JP3040282B2 - 食品用保存剤 - Google Patents
食品用保存剤Info
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Description
ものである。
る貯蔵・保存は、人間の歴史とともに常に解決を求めら
れる課題としてあり、そのための対策として、あらゆる
物理的あるいは化学的方法が考案されてきた。例えば、
冷凍、冷蔵、乾燥、塩蔵、糖蔵、加熱減菌、加熱殺菌
(壜、缶詰)、包装加熱、包装内部の気相置換、などの
ほかに酢漬け、乳酸醗酵、さらには安息香酸やソルビン
酸などの化学的保存料の使用などがそれらの対応策とし
て採られてきた。
続けられたものとはいえ、食品自体に対する要求は、時
代の流れに伴い変化する。安全性はいつの時代において
も第一に要求されるが、近年特に、健康と食物に対する
関心が深まり、それと共に、天然または自然に近い食品
に対する関心が高まってきている。
品の保存方法にも著しい影響を与えている。安全性指向
からは食品にできるだけ合成保存料の添加を減らし、天
然指向からは冷凍や冷蔵、乾燥や塩蔵などもあまり好ま
れず、グルメ指向からはできるだけ新鮮なものが求めら
れ、健康指向からはできるだけ食塩濃度を減らしたいと
いう様々な要求に対して、種々の方法の開発が行われて
きている。
の国境が無くなってきていることであり、世界中のあら
ゆる所から食品素材あるいは食品そのものが輸入されて
来ていることである。このことは食品とともに、食品に
付着ないし汚染している各種の微生物が広く食品市場に
入ってきていることを意味し、多くの新しい食中毒菌例
えば、Listeria monocytogenesや、幾つかのサルモネラ
菌、従来あまり日本では検出されなかったボツリヌスA
あるいはB型菌などによる食中毒の危険性が指摘される
に到っている。
増加で、例えば、サラダ類、サンドイッチ類、玉子焼
き、カスタ−ドクリ−ム、チキンナゲット、チキンバス
ケット、フライ類など、さらにそれらを組み合わせた、
いわゆるおかずの類が、それなりに一定期間の微生物に
対する安定性の保証を求められながら市販されるに至っ
ていることである。
性食品において食塩濃度を低下させることが行われてお
り、たとえば、イカの塩辛の食塩濃度は10数%あった
ものが、4〜5%に低下され、漬物では12〜3%のも
のが4〜6%に、肉製品では2.5〜3%のものが1〜
2%に、味噌では13%程度のものが4〜8%に、魚介
類の干物では2〜3%のものが0.6〜1%に低下して
きている。このことは食品類の微生物に対する安定性が
著しく低下することになり、単に腐敗し易いのみなら
ず、各種の食中毒菌に対する安全性も低下することにな
ってきている。
先ず第一に食品類を製造する環境を清潔にし、生産と食
品の包装工程において微生物の汚染をできるだけ少なく
する、微生物の汚染度の出来るだけ少ない食品材料を使
用する、製造工程から包装工程を出来るだけ低温に管理
する、製品は低温に保存するなどの基本的な対策を行う
のが通例である。しかしながら、食品原材料中の微生物
の数を、完全にゼロにすることは極めて困難であり、通
常生の肉や魚介類であれば、最低でも、103/g程度の微
生物が存在するし、また製造工程中に60〜80℃程度
の加熱殺菌工程があっても、耐熱性の細菌芽胞が残留す
ることは避けられない。
類のなかには低温でよく発育するものがある。食中毒細
菌のなかにも低温で発育するものがあり、Yersinia ent
erocolitica 、Listeria monocytogenes、Clostridium
botulinum E 型菌などは、5℃位の低温に保存しても次
第に発育し、食中毒を起こすに足る菌量や毒素の産生を
行うに到る。もちろん通常の低温細菌は、時間の経過と
ともに発育し食品を腐敗させる。食品の保存と微生物的
な安全性の確保は、単に食品の製造者や流通業者の問題
だけではなく、消費者の手元に移った後も温度と時間の
経過によって左右される。
生産、流通過程において微生物的な管理を十分実施する
としても、なお食品それ自体に微生物に対する安定性な
いしは抵抗性を持たせることが必要である。そのために
所謂化学的保存料の利用がある。しかし合成保存料の安
息香酸、ソルビン酸、プロピオン酸、パラベン類などの
