JP3088432B2 - シリンダブロックの冷却水供給構造 - Google Patents

シリンダブロックの冷却水供給構造

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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] この発明は、自動2輪車用水冷多気筒エンジンにおけ
る冷却水通路を有利に形成したものに関する。
[従来の技術] 自動2輪車用水冷多気筒エンジン、例えば、水冷V型
エンジンでは、シリンダブロックの上部に所定の挟み角
をもって相対向する第1及び第2バンクを設けるととも
に、各バンクにシリンダを囲むウォータージャケットを
形成し、このウォータージャケットへウォーターポンプ
からの冷却水を供給するための冷却水通路を各バンク毎
に設けることがあった。
[発明が解決しようとする課題] ところで、上記構造の場合は、冷却水通路を各バンク
毎に設けるため、それぞれに水パイプ、ジョイント及び
ホース類が必要となり、部品点数並びに重量が増加しか
つ製造コストも高くなった。そこで本発明の目的は、部
品点数を削減して軽量化できかつ低コスト化できる自動
2輪車用多気筒エンジンを提供することにある。
[課題を解決するための手段] 上記課題を解決するため、請求項1に係る自動2輪車
用水冷多気筒エンジンは、自動2輪車の車幅方向へクラ
ンク軸を配設し、それぞれにシリンダ及びこれを囲むウ
ォータージャケットを備えかつ所定の挟み角をもって相
対向するバンクをシリンダブロックの上部に設けるとと
もに、ウオータポンプからの冷却水をウォータージャケ
ットへ供給する冷却水通路をシリンダブロックに設けた
自動2輪車用水冷多気筒エンジンにおいて、前記相対向
する双方のバンクのウォータージャケット各下端を前記
相対向するバンクの谷間にて近接させ、かつクランク軸
の軸方向へ交互ずらせて千鳥状に配設することによりバ
ンクの谷間上へ互いに入り組ませるとともに、これら近
接したウォータージャケットの各下端とクランク軸の軸
方向から見て重なり、かつ双方のバンクのウォータージ
ャケット各下端を一つの円形断面をなす通路で連通する
ように前記冷却水通路を前記相対向するバンクの谷間に
穿設したことを特徴とする。
[発明の作用] 請求項1の発明によれば、冷却水通路を相対向するバ
ンクの谷間に穿設するとともに、双方のウォータージャ
ケットと同時に連通させると、ウオータポンプから供給
された冷却水は、一つの冷却水通路によって同時に各バ
ンクのウォータージャケットへ供給される。しかもこの
冷却水通路は機械加工による穿設のため一様の断面をな
す通路をなし、内部に凹凸による滞留部分が形成されな
いので冷却水の供給がスムーズになる。また、相対向す
る双方のバンクのウォータージャケット各下端を前記相
対向するバンクの谷間にて近接させ、かつクランク軸の
軸方向へ交互にずらせて配設することによりバンクの谷
間上へ互いに入り組ませたので、相対向するバンクのウ
ォータジャケットの下端相互を近接させることができ、
冷却水通路はこれら近接する双方のウォータジャケット
の下端を同時に貫通するように円形断面を有する一つの
通路を穿設すれば足り、冷却水通路を複数設ける必要が
なく、かつ必要以上に大きな穴にしないですむため機械
加工による穿設が可能になり、製造が容易になる。さら
に、ウォータジャケットの下端と連通することにより各
ウォータジャケットの下端へ冷却水を供給でき、ウォー
タジャケット内の冷却水は下部から上部側へスムーズに
循環し、冷却効率を向上する。
[実施例] 以下図面の一実施例を説明する。第1図は本発明に係
るV型6気筒エンジンを搭載した自動2輪車の骨格部側
面形状を示す図であり、1は前輪、2はフロントフォー
ク、3はハンドル、4は燃料タンク、5はフレーム、6
はエンジン、7はウォーターポンプ、8はラジエタ、9a
は前バンク側排気管、9bはその集合管、9cはチャンバ、
9dは集合管、9eはマフラ、9fは後バンク側排気管、9gは
その集合管、10は片持式リヤスイングアーム、11はその
内部に前後方向へ配設されたリヤクッション、12は後輪
である。
第2図は上部を破断したエンジン6の左側面形状を示
す図であり、このエンジン6の外形はシリンダブロック
13、クランクケース14、シリンダヘッド15、シリンダヘ
ッドカバー16、オイルパン17とからなる。シリンダブロ
ック13の上部には所定の挟み角で前バンク18と後バンク
