JP3098886B2 - フランジを有する形材の自在圧延方法 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、Ｈ形鋼、Ｉ形鋼等のフ
ランジを有する形材の圧延方法に関し、特に形材のウェ
ブ高さを形状不良を生ずることなく効率的かつ自在に造
り分ける圧延方法に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】現在、圧延にて製造されているＨ形鋼、
Ｉ形鋼等の形材（以下、単に形材またはＨ形材という）
は、品種、サイズの数が非常に多いのが特徴であり、需
要家ニーズの多様化に伴い、さらに多品種、多サイズ化
の傾向が強まりつつある。従来圧延方法で、これらの多
品種、多サイズの形材を製造するためには、その形材に
対応した多数の専用圧延ロール及び専用ガイドが必要で
あり、またロール・ガイドの組替え回数も多くなるた
め、時間損失が増大し、生産性を著しく損なうことにな
る。

【０００３】この具体例としてＨ形材の場合を以下に述
べる。図９（ａ）は、従来のＨ形材圧延設備列の代表例
を示したものであるが、１台のブレークダウン圧延機１
（ＢＤ）、その後引続いて４ロールユニバーサル圧延機
（ＲＵ）とエッジャー圧延機（Ｅ）からなる単数または
複数のＲＵ−Ｅ群２、および仕上げ用４ロールユニバー
サル圧延機３（ＦＵ）で構成されている。

【０００４】図９（ｂ）は図９（ａ）における各圧延機
１，２，３で造形された圧延材料の各々の形状４，５，
６を示す。図１０はＨ形材を圧延するユニバーサル圧延
法の圧延用ロールと圧延される材料の関係を示してお
り、ユニバーサル圧延機の機能上、圧延中に同一セット
のロール対で自由に変化が可能となる寸法は、上水平ロ
ール７と下水平ロール８の間の隙間９および左右垂直ロ
ール１０，１１の間の隙間１２，１３のみとなる。した
がって、Ｈ形材のウェブ厚９とフランジ厚の１２，１３
については変化させることができるが、ウェブ内幅ＩＷ
は一定にならざるを得ない。その結果、左右のフランジ
厚１２，１３を変化させれば当然ウェブ内幅ＩＷと左右
のフランジ厚１２，１３を合計したウェブ高さＯＷは種
々の寸法に変化せざるを得ないことになる。

【０００５】すなわち、従来の圧延法で圧延されるＨ形
材は、図１１に示すごとくウェブ内幅ＩＷが一定であ
り、フランジ厚Ｔf1がＴf2に変化することによってウェ
ブ高さＯＷ1 がＯＷ2 に変化する、いわゆるウェブ内幅
一定の製品シリーズとなる。もし、ウェブ高さ一定のＨ
形材製品シリーズをユニバーサル圧延機を用いた従来圧
延法で製造しようとすると、ウェブ内幅の変化に応じ
て、粗圧延〜中間圧延〜仕上げ圧延の全工程における上
下水平ロールの大半を準備することになり、大量のロー
ル本数を必要とするとともに頻繁なロール組替え作業を
行わなければならず、著しい製造コスト高をまねくの
で、実質的にこの方法を採用することは不可能である。

【０００６】本願出願人は、このような従来法における
欠点を解消する一つの方法として、『斜行ロール方式に
よるフランジを有する形材の圧延方法』（特公平３−４
２１２２号公報）を先に提案している。この『斜行ロー
ル方式圧延方法』の特徴は、図６（ａ）および（ｂ）に
示すように、上下各２個の斜行ロール１５，１５′およ
び１６，１６′の外側面１９，１９′，２０，２０′が
材料１７のフランジ内側２１，２２に接し、かつロール
軸Ｓが圧延方向と水平な面内において圧延方向と垂直な
面に対してθH 、また、圧延方向と垂直な面内において
圧延方向と水平な面に対してθV の角度を保ちつつ、前
工程においてウェブ中央部より厚く形成した余肉部１８
を圧下することによって、圧下された部分の材料を幅方
向へ流動せしめ、ウェブ波などを全く生じさせずに、ウ
ェブを幅方向に拡げることができる機能を有することで
ある。

