JP3075869B2 - パッド材の製造方法 - Google Patents

パッド材の製造方法

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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は紳士服、婦人服などの製
品の外形を整えたりするために使われる肩パッド材ある
いは人体の局部を保護するために用いられるブラジャー
パッド等の衣料資材用パッド材の製造法に関するもので
ある。
【0002】
【従来の技術】従来衣料資材用パッド材として、次の3
つのものが製造され、市場に供されてきた。最も一般的
には、その弾力性故に用いられてきたポリウレタンがあ
る。この場合には、大きなウレタンブロックからスライ
ス、削り出し等の工程を経て、わん曲したパッド材が一
体構造体として作り出されるが周知の如くウレタン固有
の黄変の問題、あるいは耐光劣化の問題、更にはドライ
クリーニング耐久性の問題、およびこれもウレタン固有
の通気性のなさの故にムレ感を伴う等々の問題があり長
い間強く改善が望まれてきた。
【0003】特に黄変の問題は深刻で、このためにウレ
タンパッドの実用に当っては黄変による変色を外部から
見えないようにするために何層にも布で覆って隠して用
いるのが実情である。
【0004】また、繊維を用いた衣料資材用パッドとし
ては所謂不織布の薄いシートを、予め大きさの異なる何
枚ものシートを所定の大きさの型で打ち抜いたものを用
意しておき、これを4〜8層にも積層してわん曲形状を
形成して相互を接着剤により互いに接着すると同時に熱
成型することによってパッド材を得る方法がある。
【0005】しかしこの方法では生産工程が極めて複雑
で長く、生産効率が低いのみならず、得られたパッド材
自身も洗濯等による接着剤の脱落による形状変化が大き
く型保持性に大きな問題を有している。
【0006】また更に所謂バインダー繊維を混綿してカ
ードウェッブを積層して、熱成型時該バインダー繊維を
溶融して接着させパッド材を得る方法も検討されたが、
この場合わん曲した構造の外周部のより圧縮された部分
が中央部の軽度に圧縮された部分に比し極度に硬さが増
して、使用に供し得ないという問題があり又熱成型時に
成型金型に融着するために作業性が悪く実用化には至っ
ていない。
【0007】
【発明の目的】本発明はこれら従来の問題点を解消した
高弾力、高風合、かつ耐久性に優れると共に通気性にも
優れた合理的パッド材の製造法を提供することを目的と
したものである。
【0008】
【発明の構成】ここに本発明は、 (請求項1)非弾性ポリエステル系捲縮短繊維集合体を
マトリックスとし、該短繊維を構成するポリマーの融点
より低い融点を有するバインダー繊維からなる繊維集合
体のバインダー繊維を加熱溶融してパッド材を製造する
に際し、非粘着性支持体を介して成型する事を特徴とす
るパッド材の製造方法。 (請求項2)非粘着性支持体がフルオロカーボン系材質
よりなる請求項1に記載のパッド材の製造方法。 (請求項3)非粘着性支持体が開孔部を有する請求項1
または2に記載のパッド材の製造方法。 である。
【0009】本発明において、マトリックスを構成する
非弾性ポリエステル系捲縮短繊維としては、通常のポリ
エチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレー
ト、ポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリテトラメ
チレンテレフタレート、ポリ―1,4―ジメチルシクロ
ヘキサンテレフタレート、ポリピバロラクトンまたはこ
れらの共重合エステルからなる短繊維ないしそれら繊維
の混綿体、または上記のポリマー成分のうちの2種以上
からなる複合繊維等である。短繊維の断面形状は、円
形、偏平、異型または中空のいずれであってもよい。
【0010】またこの場合の捲縮は顕在性の捲縮を持つ
短繊維が好ましく、この顕在性捲縮繊維は製造時のクリ
ンパー等による機械的捲縮付与、異方冷却等によるスパ
イラルクリンプ付与、サイドバイサイド型あるいは偏芯
シースコア型複合繊維の加熱等によって得ることができ
る。所謂潜在性捲縮の繊維を用いると、風合が弾力感に
乏しく、また寸法変化が大きく成型性に欠ける欠点があ
る。また単糸繊度についても0.5〜10デニールが好
ましく、特に0.8〜6デニールが推奨される。0.5
デニール以下の場合余りに緻密構造となって適度な弾力
