JP3065823B2 - 被膜特性の極めて優れる無方向性電磁鋼板及びその製造方法 - Google Patents
被膜特性の極めて優れる無方向性電磁鋼板及びその製造方法Info
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Description
占積率等の焼鈍前の被膜特性が優れ、且つ歪取り焼鈍後
の被膜特性として、耐焼付き性、被膜潤滑性、耐蝕性、
絶縁性等が極めて優れる無方向性電磁鋼板とその製造方
法に関する。
るために、鋼板表面に絶縁被膜が処理され、焼付け処理
が施されて使用される。この、電磁鋼板が使用されるモ
ーター或いはトランスの鉄心は電磁鋼板或いはストリッ
プを所定の幅にスリット後、連続的に鉄心形状に打ち抜
くか、切断後、積層し、この積層体のエッジ部を溶接或
いはカシメて固定するプロセスによって製作される。鉄
心はその後必要に応じて700〜800℃の温度域で歪
取り焼鈍(以下単に焼鈍と記す)を施された後、巻線が
なされ、ケースに挿入されて最終製品とされる。
縁被膜は、絶縁性に優れていることは勿論、打ち抜き
性、密着性、耐熱性、耐油性に優れると共に、電磁鋼板
の占積率を低下せしめないといった特性を有することが
要求される。又特殊なケースとして、トランス用鉄心
は、例えば、EIコアのように焼鈍後に再度、積層工程
がある場合には、鋼板表面の滑り性が積層時の作業効率
を左右するため、製品の絶縁被膜は滑り性、耐キズ付き
性等が優れていて、鉄心加工工程での作業性が優れてい
ることが併せて重要である。
させるべく、種々の絶縁被膜形成方法が提案されてき
た。一般には、1)リン酸塩又はクロム酸塩を主成分と
する全無機成分系の塗布剤を用いるもの、2)クロム酸
塩をベースとし、有機樹脂を添加配合する半有機成分系
の塗布剤を用いるもの、3)全量有機物からなる全有機
成分系の塗布剤を用いるもの、の3種類である。1)の
全無機成分系の塗布剤を用いる場合、耐熱性、溶接性に
優れた電磁鋼板を得ることはできるが、打ち抜き性、密
着性が著しく劣る、3)の全有機系の塗布剤を用いる場
合には、打ち抜き性、密着性の良好な電磁鋼板とするこ
とはできるが、耐熱性、溶接性が悪いという問題があ
る。前記、両者の欠点を補完すべく提案されているのが
2)の半有機成分系の塗布剤を用いるものである。
成方法の改善策が提案されている。例えば、所定の形状
に打ち抜き、或いは切断加工された鋼板の表面形状をコ
ントロールする方法として、特開昭52−33846号
公報にはリン酸系、クロム酸系の1種又は2種以上と有
機樹脂の混合被膜を形成するに際し、処理液中に有機樹
脂粒子を添加して表面粗さを2〜10μmHmax の打ち
抜き性、溶接性の優れた電気絶縁被膜を形成する方法に
於いて、粒径が5〜10μmの有機樹脂粒子を用い、こ
れを予め、従来のエマルジョン樹脂に添加して、均一に
分散後、無機物質に混合し、鋼板表面に塗布焼付けする
方法が提案されている。これにより、表面粗度が粗くな
って、溶接時の通気性が良くなり、良好な溶接性が得ら
れるものである。
歪取り焼鈍後の被膜特性の優れた無方向性電磁鋼板の製
造方法として、CrO3 100重量部、Al,Mg,C
a,Znから選ばれる酸化物の1種又は2種以上を20
〜40重量部、粒子径0.2〜0.5μmに調整したア
クリル、スチレン、酢ビ及び/又はこれらの共重合体か
らなる樹脂の1種又は2種以上の微粒子エマルジョン溶
液10〜60重量部、粒子径を1〜50μmに調整した
メチルメタアクリレート、ポリアクリルニトリル、ポリ
スチレン、セルローズ、シリコン、メラミン、フェノー
ル、ポバール樹脂及び/又はこれらの共重合体、架橋体
の1種又は2種以上を2〜30重量部からなるコーティ
ングが開示されている。これにより、打ち抜き性、溶接
性等が良好で且つ、歪取り焼鈍後の特に潤滑性が優れ、
さらに、絶縁性、耐蝕性等が著しく優れるものである。
は打ち抜き性、電気絶縁性及び耐蝕性特に耐水性の優れ
た被膜の形成法が提案されているが、下塗り被膜として
リン酸塩系処理液を乾燥後の膜厚が0.2〜1.0μm
