JP3043674B2 - ガイドブッシュの内周面への硬質カーボン膜形成方法 - Google Patents

ガイドブッシュの内周面への硬質カーボン膜形成方法

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JP3043674B2
JP3043674B2 JP9237740A JP23774097A JP3043674B2 JP 3043674 B2 JP3043674 B2 JP 3043674B2 JP 9237740 A JP9237740 A JP 9237740A JP 23774097 A JP23774097 A JP 23774097A JP 3043674 B2 JP3043674 B2 JP 3043674B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、自動旋盤に装着
され、丸棒状の被加工物を切削工具(刃物)の近くで回
転及び軸方向に摺動可能に保持するガイドブッシュの被
加工物と摺接する内周面への硬質カーボン膜の形成方法
に関する。
【0002】
【従来の技術】自動旋盤のコラムに設けられ、丸棒状の
被加工物を切削工具の近くで回転可能に保持するガイド
ブッシュには、回転型と固定型とがある。回転型のもの
は常に被加工物と共に回転しながらその被加工物を軸方
向に摺動可能に保持し、固定型のものは回転せずに被加
工物を回転及び軸方向に摺動可能に保持する。
【0003】いずれの型のガイドブッシュも、外周テー
パ面と、それに弾力を持たせるための摺り割り、コラム
に取り付けるためのネジ部と、被加工物を保持する内周
面とを備えており、その内周面は常に被加工物と摺接す
るため摩耗しやすく、特に固定型の場合はその摩耗が激
しい。
【0004】そのため、この被加工物の回転や摺動によ
り被加工物と摺接するガイドブッシュの内周面に、超硬
合金やセラミックスをロー付けなどによって固着して設
けるものが、たとえば特開平4−141303号公報に
見られるように提案されている。このように、耐摩耗性
や耐熱性に優れた超硬合金やセラミックスをガイドブッ
シュの内周面に設けることにより、ある程度のその摩耗
を抑制する効果が認められる。
【0005】しかしながら、このように超硬合金やセラ
ミックスを内周面に設けても、自動旋盤で切削量が大き
く加工速度が大きな重切削に対しては、超硬合金やセラ
ミックスも摩擦係数が大きく熱伝導率が低いため、被加
工物にキズが発生したり、ガイドブッシュと被加工物と
の直径方向の隙間寸法が減少して焼き付きが発生したり
するという問題があり、切削量及び加工速度を上げるこ
とができなかった。
【0006】固定型のガイドブッシュの方が、被加工物
をその軸心のブレがなく保持できるので、真円度が高く
精度のよい加工ができ、しかも騒音が少なく、自動旋盤
の構造も複雑にならずコンパクトにできるなどの利点が
ある。しかしながら、ガイドブッシュの内周面の摩耗
は、回転型の場合よりはるかに大きくなるため、一層切
削量及び加工速度を上げることが困難であるという問題
があった。
【0007】この問題を解決するために、我々はこのよ
うなガイドブッシュにおける被加工物と摺接する内周面
に硬質カーボン膜を形成することにより、内周面の耐摩
耗性を飛躍的に高め、被加工物へのキズの発生や焼き付
きを発生することなく、自動旋盤による切削量及び加工
速度を上げることができるようにすることを提案した。
【0008】この硬質カーボン膜とは、水素化アモルフ
ァス・カーボン膜であり、ダイアモンドによく似た性質
をもつため、ダイアモンドライクカーボン(DLC)と
も云われるものである。この硬質カーボン膜(DLC)
は、硬度が高く(ビッカース硬度で3000Hv以
上)、耐摩耗性に優れ、摩擦係数が小さく(超硬合金の
1/8位)、耐蝕性にも優れている。
【0009】この硬質カーボン膜をガイドブッシュの内
周面に形成する方法として、たとえば、次のようなプラ
ズマCVDプロセスによる方法がある。すなわち、真空
槽内にガイドブッシュを配置し、その内部の真空度が3
×10-5torr以下(この最初に到達する圧力を「初期到
達圧力」という)になるように真空排気する。
【0010】そして、その真空槽内に炭素を含むガスを
導入してその内部の圧力が被膜形成圧力である5×10
-3torrになるように調整する。その後、ガイドブッシュ
にマイナス3kVの直流電圧を印加し、そのガイドブッ
シュに対向するように配置したアノードに直流電圧を、
フィラメントに交流電圧をそれぞれ印加して、真空槽内
にプラズマを発生させ、その炭素プラズマによってガイ
ドブッシュの表面に硬質カーボン膜を形成する。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このプ
ラズマCVDプロセスでは、ガイドブッシュの周囲領域
に発生するプラズマが主になって、炭素を含むガスを分
解して硬質カーボン膜を形成しているため、ガイドブッ
シュの外周部には、硬質カーボン膜を均一性よく形成す
ることができるが、ガイドブッシュの内周面に形成する
硬質カーボン膜は密着性が悪く、しかも硬度などの膜質
が劣るという問題がある。
【0012】この原因は、ガイドブッシュの中心開口内
は、同電位の電極同士が対向している空間となっている
ため、その中心開口内でのプラズマはホロー放電と呼ば
れる異常放電を発生するからである。このホロー放電に
よって形成される硬質カーボン膜は、ポリマーライクな
密着性の悪い被膜であり、ガイドブッシュの内周面から
剥離しやすく、その硬度も低い。
【0013】また、上述した硬質カーボン膜の形成方法
においては、被膜形成圧力である5×10-3torrにて、
ガイドブッシュに直流電源からマイナス3kVの直流電
圧を印加している。このような真空槽内の圧力が5×1
-3torr程度の状態では、真空槽内の空間に電子などの
電荷が多い状態となり、空間インピーダンスが低い。こ
のためプラズマ放電が開始する瞬間に、ガイドブッシュ
に異常放電であるアーク放電が発生しやすい。
【0014】さらに、このプラズマ放電の開始時という
のは、硬質カーボン膜の被膜形成初期でもあるため、こ
の被膜形成初期に形成される膜質によって、ガイドブッ
シュとの密着性が左右される。したがって、プラズマ放
電の最初期に、異常放電であるアーク放電が発生する
と、硬質カーボン膜の膜質及び密着性が低下し、ガイド
ブッシュの内周面から剥離するという問題が発生する。
【0015】この発明はこれらの問題に鑑みてなされた
ものであり、ガイドブッシュの被加工物と摺接する内周
面に膜質及び密着性がよい硬質カーボン膜を形成できる
ようにすることを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】この発明は上記の目的を
達成するため、次の各工程を有するガイドブッシュの内
周面への硬質カーボン膜形成方法を提案する。自動旋盤
用のガイドブッシュを、排気口およびガス導入口を有
し、内部にアノードとフィラメントを設けた真空槽内に
配置し、そのガイドブッシュの被加工物と摺接する内周
面を形成する中心開口内に、接地されるか又は直流正電
圧が印加される補助電極を挿入する第1の工程、
