JP3081070B2 - 小径磁気ディスクの製造方法 - Google Patents

小径磁気ディスクの製造方法

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JP3081070B2 JP04241790A JP24179092A JP3081070B2 JP 3081070 B2 JP3081070 B2 JP 3081070B2 JP 04241790 A JP04241790 A JP 04241790A JP 24179092 A JP24179092 A JP 24179092A JP 3081070 B2 JP3081070 B2 JP 3081070B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】情報処理システムにおけるファイ
ル装置として使用される磁気ディスク装置においては、
非磁性の円板に磁性膜を成膜してなる磁気ディスクが磁
気記録媒体として使用される。本発明は、このような磁
気ディスクのうち、小径の磁気ディスクを製造する方法
に関する。
【0002】情報処理装置のダウンサイジングの進展に
伴い、磁気ディスク装置における記録媒体である磁気デ
ィスクも小径化の傾向にあり、最近は1.8 インチから1.
6 インチ、1.3 インチといった小径の磁気ディスクが実
用化されつつある。ところが、このように、磁気ディス
クが小径化するに伴って、磁気ディスクの大きさに対応
した新たな製造設備を備えなければならない。
【0003】そのために、小径の磁気ディスクを用いた
磁気ディスク装置を市場に出荷するまでに長期間を要す
ること、各小径磁気ディスクの寸法に対応した製造設備
を新設しなければならず、製造コストが高くなる、など
の問題が生じている。したがって、これらの問題を回避
するには、大径磁気ディスク製造用の既存の製造設備を
有効利用できることが望まれる。
【0004】
【従来の技術】図6は従来の小径磁気ディスクの製造方
法を工程順に示す断面図であり、本発明の出願人が先に
出願した特願平3−336495号においても開示されてい
る。工程(1)において、1はアルミニウムなどの非磁性
体からなるドーナツ状の基板であり、作製しようとする
小径磁気ディスクと同じサイズに形成されている。例え
ば、1.6 インチの小径磁気ディスクを製造する場合は、
非磁性円板1も1.6 インチのものを用いる。
【0005】そして、工程(2において、小径の非磁性円
板1の両面に、NiPメッキ下地層2を形成し、ポリッシ
ュ加工で鏡面にしたあと、工程(3) において、回転して
いる非磁性基板の板面に研摩テープを押し当てて、円周
方向に微細なテクスチャー溝3を形成する。
【0006】次に、工程(4) において、テクスチャー溝
3の上に、Co合金の水平配向性を高めるためのCr層4を
形成し、その上に工程(5) において、Co合金などから成
る磁性膜5が成膜される。この磁性膜5の上に、工程
(6) のように、保護膜としてカーボン膜6を形成し、最
後にフッ素系の潤滑層7が塗布される。Cr層4、Co合金
磁性膜5およびカーボン膜6は、スパッタなどの薄膜技
術で成膜される。
【0007】工程(3) で形成したテクスチャー溝3は、
磁性膜5に対して、電磁変換特性が向上するように磁気
異方性を付与するためである。また、テクスチャー溝3
に沿ってカーボン膜6も凹凸となるため、潤滑剤で磁気
ヘッドが磁気ディスク面に吸着されるのを抑制でき、か
つ磁気ヘッドと磁気ディスク面との間の摩擦が小さくな
る。しかしながら、このテクスチャー溝は必須のもので
はなく、テクスチャー処理が行なわれない磁気ディスク
もある。
【0008】図7は薄膜型の小径磁気ディスクの従来の
製造プロセスを工程順に示したフローチャートである。
