JP3117072B2 - 電動パワーステアリング装置及び電動パワーステアリングの中立調整方法 - Google Patents

電動パワーステアリング装置及び電動パワーステアリングの中立調整方法

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JP3117072B2
JP3117072B2 JP12374096A JP12374096A JP3117072B2 JP 3117072 B2 JP3117072 B2 JP 3117072B2 JP 12374096 A JP12374096 A JP 12374096A JP 12374096 A JP12374096 A JP 12374096A JP 3117072 B2 JP3117072 B2 JP 3117072B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は電動パワーステアリ
ング装置及び電動パワーステアリングの中立調整方法の
改良に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、ステアリングハンドルの操舵力を
軽減して快適な操舵感を与えるために、電動パワーステ
アリング装置が多用されてきた。この種の電動パワース
テアリング装置は、電動機で操舵トルクに応じた補助ト
ルクを発生し、この補助トルクを機械式クラッチを介し
てステアリング系に伝達するものであって、例えば特開
平1−218973号「電動パワーステアリング装置」
の技術がある。この技術は、その公報の第1図によれ
ば、ステアリング系の操舵トルクを操舵トルク検出器で
検出し、その検出信号に基づいた補助トルクを電動モー
タ24(番号は公報に記載されたものを引用した。以下
同じ。)で発生するものである。また、公報の第2図に
よれば、電動モータ24に連結したアウタースリーブ2
3と、操舵輪に連結した6角部12b付き出力軸12と
を、摩擦係合式クラッチを介して連結し、電動モータ2
4から出力軸12へ補助トルクを伝達するようにしたも
のである。
【0003】上記操舵トルク検出器の形式は、次の,
に示す通りである。 公報の第2図によれば、操舵トルク検出器は、入力
軸11と出力軸12との相対ねじり変位に応じてリング
20が入力軸11の軸方向に移動し、その移動量を歪ゲ
ージが検出する形式である。リング20は入力軸11に
挿通される。 公報の第6図によれば、操舵トルク検出器は、入力
軸111のフランジ部111eと出力軸112のフラン
ジ部112cとの間にブラシ134を挟んで構成したス
リップリングにて、入力軸111と出力軸112との相
対回転角を検出する形式である。フランジ部111eは
入力軸111に形成し、フランジ部112cは出力軸1
12に形成し、互いに同軸上に配置したものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記
の操舵トルク検出器は構造が複雑であり、また、電動パ
ワーステアリング装置の組立途中で入力軸11に取付け
る必要があり、交換も簡単にはできない。更に、アッパ
ーハウジング14a内のリング20が、入力軸11の軸
方向に移動する構成なので、操舵トルク検出器の中立位
置の調整作業が容易でない。一方、上記の操舵トルク
検出器は、入・出力軸111,112に各フランジ部1
11e,112cを形成してスリップリングをなすとと
もに、クラッチの構成要素の一部である大径部111b
又は6角部112bを形成したものである。このため、
簡単に交換することができず、また、操舵トルク検出器
の中立位置の調整と、クラッチの中立位置の調整とを個
別に行うことができないので、各中立位置の精度を高め
ることが容易でない。
【0005】そこで本発明の目的は、次の(1)及び
(2)にある。 (1)簡単な構成で、操舵トルク検出手段を入・出力軸
に取付けたり交換することが容易で、しかも、中立位置
の調整作業が容易な、電動パワーステアリング装置及び
電動パワーステアリングの中立調整方法を提供するこ
と。 (2)操舵トルク検出器の中立位置の調整作業と、摩擦
係合式クラッチ機構の中立位置の調整作業が容易で、し
かも、各中立位置の精度を高めることが容易な電動パワ
ーステアリング装置及び電動パワーステアリングの中立
調整方法を提供すること。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、請求項1記載の発明は、弾性部材を介した入力軸と
