JP3035592B2 - 低アルコール清酒 - Google Patents

低アルコール清酒

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JP3035592B2
JP3035592B2 JP11787498A JP11787498A JP3035592B2 JP 3035592 B2 JP3035592 B2 JP 3035592B2 JP 11787498 A JP11787498 A JP 11787498A JP 11787498 A JP11787498 A JP 11787498A JP 3035592 B2 JP3035592 B2 JP 3035592B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、清酒の香味を有し
ている低アルコール清酒に関する。
【0002】
【従来の技術】通常の清酒は、エタノール濃度が20%
前後の原料清酒を調合してエタノール濃度を15%前後
としたものが一般的であるが、近年では低アルコール指
向が進み、通常の清酒よりもエタノール濃度が低い清酒
およびその製造方法について種々の検討がなされてい
る。
【0003】既にいくつかのタイプの低アルコール清酒
が知られているが、2つのタイプの味に大別される。そ
の1つのタイプは、日本酒度が−10以上、酸度が1.
5以下で、清酒の香味はある程度残しているものの、水
っぽい味のために清酒として消費者を満足させるもので
はない。一方、もう1つのタイプは、高糖・高酸タイプ
の低アルコール清酒で、日本酒度−80〜−70、酸度
5.0〜7.0程度であるため、極度に甘酸っぱく、水
っぽさはないものの、清酒とは異なる香味を呈する。
【0004】これらの低アルコール清酒の製造方法とし
ては、水を加えるタイプと水を加えないタイプに大別さ
れる。一般的に原料清酒に加水してエタノール濃度を1
3%以下にすると、水っぽさや苦味を有する好ましくな
い酒質になることが知られており(日本醸造協会誌 8
0(5)298,同 78(8)641)、水っぽさを
克服するために、これまで種々の検討が行われてきた。
【0005】すなわち、具体的に説明すると、加水した
場合には、補糖補酸を行う方法(特許番号第25988
47号)、もろみ発酵の最盛期に多量の追水を行ってア
ルコールを希釈し、麹四段を行ってさらに発酵を続けて
味を調整する方法(日本醸造協会誌 74(1)61)
等が挙げられる。加水をしないで低アルコール化するた
めにアルコール発酵を途中で止める場合には、発酵途上
で固液分離し、未溶解の基質を除去して再発酵させる方
法(日本醸造協会誌 68(12)938)、グルコー
スを非発酵性糖に酵素によって変換させることで発酵を
途中で終了させる方法(特許番号第1404185
号)、発酵能の弱い酵母や糸状菌を利用する方法(日本
醸造協会誌 79(10)691,特開平5−5677
4)、温度感受性酵母を用い加熱によってアルコール発
酵を途中で止める方法(特開平7−236465)等が
挙げられる。また、水を加えずに低アルコール化する別
法として、原料清酒からエタノールを取り除く方法、具
体的には蒸留もしくは逆浸透膜処理を行い、製成酒から
エタノールを除去する方法(特開昭61−10018
3,特開平4−222585)等が挙げられる。しか
し、これらのどの方法をもってしても、低アルコール化
処理後に水っぽさや苦味を抑えた清酒の香味を有してい
る低アルコール清酒を得るには充分ではない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上記の状況および酒類
全般にわたる近年の低アルコール指向を満足させる低ア
ルコール清酒が望まれているなかで、本発明は、上記の
欠点のない、清酒の香味が保持された低アルコール清酒
を提供することを目的として開発されたものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記した
要求を満足させる低アルコール清酒について鋭意検討し
た結果、エタノール濃度、日本酒度、酸度、カプロン酸
エチル濃度、イソアミルアルコール濃度、ノルマルプロ
パノール濃度およびイソブタノール濃度を特定の範囲に
すれば、清酒の香味が保持された低アルコール清酒、す
なわち、清酒の香りを持ち、味の優れた低アルコール清
酒が得られることを見いだした。また、このような低ア
ルコール清酒は、減圧下で原料清酒に水蒸気を投入して
気化した香り成分を冷却凝集して回収し、香り成分を回
収した残りの液についてはエタノールを所望の濃度とな
るまで留去し、留去後の液に前記の香り成分を戻して調
製することにより、容易に得られることを見出し、本発
明を完成するに至った。
【0008】すなわち、本発明は、エタノール濃度4.
0〜12.0%、日本酒度−50〜−25、酸度1.5
〜4.0、カプロン酸エチル濃度0.05〜10.0p
pm、イソアミルアルコール濃度15.0〜90.0p
pm、ノルマルプロパノール濃度10.0〜60.0p
pm、イソブタノール濃度4.0〜40.0ppmであ
り、清酒の香味が保持された低アルコール清酒である。
【0009】以下、本発明を詳細に説明する。本発明
は、以下のような原材料から得られる醸造酒(清酒)中
のエタノール濃度を低下させた低アルコール清酒であ
る。すなわち、(1)米、米麹および水のみを原料とし
て発酵させ、濾過して得られたもの、(2)米、水、清
酒粕、麦、あわ、とうもろこし、こうりゃん、きび、ひ
え、でんぷんおよびこれらの麹から選ばれた材料を加え
て発酵させて、濾過して得られたもの、好ましくは、米
および米麹を必須成分とし、これに加える麦、あわ、と
うもろこし、こうりゃん、きび、ひえ、でんぷんおよび
これらの麹から選ばれた材料の重量の合計が、麹米を含
む米の重量を越えないもの、(3)(2)において、
米、水および米麹とともに他の(2)の原料を発酵させ
て、濾過して得られた清酒に、アルコール、焼酎、ぶど
う糖、水あめ、こはく酸、乳酸、くえん酸、グルタミン
酸ソーダ、水または/および清酒を加えて得られたも
の、好ましくは、米および米麹を必須成分とするもので
あり、これにアルコール、焼酎を加える場合は、エタノ
ール100%に換算して、麹米を含む米の重量の28v
/w%以内となるように加えたもの、また、ぶどう糖、
水あめ、こはく酸、乳酸、くえん酸、グルタミン酸ソー
ダ、水または/および清酒から選ばれた材料を加える場
合は、これらの重量の合計が、麹米を含む米の重量を越
えないように添加したもの、(4)清酒に清酒粕を加え
て濾過して得られたもの、(5)発酵中に生じた米残渣
や酵母が懸濁した、いわゆる“にごり酒”や、炭酸によ
る発泡性を有する清酒、が挙げられる。
【0010】この中では、(1)の清酒が本発明の効果
を顕著に得られるという点で最も好ましいが、(5)の
清酒は、清酒の有する濁りや炭酸により、さらに清酒の
水っぽさが解消されるという点で好ましい。本発明の低
アルコール清酒のエタノール濃度は4.0〜12.0%
であり、4.0%未満となると、酒が水っぽくなりやす
い。また、12.0%を超える場合は、エタノール濃度
が高すぎ、特に本発明の低アルコール清酒を得るという
目的に合致しない。好ましくはエタノール濃度6.0〜
9.0%であり、さらには6.5〜8.5%のときに本
発明の効果が顕著である。
【0011】本発明の低アルコール清酒の日本酒度は−
50〜−25であり、酸度は1.5〜4.0である。日
本酒度が−25を越え、あるいは酸度が1.5未満にな
ると、酒が水っぽくなりやすく、また、日本酒度が−5
0未満であり、あるいは、酸度が4.0を越えると、甘
味や酸味が強くなりすぎ、清酒らしさが失われる。好ま
しくは日本酒度が−45〜−30、酸度が2.0〜4.