【0017】上記真空槽内を所定の真空度以下の初期到
達圧力に排気する第2工程、その後、上記ガイドブッシ
ュに直流電圧を印加すると共に、上記アノードに直流電
圧を印加し、フィラメントに交流電圧を印加する第3の
工程、その後、ガス導入口から上記真空槽内に炭素を含
むガスを導入して該真空槽内にプラズマを発生させ、プ
ラズマCVDプロセスにより前記ガイドブッシュの内周
面に硬質カーボン膜を形成しながら、該真空槽内の圧力
が前記初期到達圧力より高い被膜形成圧力になるように
制御する第4の工程
【0018】あるいは、真空槽として内部にアノードと
フィラメントを設けないものを使用し、上記第3の工程
に代えて、上記ガイドブッシュに高周波電力を印加する
か、または直流電圧を印加する工程にしてもよい。上記
第4の工程において、真空槽内に導入する炭素を含むガ
スとしては、メタン又はベンゼンを使用することができ
る。
【0019】この発明によるガイドブッシュの内周面へ
の硬質カーボン膜形成方法によれば、真空槽内に配置し
たガイドブッシュの中心開口内に補助電極を挿入して、
その補助電極を接地するか直流正電圧を印加するので、
ガイドブッシュの中心開口内にも充分なプラズマが均一
に発生する。
【0020】しかも、真空槽内に炭素を含むガスを導入
する前に、ガイドブッシュに直流負電圧または高周波電
力を印加し、炭素を含むガスを導入して初期到達圧力か
らその圧力を徐々に増加させて被膜形成圧力にするの
で、被膜形成圧力よりも低い圧力でプラズマ放電が開始
する。すなわちプラズマ放電開始が被膜形成圧力より空
間インピーダンスの高い状態でなされるので、硬質カー
ボン膜の被膜形成初期に異常放電であるアーク放電が発
生しない。
【0021】したがって、プラズマ放電の最初期の膜質
を左右するときに、ガイドブッシュで異常放電であるア
ーク放電が発生せず、硬質カーボン膜がガイドブッシュ
の内周面に密着性よく形成される。そのため、形成され
た硬質カーボン膜がガイドブッシュから剥離するという
現象は発生しなくなる。
【0022】また、炭素を含むガスとしてメタン又はベ
ンゼンとアルゴンとの混合ガスを使用すると、アルゴン
はメタン又はベンゼンより放電開始電圧(電離電圧)が
低く、しかもプラズマ放電開始圧力が低いという特性を
持つので、ガイドブッシュに印加する直流負電圧または
高周波電力を従来より低くすることができ、プラズマ放
電開始の圧力も従来より低くすることが可能である。そ
れによって、プラズマ放電開始の瞬間のアーク放電の発
生を一層抑制できる。
【0023】さらに、上記第4の工程において、真空槽
内に初期には炭素を含むガスとしてメタン又はベンゼン
とアルゴンとの混合ガスを導入してプラズマを発生さ
せ、そのプラズマが安定した後、該真空槽内に導入する
ガスをメタン又はベンゼンのみにするようにれば、プラ
ズマ放電開始時のアーク放電の発生をアルゴンの作用に
よって効果的に抑制し、プラズマが安定した後は、その
抑制を解除して硬質カーボン膜の成膜速度を速めること
ができる。
【0024】
【発明の実施の形態】以下、図面を用いてこの発明の実
施の形態を説明する。 〔ガイドブッシュを用いる自動旋盤の説明〕先ず、この
発明の対象とするガイドブッシュを用いる自動旋盤の構
造について簡単に説明する。
【0025】図13は、数値制御自動旋盤の主軸近傍の
みを示す断面図である。この自動旋盤は、ガイドブッシ
ュ11を固定して、その内周面11bで被加工物51
(仮想線で示す)を回転自在に保持する状態で使用する
固定型のガイドブッシュ装置37を設けたものである。
主軸台17は、この数値制御自動旋盤の図示しないベッ
ド上を、図で左右方向に摺動可能となっている。
【0026】この主軸台17には、軸受21によって回
転可能な状態で支持された主軸19を設けている。そし
て主軸19の先端部には、コレットチャック13を取り
付けている。このコレットチャック13は、チャックス
リーブ41の中心孔内に配置する。そしてコレットチャ
ック13の先端の外周テーパ面13aと、チャックスリ
ーブ41の内周テーパ面41aとが互いに面接触してい
る。
【0027】さらに中間スリーブ29内のコレットチャ
ック13の後端部に、帯状のバネ材をコイル状にしたス
プリング25を設けている。そして、このスプリング2
5の働きによって、中間スリーブ29内からコレットチ
ャック13を押し出すことができる。コレットチャック
13の先端位置は、主軸19の先端にネジ固定するキャ
ップナット27に接触して位置を規制している。このた
め、コレットチャック13がスプリング25のバネ力に
よって、中間スリーブ29から飛び出すことを防止して
いる。
【0028】中間スリーブ29の後端部には、この中間
スリーブ29を介してチャック開閉機構31を設ける。
そしてチャック開閉爪33を開閉することによって、コ
レットチャック13は開閉し、被加工物51を把持した
り解放したりする。すなわち、チャック開閉機構31の
チャック開閉爪33の先端部が相互に開くように移動す
ると、チャック開閉爪33の中間スリーブ29と接触し
ている部分が、図13で左方向に移動して中間スリーブ
29を左方向に押す。この中間スリーブ29の左方向へ
の移動により、中間スリーブ29の左端に接触している
チャックスリーブ41が左方向に移動する。
【0029】そして、コレットチャック13は、主軸1
9の先端にネジ止めしているキャップナット27によっ
て、主軸19から飛び出すのを防止されている。このた
め、このチャックスリーブ41の左方向への移動によっ
て、コレットチャック13の摺り割りが形成されている
部分の外周テーパ面13aと、チャックスリーブ41の
内周テーパ面41aとが強く押されて、互いにテーパ面
に沿って移動することになる。
【0030】その結果、コレットチャック13の内周面
の直径が小さくなり、被加工物51を把持することがで
きる。コレットチャック13の内周面の直径を大きくし
て被加工物51を解放するときは、チャック開閉爪33
の先端部が相互に閉じるように移動することにより、チ
ャックスリーブ41を左方向に押す力を除く。するとス
プリング25の復元力によって中間スリーブ29とチャ
ックスリーブ41とが、図で右方向に移動する。
【0031】このため、コレットチャック13の外周テ
ーパ面13aと、チャックスリーブ41の内周テーパ面
41aとの押圧力が除かれることになる。それによっ
て、コレットチャック13は自己のもつ弾性力で内周面
の直径が大きくなり、被加工物51を解放することがで
きる。さらに、主軸台17の前方にはコラム35が設け
られており、そこに、ガイドブッシュ装置37をその中
心軸線を主軸中心線と一致させるようにして配置してい
る。
【0032】このガイドブッシュ装置37は、ガイドブ
ッシュ11を固定して、このガイドブッシュ11の内周
面11bで被加工物51を回転可能な状態で保持する固
定型のガイドブッシュ装置37である。コラム35に固
定したホルダ39の中心孔に、ブッシュスリーブ23を
嵌入し、そのブッシュスリーブ23の先端部には内周テ
ーパ面23aを設けている。
【0033】そして、このブッシュスリーブ23の中心
孔に、先端部に外周テーパ面11a及び摺り割り11c
を形成したガイドブッシュ11を嵌入させて配置してい
る。ガイドブッシュ装置37の後端部に、ガイドブッシ
