JP3103193B2 - 回転機械の診断装置 - Google Patents

回転機械の診断装置

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JP3103193B2 JP04095612A JP9561292A JP3103193B2 JP 3103193 B2 JP3103193 B2 JP 3103193B2 JP 04095612 A JP04095612 A JP 04095612A JP 9561292 A JP9561292 A JP 9561292A JP 3103193 B2 JP3103193 B2 JP 3103193B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、回転機械における
異常現象を診断する診断装置に係り、特に回転機械にお
ける広範な異常・障害・故障の現象を高精度で早期に検
出し、回転機械の損傷を最小限に留めて回転機械の保全
と信頼性の向上に寄与し得るようにした回転機械の診断
装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来から、例えば揚水発電機やタービン
発電機等の回転機械の診断装置としては、一般に回転体
の振動値等の現象値を計測し、これをあらかじめ設定さ
れたその現象値の判定値(しきい値)と比較した上で、
当該現象値がその判定値を超えた場合に、故障や障害等
の異常が回転機械に発生したと判定するものがほとんど
である。
【0003】この種の回転機械の異常診断装置の一つと
して、例えば“特公平3−10036号公報”にある
「水車ランナー障害検出装置」が挙げられる。すなわ
ち、この検出装置は、水車ランナーにおける亀裂、破損
等の異常の発生は、回転体としてのバランスの崩れをき
たし、主軸、上カバー等の主要部の振動を増大させるこ
とから、これらの振動振幅(オーバーオール値)を計測
し、これがあらかじめ設けられた振動振幅の判定値を超
過すれば、機器に前記の異常が発生したものと判定する
もので、操作者に対して警報を発すると共に、原因分析
等の必要な対策がとられる。これにより、水車ランナー
における損傷を早期に検出できれば、その進行によって
引き起こされる恐れのある主軸や上カバーの破損等の重
大な事故を未然に防止することが可能であり、機械の保
全、信頼性の上で多大の貢献がなされる。
【0004】上述したように、従来による回転機械の異
常診断装置においては、故障や障害等の異常によって発
生する特徴的な現象を、測定される現象量とあらかじめ
設定されたその限界値との比較から検出するものであ
る。従って、このような異常診断装置を実現するために
は、回転機械における異常の特定と、これに起因して現
象値に現われる特徴が定性的かつ定量的に明確に把握さ
れていなければならない。さらに、異常の発生を判断す
る基準として、現象値における判定値をあらかじめ評価
し、装置に設定しておく必要がある。
【0005】しかしながら、このように計測された現象
値とその限界値との比較から、回転機械の異常を検出す
る方法においては、回転機械の異常診断装置を実現する
にあたり、異常判定値の評価と設定に関して重大な障害
が存在している。
【0006】すなわち、回転機械においては、現象値は
一般に運転条件によって大きく変化されるため、運転条
件に対して判定条件を設定する必要がある。一例とし
て、回転数に対する回転軸の振動振幅の関係を挙げる
と、低速域では振幅は小さいが、回転数が上昇するにつ
れて振幅は増大し、回転数と固有振動数が一致する危険
速度近傍で最大となり、危険速度を超えると振幅は減少
していく。このため、従来では、現象量を運転条件の関
数として取り扱っている。
【0007】ところが、回転機械の状態判定は、現象量
から評価されることから、個々の運転条件について判定
値を設定する必要がある。図13は、従来による揚水発
電機の異常監視装置における振動判定値を示す。この装
置では、発電機主軸の振動振幅に対して判定値を、発電
時には同図(a)に示すように発電機出力(MW)の関
数として、また揚水運転時には同図(b)に示すように
静揚程(m)の関数として、それぞれ設定している。
【0008】なお、この例では、出力と静揚程のみの関
数としているが、実際には冷却水温度や有効電力等の他
の運転条件との組み合わせとなるのが一般的であり、判
定条件の設定はより複雑になる。特に、起動・停止回数
の多い水力発電機では、運転条件は頻繁に変化すること
から、水力機器における判定値の設定は、諸条件の組み
合わせにより極めて複雑である上に、可変速運転化によ
ってこの傾向がより一層進んできている。
【0009】このように、従来では、監視を行なう個々
の現象値について、運転条件の関数として判定値を設定
しなければならないため、計算機を利用した診断装置で
は、判定値の設定に限界があり、広範な異常現象の検出
には適していない。
【0010】また、判定値の定量化においては、現象値
の変動量を考慮する必要がある。すなわち、回転機械に
おいては、その運転状態に伴って、振動等の現象量が機
械の正常/異常にかかわりなくある程度の幅を持って変
動することが多い。特に、大型の機械では、保有するエ
ネルギーが巨大であるために、この傾向が顕著に見られ
る。
【0011】上述の揚水発電機の例では、幅振動の判定
値を適当なパラメータの関数の形式で確定値として与え
ているが、振動の変動量を考慮せずに低く判定値を設定
すると、正常であるにもかかわらず異常の判定を下すこ
とがあり、逆に、変動量を過多に考慮して判定値を高く
設定すれば、異常の検出が遅れるおそれが出てくる。し
