JP3105486B2 - 転がり軸受用保持器 - Google Patents
転がり軸受用保持器Info
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Description
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は転がり軸受用保持
器に関し、特にガスタービンなどの高速回転シャフトを
支承可能な高温高速回転に対応する転がり軸受用保持器
に関する。
器に関し、特にガスタービンなどの高速回転シャフトを
支承可能な高温高速回転に対応する転がり軸受用保持器
に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、ガスタービンのシャフトを支承
するための高温で高速回転可能な転がり軸受には、以下
のような機能(1) 〜(3) が要求される。
するための高温で高速回転可能な転がり軸受には、以下
のような機能(1) 〜(3) が要求される。
【0003】(1) 軽量性:シャフトが高速で回転すると
環状の転がり軸受用保持器に遠心力が働きフープ応力が
発生するが、この応力は材料の比重に比例する。そのた
め、保持器を軽量化してフープ応力をできるだけ小さく
する必要がある。
環状の転がり軸受用保持器に遠心力が働きフープ応力が
発生するが、この応力は材料の比重に比例する。そのた
め、保持器を軽量化してフープ応力をできるだけ小さく
する必要がある。
【0004】(2) 優れた摩擦摩耗特性:内・外軌道輪や
転動体と転がり接触する際に200℃以上の高温で、し
かも希薄な潤滑条件でも良好な摩擦摩耗特性を示す特性
が必要である。
転動体と転がり接触する際に200℃以上の高温で、し
かも希薄な潤滑条件でも良好な摩擦摩耗特性を示す特性
が必要である。
【0005】(3) 高強度性:前記(1) のフープ応力に耐
える疲労強度を200℃以上の高温状態で維持する強度
が必要である。
える疲労強度を200℃以上の高温状態で維持する強度
が必要である。
【0006】上記したような要求を満たすべく、従来の
高温・高速回転対応の転がり軸受用保持器は、SAE4
340などの鉄系材料で製作し、その表面には銀メッキ
を施して自己潤滑性をもたせたものが使用されていた。
高温・高速回転対応の転がり軸受用保持器は、SAE4
340などの鉄系材料で製作し、その表面には銀メッキ
を施して自己潤滑性をもたせたものが使用されていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかし、鉄系の基材か
らなる保持器は、前記(1) のような軽量性の必要特性を
満足しないものであり、高速で回転するとフープ応力が
働いて耐久性が低下するという問題点がある。
らなる保持器は、前記(1) のような軽量性の必要特性を
満足しないものであり、高速で回転するとフープ応力が
働いて耐久性が低下するという問題点がある。
【0008】上記所要の軽量化のために、保持器をチタ
ン系材料で形成し、さらに表面を窒化処理して耐蝕性を
もたせたものが特開平6−200948号公報に開示さ
れ、さらに炭化ケイ素(SiC)分散アルミニウム基複
合材料が、特開平9−170625号公報に開示されて
いるが、前者は高温・高速の使用条件での摩擦係数が高
くなり、また摩耗量が多いという問題のあるものであっ
た。また、後者の転がり軸受は、高温の使用条件で強度
が極端に低下し、また精密な加工が容易でないという問
題点を有するものであった。
ン系材料で形成し、さらに表面を窒化処理して耐蝕性を
もたせたものが特開平6−200948号公報に開示さ
れ、さらに炭化ケイ素(SiC)分散アルミニウム基複
合材料が、特開平9−170625号公報に開示されて
いるが、前者は高温・高速の使用条件での摩擦係数が高
くなり、また摩耗量が多いという問題のあるものであっ
た。また、後者の転がり軸受は、高温の使用条件で強度
が極端に低下し、また精密な加工が容易でないという問
題点を有するものであった。
【0009】因みに、保持器基材の比重は、材料に固有
の物性(値)であるから、従来の保持器に用いられた鉄
系材を使用し、さらに大幅な設計変更をしても軽量化の
要求に充分に応えることはできない。
の物性(値)であるから、従来の保持器に用いられた鉄
系材を使用し、さらに大幅な設計変更をしても軽量化の
要求に充分に応えることはできない。