出力軸との間に入・出力軸間の相対ねじれ角を検出する
操舵トルク検出手段を介設し、この操舵トルク検出手段
の情報に基づいて補助トルクを発生させる電動パワース
テアリング装置において、前記操舵トルク検出手段を、
検出本体部及びこの検出本体部を作動する作動子で構成
し、この作動子を、前記入力軸の外周面に備える傾斜溝
又は前記出力軸の外周面に備える傾斜溝のどちらか一方
に係合させるとともに、前記検出本体部を、前記入力軸
の外周面又は前記出力軸の外周面のどちらか他方に取付
けたことを特徴とする電動パワーステアリング装置であ
る。
【0007】作動子を、入力軸の外周面に備える傾斜溝
又は出力軸の外周面に備える傾斜溝のどちらか一方に係
合させるとともに、検出本体部を、入力軸の外周面又は
出力軸の外周面のどちらか他方に取付けたので、簡単な
構成で、操舵トルク検出手段を入・出力軸に取付けたり
交換することが容易である。また、操舵トルク検出手段
の作動子を、入力軸の外周面に備える傾斜溝又は出力軸
の外周面に備える傾斜溝のどちらか一方に係合させたの
で、入・出力軸を組立てた後に、入力軸又は出力軸のど
ちらか一方を軸方向に移動すると、作動子が傾斜溝に沿
って変位する。このため、入力軸又は出力軸のどちらか
一方を軸方向に移動するだけで、操舵トルク検出手段の
中立位置を調整できるので、簡単な構成で、しかも、調
整作業が容易である。更に、操舵トルク検出手段を軸の
外周面に取付けるので、軸に挿通した場合に比べて検出
本体部が小型になり、電動パワーステアリング装置を小
型にできる。
【0008】請求項2記載の発明は、ステアリングハン
ドルに連結した入力軸と操舵輪に連結した出力軸とを、
弾性部材を介して連結し、また、電動機に連結した入力
部材と前記出力軸に連結した出力部材とを、摩擦係合式
クラッチ機構を介して連結し、このクラッチ機構を、前
記入力・出力部材を係合するべくこれら入力・出力部材
間に介在した係合部材と、この係合部材の位置決めをな
すために前記入力軸に連結した位置制御部材と、この位
置制御部材に向って係合部材を付勢した付勢部材とで構
成し、一方、前記入・出力軸間に操舵トルク検出手段を
介設することにより、この操舵トルク検出手段の情報に
基づいて発生した前記電動機の補助トルクを、前記出力
軸に伝達させる電動パワーステアリング装置において、
前記操舵トルク検出手段を、検出本体部及びこの検出本
体部を作動する作動子で構成し、この作動子を、前記入
力軸の外周面に備える傾斜溝又は前記出力軸の外周面に
備える傾斜溝のどちらか一方に係合させるとともに、前
記検出本体部を、前記入力軸の外周面又は前記出力軸の
外周面のどちらか他方に取付けたことを特徴とする電動
パワーステアリング装置である。
【0009】作動子を、入力軸の外周面に備える傾斜溝
又は出力軸の外周面に備える傾斜溝のどちらか一方に係
合させるとともに、検出本体部を、入力軸の外周面又は
出力軸の外周面のどちらか他方に取付けたので、簡単な
構成で、操舵トルク検出手段を入・出力軸に取付けたり
交換することが容易である。また、入力軸もしくは出力
軸を回動することで、摩擦係合式クラッチ機構の中立位
置を調整でき、一方、入力軸又は出力軸を軸方向に移動
することで、作動子を傾斜溝に沿って変位させて、操舵
トルク検出手段の中立位置を調整できる。このため、ク
ラッチ機構の中立位置の調整作業と、操舵トルク検出器
の中立位置の調整作業とを、個別に実施できるので、各
中立位置の調整作業が容易であり、しかも、各中立位置
の精度を容易に高めることができる。更に、操舵トルク
検出手段を軸の外周面に取付けるので、軸に挿通した場
合に比べて検出本体部が小型になり、電動パワーステア
リング装置を小型にできる。
【0010】請求項3記載の発明は、ステアリングハン
ドルに連結した入力軸と操舵輪に連結した出力軸とを、
弾性部材を介して連結し、また、電動機に連結した入力
部材と前記出力軸に連結した出力部材とを、摩擦係合式
クラッチ機構を介して連結し、このクラッチ機構を、前
記入力・出力部材を係合するべくこれら入力・出力部材
間に介在した係合部材と、この係合部材の位置決めをな
すために前記入力軸に連結した位置制御部材と、この位
置制御部材に向って係合部材を付勢した付勢部材とで構
成し、一方、前記入・出力軸間に操舵トルク検出手段を
介設することにより、この操舵トルク検出手段の情報に