になるように塗布し、これを焼付けて非晶質被膜を生成
した後、この上にポリエステル系、エポキシエステル系
及びアクリル系樹脂の1種又は2種以上の水溶性樹脂又
は水エマルジョン樹脂を乾燥膜厚として3〜12μmに
なるように塗布し、焼付けるものである。
ース樹脂としてはエマルジョン樹脂を用いる場合、粒子
径は0.3μm以下のような微粒子エマルジョン樹脂を
用い、表面粗さを得るために添加する粗粒子の樹脂とし
て、いずれも極端に粒子径の粗い粉体樹脂を使用するも
のである。このため粗粒子樹脂の添加による効果は得ら
れているものの問題点として、粗粒子の添加時の樹脂粉
末の凝集や、これによる被膜中での粒子の不均一性や塗
れ性の悪さのために、被膜特性が安定しない問題があ
る。又、耐熱性、溶接性等の向上のために、かなり大量
の粗粒子樹脂添加の必要性がある。このため、占積率の
大幅な低下や被膜外観を劣化させる場合がある。又、特
公昭58−103107号公報に提案された方法のよう
に無機被膜−有機樹脂の二重塗布方式に於いても、上塗
りの有機被膜の耐熱性がないため焼鈍後の被膜特性を決
定的に改善する方法は得られていない。
有機系被膜に関しては、安定的に表面形状をコントロー
ルし、打ち抜き性、溶接性等が良好で、且つ、被膜の耐
熱性を向上させることにより、焼鈍後の潤滑性、耐蝕
性、絶縁性等に優れた製品が鉄心加工メーカーより強く
望まれている。
下塗り無機−上塗り有機+無機系成分からなる二層被膜
からなり、表面形状を上塗りの粗粒エマルジョン樹脂に
よりコントロールされた電磁鋼板に関わり、電磁鋼板使
用時に於ける打ち抜き性、溶接性が良好で、歪取り焼鈍
後の焼付き性、被膜潤滑性、耐蝕性、絶縁性、密着性等
の優れた無方向性電磁鋼板とその製造方法を提供するこ
とを目的とする。
に本発明の要旨とするところは下記の通りである。すな
わち、 (1)電磁鋼板の表面に下地被膜としてクロム酸、クロ
ム酸塩、リン酸、リン酸塩、コロイド状物質等の1種又
は2種以上からなる無機被膜剤を塗布し、次いで、上塗
り被膜として粒子径0.5〜3.0μmの水分散性エマ
ルジョン樹脂及びクロム酸塩を主成分とする被膜剤を塗
布焼付けし、この上塗り被膜剤によって鋼板表面の表面
粗さがRa値(中心線平均粗さ)で0.15〜0.60
μm、且つ、粗粒エマルジョン樹脂によってつくられる
被膜表面の球面状突起物の形状が、直径3μm以下、高
さ3.0μm以下であることを特徴とする極めて被膜特
性の優れる無方向性電磁鋼板。 (2)上塗り被膜剤として塗布されるエマルジョン樹脂
の成分が、エポキシ、スチレン、メラミン、フェノー
ル、ポリエステル、酢ビ、アクリル、シリコン系等の樹
脂から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とす
る(1)記載の被膜特性の極めて優れる無方向性電磁鋼
板。 (3)電磁鋼板表面に下塗り被膜剤として、リン酸塩の
1種又は2種以上か、クロム酸塩の1種又は2種以上を
CrO3 として100重量部に対し、リン酸及び/又は
リン酸塩の1種又は2種以上をH3 PO4 として200
〜400重量部と、硼酸及び/又は硼酸塩の1種又は2
種以上を10〜40重量部配合してなる無機被膜剤を乾
燥後の重量で0.2〜1.5g/m2 を塗布し、次い
で、上塗り被膜剤として、粒子径0.5〜3.0μmの
水分散性エマルジョン樹脂として、エポキシ、スチレ
ン、メラミン、フェノール、ポリエステル、酢ビ、アク
リル、シリコン系の樹脂の1種又は2種以上の100重
量部に対し、クロム酸塩の1種又は2種以上をCrO3
として100〜800重量部と、硼酸、硼酸塩の1種又
は2種以上を30〜250重量部配合してなる処理剤を
塗布し焼付けることからなる、被膜特性の極めて優れる
無方向性電磁鋼板の製造方法、及び (4)無機成分として使用する、リン酸塩、クロム酸塩
がAl,Mg,Ca,Znにより構成された1種又は2
種以上であることを特徴とする(3)記載の被膜特性の
極めて優れる無方向性電磁鋼板の製造方法である。 (5)粗粒子エマルジョン樹脂として、少なくとも、エ
