JP3062349B2 - タキサン化合物の超臨界抽出法 - Google Patents

タキサン化合物の超臨界抽出法

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JP3062349B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はタキサン化合物(taxane)
の超臨界抽出法(supercritical extraction)、更に詳し
くはタキサン化合物を含有する混合物、特に植物または
植物誘導物質から、超臨界流体(supercritical fluid)
を用いてタキサン化合物を抽出する方法に関する。
【0002】なお、本発明で抽出したタキサン化合物
は、医薬として使用するか、あるいは他の薬理学的活性
なタキサン化合物の製造の中間体として使用しうる。
【0003】
【従来の技術と発明が解決しょうとする課題】タキサン
化合物は、医薬分野での利用が知られているジテルペン
化合物である。たとえば、タキソール(taxol、登録商
標)(一般名称:パクリタキセル)、すなわち式:
【化1】 のタキサン化合物は、有効な抗癌剤であって、特に卵巣
癌の治療に有用であることが知られている。また1つの
タキサン化合物であるセファロマニン(cephalomannine)
は、U.S.特許No.4206221において、白血病
の寛解の化学療法剤としての使用が報告されている。
【0004】上記パクリタキセルやセファロマニンなど
のタキサン化合物は、植物物質の中に発見されうるもの
であって、該植物物質から単離されている。たとえば、
タクサス(Taxus、イチイ)属の木から液体メタノールを用
いるパクリタキセルの抽出法が報告されている。しかし
ながら、各種のタキサン化合物は一般に、比較的少量で
しか植物物質中に存在しないため、パクリタキセルの場
合にたとえば、パクリタキセル源を形成する多数の生育
の遅いイチイの木が撲滅することになる。さらに、通常
の液体抽出法では多量の有機溶剤が使用され、このこと
はまた時間の浪費にもなる。このため従来より、植物物
質および有機溶剤の使用を最小限に抑え、より効率的で
環境安全の高い、タキサン化合物を得る方法が長年にわ
たって求められつつあった。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、タキサン化合
物を含有する混合物(特に植物または植物誘導物質)から
タキサン化合物を抽出する方法であって、上記混合物
を、含有されるタキサン化合物の少なくとも一部を可溶
化しうる超臨界流体と接触させることを特徴とするタキ
サン化合物の超臨界抽出法を提供するものである。
【0006】本発明の超臨界抽出法は、上記混合物から
他の化合物または物質と共にタキサン化合物を得る有効
な方法であって、特に、タクサス属の木からパクリタキ
セル(抗癌剤に有効)を分離するのに使用しうる。
【0007】本発明において、タキサン化合物は式:
【化2】 のタキサン炭素骨格を有するジテルペン化合物であり、
該炭素骨格はその環システムにエチレン性不飽和基を含
有しうる。タキサン化合物を含有する混合物からタキサ
ン化合物を抽出する方法はいずれも、本発明の技術的範
囲に属することが意図される。特に興味のある点は、1
1,12−位がエチレン基を介して結合している炭素骨
格をもつタキサン化合物を分離しうることである。かか
るタキサン化合物として、パクリタキセル、セファロマ
ニン、バッカチン(baccatin)III、10−デアセチルバ
ッカチンIIIおよび10−デアセチルセファロマニンが
含まれる。本明細書で用いる「タキサン化合物」には、タ
キサン化合物の塩および溶媒和物も含まれる。パクリタ
キセルの抽出法が、本発明の特に好ましい具体例であ
る。
【0008】本発明で用いる「抽出」には、タキサン化合
物の単離および/または精製が含まれる。本発明の抽出
法において、タキサン化合物の1種または2種以上を他
の化合物または物質と混合して含有するいずれの混合物
も使用しうる。本発明方法によれば、単一タキサン化合
