JPH10110270A - ガイドブッシュの内周面に硬質カーボン膜を形成する方法 - Google Patents

ガイドブッシュの内周面に硬質カーボン膜を形成する方法

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JPH10110270A
JPH10110270A JP22054797A JP22054797A JPH10110270A JP H10110270 A JPH10110270 A JP H10110270A JP 22054797 A JP22054797 A JP 22054797A JP 22054797 A JP22054797 A JP 22054797A JP H10110270 A JPH10110270 A JP H10110270A
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guide bush
inner peripheral
peripheral surface
carbon film
hard carbon
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JP22054797A
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Ryuta Koike
▲龍▼太 小池
Yukio Miya
宮  行男
Osamu Sugiyama
杉山  修
Takashi Toida
孝志 戸井田
Toshiichi Sekine
敏一 関根
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Citizen Watch Co Ltd
Original Assignee
Citizen Watch Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ガイドブッシュの被加工物と摺接する内周面
に膜質及び密着性がよい硬質カーボン膜を均一な膜圧で
形成できるようにする。 【解決手段】 ガイドブッシュ11をその中心開口11
内に補助電極71を挿入して真空槽61内に配置し、そ
の補助電極71を接地するか直流正電圧を印加し、ガイ
ドブッシュ11の中心開口11jの径と同等以上で且つ
その両端部で異なる開口径を有する導電材料からなるリ
ング状のダミー部材53を、ガイドブッシュ11の開口
端面11h上に開口径が小さい方の端部を当接させて配
置し、真空槽61内を排気した後、炭素を含むガスを導
入し、ガイドブッシュ11に直流電圧を印加するととも
に、アノード79に直流電圧、フィラメント81に交流
電圧をそれ印加して真空槽61内にプラズマを発生させ
て、プラズマCVDプロセスによりガイドブッシュ11
の内周面11bに硬質カーボン膜を形成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、自動旋盤に装着
され、丸棒状の被加工物を切削工具(刃物)の近くで回
転及び軸方向に摺動可能に保持するガイドブッシュの被
加工物と摺接する内周面に硬質カーボン膜を形成する方
法に関する。
【0002】
【従来の技術】自動旋盤のコラムに装着され、丸棒状の
被加工物を切削工具の近くで回転可能に保持するガイド
ブッシュには、回転型と固定型とがある。回転型のもの
は常に被加工物と共に回転しながらその被加工物を軸方
向に摺動可能に保持し、固定型のものは回転せずに被加
工物を回転及び軸方向に摺動可能に保持する。
【0003】いずれの型のガイドブッシュも、外周テー
パ面と、それに弾力を持たせるための摺り割り、コラム
に取り付けるためのネジ部と、被加工物を保持する内周
面とを備えており、その内周面は常に被加工物と摺接す
るため摩耗しやすく、特に固定型の場合はその摩耗が激
しい。そのため、この被加工物の回転や摺動により被加
工物と摺接するガイドブッシュの内周面に、超硬合金や
セラミックスをロー付けなどによって固着して設けるも
のが、たとえば特開平4−141303号公報に見られ
るように提案されている。
【0004】このように、耐摩耗性や耐熱性に優れた超
硬合金やセラミックスをガイドブッシュの内周面に設け
ることにより、ある程度のその摩耗を抑制する効果が認
められる。しかしながら、このように超硬合金やセラミ
ックスを内周面に設けても、自動旋盤で切削量が大きく
加工速度が大きな重切削に対しては、超硬合金やセラミ
ックスも摩擦係数が大きく熱伝導率が低いため、被加工
物にキズが発生したり、ガイドブッシュと被加工物との
直径方向の隙間寸法が減少して焼き付きが発生したりす
るという問題があり、切削量及び加工速度を上げること
ができなかった。
【0005】固定型のガイドブッシュの方が、被加工物
をその軸心のブレがなく保持できるので、真円度が高く
精度のよい加工ができ、しかも騒音が少なく、自動旋盤
の構造も複雑にならずコンパクトにできるなどの利点が
ある。しかしながら、ガイドブッシュの内周面の摩耗
は、回転型の場合よりはるかに大きくなるため、一層切
削量及び加工速度を上げることが困難であるという問題
があった。
【0006】この問題を解決するために、我々はこのよ
うなガイドブッシュにおける被加工物と摺接する内周面
に硬質カーボン膜を形成することにより、内周面の耐摩
耗性を飛躍的に高め、被加工物へのキズの発生や焼き付
きを発生することなく、自動旋盤による切削量及び加工
速度を上げることができるようにすることを提案した。
【0007】この硬質カーボン膜とは、水素化アモルフ
ァス・カーボン膜であり、ダイアモンドによく似た性質
をもつため、ダイアモンドライクカーボン(DLC)と
も云われるものである。この硬質カーボン膜(DLC)
は、硬度が高く(ビッカース硬度で3000Hv以
上)、耐摩耗性に優れ、摩擦係数が小さく(超硬合金の
1/8位)、耐蝕性にも優れている。
【0008】上述した硬質カーボン膜をガイドブッシュ
の内周面に形成する方法として、たとえば、炭素を含む
ガスの雰囲気中で被膜形成圧力である5×10-3torrに
減圧し、ガイドブッシュに直流電源からマイナス3kV
の直流電圧を印加してプラズマを発生させて、硬質カー
ボン膜を形成するプラズマCVD法がある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このプ
ラズマCVD法では、ガイドブッシュの周囲領域に発生
するプラズマが主になって、炭素を含むガスを分解して
硬質カーボン膜を形成しているため、ガイドブッシュの
外周部には、硬質カーボン膜を均一性よく形成すること