工程(1) において、厚さ1mm前後のアルミニウム円板な
どから成る非磁性の小径円板を用意する。通常、これら
の小径円板は、基板メーカで製造される。
【0009】工程(2) で、小径円板の両面を研削加工な
どで面仕上げした後、工程(3) でNiPメッキを行なう。
次いで工程(4) でポリッシュ加工して鏡面に仕上げ、テ
クスチャー処理を要する磁気ディスクの場合は、次いで
テクスチャー処理が行なわれる。テクスチャー処理を行
なわない場合は、鏡面仕上げの後、工程(5) で洗浄を行
なう。
【0010】次に、工程(6) で図6におけるCr層4、Co
合金磁性膜5およびカーボン保護膜6などのスパッタを
行なった後、工程(7) でラッピングテープによってバー
ニッシュ加工が行なわれる。次いで、工程(8) で非磁性
円板を潤滑剤の液中に浸漬したり、スピンコートするな
どの手法で、潤滑剤を塗布した後、加熱を行なって潤滑
剤の溶剤を気化させる。
【0011】以上で製造工程は終わり、次いで工程(9)
において、磁気ディスクを回転させて磁気ヘッドのコア
スライダを浮上させ、浮上試験を行なう。浮上試験の結
果、良品について、実際に試験データを記録/再生する
等して、特性試験やエラー試験などを行ない、良品のみ
出荷する。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】以上の各工程のうち、
工程(2) の研削や工程(4) のポリッシュ加工、工程(7)
のバーニッシュ加工、工程(9) の浮上試験、工程(10)の
特性試験などは、円板1枚ごとに行なわなければならな
いため、ハンドリングロボットによって小径円板を1枚
ずつ加工装置や試験装置に着脱する必要がある。
【0013】また、工程(6) におけるCr膜や磁性膜、カ
ーボン保護膜等のスパッタ処理は、図8(a)に示すような
基板ホルダーhに複数枚の小径円板8を保持させた状態
で、キャリヤ9を図8(b)に示すようなCrターゲットt1や
磁性体ターゲットt2、カーボンターゲットt3の前を通過
させて、各小径円板8の両面に順次成膜していく。
【0014】このように、磁性膜を成膜する工程におい
ては、各円板8を所定の姿勢に保持して搬送する必要が
あるため、特別の保持搬送手段が必要であり、また保持
搬送手段に円板8を1枚ずつ着脱するハンドリング機構
が必要となる。
【0015】以上のような円板の着脱手段や成膜時の保
持搬送手段、さらには仕掛かり品や完成後の小径磁気デ
ィスクの保管装置なども、処理が行なわれる円板のサイ
ズに応じた専用の装置が必要なため、近年急速に普及し
つつある小径の磁気ディスクを製造するには、在来の10
インチ〜3.5インチなどのような大径磁気ディスクの製
造設備を利用することはできず、2.5 インチ〜1.0 イン
チ用の製造設備を新たに設けなければならない。また、
各面加工や浮上試験、特性試験なども、各円板サイズご
との専用の設備が必要であり、しかも1枚ごとに処理し
なければならない。
【0016】小径の磁気ディスクを製造する場合も、大
径の磁気ディスクを製造する場合と同様なプロセスを経
るため、大径磁気ディスクを製造する場合と同様な装置
を、小径磁気ディスク専用に特別に開発して設置しなけ
ればならず、その結果、前記のように製造設備費がかか
り、小径磁気ディスクの製造コストが高くなる。また、
小径磁気ディスク専用の製造設備が完成するまでに長期
間を要し、小径の磁気ディスクを市場に出荷するまでの
時間が遅れる、などの問題が生じている。
【0017】本発明の目的は、このような問題に着目
し、小径の磁気ディスクを製造する際に、大径磁気ディ
スク製造用の既存の製造設備を可能な限り有効利用でき
るようにすることにある。さらに、本発明の目的の詳細
を列挙すると次の通りである。