【0010】そこで、この発明の課題は上記した問題点
を解決し、鉄系基材に比べて軽量であって、しかも20
0℃以上の高温における希薄な潤滑条件でも良好な摩擦
摩耗特性があり、さらに高速回転した際のフープ応力に
耐える疲労強度を有する転がり軸受用保持器とし、特に
高温・高速回転軸を支承可能な転がり軸受用保持器を提
供することである。
を解決し、鉄系基材に比べて軽量であって、しかも20
0℃以上の高温における希薄な潤滑条件でも良好な摩擦
摩耗特性があり、さらに高速回転した際のフープ応力に
耐える疲労強度を有する転がり軸受用保持器とし、特に
高温・高速回転軸を支承可能な転がり軸受用保持器を提
供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するた
め、この発明においては、転がり軸受の一対の軌動輪間
で転動体を回転自在に保持する転がり軸受用保持器にお
いて、この保持器の基材をチタン−アルミニウム金属間
化合物またはチタン合金で形成し、基材の表面にニッケ
ル−クロム合金の溶射皮膜を形成した転がり軸受用保持
器としたのである。
め、この発明においては、転がり軸受の一対の軌動輪間
で転動体を回転自在に保持する転がり軸受用保持器にお
いて、この保持器の基材をチタン−アルミニウム金属間
化合物またはチタン合金で形成し、基材の表面にニッケ
ル−クロム合金の溶射皮膜を形成した転がり軸受用保持
器としたのである。
【0012】また、上記転がり軸受用保持器において、
ニッケル−クロム合金の溶射皮膜の膜厚が0.05〜
0.15mmとする構成を採用したのである。
ニッケル−クロム合金の溶射皮膜の膜厚が0.05〜
0.15mmとする構成を採用したのである。
【0013】また、前記転がり軸受が、200℃以上の
軸受温度にてdn値=2.5×106(dは軸受内径(m
m)、nは軌道輪の回転速度(rpm))以上の回転条
件で使用される高温高速回転用転がり軸受としたのであ
る。
軸受温度にてdn値=2.5×106(dは軸受内径(m
m)、nは軌道輪の回転速度(rpm))以上の回転条
件で使用される高温高速回転用転がり軸受としたのであ
る。
【0014】上記したように構成される転がり軸受用保
持器は、保持器の基材をチタン−アルミニウム金属間化
合物またはチタン合金で形成したことにより、鉄系基材
に比べて軽量なものになる。
持器は、保持器の基材をチタン−アルミニウム金属間化
合物またはチタン合金で形成したことにより、鉄系基材
に比べて軽量なものになる。
【0015】このようなチタン系材料の摩擦摩耗特性
は、高温で希薄な潤滑条件では不充分であるが、上記チ
タン系材料からなる保持器基材の表面に、ニッケル−ク
ロム合金の溶射皮膜を形成することにより、前記軽量性
を維持したまま高温・高速摺動状態でも優れた摩擦摩耗
特性のある転がり軸受用保持器になる。
は、高温で希薄な潤滑条件では不充分であるが、上記チ
タン系材料からなる保持器基材の表面に、ニッケル−ク
ロム合金の溶射皮膜を形成することにより、前記軽量性
を維持したまま高温・高速摺動状態でも優れた摩擦摩耗
特性のある転がり軸受用保持器になる。
【0016】特に、ニッケル−クロム合金の溶射皮膜の
膜厚を0.05〜0.15mmに調整すると、熱衝撃に
より良く耐える保持器になり、溶射皮膜が基材に良く密
着して剥がれ難く、特に耐久性に優れた転がり軸受用保
持器になる。
膜厚を0.05〜0.15mmに調整すると、熱衝撃に
より良く耐える保持器になり、溶射皮膜が基材に良く密
着して剥がれ難く、特に耐久性に優れた転がり軸受用保
持器になる。
【0017】
【発明の実施の形態】この発明に用いるチタン−アルミ
ニウム(TiAl)金属間化合物は、チタン元素(T
i)とアルミニウム元素(Al)が簡単な整数比で結合
し、成分の各金属元素より好ましい物性を示すものであ
る。TiAl金属間化合物の組成比の具体例としては、
Ti:Al=2:1、Ti:Al=1:1、Ti:Al
=1:3などが挙げられる。TiAl金属間化合物は、
このような組成比の混合物を融解、冷却することによっ
て得られる。TiAl金属間化合物の物性としては、軽
量耐熱性、高温引張比強度及びクリープ比強度に優れる
ことである。
ニウム(TiAl)金属間化合物は、チタン元素(T
i)とアルミニウム元素(Al)が簡単な整数比で結合
し、成分の各金属元素より好ましい物性を示すものであ
る。TiAl金属間化合物の組成比の具体例としては、