ができるが、ガイドブッシュの内周面に形成する硬質カ
ーボン膜は密着性が悪く、しかも硬度などの膜質が劣る
という問題がある。
【0010】この原因は、ガイドブッシュの中心開口内
は、同電位の電極同士が対向している空間となっている
ため、その中心開口内でのプラズマはホロー放電と呼ば
れる異常放電を発生するからである。このホロー放電に
よって形成される硬質カーボン膜は、ポリマーライクな
密着性の悪い被膜であり、ガイドブッシュの内周面から
剥離しやすく、その硬度も低い。
【0011】また、上述した硬質カーボン膜の形成方法
においては、被膜形成圧力である5×10-3torrにて、
ガイドブッシュ11に直流電源73からマイナス3kV
の直流電圧を印加している。このような真空槽内の圧力
が5×10-3torr程度の状態では、真空槽内の空間に電
子などの電荷が多い状態となり、空間インピーダンスが
低い。このためプラズマ放電が開始する瞬間に、ガイド
ブッシュに異常放電であるアーク放電が発生しやすい。
【0012】さらに、このプラズマ放電の開始時という
のは、硬質カーボン膜の被膜形成初期でもあるため、こ
の被膜形成初期に形成される膜質によって、ガイドブッ
シュとの密着性が左右される。したがって、プラズマ放
電の最初期に、異常放電であるアーク放電が発生する
と、硬質カーボン膜の膜質及び密着性が低下し、ガイド
ブッシュの内周面から剥離するという問題が発生する。
【0013】したがって、この発明は、これらの問題を
解決し、被加工物と摺接するガイドブッシュの内周面に
膜質及び密着性がよい硬質カーボン膜を形成できるよう
にすることを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】この発明は上記の目的を
達成するため、軸方向に中心開口を有する略円筒状に形
成され、一端部に外周テーパ面と被加工物と摺接する内
周面と摺り割りとを有し、自動旋盤に装着されたとき、
前記中心開口に挿入された被加工物を切削工具の近くで
回転及び軸方向に摺動可能に保持するガイドブッシュの
内周面に硬質カーボン膜を形成する方法であって、つぎ
の工程を有することを特徴とする。
【0015】上記ガイドブッシュを、ガス導入口及び排
気口を備えた真空槽内に配置する。そのガイドブッシュ
の上記内周面を形成する中心開口内に補助電極を挿入し
て、その補助電極を接地電位にするか、あるいはその補
助電極に直流正電圧を印加する。
【0016】さらに、上記ガイドブッシュの中心開口の
径と同等以上で且つその両端部で異なる開口径を有する
導電材料からなるリング状のダミー部材を、該ガイドブ
ッシュの上記内周面が開口する端面上にその開口径が小
さい方の端部を当接させて上記中心開口と中心を一致さ
せるように配置する。
【0017】そして、上記真空槽内を排気した後、ガス
導入口から炭素を含むガスを該真空槽内に導入し、該真
空槽内にプラズマを発生させて、プラズマCVDプロセ
スにより上記ガイドブッシュの内周面に水素化アモルフ
ァス・カーボンによる硬質カーボン膜を形成する。な
お、補助電極を先にガイドブッシュの中心開口内に挿入
した状態で、そのガイドブッシュと共に真空槽内に配置
してもよい。
【0018】上記真空槽内にプラズマを発生させる方法
としては、真空層として内部にアノードとフィラメント
を備えたものを使用し、その真空槽内に配置したガイド
ブッシュに直流電圧を印加するとともに、そのアノード
に直流電圧を、フィラメントに交流電圧をそれぞれ印加
する方法がある。あるいは、上記アノードおよびフィラ
メントを使用せず、上記真空槽内に配置したガイドブッ
シュに高周波電力を印加してプラズマを発生させる方
法、またはそのガイドブッシュに直流電圧を印加するだ
けでプラズマを発生させる方法もある。
【0019】このガイドブッシュの内周面に硬質カーボ
ン膜を形成する方法に使用するダミー部材は、その内周
面が次のいずれかになっているとよい。開口径が小さい
方の端部と大きい方の端部との間でその開口径が段階的
に変化する階段状円筒面になっている。
【0020】開口径が小さい方の端部と大きい方の端部
との間でその開口径が無段階的に変化するテーパ面にな
っている。開口径が小さい方の端部と大きい方の端部と
の間で、その開口径が無段階的に変化するテーパ面の部
分とその開口径が変化しない円筒面の部分とからなって
いる。
【0021】このように、カイドブッシュの中心開口内
に補助電極を挿入した状態で、真空槽内に炭素を含むガ
スを導入すると共にプラズマを発生させることにより、
ガイドブッシュの内周面に速く且つ開口端側から奥側ま
で均一な膜厚で硬質カーボン膜を密着性よく形成するこ
とができる。また、ガイドブッシュの開口端面上にダミ
ー部材を配置し、そのダミー部材開口径がガイドブッシ
ュの中心開口の径と同等以上で、ガッドブッシュの開口
端面に当接する端部より反対側の端部の方が開口径が大
きいことにより、次のような作用・効果が得られる。
【0022】ガイドブッシュの開口端面近傍のプラズマ
のエッジ効果の発生を防ぎ、内周面に形成される硬質カ
ーボン膜の均一性を高め、しかもガイドブッシュの中心
開口内へのプラズマの引き込みを誘導して、その内周面
に効率よく硬質カーボン膜を形成することができる。
【0023】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照してこの発明の
実施の形態を説明する。 〔ガイドブッシュを用いる自動旋盤の説明:図18,1
9〕先ず、この発明の対象とするガイドブッシュを用い
る自動旋盤の構造について簡単に説明する。
【0024】図18は、数値制御自動旋盤の主軸近傍の
みを示す断面図である。この自動旋盤は、ガイドブッシ
ュ11を固定して、その内周面11bで被加工物51
(仮想線で示す)を回転自在に保持する状態で使用する
固定型のガイドブッシュ装置37を設けたものである。
【0025】主軸台17は、この数値制御自動旋盤の図
示しないベッド上を、図で左右方向に摺動可能となって
いる。この主軸台17には、軸受21によって回転可能
な状態で支持された主軸19を設けている。そして主軸
19の先端部には、コレットチャック13を取り付けて
いる。
【0026】このコレットチャック13は、チャックス
リーブ41の中心孔内に配置する。そしてコレットチャ
ック13の先端の外周テーパ面13aと、チャックスリ
ーブ41の内周テーパ面41aとが互いに面接触してい
る。さらに、中間スリーブ29内のコレットチャック1
3の後端部に、帯状のバネ材をコイル状にしたスプリン
グ25を設けている。そして、このスプリング25の働