使用は、安全性に対する疑問を持つ消費者もあるため、
天然に存在する酢酸や乳酸などの有機酸またはその塩類
の利用、グリシンなどのアミノ酸の利用、魚の白子のタ
ンパク質であるプロタミンの利用などが図られている。
しかし、これらの天然系の物質は、安全性の利点はある
ものの、食品保存の効果上からは,例えば抗菌スペクト
ルが狭い、大量に使用しなければならない、色や特有の
匂いがつくなどの問題点があった。
と微生物に対する安全性の向上を図ることのできる物質
の探索が、鋭意実施されてきており、例えば、乳酸菌の
生産するペプチドまたはタンパク質で、抗菌性を有しな
がら、しかも人間の消化酵素で分解消化されるバクテリ
オシンの利用が検討されている(例えば、Food Technol
ogy 164〜167, Jan. 1989) 。しかし、バクテリオシン
は、一般的に抗菌スペクトルの範囲が狭く、それ単独で
広い範囲の食品を保存することは困難であった。
でも比較的抗菌スペクトルの広いペデイオシンを選び、
これと相乗的に作用する物質を併用することにより、広
範な食品の保存性を高めることができ、さらに安全性の
高い、しかも食品の品質を損うことのない食品用保存剤
を提供することを目的とする。
カス(Pediococcus) 属細菌によって生産されたバクテリ
オシンと、ポリリジン、ペクチン若しくはペクチン分解
物、キトサン、唐辛子抽出物、ワサビ抽出物、ホップ抽
出物およびアルコールからなる群より選ばれた少なくと
も1種の化合物を含有する食品用保存剤を提供するもの
である。本発明は、また、ペデイオコッカス属細菌によ
って生産されたバクテリオシンと、酢酸ナトリウム、乳
酸、グリセリン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、
グリシン、アラニン、およびプロタミンからなる群から
選ばれた少なくとも2種の化合物を含有する食品用保存
剤を提供するものである。
乳酸菌の一種であるペデイオコッカス(Pediococcus)属
菌の生産するバクテリオシンであり、一般にペデイオシ
ン(Pediocin) と称されるものである。これらのペデイ
オシンとしては、例えば、Pediococcus acidilactici H
の生産するペデイオシンAcH 、Pediococcus acidilacti
ci PAC1.0 の生産するペデイオシンPA1 およびPediococ
cus pentosaceous FBB61の生産するペデイオシンA を挙
げることができる。
を有するタンパク質もしくはペプチドであり、多くの醗
酵乳製品のなかから高い比率(28%)で分離され、普
通の乳製品の中には常在しているものと推定されるとと
もに、人間の消化管からも生産菌が分離されている。ま
た、ペデイオシンは、いずれも人間の消化酵素のペプシ
ン、トリプシン、キモトリプシンなどによって、完全に
分解消化される。また、熱に対する安定性が高く、いず
れも100℃で20分以上の加熱によっても活性を失わ
ない。さらに、基本的にはグラム陽性細菌類、特に乳酸
菌に対して抗菌作用を示すと共に、ブドウ球菌、枯草
菌、クロストリジウム菌、リステリア菌に対しても抗菌
性を示す。
用する物質として、まず、ポリリジンが挙げられる。ポ
リリジンは細菌の細胞壁構造体に損傷を与えるので著し
いタンパク質の合成阻害が起こるとされており、ペデイ
オシンの細菌細胞内部への侵入を高めるものと推定され
る。ポリリジンはペデイオシンに対し0.05〜250
の割合(重量比)で含有させることが好ましい。
用する物質として、ペクチン若しくはペクチン分解物、
キトサンがある。これらの物質を併用することによる微
生物に対する阻害作用の理由についてはまだ明確でない
部分が多いが、実際の食品中においては、明らかに相乗
的な作用の現れることが多く、従って有用に組み合わせ
て使用することができる。これらの物質はペデイオシン
に対し0.1〜500の割合(重量比)で含有させるこ
とが好ましい。
用する物質としては、また、唐辛子抽出物、ワサビ抽出
物、ホップ抽出物がある。これらの物質の作用は、フェ
ノール性の成分による微生物の細胞膜に対する損傷が多
く、従ってペデイオシンの微生物細胞への侵入を助ける
ものと推定される。これらの物質はペデイオシンに対し