ュ11のネジ部に螺着して設けた調整ナット43を回転
することによって、ガイドブッシュ11の内径と被加工
物51の外形との隙間寸法を調整することができる。
【0034】すなわち、調整ナット43を右回転させる
と、ブッシュスリーブ23に対してガイドブッシュ11
が図で右方向に移動し、コレットチャック13の場合と
同様に、ブッシュスリーブ23の内周テーパ面23aと
ガイドブッシュ11の外周テーパ面11aとが相互に押
圧されて、ガイドブッシュ11の先端部の内径が小さく
なるためである。ガイドブッシュ装置37のさらに前方
には、切削工具(刃物)45を設けている。
【0035】そして、被加工物51を主軸19のコレッ
トチャック13で把持すると共に、ガイドブッシュ装置
37で支持し、しかもこのガイドブッシュ装置37を貫
通して加工領域に突き出した被加工物51を、切削工具
45の前進後退と主軸台17の移動との合成運動によっ
て所定の切削加工を行なう。
【0036】つぎに、被加工物を把持するガイドブッシ
ュを回転する状態で使用する回転型のガイドブッシュ装
置について、図14によって説明する。この図14にお
いて、図13と対応する部分には同一の符号を付してい
る。この回転型のガイドブッシュ装置としては、コレッ
トチャック13とガイドブッシュ11とが同期して回転
するガイドブッシュ装置と、同期しないで回転するガイ
ドブッシュ装置とがある。この図に示すガイドブッシュ
装置37は、コレットチャック13とガイドブッシュ1
1とが同期して回転するものである。
【0037】この回転型のガイドブッシュ装置37は、
主軸19のキャップナット27から突き出した回転駆動
棒47によって、ガイドブッシュ装置37を駆動する。
この回転駆動棒47に代えて、歯車やベルトプーリによ
ってガイドブッシュ装置37を駆動するものもある。こ
の回転型のガイドブッシュ装置37は、コラム35に固
定するホルダ39の中心孔に、軸受21を介して回転可
能な状態にブッシュスリーブ23を嵌入させて配置して
いる。さらに、このブッシュスリーブ23の中心孔にガ
イドブッシュ11を嵌入させて配置している。
【0038】ブッシュスリーブ23とガイドブッシュ1
1とは、図13によって説明したものと同様な構成であ
る。そしてガイドブッシュ装置37の後端部に、ガイド
ブッシュ11のネジ部に螺着して設けた調整ナット43
を回転することによって、ガイドブッシュ11の内径を
小さくして、ガイドブッシュ11の内径と被加工物51
の外形との隙間寸法を調整することができる。ガイドブ
ッシュ装置37が回転型である以外の構成は、図13に
よって説明した自動旋盤の構成と同じであるのでそれら
の説明は省略する。
【0039】〔内周面に硬質カーボン膜を形成したガイ
ドブッシュの説明〕つぎに、この発明によってその内周
面に硬質カーボン膜を形成したガイドブッシュについて
説明する。図11はそのガイドブッシュの一例を示す縦
断面図であり、図12はその外観を示す斜視図である。
【0040】これらの図に示すガイドブッシュ11は、
先端部が開いた自由な状態を示している。このガイドブ
ッシュ11は、長手方向の一端部に外周テーパ面11a
を形成し、他端部にネジ部11fを有する。さらに、こ
のガイドブッシュ11の中心には開口径が異なる貫通し
た中心開口11jを設けている。そして、外周テーパ面
11aを設けた側の内周に、被加工物51を保持する内
周面11bを形成している。そして、この内周面11b
以外の領域には、内周面11bの内径より大きな内径を
もつ段差部11gを形成している。
【0041】また、このガイドブッシュ11は、外周テ
ーパ面11aからバネ部11dにまで、外周テーパ面1
1aを円周方向に3等分するように摺り割り11cを、
120°間隔で3箇所に設けている。そして、前述した
ブッシュスリーブの内周テーパ面にこのガイドブッシュ
11の外周テーパ面11aを押圧することによって、バ
ネ部11dが撓み、内周面11bと第11図に仮想線で
示す被加工物51との隙間寸法を調整することができ
る。
【0042】さらに、このガイドブッシュ11には、バ
ネ部11dとネジ部11fとの間に嵌合部11eを設け
ている。そして、この嵌合部11eを図13及び図14
に示したブッシュスリーブ23の中心孔に嵌合させるこ
とによって、ガイドブッシュ11を主軸の中心線上で、
しかも主軸中心線に平行に配置することができる。
【0043】このガイドブッシュ11の材料としては、
合金工具鋼(SKS)を用い、外形形状と内形形状とを
形成した後、焼き入れ処理と焼き戻し処理とを行なう。
さらに、好ましくはこのガイドブッシュ11に、図11
図に示すように肉厚が2mmから5mmの寸法を有する
超硬部材12をロウ付け手段により固定して、被加工物
51と摺接する内周面11bを形成するとよい。
【0044】この超硬部材としては、例えばタングステ
ン(W)が85%〜90%と、炭素(C)が5%〜7%
と、バインダーとしてコバルト(Co)が3%〜10%
の組成のものを用いる。しかし、このガイドブッシュ1
1は、外周テーパ面11aが閉じた状態で、内周面11
bと被加工物51との間に半径方向で5μm〜10μm
の隙間を設けている。それにより、被加工物51が出入
りして内周面11bと摺接するため、その摩耗が問題と
なる。
【0045】さらに、固定型のガイドブッシュ装置に使
用する場合は、固定されたガイドブッシュ11に保持さ
れ被加工物51が高速で回転して加工されるため、内周
面11bと被加工物51との間で高速摺動し、しかも切
削負荷による内周面11bへの過大な被加工物51の押
圧力によって、焼き付きを発生させる問題がある。その
ため、このガイドブッシュ11の内周面11bに、前述
した硬質カーボン膜(DLC)15を形成している。そ
の硬質カーボン膜15の膜厚は1μmから5μmとす
る。
【0046】この硬質カーボン膜は、前述したようにダ
イアモンドとよく似た性質をもち、機械的強度が高く、
摩擦係数が小さく潤滑性があり、腐食性にも優れてい
る。そのため、内周面11bに硬質カーボン膜15を設
けたこのガイドブッシュ11は、耐摩耗性が飛躍的に向
上し、長期間の使用や重切削加工においても、被加工物
51と接触する内周面11bの摩耗を抑えることができ
る。また、被加工物51へのキズの発生を抑えることも
可能になり、ガイドブッシュ11と被加工物51との焼
き付きの発生を抑制することもできる。
【0047】ガイドブッシュ11の基材(SKS)の内
周面、あるいは超硬部材12の内周面にこの硬質カーボ
ン膜を直接形成することもできるが、内周面11bとの
密着性を高めるために薄い中間層(図示はしていない)
を介して、硬質カーボン膜を形成するとよい。この中間
層としては、周期律表第IVb族のシリコン(Si)や
ゲルマニウム(Ge)、あるいはシリコンやゲルマニウ
ムの化合物でもよい。あるいは、シリコンカーバイト
(SiC)やチタンカーバイト(TiC)のような炭素
を含む化合物でもよい。
【0048】また、この中間層として、チタン(T
i),タングステン(W),モリブデン(Mo),ある
いはタンタル(Ta)とシリコン(Si)との化合物も
適用できる。さらに、この中間層を、チタン(Ti)又
はクロム(Cr)による下層と、シリコン(Si)又は