きによって、中間スリーブ29内からコレットチャック
13を押し出すことができる。
【0027】コレットチャック13の先端位置は、主軸
19の先端にネジ固定するキャップナット27に接触し
て位置を規制している。このため、コレットチャック1
3がスプリング25のバネ力によって、中間スリーブ2
9から飛び出すことを防止している。中間スリーブ29
の後端部には、この中間スリーブ29を介してチャック
開閉機構31を設ける。そしてチャック開閉爪33を開
閉することによって、コレットチャック13は開閉し、
被加工物51を把持したり解放したりする。
【0028】すなわち、チャック開閉機構31のチャッ
ク開閉爪33の先端部が相互に開くように移動すると、
チャック開閉爪33の中間スリーブ29と接触している
部分が、図18で左方向に移動して中間スリーブ29を
左方向に押す。この中間スリーブ29の左方向への移動
により、中間スリーブ29の左端に接触しているチャッ
クスリーブ41が左方向に移動する。そして、コレット
チャック13は、主軸19の先端にネジ止めしているキ
ャップナット27によって、主軸19から飛び出すのを
防止されている。
【0029】このため、このチャックスリーブ41の左
方向への移動によって、コレットチャック13の摺り割
りが形成されている部分の外周テーパ面13aと、チャ
ックスリーブ41の内周テーパ面41aとが強く押され
て、互いにテーパ面に沿って移動することになる。その
結果、コレットチャック13の内周面の直径が小さくな
り、被加工物51を把持することができる。
【0030】コレットチャック13の内周面の直径を大
きくして被加工物51を解放するときは、チャック開閉
爪33の先端部が相互に閉じるように移動することによ
り、チャックスリーブ41を左方向に押す力を除く。す
るとスプリング25の復元力によって中間スリーブ29
とチャックスリーブ41とが、図で右方向に移動する。
【0031】このため、コレットチャック13の外周テ
ーパ面13aと、チャックスリーブ41の内周テーパ面
41aとの押圧力が除かれることになる。それによっ
て、コレットチャック13は自己のもつ弾性力で内周面
の直径が大きくなり、被加工物51を解放することがで
きる。
【0032】さらに、主軸台17の前方にはコラム35
が設けられており、そこに、ガイドブッシュ装置37を
その中心軸線を主軸中心線と一致させるようにして配置
している。このガイドブッシュ装置37は、ガイドブッ
シュ11を固定して、このガイドブッシュ11の内周面
11bで被加工物51を回転可能な状態で保持する固定
型のガイドブッシュ装置37である。
【0033】コラム35に固定したホルダ39の中心孔
に、ブッシュスリーブ23を嵌入し、そのブッシュスリ
ーブ23の先端部には内周テーパ面23aを設けてい
る。そして、このブッシュスリーブ23の中心孔に、先
端部に外周テーパ面11a及び摺り割り11cを形成し
たガイドブッシュ11を嵌入させて配置している。
【0034】ガイドブッシュ装置37の後端部に、ガイ
ドブッシュ11のネジ部に螺着して設けた調整ナット4
3を回転することによって、ガイドブッシュ11の内径
と被加工物51の外形との隙間寸法を調整することがで
きる。すなわち、調整ナット43を右回転させると、ブ
ッシュスリーブ23に対してガイドブッシュ11が図で
右方向に移動し、コレットチャック13の場合と同様
に、ブッシュスリーブ23の内周テーパ面23aとガイ
ドブッシュ11の外周テーパ面11aとが相互に押圧さ
れて、ガイドブッシュ11の先端部の内径が小さくなる
ためである。
【0035】ガイドブッシュ装置37のさらに前方には
切削工具(刃物)45を設けている。そして、被加工物5
1を主軸19のコレットチャック13で把持すると共
に、ガイドブッシュ装置37で支持し、しかもこのガイ
ドブッシュ装置37を貫通して加工領域に突き出した被
加工物51を、切削工具45の前進後退と主軸台17の
移動との合成運動によって所定の切削加工を行なう。
【0036】次に、被加工物を把持するガイドブッシュ
を回転する状態で使用する回転型のガイドブッシュ装置
について、図19によって説明する。この図19におい
て、図18と対応する部分には同一の符号を付してい
る。この回転型のガイドブッシュ装置としては、コレッ
トチャック13とガイドブッシュ11とが同期して回転
するガイドブッシュ装置と、同期しないで回転するガイ
ドブッシュ装置とがある。この図に示すガイドブッシュ
装置37は、コレットチャック13とガイドブッシュ1
1とが同期して回転するものである。
【0037】この回転型のガイドブッシュ装置37は、
主軸19のキャップナット27から突き出した回転駆動
棒47によって、ガイドブッシュ装置37を駆動する。
この回転駆動棒47に代えて、歯車やベルトプーリによ
ってガイドブッシュ装置37を駆動するものもある。こ
の回転型のガイドブッシュ装置37は、コラム35に固
定するホルダ39の中心孔に、軸受21を介して回転可
能な状態にブッシュスリーブ23を嵌入させて配置して
いる。さらに、このブッシュスリーブ23の中心孔にガ
イドブッシュ11を嵌入させて配置している。
【0038】ブッシュスリーブ23とガイドブッシュ1
1とは、図18によって説明したものと同様な構成であ
る。そして、ガイドブッシュ装置37の後端部に、ガイ
ドブッシュ11のネジ部に螺着して設けた調整ナット4
3を回転することによって、ガイドブッシュ11の内径
を小さくして、ガイドブッシュ11の内径と被加工物5
1の外形との隙間寸法を調整することができる。ガイド
ブッシュ装置37が回転型である以外の構成は、図18
によって説明した自動旋盤の構成と同じであるのでそれ
らの説明は省略する。
【0039】〔ガイドブッシュの説明:図16,17〕
つぎに、この発明の方法によって内周面に硬質カーボン
膜を形成したガイドブッシュの構成を説明する。図16
は、この発明の方法によって内周面に硬質カーボン膜を
形成したガイドブッシュの一例を示す縦断面図であり、
図17はその外観を示す斜視図である。
【0040】これらの図に示すように、ガイドブッシュ
11は、先端部が開いた自由な状態を示している。この
ガイドブッシュ11は、軸方向に中心開口11jを有す
る略円筒状に形成され、長手方向の一端部に外周テーパ
面11aを形成し、他端部にネジ部11fを有する。そ
して、外周テーパ面11aを設けた側の内周に、被加工
物51を保持する内周面11bを形成している。また、
中心開口11jのこの内周面11b以外の領域には、内
周面11bの内径より大きな内径をもつ段差部11gを
形成している。