ポキシ系及び/又はスチレン系の樹脂を50%以上含
む、エポキシ、スチレン、メラミン、フェノール、ポリ
エステル、酢ビ、アクリル、シリコン系の樹脂の1種又
は2種以上を使用することを特徴とする請求項3又は4
記載の被膜特性が極めて優れる無方向性電磁鋼板の製造
方法。
等は、無方向性電磁鋼板を使用した鉄心加工を行う際の
需要家のニーズとして、従来の有機−無機被膜処理剤を
主とする絶縁被膜の欠点である溶接性及び歪取り焼鈍後
の被膜の焼付き性(スティッキング)、被膜潤滑性(耐
キズ付き性)、耐蝕性、絶縁性、密着性等の向上に努め
るべく膨大な実験と研究を行った。その結果、従来の改
善技術をもってしても解決できなかった有機−無機系被
膜処理剤の需要家での問題を一挙に解決しうる技術を開
発することに成功した。すなわち、本発明に於いては、
絶縁被膜の処理に於いては、下塗り被膜として、リン酸
塩系或いは、クロム酸塩−リン酸塩系−硼酸塩系被膜処
理剤を塗布焼付け後、上塗り処理剤として水分散性エマ
ルジョン樹脂を主体とし、クロム酸塩−硼酸系の無機成
分を配合した半有機被膜を焼付け処理するものである。
〜0.3μmの微粒子タイプのエマルジョン樹脂に替え
て、粒子径を従来の適用技術では考えられなかった0.
5〜3.0μmの粗大且つ耐熱性を有するエポキシ、ス
チレン、メラミン、フェノール、ポリエステル、酢ビ、
アクリル、シリコン系の耐熱型の樹脂の1種又は2種以
上を使用するものである。この際、無機成分として前
記、粗粒エマルジョン樹脂100重量部に対しクロム
酸、クロム酸塩の1種又は2種以上をCrO3 として1
00〜800重量部と、硼酸、硼酸塩の1種又は2種以
上が30〜250重量部配合した有機−無機系被膜とし
て処理焼付けされる。これにより、鋼板表面に安定して
均一、微細な球面状の突起を形成すると共に、樹脂成分
と粒子形状による耐熱性等、加工性に関する被膜特性の
著しい改善を得た。この結果、従来技術では実現が困難
とされていた焼鈍前の被膜特性として打ち抜き性、溶接
性が良好で、焼鈍後の被膜特性として被膜の耐焼付き
性、潤滑性、耐蝕性、絶縁性、密着性等を総合的に満足
できる技術の実現に至ったものである。
塗布し、上塗り用として粗大粒子のエマルジョン樹脂を
主成分とする有機−無機の半有機系被膜を適用するとこ
ろにある。下塗り用無機被膜剤としてはリン酸,クロム
酸,Al,Mg,Ca,Zn等のリン酸塩、クロム酸
塩、硼酸、硼酸塩、コロイド状物質等の中から選ばれる
1種又は2種以上が塗布される。
用する場合には、Al,Mg,Ca,Zn等の第一リン
酸塩組成のものが良く、これにコロイド状のSiO2 ,
Al2 O3 ,ZrO2 ,SnO2 等のコロイド状溶液
や、硼酸等を添加して用いても良い。クロム酸塩系主体
のものを適用する場合には、Al,Mg,Ca,Zn等
のクロム酸塩物質に、クロム酸や、リン酸、リン酸塩、
硼酸、硼酸塩等を添加したり、耐熱性向上や被膜外観の
向上の目的で前記コロイド物質を添加配合して使用され
る。この際の配合割合としては、クロム酸及びクロム酸
塩の1種又は2種以上をCrO3 としての100重量部
に対し、リン酸、リン酸塩の1種又は2種以上をH3 P
O4 として200〜400重量部、硼酸、硼酸塩の1種
又は2種以上を10〜40重量部配合し、必要に応じて
添加されるコロイド状物質は前記割合に対し100〜2
00重量部である。
粒子径を0.5〜3.0μmの粗大粒子に調整したエポ
キシ、スチレン、メラミン、フェノール、ポリエステ
ル、酢ビ、アクリル、シリコン系の水分散性エマルジョ
ン樹脂を主成分として利用する。このエマルジョン樹脂
に無機成分物質としてAl,Mg,Ca,Zn等の中か
ら選ばれるクロム酸塩の1種又は2種以上を前記エマル
ジョン樹脂の100重量部に対し、100〜800重量
部と、硼酸、硼酸塩の中から選ばれる1種又は2種以上
の30〜250重量部が配合される。これらの混合液に
於いては、本発明のエマルジョン樹脂は他の成分との分
散性が非常に良好で、均一な溶液相をつくる。このた