物の抽出あるいは2種以上のタキサン化合物の同時抽出
が達成される。
【0009】本発明方法の好ましい具体例は、植物また
は植物誘導物質から1種または2種以上のタキサン化合
物の分離に関係する。使用しうるタキサン化合物含有植
物物質の具体例としては、アメントタクサス(Amentotax
us、ウラジロイヌガヤ)属、アウストロタクサス(Austor
otaxus)属、セファロタクサス(Cephalotaxus、イヌガ
ヤ)属、プソイドタクサス(Pseudotaxus)属、タクサス(T
axus、イチイ)属およびトレヤ(Torreya、カヤ)属の植物
が挙げられる。好ましい植物物質は、タクサス属の木、
たとえばT.ブレビホリア(brevifolia)、T.バッカタ(b
accata)、T.メディア(media)、T.ワリチアナ(wallich
iana)、T.カナデンジス(canadensis)および特にT.カ
スピデータ(caspidata)である。
【0010】1種または2種以上のタキサン化合物を含
有する植物のいずれの部分も、たとえば樹皮、根、葉も
しくは針葉、枝、小枝、木質部、種子または全実生(who
le seedlings)を使用しうる。好ましくは、超臨界流体
との接触に先立ち、植物物質を先ず粉砕して適当な粒径
とする。植物物質の粉砕は、通常の手段、たとえばチッ
パーおよび/または細砕ロール機を用いて行うことがで
きる。
【0011】また本発明方法において、上記植物物質か
ら誘導される物質(植物誘導物質)も使用しうる。本明細
書で用いる「植物誘導物質」とは、植物源から得られ、か
つ1種または2種以上のタキサン化合物を他の化合物と
混合して含有するいずれの物質をも意味する。従って、
たとえば、タキサン化合物含有植物源の初期抽出を液体
抽出法などの方法で行い、次いでこのようにして得られ
る粗抽出物を本発明の超臨界抽出法で処理して、タキサ
ン化合物を分離することができる。
【0012】「超臨界流体」とは、臨界温度(Tc)およ
び臨界圧力(Pc)の両方を越える流体を意味し、単一流
体および流体混合物が含まれる。なお、当業者であれ
ば、流体が超臨界的であるか、すなわち、圧力によって
液化しえない温度またはそれ以上の温度であるかどうか
を判定することができよう。本発明で用いる超臨界流体
は、接触される混合物に含有されるタキサン化合物の少
なくとも一部を選択的可溶化しうるような性質と量を有
するものである。特に高圧下で、密度の高い超臨界流体
を用いると、抽出効果が増大する。超臨界領域内の条件
を選択することが好ましく、これによって抽出されるタ
キサン化合物の分解が最少化または完全に回避される。
【0013】使用しうる超臨界流体の具体例としては、
亜酸化窒素(NO)、アンモニア(NH3)、アルカン(た
とえばn−ブタンおよびn−ペンタン)、六フッ化硫黄
(SF6)、不活性ガス(たとえばXe)、ハロアルカン、
特にフルオロアルカンまたはクロロフルオロアルカン
(たとえば(Cl2およびCHF3)、フレオロ化合
物、および最も好ましくは安全性と環境見地から望まれ
る二酸化炭素(CO2)の1種または2種以上の混合物ま
たは適当な改質剤との混合物が挙げられる。本明細書で
用いる「改質剤」とは、本発明方法での使用に際し、接触
される混合物から1種または2種以上のタキサン化合物
を選択的に抽出しうる超臨界流体の能力を増大するいず
れの化合物をも意味する。たとえば、本発明方法で植物
物質を使用するとき、改質剤は植物物質の細胞壁に浸透
して、超臨界流体とタキサン化合物の接触を促進する。
【0014】具体的な改質剤は、分離されるタキサン化
合物の溶剤であって、分離されるタキサン化合物が非常
に溶解する良溶剤が好ましい。好ましい改質剤として
は、アルカノール(たとえばメタノール、エタノールお
よびイソプロパノール);芳香族炭化水素(たとえばトル
エン);エステル(たとえば酢酸エチル)、クロロアルカン
(たとえばクロロホルム(CHCl3)および塩化メチレ
ン);ケトン(たとえばアセトン);プロピレンカーボネー
ト;およびアセトニトリルが挙げられる。アセトンとア