かしながら、変動量については、運転条件以外に未確定
な要因が存在するため、厳密な定量化は困難と考えら
れ、それぞれの現象量に対して、経験的に適当な幅を判
定値に持たせて対処せざるを得ないのが現状で、診断装
置としての信頼性の上で問題がある。
【0012】さらに、従来では、過去に発生した異常現
象に基づいて、あらかじめ異常判定値を設定しておかね
ばならない。すなわち、例えば小型の回転機械における
ころがり軸受の診断装置の開発では、傷や異物混入等の
人為的に機器に障害を与えた上で計測を行ない、振動波
形等に現われる特徴的事象の抽出と、その事象における
異常限界値の評価を実験的に行なう手法がとられてい
る。
【0013】しかしながら、高い信頼性が要求され、し
たがって診断装置の需要の高い、水車発電機やタービン
発電機等の大型回転機械では、異常の発生は極めて希で
あって、その上データ収集のために実験的に故障を与え
ることも不可能である。このため、検出し得る故障・障
害は極めて限定されたものとなっている。しかも、従来
においては、特徴的事象に対して、測定値と判定値との
比較により機器の異常現象を検出する構成であることか
ら、想定された異常現象以外については検出できないこ
とになる。従って、想定された故障・障害以外に対して
は、その早期発見という診断装置の目的に反して、これ
を看過してしまう恐れがある。
【0014】例えば、タービン発電機の診断装置では、
軸振動の回転数Nの1倍および2倍の振動数成分(以
下、1N成分、2N成分と呼ぶ)を現象値とするものが
ある。ロータにおけるクラックの発生は、軸剛性の異方
性から発生する2N成分の増大により検出できるものと
されている。ところが、ねじり疲労に起因して発生する
クラックでは、1Nおよび2N成分の増大よりも、これ
らの成分に随伴するねじり振動数の1/2の幅を有する
側帯波成分の出現の方が顕著である。従って、ねじり疲
労性クラックを検出するためには、側帯波成分の出現を
特徴的現象として別個特徴量として考慮する必要がある
(例えば、“特願昭60−294540号”)。
【0015】このように、従来では、原因と特徴的現象
とが共に明確に把握されている異常の発見に対しては有
効な手段であるが、回転機械の広範な異常・故障・障害
の早期発見という面では、その異常検出原理から不適当
である。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】以上のように、従来に
おいては、回転機械の異常診断装置を実現するに当たっ
て、判定値の設定に関して重大な障害が存在しているこ
とから、回転機械における異常・障害・故障の現象を広
範に精度よく検出することができないという問題があっ
た。
【0017】本発明の目的は、回転機械における広範な
異常・障害・故障の現象を高精度で早期に検出し、回転
機械の損傷を最小限に留めて回転機械の保全と信頼性の
向上に寄与することが可能な極めて信頼性の高い回転機
械の診断装置を提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めに、本発明による回転機械の診断装置は、回転機械の
運転を決定する回転数、出力等の運転条件を検出する運
転条件検出手段と、回転機械の運転によって発生する回
転軸の振動、静止部の振動、軸受の温度等の現象量を検
出する現象量検出手段と、運転条件検出手段により検出
された複数の運転条件と現象量検出手段により検出され
た複数の現象量とを入力とし、回転機械の運転状態に関
する正常または異常の判定を行なう演算手段とを備えて
構成し、演算手段は、複数の運転条件と複数の現象量と
を統合して回転機械の運転状態を総合的に示す指標であ
る多次元ベクトルとして表わされた総合的状態量によっ
て形成される多次元空間上に、回転機械の正常な状態が
許容される正常領域を設定し、運転条件検出手段により
検出された複数の運転条件と現象量検出手段により検出
された複数の現象量とを統合した総合的状態量が、正常
領域の内部にある場合には回転機械の運転状態における
健全性を判定し、また正常領域の外部にある場合には回
転機械の運転状態における異常を判定するようにしてい
る。
【0019】ここで、特に上記演算手段としては、例え
ば請求項2に記載したように、特定の異常状態あるいは
特定の異常現象に対する警戒的状態が存在し得る領域を
総合的状態量によって形成される多次元空間上にそれぞ
れ設定し、検出された総合状態量が異常あるいは警戒領
域の内部にあることによって回転機械の運転状態におけ
る異常あるいは異常の兆候をそれぞれ判定するようにし
ている。
【0020】また、上記演算手段としては、例えば請求
項3に記載したように、回転機械の日常的運転から正常
状態における総合的状態量を継続的に観測し、総合的状
態量によって形成される多次元空間上において、観察さ
れた総合的状態量で定義される点の周囲に正常な状態が
許容される有限あるいは半無限の領域を設定し、領域の
和集合として正常領域を逐次的に形成するようにしてい
る。
【0021】さらに、例えば請求項4に記載したよう
に、上記回転機械の日常的運転により総合的状態量空間
上に正常領域を設定する過程において、設定された正常
領域による判定を審査して判定に誤りがある場合に、設
定された正常領域を縮小する修正手段を備えている。さ
らにまた、例えば請求項5に記載したように、上記正常
領域設定過程に対して、ニューラルネットワーク情報処
理技術に代表される学習情報処理技術を援用するように
している。
【0022】
【作用】従って、本発明の回転機械の診断装置において
は、回転機械の複数の運転条件および複数の現象量を統
合して、総合的状態量と呼ばれる1つのベクトル量とし
