JP3066044B2 - 窒素酸化物除去用板状触媒およびその製造方法 - Google Patents

窒素酸化物除去用板状触媒およびその製造方法

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JP3066044B2
JP3066044B2 JP2183555A JP18355590A JP3066044B2 JP 3066044 B2 JP3066044 B2 JP 3066044B2 JP 2183555 A JP2183555 A JP 2183555A JP 18355590 A JP18355590 A JP 18355590A JP 3066044 B2 JP3066044 B2 JP 3066044B2
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【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は窒素酸化物除去用板状触媒およびその製造方
法に係り、特に無機繊維織布に触媒組成物を被覆した窒
素酸化物除去用板状触媒において、触媒活性を損なわな
いで、応力発生部分の損傷を防止し、耐摩耗性を向上し
た窒素酸化物除去用板状触媒およびその製造方法に関す
る。
〔従来の技術〕
一般に排ガス中の窒素酸化物を除去する触媒(以下、
単に触媒と呼ぶ)には、酸化チタン(TiO2)とモリブデ
ン(Mo)、タングステン(W)、バナジウム(V)等の
酸化物からなる触媒組成物を、粒状、板状、ハニカム状
などに成形したものが用いられている。中でも重油や石
炭などを燃料にするボイラ排ガスの場合には、煤塵や灰
を多量に含むガスを低圧損で処理する必要があり、板状
触媒を組合わせたものや、開口率の大きいハニカム状触
媒などのガスの流れ方向に平行な通路を有するものが用
いられている。かかる触媒としては、金属基板に触媒成
分を塗布したもの(特公昭61−28377号公報)、触媒成
分をハニカム状に押出し成形したもの(特公昭60−3856
号公報など)、あるいはセラミック繊維マットや紙をハ
ニカム状に成形後、触媒前駆体物質を被覆したもの(特
公昭58−11253号公報など)等の数多くのものが知られ
ており、すでに実用に供されている。
〔発明が解決しようとする課題〕
上記従来技術のうち、金属基板に触媒を塗布したもの
は、平板部分が多いため圧損が小さく灰が堆積しにくい
という点では優れたものであるが、重量が大きく、また
金属基板が酸化されるという難点があった。
また、触媒成分を押出し成形法によってハニカム状に
成形したものは、その成形技術の限界によって成形体が
150mm角程度の寸法に制限され、数百m3も必要とする大
容量装置に充填するためには、それらの小型形状のもの
を多数組上げる必要があった。さらに、成形体が衝撃力
に弱いという問題があった。
さらに、無機繊維布、紙の表面に触媒成分を被覆する
ものは、衝撃力に強い反面、機械的強度が低く排ガス中
に含まれる灰粒子によって摩耗するという問題を有して
いた。
そこで、これらの問題点を解決するために発明者らの
発明になる未公知の出願がある。すなわち、無機繊維製
織布(以下、セラミックスクリーン、または単にスクリ
ーンと称す)に無機酸化物微粒子を含浸して強化し、こ
れに酸化チタンを主成分とする触媒組成物と綿状無機繊
維を水に分散して混合したペースト、またはスラリを塗
布して被覆し、ローラプレス等で圧密化するものであ
る。
しかしながら、このセラミックスクリーン等を基材と
する板状触媒の端部および波形成形部では、流体の圧力
または自重のため圧縮応力が発生し、破損さらに破壊に
到るという現象が生じる恐れがある。また、薄板のため
にハンドリング時に損傷を起こしたり、特に石炭を主燃
料とするボイラの脱硝装置においては、排ガス中に含ま
れる多量の煤塵によって、触媒体表面および触媒のガス
入口に相当する端面部が容易に摩耗して活性に影響を及
ぼしたり、あるいは破損するということも考えられる。
こうした触媒の強度向上策としては、一般的な例として
触媒成形体や原料にシリカゾルのような無機酸化物微粒
子の添加が考えられ、ハニカム成形体へシリカゾルを含
浸した後、乾燥によってシリカの多孔質ゲルを形成させ
て高密度強化を図る方法(例えば特開昭55−155740号公
報)、あるいは硫酸チタンやチタニア粉末ヘシリカゾル
または微粒子ケイ酸を直接混合し、成形性、耐熱性の改
善およびシリカ微粒子の表面効果による結合力増加を図
った触媒の製造方法(例えば特公昭56−6334号公報、特