【0018】1.小径の磁気ディスクを抜き取る設備の
みを新設するだけで、ほかは在来の大径磁気ディスクの
製造設備をそのまま利用可能とし、製造コストの低減、
納期の短縮を可能とする。
【0019】
【0020】2.テクスチャー処理を要する小径磁気デ
ィスクを製造する場合は、テクスチャー処理の前の工程
までは、大径磁気ディスクの製造設備を利用可能とし、
テクスチャー処理以降を小径円板の製造設備で製造可能
とする。
【0021】3.磁性膜や保護膜などの成膜、浮上試験
や電磁変換特性試験などの試験工程までは、大径磁気デ
ィスク用の製造設備を利用可能とし、その後の洗浄およ
び潤滑剤処理の工程だけを小径磁気ディスクの状態で行
なえるようにする。
【0022】4.大径の磁気ディスクの製造プロセスの
うち、磁性膜や保護膜の成膜、潤滑剤処理、浮上試験、
電磁変換特性試験などのすべての工程を完了した後に、
小径円板に抜き取ることで、可能な限り、大径磁気ディ
スク用の製造設備を利用可能とする。
【0023】5.既存の規格品サイズの大径磁気ディス
クの製造設備をそのまま有効利用可能とすることで、新
規の設備投資を抑制する。
【0024】6.既存の規格品サイズの磁気ディスクの
製造設備をそのまま利用した場合でも、板厚が仕様どお
りまたは仕様に最も近い寸法の小径磁気ディスクが得ら
れるようにする。
【0025】7.既存の規格品サイズの磁気ディスクの
製造設備をそのまま利用した場合でも、1枚の大径円板
から、板厚が仕様どおりの小径磁気ディスクをより多く
得られるようにする。
【0026】
【課題を解決するための手段】前記のような各目的を達
成するために、本発明は次のような手段を講じている。
図1は本発明による小径磁気ディスクの製造方法の基本
原理を工程順に説明する平面図である。(3) 図の11は、
作製される小径の磁気ディスクとなる円板、(1) 図の10
は大径の円板であり、この大径円板10の内周iと外周o
との差Wが、小径円板11の外径Dよりも大きい。そして
まず、工程(1) のように、小径円板11の外形Dよりも内
外周差Wの大きい非磁性円板10を、通常は基板メーカか
ら購入し、用意する。
【0027】次いで、工程(2) では、このような大径の
非磁性円板10に、大径磁気ディスクの製造プロセスによ
って、各種の処理を順次行ない、ある処理までを終えた
大径円板を10aとする。工程(3) において、この大径円
板10aから小径の円板11を抜き取ると、工程(4) に示す
ような小径の磁気ディスク11が複数枚得られる。
【0028】請求項1の発明は、図1における工程(1)
〜(2) において、大径の磁気ディスクを製造するのに必
要なプロセスをすべて完了して、大径の磁気ディスクを
作製した後に、工程(3) において、該大径磁気ディスク
10aから小径磁気ディスクを抜き取って、工程(4) のよ
うに複数枚の小径磁気ディスク11を得る方法である。
【0029】
【0030】請求項2の発明は、テクスチャー処理を要
する小径磁気ディスクの製造方法であり、テクスチャー
処理の前の工程までは、大径磁気ディスクとしての製造
プロセスで行ない、該大径円板から小径円板を抜き取っ
て複数枚の小径円板とした後、それぞれの小径円板につ
いて、テクスチャー処理以降の磁気ディスク製造プロセ
スを遂行する方法である。
【0031】請求項3の発明は、大径磁気ディスクの製
造プロセスのうち、磁性膜や保護膜などの成膜、浮上試
験や電磁変換特性試験などの工程を完了した後に、該大
径円板から小径円板を抜き取って複数枚の小径円板とし
た後、それぞれの小径円板について、洗浄および潤滑剤
処理を行なう方法である。
【0032】請求項4の発明は、大径磁気ディスクの製
造プロセスのうち、磁性膜や保護膜の成膜、潤滑剤処
理、浮上試験、電磁変換特性試験などのすべての工程を