ゲルマニウム(Ge)による上層との2層膜に形成して
もよい。
【0049】このようにすると、中間層の下層のチタン
やクロムはガイドブッシュ11の基材あるいは超硬部材
12との密着性を保つ役割を果たし、上層のシリコンや
ゲルマニウムは硬質カーボン膜15と共有結合して、こ
の硬質カーボン膜15と強く結合する役割を果たす。こ
れらの中間層の形成膜厚は0.5μm程度とする。ただ
し、2層の場合は上層と下層共に0.5μm程度とす
る。
【0050】〔硬質カーボン膜の形成方法〕この発明に
よるこのガイドブッシュの内周面への硬質カーボン膜形
成方法の各実施形態について説明する。
【0051】(第1の実施形態)まず、この発明による
ガイドブッシュの内周面への硬質カーボン膜形成する方
法の第1の実施形態を、図1および図8を参照して説明
する。図1はこの第1の実施形態に使用する装置の模式
的断面図である。また、図8はこの第1の実施形態にお
ける炭素を含むガスを導入した後の真空槽内の圧力と時
間との関係を示す線図である。
【0052】図1において、61はガス導入口63と排
気口65とを有する真空槽で、その中の中央上部に、ア
ノード79とフィラメント81が配設されている。この
真空槽61内の中央下部に、前述したガイドブッシュ1
1を絶縁支持具80に下部を固定して垂直に配置する。
【0053】そして、このガイドブッシュ11の中心開
口11j内には、真空槽61を介して接地される細いロ
ッド状の補助電極71を挿入するように配設する。この
とき補助電極71がガイドブッシュ11の中心開口11
jの中央部(略軸線上)に位置するようにする。なお、
この補助電極71はステンレス等の金属材料で作られ
る。そして、この補助電極71は、その先端がガイドブ
ッシュ11の開口端面(図1では上端面)から突出しな
いように、1mm程度内側に配置されるようにするのが
望ましい。
【0054】そして、真空槽61内を真空度が3×10
-5torr以下の初期到達圧力になるように、排気口65か
ら真空排気する。その後、このガイドブッシュ11に直
流電源73から負の直流電圧を印加し、アノード79に
はアノード電源75から正の直流電圧を印加し、さらに
フィラメント81にはフィラメント電源77から交流電
圧を印加する。
【0055】このとき、直流電源73からガイドブッシ
ュ11に印加する直流電圧はマイナス3kV、アノード
電源75からアノード79に印加する直流電圧はプラス
50V程度とする。また、フィラメント電源77からフ
ィラメント81に印加する交流電圧は、30Aの電流が
流れるように10V程度の交流電圧を印加する。その
後、ガス導入口63から炭素を含むガスとしてベンゼン
(C66)を真空槽61内に導入して、真空槽61内の
圧力を5×10~3torrの被膜形成圧力になるように制御
する。
【0056】それによって、真空槽61内の圧力は時間
とともに図8に示すように変化し、5×10~3torrの被
膜形成圧力より低い圧力の1×10~3torrで、真空槽6
1内のガイドブッシュ11の周囲領域にプラズマ放電が
開始した。そして、ガイドブッシュ11の内周面11b
と補助電極71との間に形成されるプラズマの作用によ
って、硬質カーボン膜をガイドブッシュ11の内周面1
1bに形成し始める。
【0057】そして、プラズマCVDプロセスによって
ガイドブッシュ11の内周面11bに硬質カーボン膜を
形成しながら被膜形成圧力に達し、その後はその被膜形
成圧力を維持する。このように、炭素を含むガスを真空
槽61内に導入する前にガイドブッシュ11に直流負電
圧を印加することにより、被膜形成圧力よりも低い圧力
でプラズマ放電が開始する。
【0058】すなわち、プラズマ放電が被膜形成圧力よ
り空間インピーダンスの高い状態で開始されるので、異
常放電であるアーク放電は発生しない。したがって、硬
質カーボン膜の被膜形成初期に異常放電であるアーク放
電が発生しないので、硬質カーボン膜の密着性が低下す
ることはない。そのため、この発明による硬質カーボン
膜の形成方法によれば、ガイドブッシュ11の内周面1
1bに形成された硬質カーボン膜が、ガイドブッシュか
ら剥離するようなことは発生しない。
【0059】また、この第1の実施形態においては、ガ
イドブッシュ11の中心開口11j内の中央部に接地し
た補助電極71を配置して硬質カーボン膜15を形成す
る。そして、ガイドブッシュ11には負の直流電圧を印
加する。その結果、同電位の電極同士が対向しているガ
イドブッシュ11の中心開口11j内に、接地電位の補
助電極71を設けることになり、同電位同士が対向する
ことがなくなる。このような電位状態は、プラズマCV
Dプロセスにとって最も望ましい状態であり、異常放電
であるホロー放電は発生しない。そのため、密着性の良
好な硬質カーボン膜をガイドブッシュ11の内周面11
b上に形成することができる。
【0060】さらに、ガイドブッシュ11の内周面の長
手方向で電位特性が均一になるので、内周面11bに形
成する硬質カーボン膜の膜厚分布が均一になる。しか
も、成膜速度が速くなるため、開口端面側からと開口奥
側まで均一な膜厚の硬質カーボン膜を、短時間の処理で
形成することができる。
【0061】この補助電極71の径は、ガイドブッシュ
11の開口径より小さければよいが、好ましくは硬質カ
ーボン膜を形成する内周面11bに対して5mm程度の
隙間、すなわちプラズマ形成領域を設けるようにするの
が望ましい。この補助電極71の径とガイドブッシュ1
1の開口径との比を1/10以下にするのが望ましく、
補助電極71を細くする場合は線状にすることもでき
る。そして、この補助電極71はステンレスで形成する
と説明したが、タングステン(W)やタンタル(Ta)
のような高融点の金属材料で作成してもよい。
【0062】(第2の実施形態)つぎに、この発明によ
るガイドブッシュの内周面への硬質カーボン膜形成方法
の第2の実施形態を、図2と図9を参照して説明する。
図2はこの第2の実施形態に使用する装置の断面図であ
るが、図1と対応する部分には同一の符号を付し、それ
らの説明は省略する。また、図9はこの第2の実施形態
における炭素を含むガスを導入した後の真空槽内の圧力
と時間との関係を示す線図である。
【0063】この実施形態に使用する真空槽61は、そ
の内部にアノードおよびフィラメントを設けていない。
この第2の実施形態においても、図2に示すように、前
述した第1の実施形態の場合と同様に真空槽61内にガ
イドブッシュ11と補助電極71を配置する。そして、
真空槽61内を真空度が3×10~5torr以下の初期到達
圧力になるように、図示しない排気手段によって排気口
65から真空排気する。
【0064】その後、真空槽61内のガイドブッシュ1
1に、発振周波数が13.56MHzの高周波電源69
からマッチング回路67を介して400Wの高周波電力
を印加する。しかる後、ガス導入口63から炭素を含む
ガスとしてメタンガス(CH4)を真空槽61内に導入
して、真空度を0.5torrの被膜形成圧力になるように
調整する。
【0065】それによって、真空槽61内の圧力は時間
とともに第9図に示すように変化し、0.5torrの被膜
形成圧力より低い圧力の0.2torrにて、真空槽61内
のガイドブッシュ11の周囲領域にプラズマ放電が開始