め、耐熱性のエマルジョン樹脂の表層は均一にクロム酸
塩、硼酸塩等によりカバーされ、塗布焼付け時には耐熱
性粗粒子樹脂の粒径効果によって鋼板表面に有機樹脂を
無機成分で包んだ微細な球面状の突起を形成する。
無機被膜の耐熱性、絶縁性、耐蝕性等の向上効果と、上
塗りの半有機被膜による加工性向上及び表面形状制御、
耐熱性向上効果をもたらし、焼鈍前後の被膜特性に於い
て、従来の被膜特性に比較して格段に優れた被膜特性が
得られるものである。このような向上効果はエマルジョ
ン樹脂として従来技術にあるような微粒子エマルジョン
樹脂を適用した場合には得られるものではなく、特に焼
鈍後の総合的な被膜特性のレベルアップは本発明の被膜
組成と、粗粒子エマルジョン樹脂を適用した場合に特有
に得られる効果である。
等を前記範囲内にするのが好適なのは次のような理由に
よる。本発明に適用される被膜剤としては、まず、下塗
り用被膜剤として第一のケースは、リン酸及びAl,M
g,Ca,Zn等のリン酸塩の1種又は2種以上、第二
のケースはクロム酸及びクロム酸塩の1種又は2種以上
であって、CrO3 100重量部に対し、リン酸,A
l,Mg,Ca,Zn等から選ばれるリン酸塩の1種又
は2種以上を200〜400重量部、硼酸又は硼酸塩の
1種又は2種以上を10〜40重量部からなる処理剤で
ある。リン酸塩系を塗布する場合には液組成としては第
一リン酸塩のものかこれにフリーのリン酸を若干添加し
て使用される。コロイド状物質を添加配合する場合には
第一リン酸塩100重量部当たり10〜50重量部の割
合が良い。10重量部以下では耐熱性等の向上効果が弱
く、50重量部以上になると密着性の劣化が生じるので
好ましくない。
には、良好な表面状態や被膜特性を得るために配合割合
が重要である。クロム酸、クロム酸塩は緻密なグラス被
膜をつくるためと、リン酸等の他の成分被膜による吸湿
性を抑えるために重要である。リン酸、リン酸塩はクロ
ム酸、クロム酸塩との反応によって緻密で、潤滑性と耐
熱性のある被膜を形成する。配合割合は、クロム酸、ク
ロム酸塩のCrO3 として100重量部当たり、リン
酸、リン酸塩はH3 PO4 として200〜400重量部
である。200重量部以下では耐熱性、絶縁性、耐食性
等の改善効果が得られないばかりか造膜性が悪くなる。
又、フリーのクロム酸による吸湿性や光沢の劣化が生じ
る。400重量部以上では、この場合も余剰のリン酸に
よるベタツキや焼鈍時に於ける焼付き性の問題があり制
限される。硼酸、硼酸塩は下地被膜の緻密化に重要であ
り、10重量部以下ではその効果が得られない。40重
量部以上では液中での安定性が悪くなって工業的には使
用が困難になる。
理される上塗り塗膜としての半有機被膜である。半有機
被膜は有機構成成分としては、その粒子径を0.5〜
3.0μmに調整した水分散性エマルジョンとしてエポ
キシ、スチレン、メラミン、フェノール、ポリエステ
ル、酢ビ、アクリル、シリコン系樹脂を主成分とする。
これらの樹脂としては共重合体、架橋体のものを用いて
も良く、これらの樹脂の1種又は2種以上が適用され
る。この場合エマルジョン樹脂の粒子径が最も重要であ
る。粒子径が0.5μm以下では、粗大粒子に粒子によ
って被膜表面に形成する球面状の微細な突起効果が得ら
れない。一方、3.0μm以上では焼鈍後の鋼板の表面
粗度が粗くなり過ぎて、従来被膜技術で開示されている
粗大粉体樹脂を添加した場合と同様に占積率の低下や、
被膜の外観が劣化する等の問題があり、又、エマルジョ
ン樹脂の塗れ性や沈降性の問題から工業的に利用が困難
となる。被膜特性、経済性、作業性の面で最も優れるの
は0.7〜1.2μmである。樹脂成分としては、前記
のものが良好で、エマルジョン樹脂の大粒径化の技術と
の相乗効果によって打ち抜き性、溶接性等や焼鈍後の被
膜特性の向上効果が顕著に得られる。特に焼鈍後の特性
の改善効果が大きいのは、樹脂成分としてエポキシ系及
び/又はスチレン系の樹脂を全樹脂量に対し50%以上
含有する場合で、この場合には、被膜の潤滑性、耐蝕
性、絶縁性等の改善効果が著しい。