セトニトリルが特に好ましい。抽出されるタキサン化合
物に対し医薬用途が意図される場合、医薬的に許容しう
る改質剤の使用が望ましい。この場合、アセトンが好ま
しい。
【0015】植物または植物誘導物質などの混合物を超
臨界流体と接触させる前に、改質剤を上記混合物と接触
させておくか、および/または改質剤を超臨界流体の一
部として上記混合物と接触させることができる。たとえ
ば、後者の場合、改質剤が超臨界流体の一部を構成する
ように改質剤を予備混合する。
【0016】本発明方法の好ましい具体例は、植物また
は植物誘導物質を改質剤と予め接触させ、たとえば植物
または植物誘導物質を予め液体改質剤に浸漬させた後、
形成する混合物を超臨界流体と接触させることである。
上記予備浸漬の後および超臨界流体との接触前に、植物
または植物誘導物質をさらに液体改質剤で浸潤させても
よい。予備浸漬は、数秒間の、すなわち混合物と改質剤
および超臨界流体とのほとんど瞬時の接触しか付与しな
い短かい時間、または要すればそれより長い時間で行う
ことができる。予備浸漬の好ましい時間は、約1〜5秒
乃至約1時間である。
【0017】改質剤の好ましい量は、COなどの超臨
界流体の重量に対する改質剤の重量割合が、痕跡割合
(たとえば0.001%以下)〜約15%の場合である。
改質剤の量は、実用的見地から適当な温度および圧力下
で超臨界状態が達成しうる量を越えないことが望まし
い。
【0018】超臨界流体の使用量は、超臨界流体の種
類、超臨界を越える温度および圧力、使用する抽出装
置、および抽出されるタキサン化合物の量によって定ま
る。一般に、超臨界流体とタキサン化合物含有混合物の
接触時間が長ければ長いほど、回収率が増大する。
【0019】本明細書で用いる「アルカン」および「アル
キル」とは、好ましくは、炭素数1〜12の線状もしく
は分枝状脂肪族炭化水素鎖を持つ化合物または基を意味
する。
【0020】本明細書で用いる「ハロアルカン」とは、好
ましくは、塩素、フッ素、臭素および沃素から選ばれる
ハロゲン原子の1個以上で置換された上記アルカンを意
味する。本明細書で用いる「クロロアルカン」とは、好ま
しくは、一個以上の塩素原子で置換された上記アルカン
を指称する。
【0021】本明細書で用いる「アルカノール」とは、好
ましくは、1個以上のヒドロキシル基で置換された上記
アルカンを意味する。
【0022】本明細書で用いる「芳香族炭化水素」および
「芳香族ハイドロカルビル(hydorocarbyl)」とは、好まし
くは、炭素数6〜12の芳香族環を有し、必要に応じて
上記アルカン基の1個以上で置換された化合物または基
を意味する。
【0023】本明細書で用いる「エステル」とは、好まし
くは、式:
【化3】 (式中、RおよびR1はそれぞれ独立して、上記アルキル
基および芳香族ハイドロカルビル基から選ばれる)の化
合物を意味する。
【0024】本明細書で用いる「ケトン」とは、好ましく
は、式:
【化4】 (式中、RおよびR1は前記と同意義)の化合物を意味す
る。
【0025】本発明方法は、連続方式、半バッチ方式ま
たはバッチ方式で行うことができる。
【0026】本発明方法の特に好ましい具体例は、混合
物、好ましくは植物または植物誘導物質から、超臨界流
体および改質剤を用いてパクリタキセルを抽出する場合
である。好ましくは超臨界流体は二酸化炭素で、改質剤
はアセトンまたはアセトニトリルである。二酸化炭素を
72.9気圧以上、より好ましくは300〜700気
圧、特に400〜500気圧の圧力で、および31.3
℃以上、より好ましくは32〜55℃、特に35〜45
℃の温度で使用することが好ましい。
【0027】植物または植物誘導物質などの混合物との
接触後に、超臨界流体は一定量のタキサン化合物を含有
する。次いで、混合物からタキサン化合物含有超臨界流
体を分離する。超臨界流体からのタキサン化合物の分離
は、該超臨界流体の圧力および/または温度を、タキサ
ン化合物の溶解が少なくなる臨界以下の状態に下げるこ
とによって達成しうる。タキサン化合物含有超臨界流体
は、1または2以上の段階で降圧状態にすることができ