完了した後に、該大径円板から小径円板を抜き取って複
数枚の小径磁気ディスクとする方法である。
【0033】請求項5の発明は、請求項1〜4における
大径円板10として、10.5インチや8.25インチ等のよう
な、規格品サイズの円板を用い、規格品サイズの大径円
板から小径円板を抜き取って、小径磁気ディスクを製造
する方法である。
【0034】請求項6の発明は、請求項5の大径円板10
として、各種の規格品サイズのうち、外径が最小の円板
を用いる小径磁気ディスクの製造方法である。
【0035】請求項7の発明は、作製する小径磁気ディ
スクの外径Dより内外周差Wの大きい円板10として、外
径は規格品サイズで、板厚は作製する小径磁気ディスク
の仕様どおりの円板を用いる。この場合、請求項6と違
って、大径円板10として、より大径の円板を用い、1枚
の大径円板から小径磁気ディスクをより多く抜き取れる
ようにするのが良い。
【0036】
【作用】請求項1のように、大径磁気ディスクの製造プ
ロセスをすべて完了した後に、該大径磁気ディスク10a
から小径磁気ディスク11を抜き取る方法によると、大径
の磁気ディスクから小径の磁気ディスクを抜き取る設備
のみを新設するだけで足り、ほかは在来の大径磁気ディ
スクの製造設備をそのまま利用可能なため、製造コスト
の低減、納期の短縮を容易に実現できる。
【0037】
【0038】請求項2のように、テクスチャー処理を要
する小径磁気ディスクを製造する場合に、テクスチャー
処理の前の工程までは、大径磁気ディスクとしての製造
プロセスで行ない、該大径円板から小径円板を抜き取っ
て複数枚の小径円板とした状態で、それぞれの小径円板
について、テクスチャー処理以降の磁気ディスク製造プ
ロセスを遂行することにより、テクスチャー処理の前の
工程までは、大径磁気ディスクの製造設備を利用して製
造コストの低減を実現できる。しかも、テクスチャー処
理は、小径円板の状態で行なうので、テクスチャー処理
による磁気異方性を実現できる。
【0039】請求項3のように、大径円板の状態で、磁
性膜や保護膜の成膜、浮上試験や電磁変換特性試験など
を完了した後に、小径円板を抜き取って複数枚の小径円
板とし、それぞれの小径円板について、洗浄および潤滑
剤処理を行なう方法によると、磁性膜や保護膜などの成
膜、浮上試験や電磁変換特性試験などの試験工程まで
は、大径磁気ディスク用の製造設備を利用して、製造コ
ストの低減を実現できる。そして、複数枚の小径磁気デ
ィスクを抜いた後に、各小径磁気ディスクの洗浄および
潤滑剤処理を行なうだけで足りるので、大径磁気ディス
クの製造設備の大部分を有効利用できる。
【0040】請求項4のように、大径円板の状態で、磁
性膜や保護膜の成膜、潤滑剤処理、浮上試験、電磁変換
特性試験などのすべての工程を完了した後に、小径円板
を抜き取って複数枚の小径磁気ディスクとする方法によ
ると、大部分の工程において、大径磁気ディスク用の製
造設備を利用でき、製造コスト低減と納期短縮の効果が
顕著となる。
【0041】請求項5のように、小径磁気ディスクを抜
き取るための大径円板10として、規格品サイズの円板を
用いることにより、既存の規格品サイズの磁気ディスク
製造設備をそのまま有効利用でき、設備投資を抑制でき
る。
【0042】請求項6のように、前記の大径円板とし
て、各種規格品サイズの円板のうち、外径が最小の円板
を用いることにより、作製する小径磁気ディスクの仕様
と同等または最も近い板厚の小径磁気ディスクを得るこ
とができ、小径磁気ディスクの板厚が厚くなるのを防止
できる。
【0043】請求項7のように、前記の大径円板10とし
て、外径は規格品サイズで、板厚は作製する小径磁気デ
ィスクの仕様どおりの円板を用いることにより、板厚が
仕様どおりの小径磁気ディスクを得ることができる。ま
