JP3055084B2 - 多孔質メタルボンド砥石およびその製造方法 - Google Patents

多孔質メタルボンド砥石およびその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、各種材料の研磨または
研削するためのメタルボンド砥石に属する多孔質メタル
ボンド砥石およびその製造方法に関する。さらに詳しく
は、本発明は、結合剤相の気孔率を向上し、砥粒の自生
発刃作用を促進させ、またボンドの摩耗特性を生かし、
切れ味の優れた多孔質メタルボンド砥石およびその製造
方法に関する。
【0002】
【従来の技術】研削砥石は各種工作物の研削加工に用い
られる砥石である。研削砥石は砥粒、結合剤、気孔から
なり、砥粒は切れ刃、結合剤はその支持体、気孔は多数
の連続した気孔からなっており、切屑の排出を助けるチ
ップポケットの働きをするものである。最近、セラミッ
クス、超硬合金、高速度鋼などの研削が困難な難削材を
使用する度合が多くなり、これを研削する必要がますま
す重要となり、これに伴ってダイヤモンド砥粒や立方晶
系窒化ホウ素砥粒等の超砥粒を使用した研削ホイールが
ますます使用されるようになった。
【0003】かかる超砥粒使用の研削ホイールは、一般
の場合と同様結合剤の種類に応じてビトリファイドボン
ド系、レジノイドボンド系、メタルボンド系、シリケー
トボンド系、ラバーボンド系等のものがあるが、それぞ
れ一長一短があり、強度や保持力、寿命等から、金属お
よびその合金を結合剤として用いたメタルボンド系のも
のが主として用いられている。
【0004】これらの砥石の中でメタルボンド砥石は、
金属粉末に砥粒を均一に分散して台金と共に型込めしプ
レス成形および焼結(またはホットプレス)を経て成形
される。メタルボンド砥石の金属結合剤としては、例え
ばCu−Sn系、Cu−Sn−Co系、Cu−Sn−F
e−Co系、Cu−Sn−Ni系、もしくはCu−Sn
−Fe−Ni系、またはこれらに燐を添加したもの等が
用いられている。
【0005】これらの従来のメタルボンド砥石は、レジ
ノイドボンド砥石やビトリファイドボンド砥石に比べ
て、結合強度が格段に高く、超砥粒を用いて強力な研削
を行う場合に必要な優れた砥粒保持力を有している利点
があるが、切り屑の排出を助けるチップポケットの働き
をする気孔は有していない。研削時に切り屑の逃げ場所
となりうるような大きな気孔は有していないために、研
削屑の逃げ場所は、結合剤のメタルボンドから突出して
いる砥粒切れ刃によって生ずる結合剤と工作物の間の微
少な隙間および表面の砥粒脱落した跡であって、極めて
小さい。
【0006】従来のメタルボンド砥石においては、切り
屑の排出が悪くて目づまりし易いために、研削抵抗が大
きく、いわゆる切れ味が悪くて発熱が大きくなり、仕上
げ面が不良となり易く、また切り込みを増やしたり、砥
石と工作物との接触面積を大きくして高能率研削を行う
ことは極めて難しい等の欠点がある。そのうえ、これら
のボンドは焼結温度が低いために耐熱構造材料に対して
は、研削時に軟化して塑性流動を起こし砥石表面に目づ
まりを生ずる欠点もある。
【0007】これらの欠点を改善するため、連続多孔質
メタルボンド砥石が提案されているが(特開昭59−1
82064号公報)、粉末焼結法を利用するものではな
い。溶剤可溶無機化合物を所定の形状に焼結して成形し
たのち、得られた焼結体の空隙部に砥粒を充てんして予
熱し、ついでこの砥粒充填てん焼結体んの空隙部にさら
に溶融した金属または合金を圧入し、凝固させたのち、
溶剤で前記無機化合物を溶出させて製造するという、気
孔付与剤をフィラーとして添加し砥粒層に気孔を介在さ
