JP2989217B2 - エキソ‐β‐1,4‐ガラクタナーゼ及びその利用 - Google Patents

エキソ‐β‐1,4‐ガラクタナーゼ及びその利用

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  • Preparation Of Compounds By Using Micro-Organisms (AREA)
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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は新規酵素に関するものであり、更に詳細には
従来未知のエキソ(exo)型のβ−1,4−ガラクタナー
ゼ、その生産菌及びその利用に関するものである。
(従来の技術) 柑橘類、バレイショ、大豆等に含まれるアラビノガラ
クタンやガラクタンのようにβ−1,4−ガラクトシド結
合を有する主鎖を含む多糖を加水分解する酵素としてβ
−1,4−ガラクタナーゼ(ガラクタナーゼ)が知られて
いる。
しかしながら、これらガラクタナーゼとしては、Peni
cillium citrinum(以下P.citrinum)やBacillus subti
lis(以下B.subtilis)起源のエンド−1,4−β−D−ガ
ラクタナーゼ(EC 3.2.1.89)が知られているにすぎ
ず、いずれもこれらは作用様式がエンド型であってエキ
ソ型ではない。
本発明は、基質をエキソ型の様式で分解する性質を有
するβ−1,4−ガラクタナーゼを新たに分離精製するこ
とに成功したものであるが、このようなことは従来全く
知られておらず新規である。
(発明が解決しようとする問題点) 本発明は上記した技術の現状に鑑みてなされたもので
あって、従来既知のエンド型ではない全く新規なタイプ
のガラクタナーゼを開発する目的でなされたものであ
る。
(問題点を解決するための手段) 上記目的を達成するために微生物のスクリーニングを
広範に実施したところ、B.subtilisの一株がβ−1,4−
ガラクタナーゼを産生すること、そしてこの酵素の作用
様式がエキソ型であることをつきとめた。そして更に検
討した結果、その反応様式は従来報告されているいずれ
のβ−1,4−ガラクタナーゼとも異なる新規なものであ
るとの知見を得た。
本発明はこの新知見、つまり新規エキソ型β−1,4−
ガラクタナーゼの発見に基づき更に検討の結果、完成さ
れたものである。
本酵素の採取源としては、例えばB.subtilis K401株
を用いる。本菌株は、小豆より分離した細菌であって、
グラム陽性の好気性桿菌であり、大きさは1〜1.2×2.5
〜3.0μm、胞子の大きさは1.0〜1.2×1.5〜1.7μmで
ある。現在本菌株は、大阪市立工業研究所生物化学課に
おいて肉汁寒天(日水製薬社製)の斜面培地上で継代維
持されており、微工研において微工研菌寄第11373号と
して受託されている。
本酵素は本菌の培養物から得られるのであるが、本菌
の培養は常法によって行えばよい。培養条件としては、
細菌の培養条件が適宜利用され、通気攪拌培養等が行わ
れるが、培養をβ−1,4−ガラクタンの存在下で行うと
収率の大幅向上が認められ好適である。β−1,4−ガラ
クタンとしては精製品、粗製品のいずれもが使用できる
し、その含有物も有利に使用できる。含有物の例として
は、大豆粉、脱脂大豆粉、豆腐粕(オカラ)といった大
豆関連物質や、柑橘類由来のポリペクチンナトリウム等
が挙げられる。大豆由来のアラビノガラクタン(soybea
n arabinogalactan;以下SAG)(Agric.Biol.Chem.,35,1
891(1971))も使用可能である。
本酵素は培養菌体内及び培養液に蓄積されるが、前者
においては常法どおり菌体を破壊した後に酵素を抽出
し、後者においては培養液を濾過した濾液から抽出す
る。本菌は後者の方により多量にガラクタナーゼを分泌