【0041】また、このガイドブッシュ11は、外周テ
ーパ面11aからバネ部11dにまで、外周テーパ面1
1aを円周方向に3等分するように摺り割り11cを、
120°間隔で3箇所に設けている。そして、前述した
ブッシュスリーブの内周テーパ面にこのガイドブッシュ
11の外周テーパ面11aを押圧することによって、バ
ネ部11dが撓み、内周面11bと図14に仮想線で示
す被加工物51との隙間寸法を調整することができる。
【0042】さらに、このガイドブッシュ11には、バ
ネ部11dとネジ部11fとの間に嵌合部11eを設け
ている。そして、この嵌合部11eを図18及び図19
に示したブッシュスリーブ23の中心孔に嵌合させるこ
とによって、ガイドブッシュ11を主軸の中心線上で、
しかも主軸中心線に平行に配置することができる。この
ガイドブッシュ11の材料としては、合金工具鋼(SK
S)を用い、外形形状と内形形状とを形成した後、焼き
入れ処理と焼き戻し処理とを行なう。
【0043】さらに、好ましくはこのガイドブッシュ1
1に、図16に示ように肉厚が2mmから5mmの寸法
を有する超硬部材12をロウ付け手段により固定して、
被加工物51と摺接する内周面11bを形成するとよ
い。この超硬部材としては、例えばタングステン(W)
が85%〜90%と、炭素(C)が5%〜7%と、バイ
ンダーとしてコバルト(Co)が3%〜10%の組成の
ものを用いる。
【0044】しかし、このガイドブッシュ11は、外周
テーパ面11aが閉じた状態で、内周面11bと被加工
物51との間に半径方向で5μm〜10μmの隙間を設
けている。それにより、被加工物51が出入りして内周
面11bと摺接するため、その摩耗が問題となる。
【0045】さらに、固定型のガイドブッシュ装置に使
用する場合は、固定されたガイドブッシュ11に保持さ
れ被加工物51が高速で回転して加工されるため、内周
面11bと被加工物51との間で高速摺動し、しかも切
削負荷による内周面11bへの過大な被加工物51の押
圧力によって、焼き付きを発生させる問題がある。その
ため、このガイドブッシュ11の内周面11bに、前述
した硬質カーボン膜(DLC)15を設けている。その
硬質カーボン膜15の膜厚は1μmから5μmとする。
【0046】この硬質カーボン膜は、前述したようにダ
イアモンドとよく似た性質をもち、機械的強度が高く、
摩擦係数が小さく潤滑性があり、腐食性にも優れてい
る。そのため、内周面11bに硬質カーボン膜15を設
けたこのガイドブッシュ11は、耐摩耗性が飛躍的に向
上し、長期間の使用や重切削加工においても、被加工物
51と接触する内周面11bの摩耗を抑えることができ
る。また、被加工物51へのキズの発生を抑えることも
可能になり、ガイドブッシュ11と被加工物51との焼
き付きの発生を抑制することもできる。
【0047】ガイドブッシュ11の基材(SKS)の内
周面、あるいは超硬部材12の内周面にこの硬質カーボ
ン膜を直接形成することもできるが、内周面11bとの
密着性を高めるために薄い中間層(図示はしていない)
を介して、硬質カーボン膜を形成するとよい。
【0048】この中間層としては、周期律表第IVb族
のシリコン(Si)やゲルマニウム(Ge)、あるいは
シリコンやゲルマニウムの化合物、またはシリコンカー
バイト(SiC)やチタンカーバイト(TiC)のよう
な炭素を含む化合物を用いるとよい。また、この中間層
として、チタン(Ti),タングステン(W),モリブ
デン(Mo),あるいはタンタル(Ta)とシリコン
(Si)との化合物も適用できる。さらに、この中間層
を、チタン(Ti)又はクロム(Cr)による下層と、
シリコン(Si)又はゲルマニウム(Ge)による上層
との2層膜に形成してもよい。
【0049】このようにすると、中間層の下層のチタン
やクロムはガイドブッシュ11の基材あるいは超硬部材
12との密着性を保つ役割を果たし、上層のシリコンや
ゲルマニウムは硬質カーボン膜15と共有結合して、こ
の硬質カーボン膜15と強く結合する役割を果たす。こ
れらの中間層の形成膜厚は0.5μm程度とする。ただ
し、2層の場合は上層と下層共に0.5μm程度とす
る。
【0050】そして、この中間層の形成方法としては、
スパッタリング法やイオンプレーティング法、あるいは
化学気相成長(CVD)法や溶射法を適用すればよい。
なお、硬質部材12としてシリコンカーバイト(Si
C)を用いる場合には、この中間層の形成を省略するこ
とができる。なぜなら、シリコンカーバイトは周期律表
の第IVb族のシリコンと炭素との化合物であり、その
表面に形成される硬質カーボン膜15と共有結合して、
高い密着性が得られるからである。
【0051】このガイドブッシュ11の内周面11bに
直接、あるいはそこに形成された中間層上への硬質カー
ボン膜の形成は、真空槽内で補助電極およびダミー部材
を用いてプラズマCVD法によって行なうが、その詳細
は後述する。
【0052】〔硬質カーボン膜の形成方法の説明〕つぎ
に、この発明によりガイドブッシュの内周面に硬質カー
ボン膜を形成する方法の種々の実施例を、図1から図8
によって説明する。なお、これらの図において、ガイド
ブッシュの内周面を形成する部位に前述した超硬部材や
中間層は図示していないが、それらを設けたものにも同
様にこれらの各実施例を適用できることは勿論である。
【0053】(1実施例:図1,2)図1は、この発明
によるガイドブッシュの内周面に硬質カーボン膜を形成
する方法の第1実施例に使用する装置の断面図である。
図1において、61は、ガス導入口63と排気口65と
を有する真空槽で、その中の中央上部に、アノード79
とフィラメント81が配設されている。この真空槽61
内の中央下部に、前述したガイドブッシュ11を絶縁支
持具80に下部を固定して垂直に配置する。
【0054】そして、このガイドブッシュ11の中心開
口11j内には、接地された導電性の真空槽61の内面
に支持される細いロッド状の補助電極71を挿入するよ
うに配設する。このとき補助電極71がガイドブッシュ
11の中心開口11jの中央部(略軸線上)に位置する
ようにする。なお、この補助電極71はステンレス等の
金属材料で作られる。そして、この補助電極71は、真
空槽61を介して接地電位にされる。
【0055】さらに、ガイドブッシュ11の内周面11
bの径と同等以上で且つ両端部で異なる開口径を有する
リング状のダミー部材53を、ガイドブッシュ11の内
周面11bが開口する端面11h上に、開口径が小さい
方の端部を当接させて、その中心を中心開口11jの中
心と一致させるように配置する。
