JP3071068B2 - ポルフィラン分解酵素、ネオアガロオリゴ糖およびそれらの製造方法 - Google Patents

ポルフィラン分解酵素、ネオアガロオリゴ糖およびそれらの製造方法

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JP3071068B2
JP3071068B2 JP5160931A JP16093193A JP3071068B2 JP 3071068 B2 JP3071068 B2 JP 3071068B2 JP 5160931 A JP5160931 A JP 5160931A JP 16093193 A JP16093193 A JP 16093193A JP 3071068 B2 JP3071068 B2 JP 3071068B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はポルフィランに作用して
ネオアガロオリゴ糖およびアガロメガロ糖を生産するポ
ルフィラン分解酵素および該ポルフィラン分解酵素の製
造方法に関し、さらに上記分解酵素を用いてポルフィラ
ンを分解して得られる新規なネオアガロオリゴ糖および
その製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、オリゴ糖類は、消化性の低い低カ
ロリー甘味料としての用途ばかりでなく、保湿性、水分
活性調節性、タンパク質の保護・安定化、デンプンの老
化抑制などの優れた物性をもつものであることがわか
り、食品産業上有用な素材として注目を集めている。ま
た、オリゴ糖類には、難う蝕性・抗う蝕性、静菌作用、
整腸作用、血糖上昇抑制作用など有用な生理作用もあ
り、機能性食品素材としても注目されるようになった。
【0003】オリゴ糖とは単糖類が2〜10個位化学結
合してできた糖類の総称である。特に最近では、微生物
起源の種々の加水分解酵素や糖転移酵素により、澱粉、
しょ糖、乳糖、キシロース、アガロース等に関連した新
しいオリゴ糖の開発が進められている。
【0004】オリゴ糖の製造方法としては、前述のよう
に糖転移酵素を用いて合成する方法や糖質分解酵素を用
いて多糖類を分解する方法があるが、前者の方法が多用
されている。一方、海藻類は最近食品産業において、乳
化剤、ゲル化剤、増粘剤等の原料として用いられている
が、オリゴ糖を製造するための多糖類原材料としても注
目されており、例えば寒天についてもその分解酵素の研
究がなされている。寒天分解能を有する微生物として
は、シュードモナス(Pseudomonas )属、ビブリオ(Vi
brio)属、フラボバクテリウム(Flavobacterium)属、
サイトファーガ(Cytophaga)属、アクロモバクター(Ac
hromobacter)属、コリネバクテリウム(Corynebacteriu
m )属等に属する微生物が報告されている。
【0005】ところで、あまのり属の食物繊維には、マ
ンナン、キシラン、ポルフィラン等の多糖類があるが、
このうちではポルフィランが最も多くて主成分となって
いる。ポルフィランはガラクトース、3,6−アンヒド
ロガラクトース、6−O−メチルガラクトースおよび6
−O−硫酸ガラクトースからなり、構造上は寒天に類似
しているが、ゲル化能をもたない硫酸多糖類である。ポ
ルフィランに関する研究は構造に関するものがいくつか
なされているが、利用に関する研究はほとんどなされて
いない。また、ポルフィランに由来するオリゴ糖に関し
てはまったく未知の分野である。なお、寒天分解能をも
つ酵素は寒天ばかりでなくポルフィランをも分解するこ
とが知られているが、寒天を分解せずポルフィランのみ
を分解する酵素は現在まだ知られていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記状況に鑑
みてなされたもので、海苔の多糖類であるポルフィラン
を分解してポルフィラン由来の新規で有用なオリゴ糖を
製造することを目的とするものであり、かかるポルフィ
ラン分解能を有する酵素を提供することを目的とし、さ
らにかかる酵素の製造方法を提供することを目的とする
ものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】すなわち本発明は、下記
の理化学的性質 (1)酵素作用:ポルフィランを加水分解し、重合度2
および4を主体とするネオアガロオリゴ糖を生成する反
応を触媒する。 (2)基質特異性:ポルフィランに対し高い特異性を示
し、あまのり属以外の紅藻類や褐藻類に含有される多糖
類に対しては特異性が低い。(3)(a)ポルフィラン分解に対する至適pHが6.