することが認められている。
このようにして培養濾液は、抽出し精製処理を行っ
て、目的とするガラクタナーゼを得る。抽出精製処理
は、常法によって行い、例えば、塩析、カラムクロマト
グラフィー、ゲル濾過、電気泳動、高速液体クロマトグ
ラフィー等を適宜単用ないし併用する。
得られた精製エキソ−β−1,4−ガラクタナーゼの諸
性質の詳細は後記のとおりであるが、ガラクトオリゴ糖
を基質とする加水分解物の分析結果からして、基質より
ガラクトビオース(Ga)残基を遊離させる新規エキ
ソ型のガラクタナーゼである点で、特に特徴的である。
本発明に係るガラクタナーゼが有する上記した新しい
性質を利用することによって、β−1,4−ガラクトシド
結合を有する各種原料に応じてそれぞれ各種のガラクト
オリゴ糖を製造することができる。例えば、SAGを酵素
処理すれば、ガラクトビオース(Ga)及びガラクト
テトラオース(Ga)等のガラクトオリゴ糖を得るこ
とができるし、また、ガラクトテトラオース(Ga
及びガラクトトリオース(Ga)といったガラクトオ
リゴ糖を酵素処理することによって、前者からはGa
を製造することができるし、後者からはGaとGaを
製造することができる。
そのうえ、本発明に係る酵素は、上記のようなβ−1,
4−ガラクタン、ガラクトオリゴ糖といった原料を加水
分解する作用のほかに、Gaを他に転移させる作用も
有する。例えばSAGにGaを添加した原料及びSAGにGa
を添加した原料を酵素処理することによって、Ga
転移反応を生せじめてGa及びGaをそれぞれ著量
蓄積せしめることができ、これらの転移反応を利用する
ことによっても各種のガラクトオリゴ糖を製造すること
ができる。
本発明においてガラクタナーゼを利用する場合には、
精製した酵素はもとより、粗製酵素から精製酵素へ至る
各種精製段階における酵素、粗製酵素も利用することが
できる。また、酵素源として微生物自体(B.subtilis)
を用いることもでき、その場合は単離した微生物菌体の
ほか、菌体を単離することのない培養物、培養液、及び
これらの濃縮物、乾燥物、ペースト、破壊物といった各
種の処理物も広く利用することができる。
実施例1 微生物の培養 B.subtilis K401(FERM P−11373)を培地で培養し
た。
培養培地の組成は、30gの脱脂大豆粉、10gの(NH42
HPO4、0.2gのNaCl及び0.2gのMgSO4・7H2Oを1の精製
水に懸濁溶解したものである。培地のpHは滅菌前に7.2
に調整した。培養は、上記の培地75mを入れた500m
の培養フラスコ中、27℃で、ロータリーシェーカーにて
回転振盪培養した。48時間の培養後、ガラクタナーゼの
産生量は最大に達したので水不溶性物質と細胞とを遠心
分離により除去した。
実施例2 酵素の精製 ステップ1:硫安塩析 実施例1で得た培養濾液に固形硫安を55%飽和となる
まで加え、16時間経過してから沈澱物を遠心分離により
採取した。次いで、この沈澱物を20mM酢酸緩衝液(pH6.
0)に溶かし、同緩衝液に対して透析を行った。
ステップ2:S−セファロースカラムクロマトグラフィー 20mM酢酸緩衝液(pH6.0)で予め平衡化しておいたS
−セファロース(ファルマシア社製)カラム(φ3×長
さ30cm)に、ステップ1で得られた透析内液をかけた。
次いで、20mM酢酸緩衝液(pH6.0)1と、0.5MのNaCl
を加えた20mM酢酸緩衝液(pH6.0)1とにより調製し
た。直線形NaCl濃度勾配により酵素を溶出した(流速は
30m/時間)。溶出液は10mづつ分画し、活性画分を
合わせて限外濾過で濃縮した。
ステップ3:ウルトロゲルAcA 44によるゲル濾過 100mM NaClを含む25mM燐酸緩衝液(pH7.0)で予め平
衡化しておいたウルトロゲル(Ultrogel)AcA 44(LKB
社製)カラム(φ1.5×長さ97cm)に、ステップ2で得
られた限外濾過濃縮液をかけ、上記緩衝液により流速9.
