JP3818814B2 - 電動パワーステアリング装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、舵取り軸を支持するハウジングの内部に、操舵補助用のモータと、該モータの回転を舵取り軸に伝えるボールねじ機構とを備える電動パワーステアリング装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
舵取りのために舵輪(ステアリングホイール)に加えられる操舵トルクの検出結果に基づいて操舵補助用のモータを駆動し、該モータの回転力を舵取り装置に伝えて操舵を補助する構成とした電動パワーステアリング装置は、操舵補助力の発生源として油圧アクチュエータを用いる油圧パワーステアリング装置と比較して、車速の高低,操舵の頻度等、走行状態に応じた補助力特性の制御が容易に行えるという利点を有することから、近年、その適用範囲が拡大する傾向にある。
【0003】
自動車の舵取り装置としては種々の形式のものが実用化されており、その一つにラック・ピニオン式の舵取り装置がある。これは、軸長方向に所定の長さに亘ってラック歯を形成してなるラック軸(舵取り軸)を車体の左右方向に延設し、このラック軸の両端部をタイロッドを介して操向用の車輪に連結すると共に、前記ラック歯に噛合するピニオン軸をコラム軸を介して舵輪に連結してなり、舵取りのための舵輪の操作を、前記ピニオン軸を介してラック軸に伝え、該ラック軸を軸長方向に移動させて操舵を行わせる構成としたものである。
【0004】
このようなラック・ピニオン式の舵取装置を電動パワーステアリング装置として構成する場合、操舵補助用のモータの回転をラック軸に直接的に伝え、該ラック軸を軸長方向に移動させる構成とするのが合理的である。このためには、操舵補助用のモータをラック軸の周辺に配設する必要があるが、ラック軸の配設位置の周辺には、操舵補助のために十分な回転力を発生し得るモータの占有スペースを確保し難いという問題がある。
【0005】
この問題の解消のため本願出願人は、ラック軸を支持する筒形のハウジングの内部に操舵補助用のモータを同軸的に構成し、該モータの発生力をラック軸に伝えるようにした電動パワーステアリング装置を提案している。図8は、この電動パワーステアリング装置の要部の構成を示す一部破断正面図である。
【0006】
図示の如く筒形のラックハウジングH1 の内部に軸長方向への移動自在に支承されたラック軸1の中途部には、所定長に亘ってラック歯11が形成されている。またラックハウジングH1 の中途部にこれと交叉する態様に連設されたピニオンハウジングH2 の内部には、ピニオン軸4が回転自在に支承されており、ピニオンハウジングH2 の上部へのピニオン軸4の突出端は、図示しない舵輪に連結されている。ピニオン軸4の下部には、ピニオン40が一体形成されており、該ピニオン40は、ラックハウジングH1 との交叉部において前記ラック歯11に噛合させてあり、図示しない舵輪の操作に応じたピニオン軸4の回転を、ピニオン40とラック歯11との噛合部においてラック軸1の軸長方向の移動に変換し、この移動を左右の操向車輪に伝えて操舵を行わせるラック・ピニオン式の舵取り装置を構成している。
【0007】
このようにラック軸1の移動により行われる操舵を補助するモータ5は、ラックハウジングH1 の中途部を適長に亘って拡径して一体に構成された円筒形のモータハウジングH3 の内部に、該モータハウジングH3 の内周面に固設されたステータ51と、左右両側を一対の軸受54,55により支持されて前記ステータ51の内側にて回転する円筒形のロータ52とを備えて構成されている。
【0008】
ロータ52の一側には、該ロータ52の回転を直線運動に変換して前記ラック軸1に伝えるボールねじ機構2が構成されている。このボールねじ機構2は、前記ロータ52の一側端部に同軸的に連結され、軸受56によりラックハウジングH1 に支持されたボールナット20と、該ボールナット20の内側への挿通部を含めて前記ラック軸1の外周に形成されたねじ軌条21とを、多数のボール22,22…を介して螺合せしめて構成されている。