0、至適温度が60℃、pH安定域が6.0〜8.0で
あり、分子量が約28,000、等電点がpH5.2、
ポルフィランに対するKm値が0.02%である。また
は、(b)ポルフィラン分解に対する至適pHが5.
0、至適温度が50℃、pH安定域が5.0〜9.5で
あり、分子量が約42,000、等電点がpH6.8、
ポルフィランに対するKm値が0.098%である 。を
有するポルフィラン分解酵素に関する。
【0008】また、本発明は、シュードモナス(Pseudo
monas )属に属するポルフィラン分解能を有する微生物
を培養し、その培養物からポルフィラン分解酵素を採取
することを特徴とする上記ポルフィラン分解酵素の製造
方法に関する。
【0009】また、本発明は、あまのり属海藻類に含ま
れるポルフィランを前記酵素を用いて加水分解して得ら
れる重合度およびを主体とする新規なネオアガロオ
リゴ糖に関し、さらにその製造方法に関する。
【0010】本発明のネオアガロオリゴ糖は、鶏卵しょ
う尿膜法で、鶏卵しょう尿膜における血管新生を阻害す
る活性を示す。また、本発明のネオアガロオリゴ糖の製
造方法は、あまのり属海藻類に含まれるポルフィランま
たはポルフィラン含有物を、前記酵素を用いて、酸性ま
たは弱酸性の条件下で加水分解することを特徴とする。
【0011】本発明に用いられるシュードモナス属に属
するポルフィラン分解能を有する微生物としては、シュ
ードモナス(Pseudomonas )B−2411(生技研寄託
P−13637号)が挙げられる。該菌株の透過型電子
顕微鏡写真を図1に示す。染色は酢酸ウランで行った。
【0012】次に上記菌株の性状を示す。 (a) 形態 (1) 細胞の形および大きさ 捍菌、幅 0.5〜 0.8μm、長さ 0.8〜3μm (2) 細胞の多形性の有無 鞭毛が脱落しやすい (3) 運動性の有無、鞭毛の着性状態 運動性ほとんどなし、極鞭毛 (4) 胞子の有無 なし (5) グラム染色性 陰性 (6) 抗酸性 なし
【0013】(b) 各培地における生育状態 (1) 肉汁寒天平板培養 大きさ: 直径4〜4.5mm 生育程度: 中程度 形: 円形または楕円 隆起: 丘状 周辺の形状: 正縁 表面の形状: なめらか 色: 乳白色 光沢: あり 性質: 粘性 (2) 肉汁寒天斜面培養 形状: 糸状 生育の程度: 中程度 隆起: 丘状 臭気: なし 表面の形状: なめらか
【0014】(3) 肉汁液体培養 表面発育の有無: 菌環の形成あり 濁度: 培養2日目から白濁 沈殿: なし ガス産生: なし 指示薬の色調変化: 中性(BTBで緑青色) 臭気: なし (4) 肉汁ゼラチン穿刺培養 生育の状態: 上部5mmにのみ生育し、培地内は繊毛
状 ゼラチンの液化: なし (5) リトマス・ミルク培地 反応: なし(青紫色) 凝固: なし
【0015】(c) 生理学的性質 (1) 硝酸塩の還元: なし (2) 脱窒反応: なし (3) MRテスト: 陰性 (4) VPテスト: 陰性 (5) インドールの生成: なし (6) 硫化水素の生成: なし (7) デンプンの加水分解: なし (8) クエン酸の利用: なし (9) 無機窒素源の利用(硝酸塩): あり (アンモニウム塩): あり (10)色素の生成: なし (11)ウレアーゼ: なし (12)オキシダーゼ: 陰性 (13)カタラーゼ: 陽性 (14)生育の範囲(pH): 初発pH 4.5〜 7.5で生
育、pH4で生育しない (温度): 35℃以上で生育せず (15)酸素に対する態度: 好気性 (16)O−Fテスト: 分解せず
【0016】(17)糖類からの酸およびガス生成の有無 L−アラビノース: なし D−キシロース: なし D−グルコース: なし D−マンノース: なし D−フラクトース: なし D−ガラクトース: なし 麦芽糖: なし ショ糖: なし 乳糖: なし トレハロース: なし D−ソルビット: なし イノシット: なし グリセリン: なし デンプン: なし
【0017】(d) 新種の特徴を示す諸性質 (1) 糖類の分解生成物: ポルフィランから糖、
を主とするオリゴ糖を生成する (2) アルギニンの分解: なし (3) 温度抵抗性: 85℃、10分もしくは80℃、3