塩は、Al,Mg,Ca,Znの中から選ばれるクロム
酸塩組成のものの1種又は2種以上が、前記主成分樹脂
の100重量部当たりCrO3 として100〜800重
量部が配合される。100重量部以下では有機樹脂の表
面被覆効果を得るためのクロム酸塩の厚みが不足して、
本発明のエマルジョン樹脂の適用技術に於いても十分な
耐熱性が得られなくなる。一方、800重量部よりも多
くなると、耐熱性の向上はあるが、全被膜中の必要有機
樹脂成分が減って、打ち抜き性等の加工性を劣化するの
で好ましくない。クロム化合物としては液の安定性と溶
解性の問題から、重クロム酸組成のものが最も良好で、
必要に応じてフリーのCrO3 を添加しても良い。
量部当たり30〜250重量部が添加される。これら
は、被膜のガラス化剤、充填剤として働き、被膜の緻密
化、光沢や耐熱性等を向上させる。添加量が30重量部
以下ではこれらの効果が得られず、250重量部以上に
なると、溶解等の問題から溶液中で不安定になって溶液
の安定化が困難になったり、被膜外観に影響を及ぼすの
で好ましくない。尚、本発明の被膜剤の適用に当たって
は、エマルジョン樹脂の塗れ性向上のための表面活性
剤、塗れ性改善剤やクロム化合物の還元剤等を添加して
処理しても良い。
て打ち抜き性及び溶接性が優れさらに焼鈍後の特性とし
て耐焼付き性、被膜潤滑性、絶縁性、耐蝕性等が優れる
理由を述べる。本発明に於いては、下塗りの無機被膜、
上塗り半有機被膜により、各種の被膜特性を機能的に補
助しあって総合的な効果を生むものである。下塗りの薄
塗り無機被膜は、耐熱性、絶縁性等の被膜特性をより向
上させるために機能し、上塗りの半有機被膜は打ち抜
き、溶接、潤滑性等の作業性の向上や絶縁性、耐蝕性、
密着性等の被膜特性をより改善するために機能する。こ
の中で特に本発明に於いては、耐熱性の粗粒子エマルジ
ョン樹脂による表面の形状の制御と樹脂粒子の安定化効
果によって被膜特性の向上が得られる。すなわち、本発
明の耐熱性のある成分樹脂を0.5〜3.0μmの粗粒
子エマルジョンとした場合には、熱処理時の樹脂分の分
解反応がサイズ効果によって抑制されると共に、単位粒
子当たりのクロム酸塩、硼酸塩等の耐熱性の無機成分量
が増大し、より、耐熱性が強化される。このため、図1
に示すごとく、焼鈍前後の表面粗度が変化せず、微細な
突起構造が保たれる。このような耐熱性のある有機−無
機成分被膜では焼鈍中に適度な重点反応を生じて、従来
のエマルジョン樹脂を使用した被膜に見られるような亀
裂の発生を防止する。この結果、焼鈍後に於いても、従
来の半有機被膜の技術では実現できなかったような被膜
特性が得られるものと考えられる。
方向性電磁鋼板コイルに、下塗り被膜剤として、第一リ
ン酸Al:100重量部にH3 PO4 :10重量部より
なる処理剤を乾燥後の重量で0.5g/m2 になるよう
に塗布し、350℃で焼付け処理を行った。この鋼板
に、上塗り被膜として粒子径を1μmに調整した、表1
に示す組成のエマルジョン樹脂と無機成分からなる処理
剤を塗布し、320℃で焼付け処理を行った。このコイ
ルからサンプルを切り出し、打ち抜き性、溶接性及び7
50℃×2Hrの歪取り焼鈍後の被膜特性を調査した。結
果を表2に示す。
よるものは、焼鈍前後の特性がいずれも安定して良好な
結果が得られた。特に、溶接性や焼鈍後の潤滑性、耐蝕
性、絶縁性等に於いて著しく良好な結果を得た。一方、
比較剤のエマルジョン樹脂を従来タイプのものを使用し
た場合にはいずれも被膜特性は不良で、下塗りとして、
本発明と同一のものを適用した場合も良好な特性は得ら
れなかった。
示す。図1(a)は焼鈍前、(b)は焼鈍後の本発明1
の表面粗度を表わし、同図(c),(d)は比較例1の
焼鈍前後の表面粗度を表わす図である。この図より本発
明の粗粒子エマルジョンを上塗り液として使用した場合
は焼鈍前後とも球面状突起によって粗度が粗く変化して
ないことがわかる。図2に、図3に示す測定装置を用い
て測定した被膜潤滑性を示した。図2(a)は本発明1
のサンプルについて、同図(b)は比較例1のサンプル