基づいて発生した前記電動機の補助トルクを、前記出力
軸に伝達させる電動パワーステアリングにおいて、前記
入力軸の外周面又は出力軸の外周面のどちらか一方に前
記操舵トルク検出手段の検出本体部を取付けるととも
に、出力軸の外周面の傾斜溝又は入力軸の外周面の傾斜
溝のどちらか他方に前記操舵トルク検出手段の作動子を
係合し、前記弾性部材に対して回転自在とした入力軸も
しくは出力軸を前記摩擦係合式クラッチ機構の中立位置
まで回動し、次に、入力軸もしくは出力軸を前記操舵ト
ルク検出手段の中立位置まで軸方向に移動し、この後、
入力軸もしくは出力軸を弾性部材に固定することを特徴
とした電動パワーステアリングの中立調整方法である。
【0011】先に、入力軸もしくは出力軸を摩擦係合式
クラッチ機構の中立位置まで回動し、次に、入力軸もし
くは出力軸を操舵トルク検出手段の中立位置まで軸方向
に移動して、作動子を傾斜溝に沿って変位させるので、
これら一連の調整作業だけで、摩擦係合式クラッチ機構
の中立位置と、操舵トルク検出器の中立位置とを個別に
容易に行うことができ、しかも、各中立位置の精度を容
易に高めることができる。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を添付図面に
基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見
るものとする。図1は本発明に係る電動パワーステアリ
ング装置の全体構成図であり、電動パワーステアリング
装置1は、ステアリングハンドル2で発生したステアリ
ング系の操舵トルクを検出する操舵トルク検出手段3
と、この操舵トルク検出手段3の検出信号に基づいて制
御信号を発生する制御手段4と、この制御手段4の制御
信号に基づいて操舵トルクに応じた補助トルクを発生す
る電動機5と、この電動機5の補助トルクをステアリン
グ系に伝達するトルク伝達手段6及び機械式クラッチ4
0とからなり、ピニオン7、ラック8aを介して車輪
(操舵輪)9,9を転舵するものである。
【0013】図2は本発明に係る電動パワーステアリン
グ装置の要部拡大断面図であり、上記ステアリングハン
ドル2(図1参照)に連結した管状の入力軸11と、こ
の入力軸11内に挿通し且つ入力軸11に上部をピン1
2で結合したトーションバー(弾性部材)13と、この
トーションバー13の下部にピン14で結合し下部に上
記ピニオン7を刻設した出力軸15とで、主たるステア
リング系を構成したものである。トーションバー13
は、文字通りトルクに対して正確にねじれ角が発生する
メンバーであって、入力軸11と出力軸15との間での
相対ねじり変位を発生する。なお、ラック8aは、この
図の表裏方向に延びたラック軸8に刻設したものであ
る。また、入力軸11とトーションバー13と出力軸1
5とは同心上にある。
【0014】操舵トルク検出手段3は、入・出力軸1
1,15間の相対ねじれ角を検出することによりステア
リング系の操舵トルクを検出するものであり、本実施の
形態では、ポテンショメータを用いた。
【0015】後述するトルク伝達手段6のホイール32
は、ブッシュ33を介して出力軸15の上部に回転自在
に支承した厚肉の円筒部材であり、この円筒部材に、ギ
ヤ部32aと入力部材32bとを軸方向に下から順に形
成したものである。機械式クラッチ40は、入力部材3
2bの内部に配置したものであり、その断面構成は図6
にて詳述する。図中、36,37,38は軸受、39は
ダストカバーである。
【0016】図3(a),(b)は本発明に係る操舵ト
ルク検出手段の構成図であり、(a)は側面図であり、
(b)は正面図である。操舵トルク検出手段(ポテンシ
ョメータ)3は、図示せぬ抵抗素子及び抵抗素子に沿っ
て移動する摺動接点を内蔵した検出本体部21と、この
検出本体部21内の摺動接点を作動するべく回動する棒
状の作動子22とからなる。
【0017】そして、操舵トルク検出手段3は、入力軸
11の下部の外周面に検出本体部21をボルトで取付
け、出力軸15の上部の外周面に設けた右上がりの傾斜
溝15aに作動子22の先端部を係合することで、入・
出力軸11,15間の相対ねじれ角を検出するものであ
る。なお、操舵トルク検出手段3は、作動子22を傾斜
溝15aの一方の側壁側に付勢するための、ねじりばね
23を備える。このため、傾斜溝15aと作動子22と
の間に回動方向の遊びがない。