【０００７】図７（ａ）に、この『斜行ロール方式圧延
方法』を採用した圧延機１４を、Ｈ形材の熱間圧延設備
列に組み込んだ例を示す。図中の中間ユニバーサル圧延
機（ＲＵ−Ｅ）２と斜行ロール方式圧延機（ＳＳ）１４
と水平ロールの胴幅が可変な仕上げ圧延機（ＦＵ）３を
組み合わせることによって、前述の代表的ニーズである
同図（ｃ）の「ウェブ高さ（ＯＷ）一定のＨ形材製品シ
リーズ」を少ないロール数で製造することが基本的に可
能となる。

【０００８】次に、図７（ａ），（ｂ）により、ウェブ
高さ（ＯＷ）一定のＨ形材製品シリーズの製造に斜行ロ
ール方式を適用した例を詳細に説明する。まず、中間ユ
ニバーサル圧延機群２（ＲＵ−Ｅ）で、粗圧延機１（Ｂ
Ｄ）から供給されるビームブランク４をウェブ両端部に
余肉部１８を有する断面形状２５まで造形する。すなわ
ち、中間ユニバーサル圧延機（ＲＵ）の上下水平ロール
の左右両端周面には凹部が設けられ、この凹部に鋼材を
充満させるように圧延して余肉部１８を形成し、断面形
状２５まで造形するのである。このように成形される断
面形状２５の種類の数は限定されるものではない。すな
わち、素材は中間工程においてユニバーサル圧延機で圧
延し造形されるから、ウェブ厚とフランジ厚を自由に変
化させることが可能であり、製品シリーズに応じて必要
な数の異なる断面形状が造形される。ウェブ内幅ＩＷ1
は一定でありウェブ高さＯＷ1 は必ずしも一定とはなら
ない。中間ユニバーサル圧延機群２で造形された断面形
状２５、あるいは必要に応じてウェブ厚とフランジ厚が
さらに異なる断面形状に造形された圧延素材は、斜行ロ
ール方式圧延機１４（ＳＳ）に送り込まれる。これら圧
延素材は各々斜行ロール方式圧延機１４（ＳＳ）によっ
て製品のシリーズに応じた必要な種々のウェブ内幅寸法
ＩＷ２に拡幅圧延された断面形状２７となる。

【０００９】斜行ロール方式圧延機１４（ＳＳ）で造り
分けられた断面形状２７は、水平ロールの胴幅が可変な
仕上げ圧延機３（ＦＵ）によって製品シリーズに応じた
種々のウェブ内幅ＩＷ4 を持った断面形状２８に整形圧
延され、ウェブ高さＯＷが一定でかつ製品シリーズに応
じたウェブ内幅ＩＷ6 を持つ製品２９となる。また、製
品シリーズのなかでフランジ厚が最大でウェブ内幅が最
小の製品３１は、斜行ロール方式圧延機１４（ＳＳ）に
よるウェブ拡幅を行わずに、水平ロールの胴幅が可変な
仕上げ圧延機３（ＦＵ）に直接中間ユニバーサル圧延機
群２の断面形状２５を用いることによって製造すること
が可能である。ただし、この場合には製品ウェブ内幅Ｉ
Ｗ５に対応する断面形状３０のウェブ内幅ＩＷ3 と、中
間ユニバーサル圧延機群２の断面形状２５のウェブ内幅
ＩＷ1 とは相互に適合した値に設定される。

【００１０】また、本願出願人は斜行ロール方式圧延機
を１基のみ用いる場合に比べてさらに大きな拡幅量を得
ることを狙った、『フランジを有する形材の圧延設備』
（特開昭６３−５６３０２号公報）を既に提案してい
る。該圧延設備は、図１２に示すように中間圧延機１０
３と仕上げ圧延機１０６との間に２基の斜行ロール方式
圧延機１０４，１０５をタンデムに配置することを特徴
とするものである。

【００１１】このように、特公平３−４２１２２号公報
の斜行ロール方式圧延方法および特開昭６３−５６３０
２号公報の斜行ロール方式圧延設備は、大きなウェブ拡
幅効果を奏するものの、これらの発明のみでは、図８に
示すようなコーナーＲ部４１、余肉部と中央部４２の境
界４３における局所的な厚み減少（以下、くびれと称す
る）を防止しつつ良好な寸法精度でウェブを大きく拡幅
することはできない。

