JP3039714B2 - 電磁式燃料噴射弁 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、内燃機関の燃料供給装
置として使用される電磁式燃料噴射弁に関する。

【０００２】

【従来の技術】一般に、内燃機関に用いられる電磁式燃
料噴射弁は、磁性体からなるハウジング内に固定鉄心、
電磁コイルおよび可動鉄心を有し、固定鉄心に巻装され
た電磁コイルに励磁電流を流すことにより、可動鉄心お
よび弁部材を連動させ所定の圧力状態に設定された燃料
を噴射するように構成される。このため、ハウジング
は、固定鉄心、電磁コイルおよび可動鉄心を収納する機
能、および磁気回路要素の一部を形成する機能が必要と
され、比較的複雑な形状に形成される。

【０００３】従来より、このような電磁式燃料噴射弁と
しては、特開平３−３１５７０号公報に開示されるよう
に、固定鉄心、電磁コイルおよび可動鉄心を収納するハ
ウジングを板材からプレス加工等により比較的簡単に製
造可能にするように、ハウジングの肉厚をほぼ全長にわ
たり均一にしたものが知られている。例えば図１２に示
すこの種の従来の燃料噴射弁１は、ハウジング２の内部
の軸方向に固定鉄心３および可動鉄心４が配置され、固
定鉄心３の外周に電磁コイル５が巻装される。ハウジン
グ２は、上端部２ａから下端部２ｂまでほぼ均一な肉厚
に形成され、可動鉄心４の外周面４ａに摺動可能な位置
に磁気回路を形成するための小径部６が大径部７の中間
に設けられている。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このよ
うな従来の電磁式燃料噴射弁によると、小径部６が円環
状の凹部に形成されるため、この部分の剛性が低下する
ことから、ハウジング２に軸方向の圧縮や曲げによる外
力が作用する場合、上下の大径部７と小径部６との間に
形成される角部６ａに応力が集中しやすいので、角部６
ａを起点にしてハウジング２が変形しやすい。このた
め、燃料噴射弁の弁部材２７の移動量が変化したりして
噴射量特性が変化するという問題がある。

【０００５】本発明は、このような問題点を解決するた
めになされたもので、噴射量特性が変化しにくく高剛性
で製作容易かつ小型軽量化可能な電磁式燃料噴射弁を提
供することを目的とする。

【０００６】

【課題を解決するための手段】前記課題を解決するため
の本発明による電磁式燃料噴射弁は、前記弁部材を軸方
向に摺動可能な案内孔と前記弁部材の当接可能な弁座部
と噴射孔とを有する弁本体と、前記弁部材を軸方向に移
動させ、前記噴射孔を開閉可能な電磁アクチュエータの
可動部材と、少なくとも前記弁部材、前記弁本体、およ
び前記可動部材を収容するほぼ均一な肉厚のハウジング
と、このハウジングの軸方向中間外周部に周方向に部分
的に形成される凹部であって、前記弁部材または前記可
動部材を摺動可能に案内する内壁を有する凹部とを備え
たことを特徴とする。

【０００７】

【作用】本発明の電磁式燃料噴射弁によると、軸方向の
圧縮や曲げ等の外力が作用する場合、ハウジングの周方
向に全周でなく部分的に凹部が形成されるから、ハウジ
ングに局部的に過度に応力集中しないため、ハウジング
の凹部付近での大変形の発生が防止される。このため、
凹部の内壁で摺動可能に弁部材または可動部材が精密に
案内されるから、弁部材の適正な移動によって適正な噴
射量特性が確保される。

【０００８】

【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明
する。本発明の第１実施例による電磁式燃料噴射弁を図
１〜図５に示す。図１に示すように、燃料噴射弁２０
は、ほぼ均一な肉厚をもつハウジング２６内に軸方向に
固定鉄心２１、可動鉄心２５、弁部材２７および弁本体
２９が収納される。軸方向に摺動可能な可動鉄心２５お
よび弁部材２７は、固定鉄心２１内に収容された圧縮コ
イルスプリング２８により閉弁方向に付勢される。弁部
材２７の先端に形成されるシート部２７ａが弁本体２９
の弁座３０に着座するようになっている。