るが、その場合、2以上の段階を用いるとき、次の段階
は前の段階より圧力が低い。好ましくは、タキサン化合
物含有超臨界流体を、オープン室または臨界以下の圧力
および温度、最も好ましくは大気圧および室温に維持さ
れた液体溶剤の中で降圧状態にする。タキサン化合物含
有超臨界流体がオープン室または液体溶剤に入ると、該
臨界流体は、オープン室または液体溶剤が保持されてい
る臨界以下の状態に平衡または接近し、そしてオープン
室の場合は、タキサン化合物が析出するが、液体溶剤の
場合では、タキサン化合物は溶解によって液体溶剤に吸
収される。臨界以下の状態は好ましくは、元々超臨界的
であった流体が、たとえばタキサン化合物を溶解して含
有する液体溶剤から分離する気体となるように選定す
る。
【0028】さらに要すれば、得られるタキサン化合物
の精製は、本発明の超臨界抽出法を1段階もしくは2段
階以上で用いることによって達成しうる。また通常の精
製法も採用することができ、たとえば高圧液体クロマト
グラフィー、薄層クロマトグラフィー、カラムクロマト
グラフィーまたは液体抽出法などの精製法が挙げられ
る。超臨界流体クロマトグラフィー(SFC)も採用しう
る。また、たとえば、本発明方法に従って、他の化合物
または物質を含有する混合物から2種以上のタキサン化
合物を抽出した場合に、各タキサン化合物を別々に分離
するため、追加の精製を行ってもよい。タキサン化合物
を最終的に、実質上純粋な形状で得るのが好ましい。
【0029】上述の如く、タキサン化合物は医薬分野で
の利用、特に抗癌剤用途が知られている化合物である。
パクリタキセルは、薬理学的活性なタキサン化合物の具
体例であるが、かかるタキサン化合物として、たとえば
セファロマニンも含まれる。薬理学的活性タキサン化合
物は、卵巣癌、黒色腫、乳癌、結腸癌または肺癌などの
癌、および白血病に苦しむ患者の治療に使用しうる。本
発明方法によって得られる他の薬理学的活性化合物は、
C−7にキシロース単位を有する。たとえばセニールら
の「Journal of Natural Products」(Vol.47、No.
1、131〜137頁、1984年1月〜2月)に記載
のタキサン化合物である。
【0030】本明細書で用いる「患者」とは好ましくは、
イヌ、ネコなどの哺乳動物および他の家畜を指称し、最
も好ましくはヒトを指称する。薬理学的活性タキサン化
合物は、当業者が選定する方法、たとえば経口または非
経口法により、またこれも当業者にとって常法に従い選
定しうる有効用量で投与することができる。有効な投与
量は、治療が求められる病気を緩和または治癒しうる用
量であって、たとえば腫瘍の大きさを維持または減少す
る投与量である。一般に有効用量は、約0.5〜5.0m
g/体重(kg)/日の範囲にある。薬理学的活性タキサ
ン化合物は、それ単独、または他の治療に有効な化合物
および/または不活性物質(たとえば医薬的に許容しう
る希釈剤または担体)と共に使用してもよい。
【0031】また本発明方法によって得られるタキサン
化合物は、上述の薬理用途にしうる、他の薬理学的活性
タキサン化合物の製造の中間体としても使用することが
できる。このように本発明方法は、タキサン出発物質を
得るのに効率的手段を付与することによって、薬理学的
活性タキサン化合物の製造を容易ならしめる。
【0032】本発明方法によって得られ、かつ薬理学的
活性タキサン化合物の製造の中間体として使用しうるタ
キサン化合物の具体例としては、セファロマニン、バッ
カチンIII、10−デアセチルバッカチンIII、および1
0−デアセチルセファロマニンが挙げられる。タキサン
中間体を所望の薬理学的活性タキサン化合物に変換する
のに、当業者にとって公知の方法を採用しうる。たとえ
ば、デニスらの「J.Am.Chem. Soc.」(11
、5917〜5919頁、1988年)に10−デア
セチルバッカチンIIIをパクリタキセルに変換する方法
が記載されている。たとえばC−13側鎖の還元開裂に
よって、セファロマニンのパクリタキセルへの変換を可
能ならしめるが、この方法はマグリらの「J. Org.