【００１２】上記問題への対策として、１基の斜行ロー
ル方式圧延機による拡幅圧延については、『フランジを
有する形材の圧延方法』（特開昭６３−３０３６０２号
公報）で既に提案している。その具体的な対策は、中間
圧延工程で余肉部の稜線を異なる曲率半径の複数個の円
弧の組み合わせとなるよう成形し、拡幅時の局所的な応
力集中を抑制するというものである。特開昭６３−５６
３０２号公報の中間圧延工程後に２基の斜行ロール方式
圧延機をタンデムに配置した圧延設備に関しては、特開
昭６３−３０３６０２号公報のくびれ防止方法を単純に
適用し中間圧延工程で余肉部を適正形状に形成しても、
余肉部の圧下面がフラットである従来の第１斜行ロール
圧延機により圧下した後の余肉部形状は適正形状とはな
らず、第２斜行ロール圧延機によるウェブ拡幅圧延の際
にウェブにくびれが発生する。

【００１３】また、特開昭６３−３０３６０２号公報は
目標拡幅量から余肉部以外のウェブ中央部の限界拡幅量
を引いた値と製品ウェブ厚との積で必要余肉量を決定す
ることを提案している。したがって、異なるシリーズの
製品を同一セットのロールから製造するために、大きな
ウェブ拡幅を行うと、この余肉は多量となることは避け
られない。一方、中間ユニバーサル圧延機（ＲＵ）の上
下水平ロールの左右両端周面の凹部で形成される余肉の
量は、同一ロールでは形材の各サイズに対して同一量で
あるため仕上げ圧延機で水平ロールの胴幅が可変な構造
のものを用いる際に、ウェブ高さを拡幅しない場合につ
いては、形材のウェブ内幅の変化に対応して従来の一体
ロールに比較してロールの剛性と強度が低い水平ロール
で前記の多量な余肉を圧下消去する必要がある。したが
って、前記特開昭６３−５６３０２号公報の圧延設備で
は余肉を完全に圧下消去することはできず、製品ウェブ
に余肉が残存することは防止できない。

【００１４】

【発明が解決しようとする課題】本発明は、中間圧延工
程後に斜行ロール方式圧延機を２基タンデムに配置して
ウェブを拡幅する圧延方法において、ウェブのくびれお
よび余肉の残存を防止する方法を提供することを目的と
する。

【００１５】

【課題を解決するための手段・作用】本発明の要旨は、 粗圧延工程、中間圧延工程、および仕上げ圧延工程か
らなる形材の圧延工程の前記中間圧延工程と仕上げ圧延
工程との間に、圧延方向に水平な面内におけるその軸芯
と圧延方向に垂直な面との角度θH を調整可能な機構を
有する上下左右４個の斜行ロールを有する第１および第
２斜行ロール圧延機をタンデムに配置して形材のウェブ
を拡幅するフランジを有する形材の圧延方法において、
前記中間圧延工程の前面または後面に１基以上の２重ロ
ール圧延機またはユニバーサル圧延機を近接設置し、前
記中間圧延工程のユニバーサル圧延機の上下水平ロール
の左右両端４周面の各々に設けた凹部によってウェブ両
端部に余肉部を生成する圧延と、前記２重ロール圧延機
またはユニバーサル圧延機で前記余肉部の厚みを調整す
る圧延とを繰り返した後、ロールの余肉部圧下面が異な
る曲率半径の複数個の円弧の部分を組み合わせた形状の
斜行ロールでなる前記第１斜行ロール圧延機でウェブを
拡幅することを特徴とするフランジを有する形材の自在
圧延方法、 余肉部圧下面が、曲率半径の異なる複数個の円弧の部
分を組み合わせた形状の斜行ロールを有する第２斜行ロ
ール圧延機でウェブを拡幅することを特徴とする前記
項記載のフランジを有する形材の自在圧延方法、 余肉部圧下面が、曲率半径の異なる複数個の円弧の部
分を組み合わせた形状の水平ロールを有する２重ロール
圧延機またはユニバーサル圧延機で圧延することを特徴
とする前記項または項記載のフランジを有する形材
の自在圧延方法、 第１斜行ロール圧延機と第２斜行ロール圧延機との斜
行ロールの角度θH を異なる値に設定して圧延すること
を特徴とする前記，または項記載のフランジを有
する形材の自在圧延方法にある。