【0056】このダミー部材53は、その外観を図2に
示すように、外形がガイドブッシュ11の端面11hの
大きさと略同じ大きを有するリング状(円筒状も含む)
に形成されている。そして、その内周面が、開口径が小
さい方の端部と大きい方の端部との間でその開口径が段
階的に変化する階段状円筒面になっており、図示の例で
は、ガイドブッシュ11の内周面11bの径と同等の開
口径を有する小径部53aと、それより大きな開口径を
有する大径部53bとからなっている。
【0057】このダミー部材53を、その小径部53a
の下面をガイドブッシュ11の端面11hに当接させ
て、その中心を中心開口11jの中心と一致させるよう
に配置すると、その小径部53aの内周面とガイドブッ
シュ11の内周面11bとが段差のない略同一な面とな
る。このダミー部材53も、補助電極71と同様にステ
ンレス(SUS)等の導電性材料によって形成される。
したがって、ガイドブッシュ11とダミー部材53とは
常に同電位になる。
【0058】なお、補助電極71は、その先端がダミー
部材53の上端面から突出しないように、1mmから2
mm内側に位置するように配置されるようにするのが望
ましい。また、図示していないが、このガイドブッシュ
11の外周面をアルミニウム箔等のカバー部材で覆うこ
とにより、外周面に硬質カーボン膜が形成されないよう
にすることができる。
【0059】このように、真空層61内に、ガイドブッ
シュ11と補助電極71とダミー部材53とを配置した
後、真空槽61内を真空度が3×10-5torrになるよう
に、排気口65から真空排気する。そして、ガス導入口
63から炭素を含むガスとしてベンゼン(C66)を真
空槽61内に導入して、真空槽61内の圧力を5×10
-3torrになるように制御する。
【0060】その後、このガイドブッシュ11に直流電
源73からマイナス3kVの直流電圧を印加し、アノー
ド79にはアノード電源75からプラス50Vの直流電
圧を印加し、さらにフィラメント81にはフィラメント
電源77から30Aの電流が流れるように10V程度の
交流電圧を印加する。それによって、真空槽61内のガ
イドブッシュ11の周囲領域にプラズマが発生し、プラ
ズマCVDプロセスによって、ガイドブッシュ11の露
出している内周面11bに水素化アモルファス・カーボ
ンによる硬質カーボン膜が形成される。
【0061】この図1に示す硬質カーボン膜の形成方法
において、ガイドブッシュ11の中心開口11j内に挿
入するように補助電極71を設けたことにより、ガイド
ブッシュ11の外周部だけでなく、内周部にも充分なプ
ラズマを形成することができる。また、これによって異
常放電であるホロー放電が発生することがなくなり、硬
質カーボン膜15の密着性が向上する。
【0062】さらに、ガイドブッシュ11の内周面の長
手方向で電位特性が均一になるので、内周面11bに形
成する硬質カーボン膜の膜厚分布が均一になる。しか
も、成膜速度が速くなるため、開口端面側から開口奥側
まで均一な膜厚の硬質カーボン膜を、短時間の処理で形
成することができる。
【0063】この補助電極71の径は、ガイドブッシュ
11の開口径より小さければよいが、好ましくは硬質カ
ーボン膜を形成する内周面11bに対して5mm程度の
隙間、すなわちプラズマ形成領域を設けるようにするの
が望ましい。この補助電極71の径とガイドブッシュ1
1の開口径との比を1/10以下にするのが望ましく、
補助電極71を細くする場合は線状にすることもでき
る。そして、この補助電極71はステンレスで形成する
と説明したが、タングステン(W)やタンタル(Ta)
のような高融点の金属材料で作成してもよい。また、こ
の補助電極71の断面形状は円形とする。
【0064】一方、この実施例で使用するダミー部材5
3は次のような作用をなす。すなわち、このようなガイ
ドブッシュ11への硬質カーボン膜の形成方法において
は、ガイドブッシュ11の内面と外周部とにプラズマが
発生する。そして、ガイドブッシュ11の端面11hは
電荷が集中しやすく、内面に比べて開口端面領域は電位
が高い状態、いわゆるエッジ効果が発生する。ここでガ
イドブッシュ11の端面11hの近傍のプラズマ強度は
他の領域より大きく、しかも不安定でもある。
【0065】さらに、ガイドブッシュ11の端部領域
は、内面のプラズマと外周部のプラズマとの双方のプラ
ズマの影響を受けることになる。そして、このような状
態で硬質カーボン膜を形成すると、ガイドブッシュ11
の端面11hから数mm奥側の領域と他の領域とでは、
硬質カーボン膜の密着性が若干異なり、さらに膜質も若
干異なる。
【0066】そこで、図1に示すようにガイドブッシュ
11の内周面11bが開口する端面11h上にダミー部
材53を配置して硬質カーボン膜を形成すれば、この膜
質や密着性が異なる領域はガイドブッシュ11の内周面
11bに形成されず、ダミー部材53の内周面に形成さ
れることになる。また、ガイドブッシュ11の内周面の
開口径寸法が10mm程度以下と小さくなると、補助電
極71とガイドブッシュの内周面11bとの間に形成さ
れるプラズマが時間の経過とともに不安定になって硬質
カーボン膜の形成ができなくなることがある。
【0067】しかし、このダミー部材を使用することに
より、ガイドブッシュ11の内周面11bの開口径より
大きな開口径を有する大径部53bにプラズマを誘発
し、それを小径部53aを通してガイドブッシュ11の
中心開口11j内に引き込むことによって、補助電極7
1と内周面11bとの間のプラズマが不安定になるのを
防止することができる。
【0068】(第2実施例:図3)つぎに、この発明に
よるガイドブッシュの内周面に硬質カーボン膜を形成す
る方法の第2実施例を図3によって説明する。図3はこ
の第2実施例に使用する装置の断面図であり、図1と対
応する部分には同一の符号を付してあり、それらの説明
は省略する。この第2実施例で使用する真空槽61は、
その内部にアノードとフィラメントを設けていない。
【0069】この装置を使用する硬質カーボン膜形成方
法において、図1に示した装置を使用する第1実施例と
相違する点は、真空槽61内に図示のように配置したガ
イドブッシュ11に、13.56MHzの発振周波数を
有する高周波電源69からマッチング回路67を介して
400Wの高周波電力を印加するようにした点と、炭素
を含むガスとしてメタン(CH4)ガスを真空槽61内に
導入し、真空度が0.1 torrになるように調整するよう
にした点だけである。
【0070】このようにしても、ガイドブッシュ11の
外周面側だけでなく内周面11b側にも安定したプラズ