Ti:Al=2:1、Ti:Al=1:1、Ti:Al
=1:3などが挙げられる。TiAl金属間化合物は、
このような組成比の混合物を融解、冷却することによっ
て得られる。TiAl金属間化合物の物性としては、軽
量耐熱性、高温引張比強度及びクリープ比強度に優れる
ことである。
【0018】この発明に用いるチタン合金は、チタン
(Ti)を主成分とする合金であり、例えばチタンに添
加される合金元素としては、Al、Cr、Fe、Mn、
Mo、Vなどが挙げられ、Al以外の多くの合金元素は
遷移元素である。JISに規定されているチタン合金で
あって、この発明に使用できるものとしては、Ti−6
Al−4Vやそれに類した組成の合金が挙げられる。
(Ti)を主成分とする合金であり、例えばチタンに添
加される合金元素としては、Al、Cr、Fe、Mn、
Mo、Vなどが挙げられ、Al以外の多くの合金元素は
遷移元素である。JISに規定されているチタン合金で
あって、この発明に使用できるものとしては、Ti−6
Al−4Vやそれに類した組成の合金が挙げられる。
【0019】この発明における溶射皮膜を形成するニッ
ケル−クロム合金は、ニッケルを主要成分としてクロム
を10〜30重量%程度含有する合金であり、Crと共
にMoを含むものであってもよく、具体例としてはニッ
ケルを主要成分としてCrを14〜23.5重量%程度
含む市販品(商品名)であるインコネル、ハステロイな
どが挙げられる。
ケル−クロム合金は、ニッケルを主要成分としてクロム
を10〜30重量%程度含有する合金であり、Crと共
にMoを含むものであってもよく、具体例としてはニッ
ケルを主要成分としてCrを14〜23.5重量%程度
含む市販品(商品名)であるインコネル、ハステロイな
どが挙げられる。
【0020】溶射皮膜を形成する方法としては、金属線
を溶かして基材に吹きつける溶線式溶射法や粉末を用い
た粉末式溶射法があるが、いずれの方法であってもよ
い。実用的な方法としては、フレーム溶射法(ガス溶線
式、粉末式)、アーク溶射法、プラズマ溶射法が挙げら
れる。このうち、フレーム式およびアーク式は2000
〜3000℃の高温で材料を溶かして吹きつける方法で
ある。
を溶かして基材に吹きつける溶線式溶射法や粉末を用い
た粉末式溶射法があるが、いずれの方法であってもよ
い。実用的な方法としては、フレーム溶射法(ガス溶線
式、粉末式)、アーク溶射法、プラズマ溶射法が挙げら
れる。このうち、フレーム式およびアーク式は2000
〜3000℃の高温で材料を溶かして吹きつける方法で
ある。
【0021】また、プラズマ溶射法は、陽極と陰極の間
に直流大電流を低電圧で印加してアークを生じさせ、こ
の中にアルゴン、水素、窒素などのガスを導入し、これ
をプラズマ化する方法である。この非移行性プラズマ
は、30000Kにも達し、ここに溶射材料粉末を入
れ、溶かして吹きつける。また、103 〜104 Pa程
度の減圧下で溶射を行なう減圧プラズマを行えば、溶射
皮膜の気孔率、酸化率ともに少なくなり、密着度の高い
皮膜が形成できる。
に直流大電流を低電圧で印加してアークを生じさせ、こ
の中にアルゴン、水素、窒素などのガスを導入し、これ
をプラズマ化する方法である。この非移行性プラズマ
は、30000Kにも達し、ここに溶射材料粉末を入
れ、溶かして吹きつける。また、103 〜104 Pa程
度の減圧下で溶射を行なう減圧プラズマを行えば、溶射
皮膜の気孔率、酸化率ともに少なくなり、密着度の高い
皮膜が形成できる。
【0022】
【実施例】〔実施例1、2〕図5に示すように、内輪1
0と外輪11の間で転動体(ころ)12を回転自在に保
持する円筒ころ軸受8に装着される保持器9を、チタン
−アルミニウム金属間化合物(実施例1)またはチタン
合金(実施例2)で形成し、保持器9を形成する基材の
表面にそれぞれニッケル−クロム合金(クロム含有量1
7重量%)の溶射皮膜を形成した。
0と外輪11の間で転動体(ころ)12を回転自在に保
持する円筒ころ軸受8に装着される保持器9を、チタン
−アルミニウム金属間化合物(実施例1)またはチタン
合金(実施例2)で形成し、保持器9を形成する基材の
表面にそれぞれニッケル−クロム合金(クロム含有量1
7重量%)の溶射皮膜を形成した。
【0023】使用したチタン−アルミニウム金属間化合
物は、TiAlの組成比がTi:Al=2:1のもので
あり、チタン合金は、Ti−6Al−4.0Sn−3.
