JP2004261132A - プルラン分解酵素とその製造方法並びに用途 - Google Patents

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和久 向井
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倫夫 久保田
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恵温 福田
Toshio Miyake
俊雄 三宅
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Abstract

【課題】粘性が低く、且つ、重量平均分子量/数平均分子量の比が小さく取扱い易いプルランを製造し得るプルラン分解酵素とその製造方法並びに用途を確立することを課題とする。
【解決手段】新規プルラン分解酵素と、当該酵素を産生するオーレオバシディウム属に属する微生物を用いる当該酵素の製造方法、当該酵素を用いるプルランの分解方法及び当該酵素を用いる、粘性及び/又はMw/Mnの比が低減されたプルランの製造方法を確立することにより前記課題を解決する。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プルラン分解酵素とその製造方法並びに用途に関し、詳細には、プルランに作用させると、α−1,6グルコシド結合に隣接する還元性末端側のα−1,4グルコシド結合をエンド型に加水分解することによって、その粘性を低減するプルラン分解酵素とその製造方法、当該酵素を用いるプルランの分解方法、並びに当該酵素及び/又は当該酵素を産生する能力を有する微生物を用いる、粘性及び/又は重量平均分子量/数平均分子量の比が低減されたプルランの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
【特許文献1】特開平6−65302号公報
【特許文献2】特開平5−306350号公報
【特許文献3】特公昭61−21481号公報
【特許文献4】特公平2−48561号公報
【特許文献5】特公昭53−31234号公報
【非特許文献1】ボア(Boa)等、『バイオテクノロジー・アンド・バイオエンジニアリング(Biotechnology and Bioengineering)』、第30巻、463頁乃至470頁、1987年
【0003】
プルランは、オーレオバシディウム・プルランス(Aureobasidium pullulans)を単糖類、オリゴ糖類などの糖類を含む栄養培地中で好気的に培養して得られる粘質グルカンであり、主としてマルトトリオースを繰り返し単位とし、これをα−1,6グルコシド結合で結合した化学構造を有する線状高分子多糖であって、通常、広い分子量分布幅を有している。
【0004】
プルランの工業的製造法は、例えば、特許文献1及び非特許文献1などに開示されており、通常、プルラン産生能を有する微生物を単糖類、オリゴ糖類などの糖類を含む栄養培地中で好気的に培養した後、除菌し、濃縮し、必要に応じて、脱色、脱塩し、プルラン含有溶液を採取するか、又はこれを粉末化してプルラン含有粉末を採取する。更に必要に応じて、分子量分画や有機溶媒沈殿分離などを行うことによって、高純度のプルラン含有物を得ることができる。
【0005】
プルランは、水溶性、造膜性、光沢性、透明性、ガスバリアー性、耐油性、耐塩性、粘着性、接着性、成形性、可食性、難消化性などの特徴を有していることから、試薬としてはもとより、各種飲食物、化粧品、医薬品、農林水畜産品、鉱工業資材などの基材、接着剤、コーティング剤などとして利用されるほか(特許文献2参照)、各種成形物、例えば、顆粒、錠剤、棒、フィルム、シートなどとして多くの用途に有利に利用できる。特に、狭い分子量分布幅を有するプルランは、血漿増量剤(特許文献3参照)や分子量標準試薬(特許文献4参照)などとして医薬品及び化学品の分野で有用であることが知られている。
【0006】
プルランは、一般的に、他の多糖類、例えば、キサンタンガム、タラガム、ローカストビーンガム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースなどと比較すると低粘性であるものの、分子量の比較的大きいプルランを含有する溶液は、高い粘性を有しているため、種々の用途に加工・利用する場合、その取扱いに熟練を要し、広範な用途に容易に使用できないという欠点を有している。更に、広い分子量分布幅を有するプルランは、造膜性や接着性などの諸特性が不良となりやすい欠点を有している。よって、上述したような諸特性を有し、且つ、低粘性で狭い分子量分布幅を有するプルランが、斯界において希求されている。
【0007】
このようなプルランを得るには、酸分解や酵素分解により、プルラン中のグルコース分子間の結合を加水分解し、望ましい分子量を有するプルランを分画する方法が挙げられる。酸分解は簡便な方法であるものの、酸分解後にアルカリで中和する際に生じる塩によって味質が変化したり、またこの塩を除去する場合は、操作が煩雑になるという問題がある。次に、酵素分解は、プルランに作用して加水分解を触媒する酵素を利用する方法であり、酵素としては、例えば、プルラナーゼ(EC3.2.1.41)、α−アミラーゼ(EC3.2.1.1)、及び特許文献5記載のグルカナーゼなどが挙げられる。