Chem.」(Vol.51、No.16、3239〜32
42頁、1986年)に記載されている。
【0033】本発明にあって、変換に供されるタキサン
化合物は、薬理学的に不活性であってよいが、これ以外
に1つの活性なタキサン化合物を別のタキサン化合物に
変換することも意図され、この場合別のタキサン化合物
は異なる病気の治療に有効であるか、あるいは出発物質
よりも大きな薬効を有するものである。
【0034】
【実施例】次に実施例を挙げて、本発明方法をより具体
的に説明するが、これらの実施例によって本発明の技術
的範囲が制限されることはない。
【0035】実施例1 タクサス属カスピデータからのパクリタキセルの超臨界
抽出法:− A.抽出装置 図1に、以下に示す抽出法を行うのに用いる装置の構成
部材の配列が示されている。液体二酸化炭素は、ポンプ
/コントローラ(1)(サプレックス・コーポレーション
製の、シリンジポンプを具備するマイクロ抽出器,Su
prex SFE−50)によって加圧される。ポンプ
の出口バルブ(V)を開放することにより、タンク(T)内
の超臨界二酸化炭素を抽出容器(2)[ステンレス鋼HP
LCガードカラム(21.2 mm×100 mm)、ステ
ンレス鋼フリットおよびカラム端への出入により600
0psiに設定]に送る。この抽出容器(2)はオーブン
(3)中で一定温度に維持されている。オーブン(3)中、
液体二酸化炭素はその臨界温度および臨界圧力を越えて
おり、このようにして超臨界状態に維持される。6−ウ
エイバルブ(4)は、抽出容器(2)からの超臨界二酸化炭
素の方向づけをコントロールする。バルブスイッチ(5)
がインジェクトモード(I)にあると、静的抽出のため抽
出容器(2)は超臨界流体で充満する。バルブスイッチ
(5)をロードモード(L)に入れると、動的抽出のために
超臨界流体はレストリクター(長さ30cm、内径0.0
20インチのステンレス鋼チューブ、先端がクリンプし
て二酸化炭素の流れを制限する)に放出される。レスト
リクター先端(6)は、コレクター(7)(1lHPC溶剤
槽)内の流体(F)(アセトニトリル)に浸っている。
【0036】レストリクターを用いて抽出容器(2)内を
高圧に維持し、その間超臨界流体をシステムから排気す
る。植物物質の抽出では、内径の小さい商業上入手しう
るレストリクターに栓をしてもよい。高い背圧のメンテ
ナンスのため再現性のよいレストリクターを作るのに、
閉塞を最小量とし、商業上入手しうるレストリクターの
デザインに改変を加える。20mm長さの5μmステン
レス鋼チューブを、チューブカッターでなめらかに切
る。このチューブにステンレス鋼フェルールを、雌型ア
ダプターで締結して取付ける。レストリクターに雄型ユ
ニオンを設置し、フェルールの向かい合った端を大きな
テーブルバイスで押しつぶし、先端を均等にクリンプす
る(2mm)。
【0037】レストリクターの先端を以下の手順で調整
する。一本の20μmステンレス鋼チューブの端に、雄
型継手を取付け、20μm内径の孔をあけた二重雌型ユ
ニオンと接合する。レストリクターをユニオンに取付
け、先端をデイジタル型気泡流量計に接続する。流量は
作業圧力430気圧(atm)のレストリクターで監視す
る。必要に応じて、クリンプの幅広部を一対のプライヤ
ーで開放して、興味のある化合物を流出するのに十分な
速さに流速を維持し、かつ化合物の損失を導くようなエ
ーロゾル形成を起こさないようにするのに十分ゆっくり
した流速に維持する。この維持を行うのに、レストリク
ター流速として400ml/分を採用する。
【0038】B.抽出操作 プラスチック計量ボートの中に、微粉砕した植物物質
(タクサス属カスピデータ、10±0.1g)をはかり分
ける。目盛り付きシリンダーを用いて、10mlのアセ
トニトリルをはかり取り、植物物質上に散布し、スパチ
ュラで十分にかきまぜる。計量ボートをカバーして、ア
セトニトリルの蒸発を避ける。資料を20分間浸した状
態で放置する。シラン処理したガラスウールの小片を入
れ、抽出容器の底まで押込む。量的に十分なガラスウー
ルを用いて、深さを約1cmとする。粉末漏斗を用い
て、抽出容器に浸した物質を充填し、ガラスロッドでパ
ックする。全ての物質が抽出容器に移ったとき、容器の
試料に別途5mlのアセトニトリルを加える。試料の上
の自由空間が約2cmとなるように、抽出容器へ物質を
