JP3036229B2 - 架空送電線 - Google Patents

架空送電線

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JP3036229B2
JP3036229B2 JP4147430A JP14743092A JP3036229B2 JP 3036229 B2 JP3036229 B2 JP 3036229B2 JP 4147430 A JP4147430 A JP 4147430A JP 14743092 A JP14743092 A JP 14743092A JP 3036229 B2 JP3036229 B2 JP 3036229B2
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博一 志賀
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、引っ張り強度を低下さ
せることなく設計弛度に応じて架空送電線全体の線膨張
係数を設定することができる架空送電線に関する。
【0002】
【従来の技術】工場や家庭等に電力を発送するための架
空送電線は、架線工事後の外気温の上昇や架線工事後に
流す送電電流による発熱(ジュール熱)のため架線工事
直後に比べて弛度が増加(弛緩)することがある。この
ため、架空送電線の温度−弛度特性は、電線を架線する
ための鉄塔の高さや、架空送電線の地上高等の設計に対
して重要な要因となっている。この温度−弛度特性を決
定するのは、電線が有する線膨張係数であり、この線膨
張係数が小さい程線路設計に有利である。
【0003】線膨張係数を抑制した弛度抑制型電線に
は、ルーズ電線、ギャップ電線(TACSR/Est、
UTACSR/Est)、ZTACIR(超耐熱アルミ
合金線)及びXTACIR(超々耐熱アルミ合金線)が
ある。
【0004】ルーズ電線は、鋼線からなる撚線の外周
に、伸び加工を施したアルミ導体を撚り合わせた電線で
あり、ギャップ電線は、鋼線からなる撚線と、撚線の外
周に巻き付けたアルミ導体との間にギャップを設けて形
成した電線である。これらルーズ電線及びギャップ電線
において、アルミの線膨張係数と鋼の線膨張係数との差
(一般にアルミは約23×10-6/℃、鋼は約11.5
×10-6/℃)から、温度−弛度特性は、一定の温度以
下ではアルミの面積と鋼の面積との比から決まる合成線
膨張係数に依存し、一定の温度以上では鋼の線膨張係数
のみに依存することになる。
【0005】ZTACIR及びXTACIRは、鋼より
小さな線膨張係数を有するインバ線(インバは鉄64
%、ニッケル36%からなる合金、線膨張係数係数は2
〜3×10-6/℃)からなる撚線の外周に、アルミ導体
を撚合せてなる電線で、線膨張係数の小さいインバを用
いるため合成線膨張係数が小さくなる。温度−弛度特性
は、一定の温度以上ではインバの線膨張係数のみに依存
することになる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、ルーズ
電線やギャップ電線では線膨張係数の最小限界値は鋼の
線膨張係数できまるため、通常の電線の温度−弛度特性
とほとんど差異がなくなってしまう。
【0007】一方、ZTACIR及びXTACIRは、
合成線膨張係数が比較的小さいため温度−弛度特性は良
好であるが、インバの引っ張り強度が鋼線より劣ってい
るので、長径間線路等では高張力で架線した場合の引っ
張り強度がルーズ電線やギャップ電線より劣ってしまう
という問題点がある。
【0008】そこで、本発明の目的は、上記課題を解決
し、引っ張り強度を低下させることなく設計弛度に応じ
て架空送電線全体の線膨張係数を設定することができる
架空送電線を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に本発明は、鋼線からなる撚線と、撚線の上に撚合わさ
れたアルミ導体とで形成された架空送電線において、鋼
撚線の外周に当該鋼撚線の線膨張係数より低い線膨張係
数を有する金属からなるプレフォームドロッドを巻き付
け、プレフォームドロッドの外周にアルミ導体を撚合わ
せたものである。
【0010】また、プレフォームドロッドは、プレフォ
ームドロッドを巻き付けた部分と巻き付けない部分とを
一定の間隔で繰り返し、かつプレフォームドロッドを巻
き付けた部分の合計長と巻き付けない部分の合計長との
比率を変えることで設計弛度に応じて架空送電線全体の
線膨脹係数を設定するものである。
【0011】
【作用】上記構成によれば、鋼線からなる撚線の線膨張
係数より低い線膨張係数を有する金属からなるプレフォ
ームドロッドが鋼撚線とアルミ導体との間に鋼撚線を把
持するように巻き付けられているので、外気温や架空電
線自体の温度が上昇しても、鋼撚線の長さ方向の膨張を
プレフォームドロッドで把持することにより抑制し、そ
の結果、設計弛度に応じて架空送電線全体の線膨張係数
を設定することが可能になると共に、架空電線を架線し
たときは鋼線からなる撚線が張力に耐えるので、架空送
電線の引っ張り強度が保たれる。
【0012】
【実施例】以下、本発明の一実施例を添付図面に基づい
て詳述する。
【0013】図1は本発明の架空送電線の一実施例の断
面図である。
【0014】同図において、架空送電線1は、7本の亜
鉛メッキ鋼線からなる鋼撚線2の周囲に、鋼撚線2の線
膨張係数より低い線膨張係数を有する低膨張金属からな
る12本のプレフォームドロッド(斜線で示す)3が撚
り合わされて巻き付けられている。これらのプレフォー
ムドロッド3には例えば前述したインバが用いられてお
り、プレフォームドロッド3の外周には42本のアルミ
導体4が2層(18本の層と24本の層)にわたって撚
り合わされている。なお、亜鉛メッキ鋼線からなる鋼撚