【0018】一旦、図2に戻って説明すると、入力軸1
1はケーブルリール24に複数巻回した(例えば、3巻
き程度)電気ケーブル25を備え、この電気ケーブル2
5の一端を操舵トルク検出手段3の検出本体部21に接
続し、他端をハウジング26側のコネクタ27に接続し
たものである。
【0019】図4は図2の4−4線断面図であり、トル
ク伝達手段6の断面構造を示す。トルク伝達手段6は、
電動機5の出力軸5aに結合したウォーム31と、出力
軸15に回転自在に支承したホイール32とからなるウ
ォームギヤ機構である。なお、電動機5はハウジング2
6にボルト止めした。従って、図2においてステアリン
グ系(入力軸11→トーションバー13→出力軸15)
の操舵トルクに、電動機5からの補助トルクを付加した
複合トルクで、ピニオン7を介してラック8を駆動す
る。
【0020】図5は本発明に係る電動パワーステアリン
グ装置の要部分解斜視図である。入力軸11の下端に、
機械式クラッチ40の一構成部品である三脚付き環状の
位置制御手段63をセレーション嵌合し、この位置制御
手段63の下部に3つの位置制御部材64…(…は複数
を示す。以下同じ。)を備える。このため、位置制御部
材64…は図1に示すステアリングハンドル2に連結し
たことになる。一方、出力軸15は基部上端に出力部材
34を備える。
【0021】図6は図2の6−6線断面図であり、本発
明に係る機械式クラッチ40の断面構成を示す。なお、
ハウジング26は省略した。機械式クラッチ40は、上
記電動機5の補助トルクの作用方向がステアリング系の
操舵方向と一致した場合のみ、電動機5の補助トルクを
ステアリング系に伝達するものであり(ワンウエイクラ
ッチの集合体)、すなわち、複数組の摩擦係合式クラッ
チ機構の集合体である。これらの摩擦係合式クラッチ機
構は、入力部材32bの矢印X方向(図反時計回り方
向)に係合する3組の第1クラッチ機構41…と、矢印
Xと逆廻り方向に係合する3組の第2クラッチ機構51
…である。第1クラッチ機構41…と第2クラッチ機構
51…とは、同一円上に交互に並べる。
【0022】詳しくは、第1・第2クラッチ機構41
…,51…は、上記入力・出力部材32b,34間に形
成したテーパ状空間部61…と、これらのテーパ状空間
部61…に介在して入力部材32bと出力部材34とを
係合する円柱状の係合部材62…と、これらの係合部材
62…の位置決めをなす位置制御部材64…と、これら
の位置制御部材64…に向って係合部材62…を付勢す
る付勢部材としての圧縮ばね65…とからなる。
【0023】出力部材34は、概ねおむすび形断面形状
(角部を切り落とした2等辺三角形断面の3つの辺を円
弧状とした形状)を呈する。テーパ状空間部61…は、
入力部材32bの円形内周面と出力部材34の係合面
(多角形外周面)との間に形成した、周方向端部がテー
パ形状を呈する空間部である。位置制御部材64…は、
互いに離間しつつ、入力部材32bと出力部材34との
間の同一円上に等ピッチで、回動可能に配置された部材
である。このような構成の機械式クラッチ40は、位置
制御部材64…の移動にともなって、入力部材32bと
出力部材34とを係合・非係合に選択的に切換えるもの
である。
【0024】ところで、第1・第2クラッチ機構41
…,51…のうち、特定の各1組(以下、「特定第1・
第2クラッチ機構41A,51A」と称する。)は、他
の組よりも早いタイミングで非係合状態になるものであ
る。具体的には、特定第1・第2クラッチ機構41A,
51Aの係合部材62…の位置決めをなす位置制御部材
64(以下、「特定位置制御部材64A」と称する。)
の円弧長L1が、他の位置制御部材64…の円弧長L2
りも大きい。そして、断面略2等辺三角形である出力部
材34において、1つの角部に特定位置制御部材64A
を配置し、互いに等角度の2つの角部に他の位置制御部
材64…を配置したものである。
【0025】更に、上記出力部材34を、出力軸15に
径方向移動可能に取付けたことを特徴とする。具体的に
は、出力部材34に長円若しくは楕円の貫通孔34aを
開け、この貫通孔34aに円形の出力軸15を嵌合し、
且つ、貫通孔34aの長手軸上にピン14を通した。ま
た、出力軸15の先端部に軸方向に延びたスリットSを
形成することで、出力軸15に弾性を有する軸片部(弾
性部材)15bを設け、この軸片部15bで出力部材3
4の貫通孔34aを出力軸15に相対的に押圧する構成