19が一体に形成され、各々にシリンダ20とその周囲を囲
むウォータージャケット21が形成されている。
各バンクのウォータージャケット21は両バンクの谷間
Vに穿設された冷却水通路22で連通している。冷却水通
路22にはクランクケース14に設けられたウォーターポン
プ7の吐出口23とを連結するホース24が接続され、この
ホース24を通って、ラジエタ8からホース25を介してウ
ォーターポンプ7へ入った冷却水が供給されるようにな
っている。シリンダ20内にはピストン26(一方のみ表
示)が収容され、クランクケース14内に幅方向に設けら
れたクランク軸27を回転するようになっている。
シリンダヘッド15には吸気口28、排気口29、これらの
周囲を囲むウォータージャケット30、吸気バルブ31、排
気バルブ32等が形成されている。吸気口28にはインシュ
レータ33を介して燃料噴射装置34を備えたスロットルボ
ディ35が取付けられる。各排気口29はそれぞれ前記前バ
ンク側排気管9a又は後バンク側排気管9fに接続してい
る。
さらに、シリンダヘッド15内には各バルブを作動させ
るためのカム36を形成した一対のカム軸37が、各バンク
毎にクランク軸27と平行に配設され、シリンダヘッド15
のジャーナル38とカムホルダ39によって回転可能に支持
されている。
第3図はエンジン6の展開した断面を示す図であり、
クランク軸27の一端部に設けられたプライマリギヤ40は
クラッチギヤ41と噛み合い、クラッチ42を介して変速機
のメイン軸43を回転させ、さらに常時噛み合うメインギ
ヤ44とカウンタギヤ45(第2図及び第4図中はその一組
について例示している)を介してカウンタ軸46からドラ
イブスプロケット47へ出力している。なお、カウンタギ
ヤ45はシフト軸48上のシフトフォーク49によってシフト
操作される。
また、各軸と平行にポンプ軸50が設けられており、こ
の軸の一端に設けられたドリブンスプロケット51がメイ
ン軸43上のスプロケット52によりチェーン53を介して駆
動されることにより回転され、この軸上の両端部に分か
れて同軸取付けされたウォーターポンプ7及びオイルポ
ンプ54を同時に駆動するようになっている。
さらにクラッチカバー55に覆われた空間S1内には、ク
ランク軸27と同軸のカム駆動ギヤ56及びこれと噛み合う
アイドル減速ギヤ57が収容されている。アイドル減速ギ
ヤ57は各バンク毎に、一対のカム軸37の軸端に設けられ
た2個のカムギヤ58及び1個のアイドルギヤ59を介して
噛み合い、クランク軸27に対してカム軸37の回転化を1/
2とするようになっている。
カムギヤ58及びアイドルギヤ59はシリンダヘッド15及
びシリンダヘッドカバー16の側部に形成された空間S2内
へ収容されている。これらのギヤ56乃至59からなるギヤ
列は後述する第7図中にも示されている。なお、図中の
符号60はクラッチカバー55の表面へ取付けられる防音カ
バー、61はACGスプロケット、62はチェーン、63はACGで
ある。
第4図はシリンダブロック13の平面形状を示し、この
図からも明らかなように、前後のバンク18、19にはシリ
ンダ20がそれぞれ3個ずつ車幅方向へ直列されるととも
に、相対向するシリンダ20は相互に車幅方向へずれてオ
フセットされているため、前後のバンク18、19の基部64
は谷間Vで相互に入り組み、その結果、各ウォータージ
ャケット21の基部64側も相互に入り組むことになる。
ゆえに、谷間Vを車幅方向(図の上下方向)へ通るよ
うに形成された冷却水通路22は、第5図に示すように、
矢示A、B部分において両側のバンク18、19の各ウォー
タージャケット21の壁部を切欠いて通過するため、一つ
の冷却水通路22を形成しただけで、双方のバンクのウォ
ータージャケット21が冷却水通路22によって連通するこ
とになる。
よって、ジョイント65(第4図)、ホース24(第2、
4図)を介してウォーターポンプ7(第2図)から供給
された冷却水が、冷却水通路22から同時に双方のバンク
のウォータージャケット21へ供給される。なお、冷却水
通路22は車幅方向に穿設されるとは限らない。
第6図はエンジン6の右側面を示す図であり、シリン
ダヘッド15の相対向する壁面にはそれぞれ車幅方向へ延
びる冷却水通路68が形成されており、各冷却水通路68の
端部はシリンダヘッド15側へ取付けられているサーモス
タット69へ接続し、そのパイプ69aから冷却水が図示省
略のホースを介してラジエタ8へ還流するようになって
いる。