0、さらに好ましくは日本酒度が−40〜−35、酸度
が2.6〜3.5である。ここで日本酒度とは、国税庁
所定分析法(国税庁発行)により定義される測度であ
り、15℃における清酒の比重を表す単位である。清酒
の比重(g/cm3)と日本酒度の関係は、日本酒度=
1443(1−比重)/比重である。また、酸度は国税
庁所定分析法により定義される遊離酸の総量を表す測度
であり、清酒10mlを1/10規定の水酸化ナトリウ
ム溶液で中和したときの滴定ml数として求められる。
【0012】本発明の低アルコール清酒は、エタノール
濃度が低いにも関わらず清酒の香味を保持している。こ
こで、「清酒の香味を保持している」とは、原料清酒由
来の揮発成分が清酒の香りと味を充分に発現し得る程度
に含まれていることをいう。具体的には、カプロン酸エ
チル濃度0.05〜10.0ppm、イソアミルアルコ
ール濃度15.0〜90.0ppm、ノルマルプロパノ
ール濃度10.0〜60.0ppm、イソブタノール濃
度4.0〜40.0ppmである。
【0013】好ましくは、カプロン酸エチル濃度0.0
5〜10.0ppm、カプリル酸エチル濃度0.01〜
1.0ppm、酢酸イソアミル濃度0.05〜10.0
ppm、アセトアルデヒド濃度2.0〜20.0pp
m、イソブチルアルデヒド濃度0.002〜0.05p
pm、イソバレルアルデヒド濃度0.001〜0.05
ppm、イソアミルアルコール濃度15.0〜90.0
ppm、ノルマルプロパノール濃度10.0〜60.0
ppm、イソブタノール濃度4.0〜40.0ppmで
ある。
【0014】さらに好ましくは、カプロン酸エチル濃度
0.05〜3.0ppm、カプリル酸エチル濃度0.0
1〜0.3ppm、酢酸イソアミル濃度0.05〜3.
0ppm、アセトアルデヒド濃度2.0〜10.0pp
m、イソブチルアルデヒド濃度0.002〜0.01p
pm、イソバレルアルデヒド濃度0.001〜0.01
ppm、イソアミルアルコール濃度15.0〜50.0
ppm、ノルマルプロパノール濃度10.0〜40.0
ppm、イソブタノール濃度4.0〜20.0ppmで
ある。
【0015】カプロン酸エチル、カプリル酸エチル、酢
酸イソアミルは吟醸酒の香りに関与するものであり、ア
セトアルデヒド、イソブチルアルデヒド、イソバレルア
ルデヒドは清酒の熟成に関与するものであり、イソアミ
ルアルコール、ノルマルプロパノールおよびイソブタノ
ールはこれら自体の芳香とともに香気全体の調和に寄与
するが、各々の成分は過剰であると香味を損なうこと
が、本発明者らの研究で判っている。これらの成分組成
になるように試薬を添加しても、本発明と同じ効果は得
られないが、清酒として許容される原料を発酵させ、か
つ、これらの成分組成が上述の範囲内であるようにする
と、総合的に好ましい清酒の香味、すなわち、味と香り
を形成するものである。
【0016】なお、前記の香味成分の分析はガスクロマ
トグラフィーにより行い、当該成分に相当する市販試薬
により作製された検量線を用いて定量した。測定条件は
以下のとおりである。 <ノルマルプロパノールおよびイソブタノールの測定条件> 測定機種:(株)島津製作所GC−14A,C−R7A カラム :(株)島津製作所CBP20−M25−025 0.25φ×25m 測定方法:ヘッドスペースガスクロマトグラフィー 測定条件:カラム温度 初期温度 60℃、初期保持時間 8分 昇温速度 20℃/分 最終温度 200℃、最終保持時間 1分 キャリアガス ヘリウム(圧力 1.5kg/cm2) Inj.温度 250℃ Range 101 Attenuation 0
【0017】 <ノルマルプロパノールおよびイソブタノール以外の測定条件> 測定機種:(株)島津製作所GC−14A,C−R4A カラム :(株)島津製作所CBP20−M25−025 0.25φ×25m 測定方法:パージアンドトラップ(P&T)ガスクロマトグラフィー 測定条件:カラム温度 初期温度 50℃、初期保持時間 1分 昇温速度 3℃/分 最終温度 150℃、最終保持時間 36分 キャリアガス ヘリウム(圧力 0.3kg/cm2) Inj.温度 250℃ Range 101 Attenuation 3
【0018】さらに、本発明の低アルコール清酒中のピ
ルビン酸濃度が90.0ppm以下であると、未熟感が
感じられて酒質を損う香味が少なくなり好ましい。より
好ましい範囲は、40.0ppm以下である。通常、ア
ルコール発酵が不充分なうちに上槽して低アルコール清
酒にする場合に、ピルビン酸濃度が高くなる。比較試験
例3において、ピルビン酸濃度が90.0ppmを越え
る種々の市販低アルコール清酒と本発明の低アルコール
清酒を比較評価したが、ピルビン酸濃度が高い低アルコ
ール清酒は、未熟感のする、好まれない酒質になる結果
が得られた。なお、本発明において、ピルビン酸濃度の
分析は旭化成工業(株)製ピルビン酸測定キットによっ
た。ただし、分析はこの方法に限られるものではない。
【0019】本発明の低アルコール清酒中の酵母溶出物
である、S−アデノシルメチオニンとその加水分解物で
あるメチルチオアデノシンの濃度の合計(以下、酵母溶
出物濃度と略す)は、0.3mM以下であると好まし
い。より好ましい範囲は、0.2mM以下である。酵母
溶出物濃度がこの範囲内のときに、苦味、渋味およびい
わゆる雑味と称される、清酒のすっきりした味を打ち消
す官能的特徴を有する味の少ない酒質の低アルコール清
酒となる。通常、アルコール発酵能が弱い酵母を使用し
たり、アルコール発酵の途中で酵母を死滅させる等の方
法で低アルコール清酒にする場合に、酵母溶出物濃度が
高くなる。比較試験例4において、酵母溶出物濃度が
0.3mMを越えるものも含め種々の市販低アルコール
清酒と本発明の低アルコール清酒を比較評価したが、酵
母溶出物濃度が高い低アルコール清酒は、雑味の多い、
好まれない酒質になる結果が得られた。なお、本発明に
おいて、酵母溶出物濃度の分析は液体クロマトグラフィ
ーを用いて行い、市販の試薬との比較により同定、定量
した。測定条件は以下のとおりである。
【0020】 測定機種:(株)島津製作所LC−10AD カラム :ケムコ(株)NUCLEOSIL 10SA 4.0φ×100mm 測定方法:UV260nmの吸光度 測定条件:カラム温度 30℃ 移動相 A液とB液によるリニアグラジエント 0〜20分 A液100% 20〜30分 A液100%からB液100%のリニアグ ラジエント 30〜45分 B液100% 45〜50分 B液100%からA液100%のリニアグ ラジエント S−アデノシルメチオニンのピークを38分前後に検出 A液;0.05Mリン酸アンモニア緩衝液(pH3.0 ) B液;0.5Mリン酸アンモニア緩衝液(pH3.0) 流速 1.0ml/分 注入量 10μl Attenuation 6
【0021】以降、本発明の清酒の製造方法の例につい
て説明する。本発明に用いられる清酒の原料清酒は、一
般的な発酵法を用いることができる。すなわち、酒母仕
込み、酵母仕込み、また、醪の段仕込み等のいずれも使
用することができる。麹菌にはAspergillus
oryzae等を用いることができ、発酵は酵母によ
るアルコール発酵であるが、一部に乳酸菌による乳酸発
酵が組み合わされる場合もある。また、米麹の一部をア
ミラーゼ等の酵素剤で代替することも可能である。
【0022】ピルビン酸濃度を低くするためには、発酵
を完了したもろみから製造した原料清酒を用いるとよ
く、酵母溶出物濃度を低くするためには,発酵完了後た
だちに濾過するとよく、酵母が死滅するような操作は用
いるべきでない。また、原料清酒の日本酒度および酸度
は、清酒として許容される糖分や酸味料を添加するなど
の方法の他に、米の酵素糖化や混在する乳酸菌の利用に
より調製することができる。前記で得られた清酒のエタ
ノール濃度を低下させる方法としては、例えば、次の方
法が挙げられる。
【0023】すなわち、成分を所定の範囲に調整した原
料清酒を減圧蒸留し、まず、香り成分であるエステル成
分を多く含む画分を原料清酒から分離する。次に、原料
清酒中のエタノールを主成分とするアルコールの画分を