充填する。上記空間には別のガラスウールを充填する
(約2cm厚)。
【0039】静的抽出 ポンプを作業圧力に調整し、出口バルブ開けて、抽出容
器に超臨界二酸化炭素を充填する。この時点の状態は、
液体二酸化炭素が抽出容器内に存在するようになってい
る。システムを下記表1に示す超臨界作業圧力および温
度の平衡状態にする。いったんセット温度および圧力に
達すると、静的抽出の計時を始める。コントローラーモ
ニター(M)に表示の密度を観察する。
【表1】 表1(抽出条件) 温度(℃) 圧力(atm) 35 330 45 330 55 330 35 430 45 430 55 430
【0040】動的抽出 静的抽出の30分後に、バルブのスイッチを入れ、超臨
界流体をコレクターに送出する。コレクターは50ml
のアセトニトリルを含有し、該アセトニトリルにレスト
リクター先端が1.5〜2.0インチ程度漬っている。タ
イマーをさらに30分間セットし、その間レストリクタ
ー先端の起泡を観察する。30分後、再度バルブのスイ
ッチを入れ、レストリクターを減圧状態とする。この時
点で、コレクター内のアセトニトリルは深緑色を呈す
る。
【0041】試料収集 コレクターの内容物を2つの50mlチューブに移す。
コレクターをアセトニトリル5mlで洗い、洗液をチュ
ーブの内容物とコンバインする。試料を回転蒸発で蒸発
乾固してその体積を減少せしめ、残分の量をはかる。残
分を1.0mlのアセトニトリルに戻す。この抽出した
パクリタキセル溶液を、HPLC分析を行うまで−20
℃に維持しておく。
【0042】C.結果 表1に示す条件にセットし、それぞれ抽出を2・3回行
って、抽出再現性を検討した。温度および圧力の各種条
件下の、パクリタキセルの抽出量を下記表2に示す。
【表2】
【0043】図2において、2種の圧力でのパクリタキ
セル抽出量と密度の関係を示す。高圧および低温の抽出
は最大密度を付与し、そして430気圧(atm)でパク
リタキセルの最大回収率が得られる。温度および圧力の
実験範囲内では、この抽出に対し35℃の温度および4
30気圧の圧力が最良条件である。図3において、パク
リタキセル抽出量と温度の関係を示す。また図4におい
て、セット温度の低下につれて、パクリタキセル回収率
に対する密度の影響が増大することが示されている。
【0044】なお、アセトニトリル湿潤をせずに微粉砕
植物物質の抽出を行ったところ、検出できる量のパクリ
タキセルは得られなかった。このため、超臨界二酸化炭
素の条件変動を行った。
【0045】実施例2 高圧を用いるタクサス属カスピデータからのパクリタキ
セルの超臨界抽出法:− 実施例1において、圧力を680気圧とし、かつ下記表
3に示す温度を採用する以外は、同様な抽出操作を行
い、使用した装置は超臨界抽出器Model 703D
ionexである。パクリタキセルの抽出量を表3に示
す。
【0046】
【表3】
【0047】実施例3 改質剤としてメタノールを用いるタクサス属カスピデー
タからのパクリタキセルの超臨界抽出法:− 実施例1において、改質剤としてアセトニトリルの代わ
りにメタノールを用いる以外は、同様な抽出操作を行っ
た。採用した温度および圧力並びにパクリタキセルの抽
出量を下記表4に示す。
【表4】
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明方法で用いる抽出装置の構成部材の配
列図である。
【図2】 実施例1の抽出実験における2種の圧力での
パクリタキセル抽出量と密度の関係を示すグラフであ
る。
【図3】 実施例1の抽出実験におけるパクリタキセル
抽出量と温度の関係を示すグラフである。
【図4】 実施例1の抽出実験において温度を変えた場
合のパクリタキセル抽出量と密度の関係を示すグラフで
ある。
【符号の説明】
1:ポンプ/コントローラ 2:抽出容器 3:オーブン 4:6−ウエイバルブ 5:バルブスイッチ 6:レストリクター先端 7:コレクター T:CO2タンク V:出口バルブ M:コントローラーモニター L:ロードモード I:インジェクトモード F:流体(アセトニトリル)