た、請求項6とは逆に、大径円板10として、各種規格の
うち外径がより大きな円板を用いることで、1枚の大径
円板から、小径磁気ディスクをより多く抜き取ることが
できる。
【0044】
【実施例】次に本発明による小径磁気ディスクの製造方
法が実際上どのように具体化されるかを実施例で説明す
る。図2は製造プロセスの第一実施例を示すフローチャ
ートで示したもので、図7に示す従来方法と違って、工
程(1) では、図1(1) に示すような大径の非磁性円板を
用意する。すなわち、作製する小径磁気ディスクの外径
より内外周差の大きい円板を用意する。
【0045】そして、大径円板の状態で、工程(2) 以降
の研削、NiPメッキ、ポリッシュ加工、洗浄、磁性膜や
保護膜などのスパッタ、バーニッシュ加工、潤滑処理な
どのような磁気ディスクの製造プロセスの全部を行な
い、工程(9) の浮上試験や工程(10)の特性試験などの各
種試験も完了した後に、工程(11)で小径磁気ディスクを
抜き取る。その結果、複数枚の小径磁気ディスクが完成
する。
【0046】このように、各種試験工程も完了して始め
て、磁気ディスクの作製完了と定義する場合は、図示の
通りでよいが、磁気ディスクの作製と試験工程とを分離
し、試験工程の前までを磁気ディスクの製造工程と定義
する場合は、図2(8) の潤滑処理の後に抜き取りを行な
い、小径磁気ディスクの状態で、工程(9) や工程(10)な
どの各種試験を行なうことになる。
【0047】一方、磁気ディスクの製造プロセスの途中
までを大径円板の状態で行ない、その後小径円板に抜き
取り、以降のプロセスは小径円板の状態で行なうことも
できる。この場合、図2における各工程のうち、どの段
階で小径円板に抜き取ってもよい。
【0048】ところで、磁気ヘッドが浮上した状態で情
報を記録/再生する磁気ディスクの場合は、磁気異方性
を上げるためにテクスチャー処理が行なわれる。テクス
チャー処理を要する小径磁気ディスクを製造する際は、
テクスチャー処理の前の段階までは、大径円板の状態で
行なう。したがって、図2(3) におけるNiPメッキ処
理、(4) のポリッシュおよび(5) の洗浄工程までは大径
円板の状態で行なう。そして、該大径円板から小径円板
を抜き取ってから、それぞれの小径円板について、テク
スチャー処理を行ない、その上から磁性膜や保護膜など
のスパッタを行ない、潤滑処理や各種試験などを行な
う。
【0049】図3は製造プロセスの第二実施例を示すフ
ローチャートであり、大径磁気ディスクの製造プロセス
のうち、工程(6) の磁性膜や保護膜の成膜、工程(8) の
浮上試験、工程(9)の電磁変換特性試験などの試験工程
を完了した後に、工程(10)で該大径円板から小径円板を
抜き取って複数枚の小径円板とし、工程(11)において、
それぞれの小径円板について、洗浄やバリ取り、面取り
などの後処理を行なった後、工程(12)において潤滑剤処
理を行なう。
【0050】これに対し、大径磁気ディスクの製造プロ
セスのうち、磁性膜や保護膜の成膜、潤滑剤処理、浮上
試験、電磁変換特性試験などの試験工程などもすべて完
了した後に、該大径円板から小径円板を抜き取って複数
枚の小径磁気ディスクとすることも可能である。
【0051】一方、例えば1.89インチ以下の小径の磁気
ディスクにおいては、板厚が非常に薄くなるので、ポリ
ッシュテープなどによる機械的なテクスチャー処理が困
難となる。また、磁気ヘッドが磁気ディスク面と接触
し、摺動して記録/再生を行なう装置、特に垂直磁気記
録式の装置では、磁気異方性はさほど問題とならない。
したがって、テクスチャー処理は必ずしも必要ではな
い。
【0052】このように、テクスチャー処理を要しない
小径磁気ディスクの場合は、浮上試験や電磁変換特性、
