JP3116451B2 - 可逆性電極 - Google Patents

可逆性電極

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    • C08G75/14Polysulfides
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、電池、エレクトロクロ
ミック表示素子、センサー、メモリーなどの電気化学素
子に用いられる有機化合物を主体とする可逆性電極に関
する。
【0002】
【従来の技術】1971年に白川氏らにより導電性のポ
リアセチレン電極が発見されて以来、導電性高分子電極
の実用化が盛んに検討されている。導電性高分子を電極
材料に用いると、軽量で高エネルギー密度の電池や、大
面積のエレクトロクロミック素子、微小電極を用いた生
物化学センサーなどの電気化学素子の実現が期待でき
る。しかし、ポリアセチレンは空気中の水分や酸素に対
して化学的に不安定であり、電気化学素子に用いる電極
としては実用性に乏しいという問題を有していた。この
問題を克服するため、他のπ電子共役系導電性高分子の
導入が検討された。その結果、ポリアニリン、ポリピロ
ール、ポリアセン、ポリチオフェンなどの比較的安定な
高分子が見いだされ、これらを正極に用いたリチウム二
次電池が開発されるようになった。
【0003】これらの高分子電極は、電極反応に際して
カチオンのみならず電解質中のアニオンを取り込むた
め、電解質はイオンの移動媒体として作用するだけでな
く、電池反応に関与し、そのため電池容量に見合う量の
電解質を電池内に保有する必要がある。結果として、そ
の分電池のエネルギー密度は低下し、20〜50Wh/kg
程度になり、ニッケルカドミウム蓄電池、鉛蓄電池など
の通常の二次電池に較べエネルギー密度は2分の1程度
に小さくなるという問題を有している。
【0004】これに対し、高エネルギー密度が期待でき
る有機材料として,ヨーロッパ特許415856号にジ
スルフィド系化合物が提案されている。一般式X−S−
R−S−(S−R−S)n−S−R−S−X’で表され
る化合物を用いることができる。ただし、nは0あるい
は1以上の整数。X,X’は金属Mまたは金属Mを含む
合金、水素または有機末端基。Rはジチオールの硫黄原
子Sを1個以上結合している炭素原子を含む環式有機基
である。この化合物のS−S結合は電解還元により開裂
し、電解浴中のカチオン(M+)と結合し、R−Sー・
M+で表される塩を生成する。また、この塩は、電解酸
化により再び元のR−S−S−Rに戻るという性質を持
つものである。また、カチオン(M+)を供給、捕捉す
る金属Mとジスルフィド系化合物を組み合わせた金属ー
イオウ二次電池が上記のヨーロッパ特許に提案されてお
り、1000Wh/Kg以上と、通常の二次電池に匹敵あるいは
それ以上のエネルギー密度が期待できる。
【0005】Journal of the American Chemical Socie
ty, Vol97, NO11, p3235-3238,(1975)でジスルフィド化
合物の酸化反応が含窒素共役系有機化合物であるフラビ
ンを加えることで促進されることが述べられ,ジスルフ
ィド化合物の硫黄原子が,含窒素共役系有機化合物の窒
素原子に結合することにより反応が促進されると述べら
れている。しかし,上記の文献は,反応速度について論
じているのみで,ジスルフィド化合物に対する含窒素共
役系有機化合物の酸化促進現象を電気化学的アプローチ
から測定,解釈してはいない。まして,ジスルフィド化
合物と,その酸化還元反応を促進する含窒素共役系有機
化合物を用いれば,有機溶媒中,室温でも大電流充放電
が可能で可逆性に優れた電極を作成出来ることを全くの
べていない。
【0006】なお,導電性高分子を単に炭素などのよう
に導電剤,集電材としてジスルフィド系化合物電極に添
加する試みは、上記のヨーロッパ特許第415856号明細書