5Zr−2.8Mo−0.7Nb−0.35Siの組成
である。また、実施例1および2については、同様にし
てリング状試験片(外径50mm、内径8mm、厚さ5
mm、面粗度0.6μmRa)を形成した。
物は、TiAlの組成比がTi:Al=2:1のもので
あり、チタン合金は、Ti−6Al−4.0Sn−3.
5Zr−2.8Mo−0.7Nb−0.35Siの組成
である。また、実施例1および2については、同様にし
てリング状試験片(外径50mm、内径8mm、厚さ5
mm、面粗度0.6μmRa)を形成した。
【0024】〔比較例1〜6〕リング状試験片(外径5
0mm、内径8mm、厚さ5mm、面粗度0.6μmR
a)を鉄系材料のSAE4340の表面にAgメッキを
形成したもの(比較例1)、同形試験片をSiC分散A
l基複合材料で形成したもの(比較例2)、同形試験片
をチタン−アルミニウム金属間化合物で形成し表面無処
理のもの(比較例3)、同形試験片をチタン−アルミニ
ウム金属間化合物で形成し表面窒化処理したもの(比較
例4)、同形試験片をチタン合金で形成し表面無処理の
もの(比較例5)、同形試験片をチタン合金で形成し表
面窒化処理したもの(比較例6)を形成した。
0mm、内径8mm、厚さ5mm、面粗度0.6μmR
a)を鉄系材料のSAE4340の表面にAgメッキを
形成したもの(比較例1)、同形試験片をSiC分散A
l基複合材料で形成したもの(比較例2)、同形試験片
をチタン−アルミニウム金属間化合物で形成し表面無処
理のもの(比較例3)、同形試験片をチタン−アルミニ
ウム金属間化合物で形成し表面窒化処理したもの(比較
例4)、同形試験片をチタン合金で形成し表面無処理の
もの(比較例5)、同形試験片をチタン合金で形成し表
面窒化処理したもの(比較例6)を形成した。
【0025】以上の実施例、比較例および適宜に示す参
考例について、以下の(1)〜(3)に示す試験を行な
い、その評価を図またはグラフ(図表)に示した。
考例について、以下の(1)〜(3)に示す試験を行な
い、その評価を図またはグラフ(図表)に示した。
【0026】(1)高温・高速摩擦摩耗試験 高温・高速摩擦摩耗試験を図1に概略を示した試験機を
用い、表1に示す条件で実施例1、2および比較例1〜
6のリング状試験片の摩擦係数および摩耗痕幅を測定
し、その結果を図2のグラフに示した。
用い、表1に示す条件で実施例1、2および比較例1〜
6のリング状試験片の摩擦係数および摩耗痕幅を測定
し、その結果を図2のグラフに示した。
【0027】図1に示した試験機は、直動静圧軸受1、
2で水平方向および垂直方向に移動自在に支持された基
台3に固定試片4を取り付け、水平な回転軸に取り付け
た回転試片5を回転数19000rpmで駆動しなが
ら、押し付け荷重Fでもって固定試片4に押し付け、か
つロードセル6で負荷(摩擦力)を測定するものであ
る。このとき潤滑ユニット7から200℃の潤滑オイル
(エクソン ターボオイル2380)を0.2リットル
/分の割合でジェット給油した。
2で水平方向および垂直方向に移動自在に支持された基
台3に固定試片4を取り付け、水平な回転軸に取り付け
た回転試片5を回転数19000rpmで駆動しなが
ら、押し付け荷重Fでもって固定試片4に押し付け、か
つロードセル6で負荷(摩擦力)を測定するものであ
る。このとき潤滑ユニット7から200℃の潤滑オイル
(エクソン ターボオイル2380)を0.2リットル
/分の割合でジェット給油した。
【0028】
【表1】
【0029】図2の結果からも明らかなように、Ti合
金やTiAl金属間化合物の無処理品(比較例3、5)
は、早期に焼付きを生じていることがわかる。摩擦摩耗
特性を向上させる方法の一つとして窒化処理(比較例
4、6)したものは、高温・高速摺動条件では、摺動特
性はあまり向上しなかった。
金やTiAl金属間化合物の無処理品(比較例3、5)
は、早期に焼付きを生じていることがわかる。摩擦摩耗
特性を向上させる方法の一つとして窒化処理(比較例
4、6)したものは、高温・高速摺動条件では、摺動特
性はあまり向上しなかった。
【0030】上記した比較例に対し、実施例1、2の摩
擦係数は低く、摩耗痕幅も0.5mm以下と小さく、高
温条件での摩擦摩耗特性に優れたものであった。
擦係数は低く、摩耗痕幅も0.5mm以下と小さく、高
温条件での摩擦摩耗特性に優れたものであった。
【0031】(2)強度試験 引張試験 実施例または比較例の保持器の素材となるTi合金、T