せる方法が記載されている。
【0008】また、砥粒に何層もの金属コーティングを
施し、ホットプレスによってビトリファイドボンドのよ
うな構造に焼結させ気孔をもたせたもの(特公昭54−
31727号公報)等、切れ味の低下を防ぐ手段が提案
されている。
【0009】さらに、目づまりを克服するための鋳鉄を
用いた砥石(特開平3−264263号公報)が提案さ
れている。その鋳鉄ボンドの砥石は、高強度で剛性が高
く、高切り込み重研削が可能であり、塑性流動を起こさ
ない脆性破壊的な摩耗であり、目づまりは生じにくい等
のさまざまな利点をもっているが、強度が大きすぎるた
めに銅系のボンドに比べてドレッシング性が悪く、また
その剛性の高さが既存の研削盤、方式では実用が難しい
のが現状である。
【0010】砥粒層の内部に多数の気孔を形成させるこ
とは、その気孔に研削液を含浸させて砥石の冷却性を高
めたり、研削面に多数のチップポケットを発生させ、切
り粉の排出性を高めることができ、またこの気孔で研削
抵抗を小さくさせ良好な切れ味を有することができ、言
いかえると、発熱が少なく、高品質の仕上げ面が得られ
ることが予想できる。しかし、従来の銅系のメタルボン
ド砥石においては、気孔を有することは、当然強度の低
下、ひいては砥粒保持力の低下を招き、十分な研削性能
を得るには至っていない。
【0011】また無気孔型鋳鉄ボンド砥石においては、
鋳鉄粉の焼結性の悪さから鋳鉄粉に鉄粉を加え、なおか
つ8,000kgf/cmから10,000kgf/
cmの荷重で成形している。鉄粉を加えることで鋳鉄
本来の脆性破壊挙動を消失させ、銅系ボンドと同様な塑
性変形を起こす原因にもなり、鋳鉄の特徴が引き出され
るには至っていない。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、例えば多孔
質鋳鉄ボンドダイヤモンド砥石のような、多孔質メタル
ボンド砥石およびその製造方法の提供を目的とする。さ
らに詳しくは本発明は、砥石全体の気孔率を調節し、か
つ、超砥粒が粉末焼結により形成された多孔構造相によ
って保持されている性能の改善されたメタルボンド砥
石、およびその製造方法の提供を目的とする。さらに、
上記多孔構造相が結合剤金属が炭素等の侵入型固溶反応
により形成された多孔構造相であることを特徴とする性
能の改善されたメタルボンド砥石、およびその製造方法
の提供を目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記課題を解
決するためになされたもので、以下その構成を具体的に
説明する。
【0014】一般に、砥石において、気孔は、研削時に
発生する切屑が一時保管され、砥石が被加工物と離れる
時に放出されるため、目詰りを抑制し砥石の切れ味を向
上する効果がある。また、研削時に発生する多量の研削
熱を放散させる作用もあり、研削焼けの防止が問題とな
る場合は高気孔率の砥石が求められ、中には通常の気孔
のほかに意図的に大孔径の気孔をつくったものもしばし
ば用いられる。
【0015】本発明は、メタルボンド砥石における砥粒
を取り囲むいわゆるマトリックスタイプのメタルボンド
に、多数の気孔を含有させて、結合剤部分(メタルボン
ド)の機械的特性および/または砥粒の保持力を改善す
る。さらに、必要により結合剤の侵入型固溶反応によっ
ても、結合剤部分の機械的特性および/または砥粒の保
持力を改善する。
【0016】すなわち本発明は、砥粒として超砥粒およ
び結合剤として金属粉末からなり、かつ、超砥粒が、粉
末焼結により形成された多孔構造相である結合剤部分に
よって保持されていることを特徴とする多孔質メタルボ
ンド砥石を提供する。