に述べられているが、導電性高分子がジスルフィド系化
合物の電解に際し電極触媒として作用することは全く示
されていない。とくに、導電性高分子の中でも窒素原子
を含み,その窒素原子が炭素原子と共役する構成を含む
モノマを重合した導電性高分子は、触媒としてジスルフ
ィド化合物に作用することは述べられていない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしこのような従来
のジスルフィド系化合物は、ヨーロッパ特許第415856号
明細書の実施例で報告しているように、例えば[(C2
52NCSS−]2を用いて組み立てた電池の充放電
において、放電電流が13μA/cm2,充電電流6.5μA
/cm2がと小さい。電極反応論によれば、このような材料
における電気化学反応は、その電子移動過程が極めて遅
く、そのため室温付近では実用に見合う大きな電流、例
えば1mA/cm2以上の電流を取り出すことが困難であり、
100−200℃の高温での使用に限られるという課題
を有していた。
【0008】本発明はこのような課題を解決するもの
で、ジスルフィド系化合物を電池の電極として用いるこ
とにより、高エネルギー密度という特徴を損なわず、か
つ室温でも大電流での充放電が可能で、可逆性に優れた
充放電特性を有する可逆性電極を提供することを目的と
するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】この課題を解決するため
に本発明は、発明者らはジスルフィド化合物と,その酸
化還元反応を促進する含窒素共役系有機化合物を用い、
有機溶媒中や室温でも大電流充での放電が可能で可逆性
に優れた電極を作成するようにした。
【0010】また、導電作用を有する含窒素共役系有機
化合物として,ポリアニリンなどの導電性高分子が最適
であることを見いだした。そのため、本発明の電極は、
スルフィド結合を有する化合物と導電性高分子を主たる
構成成分として可逆性電極を構成するようにしたもので
ある。
【0011】
【作用】ジスルフィド系化合物と複合化した導電性高分
子は、ジスルフィド系化合物の電解酸化・還元に際して
電極触媒として作用する。ジスルフィド化合物の酸化反
応と還元反応の電位差を0.1Vあるいはそれ以下に小さく
すると、電極反応が促進され、室温でも大電流での電解
(充放電)が可能となる。 ジスルフィド結合を有する
化合物を導電性高分子と混合することにより、電極反応
にジスルフィド結合の酸化還元を利用する複合電極を構
成することが可能となり、電子移動過程における反応の
活性化エネルギーを低減する電極触媒として作用する。
つまり、ジスルフィド系化合物単独ではせいぜい数十μ
A/cm2であった電極反応の電流値を、スルフィド化合物
のジスルフィド基と導電性高分子の相互作用により、こ
れを数mA/cm2あるいはそれ以上に増大させ、室温で大電
流での電解(充放電)ができることとなる。
【0012】
【実施例】以下に本発明の一実施例の可逆性電極を図面
を参照しながら説明する。本実施例に用いる化合物とし
ては、ヨーロッパ特許第415856号明細書に述べられてい
る、一般式X−S−R−S−(S−R−S)n−S−R
−S−X’で表される化合物が用いられる。式中のnは
0あるいは1以上の整数,X,X’は金属Mまたは金属
Mを含む合金、水素または末端有機基、Rはジチオール
の硫黄原子Sを1個以上結合する炭素原子を含む2官能
性の環式有機基をあらわす。例えば、C22S(SH)
2で表される2,5−ジメルカプト−1,3,4−チア
ジアゾールや、C3333で表されるS−トリアジン
−2,4,6−トリチオールなどが用いられ、さらにこ
れらの化合物を、導電性高分子を形成するモノマー化合
物に混合する。本実施例に用いる導電性高分子の代表例
としては、アニリン、o−ジアミノベンゼン,o−ジア
ミノナフタレンなどの重合物が用いられる。これらの導
電性高分子は、Ag/AgCl電極に対して0〜±1.