また、第6図にはカム軸37並びにメイン軸43及びカウ
ンタ軸46に対する潤滑系も一部破断及び透視の状態で示
されている。まず、カム軸37の潤滑系を説明する。オイ
ルパン17内のオイルは、オイルポンプ54によりストレー
ナ70からパイプ71を通って、一度オイルクーラ(図示省
略)へ送り込まれて冷却された後、クランクケース14及
びオイルパン17に連通形成された通路72からオイルフィ
ルタ73へ送られる。
ここで浄化されたオイルはパイプ74を介してメインギ
ャラリ75へ圧送される。メインギャラリ75からは各バン
クのカムホルダ39へ向かって配管されたホース76を通
り、カムホルダ39内に設けられた油路77へ入り、各カム
軸37の軸受部78へ給油される。これにより、カム駆動ギ
ヤ56の回転をアイドル減速ギヤ57及び各バンク毎に設け
られたアイドルギヤ59からなるギヤ列を介して伝達され
た各カムギヤ58によって回転される各カム軸37の軸受部
78が潤滑される。なお、第6図中の符号54aは、オイル
ポンプ54と一体に設けられたリリーフバルブである。
次に、メイン軸43及びカウンタ軸46に対する潤滑系
は、オイルポンプ54にメイン軸43及びカウンタ軸46へ向
かって半径方向へ延出形成された給油パイプ80によって
行なわれる。すなわち、第7図に給油パイプ80による給
油構造の詳細を示すように、この先端側に2カ所の油穴
81、82が設けられ、油穴81からのオイルはクランクケー
ス内の一方側の壁83に形成された油路84を通ってカウン
タ軸46の軸受部85(第3図)へ導かれる。
一方、油穴82から出たオイルはシフト軸48の中空部86
を通って他端側へ出、ここでクランクケース内の他方側
の壁87に形成された油路88を通ってメイン軸43の軸受部
89(第3図)へ給油される。このようにすると、オイル
ポンプ54からメイン軸43及びカウンタ軸46の各軸受部8
5、89へ直接給油するため、クランクケース内のオイル
通路を単純かつ短くできるので加工が容易になる。また
オイルを導くためのパイプが不要になるので部品点数を
削減できる。
第8図は第2図のD−D線に相当部分の拡大断面であ
り、ブリーザ室の構造を示す図である。クランクケース
14の左側外壁面には、ドライブスプロケット47(第3
図)の外側を覆うスプロケットカバー90が設けられ、こ
の上部とクランクケース14の外壁面とで囲まれた空間に
副ブリーザ室91が形成されている。
副ブリーザ室91内は、仕切板92によってラビリンス構
造なし、かつクランクケース14に形成された上下二つの
開口93、94によって、エンジン内部の空間95と主ブリー
ザ室96と連通している。主ブリーザ室96は仕切板97によ
って空間95と区画され、上部のパイプ98がシリンダヘッ
ド15の一側に設けられたパイプ99(第6図)に連通して
いる。
ゆえに、エンジン内部の未燃焼燃料は、空間95から開
口94、副ブリーザ室91、開口93、主ブリーザ室96を通
り、パイプ98・99からエアクリーナ(図示省略)へ還流
する。このようにすると容易に主副のブリーザ室構造を
形成できる。
第9図はマフラ9e(第1図)の内部構造を模式的に示
した図であり、隔壁100、101によって第1室乃至第3室
102、103、104に区画され、連結管105が第1室102と第
3室104を、連結管106が第1室102と第2室103を、連結
管107が第2室103と大気をそれぞれ連結している。ま
た、前バンク側の集合管9dは第1室102に入り、後バン
ク側の集合管9fは第3室104に入っている。
ゆえに、チャンバ9cを経た前バンク側の排気は第1室
102、第2室103、大気の順に流れるのに対して、チャン
バの無い後バンク側の排気は第3室104、第1室102、第
2室103、大気の順に流れる。このようにすると後バン
ク側の排気系は第3室104をチャンバとして利用でき
る。
次に、本実施例の作用を説明する、前後のバンク18、
19の谷間Vに双方のバンクのウォータージャケット21を
貫くよう比較的大径の冷却水通路22を穿設すると、一つ
の冷却水通路22が双方のウォータージャケット21と連通
することになる。
ゆえに、ウォータポンプ7よりホース24、ジョイント
24aを介して冷却水通路22内へ冷却水を圧送すると、冷
却水は冷却水通路22から双方のウォータージャケット21
内へ同時に供給される。
ゆえに、各バンク毎の冷却水通路22を設ける必要がな
くなり、一つだけで済むことになる。このため、冷却水
通路22を形成する場合の金型構造が簡単になって製造コ