についての潤滑性を表わすもので、本発明のものは表面
抵抗が変化せず、良好な潤滑性を示している。これに対
し比較例ではキズ付性が大のため、鋼球を一往復しただ
けでスケールオーバーしていることがわかる。尚、図3
は図2で示した潤滑性を測定する装置であり、図のよう
に10mmφの鋼球を一定加重で鋼板表面を往復運動さ
せ、鋼球が表面から受ける抵抗を測定する。
げ焼鈍後の板厚0.5mmの無方向性電磁鋼板コイルに、
クロム酸MgをCrO3 として80重量部、クロム酸C
aをCrO3 として10重量部、クロム酸AlをCrO
3 として10重量部からなるクロム酸系化合物に、リン
酸を350重量部、硼酸20重量部を配合してなる無機
被膜剤を乾燥後の重量で0.5g/m2 になるように4
50℃で焼付け処理を行った。この鋼板に、ついで、上
塗り被膜剤として表3に示すように粒子径を変更した耐
熱性エマルジョン樹脂をベースとする有機−無機系組成
の溶液を、焼付け後の重量で1.5g/m2 になるよう
に塗布し、320℃で焼付け処理を行った。このコイル
からサンプルを切り出し、実施例1と同様にして被膜特
性の評価を行った。結果を表4に示す。
よるものは、いずれも焼鈍前後に於ける被膜特性が良好
で、比較例に比しかなり良好な特性が得られた。又、こ
の際の焼鈍前後に於ける被膜の表面粗度は、エマルジョ
ン樹脂の粒子径に応じて粗さが変り、本発明剤は焼鈍前
後の粗度の変化がほとんど見られず、粒子による形状効
果が変化しないことも確認された。一方、比較例のもの
はいずれも被膜特性が本発明より劣り、又、本発明の成
分樹脂を用いても、粒子径が小さい場合には効果が生じ
ないことが判った。
状態を調査するに際し、焼鈍でのサンプルの積層状態を
示す模式図、同(b)は(a)図の歪取り焼鈍後の積層
鋼板をバネ秤で剥離荷重を測定し、層間の焼付け状態を
測定する方法を示す図である。
薄塗り無機被膜と上塗りの半有機被膜によって打ち抜き
性、溶接性等の焼鈍前の被膜特性が優れると共に耐熱性
が高められ、被膜成分により焼鈍後の鋼板面に存在する
超微細な球面突起効果によって被膜の著しい潤滑性と絶
縁性、溶接性等の向上効果が得られる。この結果、焼鈍
前後とも被膜特性が良好な無方向性電磁鋼板の製品が得
られる。
度を表す図、(c),(d)は実施例1の比較例1の表
面粗度を表わす図である。
て、(b)は比較例1のサンプルについての潤滑性を表
わす図である。
査するに際し、焼鈍でのサンプルの積層状態を示す模式
図、(b)は歪取り焼鈍後の鋼板の層間の焼付け状態の
測定図である。
Claims (5)
- 【請求項1】 電磁鋼板の表面に下地被膜としてクロム
酸、クロム酸塩、リン酸、リン酸塩、コロイド状物質の
1種又は2種以上からなる無機被膜剤を塗布し、次い
で、上塗り被膜として粒子径0.5〜3.0μmの水分
散性エマルジョン樹脂及びクロム酸塩を主成分とする被
膜剤を塗布焼付けし、この上塗り被膜剤によって鋼板表
面の表面粗さがRa値(中心線平均粗さ)で0.15〜
0.60μm、且つ、粗粒エマルジョン樹脂によってつ
くられる被膜表面の球面状突起物の形状が、直径3μm
以下、高さ3.0μm以下であることを特徴とする極め
て被膜特性の優れる無方向性電磁鋼板。 - 【請求項2】 上塗り被膜剤として塗布されるエマルジ
ョン樹脂の成分が、エポキシ、スチレン、メラミン、フ
ェノール、ポリエステル、酢ビ、アクリル、シリコン系
の樹脂から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴
とする請求項1記載の被膜特性の極めて優れる無方向性
電磁鋼板。 - 【請求項3】 電磁鋼板表面に下塗り被膜剤として、リ
ン酸塩の1種又は2種以上か、クロム酸塩の1種又は2
種以上をCrO3 として100重量部に対し、リン酸及
び/又はリン酸塩の1種又は2種以上をH3 PO4 とし
て200〜400重量部と、硼酸及び/又は硼酸塩の1
種又は2種以上を10〜40重量部配合してなる無機被
膜剤を乾燥後の重量で0.2〜1.5g/m2 を塗布