0.05〜250の割合(重量比)で含有させることが
好ましい。
リコールとエチルアルコールを挙げることができる。こ
れらのアルコールが、微生物細胞の膜組織の損傷によっ
て微生物を阻害または、死滅させるのはよく知られたと
ころであるが、本発明のように、ペデイオシンと組み合
わせ使用するとき、著しい作用の増大を招く。これはや
はり、微生物菌体内部へのペデイオシンの侵入を助ける
ことがその理由であろうと推定される。アルコールはペ
デイオシンに対し0.05〜250の割合(重量比)で
含有させることが好ましい。
ばれた少なくとも1種をペデイオシンと併用する。併用
は一つでもよいが、対象となる食品の種類、組成、予想
される汚染ないし変敗原因微生物、pH、水分活性、要
求される保存温度、保存期間などに応じて、適宜二つな
いし三つ、時にはそれ以上の化合物を組み合わせて使用
することができる。
酸ナトリウム、乳酸、グリセリン脂肪酸エステル、蔗糖
脂肪酸エステル、グリシン、アラニン、およびプロタミ
ンからなる群から選ばれた少なくとも2種の化合物を含
有する食品用保存剤である。酢酸ナトリウムまたは乳酸
をともに含有させることにより、ペデイオシンの抗菌作
用の強くないグラム陰性の細菌類や、真菌類に対して抗
菌効果を補うばかりでなく、ペデイオシン自体の作用を
強め、同じ微生物に対するペデイオシンの抗菌作用を数
倍に高めることができる。また、ペデイオシンの作用が
明瞭でなかったグラム陽性細菌の一部の株に対して、そ
の作用が明瞭に現れるようになる。この理由は明らかで
ないが、特に乳酸はタンパク質類の安定性を高める作用
が強いので、食品中でペデイオシンの分解や不活性化を
防ぐのであろう。酢酸ナトリウム、乳酸はペデイオシン
に対し0.1〜500の割合(重量比)で配合すること
が好ましい。
合物として、グリセリン脂肪酸エステルおよび蔗糖脂肪
酸エステルが挙げられる。これらのエステルを構成する
脂肪酸としては、例えばカプリル酸、カプリン酸、ラウ
リン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸お
よびオレイン酸を挙げることができる。なかでも、グリ
セリン脂肪酸エステルとしては、カプリル酸、カプリン
酸およびラウリン酸のモノエステルが好ましく、蔗糖脂
肪酸エステルとしては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パ
ルミチン酸およびステアリン酸のモノエステルが好まし
い。
と併用すると、ペデイオシンの微生物菌体への浸透性が
高められると推定され、その結果、最小発育阻止濃度が
低くてすむことになるものと思われる。本発明におい
て、これらの脂肪酸エステルはペデイオシンに対し、
0.05〜250の割合で含有させることが好ましい。
ニンをペデイオシンとともに使用する。これらのアミノ
酸は細菌類の細胞壁の合成阻害を起こすので、ペデイオ
シンの細菌菌体内部への浸透が促進され、その抗菌作用
が大幅に増強されるものと推定される。アミノ酸はペデ
イオシンに対し0.1〜500の割合(重量比)で含有
させることが効果的である。
して、プロタミンが挙げられる。プロタミンは細菌細胞
の細胞膜と結合して細胞内容物を漏出させ、ペデイオシ
ンの細菌細胞内部への侵入を高めるものと推定される。
プロタミンはペデイオシンに対し0.05〜250の割
合(重量比)で含有させることが好ましい。
ム、乳酸、グリセリン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エス
テル、グリシン、アラニン、およびプロタミンからなる
群から選ばれた少なくとも2種の化合物をペデイオシン
と併用する。この場合も、必ずしも2種だけではなく、
上記同様、種々の場合に応じて、適宜三つ、時にはそれ
以上の化合物を組み合わせて使用することができる。
ムおよび/または乳酸と、グリシンおよび/またはアラ
ニンを併用するとよいことが多い。前記、プロタミンを
さらに併用してもよい。
とプロタミンを組み合わせ使用するときには、この他に
酢酸もしくは乳酸またはそれらの塩類、さらにはグリシ
ンを配合すると、多くの肉製品、例えばソーセージ、ハ
ムまたは蒲鉾類の保存期間を延長することができるとと