線2と、撚線の外周に撚り合わされたアルミ導体4でA
CSR(鋼心アルミ撚線)を構成している。すなわち、
同図に示す架空送電線1はACSRを基にしてその内部
にプレフォームドロッド3を設けた構造となっている。
【0015】図2は図1に示した架空送電線の外観側面
図である。
【0016】同図において、外観は通常の架空送電線と
略同一であるが、架空送電線1の内部ではプレフォーム
ドロッド3が巻き付けられた区間と巻き付けられない区
間とが一定の間隔で繰り返されている。すなわち、区間
1 、L3 及びL5 にはプレフォームドロッド3が巻き
付けられ、区間L2 、L4 及びL6 にはプレフォームド
ロッド3は巻き付けられていない。
【0017】プレフォームドロッド3が巻き付けられた
区間の合計長と巻き付けられない区間の合計長との比率
を変えることにより、設計弛度に応じて架空送電線1全
体の線膨張係数を設定することが可能である。すなわ
ち、この架空送電線1に流す電流、弛度、架線高さ、温
度等に応じて線膨張係数を設定することができる。
【0018】図2において、鋼撚線2の撚線方向は、ア
ルミ導体4の撚合せ方向とは逆方向であり、プレフォー
ムドロッド3の巻き付け方向は鋼撚線2と同一方向であ
り、鋼撚線2に撚り合わされている。すなわち、プレフ
ォームドロッド3の巻き付け方向は図に示す方向とは逆
方向(左撚り)となっている。
【0019】ここで、低膨張金属をプレフォーム化した
理由は、(鋼撚線2の線膨張係数と低膨張金属の線膨張
係数との差から生じる)鋼撚線と低膨張金属とのズレを
抑制するための把持力を発生させるためである。この把
持力が大きい程膨張の抑制には効果的であり、そのため
には架空送電線の長手方向の全長にわたり撚線上に低膨
張金属を撚り合わせればよいが、既存のインバではその
比重が大きいため(裸インバは約8.28g/cm3
20%アルミ覆インバは約7.1g/cm3 )、架空送
電線の重量が大きくなりすぎ張力面の負担が大きくなっ
てしまう。そのためプレフォームドロッド3を巻き付け
る部分と巻き付けない部分とに分けて設けているのであ
る。なお、図ではアルミ導体4の巻線方向は右撚りとな
っているが、鋼撚線2及びプレフォームドロッド3の巻
き線方向が右撚りならアルミ導体4の巻回方向は左撚り
であってもよい。
【0020】次に実施例の作用を述べる。
【0021】鋼撚線2の線膨張係数より低い線膨張係数
を有するインバからなるプレフォームドロッド3が鋼撚
線2とアルミ導体4との間に、鋼撚線2を把持するよう
に巻き付けられているので、外気温や架空電線自体の温
度が上昇しても、鋼撚線2の長さ方向の膨張をプレフォ
ームドロッド3で把持することにより抑制し、その結
果、設計弛度に応じて架空送電線の合成線膨張係数を設
定することが可能になると共に、架空電線を架線したと
きは鋼撚線が張力に耐えるので、架空送電線の引っ張り
強度が保たれる。その結果、引っ張り強度を低下させる
ことなく設計弛度に応じて架空送電線全体の線膨張係数
を設定することができる架空送電線を提供することがで
きる。
【0022】また、低膨張金属からなるプレフォームド
ロッド3による鋼撚線2に対する把持力が充分に得られ
ない場合は、低膨張金属からなる直線状の部材を複数本
鋼撚線2の上に沿わせてその末端をバインド或いはクラ
ンプ等で処理してもよい。
【0023】なお、本実施例では基になる架空送電線を
ACSRとしたが、これに限定されるものでなく、ルー
ズ電線、ギャップ電線、TACSR(鋼心耐熱アルミ合
金撚線)、UTACSR(超耐熱アルミ合金撚線)、I
ACSR(鋼心イ号アルミ合金撚線)、KTACSR
(鋼心高力耐熱アルミ合金撚線)系の撚線及びAC撚線
(アルミ覆鋼撚線)にプレフォームドロッドを設けて形
成してもよい。
【0024】
【発明の効果】以上要するに本発明によれば、鋼線から
なる撚線と、鋼撚線の上に巻き付けられたアルミ導体と
で形成された架空送電線において、鋼撚線の外周に鋼撚
線の線膨張係数より低い線膨張係数を有する金属からな
るプレフォームドロッドを巻き付け、プレフォームドロ
ッドの外周にアルミ導体を撚合わせたので、引っ張り強
度を低下させることなく設計弛度に応じて架空送電線全
体の線膨張係数を設定することができる架空送電線を提
供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の架空送電線の一実施例の断面図であ
る。
【図2】図1に示した架空送電線の外観側面図である。
【符号の説明】
1 架空送電線 2 亜鉛メッキ鋼線 3 プレフォームドロッド 4 アルミ導体
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01B 5/10

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】鋼線からなる撚線と、該撚線の上に巻き付
    けられたアルミ導体とで形成された架空送電線におい
    て、該撚線の外周に該撚線の線膨張係数より低い線膨張
    係数を有する金属からなるプレフォームドロッド(予め
    巻き癖をつけてなる線状体。以下同じ)を巻き付け、該
    プレフォームドロッドの外周にアルミ導体を撚り合わせ
    たことを特徴とする架空送電線。
  2. 【請求項2】前記プレフォームドロッドは、プレフォー
    ムドロッドを巻き付けた部分と巻き付けない部分とを一
    定の間隔で繰り返し、かつプレフォームドロッドを巻き
    付けた部分の合計長と巻き付けない部分の合計長との比
    率を変えることで設計弛度に応じて架空送電線全体の線
    膨張係数を設定することを特徴とする請求項1に記載の
    架空送電線。
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