にした。すなわち、出力軸15の外周面と貫通孔34a
の長手軸方向の面との間に軸片部15bを介在し、この
軸片部15bの弾性方向を出力部材34の移動方向(貫
通孔34aの長手軸方向)に合致させ、出力部材34を
出力軸15へ押圧する構成にした。なお、出力部材34
を特定位置制御部材64Aの幅中心へ相対的に押圧す
る。
【0026】1組のクラッチ機構(特定第1クラッチ機
構41A又は特定第2クラッチ機構51A)のみ解除し
た際に、出力部材34を径方向移動自在となすべく、他
のクラッチ機構41…,51…の係合部材62…と係合
する出力部材34の係合面を抜け勾配とした。このた
め、1組を解除した場合に、出力部材34は何等規制さ
れることなく径方向に移動できる。このため、1組のク
ラッチ機構を解除するだけで、他のクラッチ機構をも確
実に解除できる。
【0027】次に、上記構成の機械式クラッチ40の作
用を、図1、図6、及び図7に基づき説明する。図7は
本発明に係る機械式クラッチの作用図である。図1にお
いて、ステアリングハンドル2を操舵しない場合、操舵
トルク検出手段3の信号が無いので、制御装置4はアシ
スト命令信号を出力しない。このため、電動機5は補助
トルクを発生しない状態であり、図6に示すように各第
1・第2クラッチ機構41…、51…は、全て解除状態
(中立状態)にある。
【0028】次に、ステアリングハンドル2の操舵トル
クが小さく、電動機5が補助トルクを発生しない場合、
入力軸11(図2参照)に連結した位置制御部材64…
と出力部材34との間の位相は、ほとんど変化しない。
この場合には、各位置制御部材64…が、例えば、この
図の反時計回り方向に若干移動するものの、第1クラッ
チ機構41…は係合するには至らない。このため、出力
部材34は、電動機5のフリクションやイナーシャの影
響を受けず、図2に示すステアリング系(入力軸11→
トーションバー13→出力軸15)の操舵トルクで回転
し、出力軸15を駆動する。
【0029】一方、ステアリングハンドル2の操舵トル
クが大きく、電動機5が補助トルクを発生している場
合、入力軸11に連結した位置制御部材64…(特定位
置制御部材64Aを含む)と出力部材34との間の位相
が大きく変化する。例えば図6に示すように、位置制御
部材64…が矢印X方向に大きく移動すると、全ての第
1クラッチ機構41…の係合部材62…は、付勢部材6
5…の付勢力で、テーパ状空間部61…の周方向端部に
移動し、摩擦力にて入力・出力部材32b,34間を係
合状態に切換える。その結果、全ての第1クラッチ機構
41…は係合状態になる。電動機5が回転することで、
入力部材32bは矢印X方向に回転し、第1クラッチ機
構41…を介して出力部材32bに補助トルクを伝達す
る。このため、出力部材34は、ステアリング系(入力
軸11→トーションバー13→出力軸15)の操舵トル
クに、電動機5が発生した補助トルクを付加した複合ト
ルクで矢印X方向に回転し、出力軸15を駆動する。
【0030】その後、何等かの理由で電動機5による補
助トルクの伝達が継続している場合に、第1クラッチ機
構41…は次のようにして解除される。図7でステアリ
ングハンドル2を逆方向に操舵すると、全ての位置制御
部材64…は入力部材32bの回転方向と反対方向に回
る。そして、特定位置制御部材64Aは、他の位置制御
部材64…よりも先に、右隣の係合部材62(便宜的に
「係合部材62A」と称する。)に当接し、摩擦力及び
付勢力に抗して押出す。
【0031】このため、係合部材62Aは特定第1クラ
ッチ機構41Aの係合を解除する。この時点で、他の位
置制御部材64…は係合部材62…と当接していない。
従って、他の係合部材62…から出力部材34に継続し
て、図中の矢印Z1,Z2で示すベクトルが作用してお
り、これらのベクトルの合力に基づき、出力部材34に
図中の矢印Z3で示す偏荷重が作用する。その結果、出
力部材34は弾性部材35の弾発力に抗し、ピン14を
案内として特定位置制御部材64A側に僅かに移動す
る。従って、他の係合部材62…の係合力が弱まる。
【0032】その直後に、他の位置制御部材64…も係
合部材62…と当接して、元の中立位置に戻す。その結
果、他の第1クラッチ機構41…も解除される。出力部
材34は軸片部15bの弾発力により、中立位置に自動
復帰する。
【0033】なお、第2クラッチ機構51…は、上記第
1クラッチ機構41…と逆作動をするものであり、ステ
