JP3038483B2 - 耐酸化性カーボン材の製造方法 - Google Patents

耐酸化性カーボン材の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、優れた酸化抵抗性を備える耐酸化性カーボ
ン材を効率よく製造する方法に関する。
〔従来の技術〕
カーボン材料は高度の耐熱性、科学的安定性および電
気伝導性を有するため多様の用途部材として汎用されて
いるが、酸化作用に対する抵抗性に乏しいため、高温を
伴う酸化雰囲気中での使用が制約されるという固有の材
質的欠点がある。したがって、古くからカーボン材の表
面に酸化抵抗性に優れる物質を形成したり被覆する耐酸
化処理手段が講じられている。
耐酸化処理手段としては、カーボン材の組織内部に燐
酸塩溶液を含浸させる方法なども知られているが、最も
多く提案されているのはカーボン材の表面にセラミック
ス系の被膜層を形成する方法である。例えば、カーボン
材の表面にCVD法により直接的に、またはSiOガスと基材
カーボンとの反応によってSiCの被覆層を形成する方
法、カーボン材表面にムライト粒子、Al粒子を含むスラ
リーを塗布したのち1000℃の温度で焼成してセラミック
ス被膜層を形成する方法(特開昭60−108388号公報)、
黒鉛材の表面にMgO,ZrO2を溶射してセラミックス層を形
成する方法(特開昭57−135771号公報)等がこれに該当
する。
〔発明が解決しようとする課題〕
しかし、セラミックス被膜層を形成する上記の従来技
術は概してプロセスが煩雑で大規模かつ高価な装置を必
要とし、また往々にして形成される耐酸化被覆層にクラ
ックや剥離現象が生じる場合がある。
本発明の目的は、従来技術とは異なる被覆原料を用
い、簡単なプロセスにより効率的に高酸化抵抗性を備え
る耐酸化性カーボン材を得るための方法を提供するとこ
ろにある。
〔課題を解決するための手段〕
上記の目的を達成するための本発明による耐酸化性カ
ーボン材の製造方法は、金属アルコキシド溶液を加水分
解して重合体ゾルを生成し、該重合体ゾルをカーボン材
の表面に付着したのち非酸化性雰囲気中で1000℃を越え
る温度に熱処理して膜厚1.0μm以下の炭化物セラミッ
クス被膜層を形成することを構成上の特徴としている。
本発明の処理対象となるカーボン材には、通常の炭素
材、黒鉛材のほかガラス状カーボン材、炭素繊維強化炭
素材(C/C材)などあらゆる炭素質成形体が含まれる。
金属アルコキシドはカーボン材表面にセラミックス被
膜層を形成するための原料となるもので、本発明の目的
にはアルコール中の水素をZr、SiまたはTiなど耐熱性の
金属種で置換した金属アルコキシドを単独もしくは混合
したものが好適に使用される。
金属アルコキシドは溶液状態で加水分解することによ
り重合体ゾルを形成するが、加水分解時の反応速度が早
過ぎると粒径数nmを有する超微粒子の沈澱を生成し、ま
た加水分解反応が遅くなると溶液がゲル化してしまう。
したがって、適切な重合体ゾルを生成させるためには金
属アルコキシド溶液の加水分解速度を適度の範囲に調整
する必要がある。このためには、加水分解時、溶液に反
応速度を遅延させる安定化剤または分解を促進させる反
応触媒を添加する。例えば金属アルコキシドとして加水
分解反応が速いジルコニウムブトキシド〔Zr(OC4H9
〕を用いるような場合には、ジエチレングリコール、
ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリプロ
パノールアミン、トリエチレングリコール、テトラエチ
レングリコール等の安定化剤を添加し、他方、けい酸エ
チル〔Si(OC2H5〕のような加水分解反応が遅い原
料を用いる際には塩酸、硝酸、硫酸などの無機酸触媒を
添加することにより反応速度を調整することができる。
重合体ゾルをカーボン材の表面に付着するには、カー
ボン材をゾル中に浸漬する方法、カーボン材表面にゾル
を均一に塗布する方法などが用いられる。このうちゾル
浸漬法を採用する場合には、減圧および/または加圧手
段を付加してカーボン材の表面ポアをゾルで完全に封止
すると共に被着成分の均一化を図ることが望ましい。
このようにして付着処理されたカーボン材は乾燥した
のち、N2、Arなどの非酸化性雰囲気中で1000℃を越える
温度に熱処理して付着ゾルを金属炭化物のセラミックス
連続被膜層に転化させる。
上記の工程は必要に応じて複数回反復しておこなわれ
るが、形成される被膜層の厚さは1.0μm以下に収める
ことが重要である。膜厚が、1.0μmを越すと被膜層に
クラックが発生して耐酸化性能が大幅に減退する。被膜
層の膜厚調整は、金属アルコキシド溶液の濃度、重合体
ゾルの粘度、付着時の量などの条件制御によっておこな
うことができる。
〔作 用〕
本発明のプロセスによれば、カーボン材表面に付着さ
せた金属アルコキシドの重合体ゾルを乾燥する段階でゾ
ル層から溶媒成分が揮散し、同時にコロイド粒子間の結
合が進行して網目構造にゲル化する。このゲル層は引続
