JP3102990B2 - カプセルの製造方法およびそれから得られたカプセル - Google Patents

カプセルの製造方法およびそれから得られたカプセル

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徹 大野
伸之 柴田
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は酸、水分または熱に弱い
内容物質を保護できるカプセルの製造法およびそれから
得られるカプセルに関する。
【0002】
【従来の技術】酸、水分または熱に弱いとされる腸内有
用細菌はそのままで体内に取り込んだ場合に、腸に達す
るまでにほとんどの菌が死滅してしまう。したがってこ
れを腸溶性のカプセルで保護することにより、その生存
率を上げることができる。
【0003】たとえばそのような腸内有用細菌のカプセ
ルが特開昭61−151127号公報に記載されてい
る。この公報の方法では、内容物である菌体を保護物質
としてのデンプンに担持させ、硬化油に分散したのち、
ゼラチンとペクチンからなる腸溶性皮膜で被覆し、その
後塩化カルシウム水溶液で浸漬処理して耐酸性を付与
し、腸溶性とすることが記載されている。この方法で得
られたカプセルは硬化油脂に分散された内容物質への水
分の浸透が硬化油脂により一時的に遮断されるが、皮膜
と硬化油脂中に含まれている残留水分の経時的な影響は
避けられない。また、耐酸性を付与するためにゼラチン
/ペクチン皮膜を塩化カルシウム水溶液に浸漬して腸溶
化しなければならず、この時に皮膜を通じて水分が内容
物質に移行しやすい。また、耐熱性も弱い。
【0004】一方、特開昭62−263128号公報で
は腸内有用細菌が常温で非流動性の疎水性物質を介して
カプセル皮膜から隔離されている構造が記載されてい
る。この構造においても、皮膜から内容物への水分の移
行は一時的に遮断されるが、皮膜と硬化油およびその他
の物質に含まれている残留水分の経時的な変化は避けら
れない。また耐熱性も弱い。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は酸、水分また
は熱に弱い内容物質を常温で非流動性である疎水性物質
に懸濁し、これをカプセル化した後常温通風乾燥し、つ
いでこの乾燥カプセルをさらに真空乾燥または真空凍結
乾燥させることを特徴とする酸、水分または熱に弱い内
容物質を包含するカプセルの製造方法を提供することを
目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は酸、水分または
熱に弱い内容物質を常温では非流動性である疎水性物質
に懸濁し、これをカプセル化した後、ついでこの乾燥カ
プセルをさらに真空乾燥または真空凍結乾燥させること
を特徴とする酸、水分または熱に弱い内容物質を包含す
るカプセルの製造方法を提供する。
【0007】本発明は酸、水分または熱に弱い内容物質
を常温で非流動性である疎水性物質に懸濁したものをゼ
ラチンを主体とする皮膜でカプセル化したカプセルであ
って、該カプセルがAw値0.20以下および熱伝導率
0.16Kcal/mh℃以下を有することを特徴とするカプ
セルを提供する。
【0008】本発明のカプセルに用いる内容物質は酸、
水分または熱などに弱い物質であればいかなるものであ
ってもよいが、好適には腸内有用細菌である。腸内有用
細菌の例としてはビフィズス菌、フェーカリス菌、アシ
ドフィルス菌等が挙げられる。
【0009】本発明においては、上記内容物質を一旦常
温では非流動性である疎水性物質に懸濁する必要があ
る。このように疎水性物質に懸濁する理由はカプセル製
造時に存在する多量の水などによって内容物質が影響を
受けないためである。この疎水性物質の例としては食用
硬化油脂、ショ糖脂肪酸エステル(SAIB)、グリセリ
ン脂肪酸エステル等が挙げられる。特に好ましい疎水性
物質としてはヤシ硬化油(WITOCAN−H、WIT
OCAN−42/44:ヒュールズ(Huels)社製)
が挙げられる。
【0010】この内容物質が疎水性物質に懸濁された状
態のものを腸溶性皮膜でカプセル化する必要がある。カ
プセル化の方法は特に限定的ではないが、もっとも好ま
しい方法としては一般に滴下法と呼ばれる二重ないし三