て評価し、回転機械の運転状態に関する判定において統
一的に処理することにより、従来では定量化できなかっ
た機器に固有な特性や状態量の変動を考慮しつつ、広範
で高精度な回転機械の診断を行なうことができる。
【0023】
【実施例】まず、本発明の考え方について説明する。
【0024】本発明は、複数の運転条件と複数の現象量
とを統合した総合的状態量によって定義される状態空間
上において、機器の状態判定値の存在許容領域を設定す
ることにより、前述した従来における問題点を解決しよ
うとするものである。
【0025】すなわち、機器の運転を決定するm個の運
転条件X1,X2,…,Xmと、機器の状態の特徴値として観
察されるn個の現象量Xm+1,Xm+2,…,Xm+nとを統合し
て、m+n個の成分から構成される総合的状態量X=
(X1,X2,…,Xm,Xm+1,Xm+2,…,Xm+n)を導入す
る。この総合的状態量Xは、m+n次元の状態量空間に
おいて、座標(X1,X2,…,Xm,Xm+1,Xm+2,…,Xm+
n)を有する点として表わされる。
【0026】この総合的状態量Xに対して、機器の状態
に関する属性Aを与えた上で、上記の状態量空間上にお
いて、総合的状態量Xの周囲に総合的状態量Xに対する
属性Aの存在が許容される有限あるいは半無限な空間領
域Cを設定する。この時、領域Cの内側にある点は属性
Aを有すると言える。すなわち、領域Cにある総合的状
態量に対しては属性Aを有するものと判定することがで
きる。
【0027】機器の日常的運用を通じて、複数の運転条
件と複数の現象量とを同時に計測することにより、総合
的状態量Xi;i=1,2 …を収集することができる。こ
の総合的状態量Xiに対して、属性Aiを与えると共
に、状態量空間上において、総合的状態量Xiの周囲に
属性Aiの存在許容領域Ciを設定する。
【0028】ここで、属性Aiには、「健全」、「注
意」、「異常」、「危険」等の、機器における状態判定
値Dj(j=1,2,…,p;pは判定値の総数)が与えら
れるものとする。そして、一定期間にわたってこのよう
な領域設定作業を継続的に反復することにより、機器に
おける状態判定値Djの存在領域Ejを、上記Diの判
定が与えられた領域{Ci|Ai=Dj}の和集合とし
て逐次的に形成する。
【0029】機器の日常的運用の下に行なわれる領域設
定作業の継続的反復過程を経て、判定値Djの存在領域
Ejが状態量空間上に決定されれば、領域Ejの内部に
ある総合的状態量Xに対して、機器の状態量はDjであ
ると判定される。すなわち、観察された総合的状態量X
が領域Ejの内部にあれば、機器の運転状態はDjであ
ると判定される。また、観察された総合的状態量Xが領
域Ejの外部にあれば、機器の運転状態はDjではない
と判定することができる。
【0030】以下、上記のような考え方に基づく本発明
の一実施例について、図面を参照して詳細に説明する。
【0031】図1は、本実施例による回転機械の診断装
置の構成例を示すブロック図である。すなわち、本実施
例の回転機械の診断装置は、図1に示すように、運転条
件検出手段31と、現象量検出手段32と、2個のアナ
ログ/デジタル(A/D)変換手段33,34と、演算
手段35とから構成している。
【0032】ここで、運転条件検出手段31は、回転機
械の運転を決定する回転数、出力等の運転条件を検出す
るものである。
【0033】また、現象量検出手段32は、回転機械の
運転の結果として生じる軸振動等の現象量を検出するも
のである。
【0034】一方、アナログ/デジタル変換手段33
は、運転条件検出手段31により検出された複数の運転
条件をアナログ/デジタル変換するものである。
【0035】また、アナログ/デジタル変換手段34
は、現象量検出手段32により検出された複数の現象量
をアナログ/デジタル変換するものである。
【0036】さらに、演算手段35は、アナログ/デジ
タル変換手段33,34からのデジタル化された複数の
運転条件および複数の現象量を入力とし、回転機械の運
転状態に関する正常・異常の判定を行なうものである。
【0037】すなわち、この演算手段35は、複数の運
転条件および複数の現象量を統合した多次元ベクトルと
して表わされる総合的状態量が形成する多次元空間上
に、回転機械の正常状態が許容し得る領域を設定し、ア
ナログ/デジタル変換手段33,34からの運転条件お
よび現象量を統合した総合的状態量が、設定された正常
領域の内部にあることによって回転機械の運転状態にお
ける健全性を判定すると共に、総合的状態量が設定され
た正常領域の外部にあることによって回転機械の運転状
態における異常を判定する。
【0038】次に、以上のように構成した本実施例の回
転機械の診断装置の作用について、回転機械として揚水
発電機に適用した場合を例として、図2ないし図4を用
いて説明する。
【0039】まず、揚水発電機では、ランナーの亀裂、
欠損等の回転部における障害、ガイドベーン等の静止部
流水面における障害、あるいはオイル・ホワール等の軸
受に起因する障害や故障が、通常とは異なる振動現象を
上カバーや主軸に生じさせることは、揚水発電機の構造
・構成から容易に推測される。従って、異常検出のため
に監視を行なう機器の現象量として、上カバーおよび主
軸の振動を、加速度センサー、非接触式変位センサー等
を当該部位に設置して計測する。また、運転条件とし
て、回転速度、発電電動機出力、有効あるいは無効電
力、調相電流、静揚程、軸受潤滑油温度を監視する。
【0040】すなわち、図1において、まず、現象量検
出手段32では、揚水発電機の運転の結果として生じる
軸振動等の現象量が検出される。
【0041】図2は、現象量検出手段32による現象量