公昭1−14807号公報)がある。前者の方法は含浸工程
を進めるにつれて、触媒にシリカ分のみが含浸されてい
き含浸液側の固体濃度が薄くなっていくため、製品特性
を安定化させるためには含浸液中の固体濃度の厳密な管
理が必要である。さらには被含浸材である触媒体の特
性、例えば細孔分布等の影響を受け、含浸後に一定の特
性を得ようとすれば、これら被含浸材の特性のバラツキ
を極力少なくする必要がある。工業的に見ても製造プロ
セスの中に含浸工程がふえることは好ましくない。一
方、後者の方法は主に粒子間の結合力を高める目的で、
あらかじめ触媒原料にシリカゾルを混合したものである
が、本法のようにスクリーンと触媒成分を複合化させて
高強度化を図った成形体においては、単に粒子結合を向
上しただけでは強度の改善はなされない。このように、
本法のごとくスクリーンを用いた板状触媒の成形体の強
度向上に、シリカゾルを混合した触媒成分を含むペース
トを用いた例はない。
本発明は従来技術の有するかかる問題点をなくし、無
機繊維織布等を基材とする板状触媒において、簡略した
製造プロセスで製品特性のバラツキを少なくし、活性を
損なうことなく、圧縮応力発生部の圧壊防止およびハン
ドリング時の損傷を防止し、さらに排ガス中の煤塵に対
して触媒層の摩耗、損傷を防止するに好適な窒素酸化物
除去用板状触媒およびその製造方法に関するものであ
る。
〔課題を解決するための手段〕
上記した従来技術の問題点は、無機繊維織布に触媒組
成物を塗布して成形した窒素酸化物除去用板状触媒にお
いて、触媒組成物として酸化チタンを主成分とする触媒
粉末にあらかじめシリカゾルを添加した触媒ペーストを
用いたことを特徴とする窒素酸化物除去用板状触媒、 および無機繊維織布に触媒成分を塗布したのち乾燥、
焼成する窒素酸化物除去用板状触媒の製造方法におい
て、無機繊維織布に酸化チタン、シリカ、ポリビニール
アルコールからなる強化剤を含浸後乾燥して強化スクリ
ーンとし、酸化チタンを主成分とする触媒粉末にシリカ
ゾルを添加して作った触媒ペーストを、上記強化スクリ
ーンに塗布し、乾燥、焼成することを特徴とする窒素酸
化物除去用板状触媒の製造方法により解決される。
〔作用〕
本触媒のようにセラミックスクリーン(無機繊維織
布)を用いた構造体は、スクリーンと触媒の界面部が強
度特性に影響を与えることがわかっており、触媒ペース
トを塗布する際、該スクリーンへのペーストの回り込み
ぐあいは重要である。本発明のごとく、ペースト中で水
のように流動するシリカゾルを混合することによって、
同一の粒子濃度ではペーストの流動性は水のみの触媒ペ
ーストよりも良好にすることが可能であり、したがって
塗布した際のスクリーンへの回り込みがよく、界面部が
よく密着した強度の高いものとなり、またスクリーンの
損傷も少ない。さらに、耐摩耗性の点からはペースト中
の水分量を低下させ、触媒密度を向上させることが必要
であるが、本発明になるシリカゾル混合では、水分量を
低下させてもペーストの流動性は良好で、耐摩耗性の向
上につながる。
また、塗布後にローラやプレスで荷重を加えながら所
定の温度で加熱成形することによって、ペースト中では
あたかも水のような挙動をしていたシリカゾルが、水分
が飛んで多孔質性のシリカゲルとなって、表面付近の触
媒粒子を結合させるとともに、スクリーンと触媒の界面
部分をより一層強固にするため、触媒体の強度特性は著
しく向上する。したがって、加熱成形後の触媒体のハン
ドリングが容易となり、またその際の損傷を少なくする
ことができる。。
さらに、最終的に触媒体を焼成することによって、触
媒粒子の結合力が発現して一層高強度化され、前記の作
用と合わさってスクリーンとの界面部が強い高密度な触
媒体となるため、石炭灰による界面部の剥離や触媒粒子
の摩耗に耐えることができ、上記の目標を達成すること
ができる。また、触媒内部に充填されたシリカゾルは、
微細な多孔質であるためこのように高密度化しても、脱
硝率の低下は少ない。
〔実施例〕
全体の構成 全体の触媒調製プロセスを第1図に示す。スクリーン
にはシリカを主成分とするガラス繊維織布(目数10/inc
h)を用い、これに耐熱性向上、成形時の損傷防止のた
めにTiO2/SiO2/PVA(ポリビニールアルコール)の3成
分からなる強化剤を含浸後、乾燥して強化スクリーンを
作成した。さらに、本触媒では活性付与と保護を目的と
して、強化スクリーンに触媒粉末/SiO2スラリをプリコ
ートしている。次に、以下で詳しく述べるシリカゾルを
混入した触媒ペーストを、該スクリーン2枚の間に挟み
込むようにして、上下1対のローラの間に供給して、7.