感を得ることができず、また10デニールより太くなる
と風合が粗雑となり良好な感触性を得ることができなく
なる。
【0011】一方、本発明で重要な役割を果す熱固着点
を形成するために用いられる弾性複合繊維は、熱可塑性
エラストマーと非弾性ポリエステルとで形成される。そ
の際、前者が繊維表面の少くとも1/2を占めるものが
好ましい。重量割合でいえば、前者と後者とが複合比率
で30/70〜70/30の範囲にあるのが適当であ
る。弾性複合繊維の形態としては、サイド・バイ・サイ
ド、シース・コア型のいずれであってもよいが、好まし
いのは後者である。このシース・コア型においては、勿
論非弾性ポリエステルがコアとなるが、このコアは同心
円状あるいは偏心状にあってもよい。特に偏心型のもの
にあっては、コイル状弾性捲縮が発現するので、より好
ましい。
【0012】熱可塑性エラストマーとしては、非弾性ポ
リエステル系捲縮短繊維集合体マトリックスを構成する
ポリマーの融点より低い繊維なら特にこだわらないがポ
リウレタン系エラストマーやポリエステル系エラストマ
ーが好ましい。
【0013】ポリウレタン系エラストマーとしては、分
子量が500〜6000程度の低融点ポリオール、例え
ばジヒドロキシポリエーテル、ジヒドロキシポリエステ
ル、ジヒドロキシポリカーボネート、ジヒドロキシポリ
エステルアミド等と、分子量500以下の有機ジイソシ
アネート、例えばp,p′―ジフェニルメタンジイソシ
アネート、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイ
ソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネー
ト、キシリレンジイソシアネート、2,6―ジイソシア
ネートメチルカプロエート、ヘキサメチレンジイソシア
ネート等と、分子量500以下の鎖伸長剤、例えばグリ
コール、アミノアルコールあるいはトリオールとの反応
により得られるポリマーである。これらのポリマーのう
ち、特に好ましいものはポリオールとしてポリテトラメ
チレングリコール、またはポリ―ε―カプロラクトンあ
るいはポリブチレンアジペートを用いたポリウレタンで
ある。この場合、有機ジイソシアネートとしてはp,
p′―ジフェニルメタンジイソシアネートが好適であ
る。また、鎖伸張剤としては、p,p′―ビスヒドロキ
シエトキシベンゼンおよび1,4―ブタンジオールが好
適である。
【0014】一方、ポリエステル系エラストマーとして
は、熱可塑性ポリエステルをハードセグメントとし、ポ
リ(アルキレンオキシド)グリコールをソフトセグメン
トとして共重合してなるポリエーテルエステルブロック
共重合体、より具体的にはテレフタル酸、イソフタル
酸、フタル酸、ナフタレン―2,6―ジカルボン酸、ナ
フタレン―2,7―ジカルボン酸、ジフェニル―4,
4′―ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン
酸、3―スルホイソフタル酸ナトリウム等の芳香族ジカ
ルボン酸、1,4―シクロヘキサンジカルボン酸等の脂
環族ジカルボン酸、コハク酸、シュウ酸、アジピン酸、
セバシン酸、ドデカンジ酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカ
ルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体などから
選ばれたジカルボン酸の少くとも1種と、1,4―ブタ
ンジオール、エチレングリコール、トリメチレングリコ
ール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリ
コール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリ
コール、デカメチレングリコール等の脂肪族ジオール、
あるいは1,1―シクロヘキサンジメタノール、1,4
―シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメ
タノール等の脂環族ジオール、またはこれらのエステル
形成性誘導体などから選ばれたジオール成分の少くとも
1種、および平均分子量が約400〜5000程度の、
ポリエチレングリコール、ポリ(1,2―および1,3
―プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチ
レンオキシド)グリコール、エチレンオキシドとプロピ
レンオキシドとの共重合体、エチレンオキシドとテトラ