エラー試験などの各種試験の前に小径磁気ディスクに抜
き取り、各小径磁気ディスクの状態で各種試験を行なう
のも有効である。
【0053】このようにテクスチャー処理を行なわない
場合は、ポリッシュ加工の際の粗さで表面状態を制御す
るのが好ましい。また、下地Cr膜および磁性Co合金膜の
スパッタ工程において、ガス圧を高くすることで、磁気
異方性を抑制し、均質な磁性膜を得ることができる。な
お、磁性膜をスパッタする際のターゲットとしては、Co
CrTa系やCoCrPt系、CoNiCr系など、各種のターゲットを
使用できる。
【0054】大径の円板ないし磁気ディスクから小径の
円板ないし磁気ディスクを抜き取るには、各種の手法が
ある。例えば本発明の出願人が先に出願した特願平3−
272351号において提案したように、レーザ光を用いた
り、放電加工や高圧液体のジェットで切り抜いたり、プ
レスで打ち抜く、旋盤加工で切り離す、切断部を薬液で
エッチングする、小径円板の領域以外を溶剤で溶かし去
る、などの手法を適用できる。あるいは、これらの手法
の二つ以上を組み合わせて使用することもできる。ま
た、以上の各実施例において、各種の手法で小径円板に
抜き取った後に、必要に応じて洗浄や面取り加工などの
後処理を行なってもよい。
【0055】図4は大径円板10から小径磁気ディスク11
を抜き取るための割りつけを例示する図である。この大
径円板10は、8.25インチの円板であり、外径が210mm 、
内径が100mm である。この円板の場合、内外周差Wが55
mmなため、外径が55mmより小さな小径磁気ディスクを割
りつけることができる。
【0056】外径が55mmより小さな規格サイズの磁気デ
ィスクとしては、外径が48mmの1.89インチ磁気ディスク
がある。そして、1.89インチ磁気ディスクであれば、図
示のように36度ピッチで最大10枚まで割りつけることに
よって、1枚の8.25インチ磁気ディスクから1.89インチ
磁気ディスクが10枚得られることになる。
【0057】図5は大径円板と該大径円板を抜き取って
得られる小径磁気ディスクとの寸法関係を各種例示した
図である。例えば、の実施例では、板厚が0.889mm の
10.5インチの大径円板の状態で、磁気ディスクの製造プ
ロセスの途中まで、または全工程を完了した後、図1
(3) で説明した要領で、外径が65mm、内径が20mmの2.5
インチ磁気ディスクを抜き取ると、呼称2.5 インチの小
径磁気ディスクを10枚得ることができる。2.5 インチの
磁気ディスクの外径65mmよりも、10.5インチの大径磁気
ディスクの内外周差84mmが大きいので、このように10.5
インチの大径円板から2.5 インチの小径磁気ディスクを
抜き取ることができる。
【0058】図における最大の10.5インチの円板から、
最小の1.0 インチの小径磁気ディスクを抜き取ると、1
枚の大径円板から得られる小径磁気ディスクの枚数は増
えるが、大径円板の板厚は、外径が大きくなるほど厚く
なるため、板厚0.889mm の大径円板から1.0 インチの小
径円板を抜き取ると、1.0 インチ磁気ディスクの板厚で
ある0.381mm とはならず、板厚が厚過ぎることになる。
【0059】したがって、作製する小径磁気ディスクよ
り内外周差の大きい円板であれば、大径円板としては、
可能な限り小径の円板を用いるのが好ましい。すなわ
ち、のように、1.89インチの小径磁気ディスクを抜き
取るための大径円板としては、板厚が0.889mm の10.5イ
ンチ円板ではなく、板厚が0.635mm の8.25インチ円板を
用いて、10枚抜き取るのがよい。
【0060】同様にして、に示すように、1.6 インチ
の小径磁気ディスクは、板厚が0.508mm の5.25インチ円
板から6枚抜き取ることができる。に示すように、1.