マが発生し、プラズマCVDプロセスによって、ガイド
ブッシュ11の内周面11bに硬質カーボン膜を均一な
膜厚で密着性よく、短時間で形成することができる。補
助電極71およびダミー部材53による作用・効果は前
述した第1実施例の場合と同様である。
【0071】(第3実施例:図4)つぎに、この発明に
よるガイドブッシュの内周面に硬質カーボン膜を形成す
る方法の第3実施例を図4によって説明する。図4はこ
の第2実施例に使用する装置の断面図であり、図1と対
応する部分には同一の符号を付してあり、それらの説明
は省略する。この第2実施例で使用する真空槽61も、
その内部にアノードとフィラメントを設けていない。
【0072】この装置を使用する硬質カーボン膜形成方
法において、図1に示した装置を使用する第1実施例と
相違する点は、真空槽61内に図示のように配置したガ
イドブッシュ11に、直流電源73′からマイナス60
0Vの直流電圧だけを印加するようにした点と、炭素を
含むガスとして、メタン(CH4)ガスを真空槽61内に
導入し、真空度が0.1 torrになるように調整するよう
にした点だけである。
【0073】このようにしても、ガイドブッシュ11の
外周面側だけでなく内周面11b側にも安定したプラズ
マが発生し、プラズマCVDプロセスによって、ガイド
ブッシュ11の内周面11bに硬質カーボン膜を均一な
膜厚で密着性よく、短時間で形成することができる。補
助電極71およびダミー部材53による作用・効果は前
述した第1実施例の場合と同様である。
【0074】(第4,第5,第6実施例:図5から図
8)次に、この発明によるガイドブッシュの内周面に硬
質カーボン膜を形成する方法の第4,第5,第6実施例
を、図5から図8によって説明する。図5,図6,およ
び図7は、それぞれこの発明の第4,第5,第6実施例
に使用する装置を示す断面図であるが、それぞれ図1,
図3,および図4に示したものと殆ど同じであるので、
これらの各図と同じ部分に同じ符号を付してあり、それ
らの説明は省略する。
【0075】この第4,第5,第6実施例において、前
述した第1,第2,第3実施例と相違する点は、真空槽
内に配置したガイドブッシュ11内に挿入した補助電極
71を、ガイドブッシュ11の中心開口11jに嵌入し
た碍子等の絶縁部材85によって、ガイドブッシュ11
に対しても真空槽61に対しても絶縁して支持し、その
補助電極71に補助電極電源83から直流正電圧(例え
ばプラス20V)を印加するようにした点だけである。
【0076】この補助電極71に印加する直流正電圧
と、ガイドブッシュ11の開口内面に形成される硬質カ
ーボン膜の膜厚との関係を、図8の線図に示す。この図
8においては、補助電極71に印加する直流正電圧をゼ
ロVから30Vまで変化させ、さらにガイドブッシュ1
1の開口内面と補助電極71との間の隙間寸法が3mm
と5mmのときの硬質カーボン膜の膜厚を示す。なお、
曲線aは上記隙間が3mmのときの特性を、曲線bは上
記隙間が5mmのときの特性をそれぞれ示す。
【0077】この曲線a,bに示されるように、補助電
極71に印加する直流正電圧を増加させると、硬質カー
ボン膜の膜形成速度は向上する。また、ガイドブッシュ
11の開口内面と補助電極71との間の隙間寸法が大き
いほど、硬質カーボン膜の膜形成速度は向上する。
【0078】そして、ガイドブッシュ11の開口内面と
補助電極71との間の隙間寸法が3mmのとき(曲線
a)は、補助電極71に印加する電位がゼロVの接地電
圧では、ガイドブッシュ11の中心開口11jの内面に
プラズマが発生せず、硬質カーボン膜は形成できない。
しかし、この場合でも補助電極71に印加する直流正電
圧を高くしていくと、ガイドブッシュ11の中心開口1
1j内の補助電極71の周囲にプラズマが発生し、硬質
カーボン膜を形成することができる。
【0079】したがって、中心開口11jの径が小さい
ガイドブッシュの内周面にも、補助電極71に直流正電
圧を印加して使用するこれらの各実施例によれば、硬質
カーボン膜の被膜形成が可能になる。このような作用
は、図5乃至図7に示すいずれの装置を使用してガイド
ブッシュ11の内周面11bに硬質カーボン膜を形成す
る場合でも同様である。
【0080】(ダミー部材の異なる例:図9から図1
5)ここで、ダミー部材53の内周面の形状が異なる種
々の例を図9乃至図15に示す。これらのダミー部材5
3はいずれも、ステンレス等の金属(導電材料)によっ
て、その外径がガイドブッシュ11の端面11hの外形
と略同じ大きさのリング状(円筒状も含む)に形成され
ている。そして、開口径が下端部と上端部とで異なって
おり、下端部の開口径は、ガイドブッシュ11の内周面
11bの径と同等かそれより若干大きく、上端部の開口
径は下端部の開口径より充分大きくなっている。
【0081】図9は、上述の各実施例で使用したダミー
部材53を、補助電極71を挿入したガイドブッシュ1
1の端面11h上に配置した状態を拡大して示す要部断
面図である。この図9に示すダミー部材53は、その内
周面が、ガイドブッシュ11の内周面11bの径と同等
の開口径を有する小径部53aと、それより2mmから
5mm程度大きな開口径を有する大径部53bとからな
っている。したがってその内周面は、下端と上端との間
で径が段階的に変化する2段の円筒面になっている。
【0082】このダミー部材53を、図示のようにその
小径部53aの下面をガイドブッシュ11の端面11h
に当接させて、その中心を中心開口11jの中心と一致
させるように配置すると、その小径部53aの内周面と
ガイドブッシュ11の内周面11bとが段差のない略同
一な面となる。
【0083】図10に示すダミー部材53は、開口径が
下端から上端まで無段階的に変化し、その内周面がテー
パ面を形成するテーパ部53cだけで構成されている。
そして、このテーパ部53cの最小開口径はガイドブッ
シュ11の内周面11bの開口径に等しく、最大開口径
は最小開口径より2mmから5mm程度大きくなってい
る。
【0084】図11に示すダミー部材53は、その内周
面が、小径部53aと中径部53dと大径部53bとに
よって形成されている。そして小径部53aの開口径は
ガイドブッシュ11の内周面11bの開口径に等しく、
大径部53bの開口径は小径部53aの開口径より2m
mから5mm程度大きくする。また、中径部53dは小
径部53aと大径部53bとの間の開口径とする。すな
わち、このダミー部材53の内周面は開口径が3段階に
変化する階段状円筒面になっている。
【0085】図12に示すダミー部材53は、その内周
面が、小径部53aと大径部53bと、この小径部53