フロントページの続き (56)参考文献 High−pressure Pha se Equillibria and Supercritical Flu id Extraction Invo lcving Carbon Dicx ide Systems.Georgi a Institute of Tec hnology(1991) Dissertation Abst racts Internationa l.B,The Sciences a nd Engineering.,Vo l.52,Issues 9−12,Ord er No.DA926087(March 1992) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C07D 305/14

Claims (20)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 タキサン化合物を含有する混合物からタ
    キサン化合物を抽出する方法であって、上記混合物を、
    含有されるタキサン化合物の少なくとも一部を可溶化し
    うる超臨界流体と接触させることを特徴とするタキサン
    化合物の超臨界抽出法。
  2. 【請求項2】 パクリタキセル、セファロマニン、バッ
    カチンIII、10−デアセチルバッカチンIIIおよび10
    −デアセチルセファロマニンから選ばれるタキサン化合
    物の1種または2種以上を抽出する請求項1記載の抽出
    法。
  3. 【請求項3】 パクリタキセルを抽出する請求項2記載
    の抽出法。
  4. 【請求項4】 タキサン化合物を含有する混合物が、植
    物または植物誘導物質である請求項1記載の抽出法。
  5. 【請求項5】 植物物質がアメントタクサス属、アウス
    トロタクサス属、セファロタクサス属、プソイドタクサ
    ス属、タクサス属またはトレヤ属の植物から選ばれる請
    求項4記載の抽出法。
  6. 【請求項6】 植物物質がタクサス属の木である請求項
    5記載の抽出法。
  7. 【請求項7】 木が、T.ブレビホリア、T.バッカタ、
    T.メディア、T.ワリチアナ、T.カナデンジスまたは
    T.カスピデータから選ばれる請求項6記載の抽出法。
  8. 【請求項8】 植物物質が、樹皮、根、葉もしくは針
    葉、枝、小枝、木質部、種子または全実生から選ばれる
    植物の少なくとも一部を有する請求項5記載の抽出法。
  9. 【請求項9】 超臨界流体が、亜酸化窒素、アンモニ
    ア、アルカン、六フッ化硫黄、不活性ガス、ハロアルカ
    ンまたは二酸化炭素の1種または2種以上の混合物また
    は改質剤との混合物である請求項1記載の抽出法。
  10. 【請求項10】 超臨界流体が、二酸化炭素と改質剤の
    混合物である請求項9記載の抽出法。
  11. 【請求項11】 改質剤が、抽出されるタキサン化合物
    の有機溶剤である請求項10記載の抽出法。
  12. 【請求項12】 改質剤が、アルカノール、芳香族炭化
    水素、エステル、クロロアルカン、ケトン、プロピレン
    カーボーネートまたはアセトニトリルである請求項11
    記載の抽出法。
  13. 【請求項13】 改質剤が、アセトンまたはアセトニト
    リルである請求項12記載の抽出法。
  14. 【請求項14】 改質剤を予め、液体形状の植物または
    植物誘導物質と接触させておき、次いで形成する混合物
    を超臨界二酸化炭素と接触させる請求項10記載の抽出
    法。
  15. 【請求項15】 二酸化炭素の使用圧力が、72.9気
    圧以上である請求項10記載の抽出法。
  16. 【請求項16】 二酸化炭素の使用圧力が、400〜5
    00気圧である請求項15記載の抽出法。
  17. 【請求項17】 二酸化炭素の使用温度が31.3℃以
    上である請求項10記載の抽出法。
  18. 【請求項18】 二酸化炭素の使用温度が、35〜45
    ℃である請求項17記載の抽出法。
  19. 【請求項19】 混合物との接触後、タキサン化合物含
    有超臨界流体を分離する請求項1記載の抽出法。
  20. 【請求項20】 タキサン化合物含有超臨界流体をオー
    プン室またはタキサン化合物の液体溶剤の中で降圧状態
    にする請求項19記載の抽出法。
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