原料清酒から分離することにより、原料清酒中のエタノ
ール濃度を低減させる。この低アルコール化された原料
清酒に、上記のエステル成分を多く含む画分を戻す。
【0024】原料清酒からエステル成分などの香り成分
を回収するための減圧蒸留を行うには、例えば、薄膜式
気液向流方式の蒸留装置を用いることができる。この装
置としては、例えば、垂直に設置された円筒状のカラム
容器の中心に垂直に設置された回転軸を有し、下底の周
を上向きにした円錐台形の側面を有し、かつ、円錐の回
転対称軸が前記回転軸と重なるように回転軸に固定した
回転板と、同じく下底の周を上向きにした円錐台形の側
面を有し、かつ、円錐の回転対称軸がカラム容器内の回
転軸と重なる位置でカラム容器の内壁に固定した固定板
が、交互に複数設置された内部構造を持つ装置が考えら
れる。減圧蒸留は、該装置の容器内を減圧状態とし、前
記回転軸を回転させながら原料清酒をカラム容器の上部
から固定板上へ流下させることにより、原料清酒が固定
板上の中心部へと流下し、固定板のすぐ下側にある回転
板上に落下する。落下した原料清酒は、遠心力により回
転板上に薄膜状に広がり、回転板より広く広がったと
き、板から溢れ出てカラム容器の内壁に達した後、前記
回転板のすぐ下側の固定板上に流下する。このプロセス
を繰り返す一方、カラム容器の下部から蒸気を上昇させ
て気液向流接触をさせることにより、液体中のエステル
成分やエタノール成分を該蒸気中に移行させることがで
きる。
【0025】この装置を利用する場合、まず、原料清酒
からエステル成分などの香り成分を分離回収し、次に、
香り成分を分離した原料清酒からエタノールを低減させ
た原料清酒を得る。当該装置の回転軸を毎分500〜1
000回転の速度で回転させ、カラム容器上部から連続
的に原料清酒を投入しながら、カラム容器下部から連続
的に水蒸気を投入し、2〜20キロパスカルの圧力(絶
対圧力、以降同様)で、20〜70℃の温度、特に清酒
本来の香味を変化させないためには好ましくは20〜5
5℃の温度で、原料清酒から清酒の特有な香りの成分で
あるエステル類などをエタノールとともに蒸発させた
後、冷却再凝縮させて香り成分の回収を行う。この際、
原料清酒に含まれるエタノールの3.0〜20%を留去
すれば、原料清酒から清酒特有な香りの成分であるエス
テル類などを充分に留去させることができる。
【0026】次に、香り成分が除去された原料清酒を再
度蒸留し、原料清酒中のエタノール濃度を目的濃度まで
低減させ、低アルコール化された原料清酒を得る。この
ときの蒸留方法は、前記装置を用いて前記と同様の圧
力、温度で行うことができるが、公知の一般的な蒸留方
法でも行うことができる。続いて、上記で回収した香り
成分を低アルコール化された原料清酒に加え、清酒の香
味を有する低アルコール清酒を調製してもよい。回収し
た香り成分は、任意の量を低アルコール化された原料清
酒に戻すことができるが、戻す量は官能的に評価された
結果により決定される。
【0027】
【発明の実施の形態】次に、実施例、比較例を挙げて本
発明をさらに説明するが、本発明の範囲は、これらに限
定されるものではない。
【実施例1】表1に示す仕込配合で、留後15日まで五
段で発酵させて3800Lの原料清酒を製造した。ここ
で四段は、蒸米に汲水を加えたものを酵素剤存在下で5
0〜60℃の温度で1晩処理したものである。また五段
は、蒸米および米麹に汲水を加えたものを酵素剤存在下
で60℃の温度で1晩処理し、これに追水2を加えて乳
酸菌による発酵をさせたものである。
【0028】この原料清酒を国税庁所定分析法に従って
分析したところ、エタノール濃度は14.2%であり、
日本酒度は−29であり、酸度は3.0であった(以
降、エタノール濃度、日本酒度および酸度の測定は、国
税庁所定分析法に従って行った)。また、パージアンド
トラップガスクロマトグラフィー法およびヘッドスペー
スガスクロマトグラフィー法で分析したところ、カプロ
ン酸エチル濃度が1.48ppm、カプリル酸エチル濃
度が0.105ppm、酢酸イソアミル濃度が1.35
ppm、アセトアルデヒド濃度が9.72ppm、イソ
ブチルアルデヒド濃度が0.056ppm、イソバレル
アルデヒド濃度が0.004ppm、イソアミルアルコ
ール濃度が54.7ppm、ノルマルプロパノール濃度
が52.4ppm、およびイソブタノール濃度が22.
5ppmであった(以降、カプロン酸エチル、カプリル
酸エチル、酢酸イソアミル、アセトアルデヒド、イソブ
チルアルデヒド、イソバレルアルデヒドおよびイソアミ
ルアルコールの濃度の測定はパージアンドトラップガス
クロマトグラフィー法、ノルマルプロパノールおよびイ
ソブタノールの濃度の測定はヘッドスペースガスクロマ
トグラフィー法で行った)。また、旭化成工業(株)製
ピルビン酸測定キットを用いてピルビン酸濃度を測定し
たところ、25.9ppmであった(以降、ピルビン酸
濃度の測定は、前記測定キットを用いて測定した)。ま
た、液体クロマトグラフィー法で酵母溶出物濃度を分析
したところ、0.236mMであった(以降、酵母溶出
物濃度の測定は、液体クロマトグラフィー法で行っ
た)。
【0029】この原料清酒1000Lを36℃に余熱し
た後、毎時500Lの速度で薄膜式気液向流接触装置の
カラム上部から投入した。ここでいう薄膜式気液向流接
触装置は、〔課題を解決するための手段〕に記載した装
置である。なお、実施例で使用した当該装置のカラムに
は、回転円錐板と固定円錐板が約20組設置されてお
り、回転円錐板と固定円錐板の直径はともに約300m
mであった。このときカラム内の回転円錐は、毎分70
0回転の速度で回転させ、カラム内圧を3.5キロパス
カルに設定し、カラム下部より100℃の蒸気を毎時5
Kgの速度で投入した。
【0030】以上の条件でこの装置を運転すると、定常
状態となり、カラム上部温度は38℃、カラム下部温度
は40℃となった。カラム上部より清酒の香り成分を含
むエタノールを主成分とする揮発性物質が気化して留出
したので、その気体を−3℃のブラインを循環させたコ
ンデンサーで冷却凝結し、毎時5Lの速度で総量10L
を回収した。また、回収された蒸留画分のエタノール濃
度は70.4%であった。このときの原料清酒中のエタ
ノール量を100%としたときの留去率(以下、単に留
去率と称する)は6.3%であった。
【0031】カラム下部より蒸留残液が、毎時499L
の速度で総量998L排出された。該排出液は直ちに1
5℃に冷却した。この排出液は、エタノール濃度13.
3%、日本酒度−31、酸度3.0であった。蒸留残液
の全てを再び気液向流接触装置を用いて、前回と同様な
方法で蒸留を行った。但し、このときの蒸留残液の投入
は毎時250L、蒸気の投入は毎時20Kgの速度で行
った。カラム上部よりエタノールを主成分とする揮発性
物質を留出させ、カラム下部より蒸留残液を毎時489
Lの速度で総量978L排出させた。このときの留去率
は47.9%であった。蒸留残液は直ちに15℃に冷却
した。この蒸留残液は、エタノール濃度7.6%、日本
酒度−41、酸度3.1であった。
【0032】この蒸留残液に活性炭200g(乾燥重
量、以降同称)を加えて活性炭で精製を行った後、最初
の蒸留操作で回収した清酒の香り成分を含む蒸留画分の
全量を加えた結果、エタノール濃度8.2%、日本酒度
−39、酸度3.0、カプロン酸エチル濃度1.39p
pm、カプリル酸エチル濃度0.095ppm、酢酸イ
ソアミル濃度1.24ppm、アセトアルデヒド濃度
5.75ppm、イソブチルアルデヒド濃度0.003
ppm、イソバレルアルデヒド濃度0.002ppm、
イソアミルアルコール濃度43.0ppm、ノルマルプ
ロパノール濃度34.4ppm、イソブタノール濃度1
6.7ppm、ピルビン酸濃度25.6ppmおよび酵
母溶出物濃度0.233mMの清酒が得られた。これを
試験酒(1)とした。
【0033】
【表1】
【0034】
【実施例2】表1において四段を1.5倍量とし、五段
を3.0倍量とした以外は、表1と同様の仕込配合率
で、留後15日まで発酵させて、エタノール濃度11.