し、次いで、上塗り被膜剤として、粒子径0.5〜3.
0μmの水分散性エマルジョン樹脂として、エポキシ、
スチレン、メラミン、フェノール、ポリエステル、酢
ビ、アクリル、シリコン系の樹脂の1種又は2種以上の
100重量部に対し、クロム酸塩の1種又は2種以上を
CrO3 として100〜800重量部と、硼酸、硼酸塩
の1種又は2種以上を30〜250重量部配合してなる
処理剤を塗布し焼付けることからなる、被膜特性の極め
て優れる無方向性電磁鋼板の製造方法。 - 【請求項4】 無機成分として使用する、リン酸塩、ク
ロム酸塩がAl,Mg,Ca,Znにより構成された1
種又は2種以上であることを特徴とする請求項3記載の
被膜特性の極めて優れる無方向性電磁鋼板の製造方法。 - 【請求項5】 粗粒子エマルジョン樹脂として、少なく
とも、エポキシ系及び/又はスチレン系の樹脂を50%
以上含む、エポキシ、スチレン、メラミン、フェノー
ル、ポリエステル、酢ビ、アクリル、シリコン系の樹脂
の1種又は2種以上を使用することを特徴とする請求項
3又は4記載の被膜特性が極めて優れる無方向性電磁鋼
板の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP4298919A JP3065823B2 (ja) | 1992-11-09 | 1992-11-09 | 被膜特性の極めて優れる無方向性電磁鋼板及びその製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP4298919A JP3065823B2 (ja) | 1992-11-09 | 1992-11-09 | 被膜特性の極めて優れる無方向性電磁鋼板及びその製造方法 |
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Publication Number | Publication Date |
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JPH06145999A JPH06145999A (ja) | 1994-05-27 |
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JP4298919A Expired - Lifetime JP3065823B2 (ja) | 1992-11-09 | 1992-11-09 | 被膜特性の極めて優れる無方向性電磁鋼板及びその製造方法 |
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JP (1) | JP3065823B2 (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2023113563A1 (ko) * | 2021-12-17 | 2023-06-22 | 주식회사 포스코 | 전기강판용 절연 피막 조성물, 전기강판, 및 이의 제조 방법 |
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KR100384452B1 (ko) * | 1996-12-09 | 2003-08-27 | 주식회사 포스코 | 무방향성 전기강판 절연피막 형성용 피복조성물 및 이를 이용한 절연피막 형성방법 |
-
1992
- 1992-11-09 JP JP4298919A patent/JP3065823B2/ja not_active Expired - Lifetime
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WO2023113563A1 (ko) * | 2021-12-17 | 2023-06-22 | 주식회사 포스코 | 전기강판용 절연 피막 조성물, 전기강판, 및 이의 제조 방법 |
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