0分で死滅 (4) 塩化ナトリウムの耐性: 0〜3%で生育(ペプト
ン水) (5) リパーゼ: Tween 80を分解(1%Tween 80−ペプ
トン水) (6) 菌体中のDNAのG+C含量: 62.7 mol%(高速
液体クロマトグラフ法)
【0018】上記した諸特性から該菌株はシュードモナ
ス属に属する菌種であると考えられる。生理学的性質は
シュードモナス・マリナに近似しているが、NaClを
要求せず、ツィーン80を分解する等異なった性質を示
しているので、シュードモナス属の新菌種とするのが妥
当である。なお、シュードモナス属に属する菌種で寒天
分解能を有する菌種は今までにいくつか報告されている
が、これらの菌種の糖の発酵能、オキシダーゼ生成、硝
酸塩還元能などの性質は本発明の上記菌株の性質と異な
っており、本発明の菌株はこれらとは異なるものであ
る。なお、上記菌株の分類学的地位の決定は、「バージ
ェーズ・マニュアル・オブ・システマティク・バイオロ
ジイ」第1巻(ウィリアムズ・アンド・ウィルキンス、
USA、1984)に基づく。
【0019】次に本発明の酵素の製造方法について説明
する。菌株を培養する培地は液状でも固体状でもよい。
通常は液体培地使用する方が有利である。工業的には通
気攪拌培養がよい。培地中には上記菌株の利用し得る炭
素源、窒素源、その他菌株の生育および酵素生成に必要
な諸成分を含有させる必要がある。
【0020】炭素源としては、菌株の生育に澱粉、デキ
ストリン、しょ糖、乳糖、麦芽糖、ぶどう糖、ガラクト
ース、果糖、廃糖蜜等が利用できるが、酵素生成にはポ
ルフィランあるいはポルフィランを含有する粗原料を添
加しなければならない。窒素源としては、アンモニウム
塩類、硝酸塩類、コーン・スティープリカー、ペプト
ン、肉エキス、カザミノ酸、大豆粉、小麦フスマ、尿素
などの無機または有機の窒素含有物が用いられる。その
他、酵母エキス、乾燥酵母などは酵素生成量の増加に有
効である。無機塩類としては、マグネシウム塩、カルシ
ウム塩、ナトリウム塩、燐酸塩、鉄塩、マンガン塩、亜
鉛塩などが用いられ、特にマグネシウム塩は重要であ
る。また、ビタミン類、生長促進物質などの栄養素を適
宜添加してもよい。
【0021】好ましい培地組成の例として、例えば、ペ
プトン、酵母エキス、ガラクトース、ポルフィラン、燐
酸水素二カリウム、塩化ナトリウム、硫酸マグネシウ
ム、塩化カルシウムの組合わせを挙げることができる。
【0022】培養温度は約20〜30℃が好適であり、
培養pHは4〜8が好適である。好気条件下で2〜5日
間培養する。培養の結果培地中に上記酵素が生産される
ので、培養液から濾過あるいは遠心分離で菌体を除去
し、酵素液を得る。酵素液をさらに有機溶剤沈殿、塩
析、減圧濃縮、イオン交換体による吸着・脱離、ゲル分
画などの酵素精製法の常法にしたがって処理すること
で、酵素の純化・精製をすることができる。
【0023】
【作用】本発明の酵素はあまのり属の海藻類の成分であ
るポルフィランに特異的に作用してこれを加水分解し、
ネオアガロオリゴ糖を生成する。
【0024】本発明の酵素の諸性質について表1および
図2〜6に示す。すなわち、これらの表および図面につ
いては実施例においてさらに言及するが、ここでこれら
について説明すると、図2は本酵素の酵素活性におよぼ
すpHの影響を示すもので、実線は還元糖量測定による
酵素活性(mU/ml)を示し、破線は粘度低下率測定
による酵素活性(U/ml)を示す。図中、pH3〜6
域は100mM酢酸ナトリウム緩衝液、pH5.5〜8
域は60mMリン酸緩衝液、pH7.5〜9域は50m
Mトリス塩酸緩衝液、pH8.5〜10域は100mM
グリシン−水酸化ナトリウム緩衝液による。
【0025】図3は本酵素の酵素活性におよぼす温度の
影響を示すもので、図2同様、実線は還元糖量測定によ
る酵素活性を示し、破線は粘度低下率測定による酵素活
性を示す(以下、図4および図5において同じ)。図4
は本酵素の酵素活性のpH安定性を示す図であり、図5
は本酵素の熱安定性を示す図である。
【0026】また、本発明の酵素をポルフィランに作用
させて生成したオリゴ糖およびメガロ糖をTLCで検出