した。そして、ガイドブッシュ11の内周面11bと補
助電極71との間に形成されるプラズマの作用によっ
て、硬質カーボン膜をガイドブッシュ11の内周面11
b上に形成し始める。
【0066】そして、プラズマCVDプロセスによって
ガイドブッシュ11の内周面11bに硬質カーボン膜を
形成しながら0.5torrの被膜形成圧力に達し、その後
はその被膜形成圧力を維持する。このように、この第2
の実施形態では、炭素を含むガスを真空槽61内部に導
入する前に、ガイドブッシュ11に高周波電力を印加す
るようにしている。この第2の実施形態によっても、前
述した第1の実施形態と同様な作用・効果が得られ、ガ
イドブッシュ11の内周面11bに良質な硬質カーボン
膜を密着成よく均一な膜厚で速く形成することができ
る。
【0067】(第3の実施形態)つぎに、この発明によ
るガイドブッシュの内周面への硬質カーボン膜形成方法
の第3の実施形態を、図3と図9を参照して説明する。
図3はこの第3の実施形態に使用する装置の断面図であ
るが、図1と対応する部分には同一の符号を付し、それ
らの説明は省略する。この実施形態に使用する真空槽6
1も、その内部にアノードおよびフィラメントを設けて
いない。
【0068】この第3の実施形態においても第3図に示
すように、前述した第1の実施形態の場合と同様に真空
槽61内にガイドブッシュ11と補助電極71を配置す
る。そして、真空槽61内を真空度が3×10~5torr以
下の初期到達圧力になるように、図示しない排気手段に
よって排気口65から真空排気する。その後、このガイ
ドブッシュ11に直流電源73′からマイナス600V
の直流電圧を印加する。
【0069】しかる後、ガス導入口63から炭素を含む
ガスとしてメタンガス(CH4)を真空槽61内に導入
して、真空度を0.5torr の被膜形成圧力になるよう
に調整する。それによって、真空槽61内の圧力は時間
とともに図9に示すように変化し、0.5torrの被膜形
成圧力より低い圧力の0.2torrで、真空槽61内のガ
イドブッシュ11の周囲領域にプラズマ放電が開始し
た。
【0070】そして、ガイドブッシュ11の内周面11
bと補助電極71との間に形成されるプラズマの作用に
よって、硬質カーボン膜15をガイドブッシュ11の内
周面11bに形成し始める。その後、プラズマCVDプ
ロセスによってガイドブッシュ11の内周面11bに硬
質カーボン膜を形成しながら、真空槽61内が0.5to
rrの被膜形成圧力に達し、その後はその被膜形成圧力を
維持する。
【0071】このように、この第3の実施形態では、炭
素を含むガスを真空槽61内部に導入する前えに、ガイ
ドブッシュ11に直流負電圧を印加するようにしてい
る。この第3の実施形態によっても、前述した第1の実
施形態と同様な作用・効果が得られ、ガイドブッシュ1
1の内周面11bに良質な硬質カーボン膜を密着性よく
均一な膜厚で速く形成することができる。
【0072】このように第3の実施形態では、炭素を含
むガス(メタンガス)を真空槽61内に導入する前に、
ガイドブッシュ11に直流負電圧を印加するようにして
いる。このようにしても、前述の第1の実施形態と同様
な作用・効果が得られ、ガイドブッシュ11の内周面1
1bに良質な硬質カーボン膜を密着性よく均一な膜厚で
速く形成することができる。
【0073】(第4の実施形態)つぎに、この発明によ
るガイドブッシュへの内周面への硬質カーボン膜形成方
法の第4の実施形態を、図4,図5および図10を参照
して説明する。図4はこの第4の実施形態に使用する装
置の模式的断面図であり、図1と異なる点は、補助電極
71をガイドブッシュ11の中心開口11j内に嵌入さ
せた碍子85によって、ガイドブッシュ11に対しても
真空槽61に対しても絶縁して支持し、その補助電極7
1に補助電極電源83から直流正電圧(例えばプラス2
0V)を印加するようにした点である。
【0074】また、この第4の実施形態では、ガイドブ
ッシュ11の内周面11bの径と略同じ内径をもつ図5
に示すようなリング状のダミー部材53を使用する。こ
のダミー部材53も、補助電極71と同様にステンレス
によって形成する。このダミー部材53の外径寸法は、
ガイドブッシュ11の開口端面の大きさと略同じ大きさ
とする。
【0075】そして、図4に示すように、ガス導入口6
3と排気口65とを有する真空槽61内に、硬質カーボ
ン膜を形成するガイドブッシュ11を配置し、その中心
開口11j内に補助電極71を碍子85によって絶縁支
持する。さらに、そのガイドブッシュ11の外周テーパ
面側の開口端面(図では上端面)上にダミー部材53を
載置する。このとき、ガイドブッシュ11の内周面とダ
ミー部材53の内周面とが一致するようにする。
【0076】その後の各工程は、図1によって説明した
第1の実施形態の場合と同じであり、その説明は省略す
る。この実施形態において、補助電極71に印加する直
流正電圧と、ガイドブッシュ11の内周面11bに形成
される単位時間当たりの硬質カーボン膜の膜厚との関係
を図10の線図に示す。
【0077】この図10では、補助電極71に印加する
直流の正電圧を0Vから30Vまで変化させ、さらにガ
イドブッシュの内周面11bと補助電極71との間の隙
間寸法が3mmと5mmのときに形成される硬質カーボ
ン膜の膜厚を示す。なお、曲線88はガイドブッシュ1
1の開口内面と補助電極71との間の隙間が3mmのと
きの特性を示し、曲線91はガイドブッシュ11の開口
内面と補助電極71との間の隙間が5mmのときの特性
を示す。
【0078】この曲線88,91に示されるように、補
助電極71に印加する直流正電圧を増加させると、硬質
カーボン膜の膜形成速度は向上する。また、ガイドブッ
シュ11の開口内面と補助電極71との間の隙間寸法が
大きいほど、硬質カーボン膜の膜形成速度は向上する。
そして、ガイドブッシュ11の開口内面と補助電極71
との間の隙間寸法が3mmのとき(曲線88)は、補助
電極71に印加する電位が0Vの接地電圧では、ガイド
ブッシュ11の中心開口11j内にプラズマが発生せ
ず、硬質カーボン膜は形成できない。
【0079】しかし、この場合でも、補助電極71に印
加する直流正電圧を高くしていくと、ガイドブッシュ1
1の中心開口11j内の補助電極71周囲にプラズマが
発生し、硬質カーボン膜を形成することができる。した
がって、中心開口11jの径が小さいガイドブッシュの
内周面にも、補助電極71に直流正電圧を印加して被膜
形成処理を実施することにより、硬質カーボン膜を形成
することが可能になる。
【0080】また、この第4実施形態において使用する
ダミー部材53は次のような作用をなす。すなわち、こ
のようなガイドブッシュ11への硬質カーボン膜の形成
方法においては、ガイドブッシュ11の内面と外周部と
にプラズマが発生する。そして、ガイドブッシュ11の
端面は電荷が集中しやすく、内面に比べて開口端面領域
は電位が高い状態、いわゆるエッジ効果が発生する。こ
こでガイドブッシュ11の端面近傍のプラズマ強度は他
の領域より大きく、しかも不安定でもある。
【0081】さらに、ガイドブッシュ11の端部領域
は、内面のプラズマと外周部のプラズマとの双方のプラ
ズマの影響を受けることになる。そして、このような状