の検出の一例を示す概要図である。図2において、1は
ランナー、2はドラフトチューブ、3はスパイラル・ケ
ーシング、4はガイドベーン、5は上カバー、6は主
軸、7はカップリング、8は発電機ロータ、9aは発電
機上部ガイド軸受、9bは発電機下部ガイド軸受、9c
はスラスト軸受、9dは水車ガイド軸受、10は加速度
センサー、11は非接触式変位センサー、12は光学式
回転パルス検出器をそれぞれ示している。
【0042】すなわち、上カバー5面上には加速度セン
サー10を設け、上カバー5の振動加速度を計測する。
また、発電機上部ガイド軸受9a、発電機下部ガイド軸
受9b、水車ガイド軸受9dのそれぞれ近傍に、主軸6
に対して軸直角2方向について非接触式変位センサー1
1a,11b,11dを静止側に設け、主軸各部の振動
変位を計測する。さらに、主軸6には、回転数の検出と
主軸振動の位相検出のために、反射テープによるキーフ
ェーザーを設け、光学式回転パルス検出器12を用いて
回転パルスを検出する。なお、回転数は正負符号を付け
て発電あるいは揚水方向を区別する。これにより、運転
方向の情報も回転数の情報に含めて取り扱うことができ
るので、状態量の数を減らすことができる。
【0043】一方、運転条件検出手段31では、揚水発
電機の運転を決定する回転数、出力等の運転条件が検出
される。
【0044】この運転条件については、発電機および水
車の運転制御盤より得られる。すなわち、発電電動機の
出力、有効電力、調相電流等、運転条件に関する電気的
情報は、発電電動機の運転制御盤より電気信号として検
出する。また、静揚程も同様に、水車の運転制御盤より
検出される。さらに、発電機上部ガイド軸受9a、発電
機下部ガイド軸受9b、スラスト軸受9c、水車ガイド
軸受9dにそれぞれ設けられた熱電対により、各軸受の
潤滑油温度が測定される。
【0045】次に、以上のようにして収集された揚水発
電機器の運転条件および現象量は、アナログ/デジタル
変換手段33および34でA/D変換された後に演算手
段35に入力される。これにより、演算手段35では、
例えば図3に示すような演算処理アルゴリズムに従っ
て、揚水発電機の運転状態に関する正常・異常の判定が
行なわれる。
【0046】すなわち、まず、アナログ/デジタル変換
手段33および34からの各データは、あらかじめ設定
された基準量を用いてそれぞれ正規化が施される。例え
ば、回転数については定格回転数で除算され、アルゴリ
ズム上無次元化して取り扱われる。運転条件と現象量
は、統合して総合的状態量として取り扱われる。
【0047】この場合、運転条件は、回転数、発電電動
機の出力、有効電力、調相電流、および4軸受の潤滑油
温度の8つのデータからなる。また、現象量は、3カ所
2方向ずつの軸振動と、上カバーの振動の7つからな
る。ただし、軸振動は、1Nおよび2N振動数成分
(N:回転数)についてそれぞれ振幅と位相を、上カバ
ー振動は振動変化の顕著な3NZr振動数成分(Zr:
ランナー羽枚数)を考慮するので、現象量のデータの総
数は13個となる。従って、総合的状態量は、8個の運
転条件データと、13個の現象量データとを統合して、
合計21個の成分からなるベクトルとして取り扱われ
る。
【0048】このように総合的状態量は、21次元のベ
クトル空間を形成するので、計測された総合的状態量
は、この空間上の1点として把握される。そして、観察
された総合的状態量に対して、この時の運転状態に関す
る属性、すなわち「健全」あるいは「異常」等、機器の
運転状態に関する判定値を与えることができる。その上
で、ベクトル空間において、上記測定点の周囲の一定領
域に対して、その属性の存在許容領域が設定される。領
域範囲の指定は、測定点から一定の許容距離内の空間を
とるのが最も簡単である。そして、計測された総合的状
態量が、健全性が許容される領域(健全領域)の内部に
あれば、機器の運転状態は健全と判定される。従って、
健全領域の外部にあれば、機器の運転状態が正常ではな
いと判定され、警報を発すると共に、原因分析等の必要
な措置が講じられる。
【0049】このため、機器の状態判定には、正常領域
を設定しておく必要がある。本実施例では、正常な運転
状態における総合的状態量の存在許容領域が、試験運転
期間等を利用して、一定期間の日常的な運転を通じて設
定される。通常、日常的運転では、健全状態における総
合的状態量が収集されるので、ベクトル空間上には順次
健全領域が形成されていくことになる。
【0050】図4は、この健全領域の形成過程を説明す
るために、総合的状態量の次元数を2次元に簡単化して
示したものである。すなわち、2次元空間では、健全領
域は、斜線を付した測定点を中心とする許容半径Rの円
周の内部になる。この許容半径Rは、初期段階では小さ
く設定しておき、後述の修正過程において拡大すること
により、診断装置としての信頼性が高められる。日常的
運転において、健全状態が許容される領域を継続的に設
定していくと、次第に健全領域が状態量空間上に形成さ
れる。
【0051】図3において、「判定」と「判定値」に対
応した措置との間に破線で囲んだ一連の処理が、上述の
健全領域設定過程に対応している。すなわち、「判定」
では、入力された総合的状態量が、設定された健全領域
あるいは異常領域にあるかどうかが判定される。その結
果、状態量がいずれかの設定領域内にあれば、作業は次
の「審査」へ移る。
【0052】また、状態量が設定領域の外にあれば、診
断装置の操作者は自身の判断において上記状態量を基に
運転状況について評価を行ない、その状態量に対して運
転状況に関する属性を与える。続いて、その状態量の周
囲に、上記属性の許容される領域が設定され、作業が再
度「判定」へ戻る。