し、経時的に配列した図を図7に示す。図7において、
(A)はCM−IIbaa画分の酵素の場合、(B)はC
M−IIIdaa画分の酵素の場合である。図中、S1
D−ガラクトース、S2 はネオアガロビオース(DP
2)+ネオアガロテトラオース(DP4)+ネオアガロ
ヘキサオース(DP6)、S3 はシュードモナス・アト
ランティカ(Pseudomonas atlantica)由来の酵素による
ポルフィラン分解物である。
【0027】本発明で得られるネオアガロオリゴ糖は、
ポルフィランの有する血清コレステロール低下、血圧低
下、免疫賦活、抗変異原性、血管新生抑制などの活性が
さらに強化されており、特に血管新生抑制効果が著し
い。また、水溶性で粘性が低いので、食品素材としても
ポルフィランより扱いやすい。なお、上記したように酵
素活性は、ポルフィランを分解することで生ずる還元糖
の増加と粘性の低下の両方を測定して決めたが、それら
の測定方法について次に示す。
【0028】すなわち、還元糖測定はソモギ・ネルソン
法に準拠し、ポルフィラン溶液を該酵素で分解した反応
液を試料溶液とし、この1mlにA液(硫酸銅五水和物
2g、酒石酸カリウムナトリウム 6g、無水炭酸ナ
トリウム 12g、無水硫酸ナトリウム 10gを蒸留
水に溶解し、500mlに定容したもの)を1ml加
え、20分間沸騰後5分間水冷し、B液(モリブデン酸
アンモニウム 25g、硫酸21ml、ヒ酸二ナトリウ
ム 3gを蒸留水に溶解し、500mlに定容したも
の)を1ml加え、よく混和した後、蒸留水4mlを加
え、660nmの吸光度を測定する。得られた数値を、
D−ガラクトースを標準品として作成した標準線から読
み取り、ガラクトース換算値として還元糖量を求めた。
【0029】粘度低下による測定は、試料液 5.5m
lをオスワルド粘度計(No.4)を用いて、37℃に
おける流下速度を測定し、次式より粘度低下率(A%)
として求めた。 A%=(Ta−Tt)×100/Ta−To Ta:ポルフィラン液と酵素液の混合直後の流下時間
(秒) Tt:上記混合液の反応t時間後の流下時間(秒) To:水の流下時間(秒)
【0030】
【実施例】
実施例1. ポルフィラン 0.1% ペプトン 0.1% K2 HPO4 1.0% NaCl 1.0% MgSO4 ・7H2 O 0.05% からなる培地を初発pH7に調整し、300ml容三角
フラスコに100ml分注し、121℃で20分間加圧
加熱殺菌する。この培地に菌株B−2411を1白金耳
植菌し、25℃にて4日間旋回振とう培養(200rp
m)した。
【0031】一方、 ポルフィラン 0.5% ペプトン 0.42% 酵母エキス 0.01% NaCl 0.1% MgSO4 ・7H2 O 0.25% CaCl2 ・2H2 O 0.01% からなる培地を初発pH7に調整し、100ml容三角
フラスコに20ml入れ、121℃で20分間殺菌す
る。これに上記の培養液を200μl植菌して、25℃
で24時間、200rpmで旋回振とう培養した。培養
液を20,000×gで10分間遠心して得られた上清
の酵素活性は、粘度低下法で3.24U/ml、還元糖
測定法で96mU/mlであった。
【0032】実施例2. 海苔粉末(乾海苔を粉砕機で砕き、約径0.25mm の大きさにしたもの) 2% D−グルコース 0.1% ペプトン 0.1% 酵母エキス 0.05% NaCl 0.1% MgSO4 ・7H2 O 0.25% CaCl2 ・2H2 O 0.01% からなる培地を初発pH6に調整し、これを300ml
容三角フラスコに30ml分注し、121℃で20分間
加圧加熱殺菌する。これに、実施例1と同様にして準備
した培養液を200μl植菌して、28℃で2日間、2
00rpmで旋回振とう培養した。培養液を20,00
0×gで10分間遠心して得られた上清の酵素活性は、
還元糖測定法で199mU/mlであった。
【0033】実施例3.実施例2と同様の培地を、30
l jar fermentorに15l分注し、スチ
ーム殺菌する。これに実施例2と同様にして得た培養液
を150ml植菌し、28℃、400rpm、通気量
15l/minの条件で、10%塩酸で培地pHを7.