aと大径部53bとの間のテーパ部53cとによって形
成されている。そして、小径部53aの開口径はガイド
ブッシュ11の内周面11bの開口径に等しく、大径部
53bの開口径が小径部53aの開口径より2mmから
5mm程度大きくなるように、テーパ部53cの開口径
を徐々に変化させている。
【0086】図13に示すダミー部材53は、その内周
面が、小径部53aとテーパ部53cとによって形成さ
れている。そして、小径部53aの開口径は、ガイドブ
ッシュ11の内周面11bの開口径に等しく、テーパ部
53cはその最大径が小径部53aの開口径より2mm
から5mm程度大きくなるように開口径を徐々に変化さ
せている。したがって、これらの図12および図13に
示すダミー部材53は、その内周面がデーパ面の部分と
円筒面の部分とからなっている。
【0087】図14および図15に示すダミー部材53
は、それぞれ図10および図9に示したダミー部材53
と同様な内周面53cあるいは53a,53bを形成し
ているが、そのガイドブッシュ11の端面11hに当接
する下端部の開口径が、ガイドブッシュ11の内周面1
1bの径よりも若干(2mm程度)大きくなっている。
【0088】このようなダミー部材を使用すると、ガイ
ドブッシュ11の内周面11bに硬質カーボン膜を形成
する際に、その内周面11bが開口する端面11hの開
口端近傍部分11iが環状に露出するため、そこにも硬
質カーボン膜を形成することができる。それによって、
最も摩耗しやすい開口端付近の耐久性を高めることがで
きる。
【0089】しかし、内周面11bの開口端で若干の段
差が生じるため、膜質の均一性を向上させる点では、多
少効果が低下する。これらの、各図に示したダミー部材
53は、いずれも前述した第1から第6実施例における
ダミー部材53として使用することができる。
【0090】そうすると、いずれのダミー部材53もそ
の内周面にテーパ部を有していたり、開口径が段階的に
変化する階段状の円筒面を有しているため、内周面の径
が軸方向の全長に亘って均一に形成されている場合に較
べて、ガイドブッシュ11の中心開口11j内の補助電
極71の周囲領域へのプラズマの引き込みをスムーズに
行なうことができる。したがって、ガイドブッシュ11
の中心開口11j内の補助電極71の周囲領域に安定し
たプラズマを発生させることが可能になり、良質な硬質
カーボン膜を効率よく確実に形成することができる。
【0091】(補足説明)上述したこの発明によるガイ
ドブッシュの内周面に硬質カーボン膜を形成する方法の
各実施例では、炭素を含むガスとしてメタン(CH4
あるいはベンゼン(C66)を用いる例で説明したが、
エチレン(C24)やヘキサン(C614)などを使用
することもできる。
【0092】さらに、これらの炭素を含むガスを、アル
ゴン(Ar)などの電離電圧の低い不活性ガスで希釈し
て使用することもできる。その場合、ガイドブッシュの
円筒内のプラズマが更に安定する効果がある。あるいは
また、硬質カーボン膜の生成時に少量(1%以下)の添
加物を加えることにより、潤滑性や硬度を高めることが
できる。例えば、フッ素(F)又はボロン(B)を添加
すると潤滑性が増し、クロム(Cr),モリブデン(M
o)又はタングステン(W)を添加すると硬度が増す。
【0093】また、真空槽内にガイドブッシュを配置し
た後、硬質カーボン膜を形成する前に、アルゴン(A
r)や窒素(N2)などのプラズマを発生させてガイド
ブッシュの円筒内面をボンバードし、その後メタンやベ
ンゼンなどの炭素を含むガスによるプラズマを発生させ
て、硬質カーボン膜を形成するとよい。このように、不
活性ガスによるボンバードの前処理を行なうことによ
り、ガイドブッシュの円筒内壁の温度が上昇して活性状
態となる。同時に円筒内壁の表面の不純物が叩き出さ
れ、表面がクリーニングされる。これらの効果により、
ガイドブッシュの内周面に形成される硬質カーボン膜の
密着性が一層向上する。
【0094】
【発明の効果】以上説明してきたように、この発明によ
る硬質カーボン膜の形成方法によれば、ガイドブッシュ
中心開口内に補助電極を挿入し、さらにその開口端面に
リング状で開口径が増加する形状のダミー部材を載置し
て、プラズマCVDプロセスによる硬質カーボン膜の形
成を行なうため、ガイドブッシュの中心開口内に充分な
プラズマを発生させ、異常放電であるホロー放電が発生
することがなく、その内周面に良質の硬質カーボン膜を
密着性よく均一の膜厚で形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明によるガイドブッシュの内周面に硬質
カーボン膜を形成する方法の第1実施例に使用する装置
の概略断面図である。
【図2】図1に示したダミー部材の斜視図である。
【図3】この発明によるガイドブッシュの内周面に硬質
カーボン膜を形成する方法の第2実施例に使用する装置
の概略断面図である。
【図4】同じく第3実施例に使用する装置の概略断面図
である。
【図5】同じく第4実施例に使用する装置の概略断面図
である。
【図6】同じく第5実施例に使用する装置の概略断面図
である。
【図7】同じく第6実施例に使用する装置の概略断面図
である。
【図8】補助電極に印加する直流正電圧と形成される硬
質カーボン膜の膜厚との関係を示す線図である。
【図9】この発明の各実施例で使用するダミー部材を補
助電極を挿入したガイドブッシュの端面上に配置した状
態を示す要部の拡大縦断面図である。
【図10】同じく内周面の形状が異なるダミー部材を示
す図9と同様な拡大縦断面図である。
【図11】同じく内周面の形状が異なるダミー部材を示
す図9と同様な拡大縦断面図である。
【図12】同じく内周面の形状が異なるダミー部材を示
す図9と同様な拡大縦断面図である。
【図13】同じく内周面の形状が異なるダミー部材を示
す図9と同様な拡大縦断面図である。
【図14】同じく最小開口径がガイドブッシュの内周面
の開口径より若干大きいダミー部材を示す図9と同様な
拡大縦断面図である。
【図15】同じく最小開口径がガイドブッシュの内周面
の開口径より若干大きいダミー部材の他の例を示す図9
と同様な拡大縦断面図である。
【図16】この発明の方法によって内周面に硬質カーボ
ン膜を形成したガイドブッシュの一例を示す縦断面図で
ある。
【図17】同じくその外観を示す斜視図である。
【図18】固定型のガイドブッシュ装置を設けた自動旋
盤の主軸近傍のみを示す断面図である。
【図19】回転型のガイドブッシュ装置を設けた自動旋
盤の主軸近傍のみを示す断面図である。
【符号の説明】