【0053】次に、「領域判別」に続く「審査」では、
「判定」の結果について、上記状態量に基づいて診断装
置の操作者が自身の判断で審査を行なう。そして、「判
定」の結果が正しいと判断されれば、「判定値」に基づ
く作業に移行し、また「判定」の結果が誤りと判断され
れば、許容領域を縮小した上で「判定」へ戻る。
【0054】以上の健全領域設定の過程は、一定期間を
経て健全領域の設定が完了するまで組み込まれるが、領
域設定が完了すれば、診断アルゴリズムから解除され
る。そして、この時点で本装置は、診断装置として機能
し始める。
【0055】また、この健全領域設定の過程は、総合的
状態量に基づいて機器の健全性に関する装置に対する学
習過程とみなすことができる。そして、ニューラルネッ
トワーク情報処理技術を援用することは、健全領域をよ
り効率的かつ高精度に設定することを可能とするもので
ある。
【0056】以上述べたように、従来の診断装置では、
異常の発生によって現われる特徴的な現象量の変化を、
現象量とあらかじめ設定された異常判定値との比較から
検出して異常の判定を行なうため、設定された異常現象
以外については、検出が遅れたり全く発見できないおそ
れがある。これに対して、本実施例の診断装置は、揚水
発電機器の総合的状態量から、その運転状態の健全性を
検証するものである。すなわち、本実施例の診断装置で
は、機器における健全性の確認が行なわれるため、その
反対現象として健全領域からの逸脱が検知されれば、機
器に異常が発生したものと判定することができる。従っ
て、健全とは異なる現象が発生すれば、それを直ちに発
見することができる。
【0057】また、従来の診断装置では、運転条件の変
化やその他の未定条件に依存する現象量の変動に対応し
て異常判定値に条件や裕度を持たす必要があるため、容
量的な限界や検知感度の低下等の欠点が見られた。これ
に対して、本実施例の診断装置では、健全性許容領域の
設定によって、このような従来の問題点を克服すること
ができる。
【0058】さらに、従来の診断装置では、異常判定値
の設定自体に問題があった。これに対して、本実施例の
診断装置では、試験運転等を通じて、日常的な機器の健
全な運転状態から健全性を診断装置に学習させる過程を
設け、状態判定の基礎となる健全領域の形成を図ってい
る。従って、個々の機器に即した健全性の判定がなされ
るため、信頼性の高い診断を行なうこうが可能となる。
【0059】また、健全時の状態量だけで判定を行なう
ことから、従来では必須であった判定値の設定のための
異常データの収集を、必ずしも必要とはしない。そし
て、この特徴は、異常時におけるデータ収集が極めて困
難である、大型回転機械の診断装置に特に適している。
【0060】上述したように、本実施例の診断装置にお
いては、次のような種々の効果が得られるものである。
【0061】(a)機器の診断は、複数の運転条件と複
数の現象量とを統合した総合的状態量に基づいて、機器
の運転状態における健全性を検証するようにしている。
すなわち、本実施例による診断装置では、機器における
健全性を確認すると共に、その反対事象として総合的状
態量の健全領域からの逸脱を機器の異常と判定するよう
にしているので、健全とは異なる現象が発生すれば、直
ちにそれを発見することが可能となる。
【0062】(b)従来では、異常判定値の設定自体に
問題があったが、本実施例では、健全な運転状態から総
合的状態量の健全領域を診断装置に学習させる過程を設
けているので、かかる問題を解消することができる。従
って、個々の機器に即した健全性の判定がなされるた
め、極めて信頼性の高い診断を行なうことが可能とな
る。
【0063】(c)判定値の設定のために、従来のよう
に異常データの収集を必要としないので、異常時におけ
るデータ収集が極めて困難な大型回転機械の診断装置
に、特に適しているものである。
【0064】以上のように、本実施例の診断装置によれ
ば、特定の異常現象ばかりを対象とするのではなく、健
全性からの逸脱から異常現象を認識して回転機械におけ
る広範な異常・障害・故障現象の早期発見を行なうこと
が可能となる。これにより、揚水発電機器の損傷を最小
限にとどめて、その保全と信頼性に大きく寄与すること
ができるものである。
【0065】次に、本実施例の診断装置の効果につい
て、前述した従来の診断装置との比較において、さらに
より具体的に説明する。
【0066】本実施例の診断装置の効果として、複数の
運転条件と複数の現象量とを同時に監視して、機器の健
全性を診断できることがある。
【0067】すなわち、図1および図2に示す本実施例
による揚水発電機器の診断装置では、運転条件として、
回転数、発電電動機の出力、有効電力、調相電流、およ
び4軸受けの潤滑油温度の8つのデータ、現象量として
は、3ケ所2方向の軸振動と上カバー振動の7つのデー
タを計測しているが、これ以外にも、固定子鉄心の振
動、温度、出力の無効電力、力率、発電機内のオゾン濃
度、クーラー内の湿度、建屋内外の音響等、機器の異常
を検知するのに有効な測定項目があり、また存在してい
る。従って、広範囲の故障要因に対して、このような測
定項目を設定して監視していくことにより、極めて精度
の良い診断装置を実現することができることになる。
【0068】しかしながら、前述した従来の診断装置で
は、現象量を運転条件に従属した変数と認識しているこ
とから、それぞれの運転条件に対して全ての現象量に対
して異常の判定を行なうための判定値を、あらかじめ設
定しておく必要がある。このため、診断装置の能力とし
て監視できる想定項目には限界がある。
【0069】特に、複数の運転条件が存在する場合に
は、全ての運転条件に対して全ての現象量に、個々に判