【0017】本発明においては、砥粒としてダイヤモン
ド砥粒や立方晶系窒化ホウ素砥粒等の超砥粒を、結合剤
として侵入型固溶反応の可能な金属粉末を用いる。侵入
型固溶反応の可能な金属として炭素、窒素および/また
は珪素と固溶反応できる合金粉末粒子を挙げることがで
きる。
【0018】メタルボンドの特徴は結合強度が格段に高
いため砥粒保持力が格段に高いことであり、その特徴と
する砥粒保持力の低下をもたらす気孔をメタルボンドに
積極的に含有させることはこれまで行われていない。本
発明は、気孔により、研削過程でメタルボンドが抵抗な
く適度に摩滅するように、メタルボンドの結合強度を制
御する。
【0019】気孔率を下げすぎると、砥粒を保持する保
持力が強くなりすぎるため、切削部が摩耗した砥粒がバ
インダーメタルが脱落せずに残り、この結果、砥石の切
削能力が低下し、また、気孔率を上げすぎると、砥粒を
保持する保持力が弱くなりすぎるため、バインダーメタ
ルから脱落する砥粒が多くなり、この結果、砥石の摩耗
が増大し、砥石の寿命が短くなる。
【0020】本発明は気孔率および/または侵入型固溶
元素の濃度勾配の調節によって、結合剤部分の機械的特
性および/または砥粒の保持力を制御する。気孔率およ
び/または侵入型固溶元素の濃度勾配は、金属粉末の粒
径、砥石の成形条件および/または砥石の焼成条件、さ
らには結合剤の炭素、窒素および/または珪素量によっ
て調節する。
【0021】したがって、本発明は超砥粒が結合剤相互
の侵入型固溶反応により形成された多孔構造相によって
保持されているタイプのものを包含する。この場合、砥
粒としてダイヤモンドを使用したとき、ダイヤモンドの
炭素分が炭素、窒素および/または珪素と固溶反応でき
る合金粉末粒子と表面で反応することがある。
【0022】本発明は、砥石全体の気孔率を調節する。
砥石として使用されているものの最大の気孔率は特殊な
場合を除いて、ビトリファイドボンド砥石が最も大き
く、最大で50%程度である。実際に使用している範囲
は35%〜45%ぐらいが多く、50%の気孔率までい
くと砥石の強度はかなり低下し、砥石が破壊する恐れも
生じてくる。
【0023】しかし、強力な研削が可能な超砥粒の性能
を十分に発揮させ、しかも高価な砥粒を有効に利用する
ためには、基本的には砥粒率は低めにし、結合剤は砥粒
保持力の強いメタルボンドとし、それを必要最小限に用
い、そして気孔率は大きくすることが望ましいと考え
る。
【0024】従来、鋳鉄ボンドの砥石における鋳鉄の特
徴は、強度だけではなくその脆性的な破壊にある。鉄が
炭素を固溶することによって、脆性破壊を伴うようにな
る。銅系のメタルボンドでは塑性変形摩耗によってボン
ド成分が砥石表面を覆ってしまい目づまりを起こし切れ
味を低下させるが、鋳鉄ボンドは脆性的な破壊によって
目づまりを防止することができる。こうした目づまりが
生じにくいという利点をいかすためには、強度が大きす
ぎるという欠点を強度調整することによって克服するこ
とが必要である。
【0025】砥石全体の気孔率は5〜60%、好ましく
は5〜45%に調節する。本発明の多孔質メタルボンド
砥石において、砥石全体の気孔率は結合剤の気孔率に相
当する。その気孔率は、金属粉末の粒径、砥石の成形条
件、および/または砥石の焼成条件によって調節する。
【0026】通常の鋳鉄ボンドダイヤモンド砥石の場
合、ボンド自身の気孔率はほとんどなく、砥粒を介在し
てその隙間を得るか、または気孔付与剤を添加するかで
あるのに対して、本発明はメタルボンド自身が多数の気
孔を含んでいることを特徴としている。
【0027】そして、本発明の砥石全体の気孔率は、5