5m/minの速度で圧延塗布を行い、次いで波形の形状がつ
いた加熱ローラ間に供給して200℃の温度で加熱成形し
た後、最終的に550℃/2h焼成を行って触媒体を得た。
触媒ペーストの調製 (a)触媒組成物微粒子(触媒粉末)の調製 酸化チタン(TiO2)を30wt%含有する硫酸法によるメ
タチタンスラリ60kgに、メタバナジン酸アンモニウム
(NH4VO3)0.85kg、およびモリブデン酸アンモニウム
((NH46Mo7O24・4H2O)2.16kgを加え、140℃に加熱
したニーダを用いて水を蒸発させながら混練した。得ら
れた水分38%のペースト状物質を押出し造粒機により3m
mφの柱状に成形し、次いで流動層乾燥機により乾燥し
た。この乾燥顆粒を空気を流しながら、550℃で2h焼成
後、ハンマミルを用いて20μm以下が90%以上の粒度に
なるように粉砕し、触媒組成物微粒子を得た。
(b)触媒ペーストの調製 上記触媒組成物微粒子に粒子径12nm、粒子濃度20wt%
の酸性シリカゾルを所定量加えて混合した後、少量の水
とともにカオウール短繊維を、該触媒組成物微粒子に対
し15wt%となるように加えて、ニーダで1時間混練し、
本実施例触媒1を調製した。同様にして粒子径12nm、粒
子濃度33wt%の酸性シリカゾルを用いて実施例触媒2を
調製した。これら調製したペーストのSiO2/触媒粉末成
分比、および水分量を第2図に示す。また比較例触媒と
して、シリカゾル無添加で、後は同様な条件で触媒を調
製した。
本実施例触媒、比較例触媒を第7図に示す曲げ強度試
験法、第8図に示す硬さ試験法、および第1表に示す脱
硝率測定条件に従って、曲げ強度、耐剥離性および脱硝
率を測定した。
まず、第2図は触媒ペースト中の水分量と針入度の関
係を示すものである。針入度とは、アスファルトなどの
稠度を示す指標であり、測定原理は、一定のおもりを乗
せた針を一定時間被側定材に押し付けた場合の針入深さ
を測定するものである。本発明の試験では、JIS K 2
208に規定された方法に従って実施した。本実施例触媒
ペースト1、2ともに、針入度は比較例触媒ペーストよ
りも大きく、すなわち流動性が良好であることを示して
いる。また、同一の針入度では本実施例ペーストのほう
が比較例よりも低水分であり、このことは塗布後の触媒
体の高密度化が可能なことを示すものである。なお、針
入度は少なくとも60以上必要であり、それ以下ではペー
ストが硬すぎて塗布する際にスクリーンが損傷を受ける
恐れがあり、そういう意味からもシリカゾルの添加は流
動性を良好にして強化が図れる有効な手法といえる。ま
た、シリカゾルの添加は、触媒粉末微粒子乾燥体に直接
するのがよく、触媒粉末と水を混合した後の添加では、
シリカゾルが均一に触媒粉末内部まで侵入せず、添加効
果が充分に発現しない。
次に、触媒成形体の強度特性を第3図に示す。この図
は曲げ試験体の荷重−変位曲線を示すものであるが、ス
クリーンと触媒の密着性をあらわす初期の傾き(ヤング
率)に着目すると、明らかに本実施例触媒のほうが比較
例触媒より大きい。この結果は、シリカゾルの充填によ
ってペーストの流動性の良好なペーストになり、スクリ
ーンへの回り込みがよくなったところに荷重を加えなが
ら加熱成形することによって、シリカゾルがゲルになっ
てさらに密着性がよくなり、界面部が補強されるととも
に高密度化がなされたためと考えられる。このような高
強度化がなされることによって、製造時の板状触媒体の
ハンドリング性が向上し、また石炭灰を含む実機プラン
トにおいても触媒粒子の摩耗、界面部の剥離を防ぐこと
が可能と考えられる。
また、第4図および第5図は、それぞれSiO2/触媒比
および触媒ペースト中の水分量と触媒体の引っかき幅の
関係を調べたものである。SiO2/触媒比が大きくなるほ
ど、また触媒ペースト中の水分量が少なくなるほど、引
っかき幅(第8図参照)は小さくなる傾向を示してい
る。引っかき幅が小さいということは、粒子が剥離しに
くいということ、すなわち耐摩耗性と関連があると考え
られる。現在、石炭焚き用実機プラントで実績のある耐
用年数5年以上の含浸触媒では、引っかき幅は0.20mm前
後であり、このことより少なくとも0.22mm以下となるよ
うな強度が必要と考えられる。耐摩耗性という観点から
は、第4、5図よりSiO2/触媒比0.08以上、触媒ペース
ト中の水分量25wt%以下となるようシリカゾルを添加す