定値を設定しなければならず、組み合わせから判定値の
設定だけでも膨大な労力が要求される。このため、発生
する確率の高い故障要因や、故障の発生による影響が甚
大な重要性の高い要因の検出について、必要な運転条件
と現象量を限定的に監視せざるを得ない。従って、検出
できる故障要因の範囲は限られており、必ずしも精度の
高い診断結果は得られないのが現状である。
【0070】従来の診断装置が、現象量を運転条件に従
属する変数とみなして判定値を設定しているのに対し
て、本実施例による診断装置は、複数の運転条件と複数
の現象量とを総合的な状態量として認識するようにして
いることから、多数の測定項目に対して監視を行なうこ
とが容易であり、広い範囲の故障要因の診断を行なうこ
とが可能となる。
【0071】また、従来の診断装置の判定値が、異常を
検出するための手段であるのに対して、本実施例による
診断装置では、判定の基準を健全領域に設定している。
すなわち、発電機器が健全である領域を状態量のベク卜
ル空間に設定し、計測値が領域の内部にあることによっ
て機械の健全性を判定する。健全領域は、前もって健全
領域にあると判定された既測定値から許容値以内にある
かによって判定されるのであって、健全領域の設定は極
めて容易である。また、運転条件が複数存在していて
も、現象量と全く同一の取り扱いがなされるので、組み
合わせによる煩雑さもない。このため、監視すべき運転
条件や現象量の拡大が容易で、広い範囲の故障要因を網
羅することができるので、検知漏れの少ない精度の高い
診断装置を実現することができる。
【0072】以下、具体的に上記の特徴について説明す
る。
【0073】図5は、従来の診断装置で使用する判定値
線図を、3ケ所の軸振動1N振動数成分の振動値、固定
子鉄心の半径方向振動値、および無効電力について、運
転条件である出力の関数として示している。
【0074】このように、従来の診断装置では、現象量
と判定値との比較から判定することから、対象とする全
ての現象量に対して、全運転領域で運転条件に従属した
変数として許容限界値である判定値をあらかじめ完全に
定義しておかなければ原理的に動作できない。
【0075】一般に、判定値は運転条件の関数であるか
ら、1つの現象量でも判定値を設定するには、計算機の
資源や人的、時間的労力を必要とする。特に、判定値を
算出するには、想定する故障要因の進展状況と現象量と
の関係が、運転状態の全ての状態において定量的に把握
されている必要があり、人為的な故障に対する実験や解
析等によって判定値を算出しなければならない。水車ラ
ンナーにおける欠損を検出するには、不つり合いよる水
車軸受けの振動における1N振動数成分の増大を検出す
れば良いが、このためには水車ランナーに重りを負荷し
た試験、あるいは応答解析を実施して、異常が検知でき
る振幅を数値として特定する必要がある。一定回転数で
あっても、水車軸受けの振動は出力によって変化するの
で、出力の関数として評価しなければならない。さら
に、振幅は変動するので、誤差範囲を考慮して最終的な
判定値が決定しなければならない。従って、検出する故
障要因の範囲を広げて監視する現象量を増やすと、個々
の現象量に対して判定値設定の作業が増加することとな
り、判定値の決定には膨大な作業量が発生する。
【0076】ここでは、説明の簡単のため、運転条件と
して出力、現象量として水車軸受け振動と固定子鉄心振
動を監視する診断装置について、従来の診断装置と本実
施例の診断装置との相違を説明する。
【0077】図6および図7は、従来の診断装置で使用
する判定値線図で、出力の全運転領域においてそれぞれ
の判定値をあらかじめ設定する。判定値が設定されれ
ば、出力W0 に対する水車軸受け振動、固定子振動の判
定値がそれぞれv0 、u0 と決定されて、測定値と判定
値との比較から発電機器の健全性が判定される。従来の
診断装置では、判定値の設定に煩雑さが伴なうことは前
述した通りであるが、比較判定は個々の現象量で独立で
行なわれるのが一般的であり、現象量同士で相互の関係
を考慮するためには、判定において和や積を取る等の操
作が別個に必要となる。
【0078】これに対して、本実施例による診断装置で
は、図8に示すように、運転条件である出力、現象量で
ある水車軸受け振動および固定子鉄心振動は、いずれも
独立した変数として空間上に定義される。すなわち、本
実施例の診断装置では、健全性判定のために発電機器が
健全と判定する領域(健全領域)を設定しておくが、測
定された状態量Pが健全と判定された既測定点Qから許
容値r以内の空間領域を健全領域とする。既測定点は、
通常の運転により出力変化がなされれば確定できるの
で、判定の基準となる健全領域の設定は容易である。ま
た、2つの現象量に相関があっても、設定された健全領
域に両者間の相関が含まれているので、特別な操作を加
えることなく相関も考慮される。
【0079】次に、運転条件が複数ある場合について、
従来の診断装置と本実施例の診断装置とを比較する。な
お、ここでは、運転条件として出力と回転数を、現象量
として水車軸受け振動を想定している。
【0080】図9は、従来の診断装置における判定値線
図である。この場合、運転条件は出力の他に回転数があ
るので、判定値は回転数Nをパラメータとして複数の線
図が出力の関数として表わされる。従って、判定値の設
定には、出力に加えて回転数についても条件を変化させ
て、発電機器の異常が認められる限界値を評価しなけれ
ばならず、判定値の決定は著しく煩雑となる。さらに、
観測された運転条件から判定値を決定する操作において
も、運転条件自体が複数あるので、判定値を直接求める
ことができない。
【0081】いま、運転条件が、出力W、回転数Nとし