【0009】
このように構成されたボールねじ機構2において、ボールナット20は、前記モータ5の回転、即ち、ステータ51への通電に伴うロータ52の回転に伴って軸回りに一体回転し、この回転に応じて前記ボール22,22…がラック軸1外周のねじ軌条21に沿って転動する。このときラック軸1は、各ボール22,22…の転動に伴ってねじ軌条21に加えられる作用力の軸方向分力により押圧されて軸長方向に移動せしめられ、この移動によって前述の如く行われる操舵が補助される。
【0010】
以上の如く構成された電動パワーステアリング装置においては、操舵補助用のモータ5が、舵取り軸としてのラック軸1を支持するラックハウジングH1 の一部を拡径してなるモータハウジングH3 の内部に構成されており、ラック軸1の周辺に大なる占有スペースを必要とせずに配設することができる。また前記モータ5の回転を前記ラック軸1の移動に変換する運動変換機構として、伝動効率が高く、コンパクトに構成可能なボールねじ機構2が用いられており、前記モータ5を含めた占有スペースの一層の削減を図ることができる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
さて以上の構成において、操舵補助用のモータ5から前記ラック軸1への伝動を確実に行わせるためには、運動変換機構として用いられているボールねじ機構2の各部に高い精度が要求され、特に、前記ボールナット20と前記ラック軸1との間の同心性を高めることが必要である。従来においては、前記ロータ52の一側へのボールナット20の嵌着を圧入によりリジッドに行い、両者の同心性を高めると共に、前記軸受54,55,56によるこれらの支持部の加工を高精度に実施し、ボールナット20とラック軸1との間に所望の同心性を確保するようにしている。
【0012】
しかしながら操舵中のラック軸1は、その両端に連結された操向車輪に加わる路面反力の作用により種々の方向に撓んだ状態にあり、この撓みによって組み立て時に確保された同心性に狂いが生じ、ラック軸1外周のねじ軌条21とボールナット20との間に螺合不良が発生することがあり、ねじ軌条21に沿ったボール22,22…の滑らかな転動が阻害され、これに起因するトルクむらが運転者に引っ掛かり感として体感されて操舵感覚の悪化を招来する上、各ボール22,22…の転動部における摩擦抵抗が増し、伝動効率の低下を招くという問題があった。
【0013】
なお以上の構成は、前述したラック・ピニオン式の舵取り装置におけるラック軸1と同様に、軸長方向の移動に応じて舵取りがなされる舵取り軸を備える各種形式の舵取り装置を電動パワーステアリング装置として構成する場合に適用することができ、このような電動パワーステアリング装置においても前述した問題は同様に発生する。
【0014】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、舵取り軸のハウジングの内部に構成された操舵補助用のモータの筒形のロータと、これの一側に連設されたボールナットとをラジアル方向への変位を許容して支持することにより、舵取り軸に形成されたねじ軌条とボールナットとの間に舵取り軸の撓みに起因する螺合不良の発生を緩和して、操舵感覚の悪化及び伝動効率の低下を防止することができる電動パワーステアリング装置を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1発明に係る電動パワーステアリング装置は、舵取り軸を支持する筒形のハウジングの内部に、操舵補助用のモータの筒形のロータと、該ロータの一側に連設された筒形のボールナットとを、前記舵取り軸と同軸上での回転自在に両持ち支持し、前記モータの回転を、前記ボールナット及び前記舵取り軸の一部を含んで構成されたボールねじ機構により直線運動に変換して舵取り軸に伝え、該舵取り軸を軸長方向に移動させて舵取りを補助する電動パワーステアリング装置において、前記ロータの一側をラジアル方向の変位可能に支持すると共に、前記ロータの他側を、該ロータと前記ハウジングとの間に介装されたラジアル軸受と、該ラジアル軸受に並設してあり、前記ロータ及びハウジングに夫々取付けられた押え部材の対向面間に挾持されたスラスト玉軸受とにより支持してあり、前記押え部材と前記スラスト玉軸受との間に介装された弾性体を備えることを特徴とする。