5に調整しながら60時間培養した。培養液を濾過助材
(セライト)を用いて濾過し、還元糖測定法による活性
が322mU/mlの濾液(粗酵素液)を11,880
ml得た。
【0034】粗酵素液をザルトコンモジュール膜(限界
分子量10,000)で800mlに濃縮した後、硫安
を用いて30−70%飽和画分を分取した。該画分をセ
ルロース透析膜で、40mM酢酸緩衝液(pH5.5)
を外液として12時間透析した。透析内液はポリエチレ
ングリコール2000で66mlにまで濃縮した。この
段階での酵素学的性質を図2〜図5に示した。濃縮酵素
液を更にCM−Sephadex C−50(pH5.
5)カラムに通搭したところ、活性画分としてカラム非
吸着画分(CM−II)と0.2M塩化ナトリウム溶出画
分(CM−III)を得た(図6)。
【0035】CM−IIは更に透析、濃縮、DEAE−S
ephadex A−50カラム処理、Buty1−T
oyopearl 650Mカラム処理することで、C
M−III 画分は透析、濃縮、Toyopearl HW
−55Fカラム処理、DEAE−Sephadex A
−50カラム処理をすることで、いずれもSDS−PE
AGEによる電気泳動で単一バンドになるまで精製する
ことができた。両画分の酵素学的特性を表1に示す。
【0036】
【表1】
【0037】両画分の特徴は基質特異性にあり、ポルフ
ィランおよび部分的に脱硫したポルフィランは分解でき
るが、寒天、カラギーナン、アルギン酸、デキストラ
ン、ペクチンなどの多糖類には作用できないことであ
る。ポルフィランを両画分でそれぞれ分解した反応液の
TLCを示す(図7)。図7の説明は前記した作用の項
に示したとおりである。この図に示されるように時間の
経過につれてより糖数の少ないオリゴ糖と糖数の多いメ
ガロ糖が増えてくることがわかる。両画分の作用機作は
明らかに異なっており、それぞれ単独で作用させるより
も、両者を併用する方が効果は大きい。
【0038】次にポルフィランに本発明の酵素を作用さ
せて本発明のネオアガロオリゴ糖を生成する実施例を示
す。
【0039】実施例4 少量のトルエンを添加した10mM酢酸緩衝液(pH
5.5)500mlに、粗ポルフィランを15g加え、
121℃で20分間加圧加熱して溶解する。これを放冷
後この溶液に75単位の酵素剤を添加し、37℃で48
時間反応させた。
【0040】反応終了後、不溶性物質を20,000×
gで20分間遠心分離して除いた。(画分A)。得られ
た上清に、最終濃度が70%になるようにエタノールを
徐々に加え、高分子物質を析出させ、生成した沈殿物は
上述の条件で再度遠心分離して除去した(画分B)。上
清中の全糖量をフェノール硫酸法で定量したところ、ガ
ラクトース換算で5.9gのポルフィラン分解物を得る
ことができた。
【0041】画分Bを除いて得た上清の300mlをエ
バポレータで43mlに濃縮後、水を溶離液としてSu
per−Q−Toyopearl 650Mを充填した
カラム( 2.6×40cm) に通塔した。非吸着画分を画分C
として分離し、吸着画分は0.5M塩化ナトリウムで溶
出した後50mlに濃縮した。濃縮液はSephade
x G−10カラムでゲル濾過を行い、画分D〜Fに分
けた。
【0042】得られた6画分(A〜F)の糖組成をTL
Cで分析した。展開試薬はn−ブタノール:酢酸:水
(2:1:1)とし、室温にて80分間展開した後、ジ
フェニルアミン−アニリン試薬を噴霧し、105℃で1
0分間加熱して発色させた。結果を図8に示す。画分A
およびBには低分子物質はなく、画分Cは糖が6個以上
のメガロ糖画分、画分Dは高重合度の糖区分であり、画
分EとFにオリゴ糖が認められる。図中、S1 はネオア
ガロビオース+ネオアガロテトラオース+ネオアガロヘ
キサオース、S2 はD−ガラクトース。標品として用い
たアガロオリゴ糖サンプルと比較することで、各画分の