て判定値を求めるには、図9において線図より、出力W
0 における各回転数Na 、Nb 、Nc の判定値va0、v
b0、vc0を求める。この求められた判定値から、出力W
0 における回転数と判定値との関係を図10に示す。図
10において、求められた判定値の各点を結んで線図が
得られ、出力W0 で回転数Nx における判定値vx0が決
定される。
【0082】このように、運転条件が複数になると、判
定値の計算にも補間が必要となつて操作が煩雑になり、
監視できる測定項目の数が限定されてしまう。
【0083】一方、本実施例の診断装置では、運転条件
と現象量との間には取り扱いに相違はないので、前述し
た事例と同様に、3つの状態量からなる空間に健全領域
を設定し、測定点がこの健全領域の内部にあることによ
って、発電機器の健全性を判定することができる。健全
領域の設定は、通常の運転により、出力変化、回転数変
化がなされれば容易に設定される。また、判定操作も同
様であり、測定された状態量Pが健全と判定された既測
定点Qから許容値r以内にあることから、健全と判定さ
れる。
【0084】このことから、本実施例の診断装置によれ
ば、運転条件の拡張も容易で、機械特性のみならず電気
特性等も運転条件として考慮することが可能となり、診
断精度の向上を図ることができる。
【0085】上述のように、本実施の形態による診断装
置では、複数の運転条件と複数の現象量とを統合した総
合的な状態量として扱うようにしているので、従来の診
断装置では困難であった監視項目の拡大が可能となるた
め、広範な故障要因に対して異常の検出を行なうことが
できる。従って、診断精度の高い異常診断装置を実現す
ることができる。
【0086】次に、本発明の他の実施例として、本発明
をタービン発電機の診断装置に適用する場合について説
明する。なお、診断のアルゴリズムは、基本的に前述し
た揚水発電機における実施例の場合と同一であるが、総
合的状態量に機種独特の状態量を選択することになる。
【0087】図12は、タービン発電機における現象量
の検出の一例を示す概要図である。図12において、1
3aは高圧タービン・ロータ、13bは低圧タービン・
ロータ、14は発電機ロータ、15はカップリング、1
6は軸受台、17は軸振動センサー、19は非接触式回
転パルス検出器、20は歯車、21は非接触式変位セン
サーをそれぞれ示している。
【0088】すなわち、軸受台16a〜16fにそれぞ
れ設けられた軸振動センサー17a〜17fによって、
タービン軸13a,13bおよび発電機軸14の軸直角
2方向の振動を計測し、図示しない振動分析器により周
波数領域のデータに変換した上で演算手段35に入力す
る。また、光学式回転パルス検出器19はタービン軸1
3aに設けられたキーフェーザーを検出して、位相信号
を演算装置に送る。この位相信号は、軸振動の位相基準
として用いられる他、回転数の検出にも利用される。さ
らに、発電機軸14の軸端には歯車20を設け、非接触
式変位センサー21によりパルス信号を検出する。この
パルス信号は、図示しないねじり振動分析器を介して演
算手段35に入力する。
【0089】また、運転条件は、タービン制御盤および
発電機制御盤より、演算手段35に入力する。すなわ
ち、タービン制御盤からは、回転速度、タービン蒸気の
圧力および温度、軸受温度を、また発電機制御盤から
は、出力、有効電力、軸受温度、ステータ温度をそれぞ
れ演算手段35に入力する。
【0090】一方、診断アルゴリズムは、前述した揚水
発電機の場合と同一であり、図3に示した手順に基づ
く。タービン発電機では、回転速度が揚水発電機に比べ
て高いことから、より詳細な振動分析が必要なため、振
動データは周波数領域に変換して、広い範囲にわたって
監視を行なう。周波数展開された振動データは、振動数
毎の振幅値を成分とするベクトル量である。このため、
総合的状態量のデータ数は非常に大きくなるが、対象周
波数域内の全ての成分について変化を検知することが可
能となる。例えば、ねじり疲労性のクラックの発生等
も、回転同期およびその2倍振動成分に随伴する側帯波
成分の成長から、早期に発見することが可能である。
【0091】すなわち、従来のクラック検出装置では、
回転数の2倍成分だけに着目しているため、曲げ疲労性
のクラックは発見できるが、ねじり疲労性クラックにつ
いては、発見が遅れるおそれがあった。これに対して、
本実施例による診断装置では、特定の異常現象を対象と
するのではなく、健全性からの逸脱として異常現象を把
握するようにしているので、タービン発電機における極
めて広範な異常・障害・故障の早期発見を行なうことが
可能となる。
【0092】尚、上記各実施例では、本発明を揚水発電
機、あるいはタービン発電機の診断装置に適用する場合
についてそれぞれ説明したが、これに限らずその他の回
転機械についても、本発明の診断装置を同様に適用し
て、前述と同様の効果を得ることができるものである。
【0093】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、回
転機械における広範な異常・障害・故障の現象を高精度
で早期に検出し、回転機械の損傷を最小限に留めて回転
機械の保全と信頼性の向上に寄与することが可能な極め
て信頼性の高い回転機械の診断装置が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による回転機械の診断装置の一実施例を
示すブロック図。
【図2】同実施例における現象量検出手段による揚水発
電機の現象量検出に関する概要を説明するための図。
【図3】同実施例における演算手段による診断手順を説
明するためのフロー図。