1%、日本酒度−39、酸度3.6、カプロン酸エチル
濃度1.21ppm、カプリル酸エチル濃度0.089
ppm、酢酸イソアミル濃度1.20ppm、アセトア
ルデヒド濃度7.78ppm、イソブチルアルデヒド濃
度0.045ppm、イソバレルアルデヒド濃度0.0
03ppm、イソアミルアルコール濃度43.1pp
m、ノルマルプロパノール濃度40.9ppm、イソブ
タノール濃度19.5ppm、ピルビン酸濃度22.6
ppmおよび酵母溶出物濃度0.190mMの原料清酒
を製造した。
【0035】実施例1と同様の方法で小型の蒸留装置を
用いて原料清酒2.0Lを蒸留し、清酒の香り成分を含
む蒸留画分0.02Lと蒸留残液1.99Lを得た。こ
のときの留去率は8.6%であった。蒸留画分はエタノ
ール濃度69.9%であり、蒸留残液はエタノール濃度
10.2%、日本酒度−42、酸度3.6であった。蒸
留残液の分析には0.1Lを使用した。蒸留残液を実施
例1と同様の方法で小型の蒸留装置を用いて再び蒸留
し、エタノール濃度7.6%、日本酒度−46、酸度
3.7の蒸留残液1.86Lを得た。このときの留去率
は32.9%であった。
【0036】この蒸留残液に活性炭0.35gを加えて
活性炭で精製を行った後、最初の蒸留操作で回収した清
酒の香り成分を含む蒸留画分の全量を加えたところ、エ
タノール濃度8.2%、日本酒度−45、酸度3.6、
カプロン酸エチル濃度1.10ppm、カプリル酸エチ
ル濃度0.079ppm、酢酸イソアミル濃度1.09
ppm、アセトアルデヒド濃度5.37ppm、イソブ
チルアルデヒド濃度0.003ppm、イソバレルアル
デヒド濃度0.002ppm、イソアミルアルコール濃
度25.0ppm、ノルマルプロパノール濃度20.1
ppm、イソブタノール濃度5.85ppm、ピルビン
酸濃度20.2ppmおよび酵母溶出物濃度0.189
mMの清酒が得られた。これを試験酒(2)とした。
【0037】
【実施例3】表1において四段を0.2倍量とし、五段
を省略した以外は、表1と同様の仕込配合率で、留後1
5日まで発酵させて、エタノール濃度17.1%、日本
酒度−12、酸度2.6、カプロン酸エチル濃度1.8
1ppm、カプリル酸エチル濃度0.120ppm、酢
酸イソアミル濃度1.65ppm、アセトアルデヒド濃
度12.0ppm、イソブチルアルデヒド濃度0.07
0ppm、イソバレルアルデヒド濃度0.005pp
m、イソアミルアルコール濃度67.2ppm、ノルマ
ルプロパノール濃度65.0ppm、イソブタノール濃
度29.1ppm、ピルビン酸濃度31.8ppmおよ
び酵母溶出物濃度0.294mMの原料清酒を製造し
た。
【0038】実施例2と同様の方法で原料清酒2.0L
を蒸留し、清酒の香り成分を含む蒸留画分0.02Lと
蒸留残液1.99Lを得た。このときの留去率は5.3
%であった。蒸留画分はエタノール濃度70.7%であ
り、蒸留残液はエタノール濃度16.3%、日本酒度−
13、酸度2.6であった。蒸留残液の分析には0.1
Lを使用した。蒸留残液を実施例2と同様の方法で再び
蒸留し、エタノール濃度7.6%、日本酒度−27、酸
度2.7の蒸留残液1.84Lを得た。このときの留去
率は57.0%であった。
【0039】この蒸留残液に活性炭0.35gを加えて
活性炭で精製を行った後、最初の蒸留操作で回収した清
酒の香り成分を含む蒸留画分の全量を加えたところ、エ
タノール濃度8.2%、日本酒度−26、酸度2.6、
カプロン酸エチル濃度1.69ppm、カプリル酸エチ
ル濃度0.109ppm、酢酸イソアミル濃度1.50
ppm、アセトアルデヒド濃度6.49ppm、イソブ
チルアルデヒド濃度0.003ppm、イソバレルアル
デヒド濃度0.003ppm、イソアミルアルコール濃
度30.4ppm、ノルマルプロパノール濃度24.7
ppm、イソブタノール濃度6.90ppm、ピルビン
酸濃度31.3ppmおよび酵母溶出物濃度0.296
mMの清酒が得られた。これを試験酒(3)とした。
【0040】
【実施例4】実施例1記載の原料清酒2.0Lを実施例
2と同様の方法で蒸留し、清酒の香り成分を含む蒸留画
分0.02Lと蒸留残液1.99Lを得た。このときの
留去率は6.7%であった。蒸留画分はエタノール濃度
70.1%であり、蒸留残液はエタノール濃度13.3
%、日本酒度−31、酸度3.1であった。蒸留残液の
分析には0.1Lを使用した。蒸留残液を再び実施例2
と同様の方法で蒸留して、エタノール濃度5.9%、日
本酒度−43、酸度3.1の蒸留残液1.85Lを得
た。このときの留去率は59.5%であった。
【0041】この蒸留残液に活性炭0.35gを加えて
活性炭で精製を行った後、最初の蒸留操作で得られた清
酒の香り成分を含む蒸留画分の全量を加えたところ、エ
タノール濃度6.5%、日本酒度−41、酸度3.1、
カプロン酸エチル濃度1.40ppm、カプリル酸エチ
ル濃度0.098ppm、酢酸イソアミル濃度1.22
ppm、アセトアルデヒド濃度4.95ppm、イソブ
チルアルデヒド濃度0.003ppm、イソバレルアル
デヒド濃度0.002ppm、イソアミルアルコール濃
度24.0ppm、ノルマルプロパノール濃度19.4
ppm、イソブタノール濃度5.17ppm、ピルビン
酸濃度25.7ppmおよび酵母溶出物濃度0.234
mMの清酒が得られた。これを試験酒(4)とした。
【0042】
【実施例5】実施例2記載の原料清酒2.0Lを実施例
2と同様の方法で蒸留し、清酒の香り成分を含む蒸留画
分0.02Lと蒸留残液1.99Lを得た。このときの
留去率は8.6%であった。蒸留画分はエタノール濃度
69.9%であり、蒸留残液はエタノール濃度10.2
%、日本酒度−42、酸度3.6であった。蒸留残液の
分析には0.1Lを使用した。蒸留残液を実施例2と同
様の方法で再び蒸留し、エタノール濃度5.8%、日本
酒度−49、酸度3.6の蒸留残液1.85Lを得た。
このときの留去率は49.1%であった。
【0043】この蒸留残液に活性炭0.35gを加えて
活性炭で精製を行った後、最初の蒸留操作で回収した清
酒の香り成分を含む蒸留画分の全量を加えたところ、エ
タノール濃度6.5%、日本酒度−47、酸度3.6、
カプロン酸エチル濃度1.13ppm、カプリル酸エチ
ル濃度0.082ppm、酢酸イソアミル濃度1.04
ppm、アセトアルデヒド濃度4.52ppm、イソブ
チルアルデヒド濃度0.002ppm、イソバレルアル
デヒド濃度0.002ppm、イソアミルアルコール濃
度21.0ppm、ノルマルプロパノール濃度17.2
ppm、イソブタノール濃度5.01ppm、ピルビン