iAl金属間化合物、SiC分散Al基複合材料の温度
条件20℃、100℃、150℃、200℃または25
0℃における引張強度(MPa)の測定結果を図3
(a)に示し、この引張強度を比重で除した比強度の結
果を図3(b)に示した。図3(a)、(b)の結果か
らも明らかなように、SiC分散Al基複合材料は、高
温で引張強度が著しく低下したのに対して、Ti合金や
TiAl金属間化合物は高温でも引張強度が低下しない
ことがわかる。また、引張強度を比重で除した比強度
は、Ti系材料の方がSiC分散Al基複合材よりも高
かった。
iAl金属間化合物、SiC分散Al基複合材料の温度
条件20℃、100℃、150℃、200℃または25
0℃における引張強度(MPa)の測定結果を図3
(a)に示し、この引張強度を比重で除した比強度の結
果を図3(b)に示した。図3(a)、(b)の結果か
らも明らかなように、SiC分散Al基複合材料は、高
温で引張強度が著しく低下したのに対して、Ti合金や
TiAl金属間化合物は高温でも引張強度が低下しない
ことがわかる。また、引張強度を比重で除した比強度
は、Ti系材料の方がSiC分散Al基複合材よりも高
かった。
【0032】疲労試験 実施例または比較例の保持器の素材となるTi合金、T
iAl金属間化合物、SiC分散Al基複合材料の両振
り疲労試験による負荷回数(回)と応力(MPa)の関
係を示すS−N曲線を図4(a)に示し、このときの応
力を比重で除した値(×106 mm)を図4(b)に示
した。
iAl金属間化合物、SiC分散Al基複合材料の両振
り疲労試験による負荷回数(回)と応力(MPa)の関
係を示すS−N曲線を図4(a)に示し、このときの応
力を比重で除した値(×106 mm)を図4(b)に示
した。
【0033】図4(a)、(b)の結果からも明らかな
ように、Ti合金やTiAl金属間化合物の疲労強度
は、SiC分散Al基複合材料よりも大きく、また応力
を比重で除した値についても同様にTi系材料の方がS
iC分散Al基複合材よりも高かった。
ように、Ti合金やTiAl金属間化合物の疲労強度
は、SiC分散Al基複合材料よりも大きく、また応力
を比重で除した値についても同様にTi系材料の方がS
iC分散Al基複合材よりも高かった。
【0034】これらのことから、Ti系材料を基材とし
て転がり軸受用保持器を形成すれば、保持器を軽量化し
て高速回転時のフープ応力を小さくできる点で他材料を
使用した保持器より優位であることがわかる。
て転がり軸受用保持器を形成すれば、保持器を軽量化し
て高速回転時のフープ応力を小さくできる点で他材料を
使用した保持器より優位であることがわかる。
【0035】被膜の密着強度試験 TiAl金属間化合物を基材とする保持器の表面にNi
−Cr合金の溶射膜を形成し、その際に平均膜厚がそれ
ぞれ0.05mm、0.10mmまたは0.15mmと
なるようにした。これらの試験片を300℃、400℃
または500℃に加熱し、次に常温の水中に浸漬し急冷
する操作を連続して10回繰り返す熱衝撃試験を行なっ
た。この試験後の溶射膜の剥離の有無を観察し、その結
果を表2に示した。
−Cr合金の溶射膜を形成し、その際に平均膜厚がそれ
ぞれ0.05mm、0.10mmまたは0.15mmと
なるようにした。これらの試験片を300℃、400℃
または500℃に加熱し、次に常温の水中に浸漬し急冷
する操作を連続して10回繰り返す熱衝撃試験を行なっ
た。この試験後の溶射膜の剥離の有無を観察し、その結
果を表2に示した。
【0036】
【表2】
【0037】表2の結果からも明らかなように、TiA
l金属間化合物を基材としNi−Cr合金の溶射膜を平
均膜厚がそれぞれ0.05mm、0.10mmまたは
0.15mmとなるように形成した実施例の保持器は、
全ての溶射膜について熱衝撃による剥離が発生せず、被
膜の密着強度が充分であるといえる。
l金属間化合物を基材としNi−Cr合金の溶射膜を平
均膜厚がそれぞれ0.05mm、0.10mmまたは
0.15mmとなるように形成した実施例の保持器は、
全ての溶射膜について熱衝撃による剥離が発生せず、被
膜の密着強度が充分であるといえる。
【0038】(3)軸受運転試験 図5に示すように、円筒ころ軸受8に装着される保持器
9を、TiAl金属間化合物で形成し、基材の表面にそ
れぞれNi−Cr合金の溶射皮膜を形成した(実施例
1)。また、保持器9を鉄系材料のSAE4340の表
面にAgメッキを形成したもの(比較例1)で形成し
た。