アリングハンドル2を逆方向に操舵した場合に、上記図
6、図7にて説明した作用と同様の操作で、係合・非係
合に切換えることができる。
【0034】次に、操舵トルク検出手段3の調整原理を
図8に基づき説明する。図8(a)〜(c)は本発明に
係る操舵トルク検出手段の調整原理図である。 (a)において、操舵トルク検出手段3は、検出本体部
21を入力軸11に取付け、作動子22の先端部を傾斜
溝15aに係合した状態にある。 (b)のように、入力軸11を上方に移動すると、作動
子22は右上がりの傾斜溝15aに案内されて、図反時
計回りに回動する。 (c)のように、入力軸11を下方に移動すると、作動
子22は傾斜溝15aに案内されて、図時計回りに回動
する。 このように、入力軸11を軸方向に移動することによ
り、作動子22が回動するので、操舵トルク検出手段3
の中立位置を容易に且つ正確に調整できる。
【0035】次に、操舵トルク検出手段3及び機械式ク
ラッチ40の調整方法を図9に基づき説明する。図9
(a)〜(c)は本発明に係る操舵トルク検出手段及び
機械式クラッチ(摩擦係合式クラッチ機構)の調整手順
説明図である。 (1)先ず、(a)において、上部にピン固定用下孔1
1aを開けた入力軸11にトーションバー13を挿通
し、入力軸11、出力軸15、機械式クラッチ40を組
立る。
【0036】(2)入力軸11の外周面に操舵トルク検
出手段3の検出本体部21を取付けるとともに、出力軸
15の外周面の傾斜溝15aに操舵トルク検出手段3の
作動子22を係合する。 (3)トーションバー13に対して回転自在とした入力
軸11を、機械式クラッチ40の中立位置まで回動す
る。詳しくは、入力軸11を回動することで、位置制御
部材64…を第1・第2クラッチ機構41…,51…の
中立位置に設定する。この調整作業で、機械式クラッチ
40の中立位置の調整を完了する。
【0037】(4)その後、(b)において、入力軸1
1を操舵トルク検出手段3の中立位置まで軸方向に移動
する。詳しくは、入力軸11を軸方向に移動すること
で、上記図8の調整原理により中立位置に設定する。こ
の調整作業で、操舵トルク検出手段3の中立位置の調整
を完了する。 (5)最後に、(c)において、入力軸11のピン固定
用下孔11aに合せてトーションバー13にピン用孔1
3aを開け、これらの下孔11a及びピン用孔13aに
ピン12を圧入して、入力軸11をトーションバー13
に固定する。このように、最初に、機械式クラッチ40
の中立位置を調整し、その後、操舵トルク検出器3の中
立位置を調整することで、それぞれ個別に高精度に調整
できる。
【0038】なお、上記実施の形態において、弾性部材
13は、操舵トルクに比例して入力軸11と出力軸15
との間での相対ねじり変位を発生させるものであればよ
く、トーションバーに限定するものではない。また、入
力軸11の外周面に傾斜溝を備え、この傾斜溝に操舵ト
ルク検出手段3の作動子22を係合し、出力軸15の外
周面に操舵トルク検出手段3の検出本体部21を取付け
たものでもよい。第1・第2クラッチ機構41…,51
…の数量は、3組ずつに限定するものではなく、任意に
設定可能である。
【0039】出力部材34は、一部の係合部材62が外
れた際に、他の係合部材62…で押圧されて、径方向移
動するものであればよく、移動方向を問わない。出力部
材34を他の係合部材62…で押圧して移動させれば、
これら他の係合部材62…と出力部材34との摩擦係合
力を低下させることができるからである。出力部材34
の径方向移動を案内する部材は、ピン14に限定するも
のではない。出力軸15に出力部材34を押圧する弾性
部材は、圧縮ばね35に限定するものではなく、例え
ば、皿ばねでもよい。
【0040】テーパ状空間部61は、入力部材32bの
内周面と出力部材34の外周面との間に形成するもので
あればよく、出力部材34の外周面(係合面)の形状も
図5や図11に示すものに限定しない。そして、入力部
材32bの内周面を所定の多角形とし、出力部材34の
外周面を円形としてもよい。係合部材62は、テーパ状
空間部61の周方向端部と係合・非係合の切換えができ
るものであればよく、円柱状の他に、例えば球状でもよ
い。機械式クラッチ40の付勢部材は圧縮ばね65に限
定せず、例えば、硬質ゴム材や板ばね等で構成してもよ
い。
【0041】更に、第1・第2クラッチ機構41…,5