3 インチの小径磁気ディスクであれば、板厚が0.508mm
、0.457mm あるいは0.381mmの5.25インチ円板から8枚
抜き取ることができる。に示すように、1.0 インチの
小径磁気ディスクであれば、板厚が0.381mm の3.5 イン
チ円板から8枚抜き取ることができる。
【0061】小径磁気ディスクを抜き取るための大径円
板としては、内外周差Wが小径磁気ディスクの直径より
大きければ、任意の寸法の円板を用いることができる
が、図5のように各種の規格があり、また各メーカは規
格品を製造するための既存の設備を有している。したが
って、大径円板として規格品サイズの円板を用いること
により、既存の規格品サイズの磁気ディスク製造設備を
そのまま有効利用できる。
【0062】また、大径円板として、外径は規格品サイ
ズで、板厚は作製する小径磁気ディスクの仕様どおりの
円板を用いることができる。この場合、当初から大径円
板の板厚は、目的とする小径磁気ディスクの仕様どおり
の板厚なため、例えば図5の1.0 インチの小径磁気デ
ィスクを、例えば5.25インチや8.25インチの大径円板か
ら抜き取ることができる。
【0063】その結果、大径円板の内側と外側におい
て、同心円状に2列の小径磁気ディスクを抜き取ること
ができるので、板厚が規格品と異なる大径円板を用意し
なければならないという欠点はあるが、1枚の大径円板
から、板厚が仕様どおりの小径磁気ディスクを、より多
く抜き取ることができる。
【0064】以上の各実施例において、非磁性の大径円
板としては、アルミニウム円板のほかにガラス基板を用
いることもできる。また磁性膜は、めっきによって成膜
することもできる。塗膜型の磁気ディスクの場合は、磁
性粉の配向処理の後に小径磁気ディスクに抜き取るのは
不適当なため、スピンコートの前まで大径円板の状態で
処理し、小径円板に抜き取ってから、磁性塗料を塗布す
ることは可能である。なお、本発明は、小径のフレキシ
ブルディスクの製造にも有効である。
【0065】
【発明の効果】請求項1のように大径の磁気ディスクを
製造完了した後に、あるいは請求項4のように大径の磁
気ディスクの製造工程のほとんどを完了した後に、小径
の磁気ディスクに抜き取る方法によると、大径の磁気デ
ィスクから小径の磁気ディスクを抜き取る設備のみを新
設するだけで足り、ほかは在来の大径磁気ディスクの製
造設備をそのまま利用可能なため、製造コストの低減、
納期の短縮を容易に実現できる。
【0066】また、請求項2、3のように、テクスチャ
ー処理の前の工程までは、大径磁気ディスクとしての製
造プロセスで行ない、または大径円板の状態で、磁性膜
や保護膜の成膜、浮上試験や電磁変換特性試験などを完
了させ、その後、小径円板に抜き取り、それぞれの小径
円板について、以後の磁気ディスク製造プロセスを遂行
する方法によると、在来の大径磁気ディスクの製造設備
をそのまま利用するのが適当な工程までは、既存の設備
をそのまま利用でき、その後の工程は、小径磁気ディス
ク専用の設備を使用することで、可能な範囲で大径磁気
ディスクの製造設備を有効利用でき、製造コストの低減
を実現できる。
【0067】請求項5のように、大径円板として規格品
サイズの円板を用いることにより、既存の規格品サイズ
の磁気ディスク製造設備をそのまま有効利用できる。こ
のとき、請求項6のように、各種規格品サイズの円板の
うち、外径が最小の円板を用いることにより、作製する
小径磁気ディスクの仕様と同等または最も近い板厚の小
径磁気ディスクを得ることができる。
【0068】また、請求項7のように、大径円板とし
て、外径は規格品サイズで、板厚は作製する小径磁気デ
ィスクの仕様どおりの円板を用いることにより、1枚の
大径円板から、板厚が仕様どおりの小径磁気ディスク
を、より多く抜き取ることができる。
【0069】以上のように本発明によれば、大径円板の
状態で磁気ディスク製造プロセスの全部または途中まで
を完了してから、小径円板に抜き取られるので、円板の
着脱などのハンドリングも、大径円板の状態で行なわれ
ることになり、ハンドリング回数の削減によって製造効
率も向上し、量産性に富んでいる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による小径磁気ディスクの製造方法の基
本構成を工程順に示す図である。