【0016】
本発明においては、操舵中に舵取り軸に撓みが生じたとき、ボールねじ機構の螺合部に加わる力の作用により、操舵補助用のモータのロータの一側がラジアル方向に変位してボールナットと舵取り軸との同心性を保つ。このときロータの他側は、ラジアル軸受による支持部を支点とし、スラスト玉軸受との間に確保されている隙間の範囲内にて、スラスト玉軸受と押え部材との間に介装された弾性体の弾性変形を伴って揺動して前記変位を許容する。螺合部への作用力が解除された場合、弾性体は弾性復帰してスラスト玉軸受とロータとの初期姿勢を維持する。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。図1は、本発明に係る電動パワーステアリング装置(以下本発明装置という)の要部の構成を示す一部破断正面図である。
【0024】
図中1は、ラック軸であり、図示しない車体の左右方向に延設された筒形をなすラックハウジングH1 の内部に、軸回りの回転を拘束され、軸長方向への摺動自在に支承されており、ラックハウジングH1 の両側に夫々突出するラック軸1の両端は、各別のタイロッドを介して図示しない操向車輪(一般的には左右の前輪)に連結されている。
【0025】
ラックハウジングH1 の中途部には、これと軸心を交叉させてピニオンハウジングH2 が連設されており、該ピニオンハウジングH2 の内部には、その軸心回りでの回転自在にピニオン軸4が支承されている。ピニオン軸4は、ピニオンハウジングH2 の上部に適長突出させてあり、この突出部は、図示しないコラム軸を介して舵輪(ステアリングホイール)に連結され、舵取りのための舵輪の操作に応じて軸回りに回転するようになしてある。
【0026】
ピニオンハウジングH2 の内部に延設されたピニオン軸4の下部には、図中に破線により示す如く、ピニオン40が一体的に形成してある。また、ラックハウジングH1 内に支承されたラック軸1には、所定の長さに亘ってラック歯11が形成してあり、ピニオンハウジングH2 との交叉位置において前記ピニオン40に噛合させてある。
【0027】
而して、舵取りのために前記舵輪が操作されたとき、この操作に伴ってピニオン軸4が回転し、この回転が、前記ピニオン40及びラック歯11の噛合により変換されてラック軸1が軸長方向に移動することとなり、この移動が両端のタイロッドを介して左右の操向車輪に伝達され、これらの操向車輪が前記舵輪の操作に応じて操舵されるラック・ピニオン式の舵取り機構が構成されている。
【0028】
本発明装置においては、以上の如く行われる操舵を補助するモータ5が、前記ラックハウジングH1 の中途部を適長に亘って拡径して構成された円筒形のモータハウジングH3 の内部に、ステータ51とロータ52とを備える3相ブラシレスモータとして構成されている。
【0029】
前記ロータ52は、ラック軸1の外径よりも大なる内径を有する円筒体であり、ラック軸1の中途部に外側を囲繞するように挿通され、該ラック軸1と同軸上での回転自在にモータハウジングH3 の内部に後述の如く支持されている。また前記ステータ51は、モータハウジングH3 の内周面に固設され、前記ロータ52の外周に保持された磁極53とわずかな隙間を介して対向させてあり、該ステータ51への通電に応じて前記ロータ52が正逆両方向に回転する構成としてある。
【0030】
以上の如く構成された操舵補助用のモータ5は、ピニオンハウジングH2 の内部に構成された図示しないトルクセンサの検出結果に基づいて前記ステータ51の通電を制御することにより、舵輪に加えられる操舵トルクの方向に、この操舵トルクの大きさに対応する回転力を発すべく回転駆動されており、この回転は前記ロータ52の一側に構成されたボールねじ機構2により直線運動に変換されてラック軸1に伝達される。