1…は、摩擦係合式クラッチの構成であればよく、例え
ば、周知のスプラグ式クラッチでもよい。スプラグ式ク
ラッチとは、円筒状の内周係合面を有する外方部材(入
力部材32bに相当)と、円筒状の外周係合面を有する
内方部材(出力部材34に相当)とを同心に配置し、こ
れらの両係合面を対向させ、その間の隙間に、複数のス
プラグ(くさび作用をするこま)と、これらのスプラグ
の位置決めをなすためにステアリングハンドルに連結し
た部材(位置制御部材64に相当)と、スプラグを前記
両係合面に向ってくさび係合させるように付勢するばね
とを介在したものである(特開平1−188727号に
示すクラッチ装置など)。
【0042】上記電動パワーステアリングの中立調整方
法は、トーションバー13に対して回転自在とした入力
軸11もしくは出力軸15を機械式クラッチ40の中立
位置まで回動し、次に、入力軸11もしくは出力軸15
を操舵トルク検出手段3の中立位置まで軸方向に移動
し、この後、入力軸11もしくは出力軸15をトーショ
ンバー13に固定するようにしたものであればよい。
【0043】
【発明の効果】本発明は上記構成により次の効果を発揮
する。請求項1記載の発明は、作動子を、入力軸の外周
面に備える傾斜溝又は出力軸の外周面に備える傾斜溝の
どちらか一方に係合させるとともに、検出本体部を、入
力軸の外周面又は出力軸の外周面のどちらか他方に取付
けたので、簡単な構成で、操舵トルク検出手段を入・出
力軸に取付けたり交換することが容易である。また、操
舵トルク検出手段の作動子を、入力軸の外周面に備える
傾斜溝又は出力軸の外周面に備える傾斜溝のどちらか一
方に係合させたので、入・出力軸を組立てた後に、入力
軸又は出力軸のどちらか一方を軸方向に移動すると、作
動子が傾斜溝に沿って変位する。このため、入力軸又は
出力軸のどちらか一方を軸方向に移動するだけで、操舵
トルク検出手段の中立位置を調整できるので、簡単な構
成で、しかも、調整作業が容易である。更に、操舵トル
ク検出手段を軸の外周面に取付けるので、軸に挿通した
場合に比べて検出本体部が小型になり、電動パワーステ
アリング装置を小型にできる。
【0044】請求項2記載の発明は、作動子を、入力軸
の外周面に備える傾斜溝又は出力軸の外周面に備える傾
斜溝のどちらか一方に係合させるとともに、検出本体部
を、入力軸の外周面又は出力軸の外周面のどちらか他方
に取付けたので、簡単な構成で、操舵トルク検出手段を
入・出力軸に取付けたり交換することが容易である。ま
た、入力軸もしくは出力軸を回動することで、摩擦係合
式クラッチ機構の中立位置を調整でき、一方、入力軸又
は出力軸を軸方向に移動することで、作動子を傾斜溝に
沿って変位させて、操舵トルク検出手段の中立位置を調
整できる。このため、クラッチ機構の中立位置の調整作
業と、操舵トルク検出器の中立位置の調整作業とを、個
別に実施できるので、各中立位置の調整作業が容易であ
り、しかも、各中立位置の精度を容易に高めることがで
きる。更に、操舵トルク検出手段を軸の外周面に取付け
るので、軸に挿通した場合に比べて検出本体部が小型に
なり、電動パワーステアリング装置を小型にできる。
【0045】請求項3記載の発明は、先に、入力軸もし
くは出力軸を摩擦係合式クラッチ機構の中立位置まで回
動し、次に、入力軸もしくは出力軸を操舵トルク検出手
段の中立位置まで軸方向に移動して、作動子を傾斜溝に
沿って変位させるので、これら一連の調整作業だけで、
摩擦係合式クラッチ機構の中立位置と、操舵トルク検出
器の中立位置とを個別に容易に行うことができ、しか
も、各中立位置の精度を容易に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る電動パワーステアリング装置の全
体構成図
【図2】本発明に係る電動パワーステアリング装置の要
部拡大断面図
【図3】本発明に係る操舵トルク検出手段の構成図
【図4】図2の4−4線断面図
【図5】本発明に係る電動パワーステアリング装置の要
部分解斜視図
【図6】図2の6−6線断面図
【図7】本発明に係る機械式クラッチの作用図
【図8】本発明に係る操舵トルク検出手段の調整原理図
【図9】本発明に係る操舵トルク検出手段及び機械式ク
ラッチ(摩擦係合式クラッチ機構)の調整手順説明図
【符号の説明】
1…電動パワーステアリング装置、2…ステアリングハ
ンドル、3…操舵トルク検出手段、21…検出本体部、
22…作動子、23…ねじりばね、5…電動機、6…ト