11:ガイドブッシュ 11a:外周テーパ面 11b:内周面 11c:すり割 11d:バネ部 11e:嵌合部 11f:ネジ部 11g:段差部 11h:端面 11j:中心開口 53:ダミー部材 53a:小径部 53b:大径部 53c:テーパ部 53d:中径部 61:真空槽 63:ガス導入孔 65:排気孔 67:マッチング回路 69:高周波電源 71:補助電極 73,73′:直流電源 75:アノード電源 77:フィラメント電源 79:アノード 81:フィラメント
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 戸井田 孝志 埼玉県所沢市大字下富字武野840番地 シ チズン時計株式会社所沢事業所内 (72)発明者 関根 敏一 東京都田無市本町6丁目1番12号 シチズ ン時計株式会社田無製造所内

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 軸方向に中心開口を有する略円筒状に形
    成され、一端部に外周テーパ面と被加工物と摺接する内
    周面と摺り割りとを有し、自動旋盤に装着されたとき、
    前記中心開口に挿入された被加工物を切削工具の近くで
    回転及び軸方向に摺動可能に保持するガイドブッシュの
    内周面に硬質カーボン膜を形成する方法であって、 前記ガイドブッシュを、ガス導入口及び排気口を備えた
    真空槽内に配置し、 そのガイドブッシュの前記内周面を形成する中心開口内
    に補助電極を挿入して、それを接地電位にし、 該ガイドブッシュの前記中心開口の径と同等以上で且つ
    その両端部で異なる開口径を有する導電材料からなるリ
    ング状のダミー部材を、該ガイドブッシュの前記内周面
    が開口する端面上に前記開口径が小さい方の端部を当接
    させて前記中心開口と中心を一致させるように配置し、 前記真空槽内を排気した後、前記ガス導入口から炭素を
    含むガスを該真空槽内に導入し、 前記真空槽内にプラズマを発生させて、プラズマCVD
    プロセスにより前記ガイドブッシュの内周面に硬質カー
    ボン膜を形成する方法。
  2. 【請求項2】 軸方向に中心開口を有する略円筒状に形
    成され、一端部に外周テーパ面と被加工物と摺接する内
    周面と摺り割りとを有し、自動旋盤に装着されたとき、
    前記中心開口に挿入された被加工物を切削工具の近くで
    回転及び軸方向に摺動可能に保持するガイドブッシュの
    内周面に硬質カーボン膜を形成する方法であって、 前記ガイドブッシュを、ガス導入口及び排気口を備えた
    真空槽内に配置し、 そのガイドブッシュの前記内周面を形成する中心開口内
    に補助電極を挿入して、それに直流正電圧を印加し、 該ガイドブッシュの前記中心開口の径と同等以上で且そ
    の両端部で異なる開口径を有する導電材料からなるリン
    グ状のダミー部材を、該ガイドブッシュの前記内周面が
    開口する端面上に前記開口径が小さい方の端部を当接さ
    せて前記中心開口と中心を一致させるように配置し、 前記真空槽内を排気した後、前記ガス導入口から炭素を
    含むガスを該真空槽内に導入し、 前記真空槽内にプラズマを発生させて、プラズマCVD
    プロセスにより前記ガイドブッシュの内周面に硬質カー
    ボン膜を形成する。
  3. 【請求項3】 請求項1又は2記載のガイドブッシュの
    内周面に硬質カーボン膜を形成する方法において、 前記真空層として、内部にアノードとフィラメントを備
    えたものを使用し、前記ガイドブッシュに直流電圧を印
    加するとともに、前記アノードに直流電圧を、前記フィ
    ラメントに交流電圧をそれぞれ印加して、前記真空槽内
    にプラズマを発生させることを特徴とするガイドブッシ
    ュの内周面に硬質カーボン膜を形成する方法。
  4. 【請求項4】 請求項1又は2記載のガイドブッシュの
    内周面に硬質カーボン膜を形成する方法において、 前記ガイドブッシュに高周波電力を印加して、前記真空
    槽内にプラズマを発生させることを特徴とするガイドブ
    ッシュの内周面に硬質カーボン膜を形成する方法。
  5. 【請求項5】 請求項1又は2記載のガイドブッシュの
    内周面に硬質カーボン膜を形成する方法において、 前記ガイドブッシュに直流電圧を印加して、前記真空槽
    内にプラズマを発生させることを特徴とするガイドブッ
    シュの内周面に硬質カーボン膜を形成する方法。
  6. 【請求項6】 請求項1乃至5のいずれか一項に記載の
    ガイドブッシュの内周面に硬質カーボン膜を形成する方
    法において、 前記ダミー部材として、その内周面が、開口径が小さい
    方の端部と大きい方の端部との間でその開口径が段階的
    に変化する階段状円筒面になっているダミー部材を使用
    することを特徴とするガイドブッシュの内周面に硬質カ
    ーボン膜を形成する方法。
  7. 【請求項7】 請求項1乃至5のいずれか一項に記載の
    ガイドブッシュの内周面に硬質カーボン膜を形成する方
    法において、 前記ダミー部材として、その内周面が、開口径が小さい
    方の端部と大きい方の端部との間でその開口径が無段階
    的に変化するテーパ面になっているダミー部材を使用す
    ることを特徴とするガイドブッシュの内周面に硬質カー
    ボン膜を形成する方法。
  8. 【請求項8】 請求項1乃至5のいずれか一項に記載の
    ガイドブッシュの内周面に硬質カーボン膜を形成する方
    法において、 前記ダミー部材として、その内周面が、開口径が小さい
    方の端部と大きい方の端部との間で、その開口径が無段
    階的に変化するテーパ面の部分とその開口径が変化しな
    い円筒面の部分とからなっているダミー部材を使用する
    ことを特徴とするガイドブッシュの内周面に硬質カーボ
    ン膜を形成する方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2000226658A (ja) * 1999-02-02 2000-08-15 Mitsubishi Chemicals Corp Cvd装置および磁気記録媒体の製造方法
JP2008214759A (ja) * 2001-08-21 2008-09-18 Toshiba Corp 炭素膜被覆部材の製造方法

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