もに、微生物的な安定性を向上させることができる。
ては、食品中の食塩濃度と効果の関係に注意することが
必要であり、食塩濃度が比較的高いと効果が大きい。こ
のような場合、ペデイオシンと、特に数%以下(食品
中)のアルコールを組み合わせると、絶大な保存効果を
得ることができる。このような時に、さらにポリリジン
の併用によりさらに効果を高めることができる。
に対して不安定であるが、一般に熱に対して極めて安定
なタンパク質であり、120℃、20分の加熱に耐え
る。従って、食品を加熱することによって生存している
菌数を減らし、さらに本発明のペデイオシンを含有する
保存剤を使用することによって、効果的に保存性を高め
ることが出来る。
る。なお、下記実施例に用いたペデイオシンの製法は以
下のとおりである。すなわち、1リットルの三角フラス
コを3個用意し、それぞれに、5%コーンシロップおよ
び0.5%酵母エキスからなる培地500mlを入れ、
98℃、30分間加熱殺菌し、前記3種のPediococcus
属菌をそれぞれ接種して、37℃、約20時間培養し
た。この培養液を80℃、10分間加熱した後、濃縮、
噴霧乾燥して、3種のペデイオシン(ペデイオシン Ac
H、ペデイオシンAおよびペデイオシン PA1)を得た。
次のものを用いた。グリセリン脂肪酸エステル:理研ビ
タミン(株)製、M−100蔗糖脂肪酸エステル:三菱化
成食品(株)製、S−1570ペクチン分解物、キトサン、
唐辛子抽出物、ワサビ抽出物およびホップ抽出物:アサ
マ化成(株)製
g、水50gを配合したハンバ−グの基本組成に対し、
表1左欄に示す各種の保存剤成分を表1に示す割合にな
るように添加し、塩酸またはカ性ソ−ダでpHを5.8
に調整した後、30gづつ成型して、25分間蒸し上げ
し、冷却した。これを一試験区あたり5個づつ用意し、
25℃に保存して、外観と臭いのチェックによる保存試
験を行った。試験結果を表1右欄に保存日数として5個
の平均値で示す。
試験前、色、味、臭い、形態等については対照区と全く
差が認められず、添加による品質上の悪影響は認められ
なかった。
下で脱塩し、表2の処方の調味液に3日間冷蔵庫中で調
味漬けした。次に、表2の調味液に、表3左欄の保存剤
を4倍の濃度で添加し、このもの100mlに対して調
味漬けしたタクアン300gを加えて袋詰めした(保存
剤の濃度は表3記載の濃度となる)。同様の方法で各種
の試験群を調整し、20℃に保存して、タクアン液部の
濁り、袋の膨れなどの観察により保存日数を調べた。そ
の結果を表3右欄に示す。
g、みりん50g、グルタミン酸ソ−ダ25g、砂糖2
5g、馬鈴薯澱粉175g、および氷水1kgを配合し
た基本組成に、表4左欄に組成を示す保存剤を、基本組
成に対する添加剤の各成分の割合が、表4に示す割合
(重量%)となるように、各種添加剤を添加し、30分
らいかい後、塩化ビニリデンフィルム(折径50mm)
に約100gづつ充填し、90℃の熱水中で30分加熱
して得た蒲鉾を、同様にして得た保存剤無添加の蒲鉾と
ともに保存試験標本とした。保存試験は、ケ−シング蒲
鉾を一試験区当たり5本づつ15℃の恒温器で保存し、
保存性を肉眼で観察し、防腐効果を判定した。結果を表
4右欄に示す。
安全性の高い、しかも食品の品質を損うことのない食品
用保存剤を提供することができる。
Claims (2)
- 【請求項1】 乳酸菌ペデイオコッカス(Pediococcus)
属細菌によって生産されたバクテリオシンと、ポリリジ
ン、ペクチン若しくはペクチン分解物、キトサン、唐辛
子抽出物、ワサビ抽出物、ホップ抽出物およびアルコー
ルからなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物を含
有する食品用保存剤。 - 【請求項2】 乳酸菌ペデイオコッカス(Pediococcus)
属細菌によって生産されたバクテリオシンと、酢酸ナト
リウム、乳酸、グリセリン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸
エステル、グリシン、アラニン、およびプロタミンから
なる群から選ばれた少なくとも2種の化合物を含有する
食品用保存剤。
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