【図2】製造プロセスの第一実施例を示すフローチャー
トである。
【図3】製造プロセスの第二実施例を示すフローチャー
トである。
【図4】大径円板における小径円板の割りつけを例示す
る平面図である。
【図5】大径円板と該大径円板を抜き取って得られる小
径磁気ディスクとの寸法関係を各種例示した図である。
【図6】従来の小径磁気ディスクの製造方法を工程順に
示す断面図である。
【図7】薄膜型の小径磁気ディスクの従来の製造プロセ
スを工程順に示したフローチャートである。
【図8】スパッタ処理用の基板ホルダーの斜視図と連続
スパッタ処理装置の平面図である。
【符号の説明】
1 非磁性体からなるドーナツ状の小径基板 2 NiPメッキ下地層 3 テクスチャー溝 4 Cr層 5 磁性膜 6 保護膜(カーボン膜) 7 潤滑層 8 円板 h 基板ホルダー 9 キャリヤ 10 大径磁気ディスク用の非磁性円板 10a 大径磁気ディスク又は磁気ディスク製造プロセス
の途中の大径円板 W 大径円板における内外周差 11 小径磁気ディスク D 小径磁気ディスクの外径
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 秋葉 裕 山形県東根市大字東根元東根字大森5400 番2(番地なし) 株式会社山形富士通 内 (72)発明者 関 一幸 神奈川県川崎市中原区上小田中1015番地 富士通株式会社内 (56)参考文献 特開 平6−124441(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G11B 5/84 G11B 5/82

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 作製する小径磁気ディスクの外径より内
    外周差の大きい円板を用いて、大径の磁気ディスクを作
    製した後に、該大径磁気ディスクから小径磁気ディスク
    を抜き取って複数枚の小径磁気ディスクとすることを特
    徴とする小径磁気ディスクの製造方法。
  2. 【請求項2】 作製する小径磁気ディスクの外径より内
    外周差の大きい円板を用いて、磁気ディスクの製造プロ
    セスのうち、テクスチャー処理の前の段階までを完了し
    た後に、該大径円板から小径円板を抜き取って複数枚の
    小径円板とし、それぞれの小径円板について、テクスチ
    ャー処理以降の磁気ディスク製造プロセスを遂行するこ
    とを特徴とする小径磁気ディスクの製造方法。
  3. 【請求項3】 作製する小径磁気ディスクの外径より内
    外周差の大きい円板を用いて、磁性膜や保護膜の成膜、
    浮上試験や電磁変換特性試験などの試験工程を完了した
    後に、該大径円板から小径円板を抜き取って複数枚の小
    径円板とし、それぞれの小径円板について、洗浄および
    潤滑剤処理を行なうことを特徴とする小径磁気ディスク
    の製造方法。
  4. 【請求項4】 作製する小径磁気ディスクの外径より内
    外周差の大きい円板を用いて、磁気ディスクの製造プロ
    セスのうち、磁性膜や保護膜の成膜、潤滑剤処理、浮上
    試験、電磁変換特性試験などのすべての工程を完了した
    後に、該大径円板から小径円板を抜き取って複数枚の小
    径磁気ディスクとすることを特徴とする小径磁気ディス
    クの製造方法。
  5. 【請求項5】 前記の作製する小径磁気ディスクの外径
    より内外周差の大きい円板が、規格品サイズであること
    を特徴とする請求項1、2、3または4記載の小径磁気
    ディスクの製造方法。
  6. 【請求項6】 前記の作製する小径磁気ディスクの外径
    より内外周差の大きい円板(10)が、外径が最小の規格品
    サイズであることを特徴とする請求項5記載の小径磁気
    ディスクの製造方法。
  7. 【請求項7】 前記の作製する小径磁気ディスクの外径
    より内外周差の大きい円板(10)が、外径は規格品サイズ
    で、板厚は作製する小径磁気ディスクの仕様どおりの円
    板であることを特徴とする請求項5記載の小径磁気ディ
    スクの製造方法。
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