糖組成を判断することができる。次に、上記画分Eおよ
びFをそれぞれToyopear1HW-40Sカラムを用いて精製
し、図7におけるオリゴ糖の2種のスポット成分を得
た。これらの成分を水素化ホウ素ナトリウムを用いてア
ルカリ下で脱硫酸化と還元化を行って相当する中性糖ア
ルコールとした。これを陰イオン交換クロマトグラフィ
ーで未反応物を除去した後、TLCで分析した。さら
に、図7のSについても還元して相当する糖アルコー
ルとし、同時にTLCで分析した。結果を図10に示
す。図10中、は標準となる重合度既知の中性糖、
はを還元して糖アルコール化したもの、は本発明の
E画分およびF画分のうち重合度の低い画分、はを
中性糖アルコール化したもの、は本発明のE画分およ
びF画分のうち重合度の高い画分、はを中性糖アル
コール化したものである。この図によれば、糖アルコー
ルは、標準糖アルコールの一番上のスポット(重合
度2の糖アルコール)に一致し、重合度2であることが
判明した。同様に糖アルコールは、標準糖アルコール
の二番目のスポット(重合度4の糖アルコール)に一
致し、重合度4であることが判明した。以上の実験か
ら、本発明で得られたオリゴ糖は重合度2および重合度
4を主体とするものであることが分かった。
【0043】A〜F画分の全糖量、3,6−アンヒドロ
ガラクトース量、硫酸基量、収率をまとめて表2に示
す。全糖量からの収率は画分Fで最も高く、硫酸基含量
も画分Fで高かった。
【0044】
【表2】
【0045】実施例2 実施例1で得られた画分C、D、E、Fと基質ポルフィ
ランを凍結乾燥し、鶏卵のしょう尿膜(CAM)法にて
血管新生抑制作用を測定した。試験はD.H.Ausprunk et
al., J.Dev.Biol., 38:237(1974)記載の方法に準じ実施
した。
【0046】新鮮な受精卵を入手し、ふ卵4日目の気室
側の卵殻を径3cm程剥離して除き、しょう尿膜を裸出
する。裸出部の中央にある径2mmのしょう尿膜上に、
内径3mmのシリコンリングを載せ、ここに1%メチル
セルロース生理食塩水と共に溶解した供試標品液を入れ
る(鶏卵1個当り標品1mg)。処理卵は37.8℃に保温
し、40〜46時間後、しょう尿膜の血管新生の度合い
を観察した。血管新生が阻害されている部位の直径を計
測し、以下のようにスコア化した。
【0047】Grade 1 ; 6mm以上 Grade 2 ; 4mm以上6mm未満 Grade 3 ; 2mm以上4mm未満 Grade 4 ; 2mm未満
【数1】
【0048】結果を図9に示すが、オリゴ糖画分Fに基
質ポルフィランよりかなり強い活性が見られる。オリゴ
糖画分C、高重合糖画分Dには弱い活性が認められた。
【0049】血管新生は、損傷や炎症部位での毛細血管
の増生、カポシ肉腫や血管腫での毛細管の過剰形成、固
形腫瘍の生長を支える血管の伸長などに深く係わる現象
であり、増殖性糖尿性網膜症など失明を招くような様々
な眼科疾患にもみられる。このような各種疾患におい
て、その阻害剤はこれら病的現象の解除に有効に用い得
るものとして期待されている。
【0050】
【発明の効果】本発明の酵素はあまのり属の海藻類の成
分であるポルフィランに特異的に作用してこれを加水分
解し、ネオアガロオリゴ糖を生成するので、本酵素によ
り容易に上記海藻類からネオアガロオリゴ糖を得ること
ができる。本発明で得られたネオアガロオリゴ糖は血管
新生阻害活性を有するので、血管新生作用に起因する諸
疾患に対して有効である。
【図面の簡単な説明】
【図1】肉汁液体培地に培養して得た菌株B−2411
の透過型電子顕微鏡写真を示す図。
【図2】本発明の酵素の酵素活性におよぼすpHの影響
を示す図。
【図3】本発明の酵素の酵素活性におよぼす温度の影響
を示す図。
【図4】本発明の酵素の酵素活性のpH安定性を示す
図。
【図5】本発明の酵素の熱安定性を示す図。