く熱処理工程において、1000℃を越える温度に加熱され
る過程で結晶質もしくは非結晶質のZrO2、SiO2、TiO2
どの酸化物層に転化し、さらに酸化物層が基材となるカ
ーボン材と界面反応を起こしてZrC、SiC、TiCなどの炭
化物に転化する。
形成されるこれらセラミックス系の層は、カーボン材
の表面を均質かつ連続的に被覆した極めて緻密でガス不
透過性を備える被膜である。このため、セラミックス本
来の耐熱性と相俟って高温酸化雰囲気を伴う過酷な環境
下においても充分な耐酸化性能を発揮する。
〔実施例〕
以下、本発明の実施例を比較例と対比して説明する。
実施例1 ジルコニウムブトキシド〔Zr(OC4H9〕をイソプ
ロパノールに0.05molの割合で混合し、これにジルコニ
ウムブトキシドの2倍に相当する量のジエチレングリコ
ール(安定化剤)を添加した。この溶液を、室温度下で
2日間自動攪拌して徐々に加水分解を進行させて重合体
ゾルを生成した。
縦横50mm、厚さ5mmの黒鉛材料〔東海カーボン(株)
製、G347〕を被処理カーボン材として前記の重合体ゾル
に浸漬し、10Torrで1時間減圧したのちN2ガスによる20
0kgf/cm2の加圧処理を施して黒鉛材表面を重合体ゾルで
均一に被覆した。
ついで、室温で2日間、90℃で1時間、200℃で1時
間の条件で処理材料を乾燥し、引続きN2ガス雰囲気に保
たれた炉に入れて200℃/hrの昇温速度で1050℃まで上昇
し、1050℃に1時間保持した。このようにして黒鉛材料
の全面に膜厚0.3μmのZrCからなる被膜層を形成した。
得られた被膜層形成黒鉛材料を空気中で600℃および8
00℃の各温度で1時間処理して酸化テストをおこなっ
た。その結果を表1に示した。
比較例1〜2 ジルコニウムブトキシドをイソプロパノールに0.2mol
混合し、熱処理温度を1000℃としたほかは実施例1と同
一の条件により黒鉛材料の表面にZrO2の被膜層を形成し
た。形成された被膜層の膜厚は、1.2μmであった。
得られた被膜層形成黒鉛材料につき実施例1と同様に
して酸化テストを実施し、結果を表1に併載した(比較
例1)。
また、本発明の表面処理を施さない基材黒鉛材料につ
いておこなった酸化テストの結果も表1に併せて示した
(比較例2)。
表1の結果から、実施例1で製造された被覆黒鉛材料
は高度の耐酸化性能を示すことが認められた。これに対
し膜厚が1.2μmの比較例1では被覆層にクラックが発
生し、酸化抵抗性が大幅に減退した。
実施例2 けい酸エチル〔Si(OC2H5〕をイソプロパノール
に0.1molの割合で混合し、これにけい酸エチルの2倍量
に相当する水と0.36gのHCl(反応触媒)を添加した。こ
の溶液を70℃の温度で24時間攪拌し、部分的に加水分解
を進行させて重合体ゾルを生成した。
上記の重合体ゾルに実施例1と同一黒鉛材料を同一の
浸漬処理をおこない、100℃で1時間乾燥した。つい
で、N2ガス雰囲気に保たれた炉に入れて200℃/hrの昇温
速度で加熱して1600℃まで昇温し、1600℃に1時間保持
した。形成された被膜層は膜厚0.2μmのSiC膜で、極め
て緻密かつ均質組織のものであることが確認された。
このようにして製造された被膜層形成黒鉛材料につき
実施例1と同じ条件による酸化テストをおこなったとこ
ろ、酸化重量減少量は600℃時で1.9×10-3g/cm2、800℃
時で7.7×10-3g/cm2と僅少であった。
比較例3 けい酸エチルをイソプロパノールに0.5mol混合し、熱
処理温度を1000℃とした以外は実施例2と同一条件によ
り黒鉛材料の表面にSiO2の被膜層を形成した。形成され
た層の膜厚は1.2μmで、表面に微小なクラックの発生
が認められた。
得られた表面処理材料につき実施例1と同一の酸化テ
ストをおこなったところ、酸化重量減少量は600℃時で
4.2×10-3g/cm2、800℃時で17.0×10-3g/cm2と実施例2
に比べて著しく劣るものであった。
〔発明の効果〕
以上のとおり、本発明に従えば金属アルコキシドを被
覆原料とすることにより簡単な工程と大掛かりな設備を
用いることなしにカーボン材の表面に高性能な耐酸化性
の被膜層を形成することができる。したがって、工業生
産に適合するものである。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】金属アルコキシド溶液を加水分解して重合
    体ゾルを生成し、該重合体ゾルをカーボン材の表面に付
    着したのち非酸化性雰囲気中で1000℃を越える温度に熱
    処理して膜厚1.0μm以下の炭化物セラミックス被膜層
    を形成することを特徴とする耐酸化性カーボン材の製造
    方法。
  2. 【請求項2】金属アルコキシドを構成する金属種が、Z
    r、Si、Tiであり、これら金属アルコキシドを単独もし
    くは混合溶液として使用する請求項1記載の耐酸化性カ
    ーボン材の製造方法。
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