%より少ないとボンド強度がかなり高くなり結合剤金属
の摩耗特性を十分に発揮できないので、下限は5%とす
る。また気孔率が高すぎると砥石の強度が低下し破壊す
るおそれのあるので60%以下、好ましくは45%以下
とする。
【0028】本発明の砥粒は、砥粒は結合剤粒子の焼結
密度の低い多孔質相によって保持されている。気孔率
は、金属粉末の粒径、砥石の成形条件および砥石の焼成
条件によって調節する。すなわちメタルボンドの機械的
強度および砥粒保持力を制御するため金属粉末の粒径、
砥石の成形条件および砥石の焼成条件を調節する。
【0029】さらに本発明は、気孔率の調節に加えて、
侵入型固溶元素の濃度勾配を調節してメタルボンドの機
械的強度および砥粒保持力を制御することができる。し
たがって本発明は砥粒が多孔質であって、かつ、結合剤
相互の侵入型固溶反応物である相によって保持されてい
る態様を包含する。炭素、窒素および/または珪素と固
溶反応できる合金粉末の反応は、炭素、窒素および/ま
たは珪素量ならびに合金粉末の粒径によって調節する。
これも、メタルボンドの機械的強度および砥粒保持力を
制御するためである。
【0030】本発明では、粉末焼結により形成された多
孔構造相は、多数の気孔を含有する結合剤相互の侵入型
固溶反応物で構成されている。侵入型固溶元素の濃度勾
配は、炭素、窒素および/または珪素と固溶反応できる
金属粉末の粒度および炭素、窒素および/または珪素量
を調節することにより行われる。炭素、窒素および/ま
たは珪素と固溶反応できる金属粉末が、例えば鉄系金属
粉末である場合、鋳鉄粉、炭素被覆鉄粉、窒化鉄粉、炭
素および鉄の混合物からなる群から選ばれる一種または
二種以上からなる。
【0031】超砥粒と結合剤粉末、例えば鋳鉄粉を混合
して、焼結させた場合、焼結温度に達した時、鉄粉の表
面が部分溶融しはじめ焼結が始まる。この時、鉄の炭
素、窒素および/または珪素量が許容範囲に満たない場
合は、近接する炭素等と反応(拡散接合)することがで
きる。焼結の際に拡散による物質の移動によって結合剤
相互に濃度勾配が生じる。したがって侵入型固溶反応に
は焼結密度も影響する。前述したとおり、砥粒としてダ
イヤモンドを用いたとき、条件によっては、侵入型固溶
反応は結合剤と砥粒の表面でも起きる。
【0032】以下、本発明の砥石について、超砥粒とし
てダイヤモンド、結合剤として鋳鉄を使用した多孔質鋳
鉄ボンドダイヤモンド砥石を例に挙げて説明する。
【0033】本発明においては、多孔質鋳鉄ボンドダイ
ヤモンド砥石について、銅系のメタルボンド砥石と同等
の強度および砥粒保持力とするために、鋳鉄粉の炭素量
および粒径を調節する。鋳鉄粉の炭素量および粒径によ
って、鋳鉄ボンド自身の強度を制御することができる。
また、鋳鉄粉とダイヤモンドとの接合は、図1に示すよ
うに、ダイヤモンドと鋳鉄粉を反応させて結合させる。
この接合強度についても、鋳鉄粉の炭素量および粒径に
よって制御することができる。
【0034】次に、本発明の多孔質メタルボンド砥石の
製造方法について説明する。
【0035】本発明の多孔質メタルボンド砥石の製造方
法は、砥粒として超砥粒および結合剤として金属粉末を
混合し所定の寸法形状に成形した後、加熱焼結して多孔
質メタルボンド砥石を製造するに際し、気孔率によって
結合剤部分の機械的特性および砥粒の保持力を制御する
ことを特徴とする。気孔率に加えて、侵入型固溶元素の
濃度勾配を利用することによって結合剤部分の機械的特
性および砥粒の保持力を制御する。
【0036】結合剤部分の機械的特性および砥粒の保持
力の制御のため、気孔率を調節することおよび/または
侵入型固溶元素の濃度勾配を利用することは、結合剤と
しての金属粉末の粒径、砥石の成形条件および砥石の焼
成条件を変化させて行う。焼成温度は、0.8Tmない
しTm(ただし、Tmは結合剤の融点または液相生成温
度Kである。)の温度範囲である。金属の種類、その粉
末の粒度などによって変化し、砥粒がダイヤモンドの場
合は、真空中でも不溶性雰囲気中でも1100〜120
0℃ぐらいで炭化するため、それ以下の温度が採用され
る。金属粉末としては炭素、窒素および/または珪素と
固溶反応できる金属、合金粉末が使用され、その平均粒
度を0.01μm〜500μmの範囲で調節する。さら
に炭素、窒素および/または珪素量も適宜調節する。
【0037】以下に、本発明の砥石の製造方法につい
て、多孔質鋳鉄ボンドダイヤモンド砥石の製造方法を例
に挙げて説明する。
【0038】多孔質鋳鉄ボンドダイヤモンド砥石は、砥
粒としてダイヤモンドおよび結合剤として鋳鉄粉を混合
し所定の寸法形状に成形した後、900〜1150℃で
加熱焼結することにより製造される。
【0039】上記焼結工程によって砥石形状に成形され
た成形体を焼結する。この焼結は常圧において行うもの
とし、焼結温度は少なくとも900℃以上の温度とす
る。焼結温度は砥粒としてダイヤモンドを用いた場合の
熱劣化、および焼結温度が高くなると焼結が進行し、目
的とする砥石全体の気孔率5〜60%が得られなくなる
こと等を考慮して決める。好ましい焼結温度は900〜
1150℃の範囲といえる。なお、焼結温度は鋳鉄の炭
素量、その粉末の粒度などによって変化する。
【0040】結合剤部分の機械的特性および砥粒の保持
力の制御は、鋳鉄粉の平均粒度を0.01μm〜500
μmの範囲で調節することによりおよび/または炭素量
を4.5%以下、好ましくは1%〜4.2%の範囲で調
節することにより、なされる。好ましい鋳鉄粉の平均粒
度は5μm〜80μm範囲で、最大粒径が500μm以
下のものである。
【0041】気孔率を下げすぎると、砥粒を保持する保
持力が強くなりすぎるため、切削部が摩耗した砥粒がバ
インダーメタルか脱落せずに残り、この結果、砥石の切
削能力が低下し、また、気孔率を上げすぎると、砥粒を
保持する保持力が弱くなりすぎるため、バインダーメタ
ルから脱落する砥粒が多くなり、この結果、砥石の摩耗
が増大し、砥石の寿命が短くなる。
【0042】鋳鉄粉の平均粒度および炭素量を上記の範
囲で調節することで、砥粒としてダイヤモンドと鋳鉄を
固相拡散させ、砥粒の保持力を向上させることが可能と
なる。鋳鉄は、砥粒を保持する役目を担うため、砥粒と
の接触面積を増すようにその粒径の小さいものが存在す
ることが望ましい。
【0043】本発明の多孔質鋳鉄ボンドダイヤモンド砥
石は、通常の砥石の作製法と同様に、鋳鉄粉とダイヤモ
ンド砥粒を均一に混合し、従来通りプレス装置に台金と
ともに型込めして圧粉成形して製造する。このようにし
て焼成したものを、砥石径100mmの6A2タイプの
カップ型砥石に接着し、定圧研削試験によって評価す
る。通常の無気孔型鋳鉄ボンド砥石、ビトリファイド砥
石およびレジノイド砥石と比較して、本発明の多孔質鋳
鉄ボンド砥石の優位性を確認する。
【0044】砥石の作製に当たっては市販の鋳鉄粉を用
いた。その鋳鉄粉の平均粒径は100μm以上であり、
しかも粒度分布が広範囲であるため、鋳鉄の融点まで温
度を上げても焼結しにくい。そのため鋳鉄粉の炭素量な
らびに粒径を制御することにより、鋳鉄粉の焼結性、機
械的強度ならびに気孔率を調整する。
【0045】炭素量の影響を調べるため、炭素含有量が
3.0%,3.5%,4.0%である3種類の市販の鋳
鉄粉を38μm以下のふるいによって整粒したものを用
いた。粒径の影響を調べるため、炭素量3.5%の鋳鉄
粉をふるいによって20μm以下、20μmから32μ
m、32μmから38μm、38μmから45μm、4
5μmから75μmにそれぞれ整粒した。
【0046】各鋳鉄粉とメッシュサイズ100/120
のダイヤモンド砥粒を集中度125になるように混合
し、1120℃の温度でアルゴン雰囲気中において焼成
した。
【0047】また上記で作製した砥石についで、被削材
にアルミナセラミックスを用い、100m/minの砥
石周速で定圧研削試験を行った。表1(試作した砥石の
物性と研削性能)は焼成後の多孔質鋳鉄ボンドダイヤモ
ンド砥石の物性値と研削結果を示している。
【0048】
【表1】
【0049】表1から明らかなとおり、鋳鉄粉の粒径が
小さくなるにつれて曲げ強さ、ヤング率は上昇し強度が
増加している。鋳鉄粉の炭素量が3.5%の時に曲げ強
度、ヤング率が最高の値を示した。また研削性能は鋳鉄
粉粒径が小さくなるにつれて研削エネルギー(被削材を
除去するのに必要なエネルギー)は減少し、約半分のエ
ネルギーで被削材を除去することができた。研削比も研
削エネルギーと同様な結果を示した。
【0050】図2に炭素量3.5%、鋳鉄粒径が20μ
mの時の顕微鏡写真を示すが、鋳鉄粒子同士、ならび
に、ダイヤモンドと鋳鉄ボンドの接合が化学反応によっ
て行われていることが確認できる。ダイヤモンド表面の
炭素分が鋳鉄に固溶し、接合強度を高めている。その傾
向は、粒径が小さくなるにつれて多くなりまた接触点も
増加するために曲げ強度、ヤング率が増加し、研削する
際にはダイヤモンド砥粒の保持力が高くなるために砥粒
の脱落がなく被削材を除去するために研削エネルギーが
低くなり、研削比が増加したと思われる。このように多
孔質鋳鉄ダイヤモンド砥石の物性または研削性能は、鋳
鉄粉の粒径と炭素量で制御することができる。
【0051】
【実施例】本願発明の詳細を実施例で説明する。本願発
明はこれら実施例によって何ら限定されるものではな
い。
【0052】実施例1 120メッシュのダイヤモンド砥粒と炭素量3.5%,
平均粒径20μm以下の鋳鉄粉を使用して、1120℃
の温度でアルゴンガス雰囲気中で焼成し、多孔質鋳鉄ボ
ンドダイヤモンド砥石を得た。この多孔質鋳鉄ボンドダ
イヤモンド砥石を、市販のビトリファイド砥石、市販の
レジノイド砥石および市販の無気孔鋳鉄ボンド砥石と比
較した。それぞれの砥石の形状は直径100mmの6A
2のカップ型砥石であり、集中度は125に統一した。
研削試験は、アルミナを被削材として、砥石周速110
0m/minで定圧研削試験を行った。
【0053】その結果を図3(研削圧力と除去速度の関
係を表した説明図)に示す。
【0054】いずれの砥石も研削圧力が増加するにつれ
て除去速度は増加しているが、多孔質鋳鉄ボンドは、切
れ味が優れていると言われている市販のビトリファイド
砥石に比べて、約2倍の研削能力を示した。また、研削
比は、他のボンドに比べて2倍の性能を示した。
【0055】実施例2 窒化ケイ素の研削試験を、実施例1で作製した砥石を使
用して、実施例1と同様な条件のもとで行った。
【0056】その結果を図4(研削時間と研削除去量の
関係を表した説明図)に示す。
【0057】市販のビトリファイドボンド砥石および市
販のレジノイドボンド砥石は、研削開始後30秒間まで
は、時間に比例して研削除去量が増加したが、その後は
砥石が目づまりし研削除去量が増加しなかった。本発明
の多孔質鋳鉄ボンド砥石は、研削開始直後から試験終了
まで、時間に比例して研削除去量が増加した。多孔質鋳
鉄ボンドは、ボンドの破砕性に優れているために、ダイ
ヤモンドの切れ刃が持続し、研削力が持続したと考えら