【図6】酵素液をCM−Sephadex C−50で
カラム処理した時の、主要活性画分CM−IIとCM−II
I の分離パターンを示した図。
【図7】CM−IIおよびCM−III をポルフィランに作
用させた時、生成されてくるオリゴ糖およびメガロ糖を
TLCで検出し、経時的に配列図示したもので、(A)
はCM−IIについて、(B)はCM−III について図示
したものである。
【図8】ポルフィランを酵素分解して得られた各区分の
TLC展開パターンを示す図。
【図9】ポルフィラン分解各画分の鶏卵しょう尿膜での
血管新生阻害効果を示した図。
【図10】 ポルフィランを酵素分解して得られたE区画
分およびF区画分を精製し、これを脱硫酸化および還元
化して得られた中性糖アルコールのTLC展開パターン
を示す図。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI (C12P 19/00 C12R 1:38) (72)発明者 芦野 洋美 千葉県船橋市本町19番1号 海老川マン ション609 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C12N 9/00 - 9/99 C08B 37/00 - 37/18 C12P 19/00 - 19/64 BIOSIS(DIALOG) WPI(DIALOG)

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記の理化学的性質を有するポルフィラ
    ン分解酵素。 (1)酵素作用:ポルフィランを加水分解し、重合度2
    および4を主体とするネオアガロオリゴ糖を生成する反
    応を触媒する。 (2)基質特異性:ポルフィランに対し高い特異性を示
    し、あまのり属以外の紅藻類や褐藻類に含有される多糖
    類に対しては特異性が低い。(3)(a)ポルフィラン分解に対する至適pHが6.
    0、至適温度が60℃、pH安定域が6.0〜8.0で
    あり、分子量が約28,000、等電点がpH5.2、
    ポルフィランに対するKm値が0.02%である。また
    は、 (b)ポルフィラン分解に対する至適pHが5.0、至
    適温度が50℃、pH安定域が5.0〜9.5であり、
    分子量が約42,000、等電点がpH6.8、ポルフ
    ィランに対するKm値が0.098%である
  2. 【請求項2】 シュードモナス(Pseudomonas )属に属
    するポルフィラン分解能を有する微生物を培養し、その
    培養物からポルフィラン分解酵素を採取することを特徴
    とする請求項1記載のポルフィラン分解酵素の製造方
  3. 【請求項3】 シュードモナス(Pseudomonas )属に属
    するポルフィラン分解能を有する微生物がシュードモナ
    ス(Pseudomonas )B−2411(生技研寄託P−13
    637号)およびその変異株である請求項2記載のポル
    フィラン分解酵素の製造方法
  4. 【請求項4】 あまのり属海藻類に含まれるポルフィラ
    ンを請求項1記載の酵素を用いて加水分解して得られ、
    重合度2および4を主体とすることを特徴とするネオア
    ガロオリゴ糖
  5. 【請求項5】 鶏卵しょう尿膜法で、鶏卵しょう尿膜に
    おける血管新生を阻害する活性を示す請求項4記載のネ
    オアガロオリゴ糖
  6. 【請求項6】 あまのり属海藻類に含まれるポルフィラ
    ンまたはポルフィラン含有物を、請求項1記載の酵素を
    用いて、酸性または弱酸性の条件下で加水分解すること
    を特徴とするネオアガロオリゴ糖の製造方法
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