【0031】
前記ボールねじ機構2は、前記ロータ52の一側に延設された拡径部 52aに挿通され、該拡径部 52aの端面にフランジ止めされて、ラック軸1の中途部外側を囲繞するように配された円筒形のボールナット20と、該ボールナット20の内側への挿通部を含めて前記ラック軸1の外周に所定長に亘って形成されたねじ軌条21とを、多数のボール22,22…を介して螺合せしめて構成されている。
【0032】
この構成によりボールナット20は、前記モータ5の回転、即ち、ステータ51への通電に伴うロータ52の回転に伴って軸回りに一体回転し、この回転に応じて前記ボール22,22…がラック軸1外周のねじ軌条21に沿って転動する。このとき、軸回りの回転を拘束されたラック軸1は、各ボール22,22…の転動により外周のねじ軌条21に加えられる作用力の軸方向分力により押圧され、該ラック軸1の軸長方向の移動によって前述の如く行われる操舵が補助されることとなる。
【0033】
本発明装置の特徴は、以上の如く構成された操舵補助用のモータ5のロータ52の支持構造にある。図1において前記ロータ52は、前記ボールナット20との連結側を玉軸受6により、また他側を針状ころ軸受7とスラスト玉軸受8とにより夫々支持されている。
【0034】
図2は、玉軸受6によるロータ52の一側の支持部近傍の拡大断面図である。図示の如く玉軸受6は、ロータ52に外嵌された内輪を、該ロータ52の外面に螺合する止めナット60と前記拡径部 52aの端面との間に挾持する一方、モータハウジングH3 に内嵌された外輪の一側を、該モータハウジングH3 の内面に螺合する止めナット61に当接させて、前記ロータ52に作用するラジアル方向の荷重を主として負担する構成としてある。なお、図示の玉軸受6は深溝玉軸受としてあるが、これに換えてアンギュラ玉軸受を玉軸受6として用いてもよい。
【0035】
前記ロータ52の外周面には、以上の如き玉軸受6の外嵌位置の全周に亘って凹溝62が形成されており、該凹溝62の内部には環状ばね63が巻装され、前記玉軸受6の内輪に内側から弾接させてある。
【0036】
図3は、環状ばね63の斜視図である。図示の如く環状ばね63は、ばね鋼等の弾性に富む材料からなる薄肉の帯体を、周方向の一か所に適宜幅の欠落部64を余して環状に成形し、該欠落部64の縮幅を伴って半径方向内向きに作用する力、又は前記欠落部64の拡幅を伴って半径方向外向きに作用する力に対し、これに抗するばね力を発生すべく構成されている。
【0037】
ロータ52外周の凹溝62への環状ばね63の装着は、自然状態での内径d(図3参照)が前記凹溝62の底部外径よりも大きい環状ばね63を選定し、これを欠落部64の縮幅を伴って縮径せしめて凹溝62内に収め、ラジアル方向外向きの張り出しを該当位置に外嵌される前記玉軸受6の内輪の内面により拘束した状態でなされている。以上の構成により前記ロータ52は、前記玉軸受6による支持側において、両者の嵌合隙間の範囲内にて前記環状ばね63のばね力に抗してラジアル方向に変位することができ、これに応じて同側に一体に連結されたボールナット20もまたラジアル方向に変位することが可能である。
【0038】
図4は、ロータ52の他側の支持部近傍の拡大断面図である。図示の側でのロータ52の支持は、モータハウジングH3 の同側端部に嵌着保持された支持ブラケット70との間に、前記針状ころ軸受7及びスラスト玉軸受8を並設して実現されている。針状ころ軸受7は、前記支持ブラケット70の内面に軸長方向の移動を拘束して内嵌され、ロータ52の該当位置に外嵌されたスリーブ71に転接して、ラジアル方向の荷重を負担するラジアル軸受として構成されている。
【0039】
またスラスト玉軸受8は、軸方向に並設された環状の保持輪間に多数のボールを介在させてなるスラスト専用の玉軸受であり、ロータ52の同側への延長部に遊嵌され、前記支持ブラケット70の端部内面に螺合固定された押えナット80に一側の保持輪を、また前記ロータ52に外嵌された環状の当て板81に他側の保持輪を夫々当接させてある。当て板81の他側(スラスト玉軸受8との非当接側)には、前記ロータ52に外嵌され、前記スリーブ71の端面に一側を当接させて固定された厚肉の押え板82が、他側端面に形成された凹溝内に装着された弾性ワッシャ83を介して当接させてある。