酸濃度20.2ppmおよび酵母溶出物濃度が0.19
2mMの清酒が得られた。これを試験酒(5)とした。
【0044】
【実施例6】実施例3記載の原料清酒2.0Lを実施例
2と同様の方法で蒸留し、清酒の香り成分を含む蒸留画
分0.02Lと蒸留残液1.99Lを得た。このときの
留去率は5.3%であった。蒸留画分はエタノール濃度
70.7%であり、蒸留残液はエタノール濃度16.3
%、日本酒度−13、酸度2.6であった。蒸留残液の
分析には0.1Lを使用した。蒸留残液を実施例2と同
様の方法で再び蒸留し、エタノール濃度5.9%、日本
酒度−30、酸度2.7の蒸留残液1.85Lを得た。
このときの留去率は66.4%であった。
【0045】この蒸留残液に活性炭0.35gを加えて
活性炭で精製を行った後、最初の蒸留操作で回収した清
酒の香り成分を含む蒸留画分の全量を加えたところ、エ
タノール濃度6.5%、日本酒度−28、酸度2.7、
カプロン酸エチル濃度1.69ppm、カプリル酸エチ
ル濃度0.113ppm、酢酸イソアミル濃度1.50
ppm、アセトアルデヒド濃度5.75ppm、イソブ
チルアルデヒド濃度0.003ppm、イソバレルアル
デヒド濃度0.002ppm、イソアミルアルコール濃
度27.2ppm、ノルマルプロパノール濃度22.2
ppm、イソブタノール濃度6.11ppm、ピルビン
酸濃度31.5ppmおよび酵母溶出物濃度0.291
mMの清酒が得られた。これを試験酒(6)とした。
【0046】
【実施例7】表1において四段を0.4倍量とし、五段
を省略した以外は、表1と同様の仕込配合率で、留後1
5日まで発酵させて、エタノール濃度16.5%、日本
酒度−18、酸度1.7、カプロン酸エチル濃度1.9
2ppm、カプリル酸エチル濃度0.099ppm、酢
酸イソアミル濃度1.73ppm、アセトアルデヒド濃
度12.2ppm、イソブチルアルデヒド濃度0.09
0ppm、イソバレルアルデヒド濃度0.006pp
m、イソアミルアルコール濃度84.5ppm、ノルマ
ルプロパノール濃度75.4ppm、イソブタノール濃
度53.6ppm、ピルビン酸濃度27.0ppmおよ
び酵母溶出物濃度0.290mMの原料清酒を製造し
た。
【0047】実施例2と同様の方法で前記の原料清酒
2.0Lを蒸留し、清酒の香り成分を含む蒸留画分0.
02Lと蒸留残液1.99Lを得た。このときの留去率
は5.5%であった。蒸留画分はエタノール濃度70.
2%であり、蒸留残液はエタノール濃度15.7%、日
本酒度−20、酸度1.7であった。蒸留残液の分析に
は0.1Lを使用した。蒸留残液を実施例2と同様の方
法で再び蒸留し、エタノール濃度3.8%、日本酒度−
39、酸度1.7の蒸留残液1.85Lを得た。このと
きの留去率は77.6%であった。
【0048】この蒸留残液に活性炭0.35gを加えて
活性炭で精製を行った後、最初の蒸留操作で回収した清
酒の香り成分を含む蒸留画分の全量を加えたところ、エ
タノール濃度4.5%、日本酒度−38、酸度1.7、
カプロン酸エチル濃度1.81ppm、カプリル酸エチ
ル濃度0.091ppm、酢酸イソアミル濃度1.57
ppm、アセトアルデヒド濃度5.01ppm、イソブ
チルアルデヒド濃度0.003ppm、イソバレルアル
デヒド濃度0.002ppm、イソアミルアルコール濃
度29.1ppm、ノルマルプロパノール濃度22.1
ppm、イソブタノール濃度9.71ppm、ピルビン
酸濃度26.5ppmおよび酵母溶出物濃度0.286
mMの清酒が得られた。これを試験酒(7)とした。
【0049】
【比較例1】表1において四段を0.5倍量とした以外
は、表1と同様の仕込配合率で留後15日まで発酵させ
て、エタノール濃度14.8%、日本酒度−21、酸度
3.1、カプロン酸エチル濃度1.58ppm、カプリ
ル酸エチル濃度0.109ppm、酢酸イソアミル濃度
1.47ppm、アセトアルデヒド濃度10.1pp
m、イソブチルアルデヒド濃度0.060ppm、イソ
バレルアルデヒド濃度0.004ppm、イソアミルア
ルコール濃度59.0ppm、ノルマルプロパノール濃
度57.1ppm、イソブタノール濃度25.4pp
m、ピルビン酸濃度27.5ppmおよび酵母溶出物濃
度が0.253mMの原料清酒を製造した。実施例2と
同様の方法で原料清酒2.0Lを蒸留し、清酒の香り成
分を含む蒸留画分0.02Lと蒸留残液1.99Lを得
た。このときの留去率は5.7%であった。蒸留画分は
エタノール濃度70.3%であり、蒸留残液はエタノー
ル濃度14.0%、日本酒度−23、酸度3.0であっ
た。蒸留残液の分析には0.1Lを使用した。
【0050】蒸留残液を実施例2と同様の方法で再び蒸
留して、エタノール濃度2.9%、日本酒度−42、酸
度3.1の蒸留残液1.85Lを得た。このときの留去
率は80.7%であった。この蒸留残液に活性炭0.3
5gを加えて活性炭で精製を行った後、最初の蒸留操作
で得られた清酒の香り成分を含む蒸留画分の全量を加え
たところ、エタノール濃度3.5%、日本酒度−41、
酸度3.1、カプロン酸エチル濃度1.39ppm、カ
プリル酸エチル濃度0.100ppm、酢酸イソアミル
濃度1.35ppm、アセトアルデヒド濃度3.97p
pm、イソブチルアルデヒド濃度0.002ppm、イ
ソバレルアルデヒド濃度0.002ppm、イソアミル
アルコール濃度19.5ppm、ノルマルプロパノール
濃度15.6ppm、イソブタノール濃度4.36pp
m、ピルビン酸濃度25.6ppmおよび酵母溶出物濃
度0.252mMの清酒が得られた。これを比較酒
(1)とした。
【0051】
【比較例2】表1において四段および五段を省略した以
外は、表1と同様の仕込配合率で留後18日まで発酵さ
せて、エタノール濃度18.4%、日本酒度+1.5、
酸度2.7、カプロン酸エチル濃度1.57ppm、カ
プリル酸エチル濃度0.122ppm、酢酸イソアミル
濃度1.49ppm、アセトアルデヒド濃度9.62p
pm、イソブチルアルデヒド濃度0.065ppm、イ
ソバレルアルデヒド濃度0.005ppm、イソアミル
アルコール濃度56.0ppm、ノルマルプロパノール
濃度64.5ppm、イソブタノール濃度28.2pp
m、ピルビン酸濃度20.5ppmおよび酵母溶出物濃
度0.562mMの原料清酒を製造した。
【0052】実施例2と同様の方法で原料清酒2.0L
を蒸留し、清酒の香り成分を含む蒸留画分0.02Lと
蒸留残液1.99Lを得た。このときの留去率は4.9
%であった。蒸留画分はエタノール濃度70.8%であ
り、蒸留残液はエタノール濃度17.6%、日本酒度+
0.5、酸度2.7であった。蒸留残液の分析には0.