【００１６】以下、図１〜図５を用いて、本発明により
ウェブのくびれ及び余肉残存を防止する方法を詳細に説
明する。本発明の基本圧延プロセスは図１に示すよう
に、ビームブランク４を供給する粗圧延機１（ＢＤ）、
該ビームブランク４を大略Ｈ形状に圧延するとともにウ
ェブ２ａの両端部に余肉１８を成形するユニバーサル圧
延機ＲＵ、フランジ部１ａの幅Ｆを成形するエッジャー
圧延機Ｅ、中間圧延工程（ＲＵ−Ｅ）の前面または後面
に近接配置し、余肉部１８を圧下調整する余肉制御装置
ＭＣ（２重ロール圧延機またはユニバーサル圧延機）、
中間圧延工程後に設置されウェブ高さを調整する機能を
持つ第１斜行ロール方式圧延機１４ａ（ＳＳ１）および
第２斜行ロール圧延機１４ｂ（ＳＳ２）、そして最終製
品まで圧延する仕上げ圧延機３（ＦＵ）により構成され
る。

【００１７】まず、図２（ａ）に示した前記ユニバーサ
ル圧延機ＲＵの上下水平ロール２Ｈの左右両端周面の各
々（４カ所）に設けた凹部５０の量の決定方法について
説明する。異なるシリーズの製品を同一ロールで、かつ
各シリーズ内ウェブ高さ一定で製造する場合の斜行ロー
ルでの各製品の目標拡幅量ΔＷｉは、図３に示すよう
に、対象製品シリーズ中の最小ウェブ内幅ＩＷmin とウ
ェブ高さを一定化した後の想定ウェブ内幅ＩＷｉとの差
であり、この目標拡幅量ΔＷｉと製品ウェブ中央厚ｔｗ
との積（面積）の最大値が図１の中間ユニバーサル圧延
機ＲＵで成形する余肉１８の量、すなわち必要最大余肉
面積である。図２（ｂ）に示す上下左右４カ所の凹部５
０の量（断面積）Ａ０は前記必要最大余肉面積の少なく
とも１／４に相当するように設定する。

【００１８】前記特開昭６３−３０３６０２号公報で
は、目標拡幅量からウェブの余肉部以外のウェブ中央部
の限界拡幅量を引いた値と製品ウェブ中央厚の積から必
要最大余肉面積を決定することを提案しているが、実圧
延ではウェブ中央部の温度は余肉部の温度より低いため
ウェブ中央部の伸びは期待できないことから、本発明で
は上記のように必要最大余肉面積を決定する。なお、余
肉部の形状は、前記特開昭６３−３０３６０２号公報で
提案したように、その稜線が異なる曲率半径の複数個の
円弧の組み合わせとなるごとく形成する。

【００１９】次に、斜行ロール圧延機による拡幅圧延時
のくびれ防止は、以下のように行う。図４（ａ）は、稜
線を異なる曲率半径の複数個の円弧の部分を組み合わせ
とした図１記載の余肉部１８を、余肉圧下面１５Ｓ，１
５Ｓ′が平坦な斜行ロール１５，１５′で圧下しながら
ウェブを拡幅する過程の、ある段階における形材１７
（半断面を表示）と斜行ロール１５，１５′（片側）と
の関係を示した。この段階において、形材１７のコーナ
ーＲ部４１および余肉部の圧下された部分と未圧下の部
分との境界部４５におけるウェブ厚の変化は、圧下前の
余肉部１８よりも急激となる。このような圧延段階か
ら、形材１７のウェブがさらに拡幅圧延される場合のウ
ェブ幅方向の引張応力σＴ、材料温度Ｔ、およびウェブ
幅方向の引張塑性歪εを図４（ｂ）に示した。ウェブ幅
方向の引張応力σＴは、曲線Ｃ１のように分布し、ウェ
ブ厚が急減する部分で、急増する。また、材料温度は、
曲線Ｃ２のように分布しコーナーＲ部４１に近いほど高
温となる。一般に材料は、引張応力が大きいほど、また
高温ほど変形し易いため、この場合のウェブ幅方向の引
張塑性歪は、曲線Ｃ３のように、Ｐ１およびＰ２でピー
クを持つような分布となる。一般に材料の引張試験では
ある歪以上ではくびれ現象が生じるが、前記の拡幅圧延
でも同様にウェブ幅方向の引張塑性歪が集中する部位で
くびれが発生する。