【０００９】固定鉄心２１の外周には、電磁コイル３３
が設けられる。電磁コイル３３は、固定鉄心２１の外周
面に固定されたスプール３２に巻装され、スプール３２
とともに合成樹脂からなるカバー３６内に収納される。
電磁コイル３３に電気的に接続されるターミナル３４
は、合成樹脂からなるコネクタ３５およびスプール３２
の延長部３２ａに埋設される。そして、図示しない電子
制御装置からワイヤーハーネスを介してターミナル３４
に噴射制御用の電気信号が送信されると、電磁コイル３
３に励磁電流が流れ、固定鉄心２１に発生する吸引力に
より、可動鉄心２５および弁部材２７が圧縮コイルスプ
リング２８の付勢力に抗して開弁方向に移動するように
なっている。

【００１０】燃料タンクからオイルポンプ等により圧送
される燃料は、固定鉄心２１に一体的に形成されるコネ
クタ管２３から燃料噴射弁２０内に導入される。コネク
タ管２３は、固定鉄心２１の可動鉄心２５と反対側の端
部に設けられ、コネクタ管２３内に燃料中の異物等を取
除くフィルタ２４が固定される。固定鉄心２１には、軸
方向に貫通孔２１ａが形成される。貫通孔２１ａにはコ
ネクタ管２３内の燃料を可動鉄心２５側に導く案内管４
３が挿入される。案内管４３は、案内管４３のコネクタ
管２３と反対側の端部で圧縮コイルスプリング２８を支
持する。このため、貫通孔２１ａ内に案内管４３を固定
する位置を軸方向に変化させることで圧縮コイルスプリ
ング２８の付勢力が調節される。

【００１１】弁部材２７のシート部２７ａと反対側の端
部に圧入固定される可動鉄心２５は、固定鉄心２１の磁
極面２１ｂと可動鉄心２５の端面２５ｂとの間にエアギ
ャップを有し、端面２５ｂから軸方向に貫通孔２５ａが
形成される。これにより、案内管４３を通過する燃料
は、可動鉄心２５の貫通孔２５ａを通り、ハウジング２
６と可動鉄心２５との間に形成される中空部４４に流入
される。

【００１２】弁部材２７の外周面２７ｄと弁本体２９の
内周面２９ｄとの間には中空部４４の燃料が通過可能な
隙間を有する。弁部材２７の外周面には、弁本体２９の
内周面２９ｄに摺動する案内部４５および４６が軸方向
に所定の間隔をおいて形成され、案内部４５および４６
の軸方向に溝４５ａおよび４６ａが形成される。中空部
４４に導かれた燃料は、弁本体２９と弁部材２７との間
の隙間および溝４５ａおよび４６ａを通り噴射孔３１に
至る。

【００１３】弁本体２９の噴射孔３１と反対側の端面２
９ｂに当接するようにハウジング２６内に固定されるス
トッパ４０は、弁部材２７が開弁方向に移動するときに
弁部材２７の外周に形成されるリング３９を係止し、弁
部材２７の移動量を規制するものである。ここで、固定
鉄心２１とカバー３６との間には、Ｏリング３７が設け
られ、カバー３６とハウジング２６との間には、Ｏリン
グ３７の同心円上にＯリング３８が設けられる。このＯ
リング３７およびＯリング３８は、燃料噴射弁２０内に
導入された燃料が外部に流出するのを防止する。

【００１４】そして、図２に示すように、ハウジング２
６の外周面２６ａには、周方向に１２０°間隔毎に合計
３個の凹部４８が形成され、隣合う各凹部４８の間にそ
れぞれ凸部４９が形成される。凹部４８および凸部４９
の肉厚は、ハウジング２６の凹部４８および凸部４９以
外の部分と同程度に保たれ、例えば、１〜１．５ｍｍ程
度に設定される。凹部４８は可動鉄心２５と径方向で対
向しており、電磁コイル３３に通電すると凹部４８と可
動子２５との間に磁束が流れる。凹部４８の底面４８ａ
の裏側に位置するハウジング２６の内周面は、可動鉄心
２５の外周面と摺動可能な断面円弧状の曲面に形成され
る。また、凸部４９の頂面４９ａは、ハウジング２６の
外周面に連なっている。ハウジング２６に凹部４８を形
成するときに凹部４８の電磁コイル３３側に半径方向に
形成される図１に示す側壁４８ｂは、電磁コイル３３の
軸方向の移動量を規制する係止部となり、凹部４８のス
トッパ４０側に半径方向に形成される側壁４８ｃは、ス
トッパ４０および弁本体２９の軸方向の移動量を規制す
る係止部となる。また、凹部４８の底面４８ａは、弁本
体２９および弁部材２７をハウジング２６にカシメ等に
より一体に取り付けるときの加工基準となる。凹部４８
および凸部４９を形成するときに軸方向に形成される側
壁５０は、ハウジング２６のリブとして作用する。この
ため、ハウジング２６は、凹部４８および凸部４９によ
りハウジング２６の剛性が低下することなく、軸方向の
圧縮や曲げによる外力によって変形しにくくなってい
る。