0 Vで可逆性の高い酸化還元反応を起こすことができ
る。また、多孔性のフィブリル構造を形成することがで
き、その細孔中にジスルフィド化合物を保持できるもの
が望ましい。ジスルフィド化合物が還元され塩を形成す
るときの金属イオンには、上記のヨーロッパ特許に述べ
られているアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオ
ン,二価の遷移金属イオンに加えて、プロトンを用いる
こともできる。アルカリ金属イオンとしてリチウムイオ
ンを用いる場合は、リチウムイオンを供給および捕捉す
る電極として、金属リチウムあるいはリチウムーアルミ
ニウムなどのリチウム合金を用い、リチウムイオンを伝
導する電解質を用いると、電圧が3〜4ボルトの電池が
構成できる。
【0013】また、金属イオンとしてプロトンを用い、
プロトンを供給および捕捉する電極として LiNi5
どの金属水素化物を用い、プロトンを伝導する電解質を
用いると電圧が1から2ボルトの電池を構成することも
できる。
【0014】ジスルフィド化合物と導電性高分子との複
合化は、混合、含浸、共析、重ね塗りなど公知の方法に
より行うことができる。たとえば、ステンレススチール
基体上に導電性高分子のフィブリル層を電解重合により
形成したのち、ジスルフィド系化合物の塩をフィブリル
層内に含浸することにより複合電極を得ることができ
る。また、ジスルフィド化合物粒子を導電性高分子を溶
解した溶媒中に分散したのち溶媒を除くことにより、ジ
スルフィド化合物粒子の表面に導電性高分子の層を形成
して複合化してもよい。さらに、化学重合あるいは電解
重合で得た導電性高分子粉末とジスルフィド化合物粉末
とを混合することにより複合化することもできる。ジス
ルフィド化合物と組み合わせる導電性高分子によって
は,酸の存在下でのみ導電性を発現するもの、たとえば
ポリフェニレンジアミンなどがある。この場合、電極に
酸(塩酸,硫酸,酢酸など)を存在させることにより電
極の触媒作用を促進させることができる。
【0015】以下に具体的実施例について説明する。 (実施例1)1M (M=mol/dm3)のアニリンおよび5MのN
2SO4 を溶解した pH=1.0の硫酸酸性水溶液中
で、飽和カロメル参照電極に対し 1.2〜1.5 vで定電位
電解することにより、厚さ約20μmのフィブリル構造
を有するポリアニリン膜を黒鉛電極上に形成した。 こ
のようにして得たポリアニリン薄膜を備えた黒鉛電極を
80℃で一昼夜真空乾燥後、2,5−ジメルカプト−
1,3,4−チアジアゾールを5mM 、LiClO4を1
M 溶解したアセトニトリル中でAg/AgCl参照電極
に対し +0.8 vで定電位電解し複合電極を調製し
た。この電極を、室温で、LiClO4を1M溶解したア
セトニトリル中でAg/AgCl参照電極に対し−0.
7〜+0.2 v の間で電位を 50 mV/sec の速度で直
線的に増減させ電解したところ、図1に示す曲線(a)
の電流電圧特性を得た。また、比較例として、ポリアニ
リン薄膜を有しない黒鉛電極を用いて同様に電解したと
ころ、図1に示す曲線(b)の電流電圧特性を得た。さ
らに、ポリアニリン薄膜のみを有する黒鉛電極について
も同様な電解を行い図1に示す曲線(c)の電流電圧特
性を得た。曲線(a)は、ポリアニリンのみを有する黒
鉛電極の電流電圧曲線(c)と、2,5−ジメルカプト
−1,3,4−チアジアゾールの酸化還元に対応する電
流ピークとが重なった電流電圧特性を与えている。2,
5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールの酸化
還元に対応する電流ピークのうち、とくに還元反応に対
応する電流ピーク位置が−0.6 vから−0.2v付近
まで移動し、ポリアニリンの存在で2,5−ジメルカプ
ト−1,3,4−チアジアゾールの酸化還元が促進され
ていることがわかる。これに対し、ポリアニリン薄膜を
有しない黒鉛電極で得られた曲線(b)では、2,5−
ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールの酸化還元
に対応する電流ピークが得られるが、酸化ピークと還元
ピークとの電位差が 0.6 v近くに達し、酸化還元は
準可逆で反応の速度は遅い。この電極を電池の正極に用
いると、充電と放電の電圧差が 0.6v以上に大きくな
るとともに、大電流での充放電では効率低下の大きい電
池となる。
【0016】(実施例2)アニリンを酸性水溶液中でホ
ウフッ化第二銅を酸化剤として化学重合法により平均粒
径が 0.3 ミクロンのフィブリル構造をもった多孔性の
ポリアニリン粉末を合成した。このポリアニリン粉末1
重量部、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジア
ゾール粉末1重量部、カーボンブラック0.1重量部を
低密度ポリエチレン(エクセレンVL−200、密度=
0.9、住友化学工業製)を溶解したトルエン中で混合
したのち、200メッシュのステンレススチールネット
上に塗布、乾燥し、厚さ約100μmのシート状の複合
電極を作製した。 この複合電極を正極とし、LiCl
4を1M溶解したプロピレンカーボネートを含有する厚
さ約70μmの架橋ポリエチレンオキシド膜(第一工業
製薬製)、金属リチウムを負極とする大きさが28×2
8mmの固形の電池Aを構成した。この電池を、室温で、
3.6Vの一定電圧で17時間充電後、1μA,10μ
A,100μA,500μA,1mAの電流でそれぞれ
3秒間放電し、そのときの電池電圧を記録することによ
り電流電圧特性を評価した。結果を図2の曲線(a)で
示す。
【0017】また、比較例として、同様の方法で、ポリ
アニリン粉末を含まない厚さ約100μmのシート状電
極を用いた電池Bを作製した。この電池の電流電圧特性
を図2の曲線(b)で示す。電池Aは電池Bに較べると
分極が小さく、大きな電流が得られる。
【0018】なお、本実施例では複合電極を用いた電池
についてのみ説明したが、電池の他に、本実施例の複合
電極を対極に用いることにより、発色・退色速度の速い
エレクトロクロミック素子や応答速度の速いグルコース
センサーなどの生物化学センサーを得ることもできる。
また、書き込み・読み出し速度の速い電気化学的アナロ
グメモリーを構成することもできる。
【0019】
【発明の効果】上記の実施例の説明からも明らかなよう
に本発明のジスルフィド系化合物と導電性高分子とを複
合化した電極によれば、従来のジスルフィド系化合物の
みでは困難であった大電流での電解が可能となる。そし
て、この複合電極を正極に用い、金属リチウムを負極に
用いることにより大電流での充放電が可能な高エネルギ
ー密度二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の複合電極および比較例の電極の電流ー
電圧特性を示す図
【図2】本発明の複合電極を正極に用いた電池および比
較例の電極を正極に用いた電池の電流ー電圧特性を示す
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 竹山 健一 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電 器産業株式会社内 (56)参考文献 特開 平3−93169(JP,A) 米国特許4833048(US,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01M 4/60 H01M 4/02 - 4/04

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】電解酸化状態で、X−S−R−S−S−R
    −S−X‘(ただし式中のX,X’は、金属Mまたは金
    属Mを含む合金、水素、または有機末端基。Rはジチオ
    ールの硫黄原子Sを1個以上結合している炭素原子を含
    む環式有機基。)の構造を有する有機硫黄化合物および
    導電性高分子を含有する可逆性電極。
  2. 【請求項2】電解酸化状態で、X−S−R−S−(S−
    R−S)n−S−R−S−X‘(ただし式中のnは1以
    上の整数。X, X’およびRは請求項1記載のものと
    同じ。)の骨格を有する有機硫黄化合物のポリマーおよ
    び導電性高分子を含有する可逆性電極。
  3. 【請求項3】有機硫黄化合物は、電解還元状態では炭素
    原子がS−S結合を切断し、両端が‐S−R−S−M基
    により終了する短い鎖を生成し、前記炭素原子が少なく
    とも一個の窒素原子と化学的に結合し、S−C=N‐⇔
    S=C−N−型の共役結合を形成して負電荷を非局在化
    し、硫黄原子を可逆的に電気化学的に還元する請求項1
    または2記載の可逆性電極。
  4. 【請求項4】R基が複素環式基であって、前記複素環式
    基に結合したそれぞれの硫黄原子が複素環式基の少なく
    とも一個の窒素原子と共役結合を形成する請求項1また
    は2記載の可逆性電極。
  5. 【請求項5】有機硫黄化合物を 一部または全部電解酸化
    したとき、両端がSRSM基により終了する請求項1ま
    たは2記載の可逆性電極。
  6. 【請求項6】 導電性高分子は窒素原子を含み、前記窒素
    原子が炭素原子と共役する構造のモノマーから形成され
    るポリマーである請求項1または2記載の可逆性電極。
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