【００２０】そこで、本発明では図５（ａ）に示すよう
に第１斜行ロールの余肉圧下面１５Ｓ，１５Ｓ′の外形
を、異なる曲率半径Ｒ１，Ｒ２，・・・，Ｒｎの円弧の
組み合わせとし、拡幅圧延時のウェブ厚が圧延前の余肉
部１８の形状と同様に滑らかに分布するように設定す
る。図５（ａ）に示した圧延段階からさらに拡幅圧延を
する場合のウェブ幅方向の引張応力σＴ、材料温度Ｔ、
およびウェブ幅方向の引張塑性歪εの分布を図５（ｂ）
に示した。図５（ａ）のような滑らかなウェブ厚分布の
場合には、ウェブ幅方向の引張応力σＴは曲線Ｃ４のよ
うに材料コーナーＲ部からウェブ中央部に向けて滑らか
に増加する。また、材料温度Ｔは、曲線Ｃ５のようにコ
ーナーＲ部ほど高温となる。したがって、ウェブ幅方向
の引張塑性歪εは曲線Ｃ６のように局部的にピークを持
つことなく、ほぼ均一な分布となる。すなわち、ウェブ
のくびれは抑制される。また、第２斜行ロールについて
は、大きな拡幅を行わない場合には従来のフラット形状
で十分であるが、第２斜行ロールでも大きな拡幅を行う
場合には、さらに、第２斜行ロールの余肉圧下面の形状
も第１斜行ロールと同様に異なる曲率半径の複数個の円
弧を組み合わせた外形とすることにより、前記と同じ機
構で第２斜行ロールによるウェブ拡幅圧延でのくびれは
抑制可能である。ただし、その場合には、第２斜行ロー
ルで圧延した後の残存余肉の量が、余肉残存を生じさせ
ずに仕上げ圧延機で最終整形できる量以下となるように
第２斜行ロールの余肉圧下面の形状を定める必要があ
る。

【００２１】一方、異なるシリーズの製品を同一セット
のロールから製造するために、大きなウェブ拡幅を行う
と、余肉は多量となることは避けられない。余肉の量は
形材の各サイズに対して同一量であるため、ウェブ高さ
を拡幅しない場合については、形材のウェブ内幅の変化
に対応して水平ロールの胴幅が可変な構造のため従来の
一体ロールに比較してロールの剛性と強度が低い仕上げ
圧延機で前記の多量な余肉を圧下消去する必要がある。
したがって、前記特開昭６３−５６３０２号公報の圧延
設備では余肉を完全に圧下消去することはできず、製品
ウェブに余肉が残存することは防止できない。

【００２２】そこで、本発明では図１に示すように、中
間圧延工程とは別にその前面または後面に、２重ロール
圧延機またはユニバーサル圧延機を設置し、ウェブを拡
幅しない場合には中間圧延工程のユニバーサル圧延機の
上下水平ロールにてウェブに余肉部を成形する過程に前
記２重ロール圧延機またはユニバーサル圧延機による１
パス以上の圧延を施し、余肉部の一部分または全てを圧
下消去する。ここで、余肉部の一部分を圧下するとは、
残存する余肉部の量が中間圧延工程後の圧延工程で圧下
消去できる量以下になるまで余肉部を圧下するという意
味である。また、目標拡幅量以下の拡幅を行う場合に
は、圧下した後の余肉部の量が必要な拡幅量と製品ウェ
ブ厚とをかけ合わせた量に等しくなるまで、余肉部を２
重ロール圧延機またはユニバーサル圧延機により圧下調
整した後、その余肉部の全てを第１および第２斜行ロー
ル圧延機により圧下消去する。さらに、２重ロール圧延
機またはユニバーサル圧延機の水平ロールの余肉圧下面
の形状を、第１斜行ロールの形状と同様に、異なる曲率
半径の複数個の円弧の組み合わせとして余肉圧下を行う
ことにより、余肉を圧下調整する際のウェブからフラン
ジへのメタルフローを喚起でき余肉調整がより容易にな
るとともに、その後の第１斜行ロールによるウェブ拡幅
時のくびれ抑制に効果的である。したがって、このよう
な圧延方法を採用することにより、製品ウェブには余肉
の残存は生じない。

【００２３】さらに、第１斜行ロールにより圧下する余
肉部の面積は、最大余肉面積に第１斜行ロールでのウェ
ブ拡幅量と第２斜行ロールでのウェブ拡幅量との比をか
け合わせた量に設定する。この理由は、第１斜行ロール
で圧下する余肉部の面積が、上記の値より小さい場合に
は、第１斜行ロールでウェブを拡幅した後にウェブにく
びれが発生し、逆に上記の値より大きい場合には、第２
斜行ロールでウェブを拡幅した後にウェブにくびれが発
生するためである。

【００２４】斜行ロールの角度については、特開昭６３
−５６３０２号公報の明細書では規定されていないが、
該公報の第１図では第１斜行ロールおよび第２斜行ロー
ルの角度は等しく描かれている。しかしながら、ウェブ
拡幅量が小さい場合には、第１斜行ロールの角度を０°
に、さらに左右のロール間隔を中間圧延工程で圧延され
た材料のウェブ内幅と同じ値に設定し、斜行ロールの側
面でフランジ内側面を押し広げるという機能を働かせず
余肉部を圧下した後、第２斜行ロールの角度を所望のウ
ェブ拡幅量が得られる値に設定して圧延することによ
り、第１斜行ロールおよび第２斜行ロールの角度を同じ
値に設定したより小さな拡幅量を得ることができるた
め、ウェブ高さの調整範囲がより広くなる。

【００２５】

【実施例】ウェブ高さ６００mm、フランジ幅２００mmの
Ｈ形材とウェブ高さ７００mm、フランジ幅２００mmのＨ
形材を同一ロールにて製造する場合を例にとって、従来
の斜行ロール方式圧延設備（特開昭６３−５６３０２号
公報）を用いて圧延した場合と本発明を適用した場合と
を比較して説明する。表１には、従来の斜行ロール方式
圧延設備を用いて圧延した場合の圧延結果を示した。

【００２６】

【表１】

【００２７】第１斜行ロールによるウェブ拡幅圧延時の
くびれは、拡幅量に見合った余肉量（断面積）を形材に
付与したこと、および余肉部の外形を異なる曲率半径の
複数個の円弧の組み合わせとしたことにより緩和された
が、第１斜行ロールの余肉圧下面の形状がフラットであ
るため、ウェブ拡幅過程において余肉部の厚み分布が急
激に変化する部位が生じ、小さいながらくびれが発生し
た。さらに、第１斜行ロールで拡幅圧延した後の余肉部
が、ウェブ幅方向の引張塑性歪が局部集中し易い形状で
あるため、第２斜行ロールによるウェブ拡幅圧延時のく
びれは、第１斜行ロールによる拡幅圧延後より大きくな
り、仕上げ圧延後も残存した。また、設定余肉量（断面
積）が一定（１２００mm² ）であるため、拡幅量が小さ
いサイズ（Ｈ６００×２００×１２／２８，Ｈ６００×
２００×９／１２）については、斜行ロールで圧下され
ずに残った余肉を仕上げ圧延機で圧下したが、かなり大
きい余肉残存量（ウェブ余肉部厚−ウェブ中央部厚）が
生じることを確認した。

【００２８】これに対して、表２は本発明を適用した場
合の圧延結果を示した。本発明では、第１および第２斜
行ロールで拡幅圧延した後のくびれは、ほとんど発生し
なかった。この理由は、前記の従来圧延方法に加えて第
１および第２斜行ロールの余肉圧下面の外形を異なる曲
率半径の複数個の円弧の組み合わせとしたことにより、
ウェブ幅方向の引張塑性歪を抑制できたためである。ま
た、一定量の設定余肉量（断面積）を、余肉成形用のユ
ニバーサル圧延機とは別に設けたユニバーサル圧延機で
拡幅量に見合った量に圧下調整することにより、拡幅量
が小さいサイズ（Ｈ６００×２００×１２／２８，Ｈ６
００×２００×９／１２）についても余肉残存量（ウェ
ブ余肉部厚−ウェブ中央部厚）を小さく抑制でき、良好
な寸法精度の製品が得られることを確認した。

【００２９】

【表２】

【００３０】

【発明の効果】本発明を斜行ロール方式によるフランジ
を有する形材の製造プロセスに適用することにより、斜
行ロールにより極端に大きなウェブ拡幅を行ってもウェ
ブくびれは発生せず、また、ウェブ拡幅を行わない場合
でも良好なウェブ厚み分布を有する製品に仕上げ圧延が
可能であり、任意のウェブ高さのＨ形材製品シリーズを
良好な品質でかつ極めて少ないロール数で製造すること
ができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】（ａ），（ｂ）：本発明によるＨ形材の圧延方
法の概略図。