ヒドロフランとの共重合体等のポリ(アルキレンオキシ
ド)グリコールのうち少くとも1種から構成される三元
共重合体である。
【0015】しかしながら、非弾性ポリエステル系捲縮
短繊維との接着性や温度特性、強度の面からすれば、ポ
リブチレン系テレフタレートをハードセグメントとし、
ポリオキシブチレングリコールをソフトセグメントとす
るブロック共重合ポリエーテルポリエステルが好まし
い。この場合、ハードセグメントを構成するポリエステ
ル部分は、主たる酸成分がテレフタル酸、主たるジオー
ル成分がブチレングリコール成分であるポリブチレンテ
レフタレートである。勿論、この酸成分の一部(通常3
0モル%以下)は他のジカルボン酸成分やオキシカルボ
ン酸成分で置換されていてもよく、同様にグリコール成
分の一部(通常30モル%以下)はブチレングリコール
成分以外のジオキシ成分で置換されていてもよい。
【0016】また、ソフトセグメントを構成するポリエ
ーテル部分は、ブチレングリコール以外のジオキシ成分
で置換されたポリエーテルであってもよい。なお、ポリ
マー中には、各種安定剤、紫外線吸収剤、増粘分岐剤、
艶消剤、着色剤、その他各種の改良剤等も必要に応じて
配合されていてもよい。
【0017】次に本発明で用いる弾性複合繊維の繊維集
合体における重量比率は10〜50%が好ましい。該重
量比が10%未満である場合には、十分な熱固着点の数
が得られず耐久性に問題がある。逆に50%を越える重
量比である場合には熱固着点の数が増えすぎ粗硬なパッ
ド材となり実用上問題となる。また本発明により得られ
るパッド材の密度であるがわん曲した構造の最大厚みの
部分の繊維密度は0.01〜0.035g/cm3 であ
る。密度が0.01未満の場合は風合がソフトであるが
寸法安定性型保持の点で問題となる。逆に密度が0.0
35g/cm3 を越えると粗硬な硬いパッド材しか得られ
ない。
【0018】次に本発明を図面により更に説明を加え
る。
【0019】図1は従来用いられているウレタンによる
パッド材を示す。(1)はウレタンパッド材であり、わ
ん曲した構造体が一体で構成されているが、ウレタンの
欠点である黄変を見えなくするために布帛(2)による
被覆が必須である。図2は不織布のシートを何層にも積
層してわん曲した構造体を形成した例を示すもので、
(3―1)〜(3―5)で示される大きさの異なる不織
布シート各層によってわん曲した構造が形成されてい
る。各層間は例えば樹脂による接着剤をスプレーによっ
て付着させたり、あるいはバインダー繊維等による接着
層を設けて熱成型時に固着させてもよい。場合によって
は、更に手間はかかるが縫製によって一体化することも
可能である。
【0020】図3は、本発明により得られる肩パッド材
(4)およびブラジャーパッド材(5)を示す。何れも
繊維構造体でありながら単一の構造体からなり(5)ブ
ラパッド材はやや(4)の肩パッド材に比してわん曲構
造が深いことを示している。図中(B)はわん曲構造の
最も厚い部分(圧縮の小さい部分)、また(A)はわん
曲構造の外周部で最も圧縮程度の強い、従って最も薄い
部分を示している。バッド材として(A)部と(B)部
との硬さ、弾力感は基本的に等しく構成されることが風
合上重要である。従来のウレタンの場合は所謂スライス
加工とか削り出し加工によって予めわん曲した構造体を
機械的に削り出し工程を経て準備し、熱成型を行った
り、あるいは図2の不織布の積層の場合は、厚い部分と
薄い部分とを積層する枚数によって調整すればよかった
ので、かかる中央部と外周部との硬度の変化は問題とな
らなかった。つまり特に図2の繊維構造体としての不織
布の積層の場合は、工程の複雑さをもってこの欠点をカ
バーしていたということができる。図3は本発明により
得られるパッド材である。繊維構造体の単一構造体で形
成されながら(A)と(B)との弾性反撥力比が、従来
は考えられなかった程小さい弾力比で構成されているの
が最大の特徴である。
【0021】次に、本発明のパッド材を得るための方法
を図4によって説明する。図4において(6)は混綿さ
れた原綿を示し、Cは例えば非弾性ポリエステル捲縮短
繊維を示し、Dは熱可塑性エラストマーをその一成分と
する複合繊維である。
【0022】これらの混綿は(7)のカード工程を経
て、(8)のクロスレイヤーにて必要な目付量に積層し
シートとなった後、本発明では一旦(9)のニードルパ
ンチおよび/またはウォーターニードリング等の方法に
よって機械的交絡を加えられ、密度が0.009〜0.