態で硬質カーボン膜を形成すると、ガイドブッシュ11
の開口端面から数mm奥側の領域と他の領域とでは、硬
質カーボン膜の密着性が若干異なり、さらに膜質も若干
異なる。
【0082】そこで、図4に示すようにガイドブッシュ
11の開口端面にダミー部材53を配置して硬質カーボ
ン膜を形成すれば、この膜質や密着性が異なる領域はガ
イドブッシュ11の内面に形成されず、ダミー部材53
の開口内面に形成されることになる。この実施形態によ
るその他の作用・効果は前述の第1の実施形態の場合と
同じである。
【0083】(第5,第6の実施形態)つぎに、この発
明によるガイドブッシュへの内周面への硬質カーボン膜
形成方法の第5の実施形態を図6によって、第6の実施
形態を図7によって説明する。図6および図7は、それ
ぞれ図2および図3と同様な装置の模式的断面図であ
り、それらと異なる点は、図4に示した第4の実施形態
の場合と同様に、補助電極71をガイドブッシュ11の
中心開口11j内に嵌入させた碍子85によって、ガイ
ドブッシュ11に対しても真空槽61に対しても絶縁し
て支持し、その補助電極71に補助電極電源83から直
流正電圧(例えばプラス20V)を印加するようにした
点と、ダミー部材53を使用する点だけである。
【0084】そして、図6に示す第5の実施形態では、
ガイドブッシュ11に、発振周波数が13.56MHz
の高周波電源69からマッチング回路67を介して40
0Wの高周波電力を印加して、真空槽61内にプラズマ
を発生させる。また、図7に示す第6の実施形態では、
ガイドブッシュ11に直流電源73′からマイナス60
0Vの直流電圧を印加してプラズマを発生させる。
【0085】その他の各工程は、前述の第2,第3の実
施形態の各工程と同じであり、その作用効果も、それら
の作用効果に第4の実施形態における補助電極に直流正
電圧を印加したこと、およびダミー部材を使用したこと
による効果を加えたものである。なお、このダミー部材
53は、補助電極71を接地電位にする前述の第1乃至
第3の実施形態にも適用可能であり、その場合のダミー
部材53の作用効果は、上述の第4乃至第6の実施形態
の場合と同じである。
【0086】(その他の実施形態)つぎに、炭素を含む
ガスとして、メタン又はベンゼンとアルゴンとの混合ガ
スを使用するこの発明の他の実施形態について、前述の
各実施例と相違する点だけを説明する。まず、第1の実
施形態と同様に図1に示した装置を使用する実施形態を
説明する。
【0087】図1に示した真空槽61内にガイドブッシ
ュ11と補助電極71を配置し、真空槽61内を真空度
が3×10~5torr以下の初期到達圧力になるように、真
空排気する。その後、ガイドブッシュ11には直流電源
73からマイナス1.5kVの直流電圧を印加し、アノ
ード79にはアノード電源75からプラス50Vの直流
電圧を印加し、フィラメント81にはフィラメント電源
77から30Aの電流が流れるように10Vの交流電圧
を印加する。
【0088】その後、ガス導入口63から炭素を含むガ
スとしてベンゼン(C66)とアルゴンの混合ガスを真
空槽61内に導入して、真空槽61内の圧力を8×10
~4torrの被膜形成圧力になるように制御する。なお、ベ
ンゼンとアルゴンとの流量比は50%とする。すると、
真空槽61内のガイドブッシュ11の周囲領域に、5×
10~3torrの被膜形成圧力より低い1×10~3torrの圧
力にてプラズマ放電が開始した。
【0089】そして、ガイドブッシュ11の内周面11
bと補助電極71との間に形成されるプラズマの作用に
よって、硬質カーボン膜15をガイドブッシュ11の内
周面11b上に形成し始める。このように、この実施形
態では、真空槽61内部に導入するガスとして、炭素を
含むガスとアルゴンガスとの混合ガスを導入する。アル
ゴンガスは、炭素を含むガスであるベンゼンより放電開
始電圧(電離電圧)が低く、さらにプラズマ放電開始圧
力も低いという特性をもつ。
【0090】そのため、ガイドブッシュ11に印加する
直流負電圧を、従来より低くすることができる。また、
プラズマ放電開始圧力も従来より低くなる。このことに
よって、プラズマ放電開始の瞬間のアーク放電の発生を
一層抑制することができる。したがって、硬質カーボン
膜の密着性を一層高めることができる。さらに、硬質カ
ーボン膜の被膜形成に寄与しないアルゴンイオンが、硬
質カーボン膜形成時に膜表面に衝突して、弱い結合の成
分を叩き出すボンバード効果により、硬質カーボン膜の
膜質が向上する効果もある。
【0091】次に、第2の実施形態と同様に図2に示し
た装置を使用する実施例について説明する。図2に示す
真空槽61内に、第1の実施形態と同様にガイドブッシ
ュ11と補助電極71を配置し、その真空槽61内を真
空度が3×10~5torr以下の初期到達圧力になるように
真空排気する。
【0092】その後、このガイドブッシュ11に、発振
周波数が13.56MHzの高周波電源69からマッチ
ング回路67を介して250Wの高周波電力を印加す
る。しかる後、ガス導入口63から炭素を含むガスとし
てメタン(CH4)とアルゴンの混合ガスを真空槽61
内に導入して、真空度を0.5torrの被膜形成圧力にな
るように調整する。この場合も、メタンとアルゴンとの
流量比は50%とする。
【0093】すると、真空槽61内部のガイドブッシュ
11の周囲領域に、0.5torrの被膜形成圧力より低い
圧力の0.1torrにてプラズマ放電が開始した。そし
て、ガイドブッシュ11の内周面11bと補助電極71
との間に形成されるプラズマの作用によって硬質カーボ
ン膜15をガイドブッシュ11の内周面11bに形成し
始める。この実施形態によっても、前述の実施形態の場
合と同様に、プラズマ放電開始の瞬間のアーク放電の発
生を一層抑制することができ、それによって、硬質カー
ボン膜の密着性を一層高めることができる。
【0094】次に、第3の実施形態と同様に図3に示し
た装置を使用する実施形態について説明する。図3に示
す真空槽61内に、第3の実施形態と同様にガイドブッ
シュ11と補助電極71を配置し、その真空槽61内を
真空度が3×10~5torr以下の初期到達圧力になるよう
に真空排気する。
【0095】その後、このガイドブッシュ11に直流電
源73′からマイナス450Vの直流電圧を印加する。
しかる後、ガス導入口63から炭素を含むガスとしてメ
タン(CH4)とアルゴンの混合ガスを真空槽61内に
導入して、真空度を0.5torrの被膜形成圧力になるよ
うに調整する。この場合も、メタンとアルゴンとの流量
比は50%とする。
【0096】すると、真空槽61内のガイドブッシュ1
1の周囲領域に、0.5torrの被膜形成圧力より低い圧
力の0.1torrにてプラズマ放電が開始した。そして、
ガイドブッシュ11の内周面11bと補助電極71との
間に形成されるプラズマの作用によって硬質カーボン膜
15をガイドブッシュ11に形成し始める。
【0097】この実施形態によっても、前述の実施形態
の場合と同様に、プラズマ放電開始の瞬間のアーク放電
の発生を一層抑制することができ、それによって、硬質
カーボン膜の密着性を一層高めることができる。これら
のように、炭素を含むガスとしてベンゼン又はメタンと