0m/時間の割合で溶出した。溶出液は2.0mづつ分画
し、活性画分を合わせ、50mM燐酸緩衝液(pH7.0)に対
して透析した。得られた透析内液を精製酵素の標品とし
て用いた。
ガラクタナーゼの精製の概略を表1に示す。最終的に
酵素は1,400倍に精製され、収率は約20%であった。最
終精製標品はポリアクリルアミドゲル電気泳動及びSDS
−ポリアクリルアミドゲル電気泳動上でシングルバンド
を示した(第1図)。
なお、酵素活性の測定及び電気泳動は次のようにして
行った。
(酵素活性の測定方法) 50mM燐酸緩衝液(pH6.5)に0.625%の割合で溶解させ
たSAG溶液0.4mと、同上の燐酸緩衝液に溶解させた酵
素溶液0.1mとからなる反応混合液を、40℃で10分間反
応させた。反応は1.0mのSomogyi試薬により停止させ
た。反応により遊離された還元糖の量は、ガラクトース
を標準として、Somogyi−Nelsonの方法に従って測定し
た。上記反応条件において、1分間当たり1μmoleの還
元糖を遊離する酵素活性を1ユニットと定義した。
(電気泳動) ポリアクリルアミドゲル電気泳動は、Davisの方法に
より、ポリアクリルアミドゲル濃度を7.5%とし、pHを
4に保った緩衝系を含むカラムにて行った。SDS−ポリ
アクリルアミドゲル電気泳動は、WeberとOsbornの方法
に従って行った。用いた標準蛋白質は、α−マクログ
ロブリン(分子量170,000)、ホスホリラーゼb(同97,
400)、グルタミン酸デヒ ドロゲナーゼ(同55,40
0)、乳酸デヒドロゲナーゼ(同36,500)及びトリプシ
ン・インヒビター(同20,100)である。
実施例3 本酵素の性質 (1)精製及び均質性 ガラクタナーゼは実施例2で述べたように、培養濾液
から1400倍に精製され、最終精製標品は電気泳動にてシ
ングルバンドを示した(第1図)。
(2)分子量及び等電点 SDS−PAGEによれば、本酵素の分子量は36,000であっ
た。
本酵素の等電点は、等電点電気泳動法によれば、pH7.
88であった。なお、等電点電気泳動は次のようにして行
った。
等電点電気泳動は、VesterbergとSvenssonの方法に従
い、pH範囲が3.5〜10のAmpholyte(LKB社製)を入れた
カラム(110m)で行った。4℃に保ったカラムに定電
圧400Vを48時間かけた。その後試料を2mづつ分画し、
各々の画分について酵素活性とpHを測定した。
(3)pH及び温度の影響 本酵素のpHに対する安定性を調べるに当たっては、温
度15℃に保った、種々のpHのBritton−Robinsonユニバ
ーサル緩衝液中に、酵素を24時間置いた。この条件で
は、本酵素はpH6〜10の間で安定であった(第2図A○
−○)。
一方、温度安定性を見るために、pH7.5で種々の温度
に10分間さらしたところ、55℃以下で安定であった(第
2図B○−○)。
至適pHを見るために種々のpHの50mM燐酸緩衝液中で、
40℃における本酵素の活性を測定したところ、pH6.5〜
7.0において最も活性が高かった(第2図A●…●)。
pH6.5で種々の温度に10分間さらしたところ、酵素活
性が最大値となったのは、温度が60℃のときであった
(第2図B●…●)。
これらの結果から明らかなように、本酵素の至適pHは
6〜7(温度40℃)であり、至適温度は50〜60℃(pH6.
5)であった。
(4)種々の試薬及び金属イオンの影響 本酵素に対する種々の試薬及び金属イオンの影響を次
のようにして調べた。すなわち、各々の試薬或いは金属
イオンの40mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.3)溶液に、酵
素を30℃で2時間インキュベートした。残存活性は上述
の測定方法に従って測定した。
その結果を表2に示した。表2の結果から明らかなよ
うに、Hg2+及びCu2+が酵素活性を阻害した。これ以外の
試薬は、Ca2+及びEDTAを含めて、酵素の活性に有意な影
響は与えなかった。
(5)Km値 本酵素のKm値は、種々のSAG濃度(S)と還元糖の解
離速度(v)とから、S対S/vのグラフを作成して、1.0
6mg/mという値を得た。
(6)基質特異性 種々のオリゴ糖(0.5%)及び酵素(0.2ユニット/m
)を50mM燐酸緩衝液(pH6.5)に溶かした反応混合液
(1.0m)を40℃で24時間反応させた。遊離された還元
糖の量はガラクトースを標準としてSomogyi−Nelsonの
方法によって測定し、その結果を表3に示した。