030g/cm3 のシートとする。続いて、(10)の熱
処理機によってEm(熱可塑性エラストマーの融点)〜
Tm(非弾性ポリエステルの融点)−30℃との間で選
ばれた温度でプレ融着をされ(11)の巻取機にて巻き
取る。別の工程にて図5に示す熱成型に供するためのパ
ッド材を得るにはシートの打ち抜き等によって準備され
るか、場合によっては熱処理機(10)を出たシートを
連続して所定の形状に打ち抜いてもよい。得られた打ち
抜かれたシートは図5に示す熱成型工程に通され、ワン
ショットにて熱成型して図3のパッド材を得るか、ある
いは特に厚みのある物(B部が10mm以上)の場合に
は、一旦図6の削り出し工程あるいは面取り工程によっ
てラフな異肉厚構造物を準備したのち熱成型にて最終的
に仕上げる。
【0023】
【作用効果】ここで、打ち抜かれたシートを直接熱成型
金枠に投入し成型した場合、加熱金枠にシートを構成す
るバインダー繊維に帰因する。融着現象が生じ、それを
無理に取り出すと表面毛羽を生じ又変形型崩れがおこる
という問題がある。
【0024】本発明の非粘着性支持体を介した熱成型方
法を用いると表面品位の優れた型崩れのない優れたパッ
ド材が得られる。
【0025】以下、実施例により本発明を具体的に説明
する。
【0026】
【実施例1〜4、比較例1】テレフタル酸とイソフタル
酸とを80/20(モル%)で混合した酸成分とブチレ
ングリコールとを重合して得られたポリブチレン系テレ
フタレート38%(重量)を更にポリブチレングリコー
ル(分子量2000)62%(重量)と加熱反応させ、
ブロック共重合ポリエーテルポリエステルエラストマー
を得た。この熱可塑性エラストマーの固有粘度は1.
0、融点155℃、フイルムでの破断伸度は1500
%、300%、伸長応力は0.3kg/mm2 、300%伸
長回復率は75%であった。この熱可塑性エラストマー
をシースに、ポリブチレンテレフタレートをコアに、コ
ア/シースの重量比で50/50になるように常法によ
り紡糸した。なおこの複合繊維は偏心シース・コア型複
合繊維である。この繊維を2倍に延伸し64mmに切断し
た後95℃の温水で熱処理し、低収縮化と捲縮発現をさ
せ、乾燥後油剤を付与した。ここで得られた弾性複合繊
維は6デニールであった。該弾性複合繊維30%(重
量)と常法により得られた単繊維の太さが3デニール、
繊維長が51mm、捲縮数が12ケ/インチの丸断面ポリ
エチレンテレフタレート短繊維(ポリエチレンテレフタ
レートの融点259℃)70%(重量)とをカードによ
り混綿しウェッブを作成し、次いでフェラー社製ニード
ルパンチング機を用い36番レギュラーバーブで針深度
10mmにて40回/cm2 ニードリングを施し、更に17
5℃にて無加圧状態で60秒間乾熱処理(プレ融着)を
施し、目付350g/m2 、厚み15mm、密度0.02
3g/cm3 の繊維集合体を得た。該繊維集合体を熱成型
パッド金枠に投入し支持体を介して190℃にて20秒
間熱成型を施しわん曲した衣料用パッド材を作成した。
比較例として支持体を介さずに同様の条件でパッド材を
得た。
【0027】得られたパッド材の風合と表面品位、及び
金型への融着の発生の有無を表1に示す。ここで○は良
好、△はやや不良、×は不良を表わす。
【0028】
【表1】
【0029】表1から明らかなように、本発明によれ
ば、風合や表面品位の優れたパッド材が、金型への融着
など作業性を損なうことなく得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来のポリウレタンパッド材
【図2】従来の不織布シート積層パッド材
【図3】本発明のパッド材 (4)肩パッド材 (5)プラパッド材
【図4】本発明のパッド材の製造工程図
【図5】熱成形機の側断面図
【図6】熱成形工程図
【符号の説明】 (1) ポリウレタン (2) 布帛 (3―1)〜(3―5) 不織布シート A パッド材外周部 B パッド材の最も厚い部分 (6) 混綿された原綿 (7) カード (8) クロスレイヤー (9) ニードルパンチ (10) 熱処理機 (11) 巻取機 (1′) 打ち抜き後のパッド材
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) D04H 1/00 - 1/74

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 非弾性ポリエステル系捲縮短繊維をマト
    リックスとし、該短繊維を構成するポリマーの融点より
    低い融点を有するバインダー繊維からなる繊維集合体の
    バインダー繊維を加熱溶融してパット材を製造するに際
    し、非粘着性支持体を介して成型することを特徴とする
    パッド材の製造方法。
  2. 【請求項2】 非粘着性支持体がフルオロカーボン系材
    質よりなる請求項1に記載のパッド材の製造方法。
  3. 【請求項3】 非粘着性支持体が開口部を有する請求項
    1または2に記載のパッド材の製造方法。
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