アルゴンとの混合ガスを使用する硬質カーボン膜の形成
方法を、前述の第4乃至第6の実施形態と同様に、図
4,図6,および図7に示した装置を使用して実施する
こともできる。
【0098】つぎに、炭素を含むガスとして、初期には
メタン又はベンゼンとアルゴンとの混合ガスを真空槽内
に導入してプラズマを発生させ、プラズマが安定した後
は、メタン又はベンゼンのみを真空槽内に導入して、硬
質カーボン膜の形成速度を速めるようにした実施形態に
ついて前述の各実施例と相違する点だけを説明する。
【0099】まず、第4の実施形態と同様に図4に示す
装置を使用する実施形態について説明する。図4に示す
真空槽61内に第4の実施形態と同様にガイドブッシュ
11と補助電極71とダミー部材53を配置し、その真
空槽61内を真空度が3×10~5torr以下の初期到達圧
力になるように真空排気する。
【0100】その後、ガイドブッシュ11には直流電源
73からマイナス1.5kVの直流電圧を印加し、アノ
ード79にはアノード電源75からプラス50Vの直流
電圧を印加し、さらにフィラメント81にはフィラメン
ト電源77から30Aの電流が流れるように10Vの交
流電圧を印加する。また、補助電極71には補助電極電
源83からプラス20Vの直流電圧を印加する。その
後、ガス導入口63から炭素を含むガスとしてベンゼン
(C66)とアルゴンとの混合ガスを真空槽61内に導
入して、真空槽61内の圧力を5×10~3torrの被膜形
成圧力になるように制御する。なお、ベンゼンとアルゴ
ンとの流量比は50%とする。
【0101】すると、真空槽61内のガイドブッシュ1
1の周囲領域に、5×10~3torrの被膜形成圧力より低
い圧力の8×10~4torrにてプラズマ放電が開始した。
その後、プラズマが安定してから2分が経過した時点
で、真空槽61に導入する炭素を含むガスをベンゼンの
みとする。それによって、ガイドブッシュ11の内周面
11bと補助電極71との間に形成されるプラズマの作
用によって硬質カーボン膜15がガイドブッシュ11の
内周面11bに形成される。
【0102】この実施形態によれば、前述の各実施形態
の場合と同様に、プラズマ放電開始の瞬間のアーク放電
の発生を一層抑制することができ、プラズマが安定した
後は、ベンゼンのみを真空槽内に導入するので、硬質カ
ーボン膜の形成速度を速めることができる。また、補助
電極71に直流正電圧を印加すること、およびダミー部
材53を使用することによる作用効果は、前述の第4の
実施形態の場合と同じである。
【0103】次に、第5の実施形態と同様に図6に示す
装置を使用する実施形態について説明する。図6に示す
真空槽61内に、第5の実施形態と同様にガイドブッシ
ュ11と補助電極71とダミー部材53を配置し、その
真空槽61内を真空度が3×10~5torr以下の初期到達
圧力になるように真空排気する。
【0104】その後、このガイドブッシュ11に、発振
周波数が13.56MHzの高周波電源69からマッチ
ング回路67を介して250Wの高周波電力を印加す
る。また、補助電極71には補助電極電源83からプラ
ス20Vの直流電圧を印加する。
【0105】しかる後、ガス導入口63から炭素を含む
ガスとして、メタン(CH4)とアルゴンの混合ガスを
真空槽61内に導入して、真空度を0.5torrの被膜形
成圧力になるように調整する。なおメタンとアルゴンと
の流量比は50%とする。すると、真空槽61内部のガ
イドブッシュ11の周囲領域に、0.5torrの被膜形成
圧力より低い圧力の0.2torrにてプラズマ放電が開始
した。その後、プラズマが安定してから2分経過した時
点で、真空槽61に導入する炭素を含むガスをメタンの
みとする。
【0106】そして、ガイドブッシュ11の内周面11
bと補助電極71との間に形成されるプラズマの作用に
よって、硬質カーボン膜15がガイドブッシュ11の内
周面11bに形成される。この実施形態によっても、上
述した実施形態の場合と同等の作用効果が得られる。
【0107】次に、第6の実施形態と同様に図7に示し
た装置を使用する実施形態を説明する。図7に示す真空
槽61内に、第6の実施形態と同様にガイドブッシュ1
1と補助電極71とダミー部材53を配置し、その真空
槽61内を真空度が3×10~5torr以下の初期到達圧力
になるように真空排気する。
【0108】その後、このガイドブッシュ11に直流電
源73′からマイナス450Vの直流電圧を印加する。
また、補助電極71には補助電極電源83からプラス2
0Vの直流電圧を印加する。しかる後、ガス導入口63
から炭素を含むガスとしてメタン(CH4)とアルゴン
の混合ガスを真空槽61内に導入して、真空度を0.5
torrの被膜形成圧力になるように調整する。この場合
も、メタンとアルゴンとの流量比は50%とする。
【0109】すると、真空槽61内のガイドブッシュ1
1の周囲領域に、0.5torrの被膜形成圧力より低い圧
力の0.1torrにてプラズマ放電が開始した。その後、
プラズマが安定してから2分経過した時点で、真空槽6
1に導入する炭素を含むガスをメタンのみとする。 そ
して、ガイドブッシュ11の内周面11bと補助電極7
1との間に形成されるプラズマの作用によって、硬質カ
ーボン膜15がガイドブッシュ11の内周面に形成され
る。この実施形態によっても、上述した実施形態の場合
と同等の作用効果が得られる。
【0110】なお、これらの実施形態と同様に、炭素を
含むガスとしてベンゼン又はメタンとアルゴンとの混合
ガスを真空槽内に導入してプラズマを発生させ、そのプ
ラズマが安定した後はベンゼン又はメタンのみを導入す
る硬質カーボン膜を形成する方法を、第1乃至第3実施
例で使用した図1乃至図3に示す装置を使用して実施す
ることもできる。
【0111】以上説明したこの発明による硬質カーボン
膜の形成方法の各実施形態においては、炭素を含むガス
としてメタンガスやベンゼンガスを用いる例を説明した
が、メタン以外にエチレンなどの炭素を含むガス、ある
いはヘキサンなどの炭素を含む液体の蒸発蒸気も使用す
ることができる。また、上述の各実施形態によれば、ガ
イドブッシュ11の外周面と内周面の両方に硬質カーボ
ン膜が形成されるが、内周面11bにのみ硬質カーボン
膜を形成するようにすることもできる。
【0112】その場合は、ガイドブッシュ11の外周部
に被覆部材を配置すればよいが、簡易的にはこの被覆部
材としてアルミニウム箔をガイドブッシュ11の外周部
に巻き付けるようにしてもよい。
【0113】
【発明の効果】以上説明してきたように、この発明によ
るガイドブッシュの内周面への硬質カーボン膜形成方法
によれば、プラズマ放電の開始時に異常放電であるアー
ク放電は発生することがなくなり、硬質カーボン膜の密
着性を高めることができる。また、ガイドブッシュの中
心開口内に補助電極を挿入してプラズマCVDプロセス
を実行するので、異常放電であるホロー放電が発生する
ことがなくなる。それによっても、密着性の良好な硬質
カーボン膜をガイドブッシュの内周面に形成することが
できる。
【0114】さらに、ガイドブッシュの内周面の全域に
おいて硬質カーボン膜を均一な膜厚で形成することがで
きる。したがって、この発明の方法で内周面に硬質カー