【0040】
図5は、弾性ワッシャ83の斜視図である。図示の如く弾性ワッシャ83は、ばね鋼等の弾性に富む材料からなる薄肉の環状体を周方向に波形に成形してなり、夫々の波形部分の変形により、厚さ方向に作用する力に対し、これに抗するばね力を発生すべく構成されている。
【0041】
以上の如くスラスト玉軸受8は、支持ブラケット70を介してモータハウジングH3 に取付けられた押えナット80と、ロータ52に取付けられた押え板82とにより両側から挾持され、これらを介して作用するスラスト荷重を負担することができる。このようなスラスト玉軸受8による支持部において前記ロータ52は、両側の保持輪との間の隙間の範囲内において変位可能であり、ラジアル軸受としての針状ころ軸受7の支持部を支点として揺動することができる。このときロータ52に取付けられた押え板82は、スラスト玉軸受8の同側の保持輪に対して傾倒するが、この傾倒は、両者間に前述の如く介装された弾性ワッシャ83の変形により許容され、前記揺動は阻害されることなく生じる。
【0042】
図6は、ロータ52の支持状態の説明図である。図6(a)に示す如くロータ52の一側は、モータハウジングH3 との間に介装された玉軸受6により、環状ばね63を介して支持されており、前記環状ばね63の弾性に抗してラジアル方向への変位が可能である。一方ロータ52の他側は、モータハウジングH3 との間に介装された針状ころ軸受7とスラスト玉軸受8とにより前述の如く支持されており、針状ころ軸受7の支持部を支点とし、スラスト玉軸受8との間の隙間の範囲内において揺動可能である。
【0043】
このように支持されたロータ52の回転は、玉軸受6による支持側に連設されたボールナット20を介して内側に挿通されたラック軸1に伝達され、該ラック軸1が軸長方向に移動せしめられて操舵補助がなされる。この間ラック軸1には、両端に連結された操向車輪に加わる路面反力の作用により撓みが生じることがあるが、このときボールナット20は、図6(b)に示す如く、玉軸受6による支持位置での環状ばね63の変形を伴って前記撓みに追随してラジアル方向に変位する。このような変位により、ボールナット20とラック軸1との同心性が常に良好に維持され、該ラック軸1の外周に形成されたねじ軌条21(図1,2参照)との間に螺合不良が発生せず、前述した操舵補助を滑らかに行わせ、操舵感覚の悪化及び伝動効率の低下を防止することができる。
【0044】
またボールナット20の前述した変位は、ロータ52の他側において、針状ころ軸受7の支持部を支点とし、スラスト玉軸受8との間の隙間の範囲内にて生じる揺動により許容される。このとき、スラスト玉軸受8と押え板82との間に介装された弾性ワッシャ83が図6(b)に示す如く変形し、ロータ52の揺動に伴ってスラスト玉軸受8に対して生じる押え板82の傾倒が吸収される結果、前記揺動が阻害されることがない。前記弾性ワッシャ83は、スラスト玉軸受8に対するロータ52の姿勢を適正に保つ作用をなし、前述した動作に伴ってラック軸1及びボールナット20を介してロータ52に作用するスラスト荷重は、前記スラスト玉軸受8により確実に負担される。
【0045】
なお以上の実施の形態においては、ロータ52の一側を環状ばね63を介して玉軸受6により支持し、ラジアル方向に変位可能としてあるが、同側の支持部の構成はこれに限らず、適宜の構成を採用することができる。例えば、環状ばね63に換えて、他のばね、硬質ゴム等の弾性体を用いてもよく、また玉軸受6に換えて、円筒ころ軸受、針状ころ軸受等、他のラジアル軸受を用いてもよい。
【0046】