9を、TiAl金属間化合物で形成し、基材の表面にそ
れぞれNi−Cr合金の溶射皮膜を形成した(実施例
1)。また、保持器9を鉄系材料のSAE4340の表
面にAgメッキを形成したもの(比較例1)で形成し
た。
【0039】これらの保持器9を図5の試験軸受の内輪
10と外輪11の間で転動体(ころ)12を回転自在に
保持するように装着し、内輪10に形成した油路13か
らアンダーレース給油(8リットル/分)およびジェッ
ト給油(2リットル/分)を行なって軸受運転試験を行
なった。
10と外輪11の間で転動体(ころ)12を回転自在に
保持するように装着し、内輪10に形成した油路13か
らアンダーレース給油(8リットル/分)およびジェッ
ト給油(2リットル/分)を行なって軸受運転試験を行
なった。
【0040】試験条件は、給油温度を100±10℃と
し、dn値=1.2×106 〜3×106 (mm・rp
m)の回転条件まで8段階で増速し、d・n値=3×1
06にて3時間保持する試験条件とした。この試験で
は、給油温度に対する外輪の温度上昇とラジアル方向の
振動値(G)を各段階の安定状態で測定し、これらの結
果を図6に示した。
し、dn値=1.2×106 〜3×106 (mm・rp
m)の回転条件まで8段階で増速し、d・n値=3×1
06にて3時間保持する試験条件とした。この試験で
は、給油温度に対する外輪の温度上昇とラジアル方向の
振動値(G)を各段階の安定状態で測定し、これらの結
果を図6に示した。
【0041】図6の結果からも明らかなように、実施例
1の保持器は、SAE4340の表面にAgメッキを形
成した比較例1の保持器と同等以上のdn値で運転でき
るものであり、また前述の試験(1)および(2)の結
果から、実施例1の保持器は、摩擦摩耗特性や被膜の密
着強度、引張強度および疲労強度にも優れたものであ
り、特に高温・高速回転軸を支承可能な転がり軸受用保
持器であった。
1の保持器は、SAE4340の表面にAgメッキを形
成した比較例1の保持器と同等以上のdn値で運転でき
るものであり、また前述の試験(1)および(2)の結
果から、実施例1の保持器は、摩擦摩耗特性や被膜の密
着強度、引張強度および疲労強度にも優れたものであ
り、特に高温・高速回転軸を支承可能な転がり軸受用保
持器であった。
【0042】
【発明の効果】この発明は、以上説明したように、所定
のチタン系材料からなる保持器基材の表面に、ニッケル
−クロム合金の溶射皮膜を形成することにより、チタン
系材料の軽量性を維持したまま高温・高速摺動状態でも
優れた摩擦摩耗性のある転がり軸受用保持器になるとい
う利点がある。
のチタン系材料からなる保持器基材の表面に、ニッケル
−クロム合金の溶射皮膜を形成することにより、チタン
系材料の軽量性を維持したまま高温・高速摺動状態でも
優れた摩擦摩耗性のある転がり軸受用保持器になるとい
う利点がある。
【0043】また、ニッケル−クロム合金の溶射皮膜の
膜厚を0.05〜0.15mmとした転がり軸受用保持
器は、溶射皮膜が基材に良く密着して剥がれ難く、特に
熱衝撃に良く耐えて耐久性に優れた転がり軸受用保持器
であるという利点がある。
膜厚を0.05〜0.15mmとした転がり軸受用保持
器は、溶射皮膜が基材に良く密着して剥がれ難く、特に
熱衝撃に良く耐えて耐久性に優れた転がり軸受用保持器
であるという利点がある。
【図1】高温高速摩擦摩耗試験機の概略正面図
【図2】実施例および比較例の高温・高速摩擦摩耗試験
の結果を示す図表
の結果を示す図表
【図3】(a)引張り試験の結果を示し、引張強度と温
度の関係を示す図表 (b)引張り試験の結果を示し、引張強度/比重と温度
の関係を示す図表
度の関係を示す図表 (b)引張り試験の結果を示し、引張強度/比重と温度
の関係を示す図表
【図4】(a)疲労試験の結果を示し、応力と負荷回数
の関係を示す図表 (b)疲労試験の結果を示し、応力/比重と負荷回数の
関係を示す図表
の関係を示す図表 (b)疲労試験の結果を示し、応力/比重と負荷回数の
関係を示す図表
【図5】軸受運転試験に用いた円筒ころ軸受の要部断面
図
図
【図6】(a)軸受運転試験の結果を示し、外輪温度上
昇とdn値の関係を示す図表 (b)軸受運転試験の結果を示し、振動値とdn値の関
係を示す図表
昇とdn値の関係を示す図表 (b)軸受運転試験の結果を示し、振動値とdn値の関
係を示す図表
1、2 直動静圧軸受 3 基台 4 固定試片 5 回転試片 6 ロードセル 7 潤滑ユニット 8 円筒ころ軸受 9 保持器 10 内輪 11 外輪 12 ころ 13 油路