【0008】
前記プルラナーゼは、プルラン中のα−1,6グルコシド結合を特異的に加水分解して、最終的にマルトトリオースを生成する酵素であり、プルランに作用させると、マルトトリオース及びマルトトリオース単位からなるオリゴ糖が比較的早く生成するため、得られるプルラン含有物の分子量分布幅は広くなる。一般的に、分子量分布幅は、重量平均分子量(以下、Mwと略す。)を数平均分子量(以下、Mnと略す。)で除した数値(Mw/Mn)で表すことができ、Mw/Mnの比が大きな値であるほど、分子量分布幅は広いことを意味する。逆に、Mw/Mnの比が1に近づくほど、分子量分布幅は狭いことを意味し、Mw/Mnの比が1の場合は、分子量が単一であることを意味する。例えば、プルラナーゼでプルランを加水分解する場合、Mwが約395,000でMw/Mnの比が約1.33のプルランをMwが約46,000のプルランにまで加水分解すると、Mw/Mnの比が約11.15の幅広い分子量分布幅を有するプルラン含有物が生成する。このような分子量分布幅が広いプルラン含有物は、分子量が数千から数十万のプルランの雑多な混合物であるため、造膜性や接着性などの諸特性が不良となることが多い。
【0009】
次に、α−アミラーゼ(EC3.2.1.1)をプルランに作用させる場合は、プルラン分子中に僅かに存在するマルトテトラオース構造中のα−1,4グルコシド結合にのみ作用するため、低分子のプルランに分解するには限界があるとともに、多量の酵素が必要であるという欠点がある。
【0010】
更に、特許文献5のグルカナーゼは、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)ATCC6275に由来し、プルランに作用させると、イソパノース及びイソマルトースなどを生成する。本酵素をプルランに作用させて得られるプルラン含有物は、プルラナーゼの場合と同様に、分子量分布幅が広く、分子量が数千から数十万のプルランの雑多な混合物であることから、造膜性や接着性などの諸特性が不良となることが多い。
【0011】
斯かる状況に鑑み、粘性が低く、且つ、狭い分子量分布幅を有する、即ち、Mw/Mnの比が小さく取扱い易いプルランを製造する方法の確立が鶴首されていた。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記従来技術に鑑み、粘性が低く、且つ、Mw/Mnの比が小さく取扱い易いプルランを製造し得るプルラン分解酵素とその製造方法並びに用途を確立することを課題とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決するために、未知のプルラン分解酵素を求めて、その酵素を産生する微生物を広く検索したところ、意外にも、プルラン産生菌であるオーレオバシディウム(Aureobasidium)属に属する微生物がプルランを合成するだけでなく、産生したプルランの粘性を低減させる新規プルラン分解酵素を産生することを見いだし、当該プルラン分解酵素が下記の理化学的性質を有することを明らかにするとともに、当該プルラン分解酵素の製造方法、当該プルラン分解酵素をプルランに作用させることによるプルランの分解方法、及び当該プルラン分解酵素をプルランに作用させることにより得られる、粘性及び/又はMw/Mnの比が低減されたプルランの製造方法を確立して本発明を完成した。
<当該プルラン分解酵素の理化学的性質>
(1)作用
プルランに作用させると、α−1,6グルコシド結合に隣接する還元性末端側のα−1,4グルコシド結合をエンド型に加水分解することによって、その粘性を低減する。
(2)基質特異性
プルランのみならず、6−O−α−グルコシルマルトトリオース、6−O−α−グルコシルマルトテトラオース、6−O−α−グルコシルマルトペンタオース、6−O−α−マルトトリオシルマルトトリオース、及び6−O−α−(6−O−α−マルトトリオシル−マルトトリオシル)−マルトトリオースに作用する。
(3)分子量
SDS−PAGEで、約67,000乃至約107,000ダルトン。
(4)等電点
アンフォライン含有電気泳動法で、pI約3.6乃至約4.6。
(5)至適温度
pH4.0、60分間反応で、40℃付近。
(6)至適pH
35℃、60分間反応で、pH約4.0乃至約4.5。
(7)温度安定性
pH4.0、60分間保持で、35℃付近まで安定。
(8)pH安定性
35℃、60分間保持で、pH約3.8乃至約6.7で安定。
(9)活性阻害