また、ロータ52の他側の支持部は、図4に示す構成に限らず、ロータ52をスラスト支持するスラスト玉軸受8と、これに並設され、ロータ52をラジアル支持するラジアル軸受との組み合わせにより適宜に構成することができる。図7は、ロータ52の他側の支持部の他の実施の形態を示す断面図であり、本図においては、ラジアル軸受としての前記針状ころ軸受7に換えて玉軸受7aが用いられている。他の部分の構成は、前記図4に示す支持部の構成と同じであり、図4と同一の参照符号を付して詳細な説明を省略する。
【0047】
このように支持されたロータ52においても、玉軸受7aによる支持部を支点としてスラスト玉軸受8との隙間の範囲内にて生じる揺動により、ボールナット20の連設側でのラジアル方向の変位を許容することができ、ボールナット20とラック軸1との同心性を良好に維持することが可能である。
【0053】
なお以上の実施の形態においては、操舵補助用のモータ5の回転をラック軸1に伝える構成としたラック・ピニオン式の舵取り装置への適用例について述べたが、本発明は、前記ラック軸1と同様に軸長方向への移動により舵取りを行わせる舵取り軸を備える他の形式の舵取り装置において、操舵補助用のモータの回転を直線運動に変換して前記舵取り軸に伝えるべく適用することができ、これらにおいても同様の効果が得られることは言うまでもない。
【0054】
【発明の効果】
以上詳述した如く本発明の第1発明に係る電動パワーステアリング装置においては、舵取り軸に螺合するボールナットが連設された操舵補助用のモータのロータを、その一側にてラジアル方向の変位可能に支持し、同じく他側にてラジアル軸受とスラスト玉軸受とにより支持したから、操舵中に舵取り軸に撓みが生じたとき、ロータの一側がラジアル方向に変位し、またロータの他側が、ラジアル軸受による支持部を支点とし、スラスト玉軸受との間に確保されている隙間の範囲内にて弾性体の弾性変形を伴って揺動して前記変位を許容することができ、ロータ及びボールナットと舵取り軸との同心性が良好に維持され、舵取り軸に形成されたねじ軌条とボールナットとの間での螺合不良の発生を抑え、操舵感覚の悪化及び伝動効率の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明装置の要部の構成を示す一部破断正面図である。
【図2】 ロータの一側の支持部近傍の拡大断面図である。
【図3】 図2に示す支持部に用いられている環状ばねの斜視図である。
【図4】 ロータの他側の支持部近傍の拡大断面図である。
【図5】 図4に示す支持部に用いられている弾性ワッシャの斜視図である。
【図6】 ロータの支持状態の説明図である。
【図7】 ロータの他側の支持部の他の実施の形態を示す断面図である。
【図8】 従来の電動パワーステアリング装置の要部の構成を示す一部破断正面図である。
【符号の説明】
1 ラック軸
2 ボールねじ機構
4 ピニオン軸
5 モータ
6 玉軸受
7 針状ころ軸受
8 スラスト玉軸受
20 ボールナット
21 ねじ軌条
51 ステータ
52 ロータ
63 環状ばね
80 押えナット
82 押え板
83 弾性ワッシャ
H1 ラックハウジング
H2 ピニオンハウジング
H3 モータハウジング
Claims (1)
- 舵取り軸を支持する筒形のハウジングの内部に、操舵補助用のモータの筒形のロータと、該ロータの一側に連設された筒形のボールナットとを、前記舵取り軸と同軸上での回転自在に両持ち支持し、前記モータの回転を、前記ボールナット及び前記舵取り軸の一部を含んで構成されたボールねじ機構により直線運動に変換して舵取り軸に伝え、該舵取り軸を軸長方向に移動させて舵取りを補助する電動パワーステアリング装置において、前記ロータの一側をラジアル方向の変位可能に支持すると共に、前記ロータの他側を、該ロータと前記ハウジングとの間に介装されたラジアル軸受と、該ラジアル軸受に並設してあり、前記ロータ及びハウジングに夫々取付けられた押え部材の対向面間に挾持されたスラスト玉軸受とにより支持してあり、前記押え部材と前記スラスト玉軸受との間に介装された弾性体を備えることを特徴とする電動パワーステアリング装置。
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