ストが低くなるとともに、ホース24及びジョイント24a
を一つにすることができるので、部分点数が削減され軽
量化できる。
さらに、クランク軸27の軸方向と平行にクランクケー
ス14を穿設加工することにより、各気筒部分のウォータ
ージャケット21を連結する冷却水通路22を形成できる。
このため、加工治具や加工の段取りが容易になる。
なお、冷却水通路22からウォータージャケット21へ入
った冷却水はシリンダ20を冷却しつつウォータージャケ
ット30へ入り、ここで吸気バルブ31、排気バルブ32及び
点火プラグP(第3図)の周囲を冷却してシリンダヘッ
ド15側の冷却水通路80へ入り、サーモスタット81に制御
されつつ、そのパイプ82からホースを通ってラジエタ8
へ還流する。
[発明の効果] 請求項1の発明によれば、各バンクのウォータジャケ
ットを貫く冷却水通路を各バンクの谷間に穿設したの
で、従来各バンク毎に必要とされていた冷却水通路を単
一にすることが可能になった。その結果、製造時の金型
構造が簡素化して製造コストを低下できるとともに、従
来各冷却水通路毎に複数必要とされていたジョイントや
ホース等をそれぞれ単一にすることができ、部分点数の
削減並びに軽量化が可能になった。
しかもこの冷却水通路は機械加工による穿設のため一
様の断面をなす通路をなし、内部に凹凸による滞留部分
が形成されないので冷却水の供給がスムーズになる。ま
た、相対向する双方のバンクのウォータージャケット各
下端を前記相対向するバンクの谷間にて近接させ、かつ
クランク軸の軸方向へ交互にずらせて配設することによ
りバンクの谷間上へ互いに入り組ませたので、相対向す
るバンクのウォータジャケットの下端相互を近接させる
ことができ、冷却水通路はこれら近接する双方のウォー
タジャケットの下端を同時に貫通するように円形断面を
有する一つの通路を穿設すれば足り、冷却水通路を複数
設ける必要がなく、かつ必要以上に大きな穴にしないで
すむため機械加工による穿設が可能になり、製造が容易
になる。さらに、ウォータジャケットの下端と連通する
ことにより各ウォータジャケットの下端へ冷却水を供給
でき、ウォータジャケット内の冷却水は下部から上部側
へスムーズに循環し、冷却効率を向上する。
【図面の簡単な説明】
第1図乃至第9図は実施例に係り、第1図は本実施例の
エンジンを搭載した自動2輪車の骨格部側面図、第2図
は一部を切欠いたエンジンの左側面図、第3図はエンジ
ンの展開断面図、第4図は要部平面図、第5図はそのC
−C線断面図、第6図はエンジンの右側面透視図、第7
図は要部の一部断面図、第8図は第2図のD−D線断面
図、第9図は要部の模式断面図である。 (符号の説明) 6……エンジン、7……ウォーターポンプ、8……ラジ
エタ、13……シリンダブロック、14……クランクケー
ス、15……シリンダヘッド、16……シリンダヘッドカバ
ー、18……前バンク、19……後バンク、20……シリン
ダ、21……ウォータージャケット、22……冷却水通路、
V……谷間。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) F01P 3/02 F02F 1/14 F02B 75/22

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】自動2輪車の車幅方向へクランク軸を配設
    し、それぞれにシリンダ及びこれを囲むウォータージャ
    ケットを備えかつ所定の挟み角をもって相対向するバン
    クをシリンダブロックの上部に設けるとともに、ウオー
    タポンプからの冷却水をウォータージャケットへ供給す
    る冷却水通路をシリンダブロックに設けた自動2輪車用
    多気筒エンジンにおいて、前記相対向する双方のバンク
    のウォータージャケット各下端を前記相対向するバンク
    の谷間にて近接させ、かつクランク軸の軸方向へ交互に
    ずらせて配設することによりバンクの谷間上へ互いに入
    り組ませるとともに、これら近接したウォータージャケ
    ットの各下端とクランク軸の軸方向から見て重なり、か
    つ双方のバンクのウォータージャケット各下端を一つの
    円形断面をなす通路で連通するように前記冷却水通路を
    前記相対向するバンクの谷間に穿設したことを特徴とす
    る自動2輪車用水冷多気筒エンジン。
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