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) F16C 33/56
Claims (3)
- 【請求項1】 一対の軌道輪間で転動体を回転自在に保
持する転がり軸受用保持器において、この保持器の基材
をチタン−アルミニウム金属間化合物またはチタン合金
で形成し、保持器の表面にニッケル−クロム合金の溶射
皮膜を形成してなる転がり軸受用保持器。 - 【請求項2】 ニッケル−クロム合金の溶射皮膜の膜厚
が0.05〜0.15mmである請求項1記載の転がり
軸受用保持器。 - 【請求項3】 転がり軸受が、200℃以上の軸受温度
にてdn値=2.5×106 (dは軸受内径(mm)、
nは軌道輪の回転速度(rpm))以上の回転条件で使
用される高温高速回転用転がり軸受である請求項1また
は2に記載の転がり軸受用保持器。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP10050582A JP3105486B2 (ja) | 1998-03-03 | 1998-03-03 | 転がり軸受用保持器 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP10050582A JP3105486B2 (ja) | 1998-03-03 | 1998-03-03 | 転がり軸受用保持器 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH11247861A JPH11247861A (ja) | 1999-09-14 |
JP3105486B2 true JP3105486B2 (ja) | 2000-10-30 |
Family
ID=12862984
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP10050582A Expired - Fee Related JP3105486B2 (ja) | 1998-03-03 | 1998-03-03 | 転がり軸受用保持器 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3105486B2 (ja) |
Families Citing this family (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2002129969A (ja) * | 2000-10-25 | 2002-05-09 | Nsk Ltd | ターボチャージャ用回転支持装置 |
JP2002147247A (ja) * | 2000-11-16 | 2002-05-22 | Nsk Ltd | ターボチャージャ用回転支持装置 |
DE102006023690A1 (de) | 2006-05-19 | 2007-11-22 | Schaeffler Kg | Verfahren zur Herstellung eines Wälzlagerbauteils sowie Wälzlagerbauteil |
DE102006023567A1 (de) | 2006-05-19 | 2007-11-22 | Schaeffler Kg | Wälzlagerbauteil und Verfahren zur Herstellung eines solchen |
CN104235188B (zh) * | 2014-10-14 | 2016-08-24 | 中航工业哈尔滨轴承有限公司 | 轴承酚醛树脂胶布保持架与铝片粘接的方法 |
-
1998
- 1998-03-03 JP JP10050582A patent/JP3105486B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH11247861A (ja) | 1999-09-14 |
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Legal Events
Date | Code | Title | Description |
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LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |