JP3050142B2 - 耐低温チッピング性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板 - Google Patents

耐低温チッピング性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板

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JP3050142B2
JP3050142B2 JP8287925A JP28792596A JP3050142B2 JP 3050142 B2 JP3050142 B2 JP 3050142B2 JP 8287925 A JP8287925 A JP 8287925A JP 28792596 A JP28792596 A JP 28792596A JP 3050142 B2 JP3050142 B2 JP 3050142B2
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steel sheet
phase
chipping resistance
plating
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吉隆 足立
保 土岐
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自動車、建材、家
電等の用途に好適な、耐低温チッピング性に優れた合金
化溶融亜鉛めっき鋼板に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、自動車、建材、家電製品等の高級
化に伴い、より長期の防錆能を有する防錆鋼板、特に経
済性に優れる合金化溶融亜鉛めっき鋼板(以下では「G
A鋼板」と記す)が求められている。GA鋼板は、鋼板
に溶融亜鉛めっきした後に再加熱して、母材のFe 原子
をめっき層中に拡散させてFe ―Zn 合金層を形成させ
て製造される。めっき層の平均Fe 含有量は、一般に7
〜12重量%である。GA鋼板はZn めっき鋼板に比べ
て、塗料の密着性が良いので塗装後の耐食性が良いう
え、スポット溶接性にも優れているのが特徴である。
【0003】他方、GA鋼板には改善すべき課題があ
る。その1は、プレス加工時にめっき皮膜が粉状になっ
て剥離する(パウダリング)現象である。その2は、0
℃以下、例えば―20℃等の低温環境下で塗装しためっき
鋼板の表面に石跳ね等の衝撃が加えられた時に、塗膜と
共にめっき皮膜が母材界面から剥離する現象(低温チッ
ピング)が生じる場合があることである。皮膜の内部か
ら粉化するパウダリングはプレス後の製品の外観を損な
い、プレス加工時の作業性も阻害する。低温チッピング
は塗装しためっき皮膜そのものの剥離であるため、商品
の外観を損なううえ、その箇所の防錆能力が低下し赤錆
が発生しやすくなる。
【0004】GA鋼板のめっき皮膜と母材との界面(以
下、単に「母材界面」と記す)には、Fe 濃度が高く硬
質なFe ―Zn 合金相であるГ相(Fe3Zn10 )が生成
している。合金化が進行するとΓ相は母材界面からめっ
き皮膜内部に向かって成長し、その層が厚くなると共に
より硬質で最も脆いΓ1 相が生成してめっき皮膜の密着
性が劣化する。このことがパウダリングや低温チッピン
グの発生に大きく関係している。
【0005】耐パウダリング性を改善すべく、Γ相の成
長を抑制する手法が種々検討されている。特開平1-2797
38号公報には、めっき浴のAl 濃度を0.04〜0.12%に管
理してめっきした後、2秒以内に470 ℃以上に急速加熱
し、合金化完了後420 ℃以下まで2秒以内に急速冷却す
ることにより、Γ相の成長を抑制してGA鋼板を製造す
る方法が示されている。しかしながら、この方法で製造
されたGA鋼板のパウダリング性は改善されるとして
も、耐低温チッピング性は充分ではない。
【0006】特開平6-41707 号公報にはめっき皮膜との
境界部の母材の表面粗さを10点平均粗さで6.5 μm 以上
にし、めっき皮膜の平均Fe 濃度を7〜11%にすること
で耐低温チッピング性を改善する方法が提示されてい
る。しかしこの方法でも耐低温チッピング性は十分では
ないうえ、めっき皮膜の表面粗さが粗くなって塗装仕上
がり外観が損なわれるおそれがある。
【0007】特開平6-81099 号公報には耐低温チッピン
グ性に有害なP含有量を0.007 %以下に制限し、かつ、
めっき皮膜との境界部の母材の表面粗さを粗くすること
等によって密着性を改善する方法が提案されている。し
かし、ここでは鋼板の強度を高めるためにPの代わりに
Si とMn を用いている。Si が多いとめっき不良が生
じやすくなるうえ、高価なMn を多用するのは経済性か
らも好ましくない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明における課題
は、自動車、建材、家電等の用途に好適な耐低温チッピ
ング性に優れたGA鋼板を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨は下記の耐
低温チッピング性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板に
ある。
【0010】平均結晶粒径が200 nm以上800 nm以下で、
平均の厚さが0.5 μm 以上であるΓ相を有し、かつ10重
量%以上15重量%以下のFe を含むFe ―Zn 合金から
なるめっき皮膜を少なくとも片面に有することを特徴と
する耐低温チッピング性に優れた合金化溶融亜鉛めっき
鋼板。
【0011】GA皮膜中に存在するΓ相の結晶粒径は通
常100 〜200 nm前後の範囲にあるが、これを大きくすれ
ば、低温環境下で衝撃が加えられてもめっき皮膜は剥離
しにくくなる。また、剥離しても大きく剥離することは
なく、剥離片は小さくなる。
【0012】Γ相の結晶粒径を大きくすると耐低温チッ
ピング性が良好になる理由は明確ではないが、以下のよ
うに推定される。めっき皮膜の剥離は、皮膜表面に発生
した亀裂が母材界面に向かって皮膜の厚さ方向に伝播す
る段階と、母材界面に到達した亀裂が界面に沿って四方
に伝播する段階からなっている。亀裂が皮膜の厚さ方向
に伝播する段階ではΓ相の粒界がその伝播経路になって
おり、Γ相の結晶粒径が大きくなって粒界の数が減少す
ると亀裂伝播経路が少なくなり、耐低温チッピング性が
向上するものと考えられる。
【0013】Γ相の結晶粒の成長速度は、母材界面の結
晶方位の影響を強く受ける。本発明では母材の結晶方位
を通じてΓ相の結晶粒径を制御する。
【0014】
【発明の実施の形態】以下に本発明の実施内容の詳細を
具体的に説明する。
【0015】めっき皮膜の組成:本発明のめっき皮膜は
皮膜平均の含有量で10重量%以上15重量%以下のFe を
含有し、残部はZn および不可避的不純物で構成される
Fe―Zn 合金よりなる。めっき皮膜中に存在させるГ
相の平均結晶粒径を200nm 以上にするために、皮膜中の
平均のFe 含有量は10重量%以上とする。また、Fe含
有量が15%を超えると、めっき皮膜の犠牲防食性能が損
なわれる。また、合金化に要する時間も長くなって経済
性も損なう。このため、Fe 含有量の範囲は10重量%以
上15重量%以下とする。
【0016】めっき皮膜の構造:本発明のめっき皮膜
は、平均結晶粒径が200 nm以上800 nm以下で、平均の厚
さが0.5 μm 以上であるΓ相を有する。Γ相の平均結晶
粒径を大きくすると耐低温チッピング性が改善し、低温
環境下で外部から衝撃が加わった場合に、めっき皮膜が
剥離し難くなるか、剥離しても剥離片は極めて小さくな
る。
【0017】この改善効果を得るために、その平均の結
晶粒径を200 nm以上とする。これにより、亀裂がめっき
皮膜中を進展するときの経路となる粒界の数が減少して
チッピングに対する抵抗が増す。Γ相の平均結晶粒径の
上限は800 nmとする。Г層の結晶粒径が800 nmを超えて
大きくなると、その上部にΓ1 相等のより硬質な合金相
が生成し、耐パウダリング性が損なわれる。
【0018】焼鈍後めっきされる直前の母材の{22
2}集合組織が強く発達している部分では、Γ相の結晶
粒の成長速度が遅い。これには、合金相の初期の相であ
るζ相の結晶構造が鋼の{222}面と整合性が良いこ
とが関係していると推測される。
【0019】以下では、{222}面の集合組織の強さ
を、当該試料のX線回折強度をランダム方位の試料(粉
末試料等)の回折強度で規格化した積分強度比[I(22
2) /IR(222)]/[I(200) /IR(200)](以下、単
に「{222}面のランダム比強度」と記す)で示す。
ここで、I(222) は当該試料のX線回折で得られる(2
22)面の積分強度であり、IR(200)はランダム試料の
それである。
【0020】{222}面のランダム比強度が30以下で
ある母材にめっきし合金化することでГ相の結晶粒径を
200 nm以上にすることができる。Г相の結晶粒を800 nm
以下にするには、{222}面のランダム比強度が30以
下である母材を用いてめっきし、皮膜中のFe 含有量が
15%以下になるように処理すればよい。
【0021】Γ相の平均厚さは0.5 μm 以上とする。こ
れはГ相の平均結晶粒径を200 nm以上にするために、Γ
相をこれ以上に成長させることが必要なためである。Γ
相が厚い程耐低温チッピング性は良好になるので、その
厚みの上限に特別な制約は設けない。しかし、Γ相の厚
みが3μm を超えると、より硬質でFe ―Zn 金属間化
合物の中では最も脆いΓ1 相が生成して皮膜全体が脆く
なり耐パウダリング性が劣化するので、Γ相の厚みは3
μm 以下にするのが望ましい。Γ相の厚みはを0.5 μm
以上にするには、{222}面のランダム比強度が30以
下である母材を用いてめっきし、皮膜中のFe 含有量が
10%以上になるように処理すればよい。
【0022】Γ相の平均結晶粒径は、めっき皮膜の厚み
方向の断面から撮影した電子顕微鏡写真を用いて測定す
る。めっき皮膜の厚み方向の断面を観察する試料は、ま
ず機械研磨で薄い断面試料を作製し、ディンプリング研
磨によって局所的にさらに試料を薄くし、最後にイオン
シンニング法で処理した薄膜を用いる。これを透過型電
子顕微鏡(TEM)により皮膜/母材界面方向から観察
し、視野数3ケについて倍率2万倍で結晶組織写真を撮
影する。これらの写真上に直線を引き、その直線で切断
されるΓ相の結晶粒界間の距離を求めて平均のΓ相結晶
粒径を得る。
【0023】Γ相の平均厚みは、GA鋼板試料を樹脂に
埋め込み、その厚み方向の断面をエメリー紙で研磨し、
油性研磨液を用いて鏡面状態に仕上げ、続いて0.05%ナ
イタール液で腐食したサンプルの走査型電子顕微鏡(S
EM)写真より求める。
【0024】めっき直前の母材の{222}面のランダ
ム比強度を30以下にするには、母材の化学組成や熱間圧
延、冷間圧延あるいはその後の焼鈍等の条件を調整すれ
ばよい。めっき浴には合金化反応を制御しやすくする爲
にAl を0.05〜0.2 重量%添加するのが好ましい。皮膜
中平均Fe 含有量は合金化処理条件を調整して制御でき
る。例えば、合金化処理温度が480 〜580 ℃で処理時間
が5〜100 秒等の範囲で処理できる。
【0025】本発明の耐低温チッピング性に優れた合金
化溶融亜鉛めっき鋼板は、両面めっきあるいは片面めっ
きいずれでもよい。付着量は特に規定するものではない
が、耐食性確保の観点から片面当たり30g/m2(厚さ4.
5 μm )以上が好ましく、逆に過剰に付着すると耐食性
能が飽和するうえ、パウダリングが生じやすくなり、経
済性も好ましくないのでその上限は片面当たり90g/m2
(厚さ13.5μm )以下にするのが好ましい。
【0026】めっき母材は、普通鋼、高張力鋼等の熱間
圧延鋼板、冷間圧延鋼板のいずれでもよい。その化学組
成は特定するものではないが、自動車用や家電製品用に
用いる場合には、JIS G3141 に規定する冷間圧延鋼板、
JIS G3135 に規定する自動車用加工性冷間圧延高張力鋼
板、JIS G3131に 規定する熱間圧延軟鋼板、JIS G3134
に規定する自動車用加工性熱間圧延高張力鋼板、あるい
はこれらと同様の化学組成である鋼板が好ましい。本発
明の鋼板は、これらのめっき母材を用いて弱酸化性もし
くは還元性の雰囲気で加熱もしくは焼鈍し、これをめっ
き温度付近まで冷却して溶融亜鉛めっきし、これを再加
熱してFe ―Zn 金属間化合物を形成させて製造でき
る。
【0027】
【実施例】
(実施例1)以下に本発明の実施例について説明する。
母材には厚さ0.8 mmの極低炭素鋼(表1の鋼A)および
極低炭素P添加鋼(表1の鋼P)の冷間圧延鋼板を用い
た。これらの化学組成を表1に示す。
【0028】
【表1】
【0029】これらの鋼板を80℃以上に保持した10体積
%のNaOH を含む水溶液に浸漬、脱脂して表面を清浄
にし、550 ℃のN2 雰囲気中で予熱した後、H2 :26体
積%、残:N2 、露点―60℃以下の雰囲気中で、焼鈍温
度:700 、750 、800 、850℃、均熱時間:60秒の条件
で焼鈍し、溶融亜鉛めっきを施した。めっき直前の鋼板
の温度を450℃、めっき浴の温度を460℃とし、Al を0.
12重量%添加しためっき浴を用いて、めっき付着量が片
面当たり60g/m2(9μm )になるようにガスワイピン
グ量を制御した。
【0030】上記条件で製造した溶融亜鉛めっき鋼板に
誘導加熱炉を用いて合金化処理を施した。鋼Aを母材に
した溶融亜鉛めっき鋼板は45℃/秒の加熱速度で500 ℃
に加熱し、その温度での保持時間を変えて合金化処理し
た後空冷した。鋼Pを母材にしたものについては、45℃
/秒の加熱速度で560 ℃に加熱し、その温度での保持時
間を変えて合金化処理した後冷風を吹きかけて冷却し
た。これらの処理により、Γ相の結晶粒径、Γ相の厚
さ、めっき皮膜中のFe 含有量等が異なるGA鋼板を得
た。
【0031】得られた鋼板について、めっき皮膜を溶解
除去した後の母材の{222}面のランダム比強度およ
びめっき皮膜のΓ相の厚さ、結晶粒径、めっき皮膜のF
e 含有量等を調査した。また、めっき皮膜の性能は以下
の方法で調査した。
【0032】耐低温チッピング性:通常の塗装工程に準
じてりん酸亜鉛処理→カチオン電着塗装(20μm )→中
塗り塗装(35μm )→上塗り塗装(膜厚35μm )の3コ
ート塗装を行った。これを試験温度―40℃でダイヤモン
ド粒(直径約3mm)を210km/時の速度で10箇所衝突させ
めっき剥離片を得た。性能の評価は、剥離片の直径が最
大のものから大きい方から5番目までのものの剥離片の
直径の平均値を求めた。この結果を、この平均値が5mm
以上のもの:×、1mm以上5mm未満のもの:△、1mm未
満のもの:○ で区分した。
【0033】耐パウダリング性:合金めっき鋼板のサン
プルから直径35.4mm、高さ25mmの円筒状のカップを成形
し、その側壁部全面に粘着テープを貼付し、剥離しため
っき皮膜の重量を測定した。カップ1ケ当たりの剥離重
量が、5mg以下:○、5mg超え15mg未満:△、15mg以
上:×で評価した。
【0034】これらの結果をまとめて表2に示した。
【0035】
【表2】
【0036】表2に示されているように、本発明の条件
を満たす試番1〜8は耐低温チッピング性が極めて優れ
ている。比較材の試番9、12は合金化が不十分なため
に、また、試番10、11、13、14はめっき前の母材の{2
22}比強度が高すぎたために、いずれもΓ相の結晶粒
径が大きくならず耐低温チッピング性が劣化した。本発
明の鋼板の耐パウダリング性は従来材と同様の性能であ
った。
【0037】
【発明の効果】本発明の鋼板は、従来材と同様の耐パウ
ダリング性を持ちながら優れた耐チッピング性を有す
る。この鋼板を用いて塗装した製品は寒冷地でのめっき
皮膜の耐久性に優れるので商品価値を高めるのに寄与出
来る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 荒井 正浩 大阪府大阪市中央区北浜4丁目5番33号 住友金属工業株式会社内 (56)参考文献 特開 平7−292452(JP,A) 特開 平7−34213(JP,A) 特開 平6−93402(JP,A) 特開 平6−299314(JP,A) 特開 平6−41707(JP,A) 特開 平5−33111(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C23C 2/00 - 2/40

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】平均結晶粒径が200 nm以上800 nm以下で、
    平均の厚さが0.5 μm 以上であるΓ相を有し、かつ10重
    量%以上15重量%以下のFe を含むFe ―Zn 合金から
    なるめっき皮膜を少なくとも片面に有することを特徴と
    する耐低温チッピング性に優れた合金化溶融亜鉛めっき
    鋼板。
JP8287925A 1996-10-30 1996-10-30 耐低温チッピング性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板 Expired - Lifetime JP3050142B2 (ja)

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