1mM Hg2+、Pb2+及びFe3+で活性が阻害される。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明のプルラン分解酵素を産生する微生物としては、例えば、オーレオバシディウム(Aureobasidium)属に属する、オーレオバシディウム・ファーメンタス・バラエティー・ファーメンタス(Aureobasidiumfermentans variety fermentans)IFO 6410、オーレオバシディウム・ファーメンタス・バラエティー・フスカ(Aureobasidium fermentans variety fusca)IFO 6402、オーレオバシディウム・プルランス(Aureobasidium pullulans)IFO 6353、オーレオバシディウム・プルランス(Aureobasidium pullulans)IFO 4464などの微生物及びそれらの変異株を例示できる。
【0015】
上記微生物の培養に用いる培地は、これら微生物が生育でき、本発明のプルラン分解酵素の産生能を有するものであればよく、合成培地及び天然培地のいずれでもよい。炭素源としては、上記微生物が生育に利用できればよく、例えば、澱粉、その部分分解物、グルコース、マルトース、マルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、水飴、スクロース、フラクトース、異性化糖、糖蜜などから選ばれる1種又は2種以上を使用することができる。窒素源としては、例えば、アンモニウム塩、硝酸塩などの無機窒素化合物、及び、例えば、尿素、グルタミン酸塩、カゼイン、ペプトン、酵母エキス、コーン・スティープ・リカーなどの有機窒素含有物などから選ばれる1種又は2種以上が用いられる。他に無機成分として、例えば、リン酸塩、マグネシウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、鉄塩などが適宜用いられる。培地におけるこれら炭素源、窒素源及び無機成分の濃度は、適宜設定すればよい。
【0016】
上記微生物の培養条件は、通常、約20乃至約35℃、好ましくは、約25乃至約30℃、pH約1乃至約9、好ましくはpH約2乃至約8から選ばれる条件で、通常、好気的に行われる。培養時間は、微生物が増殖し始める時間以上であればよく、好ましくは20時間乃至150時間である。また、培養液の溶存酸素濃度は特に制限されないが、0.5乃至20ppmが好ましく、通気量を調節したり、攪拌したり、通気に酸素を追加したり、また、ファーメンター内の圧力を高めるなどの手段を採用し得る。また、培養方式は、回分培養又は連続培養のいずれでもよい。
【0017】
上記のようにして、本発明のプルラン分解酵素産生能を有する微生物を培養した後、得られる培養物から本発明のプルラン分解酵素を回収する。本発明の酵素は主に培養物から菌体を除去した除菌液に存在し、除菌液を粗酵素液として採取することも、培養物全体を粗酵素液として用いることも、更には、菌体を適宜担体に固定化し、粗酵素として用いることもでき、常法に従って、濃縮や精製することもできる。培養物から菌体を除去する方法としては、公知の固液分離法、例えば、プレコートフィルター、平膜や中空糸膜などを用いる膜濾過法や遠心分離法などが適宜採用される。濃縮法としては、硫安塩析法、アセトン及びアルコール沈殿法、平膜や中空膜などを用いる膜濃縮法などが適宜採用される。精製法としては、ポリエチレングリコール分画、イオン交換カラムクロマトグラフィー、疎水カラムクロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィーなどが適宜採用され、これら精製法の一種類以上を適宜組み合わせて行うことによって電気泳動で単一なバンドを示す酵素を得ることができる。
【0018】
本発明のプルラン分解酵素の活性は、次のようにして測定する。プルラン(商品名『プルランPI−20』、株式会社林原商事販売)をストルメヤーの方法(Strumeyer,D.H.、アナリティカル・バイオケミストリー(Analitycal Biochemistry)、第19巻、61頁乃至71頁、1967年)に従って水素化ホウ素ナトリウムで還元し、得られた還元化プルランを濃度2.0%(w/v)となるように50mM酢酸緩衝液(pH4.0)に溶解させて基質溶液とし、その基質溶液0.4mlに酵素液0.4mlを加えて、35℃で60分間保持した後、1N水酸化ナトリウム溶液を0.05ml添加して反応を停止させ、その反応液中に生成する還元糖量を、改良パーク−ジョンソン(Park−Johnson)法(Hizukuriら、カーボハイドレート・リサーチ(Carbohydrate Research)、第94巻、205頁乃至213頁、1981年)によって定量し、上記の条件下で1分間に1マイクロモルのグルコースに相当する還元糖を生成するために必要な酵素量を酵素活性1単位と定義した。
【0019】
本発明のプルラン分解酵素の基質としては、通常、Mwが、酵素反応後に得られるプルランのそれよりも大きいプルランが用いられる。基質濃度は、特に限定されず、工業的には、1%(w/v)以上が好適である。反応温度は、酵素が失活しない温度、例えば、4℃乃至50℃、好ましくは25℃乃至40℃の温度で適宜設定すればよい。反応pHは、pH約3.0乃至約7.0の範囲で調整すればよく、好ましくはpH約3.0乃至約5.0の範囲で適宜調整する。反応時間は、酵素反応の進行具合により適宜選択すればよく、通常、基質固形物グラム当たり約0.001乃至約100単位の酵素使用量で、約0.1乃至約100時間である。
【0020】
このようにして得られるプルランは、粘性が適度のレベルにまで低減されているか、又はMw/Mnの比が低減、望ましくは、3未満にまで低減されており、取扱いが容易である上、従来のプルランと同様に、水溶性、造膜性、光沢性、透明性、ガスバリアー性、耐油性、耐塩性、粘着性、接着性、成形性、可食性、難消化性などを有している。
【0021】
上記のようにして得られるプルラン含有溶液は、常法に従って、活性炭で脱色、H型及びOH型イオン交換樹脂で脱塩し、濃縮し、シラップ状プルラン製品にすることも、乾燥して粉末状製品にすることも随意である。必要ならば、更に分子量分画、有機溶媒沈殿分離などにより精製して、より狭い分子量分布幅を有するプルランを得ることも有利に実施できる。このようにして得られる溶液状及び粉末状のプルラン製品及び精製プルラン製品は、分子量標準試薬としてはもとより、飲食物、化粧品、医薬品、農林水畜産品、鉱工業資材など多くの用途に有利に利用できる。
【0022】
飲食物としては、例えば、菓子、乳酸飲料、ゼリー、流動食、粘性を持つ飲料や調味料、海苔や珍味などの加工食品、ビフィズス菌増殖促進剤、ダイエタリーファイバー食品、低カロリー食品、フィルム状乃至シート状食品など、化粧品としては、例えば、練歯磨き、乳液、クリーム、パック、整髪料、シャンプー、リンス、トリートメント、口紅、入浴剤、口中清涼フィルムなどに原材料または中間製品として有利に利用できる。医薬品としては、例えば、軟膏、錠剤、フィルム剤、カプセル剤、代用血漿など、農林水畜産品としては、例えば、コーティング種子、造粒農薬、成形肥料、成形飼餌料など、鉱工業資材としては、例えば、糊剤、サイジング剤などの紙加工資材、廃水処理剤、溶接棒、鋳型などに原材料または中間製品として有利に利用できる。以下、実験で本発明を詳細に説明する。
【0023】
【実験1】
<オーレオバシディウム・プルランスからのプルラン分解酵素の調製>
【実験1−1】
<オーレオバシディウム・プルランスの培養>
スクロース(商品名『グラニュ糖』、台糖株式会社製造)10.0%(w/v)、酵母抽出物(商品名『酵母エキスミーストS』、アサヒビール株式会社製造)0.2%(w/v)、硫酸アンモニウム0.06%(w/v)、リン酸二カリウム0.2%(w/v)、塩化ナトリウム0.1%(w/v)、硫酸マグネシウム・7水塩0.04%(w/v)、硫酸鉄・7水塩0.001%(w/v)及び水からなる液体培地を500ml容三角フラスコ10個それぞれに200ml入れ、オートクレーブで121℃、15分間滅菌し、冷却して、オーレオバシディウム・プルランスIFO 6353を接種し、27℃、230rpmで48時間回転振盪培養した後、得られた培養液を全て混和したものを種培養液とした。
【0024】
スクロース(商品名『グラニュ糖』、台糖株式会社製造)12.15%(w/v)、酵母抽出物(商品名『酵母エキスミーストS』、アサヒビール株式会社製造)0.2%(w/v)、グルタミン酸ナトリウム・1水塩0.12%(w/v)、リン酸二アンモニウム0.06%(w/v)、硫酸アンモニウム0.06%(w/v)、リン酸二カリウム0.15%(w/v)、塩化ナトリウム0.05%(w/v)、硫酸マグネシウム・7水塩0.04%(w/v)、硫酸鉄・7水塩0.001%(w/v)及び水からなる液体培地を調製した。この培地を容量30Lのファーメンターに約20L入れ、115℃、15分間滅菌し、冷却して27℃とした後、種培養液を5%(v/v)で接種し、27℃で96時間通気攪拌培養した。得られた培養液を遠心分離(8,000rpm、15分間)して菌体を分離し、培養上清約19Lを得た。
【0025】
【実験1−2】
<プルランの粘度低減能の測定>
実験1−1で得られた培養上清を用いて、プルランの粘度低減能を測定した。まず、プルラン(商品名『プルランPI−20』、株式会社林原商事販売)を50mM酢酸緩衝液(pH4.0)に溶解して濃度10%(w/v)のプルラン含有溶液を調製した。このプルラン含有溶液1.5mlに実験1−1で得た培養上清0.5mlを加え、35℃で180分間保持した後、1M酢酸緩衝液(pH6.5)を0.2ml添加し、100℃で10分間保持して酵素を失活させた後、30℃まで冷却した。得られた反応溶液の粘度を、回転式E型粘度計(東京計器株式会社製造)を用いて測定した。併行して、35℃で180分間保持しないこと以外、上記と同じ処理を行ったものを対照溶液とし、その粘度を上記と同様に測定した。
【0026】
その結果、対照溶液の粘度は214cPであるのに対して、実験1−1で得られた培養上清を加えて35℃で180分間保持した反応溶液の粘度は167cPであり、この培養上清中にプルラン含有溶液の粘度を低減させる能力を有する物質が存在することが判明した。
【0027】
【実験1−3】
<プルラン分解酵素活性の測定>
実験1−1で得られた培養上清約19Lに硫酸アンモニウムを80%(w/v)飽和となるように添加して塩析し、遠心分離(8,000rpm、15分間)してその上清を回収後、ろ紙で濾過して濾過液約22Lを得た。この濾過液(約22L)について、上述した酵素活性の定義で述べた酵素活性測定法に準じて、プルラン分解酵素活性を測定したところ、プルラン分解酵素活性が認められた。
【0028】
【実験2】
<プルラン分解酵素の精製>
【実験2−1】
<疎水クロマトグラフィー>
実験1−3で得られた濾過液約22Lを、予め2M硫安を含む20mM酢酸緩衝液(pH6.0)で平衡化した『Butyl−Toyopearl 650M』ゲル(東ソー株式会社製)が充填された疎水クロマトグラフィー用カラム(ゲル容量880ml)に供し(流速3ml/min)、次いで、硫安濃度が直線的に2Mから0Mまで減少する濃度勾配で蛋白質を溶出させた。得られた溶出画分について、実験1−3と同様にしてプルラン分解酵素活性を測定したところ、硫安濃度約1.2M付近の溶出画分にプルラン分解酵素活性が検出され、この画分をプルラン分解酵素活性画分(1)として採取した。このプルラン分解酵素活性画分(1)について、実験1―2と同様にしてプルランの粘度低減能を測定したところ、プルラン粘度低減能を有することが判明した。
【0029】
上記のプルラン分解酵素活性画分(1)に終濃度2Mとなるように硫酸アンモニウムを添加し、再度、東ソー株式会社製『Butyl−Toyopearl 650M』ゲルを用いた疎水クロマトグラフィー(ゲル容量30ml)に供し、次いで、硫安濃度が直線的に2Mから0Mまで減少する濃度勾配で蛋白質を溶出させた。得られた溶出画分について、実験1−3と同様にしてプルラン分解酵素活性を測定したところ、硫安濃度約1.2M付近の溶出画分にプルラン分解酵素活性が検出され、この画分をプルラン分解酵素活性画分(2)として採取した。
【0030】
【実験2−2】
<イオン交換クロマトグラフィー>
このプルラン分解酵素活性画分(2)を20mM酢酸緩衝液(pH6.0)に対して透析し、その透析液を遠心分離して不溶物を除いた後、東ソー株式会社製『DEAE−Toyopearl 650S』ゲルを用いた陰イオン交換クロマトグラフィー(ゲル容量30ml)に供し、次いで、塩化ナトリウム濃度が直線的に0Mから0.3Mまで増加する濃度勾配で蛋白質を溶出させた。得られた溶出画分について、実験1−3と同様にしてプルラン分解酵素活性を測定したところ、塩化ナトリウム濃度約0.15M付近の溶出画分にプルラン分解酵素活性が検出され、この画分をプルラン分解酵素活性画分(3)として採取した。
【0031】
このプルラン分解酵素活性画分(3)を20mM酢酸緩衝液(pH6.0)に対して透析し、アマシャム・バイオサイエンス株式会社製『MonoQ HR5/5』カラムを用いた陰イオン交換クロマトグラフィー(ゲル容量1ml)に供し、次いで、塩化ナトリウム濃度が直線的に0Mから0.3Mまで増加する濃度勾配で蛋白質を溶出させ。得られた溶出画分について、実験1−3と同様にしてプルラン分解酵素活性を測定したところ、塩化ナトリウム濃度約0.15M付近の溶出画分にプルラン分解酵素活性が検出され、この画分をプルラン分解酵素活性画分(4)として採取した。上述の各精製工程におけるプルラン分解酵素活性量、比活性、収率を表1に示す。
【0032】
【表1】
Figure 2004261132
【0033】
プルラン分解酵素画分(4)として得られた精製プルラン分解酵素標品をポリアクリルアミドゲル電気泳動法で純度を検定したところ、単一バンドであることが確認され、電気泳動的に極めて高純度の酵素標品であることが判明した。
【0034】
【実験3】
<プルラン分解酵素の性質>
実験2の方法と同様にして得た精製プルラン分解酵素標品(プルラン分解酵素活性画分(4))を用いて、以下の理化学的性質を調べた。
【0035】
【実験3−1】
<作用>
Mwが約422,000のプルランを濃度16%(w/v)となるように50mM酢酸緩衝液(pH4.0)に溶解して基質液とした。この基質液10mlに、精製プルラン分解酵素標品を基質固形物1グラム当たり0.1単位作用させるように加え、30℃で48時間保持して反応させた。この反応溶液を経時的に少量分取し、分取した反応溶液の粘度を実験1−2に記載の方法に準じて測定し、更にプルランのMw及びMnを以下の高速液体クロマトグラフィー(以下、HPLCと略す。)を用いて分析した結果を基に、次のように計算して求めた。
【0036】
<HPLC条件>
(1)カラム:『TSKgel GMPWXL カラム』(東ソー株式会社製造)を2本連結したものを使用。
(2)溶離液:水
(3)カラム温度:30℃
(4)流速:0.5ml/min
(5)検出:示差屈折計『RID−10A』(島津株式会社製造)
<分子量標準品>
プルランP−5(Mw=5,900)、プルランP−10(Mw=11,800)、プルランP−20(Mw=22,800)、プルランP−50(Mw=47,300)、プルランP−100(Mw=112,000)、プルランP−200(Mw=212,000)、プルランP−400(Mw=404,000)、プルランP−800(Mw=788,000)、プルランP−1600(Mw=1,600,000)、プルランP−2500(Mw=2,520,000)(何れも、株式会社林原生物化学研究所製造)を用いた。
<Mw及びMnの計算方法>
(1)分子量曲線の作成
プルランの各分子量標準品を上述のHPLCに供し、各分子量標準品の溶出時間を横軸に、各分子量標準品のMwの常用対数を縦軸にして分子量曲線を作成し、回帰式を求めた。
(2)Mw及びMnの計算
分取した反応溶液を上述のHPLCに供し、検出された全ピークの開始時間から終了時間までを0.2分間隔で分割し、各分割区分の面積(Si)を求めた。次に、各分割区分の溶出時間の中間値を(1)の回帰式に挿入し、対応する分子量(Mi)を算出した。得られたSi及びMiの値を式1及び式2に挿入し、分取した反応溶液のMw及びMnを算出した。
(式1) Mw=Σ(Si×Mi)/ΣSi
(式2) Mn=ΣSi/Σ(Si/Mi)
得られた結果を表2に示す。
【0037】
【表2】
Figure 2004261132
【0038】
表2の結果から明らかなように、本発明のプルラン分解酵素を添加することによって、プルラン含有溶液の粘性及びプルランのMw及びMnは経時的に低減することが判明した。また、反応初期において、プルラン含有溶液の粘性が著しく低減することから、本発明のプルラン分解酵素は、プルランに対してエンド型に作用することが明らかとなった。
【0039】
【実験3−2】
<基質特異性>
各種糖質を基質に、精製プルラン分解酵素標品の作用を試験した。表3記載の各種糖質を水に溶解して各濃度1%(w/v)の基質水溶液を調製し、この基質溶液に精製プルラン分解酵素標品を基質固形物1グラム当たり1単位ずつ加え、27℃、pH4.0で16時間酵素反応させた。各糖質に対する酵素作用の有無を調べるため、展開溶媒としてn−ブタノール、ピリジン、水混液(容量比6:4:1)、薄層プレートとしてメルク社製『キーゼルゲル60』(アルミプレート、10×20cm)を用いるシリカゲル薄層クロマトグラフィー(以下、TLCと略す)を行い、硫酸−メタノール法で反応生成物を検出した。結果を表3に示す。
【0040】
【表3】
Figure 2004261132
【0041】
表3の結果から明らかなように、本発明のプルラン分解酵素は、6−O−α−グルコシルマルトトリオース、6−O−α−グルコシルマルトテトラオース、6−O−α−グルコシルマルトペンタオース、6−O−α−マルトトリオシルマルトトリオース、6−O−α−(6−O−α−マルトトリオシル−マルトトリオシル)−マルトトリオース及びプルランに作用することが判明した。これらの糖質について、酵素反応後の溶液をガスクロマトグラフィー法(以下、「GC法」と略す。)に供し、反応生成物の保持時間を既知糖質の保持時間と比較することにより、生成物を調べた。尚、GC分析は、GC装置として株式会社島津製作所製『GC−16A』を、カラムはジー・エル・サイエンス株式会社製『2%シリコンOV−17/クロモゾルブW』を充填したステンレスカラム(3mmφ×2m)を用いて、キャリアーガスである窒素ガスを流量40ml/分で流し、160℃から320℃まで7.5℃/分の速度で昇温させ、検出は水素炎イオン検出器を用いて行った。結果を表4に示す。
【0042】
【表4】
Figure 2004261132
【0043】
表4の結果より、本発明のプルラン分解酵素は、プルランのみならず、6−O−α−グルコシルマルトトリオース、6−O−α−グルコシルマルトテトラオース、6−O−α−グルコシルマルトペンタオース、6−O−α−マルトトリオシルマルトトリオース、6−O−α−(6−O−α−マルトトリオシル−マルトトリオシル)−マルトトリオースに作用することが判明した。また、本発明のプルラン分解酵素は、表4に示す基質の構造中のα−1,6グルコシド結合に隣接する還元性末端側のα−1,4グルコシド結合を加水分解する作用を有することが判明した。
【0044】
【実験3−3 分子量】
精製プルラン分解酵素標品をSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動に供し、同時に泳動した分子量マーカー(日本バイオ・ラッド・ラボラトリーズ株式会社製)と比較して本酵素の分子量を測定したところ、約67,000乃至約107,000ダルトンの範囲に単一のバンドが検出された。
【0045】
【実験3−4 等電点】
精製プルラン分解酵素標品を2.2%(w/v)アンフォライン(アマシャム・バイオサイエンス社製)含有等電点ポリアクリルアミドゲル電気泳動に供し、同時に泳動した等電点マーカー(アマシャム・バイオサイエンス社製)と比較して本酵素の等電点を求めたところ、pI約3.6乃至約4.6であった。
【0046】
【実験3−5 至適温度】
活性測定法に準じて調べた。結果は、図1に示すように、pH4.0、60分間反応で、約40℃が至適である。
【0047】
【実験3−6 至適pH】
活性測定法に準じて調べた。結果は、図2に示すように、35℃、60分間反応で、pH約4.0乃至4.5が至適である。
【0048】
【実験3−7 温度安定性】
酵素溶液を各温度で60分間保持し、水冷した後、残存する酵素活性を活性測定法に準じて調べた。結果は、図3に示すように、pH4.0で、約35℃付近まで安定である。