ルク伝達手段、9…操舵輪(車輪)、11…入力軸、1
3…弾性部材(トーションバー)、15…出力軸、32
b…入力部材、34…出力部材、40…機械式クラッ
チ、41,41A…摩擦係合式クラッチ(第1クラッチ
機構)、51,51A…摩擦係合式クラッチ(第2クラ
ッチ機構)、61…テーパ状空間部、62…係合部材、
64,64A…位置制御部材、65…付勢部材(圧縮ば
ね)。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B62D 5/00 - 5/06

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 弾性部材を介した入力軸と出力軸との間
    に入・出力軸間の相対ねじれ角を検出する操舵トルク検
    出手段を介設し、この操舵トルク検出手段の情報に基づ
    いて補助トルクを発生させる電動パワーステアリング装
    置において、前記操舵トルク検出手段を、検出本体部及
    びこの検出本体部を作動する作動子で構成し、この作動
    子を、前記入力軸の外周面に備える傾斜溝又は前記出力
    軸の外周面に備える傾斜溝のどちらか一方に係合させる
    とともに、前記検出本体部を、前記入力軸の外周面又は
    前記出力軸の外周面のどちらか他方に取付けたことを特
    徴とする電動パワーステアリング装置。
  2. 【請求項2】 ステアリングハンドルに連結した入力軸
    と操舵輪に連結した出力軸とを、弾性部材を介して連結
    し、また、電動機に連結した入力部材と前記出力軸に連
    結した出力部材とを、摩擦係合式クラッチ機構を介して
    連結し、このクラッチ機構を、前記入力・出力部材を係
    合するべくこれら入力・出力部材間に介在した係合部材
    と、この係合部材の位置決めをなすために前記入力軸に
    連結した位置制御部材と、この位置制御部材に向って係
    合部材を付勢した付勢部材とで構成し、一方、前記入・
    出力軸間に操舵トルク検出手段を介設することにより、
    この操舵トルク検出手段の情報に基づいて発生した前記
    電動機の補助トルクを、前記出力軸に伝達させる電動パ
    ワーステアリング装置において、前記操舵トルク検出手
    段を、検出本体部及びこの検出本体部を作動する作動子
    で構成し、この作動子を、前記入力軸の外周面に備える
    傾斜溝又は前記出力軸の外周面に備える傾斜溝のどちら
    か一方に係合させるとともに、前記検出本体部を、前記
    入力軸の外周面又は前記出力軸の外周面のどちらか他方
    に取付けたことを特徴とする電動パワーステアリング装
    置。
  3. 【請求項3】 ステアリングハンドルに連結した入力軸
    と操舵輪に連結した出力軸とを、弾性部材を介して連結
    し、また、電動機に連結した入力部材と前記出力軸に連
    結した出力部材とを、摩擦係合式クラッチ機構を介して
    連結し、このクラッチ機構を、前記入力・出力部材を係
    合するべくこれら入力・出力部材間に介在した係合部材
    と、この係合部材の位置決めをなすために前記入力軸に
    連結した位置制御部材と、この位置制御部材に向って係
    合部材を付勢した付勢部材とで 構成し、一方、前記入・
    出力軸間に操舵トルク検出手段を介設することにより、
    この操舵トルク検出手段の情報に基づいて発生した前記
    電動機の補助トルクを、前記出力軸に伝達させる電動パ
    ワーステアリングにおいて、前記入力軸の外周面又は出
    力軸の外周面のどちらか一方に前記操舵トルク検出手段
    の検出本体部を取付けるとともに、出力軸の外周面の傾
    斜溝又は入力軸の外周面の傾斜溝のどちらか他方に前記
    操舵トルク検出手段の作動子を係合し、前記弾性部材に
    対して回転自在とした入力軸もしくは出力軸を前記摩擦
    係合式クラッチ機構の中立位置まで回動し、次に、入力
    軸もしくは出力軸を前記操舵トルク検出手段の中立位置
    まで軸方向に移動し、この後、入力軸もしくは出力軸を
    弾性部材に固定することを特徴とした電動パワーステア
    リングの中立調整方法。
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