1Lを使用した。蒸留残液を実施例2と同様の方法で再
び蒸留し、エタノール濃度5.8%、日本酒度−19、
酸度2.7の蒸留残液1.82Lを得た。このときの留
去率は69.8%であった。
【0053】この蒸留残液に活性炭0.35gを加えて
活性炭で精製を行った後、最初の蒸留操作で回収した清
酒の香り成分を含む蒸留画分の全量を加えたところ、エ
タノール濃度6.5%、日本酒度−19、酸度2.8、
カプロン酸エチル濃度1.45ppm、カプリル酸エチ
ル濃度0.114ppm、酢酸イソアミル濃度1.34
ppm、アセトアルデヒド濃度4.45ppm、イソブ
チルアルデヒド濃度0.003ppm、イソバレルアル
デヒド濃度0.002ppm、イソアミルアルコール濃
度21.8ppm、ノルマルプロパノール濃度21.0
ppm、イソブタノール濃度5.72ppm、ピルビン
酸濃度20.1ppmおよび酵母溶出物濃度0.560
mMの清酒が得られた。これを比較酒(2)とした。
【0054】
【比較例3】表1において四段を1.5倍量とし、五段
を4.0倍量とした以外は、表1と同様の仕込配合率で
留後15日まで発酵させて、エタノール濃度10.4
%、日本酒度−39、酸度4.1、カプロン酸エチル濃
度1.10ppm、カプリル酸エチル濃度0.080p
pm、酢酸イソアミル濃度1.05ppm、アセトアル
デヒド濃度7.28ppm、イソブチルアルデヒド濃度
0.042ppm、イソバレルアルデヒド濃度0.00
3ppm、イソアミルアルコール濃度41.5ppm、
ノルマルプロパノール濃度39.4ppm、イソブタノ
ール濃度18.1ppm、ピルビン酸濃度20.4pp
mおよび酵母溶出物濃度0.178mMの原料清酒を製
造した。
【0055】実施例2と同様の方法で原料清酒2.0L
を蒸留し、清酒の香り成分を含む蒸留画分0.02Lと
蒸留残液1.99Lを得た。このときの留去率は8.2
%であった。蒸留画分はエタノール濃度63.6%であ
り、蒸留残液はエタノール濃度9.6%、日本酒度−4
1、酸度4.1であった。蒸留残液の分析には0.1L
を使用した。蒸留残液を実施例2と同様の方法で再び蒸
留し、エタノール濃度7.6%、日本酒度−45、酸度
4.1の蒸留残液1.86Lを得た。このときの留去率
は28.4%であった。
【0056】この蒸留残液に活性炭0.35gを加えて
活性炭で精製を行った後、最初の蒸留操作で回収した清
酒の香り成分を含む蒸留画分の全量を加えたところ、エ
タノール濃度8.1%、日本酒度−43、酸度4.1、
カプロン酸エチル濃度1.02ppm、カプリル酸エチ
ル濃度0.075ppm、酢酸イソアミル濃度0.96
3ppm、アセトアルデヒド濃度5.14ppm、イソ
ブチルアルデヒド濃度0.003ppm、イソバレルア
ルデヒド濃度0.002ppm、イソアミルアルコール
濃度25.0ppm、ノルマルプロパノール濃度19.
9ppm、イソブタノール濃度5.61ppm、ピルビ
ン酸濃度20.2ppmおよび酵母溶出物濃度0.17
5mMの清酒が得られた。これを比較酒(3)とした。
【0057】
【比較例4】表1において四段を2.0倍量とし、五段
を3.0倍量とした以外は、表1と同様の仕込配合率で
留後15日まで発酵させて、エタノール濃度10.5
%、日本酒度−46、酸度3.4、カプロン酸エチル濃
度1.14ppm、カプリル酸エチル濃度0.079p
pm、酢酸イソアミル濃度1.01ppm、アセトアル
デヒド濃度7.37ppm、イソブチルアルデヒド濃度
0.042ppm、イソバレルアルデヒド濃度0.00
3ppm、イソアミルアルコール濃度41.6ppm、
ノルマルプロパノール濃度38.9ppm、イソブタノ
ール濃度18.2ppm、ピルビン酸濃度20.1pp
mおよび酵母溶出物濃度0.178mMの原料清酒を製
造した。
【0058】実施例2と同様の方法で原料清酒2.0L
を蒸留し、清酒の香り成分を含む蒸留画分0.02Lと
蒸留残液1.99Lを得た。このときの留去率は8.1
%であった。蒸留画分はエタノール濃度63.6%であ
り、蒸留残液はエタノール濃度9.7%、日本酒度−4
7、酸度3.4であった。蒸留残液の分析には0.1L
を使用した。蒸留残液を実施例2と同様の方法で再び蒸
留し、エタノール濃度5.8%、日本酒度−54、酸度
3.4の蒸留残液1.87Lを得た。このときの留去率
は45.7%であった。
【0059】この蒸留残液に活性炭0.35gを加えて
活性炭で精製を行った後、最初の蒸留操作で回収した清
酒の香り成分を含む蒸留画分の全量を加えたところ、エ
タノール濃度6.3%、日本酒度−53、酸度3.4、
カプロン酸エチル濃度1.07ppm、カプリル酸エチ
ル濃度0.072ppm、酢酸イソアミル濃度0.93
3ppm、アセトアルデヒド濃度4.43ppm、イソ
ブチルアルデヒド濃度0.002ppm、イソバレルア
ルデヒド濃度0.002ppm、イソアミルアルコール
濃度21.1ppm、ノルマルプロパノール濃度16.
6ppm、イソブタノール濃度4.90ppm、ピルビ
ン酸濃度18.7ppmおよび酵母溶出物濃度0.17
6mMの清酒が得られた。これを比較酒(4)とした。
【0060】
【比較例5】表1において四段を0.1倍量とし、五段
を省略した以外は、表1と同様の仕込配合率で、留後1
5日まで発酵させて、エタノール濃度17.4%、日本
酒度−10、酸度2.7、カプロン酸エチル濃度1.8
4ppm、カプリル酸エチル濃度0.129ppm、酢
酸イソアミル濃度1.73ppm、アセトアルデヒド濃
度12.2ppm、イソブチルアルデヒド濃度0.06
9ppm、イソバレルアルデヒド濃度0.005pp
m、イソアミルアルコール濃度69.8ppm、ノルマ
ルプロパノール濃度65.8ppm、イソブタノール濃
度29.4ppm、ピルビン酸濃度32.5ppmおよ
び酵母溶出物濃度0.295mMの原料清酒を製造し
た。
【0061】この清酒2.0Lに活性炭0.4gを加え
て活性炭で精製を行った後、汲水で2.12倍希釈した
ところ、エタノール濃度8.2%、日本酒度−2、酸度
1.2、カプロン酸エチル濃度0.862ppm、カプ
リル酸エチル濃度0.058ppm、酢酸イソアミル濃
度0.815ppm、アセトアルデヒド濃度5.74p
pm、イソブチルアルデヒド濃度0.030ppm、イ
ソバレルアルデヒド濃度0.002ppm、イソアミル
アルコール濃度32.7ppm、ノルマルプロパノール
濃度30.4ppm、イソブタノール濃度13.3pp
m、ピルビン酸濃度15.4ppmおよび酵母溶出物濃
度0.140mMの清酒が得られた。これを比較酒
(5)とした。
【0062】
【比較例6】表1に示す仕込配合率で留後9日まで発酵
させて、エタノール濃度12.5%、日本酒度−38、
酸度2.8、カプロン酸エチル濃度2.25ppm、カ
プリル酸エチル濃度0.223ppm、酢酸イソアミル
濃度2.05ppm、アセトアルデヒド濃度6.11p
pm、イソブチルアルデヒド濃度0.075ppm、イ
ソバレルアルデヒド濃度0.008ppm、イソアミル
アルコール濃度104ppm、ノルマルプロパノール濃
度37.8ppm、イソブタノール濃度22.9pp
m、ピルビン酸濃度99.2ppmおよび酵母溶出物濃
度0.050mMの原料清酒を製造した。
【0063】実施例2と同様の方法で原料清酒2.0L
を蒸留し、清酒の香り成分を含む蒸留画分0.02Lと
蒸留残液1.99Lを得た。このときの留去率は6.8
%であった。蒸留画分はエタノール濃度67.9%であ
り、蒸留残液はエタノール濃度11.7%、日本酒度−
39、酸度2.8であった。蒸留残液の分析には0.1
Lを使用した。蒸留残液を実施例2と同様の方法で再び
蒸留し、エタノール濃度7.5%、日本酒度−46、酸