【００１５】次に、ハウジング２６の製造方法を図３に
基づき説明する。まず、１３Ｃｒ電磁ステンレス等の強
磁性材料からなる図３（Ａ）に示す板材５１にプレスに
よる連続絞り加工を行ない、図３（Ｂ）に示す中間体５
２を形成する。次いで、中間体５２を切断およびバーリ
ングによりパイプ状に加工し、図３（Ｃ）に示す中間体
５３を形成する。そして、中間体５３の外周面の所定の
位置をローラによりネッキングし、凹部４８および凸部
４９を形成し、ハウジング２６を完成させる。

【００１６】この場合、図４および図５に示すように、
まず１３Ｃｒ電磁ステンレス等の強磁性材料からなる図
４（Ａ）に示す板材５５に第１の絞り加工を行ない、図
４（Ｂ）に示す中間体５６を形成し、次いで、第２の絞
り加工を行ない図４（Ｃ）に示す中間体５７を形成す
る。このとき、中間体５７の外周面には、所定位置に凹
部５７ａおよび凸部５７ｂが形成される。次いで、中間
体５７を切断し、バーリングおよびトリミングを行な
い、パイプ状の図４（Ｄ）に示す中間体５８を形成した
後、中間体５８に第１のフォーミングを行ない図５
（Ｅ）に示す中間体５９を形成し、さらに、中間体５９
に第２のフォーミングを行ない、図５（Ｆ）に示すよう
に凹部４８および凸部４９を形成し、ハウジング２６を
完成させる。

【００１７】燃料噴射開始時、電磁コイル３３に通電す
ると、ハウジング２６を含む電磁コイル３３の周囲に磁
気回路が形成され、極性を帯びた固定鉄心２１に可動鉄
心２５および弁部材２７が吸引される。すると、弁部材
２７のシート部２７ａが弁本体２９の弁座３０から離間
し噴射孔３１を開く。燃料噴射終了時、電磁コイル３３
の通電を停止すると、可動鉄心２５および弁部材２７が
圧縮コイルスプリング２８の付勢力によって閉弁方向に
移動し、弁部材２７のシート部２７ａを弁本体２９の弁
座３０に着座させることにより噴射孔３１を閉じる。燃
料噴射時および燃料噴射停止時、可動鉄心２５および弁
部材２７が軸方向に移動する場合、ハウジング２６の凹
部４８の裏側の内周面は、可動鉄心２５が摺接し、正確
に可動鉄心２５を軸方向に案内する。

【００１８】なお、ハウジング２６は、図３により説明
した製造方法のほか、プレスによる段付き絞りの連続加
工によっても製作することができる。本発明の第２実施
例による燃料噴射弁を図６および図７に示す。第２実施
例による燃料噴射弁６０は、サイドフィードタイプの燃
料噴射弁に本発明を適用したものである。この場合、ハ
ウジング２６の外周に燃料フィルタ１２４が固定され、
ハウジング２６の外周面に形成される凸部４９の頂面４
９ａにフィードホール６１が形成される。このため、燃
料噴射弁６０は、凹部４８および凸部４９によりハウジ
ング２６の剛性を低下させることなく、ハウジング２６
の外部から流入する燃料の通路を比較的広く形成すると
ともに、電磁コイル３３および可動鉄心２５をコンパク
トにハウジング２６内に収納することができる。