【図4】同実施例における健全領域決定過程に関する概
要を説明するための図。
【図5】同実施例の効果をより具体的に説明するための
図。
【図6】同実施例の効果をより具体的に説明するための
図。
【図7】同実施例の効果をより具体的に説明するための
図。
【図8】同実施例の効果をより具体的に説明するための
図。
【図9】同実施例の効果をより具体的に説明するための
図。
【図10】同実施例の効果をより具体的に説明するため
の図。
【図11】同実施例の効果をより具体的に説明するため
の図。
【図12】本発明の他の実施例における現象量検出手段
によるタービン発電機の現象量検出に関する概要を説明
するための図。
【図13】従来における異常判定値に関する概要を説明
するための図。
【符号の説明】
1…ランナー、2…ドラフトチューブ、3…スパイラル
・ケーシング、4…ガイドベーン、5…上カバー、6…
主軸、7…カップリング、8…発電機ロータ、9a…発
電機上部ガイド軸受、9b…発電機下部ガイド軸受、9
c…スラスト軸受、9d…水車ガイド軸受、10…加速
度センサー、11…非接触式変位センサー、12…光学
式回転パルス検出器、13a…高圧タービン・ロータ、
13b…低圧タービン・ロータ、14…発電機ロータ、
15…カップリング、16…軸受台、17…軸振動セン
サー、19…非接触式回転パルス検出器、20…歯車、
21…非接触式変位センサー、31…運転条件検出手
段、32…現象量検出手段、33,34…アナログ/デ
ジタル(A/D)変換手段、35…演算手段。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 天野 稔 東京都千代田区内幸町一丁目1番3号 東京電力株式会社内 (72)発明者 一文字 正幸 神奈川県横浜市鶴見区末広町2丁目4番 地 株式会社東芝京浜事業所内 (72)発明者 戸田 一典 東京都港区芝浦一丁目1番1号 株式会 社東芝本社事務所内 (72)発明者 渡邊 俊三 神奈川県横浜市鶴見区末広町2丁目4番 地 株式会社東芝京浜事業所内 (72)発明者 篠塚 正喜 東京都府中市東芝町1番地 株式会社東 芝府中工場内 (72)発明者 佐藤 晋作 神奈川県横浜市鶴見区末広町2丁目4番 地 株式会社東芝京浜事業所内 (72)発明者 安藤 雅敏 神奈川県横浜市鶴見区末広町2丁目4番 地 株式会社東芝京浜事業所内 (56)参考文献 特開 昭59−230491(JP,A)

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 回転機械の運転を決定する回転数、出力
    等の運転条件を検出する運転条件検出手段と、 前記回転機械の運転によって発生する回転軸の振動、静
    止部の振動、軸受の温度等の現象量を検出する現象量検
    出手段と、 前記運転条件検出手段により検出された複数の運転条件
    と前記現象量検出手段により検出された複数の現象量と
    を入力とし、前記回転機械の運転状態に関する正常また
    は異常の判定を行なう演算手段とを備えて構成し、 前記演算手段は、前記複数の運転条件と複数の現象量と
    を統合して前記回転機械の運転状態を総合的に示す指標
    である多次元ベクトルとして表わされた総合的状態量に
    よって形成される多次元空間上に、前記回転機械の正常
    な状態が許容される正常領域を設定し、 前記運転条件検出手段により検出された複数の運転条件
    と前記現象量検出手段により検出された複数の現象量と
    を統合した総合的状態量が、前記正常領域の内部にある
    場合には前記回転機械の運転状態における健全性を判定
    し、また前記正常領域の外部にある場合には前記回転機
    械の運転状態における異常を判定するようにしたことを
    特徴とする回転機械の診断装置。
  2. 【請求項2】 前記演算手段としては、特定の異常状態
    あるいは特定の異常現象に対する警戒的状態が存在し得
    る領域を総合的状態量によって形成される多次元空間上
    にそれぞれ設定し、前記検出された総合状態量が前記異
    常あるいは警戒領域の内部にあることによって回転機械
    の運転状態における異常あるいは異常の兆候をそれぞれ
    判定するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の
    回転機械の診断装置。
  3. 【請求項3】 前記演算手段としては、回転機械の日常
    的運転から正常状態における総合的状態量を継続的に観
    測し、総合的状態量によって形成される多次元空間上に
    おいて、前記観察された総合的状態量で定義される点の
    周囲に正常な状態が許容される有限あるいは半無限の領
    域を設定し、前記領域の和集合として正常領域を逐次的
    に形成するようにしたことを特徴とする請求項1に記載
    の回転機械の診断装置。
  4. 【請求項4】 前記回転機械の日常的運転により総合的
    状態量空間上に正常領域を設定する過程において、設定
    された正常領域による判定を審査して判定に誤りがある
    場合に、前記設定された正常領域を縮小する修正手段を
    備えたことを特徴とする請求項3に記載の回転機械の診
    断装置。
  5. 【請求項5】 前記正常領域設定過程に対して、ニュー
    ラルネットワーク情報処理技術に代表される学習情報処
    理技術を援用するようにしたことを特徴とする請求項3
    または請求項4に記載の回転機械の診断装置。
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