ることが望ましいといえる。なお、本発明はシリカゾル
の粒径にかかわらず、その効果が発現するものである
が、耐摩耗性に関しては平均径で25nm以下の粒子を用い
るのが望ましい。
次に、脱硝率への影響を調べたのが第6図であるが、
第1表に示す条件で測定した脱硝率で比較例触媒の値を
1とすると、本実施例触媒は0.95〜0.85と低下率は少な
く、特に問題はないといえる。
以上、本発明となる触媒の特性、物性をまとめたが、
本発明によれば含浸法のように含浸強化液の性状、被含
浸触媒の特性に影響を受けることはないので、安定した
特性を持つ触媒の製造が可能である。また、製造プロセ
スに新たに強化工程を入れる必要がないため、簡単な調
製法で高強度な触媒が得られる。
本発明では、触媒ペーストにシリカゾルを混入してス
クリーンに塗布して触媒体を得たが、その他、例えばTi
O2等の微粒子と混合してペーストを調製し、スクリーン
に塗布して触媒担体としての応用も考えられる。
〔発明の効果〕
本発明によれば、製造プロセスを簡略化した形で容易
に板状触媒の強度および耐摩耗性を高めることができる
ので、圧縮応力発生部の圧壊防止、ハンドリング時の破
損防止、さらには異物、ダストの衝突による破損防止等
に多大の効果がある。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明の触媒の調製プロセスを示す図、第2
図は、本発明の実施例触媒および比較例触媒のペースト
中の水分量、成分比と針入度の関係を示す図、第3図
は、本発明と比較例触媒についての荷重−変位曲線図、
第4〜5図は、調製した触媒体の硬さ試験の結果を示す
図、第6図は、本発明触媒の脱硝率を示す図、第7〜8
図は、触媒の特性を評価するために用いた曲げ試験法、
硬さ試験法を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI B01J 37/02 301 B01D 53/36 102D (56)参考文献 特開 昭59−32948(JP,A) 特開 昭54−20983(JP,A) 特開 昭60−190235(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B01J 23/24 B01D 53/94 B01J 23/22 B01J 35/02 311 B01J 35/06 B01J 37/02 301

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】無機繊維織布に触媒組成物を塗布して成形
    した窒素酸化物除去用板状触媒において、触媒組成物と
    して酸化チタンを主成分とする触媒粉末にあらかじめシ
    リカゾルを添加した触媒ペーストを用いたことを特徴と
    する窒素酸化物除去用板状触媒。
  2. 【請求項2】請求項(1)において、触媒ペースト中の
    触媒粒子に対するシリカ(SiO2)の重量比が0.08〜0.2
    であることを特徴とする窒素酸化物除去用板状触媒。
  3. 【請求項3】無機繊維織布に触媒成分を塗布したのち乾
    燥、焼成する窒素酸化物除去用板状触媒の製造方法にお
    いて、無機繊維織布に酸化チタン、シリカ、ポリビニー
    ルアルコールからなる強化剤を含浸後乾燥して強化スク
    リーンとし、酸化チタンを主成分とする触媒粉末にシリ
    カゾルを添加して作った触媒ペーストを、上記強化スク
    リーンに塗布し、乾燥、焼成することを特徴とする窒素
    酸化物除去用板状触媒の製造方法。
  4. 【請求項4】請求項(3)において、上記触媒ペースト
    を針入度が60以上であるように調製することを特徴とす
    る窒素酸化物除去用板状触媒の製造方法。
  5. 【請求項5】請求項(3)において、強化スクリーンに
    触媒粉末とシリカの混合スラリをプリコートしたのち、
    前記触媒ペーストを塗布することを特徴とする窒素酸化
    物除去用板状触媒の製造方法。
  6. 【請求項6】請求項(3)において、強化スクリーンに
    触媒ペーストを塗布したのち、所定形状に加熱しながら
    成形し、この成形体を乾燥、焼成することを特徴とする
    窒素酸化物除去用板状触媒の製造方法。
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