることが可
能であり、そのときの処方全体から研磨剤を除いた粘液
成分の粘度は400PS以下であり、このことが歯磨剤処方
の使用感を高める一因にもなっているものと考えられ
る。
【0029】
【発明の効果】以上のように、本発明の歯磨剤組成物
は、唾液との混合分散性に優れ、かつ保型性、安定性等
の歯磨剤組成物としての基本的性質の良好な、総じて使
用感の極めて良好な歯磨剤組成物である。
フロントページの続き (72)発明者 中井 良三 栃木県宇都宮市平松本町357−9 (56)参考文献 特開 平2−207015(JP,A) 特開 昭61−15820(JP,A) 特開 昭60−193910(JP,A) 特開 昭55−94313(JP,A) 特開 昭47−11300(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A61K 7/16 - 7/30

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 研磨剤、粘結剤、湿潤剤及び水を含有す
    る歯磨剤組成物において、研磨剤として、水酸化アルミ
    ニウム及び嵩密度0.1g/cc以下のシリカ系研磨剤を、
    (水酸化アルミニウムの重量)/(シリカ系研磨剤の重
    量)の値が2.7〜33となる範囲で含有することを特徴と
    する歯磨剤組成物。
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