【0049】
【実験3−8 pH安定性】
酵素溶液を各pHの100mM酢酸緩衝液中で、35℃、60分間保持した後、pHを4.0に調整し、残存する酵素活性を活性測定法に準じて調べた。結果は、図4に示すように、pH約3.8乃至約6.7で安定である。
【0050】
【実験3−9 活性阻害】
活性測定法に準じて調べた。1mM Hg2+、Pb2+及びFe3+で活性が阻害される。
【0051】
【実験4】
【プルラン分解試験】
Mwが約395,000のプルランを含有する水溶液(最終濃度1%(w/v))に、実験2で得た精製プルラン分解酵素標品を基質固形物1グラム当たり0.1単位作用させ、30℃、pH4.0で24時間保持した反応溶液を経時的にサンプリングした。サンプリングした反応溶液を100℃で10分間加熱して酵素を失活させた後、反応溶液中のプルランの分子量を、実験3−1に記載の『TSKgel GMPWXL カラム』(東ソー株式会社製造)を用いるHPLC法にて測定し、更に、糖組成を、『MCIgel CK04SS カラム』(三菱化学株式会社製造)を2本連結したものを用いたHPLC法にて、水を溶離液とし、カラム温度80℃、流速0.4ml/minの条件で、検出は示差屈折計RID−10A(島津株式会社製造)を用いて分析した。併行して、プルラナーゼ(商品名『プロモザイム400L』、ノボザイムズジャパン株式会社製造)を、反応pHを5.0とした以外は上記と同様にしてプルランに作用させ、経時的に反応溶液中のプルランの分子量測定及び糖組成分析を行った。本発明のプルラン分解酵素によるプルランの分子量及び糖組成の変化を表5に、プルラナーゼによるプルランの分子量及び糖組成の変化を表6に示した。
【0052】
【表5】
Figure 2004261132
【0053】
【表6】
Figure 2004261132
【0054】
表5及び表6の結果より、プルラナーゼをプルランに作用させた場合、プルラン含有溶液のMw/Mnの比は約4乃至11まで増加するのに対して、本発明のプルラン分解酵素をプルランに作用させた場合は、Mw/Mnの比は3未満を維持し、プルランの分子量分布幅を広げることなく、基質としてのプルランより低分子のプルランを製造し得ることが明らかとなった。更に、Mwが約46,000のプルランを生成せしめる時の、両酵素のグルコース重合度(DP)21以下のオリゴ糖生成量を比較すると、本発明のプルラン分解酵素の場合が1.8%であったのに対し、プルラナーゼの場合は11.3%であり、本発明のプルラン分解酵素と比較して約7倍の値であった。以上の結果より、本発明のプルラン分解酵素は、グルコース重合度の大きい単位でプルランを分解しやすい特性を有しており、この特性が故に、プルランの分子量分布幅を広げることなく、基質としてのプルランより低分子のプルランを生成すると推定された。尚、基質液として、Mw/Mnの比が約10と大きい高分子プルラン含有溶液に本発明のプルラン分解酵素を作用させた際も、上記と同様にプルランのMw及びMnは徐々に低減し、更にプルラン含有溶液の粘性及びMw/Mnの比も徐々に低減した。以下、本発明の実施例を述べる。
【0055】
【実施例1】
プルラン(Mwが約458,000、Mnは約66,800、Mw/Mnの比が約6.9)を濃度10%(w/v)となるように100mM酢酸緩衝液(pH4.0)に溶解し、粘度120cPの基質溶液を調製した。この基質溶液に実験2の方法で得た精製プルラン分解酵素標品をプルランの固形物1グラム当たり0.1単位作用させるように加え、30℃で8時間保持してプルランを分解させ、プルラン溶液を得た。
【0056】
本品は、粘度8.6cPと粘性が低く、且つ、Mw/Mnの比が3.9であり、狭い分子量分布幅を有する、取り扱いが容易なプルラン溶液であり、造膜性、光沢性、透明性、ガスバリアー性、耐油性、耐塩性、粘着性、接着性、成形性、可食性、難消化性などを有していることから、分子量標準試薬はもとより、飲食物、化粧品、医薬品、農林水畜産品、鉱工業資材など多くの用途に有利に利用できる。
【0057】
【実施例2】
8時間の保持時間を24時間とした以外は、実施例1と同様にし、プルラン溶液を得た。
【0058】
本品は、粘度4.7cPと粘性が低く、且つ、Mw/Mnの比が2.9であり、狭い分子量分布幅を有する、取り扱いが容易なプルラン溶液であり、造膜性、光沢性、透明性、ガスバリアー性、耐油性、耐塩性、粘着性、接着性、成形性、可食性、難消化性などを有していることから、分子量標準試薬としてはもとより、飲食物、化粧品、医薬品、農林水畜産品、鉱工業資材など多くの用途に有利に利用できる。
【0059】
【実施例3】
培養時間を72時間とした以外は、実験1−1と同様にして、オーレオバシディウム・プルランスを培養した。続いて、この培養液のpHを、水酸化ナトリウムを用いて4.5に調整し、温度を35℃に設定した後、このpH及び温度に制御しつつ、実験2の方法で得たプルラン分解酵素を培養液1ml当たり0.005単位加え、緩やかに攪拌しながら4時間保持してプルランを分解した。得られた培養液を遠心分離(8,000rpm、15分間)して菌体を分離し、プルランを含有する上清を得、常法に従って、脱色、脱塩精製し、乾燥、粉末化してプルラン粉末を得た。