これらの結果から次のことが判明した。
本酵素は、SAGからばかりではなく、ポリペクチンナ
トリウム(柑橘果実由来;シグマ社製;β−1,4−ガラ
クタンを構成要素として有していることが知られてい
る)からも還元糖を遊離する。ポリペクチンナトリウム
から遊離されたオリゴ糖を分析したところ、SAGから遊
離されたオリゴ糖と同じであった。一方カラマツアラビ
ノガラクタン、コーヒー豆アラビノガラクタン及びアラ
ビアガム(これらの主鎖は、β−1,3−ガラクトシド結
合からなっていることが知られている)は、本酵素によ
っては分解されなかった。
(7)本発明酵素によるSAG加水分解産物の分析 SAG 1.5gと精製酵素5ユニットとを50mM燐酸緩衝液に
溶解した反応混合液50mを40℃で8時間反応させた。
未反応のSAGは、100mのエタノールを前記反応液に添
加して沈澱させた後に、遠心分離で除去した。上清を蒸
留により濃縮し、次いで、蒸留残液10mを、5%エタ
ノールで予め平衡化しておいたバイオゲルP−2(バイ
オラッド社製)カラムにかけた。5%エタノールによ
り、流速15m/時間の割合で溶出し、5mづつ分画し
た。各々の画分の糖はフェノール−硫酸法で測定した。
Gaに相当する画分(画分番号70〜78)及び未知のオ
リゴ糖(X)画分(同61〜65)を別々に集め、減圧濃縮
し、更に上記と同じカラムを用いて再び分画を行って精
製した。以上のようにして得られた二つの画分は、TLC
上でシングル・スポットを示した。
以上から、SAGの酵素加水分解産物は、TLC分析の結
果、Gaが主要産物であり、この他に未知のオリゴ糖
Xが痕跡量検出された。XはTLC上の移動速度はGa
と殆ど同じであることから、Gaであることが推定さ
れた。
なお、TLC(薄層クロマトグラフィー)は次のように
して行った。
薄層クロマトグラフィー 薄層クロマトグラフィー(TLC)は、シリカゲル60プ
レコートプレート(蛍光指示薬不含、メルク社製)を用
い、酢酸エチル:酢酸:水=3:1:1(v/v)の溶媒系で、
多重展開上昇法(multiple ascending method)により
行った。糖の検出は、プレートにH2SO4:メタノール=1:
1(v/v)を噴霧した後、プレートを110℃に10〜20分間
保つことにより行った。
(8)本発明酵素によるガラクトオリゴ糖類の加水分解
産物の分析 本酵素(0.92ユニット/m)をGa、Ga又はGa
(それぞれ5.0mM)と、pH6.5、40℃で4時間反応さ
せ、各々のオリゴ糖の加水分解産物をTLCで分析した。G
aは完全にGaとGaとに加水分解され、Ga
からはGaのみが生成された。Gaは本酵素によっ
ては全く加水分解されなかった。
又、還元末端にo−ニトロフェニル基を有するガラク
トオリゴ糖類(ONPG及びG2−ONP〜G5−ONP;Agric.Biol.
chem.,50,3005(1986))を基質として、本酵素のよる
加水分解産物を、ONPの定量及びTLCにより分析した。
なおここで、ONPGはo−ニトロフェニル−β−D−ガ
ラクトサイド、ONPはo−ニトロフェノール、G2−ONP〜
G5−ONPはo−ニトロフェニル−β−D−ガラクトビオ
サイド〜o−ニトロフェニル−β−D−ガラクトペンタ
オサイドを、それぞれ意味する。
ONPの解離の分析においては、各々の基質(1.0mM)に
ついて、本酵素(0.23ユニット/m)と40℃で反応さ
せ、o−ニトロフェニルを、0.1MのNa2CO3の溶液中で、
410nmにおける吸光度を測定することにより定量した。
基質がONPG、G3−ONP及びG5−ONPの場合では、ONPの解
離は起こらなかった。一方、G2−ONP及びG4−ONPから
は、30分間の反応で、それぞれ0.955μmole/m及び0.9
42μmole/mのONPが解離された。
ONP以外の加水分解産物については、以下のようにし
て分析した。5mMの燐酸緩衝液(pH6.5)中に、各々の基
質(1μmole/m)及び酵素(0.046ユニット/m)を
含む反応混合液(400μ)を、40℃で反応させ、定時
間隔に、2M酢酸8μを加えて反応を止めた。反応液を
凍結乾燥後、試料を80μの水に溶かし、15μをTLC
プレートにスポットして分析した。結果を第4図に示
す。図中、Mはマーカー(Ga〜Ga)、AはONPG、
BはG2−ONP、CはG3−ONP、DはG4−ONP、EはG5−ONP
を、それぞれ表す。ONPGは全く加水分解されなかった。
G2−ONP及びG4−ONPからは、Gaが加水分解産物とし