重ノズルを用いて凝固液中に滴下していく方法が挙げら
れる(例えば、特開昭49−59789号、51−81
76号および60−172343号公報)。また、カプ
セル内容物を上下の二つに分けたカプセル皮膜物質で成
形することにより得ることもできる。
【0011】本発明のカプセルの製造において、三重ノ
ズル滴下法を用いる場合には、内容物は一番内側のノズ
ルから吐出し、皮膜が一番外側のノズルから吐出する。
真ん中のノズルからは、前記従来技術で述べた特開昭6
0−172343号公報で用いた、硬化油脂を吐出する
のが好ましい。この場合には、得られたカプセルは三重
層の構造を有しており、その一番内側には、酸、水分ま
たは熱に弱い内容物質が含まれていることになる。この
場合、外側からの水分の侵入が非常に少なく、よりもっ
とも優れた実施態様であると考える。
【0012】腸溶性皮膜は主としてゼラチンとペクチン
とからなるのが一般的である。この皮膜物質内には種々
の物質を含むことができるが、水分活性を挙げるために
オリゴ糖やグリセリンをさらに配合してもよい。ゼラチ
ンとペクチンの配合重量比は70/30〜95/5、好
ましくは80/20〜90/10である。オリゴ糖を配
合する場合には、前記ゼラチンとペクチンの合計量に対
して2〜20重量部、好ましくは5〜10重量部であ
る。またグリセリンを配合する場合にはゼラチンとペク
チン100重量部に対し、5〜80重量部、好ましくは
40〜70重量部である。
【0013】上記のようにして得られたカプセルは常温
通風乾燥を施す。乾燥はたとえば5℃〜30℃の空気に
より乾燥させる方法が一般的である。乾燥時間は2〜1
2時間が好適である。
【0014】本発明でもっとも特徴的なことは、上記の
ように通常の乾燥を施したカプセルに対し、更に真空乾
燥または真空凍結乾燥を施すことである。真空度は0.
5〜0.02torrに保ち、真空凍結乾燥では−20℃以
下で凍結させ乾燥させる方法である。真空乾燥または真
空凍結乾燥に要する時間は特に限定的ではないが、一般
に5〜60時間、好ましくは24〜48時間である。5
時間以下であると、乾燥が不十分であり、カプセル内に
存在する水が内容物質に悪影響を与える。
【0015】本発明方法により得られたカプセルはその
カプセル内の水分が真空凍結乾燥により十分除去されて
おり、Aw値は0.20以下で熱伝導率0.16Kcal/mh
℃以下になっている。真空乾燥または真空凍結乾燥によ
りもちろん水分が低下するのと同時に、カプセルが十分
乾燥し、多孔質になるため、熱伝導率も単に通常乾燥で
得られたものよりも大きく低下することになる。また、
ゼラチンとペクチンの混合物の皮膜は塩化カルシウム水
溶液処理を行なわずとも、腸溶化皮膜となることを発見
した。このように腸溶化することにより、前記内容物質
は人体に取り込まれた際に、胃内の酸で侵されることな
く、腸まで有効に達することができる。
【0016】Aw値とは試料中に存在する水分の絶対量
ではなく、水分の存在状態によって決定される値、即ち
試料中における水の自由度を表したものであって、化学
反応や微生物の生育に直接関与することができる水分を
表す指標で、電気抵抗式水分活性測定法(Awメーター
WA−360、(株)芝浦電子製作所)で測定される。熱
伝導率はフィッチ(Fitch)法等で測定する。Aw
値は好ましくは0.20以下であり、、熱伝導率は好ま
しくは0.08〜0.02Kcal/mh℃である。カプセル
の大きさは特に限定的ではないが、通常直径φ0.3〜
φ8mm、好ましくは直径φ1〜φ3mmである。
【0017】
【作用および効果】上記手段によれば、カプセル全体の
水分活性値が低下するので経時的な内容物に対する水分
の影響を防止でき、かつ熱伝導率も低下するので断熱性
も高くなる。また、真空凍結乾燥ではカプセル内の水分
は昇華するため多孔質となり断熱性が増大される。更
に、ゼラチン/ペクチン皮膜の耐酸性付与においてはペ
クチンのグレード選定により、塩化カルシウム水溶液に
浸漬しなくてもゲル化して腸溶性となるので、皮膜から
内容物質への水分移行もなく、二次処理の手間も省け
る。
【0018】このカプセルは日本薬局方の崩壊試験法に
基づく腸溶性試験にも合格し、胃内では溶解せず、腸内
で溶解することが確認された。従って、経時的に酸、水