度2.8の蒸留残液1.87Lを得た。このときの留去
率は40.8%であった。
【0064】この蒸留残液に活性炭0.35gを加えて
活性炭で精製を行った後、最初の蒸留操作で回収した清
酒の香り成分を含む蒸留画分の全量を加えたところ、エ
タノール濃度8.1%、日本酒度−45、酸度2.8、
カプロン酸エチル濃度2.10ppm、カプリル酸エチ
ル濃度0.208ppm、酢酸イソアミル濃度1.86
ppm、アセトアルデヒド濃度3.90ppm、イソブ
チルアルデヒド濃度0.004ppm、イソバレルアル
デヒド濃度0.004ppm、イソアミルアルコール濃
度55.9ppm、ノルマルプロパノール濃度17.0
ppm、イソブタノール濃度6.40ppm、ピルビン
酸濃度98.7ppmおよび酵母溶出物濃度0.050
mMの清酒が得られた。これを比較酒(6)とした。
【0065】
【比較例7】実施例1記載の試験酒(1)に、カプロン
酸エチル濃度11.4ppm、カプリル酸エチル濃度
1.09ppm、酢酸イソアミル濃度11.2ppm、
アセトアルデヒド濃度25.8ppm、イソブチルアル
デヒド濃度0.053ppm、イソバレルアルデヒド濃
度0.052ppmになるように市販試薬を添加した。
これを比較酒(7)とした。
【0066】
【比較例8】実施例1記載の試験酒(1)に、イソアミ
ルアルコール濃度93.0ppm、ノルマルプロパノー
ル濃度64.4ppm、イソブタノール濃度46.7p
pmになるように市販試薬を添加した。これを比較酒
(8)とした。
【0067】
【比較例9】実施例1記載の原料清酒2.0Lを実施例
2と同様の方法で蒸留し、清酒の香り成分を含む蒸留画
分0.02Lと蒸留残液1.99Lを得た。このときの
留去率は6.7%であった。蒸留画分はエタノール濃度
70.1%であり、蒸留残液はエタノール濃度13.3
%、日本酒度−31、酸度3.1であった。蒸留残液の
分析には0.1Lを使用した。蒸留残液を再び実施例2
と同様の方法で蒸留して、エタノール濃度5.9%、日
本酒度−43、酸度3.1の蒸留残液1.85Lを得
た。このときの留去率は59.5%であった。
【0068】この蒸留残液1.5Lに活性炭0.3gを
加えて活性炭で精製を行い、エタノール濃度5.9%、
日本酒度−43、酸度3.1、カプロン酸エチル濃度
0.002ppm、カプリル酸エチル濃度0.002p
pm、酢酸イソアミル濃度0.003ppm、アセトア
ルデヒド濃度3.65ppm、イソブチルアルデヒド濃
度0.003ppm、イソバレルアルデヒド濃度0.0
01ppm、イソアミルアルコール濃度20.0pp
m、ノルマルプロパノール濃度15.0ppm、イソブ
タノール濃度3.50ppmの清酒を得た。
【0069】この清酒1.0Lに、汲水0.93Lおよ
び96%エタノール0.07Lを加えたところ、エタノ
ール濃度6.3%、日本酒度−14、酸度1.6、ピル
ビン酸濃度12.8ppmおよび酵母溶出物濃度0.1
20mMの清酒が得られた。この清酒の香味成分濃度
は、ガスクロマトグラフィー法の測定限界付近にあり、
正確な分析が困難であったため、加えた汲水および96
%エタノールによる希釈率から、この清酒の香味成分濃
度を算出した。算出した濃度は、カプロン酸エチル濃度
0.001ppm、カプリル酸エチル濃度0.001p
pm、酢酸イソアミル濃度0.0015ppm、アセト
アルデヒド濃度1.83ppm、イソブチルアルデヒド
濃度0.0015ppm、イソバレルアルデヒド濃度
0.0005ppm、イソアミルアルコール濃度10.
0ppm、ノルマルプロパノール濃度7.50ppm、
イソブタノール濃度1.75ppmである。これを比較
酒(9)とした。
【0070】
【比較例10】表1に示す仕込配合率で留後20日まで
発酵させて、エタノール濃度14.8%、日本酒度−2
3、酸度2.9、カプロン酸エチル濃度1.03pp
m、カプリル酸エチル濃度0.077ppm、酢酸イソ
アミル濃度0.910ppm、アセトアルデヒド濃度
5.81ppm、イソブチルアルデヒド濃度0.049
ppm、イソバレルアルデヒド濃度0.004ppm、
イソアミルアルコール濃度35.1ppm、ノルマルプ
ロパノール濃度46.2ppm、イソブタノール濃度1
9.1ppm、ピルビン酸濃度15.3ppmおよび酵
母溶出物濃度0.489mMの原料清酒を製造した。
【0071】実施例2と同様の方法で原料清酒2.0L
を蒸留し、清酒の香り成分を含む蒸留画分0.02Lと
蒸留残液1.99Lを得た。このときの留去率は6.4
%であった。蒸留画分はエタノール濃度70.2%であ
り、蒸留残液はエタノール濃度13.9%、日本酒度−
24、酸度2.9であった。蒸留残液の分析には0.1
Lを使用した。蒸留残液を実施例2と同様の方法で再び
蒸留し、エタノール濃度7.6%、日本酒度−36、酸
度3.0の蒸留残液1.85Lを得た。このときの留去
率は50.0%であった。
【0072】この蒸留残液に活性炭0.35gを加えて
活性炭で精製を行った後、最初の蒸留操作で回収した清
酒の香り成分を含む蒸留画分の全量を加えたところ、エ
タノール濃度8.2%、日本酒度−35、酸度2.9、
カプロン酸エチル濃度0.971ppm、カプリル酸エ
チル濃度0.071ppm、酢酸イソアミル濃度0.8
30ppm、アセトアルデヒド濃度3.35ppm、イ
ソブチルアルデヒド濃度0.002ppm、イソバレル
アルデヒド濃度0.002ppm、イソアミルアルコー
ル濃度17.0ppm、ノルマルプロパノール濃度1
9.1ppm、イソブタノール濃度4.88ppm、ピ
ルビン酸濃度15.1ppmおよび酵母溶出物濃度0.
486mMの清酒が得られた。これを比較酒(10)と
した。
【0073】
【比較試験例1】実施例および比較例で製造した試験酒
(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6)、
(7)および比較酒(1)、(2)、(3)、(4)、
(5)を、酒類の開発およびきき酒の仕事に携わり3年
以上の経験を有するきき酒の能力を持つパネル・メンバ
ー18名で、各パネル・メンバーの個々の判断基準に従
い、評価1として、水っぽくなく清酒らしさを保持して
いるか否かについての官能評価を行った。評価は3点法
(1−水っぽい、2−やや水っぽい、3−水っぽくな
い)で評価してもらい、全メンバーの点の平均点を算出
した。また、評価2として、酸味あるいは甘味が強すぎ
ず清酒らしさを保持しているか否かについての官能評価
を行った。評価は3点法(1−酸味あるいは甘味が非常
に強く清酒らしくない、2−酸味あるいは甘味がやや強
いが清酒として認められる、3−清酒らしい酸味および
甘味)で評価してもらい、全メンバーの点の平均値を算
出した。表2に各比較試験酒のエタノール濃度、日本酒
度、酸度およびパネル・メンバー18名の官能評価の平
均値を示す。
【0074】
【表2】
【0075】評価1では試験酒(1)、(2)、
(3)、(4)、(5)、(6)および(7)は、水っ
ぽく感じられなかったが、エタノール濃度3.5%の比
較酒(1)は、甘味酸味が強いにもかかわらず、水っぽ
く感じられると答えたパネル・メンバーが多かった。日
本酒度−19の比較酒(2)および希釈型の低アルコー
ル清酒で日本酒度−2、酸度1.2の比較酒(5)も、
水っぽく感じられると答えたパネル・メンバーが多かっ
た。また、試験酒(3)、(6)および(7)は、比較
酒よりも水っぽさが少なかったが、より好ましい範囲の
試験酒(1)、(2)および(4)よりは若干水っぽく
感じられると答えたパネル・メンバーが多かった。
【0076】評価2では、試験酒は酸味あるいは甘味が
強いとは感じられなかったが、日本酒度−43、酸度
4.1の比較酒(3)および日本酒度−53、酸度3.