【００１９】さらに第２実施例の変形例としては、ハウ
ジング２６のリブとして作用する側壁５０にフィードホ
ールを形成してもよい。この場合、ハウジング２６内に
流入する燃料の通路を比較的広く保持しつつ、燃料フィ
ルタ１２４とハウジング２６の接触面を充分に確保する
ことができる。本発明の第３実施例による燃料噴射弁を
図８および図９に示す。

【００２０】第３実施例による燃料噴射弁７０は、ハウ
ジング２６の外周面２６ａの軸周囲に９０°間隔に４個
の凹部４８および凸部４９を形成したものである。この
場合、ハウジング２６のリブとして作用する側壁５０の
数が第１実施例よりも多いため、ハウジング２６の剛性
をさらに高めることができる。また、第３実施例の変形
例としては、凹部４８および凸部４９の数を５個以上に
してもよいし、隣合う凹部４８同志または凸部４９同志
の間隔を等間隔以外の所定角度に設定してもよい。

【００２１】本発明の第４実施例による燃料噴射弁を図
１０および図１１に示す。第４実施例による燃料噴射弁
８０は、ハウジング２６の上側の大径部２６ｃと下側の
大径部２６ｃの間に可動鉄心２５の外周面が摺動可能な
小径部２６ｄを設け、この小径部２６ｄの外周に補強部
材８２を固定したものである。補強部材８２は、所定の
長さに切断された金属等からなる角材をＣ形に曲げて形
成される。補強部材８２とハウジング２６との固定は、
圧入または溶接を用いるとよい。この場合、ハウジング
２６は、補強部材８２によって軸方向の圧縮や曲げ等の
外力に対し変形しにくいものとなっている。

【００２２】

【発明の効果】以上説明したように、本発明の電磁式燃
料噴射弁によれば、外力による応力集中の発生を回避し
ハウジングの剛性を高めることができるため、ハウジン
グの変形による燃料噴射量特性の悪化を防止し、燃料噴
射弁を小型軽量化しても信頼性の高い燃料噴射を保持す
ることができるという効果がある。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の第１実施例による電磁式燃料噴射弁を
示す縦断面図である。

【図２】図１に示す電磁式燃料噴射弁のＡ−Ａ線横断面
図である。

【図３】本発明の第１実施例によるハウジングの製造方
法の一例を説明するための工程図である。

【図４】本発明の第１実施例によるハウジングの製造方
法の他の例を説明するための工程図である。

【図５】本発明の第１実施例によるハウジングの製造方
法を説明するための図４に続く工程図である。

【図６】本発明の第２実施例による電磁式燃料噴射弁を
示す縦断面図である。

【図７】図６に示す電磁式燃料噴射弁のＡ−Ａ線横断面
図である。

【図８】本発明の第３実施例による電磁式燃料噴射弁を
示すもので図９に示すＢ−０−Ｂ線縦断面図である。

【図９】図８に示す電磁式燃料噴射弁のＡ−Ａ線横断面
図である。

【図１０】本発明の第４実施例による電磁式燃料噴射弁
を示す縦断面図である。

【図１１】図１０に示す電磁式燃料噴射弁のＡ−Ａ線横
断面図である。

【図１２】従来例による電磁式燃料噴射弁を示す縦断面
図である。

【符号の説明】

２０ 電磁式燃料噴射弁 ２１ 固定鉄心（電磁アクチュエータ） ２５ 可動鉄心（可動部材、電磁アクチュエータ） ２６ ハウジング ２７ 弁部材 ２９ 弁本体 ３０ 弁座部 ３１ 噴射孔 ３３ 電磁コイル（電磁アクチュエータ） ４８ 凹部

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 往復動可能な弁部材と、 前記弁部材を軸方向に摺動可能な案内孔と前記弁部材の
   当接可能な弁座部と噴射孔とを有する弁本体と、 前記弁部材を軸方向に移動させ、前記噴射孔を開閉可能
   な電磁アクチュエータの可動部材と、 少なくとも前記弁部材、前記弁本体、および前記可動部
   材を収容するほぼ均一な肉厚のハウジングと、 このハウジングの軸方向中間外周部に周方向に部分的に
   形成される凹部であって、前記弁部材または前記可動部
   材を摺動可能に案内する内壁を有する凹部とを備えたこ
   とを特徴とする電磁式燃料噴射弁。