れる。
【0058】
【発明の効果】目的の強度、気孔率をもった多孔質メタ
ルボンド砥石を提供することができる。目づまりするこ
となく、長時間の連続研削が可能である多孔質メタルボ
ンド砥石を提供することができる。ビトリファイドボン
ド砥石より切れ味がよく、レジノイドボンド砥石より砥
石摩耗が少ない砥石を提供することができる。汎用の研
削盤で充分に使用でき、かつドレッシング性に優れてい
るために、ビトリファイドボンド、レジノイドボンドと
同様に機上でのドレッシングが可能であり、また研削比
も高いために研削コストを大幅に改善できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の多孔質鋳鉄ボンドダイヤモンド砥石に
おけるダイヤモンド砥粒と鋳鉄粉が反応して接合されて
いる状態を示した説明図である。
【図2】鋳鉄粉の炭素量3.5%および粒径20μmの
時のダイヤモンド砥粒と鋳鉄ボンドの接合の状態を示し
た顕微鏡写真である。
【図3】本発明の実施例の砥石における研削圧力と除去
速度の関係を示した説明図である。
【図4】本発明の実施例の砥石における研削時間と研削
除去量の関係を示した説明図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI C22C 1/05 C22C 1/05 P (56)参考文献 特開 昭63−99177(JP,A) 特開 昭58−15671(JP,A) 特開 昭58−217271(JP,A) 特開 昭60−99568(JP,A) 特開 昭60−180774(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B24D 3/00 B24D 3/10 B24D 3/02 B24D 3/04 B24D 3/06 B24D 3/34 C22C 1/05

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 砥粒として超砥粒および結合剤として金
    属粉末からなり、かつ、超砥粒が、気孔率、ならびに、
    超砥粒と結合剤および結合剤相互の侵入型固溶反応を制
    御して粉末焼結により形成された多孔構造相である結合
    剤部分によって保持されていることを特徴とする多孔質
    メタルボンド砥石。
  2. 【請求項2】 砥石全体の気孔率が5〜60%である請
    求項1記載の多孔質メタルボンド砥石。
  3. 【請求項3】 砥粒として超砥粒および結合剤として金
    属粉末を混合し所定の寸法形状に成形した後、加熱焼結
    して多孔質メタルボンド砥石を製造するに際し、気孔
    、ならびに、侵入型固溶元素の濃度勾配に基づく侵入
    型固溶反応によって結合剤部分の機械的特性および/ま
    たは砥粒の保持力を制御することを特徴とする多孔質メ
    タルボンド砥石の製造方法。
  4. 【請求項4】 金属粉末の粒径、砥石の成形条件、およ
    び/または砥石の焼成条件によって調節する請求項3記
    載の多孔質メタルボンド砥石の製造方法。
  5. 【請求項5】 焼成温度が0.8TmないしTm(ただ
    し、Tmは結合剤の融点または液相生成温度Kであ
    る。)である請求項4記載の多孔質メタルボンド砥石の
    製造方法。
  6. 【請求項6】 金属粉末の粒径は、平均粒度を0.01
    μm〜500μmの範囲で調節する請求項4または請求
    項5記載の多孔質メタルボンド砥石の製造方法。
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