4の比較酒(4)は、酸味あるいは甘味が強く感じられ
ると答えたパネル・メンバーが多かった。また、試験酒
(5)は比較酒より酸味あるいは甘味が強いとは感じら
れなかったが、より好ましい範囲の試験酒(1)、
(2)および(4)よりは若干酸味あるいは甘味が強く
感じられると答えたパネル・メンバーが多かった。した
がって、試験酒は極度の甘酸っぱさがなくても、水っぽ
さを感じさせない味を呈し、全体としての評価が高い清
酒であった。なかでも試験酒(1)、(2)および
(4)の評価が高かった。
【0077】
【比較試験例2】実施例および比較例で製造した試験酒
(1)、(4)および比較酒(7)、(8)、(9)
を、比較試験例1と同じパネル・メンバー18名で清酒
らしい香りについて官能評価を行った。清酒らしい香り
についての評価は、この清酒の持つ香りを清酒らしく感
じるか否かを官能評価で総合的に判断し、5点法(1−
清酒らしく感じない、3−普通、5−清酒らしく感じ
る)で評価してもらい、全メンバーの点の平均値を算出
した。表3にパージアンドトラップガスクロマトグラフ
ィー法およびヘッドスペースガスクロマトグラフィー法
により求めた香気成分の濃度、およびパネル・メンバー
18名の官能評価の平均値を示す。
【0078】
【表3】
【0079】きき酒による官能評価もあわせて行った結
果、本発明の清酒である試験酒(1)および(4)に
は、清酒らしい香りが認められたが、本発明に該当しな
いもの、すなわち、試薬添加により高級アルコール以外
の香気成分を強化した比較酒(7)は、香気が強く不自
然さが目立ち、清酒らしく感じられないと答えたパネル
・メンバーが多かった。また、試薬添加により高級アル
コールの香気成分を強化した比較酒(8)は、苦味や渋
味、あるいは水っぽさが感じられ、全体として清酒の味
のバランスが崩れていたと答えたパネル・メンバーが多
かった。希釈により香気成分を弱めた比較酒(9)は、
香気成分が少ないと同時に、味が少なくなって水っぽさ
が感じられたと答えたパネル・メンバーが多かった。
【0080】
【比較試験例3】実施例および比較例で製造した試験酒
(1)、(4)および比較酒(6)を、比較試験例1と
同じパネル・メンバー18名で、各パネル・メンバーの
個々の判断基準に従って、未熟感のする香味があるか否
かについて官能評価を行った。評価は3点法(1−未熟
感のする香味が強くある、2−未熟感のする香味がやや
ある、3−未熟感のする香味を感じない)で評価しても
らい、全メンバーの点の平均値を算出した。表4に各試
験酒のピルビン酸濃度、およびパネル・メンバー18名
の官能評価の平均値を示す。
【0081】
【表4】
【0082】ピルビン酸濃度の低い試験酒(1)および
(4)には、未熟感のする香味はあまり認められなかっ
たが、発酵を中断したもろみから製造したピルビン酸濃
度の高い比較酒(6)には、未熟感のする香味が認めら
れたと答えたパネル・メンバーが多かった。また、市販
の低アルコール清酒(エタノール濃度8.2%〜10.
9%)および一般清酒(エタノール濃度14%〜16
%)を、上記と同様に官能評価を行った。表5に市販の
低アルコール清酒および一般清酒のピルビン酸濃度、お
よびパネル・メンバー18名の官能評価の平均値を示
す。
【0083】
【表5】 ピルビン酸濃度の低い市販一般清酒には、未熟感のする
香味はあまり認められなかったが、ピルビン酸濃度の高
い市販低アルコール清酒には、未熟感のする香味がある
程度認められたと答えたパネル・メンバーが多かった。
【0084】
【比較試験例4】実施例および比較例で製造した試験酒
(1)、(2)および比較酒(2)、(10)を、比較
試験例1と同じパネル・メンバー18名で、各パネル・
メンバーの個々の判断基準に従って、苦味、渋味および
雑味等について官能評価を行った。評価は3点法(1−
苦味、渋味および雑味等が強くある、2−苦味、渋味お
よび雑味等がややある、3−苦味、渋味および雑味等を
感じない)で評価してもらい、全メンバーの点の平均値
を算出した。表6に各試験酒のS−アデノシルメチオニ
ンとその加水分解物であるメチルチオアデノシン、両者
の合計である酵母溶出物濃度、およびパネル・メンバー
18名の官能評価の平均値を示す。
【0085】
【表6】
【0086】酵母溶出物濃度の低い試験酒(1)および
(2)には、苦味、渋味および雑味等はあまり認められ
なかったが、酵母溶出物濃度の高い比較酒(2)および
(10)には、苦味、渋味および雑味等が認められたと
答えたパネル・メンバーが多かった。また、市販の低ア
ルコール清酒および一般清酒を用いて、同様に官能評価
を行った。表7に市販の低アルコール清酒および一般清
酒のS−アデノシルメチオニンとその加水分解物である
メチルチオアデノシン、両者の合計である酵母溶出物濃
度、およびパネル・メンバー18名の官能評価の平均値
を示す。
【0087】
【表7】 酵母溶出物濃度の高い市販低アルコール清酒(4)およ
び(8)には、苦味、渋味および雑味等が認められたと
答えたパネル・メンバーが多かった。
【0088】
【発明の効果】本発明の低アルコール清酒は、いわゆる
吟醸香、芳醇香、麹香などの清酒の香りの強さと清酒自
体の風味とのバランスがよく、清酒特有の香りが保持さ
れている。また、低アルコールであっても水っぽさがな
い上、酸味および甘味が適度な清酒らしさの保持された
低アルコール清酒を得ることができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平4−222585(JP,A) 特開 平9−70287(JP,A) 特公 昭40−8794(JP,B1) 日本醸造協会雑誌 70[8](1975) p.581−584 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C12G 3/08 C12G 3/02 119

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 エタノール濃度4.0〜12.0%、日
    本酒度−50〜−25、酸度1.5〜4.0、カプロン
    酸エチル濃度0.05〜10.0ppm、イソアミルア
    ルコール濃度15.0〜90.0ppm、ノルマルプロ
    パノール濃度10.0〜60.0ppm、イソブタノー
    ル濃度4.0〜40.0ppmであり、清酒の香味が保
    持された低アルコール清酒。
  2. 【請求項2】 エタノール濃度6.0〜9.0%、日本
    酒度−45〜−30、酸度2.0〜4.0、カプロン酸
    エチル濃度0.05〜3.0ppm、イソアミルアルコ
    ール濃度15.0〜50.0ppm、ノルマルプロパノ
    ール濃度10.0〜40.0ppm、イソプタノール濃
    4.0〜20.0ppmであり、清酒の香味が保持さ
    れた低アルコール清酒。
  3. 【請求項3】 ピルビン酸濃度が90.0ppm以下で
    ある請求項1または請求項2に記載の清酒の香味が保持
    された低アルコール清酒。
  4. 【請求項4】 低アルコール清酒が穀物、麹、水および
    酵母による醸造酒であることを特徴とする請求項1に記
    載の清酒の香味が保持された低アルコール清酒。
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