て検出された。G3−ONP及びG5−ONPからは、ONPG及びGa
が最終産物として蓄積されていた。更にG4−ONP及
びG5−ONPを基質としたときは、それぞれG2−ONP及びG3
−ONPが中間産物として生成されていることが検出され
た。
(9)本発明のガラクタナーゼと既知のガラクタナーゼ
によるSAGの加水分解産物の比較 本発明に係るB.subtilis由来のガラクタナーゼによる
SAG加水分解生成物(第3図B)と、P.citrinum由来の
ガラクタナーゼIによるSAG加水分解産物(第3図A)
とをHPLC分析により時系列的に比較した。反応時間は、
2.5分、15分及び120分である。SAGは0.5%(w/v)、酵
素は0.2ユニット/m、緩衝液はB.subtilis由来のガラ
クタナーゼの場合は25mM燐酸緩衝液(pH6.5)、P.citri
num由来のガラクタナーゼの場合は25mM酢酸緩衝液(pH
4.5)、温度は40℃であった。
P.citrinum由来の酵素はエンド型酵素であるため、ガ
ラクトース及び種々のオリゴ糖、特にSAGの部分加水分
解産物である比較的高分子のオリゴ糖を生成した。一
方、B.subtilis由来の酵素によるSAG加水分解産物中に
は、反応のいずれの段階においても、単糖類、三糖類及
び高分子の部分加水分解産物は検出されなかった。
(10)本発明のガラクタナーゼによるGaの転移反応 SAGを本酵素で加水分解するに際し、Ga或いはGa
を反応混合液に添加しておいた場合の反応産物をHPLC
で分析して本酵素による転移反応を確認した(第5図及
び第6図)。
25mM燐酸緩衝液(pH6.5)中に、SAG(16.8mg/m)
と、種々の濃度のGa(第5図)あるいはGa(第6
図)、及び酵素(0.46ユニット/m)を含む反応混合液
(200μm)を、40℃で1時間反応させた。反応液を
沸騰させて反応を停止させ、反応生成物をHPLCで分析し
た。
第5図において、○−○はGaを、△−△はGa
を、●−●はGaを、それぞれ表す。
第6図において、○−○はGaを、●−●はGa
を、それぞれ表す。
反応混合液にGaを添加することにより、反応生成物
中のGaが増加し、Ga及びGaは減少した(第
5図)。一方、反応混合液にGaを添加しておくと、
反応生成物中のGaが増加していた(第6図)。
(11)作用様式 本酵素はアラビノガラクタンを基質としてこれを加水
分解させると、Ga及び少量のGaを生成した。そ
して通常の反応条件の下では、Ga、Gaあるいは高
分子量の多糖部分加水分解物が生成されている証拠は全
く見あたらなかった。一連のガラクトオリゴ糖を基質と
する加水分解物の分析結果から、本酵素はGa残基を
解離するエキソ型のガラクタナーゼであることが強く示
唆された。更に、置換オリゴ糖に対して本酵素が作用す
る様相から、本酵素による加水分解は、基質の非還元末
端から二番目のガラクトシド結合に起こることが推定さ
れた(第7図)。なお、図中、↓は加水分解される結合
箇所を、○はGa残基を、●はONPをそれぞれ表す。こ
のような様式で作用するガラクタナーゼは、カビ由来の
ものを含めても、これまで報告がなく新規である。
実施例4 ガラクトオリゴ糖の製造(1) SAG 1.5gと実施例2で得た精製酵素5ユニットとを50
mM燐酸緩衝液に溶解した反応混合液50mを40℃で8時
間反応させた。未反応のオリゴ糖は、100mのエタノー
ルを前記反応液に添加して沈澱させた後に、遠心分離で
除去した。上清を蒸留により濃縮し、次いで、蒸留残液
10mを、5%エタノールで予め平衡化しておいたバイ
オゲルP−2(バイオラッド社製)カラムにかけた。5
%エタノールにより、流速15m/時間の割合で溶出
し、5mづつ分画した。各々の画分の糖はフェノール−
硫酸法で測定し、画分番号70〜78にGaを得、画分番
号61〜65にGaを得た。
実施例5 ガラクトオリゴ糖の製造(2) 本酵素を用いてガラクトオリゴ糖を加水分解すること
により他のガラクトオリゴ糖を製造した。
つまり、本酵素(0.92ユニット/m)を、ガラクトト
リオース(Ga)又はガラクトテトラオース(Ga
)(それぞれ5.0mM)と、pH6.5、40℃で4時間反応
させ、GaからはGaとGaとを得、Gaからは
Gaをそれぞれ得た。
(発明の効果) 本発明によってガラクタナーゼが提供されるが、この
酵素はエキソ型β−1,4−ガラクタナーゼであって従来
未知の全く新しいタイプのものである。
本酵素によれば各種のガラクトオリゴ糖が製造でき、
しかも本酵素の工業的製法も本発明によって確立したの