【0060】
本品は、Mnが約10万、Mw/Mnの比が2.85と3未満であり、狭い分子量分布幅を有する、取り扱いが容易なプルランであり、水溶性、造膜性、光沢性、透明性、ガスバリアー性、耐油性、耐塩性、粘着性、接着性、成形性、可食性、難消化性などを有していることから、分子量標準試薬としてはもとより、飲食物、化粧品、医薬品、農林水畜産品、鉱工業資材など多くの用途に有利に利用できる。
【0061】
【実施例4】
4時間の保持時間を10時間とした以外は、実施例3と同様にし、プルラン粉末を得た。
【0062】
本品は、Mnが約4万、Mw/Mnの比が、2.90であり、狭い分子量分布幅を有する、取り扱いが容易なプルランであり、水溶性、造膜性、光沢性、透明性、ガスバリアー性、耐油性、耐塩性、粘着性、接着性、成形性、可食性、難消化性などを有していることから、分子量標準試薬としてはもとより、飲食物、化粧品、医薬品、農林水畜産品、鉱工業資材など多くの用途に有利に利用できる。
【0063】
【発明の効果】
上述のように、本発明は、プルラン分解酵素とその製造方法並びに用途に関し、詳細には、プルランに作用させると、α−1,6グルコシド結合に隣接する還元性末端側のα−1,4グルコシド結合をエンド型に加水分解し、その粘性を低減するプルラン分解酵素とその製造方法、及び当該酵素を用いるプルランの分解方法、並びに当該酵素又は当該酵素を産生する能力を有する微生物を用いる、低粘性で狭い分子量分布幅を有するプルランの製造方法に関する。斯かる本発明によれば、低粘性で狭い分子量分布幅を有するプルランを味質の変化無く、容易に製造し得る。斯かるプルランは、粘性が低く、且つ、Mw/Mnの比が小さく、取扱いが容易である上、水溶性、造膜性、光沢性、透明性、ガスバリアー性、耐油性、耐塩性、粘着性、接着性、成形性、可食性、難消化性などを有していることから、試薬はもとより、飲食物、化粧品、医薬品、農林水畜産品、鉱工業資材など多くの用途に有利に利用できる。
【0064】
本発明は斯くも顕著な作用効果を奏する発明であり、斯界に貢献すること誠に多大な意義ある発明である。
【0065】
【図面の簡単な説明】
【図1】オーレオバシディウム・プルランスIFO 6353由来のプルラン分解酵素の活性に及ぼす温度の影響を示す図である。
【図2】オーレオバシディウム・プルランスIFO 6353由来のプルラン分解酵素の活性に及ぼすpHの影響を示す図である。
【図3】オーレオバシディウム・プルランスIFO 6353由来のプルラン分解酵素の温度安定性を示す図である。
【図4】オーレオバシディウム・プルランスIFO 6353由来のプルラン分解酵素のpH安定性を示す図である。

Claims (6)

  1. 下記の理化学的性質を有するプルラン分解酵素。
    (1)作用
    プルランに作用させると、α−1,6グルコシド結合に隣接する還元性末端側のα−1,4グルコシド結合をエンド型に加水分解することにより、その粘性を低減する。
    (2)基質特異性
    プルランのみならず、6−O−α−グルコシルマルトトリオース、6−O−α−グルコシルマルトテトラオース、6−O−α−グルコシルマルトペンタオース、6−O−α−マルトトリオシルマルトトリオース、及び6−O−α−(6−O−α−マルトトリオシル−マルトトリオシル)−マルトトリオースに作用する。
    (3)分子量
    SDS−PAGEで、約67,000乃至約107,000ダルトン。
    (4)等電点
    アンフォライン含有電気泳動法で、pI約3.6乃至約4.6。
    (5)至適温度
    pH4.0、60分間反応で、40℃付近。
    (6)至適pH
    35℃、60分間反応で、pH約4.0乃至約4.5。
    (7)温度安定性
    pH4.0、60分間保持で、35℃付近まで安定。
    (8)pH安定性
    35℃、60分間保持で、pH約3.8乃至約6.7で安定。
    (9)活性阻害
    1mM Hg2+、Pb2+及びFe3+で活性が阻害される。
  2. プルラン分解酵素が、オーレオバシディウム属に属する微生物由来の酵素である請求項1記載のプルラン分解酵素。
  3. 請求項1又は2記載のプルラン分解酵素を産生する能力を有するオーレオバシディウム属に属する微生物を培養し、培養物から当該プルラン分解酵素を採取することを特徴とするプルラン分解酵素の製造方法。
  4. 請求項1又は2記載のプルラン分解酵素を用いるプルランの分解方法。
  5. 請求項1又は2記載のプルラン分解酵素及び/又は当該プルラン分解酵素活性を有する微生物をプルラン含有溶液に接触せしめ、粘性及び/又は重量平均分子量/数平均分子量の比が低減されたプルランを生成せしめ、これを採取することを特徴とするプルランの製造方法。
  6. 重量平均分子量/数平均分子量の比が3未満であることを特徴とする請求項5記載のプルランの製造方法。
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