分及び熱に弱い嫌気性菌であるビフィズス菌群を上記の
様なカプセルにすることにより、腸内に大量のビフィズ
ス菌を到達させることができるとともに、長期間の保存
にも生菌数の低下を防ぐことができる。
【0019】
【実施例】本発明を実施例により更に詳細に説明する。
本発明はこれら実施例に限定されない。
【0020】(実施例1)ビフィドバクテリウム・ロンガ
ムの原菌を保護剤と混合して凍結乾燥した市販品菌末
(ビフィズス菌数6×1010個/g)を、融点34℃の硬
化油脂を融解した中にオリゴ糖と共に分散し、これを同
心三重ノズルの内側ノズルから、更にその外側の中間ノ
ズルから融点43℃の硬化油の融解液を、また最外側ノ
ズルから皮膜となるゼラチン/ペクチン溶液を冷却され
流動している油中に同時に滴下させることにより直径
2.5mmの三層構造のシームレスカプセルを試作した。
このカプセルを通常の通気乾燥後、更に真空乾燥または
真空凍結乾燥を行なうことによりカプセル中の水分活性
をAw値0.20以下および熱伝導率0.16Kcal/mh℃
以下にまで低下させた。
【0021】(比較例1)真空凍結乾燥以外は実施例と
同様に製造した。
【0022】
【保存試験】実施例と比較例で得られたカプセルを20
℃と37℃で保管し安定性を調べた。
【0023】その結果、保管日数とビフィズス菌の生菌
数との関係は下記の表1、表2に示した通りであった。
【0024】
【表1】
【0025】
【表2】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 堰 圭介 大阪府大阪市中央区玉造1丁目1番30号 森下仁丹株式会社内 (56)参考文献 特開 昭61−151127(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A61K 9/48,35/74 B01J 13/14

Claims (11)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 酸、水分または熱に弱い内容物質を常温
    で非流動性である疎水性物質に懸濁し、これをカプセル
    化した後常温通風乾燥し、ついでこの乾燥カプセルをさ
    らに真空乾燥または真空凍結乾燥させることを特徴とす
    る酸、水分または熱に弱い内容物質を包含するカプセル
    の製造方法。
  2. 【請求項2】 酸、水分または熱に弱い内容物質が腸内
    有用細菌である請求項1記載のカプセルの製造方法。
  3. 【請求項3】 腸内有用細菌がビフィズス菌である請求
    項2記載のカプセルの製造方法。
  4. 【請求項4】 カプセルの皮膜が腸溶性を有する請求項
    1記載のカプセルの製造方法。
  5. 【請求項5】 腸溶性皮膜がゼラチンとペクチンの混合
    物からなる請求項4記載のカプセルの製造方法。
  6. 【請求項6】 腸溶性皮膜がゼラチンとペクチンの混合
    物の他にさらに、オリゴ糖およびグリセリンを含有する
    請求項4記載のカプセルの製造方法。
  7. 【請求項7】 疎水性物質が低水分活性粉末を含有する
    請求項1記載のカプセルの製造方法。
  8. 【請求項8】 酸、水分または熱に弱い内容物質を常温
    で非流動性である疎水性物質に懸濁したものをゼラチン
    を主体とする皮膜でカプセル化したカプセルであって、
    該カプセルがAw値0.20以下および熱伝導率0.16
    Kcal/mh℃以下を有することを特徴とするカプセル。
  9. 【請求項9】 酸、水分または熱に弱い内容物質が腸内
    有用細菌である請求項8記載のカプセル。
  10. 【請求項10】 腸内有用細菌がビフィズス菌である請
    求項9記載のカプセル。
  11. 【請求項11】 請求項1記載の製造方法により得られ
    た酸、水分または熱に弱い内容物質を常温で非流動性で
    ある疎水性物質に懸濁したものをゼラチンを主体とする
    皮膜でカプセル化したカプセルであって、該カプセルが
    Aw値0.20以下および熱伝導率0.16Kcal/mh℃以
    下を有することを特徴とするカプセル。
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