ボン膜を形成したガイドブッシュを自動旋盤に装着して
使用すれば、切削量が大きく加工速度が速い重切削加工
を行なっても、被加工物と接触する内周面の摩耗を抑え
ることができ、被加工物へのキズの発生やガイドブッシ
ュと被加工物との焼き付きの発生も大幅に抑制すること
ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明によるガイドブッシュの内周面への硬
質カーボン膜形成方法の第1の実施形態に使用する装置
の模式的断面図である。
【図2】同じく第2の実施形態に使用する装置の模式的
断面図である。
【図3】同じく第3の実施形態に使用する装置の模式的
断面図である。
【図4】同じく第4の実施形態に使用する装置の模式的
断面図である。
【図5】図4に示した実施形態で使用するダミー部材の
模式的断面図である。
【図6】同じく第5の実施形態に使用する装置の模式的
断面図である。
【図7】同じく第6の実施形態に使用する装置の模式的
断面図である。
【図8】この発明の第1の実施形態等における真空槽内
の圧力と時間との関係を示す線図である。
【図9】この発明の第2の実施形態等における真空槽内
の圧力と時間との関係を示す線図である。
【図10】この発明の第4乃至第6の実施形態による補
助電極の電圧と1時間あたりの硬質カーボン膜の形成膜
厚との関係を示す線図である。
【図11】この発明によって内周面に硬質カーボン膜を
形成したガイドブッシュの縦断面図である。
【図12】同じくその斜視図である。
【図13】ガイドブッシュを用いる固定型のガイドブッ
シュ装置を設けた自動旋盤の主軸近傍のみを示す断面図
である。
【図14】ガイドブッシュを用いる回転型のガイドブッ
シュ装置を設けた自動旋盤の主軸近傍のみを示す断面図
である。
【符号の説明】
11:ガイドブッシュ 11a:外周テーパ面 11b:内周面 11c:すり割 11d:バネ部 11e:嵌合部 11f:ネジ部 11g:段差部 11j:中心開口 12:超硬部材 15:硬質カーボン膜 16:中間層 51:被加工物 53:ダミー部材 61:真空槽 63:ガス導入孔 65:排気孔 67:マッチング回路 69:高周波電源 71:補助電極 73,73′:直流電源 75:アノード電源 78:フィラメント電源 79:アノード 80:絶縁支持具 81:フィラメント 85:碍子
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 戸井田 孝志 埼玉県所沢市大字下富字武野840番地 シチズン時計株式会社所沢事業所内 (72)発明者 関根 敏一 東京都田無市本町6丁目1番12号 シチ ズン時計株式会社田無製造所内 (56)参考文献 特開 平7−88709(JP,A) 特開 昭62−182278(JP,A) 特開 平8−225944(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C23C 16/00 - 16/56 B23B 13/12 INSPEC(DIALOG)

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 自動旋盤用のガイドブッシュを、排気口
    およびガス導入口を有し、内部にアノードとフィラメン
    トを設けた真空槽内に配置し、そのガイドブッシュの被
    加工物と摺接する内周面を形成する中心開口内に、接地
    されるか又は直流正電圧が印加される補助電極を挿入す
    る第1の工程と、 前記真空槽内を所定の真空度以下の初期到達圧力に排気
    する第2工程と、 その後、前記ガイドブッシュに直流電圧を印加すると共
    に、前記アノードに直流電圧を印加し、前記フィラメン
    トに交流電圧を印加する第3の工程と、 その後、前記ガス導入口から前記真空槽内に炭素を含む
    ガスを導入して該真空槽内にプラズマを発生させ、プラ
    ズマCVDプロセスにより前記ガイドブッシュの内周面
    に硬質カーボン膜を形成しながら、該真空槽内の圧力が
    前記初期到達圧力より高い被膜形成圧力になるように制
    御する第4の工程とを有することを特徴とするガイドブ
    ッシュの内周面への硬質カーボン膜形成方法。
  2. 【請求項2】 自動旋盤用のガイドブッシュを、排気口
    およびガス導入口を有する真空槽内に配置し、そのガイ
    ドブッシュの被加工物と摺接する内周面を形成する中心
    開口内に、接地されるか又は直流正電圧が印加される補
    助電極を挿入する第1の工程と、 前記真空槽内を所定の真空度以下の初期到達圧力に排気
    する第2工程と、 その後、前記ガイドブッシュに高周波電力を印加する第
    3の工程と、 その後、前記ガス導入口から前記真空槽内に炭素を含む
    ガスを導入して該真空槽内にプラズマを発生させ、プラ
    ズマCVDプロセスにより前記ガイドブッシュの内周面
    に硬質カーボン膜を形成しながら、該真空槽内の圧力が
    前記初期到達圧力より高い被膜形成圧力になるように制
    御する第4の工程とを有することを特徴とするガイドブ
    ッシュの内周面への硬質カーボン膜形成方法。
  3. 【請求項3】 自動旋盤用のガイドブッシュを、排気口
    およびガス導入口を有する真空槽内に配置し、そのガイ
    ドブッシュの被加工物と摺接する内周面を形成する中心
    開口内に、接地されるか又は直流正電圧が印加される補
    助電極を挿入する第1の工程と、 前記真空槽内を所定の真空度以下の初期到達圧力に排気
    する第2工程と、 その後、前記ガイドブッシュに直流電圧を印加する第3
    の工程と、 その後、前記ガス導入口から前記真空槽内に炭素を含む
    ガスを導入して該真空槽内にプラズマを発生させ、プラ
    ズマCVDプロセスにより前記ガイドブッシュの内周面
    に硬質カーボン膜を形成しながら、該真空槽内の圧力が
    前記初期到達圧力より高い被膜形成圧力になるように制
    御する第4の工程とを有することを特徴とするガイドブ
    ッシュの内周面への硬質カーボン膜形成方法。
  4. 【請求項4】 前記第4の工程において、前記真空槽内
    に導入する炭素を含むガスが、メタン又はベンゼンであ
    る請求項1乃至3のいずれか一項に記載のガイドブッシ
    ュの内周面への硬質カーボン膜形成方法。
  5. 【請求項5】 前記第4の工程において、前記真空槽内
    に導入する炭素を含むガスが、メタン又はベンゼンとア
    ルゴンとの混合ガスである請求項1乃至3のいずれか一
    項に記載のガイドブッシュの内周面への硬質カーボン膜
    形成方法。
  6. 【請求項6】 前記第4の工程において、前記真空槽内
    に初期には炭素を含むガスとしてメタン又はベンゼンと
    アルゴンとの混合ガスを導入してプラズマを発生させ、
    そのプラズマが安定した後、該真空槽内に導入するガス
    をメタン又はベンゼンのみにする請求項1乃至3のいず
    れか一項に記載のガイドブッシュの内周面への硬質カー
    ボン膜形成方法。
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