【図２】（ａ），（ｂ）：本発明の中間ユニバーサル圧
延機の上下水平ロールの左右両端周面に凹部を設ける方
法の説明。

【図３】必要最大余肉面積の決定方法の説明図。

【図４】（ａ）：従来の斜行ロールによるウェブ拡幅圧
延時のロールと形材との関係を示す説明図。 （ｂ）：従来の斜行ロールによるウェブ拡幅圧延時のウ
ェブ幅方向の引張応力、材料温度、およびウェブ幅方向
の引張塑性歪の形材断面内分布の概略図。

【図５】（ａ）：本発明の斜行ロールによるウェブ拡幅
圧延時のロールと形材との関係を示す説明図。 （ｂ）：本発明の斜行ロールによるウェブ拡幅圧延時の
ウェブ幅方向の引張応力、材料温度、およびウェブ幅方
向の引張塑性歪の形材断面内分布の概略図。

【図６】（ａ），（ｂ）：斜行ロール方式圧延法の説明
図。

【図７】（ａ），（ｂ）：斜行ロール方式圧延の装置お
よび圧延機の機能説明図。 （ｃ） ：斜行ロール方式圧延法による製品の略
図。

【図８】ウェブくびれの説明図。

【図９】（ａ），（ｂ）：従来のＨ形材圧延装置列の代
表例と、粗、中間、仕上げの各圧延機で圧延された各材
料断面形状の説明図。

【図１０】Ｈ形材を圧延するユニバーサル圧延ロールと
被圧延材との関係に基づくユニバーサル圧延機の機能説
明図。

【図１１】ウェブ内幅一定の製品シリーズの説明図。

【図１２】２基の斜行ロール圧延機をタンデムに配置し
た圧延設備の概略図。

【符号の説明】

１ ブレークダウン圧延機 ２ ＲＵ−Ｅ群 ３ 仕上げユニバーサル圧延機 ４〜６ 圧延材 １４ａ，１４ｂ 斜行ロール方式圧延機 １５，１５′ 斜行ロール １６，１６′ 斜行ロール １７ 形材 １８ 余肉部 ５０ 凹部

フロントページの続き (72)発明者 廣口 貴敏 大阪府堺市築港八幡町１番地 新日本製 鐵株式会社 堺製鐵所内 (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) B21B 1/08 - 1/14

Claims (4)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 粗圧延工程、中間圧延工程、および仕上
   げ圧延工程からなる形材の圧延工程の前記中間圧延工程
   と仕上げ圧延工程との間に、圧延方向に水平な面内にお
   けるその軸芯と圧延方向に垂直な面との角度θH を調整
   可能な機構を有する上下左右４個の斜行ロールを有する
   第１および第２斜行ロール圧延機をタンデムに配置して
   形材のウェブを拡幅するフランジを有する形材の圧延方
   法において、前記中間圧延工程の前面または後面に１基
   以上の２重ロール圧延機またはユニバーサル圧延機を近
   接設置し、前記中間圧延工程のユニバーサル圧延機の上
   下水平ロールの左右両端４周面の各々に設けた凹部によ
   ってウェブ両端部に余肉部を生成する圧延と、前記２重
   ロール圧延機またはユニバーサル圧延機で前記余肉部の
   厚みを調整する圧延とを繰り返した後、ロールの余肉部
   圧下面が異なる曲率半径の複数個の円弧の部分を組み合
   わせた形状の斜行ロールでなる前記第１斜行ロール圧延
   機でウェブを拡幅することを特徴とするフランジを有す
   る形材の自在圧延方法。
2. 【請求項２】 余肉部圧下面が、曲率半径の異なる複数
   個の円弧の部分を組み合わせた形状の斜行ロールを有す
   る第２斜行ロール圧延機でウェブを拡幅することを特徴
   とする請求項１記載のフランジを有する形材の自在圧延
   方法。
3. 【請求項３】 余肉部圧下面が、曲率半径の異なる複数
   個の円弧の部分を組み合わせた形状の水平ロールを有す
   る２重ロール圧延機またはユニバーサル圧延機で圧延す
   ることを特徴とする請求項１または請求項２記載のフラ
   ンジを有する形材の自在圧延方法。
4. 【請求項４】 第１斜行ロール圧延機と第２斜行ロール
   圧延機との斜行ロールの角度θH を異なる値に設定して
   圧延することを特徴とする請求項１，２または３記載の
   フランジを有する形材の自在圧延方法。