で、各種のガラクトオリゴ糖を工業生産することがはじ
めて可能となった。
したがって本発明は、飲食品、栄養品、医薬品等の各
技術分野において重要な役割を果すものである。
【図面の簡単な説明】
第1図:精製ガラクタナーゼの電気泳動図 AはPAGE、BはSDS−PAGE。ゲルはクーマシー・プリリ
アント・ブルー(Coomassie Brilliant Blue)R−250
で染色した。 第2図:ガラクタナーゼの活性及び安定性に対するpHと
温度の関係を示したグラフ Aは、pHの酵素活性(●…●)及び酵素安定性(○−
○)に対する影響を示す。Bは、温度の酵素活性(●…
●)及び酵素安定性(○−○)に対する影響を示す。 第3図:B.subtilis由来のガラクタナーゼとP.citrinum
由来のガラクタナーゼによる、SAGの加水分解生成物の
比較図 BはB.subtilis由来のガラクタナーゼによるSAGの加水
分解生成物を、AはP.citrinum由来のガラクタナーゼに
よるSAGの加水分解生成物を、HPLCで分析したものであ
る。 第4図:ONP置換ガラクトオリゴ糖の加水分解生成物の薄
層クロマトグラム 図中、Mはマーカー(Ga〜Ga)、AはONPG、Bは
G2−ONP、CはG3−ONP、DはG4−ONP、EはG5−ONPを表
す。 第5図:ガラクタナーゼとSAGとからなる反応混合液へ
のGa添加の影響を示すグラフ 図中、○−○はGaを、△−△はGaを、●−●は
Gaを、それぞれ表す。 第6図:ガラクタナーゼとSAGとからなる反応混合液へ
のGa添加の影響を示すグラフ 図中、○−○はGaを、●−●はGaを、それぞれ
表す。 第7図:ONP置換ガラクトオリゴ糖に対するガラクタナー
ゼの推定反応様式模式図 図中、↓は加水分解される結合箇所を、○はGa残基
を、●はONPをそれぞれ表す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI (C12N 1/20 C12R 1:125) (72)発明者 鰺坂 勝美 神奈川県小田原市成田540番地 明治乳 業ヘルスサイエンス研究所内 (72)発明者 藤本 浩 神奈川県小田原市成田540番地 明治乳 業ヘルスサイエンス研究所内 (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) BIOSIS(DIALOG) WPI(DIALOG)

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】次の性質を有することを特徴とするエキソ
    −β−1,4−ガラクタナーゼ; (A)作用 基質の非還元末端から2番目のガラクトシド結合を加水
    分解する。 (B)基質特許性 大豆アラビノガラクタン及び柑橘果実ガラクタンは分解
    するが、カラマツアラビノガラクタン及びコーヒー豆ア
    ラビノガラクタンはほとんど分解せず、アラビアガムは
    全く分解しない。 (C)分子量 36,000(SDS−PAGE法) (D)等電点 pH7.88(等電点電気泳動法) (E)至適pH pH6〜7(60℃) (F)至的温度 50〜60℃(pH6.5) (G)活性阻害 Hg2+、Cu2+は酵素活性を阻害する。
  2. 【請求項2】バチルス属に属するエキソβ−1,4−ガラ
    クタナーゼ生産菌を培地で培養することを特徴とする請
    求項1に記載のエキソ−β−1,4−ガラクタナーゼの製
    造方法。
  3. 【請求項3】β−1,4−ガラクタンの存在下で培養を行
    うことを特徴とする請求項2に記載の製造方法。
  4. 【請求項4】エキソ−β−1,4−ガラクタナーゼ生産
    菌、バチルス・ズブチリス(K401(Bacillus subtilis
    K401)(FERM P−11373)。
  5. 【請求項5】請求項1に記載のエキソ−β−1,4−ガラ
    クタナーゼを使用することを特徴とするガラクトオリゴ
    糖の製造方法。
  6. 【請求項6】請求項1に記載のエキソ−β−1,4−ガラ
    クタナーゼを使用することを特徴とするガラクトビオー
    スの転移方法。
  7. 【請求項7】請求項1に記載のエキソ−β−1,4−ガラ
    クタナーゼが、精製酵素若しくは粗製酵素、又は該酵素
    生成菌体、菌体含有物若しくはその処理物であることを
    特徴とする請求項5又は6に記載の方法。
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