JP3034147B2 - 耐食性摺接部材およびその製造方法 - Google Patents

耐食性摺接部材およびその製造方法

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JP3034147B2
JP3034147B2 JP10552593A JP10552593A JP3034147B2 JP 3034147 B2 JP3034147 B2 JP 3034147B2 JP 10552593 A JP10552593 A JP 10552593A JP 10552593 A JP10552593 A JP 10552593A JP 3034147 B2 JP3034147 B2 JP 3034147B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、例えば遮断器の操作
機構などに多用されるリンク機構の摺接部材に関し、特
にメンテナンスを必要としない耐食性の摺接部材及びそ
の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】図12は従来の摺接部材を示す断面図で
あり、図において、1は摺接部基材、8はグリースであ
る。さらに、図13は特開昭61ー171964号公報
に示された従来の摺接部材を示す断面図であり、図にお
いて、1は摺接部基材、9は硬質耐摩材、10は黒鉛で
ある。
【0003】次に動作について説明する。摺接部材が摺
接部基材1のままならば、例えば、リンク機構の摺接部
で、経年的に酸化劣化や腐食などが発生するだけでな
く、異常摩耗、焼付きが発生し、動作不良のような不具
合が発生する。そこでこれらの対策として、図12の例
のように、グリース8を設けることにより、基材の耐食
性を保つと同時に、摺接部材どうしが接触するのを避け
ようとする方法がとられている。また、図13の例のよ
うに、黒鉛10を内在させた摺接部基材1を用い、その
表面に多数の凹部を形成し、そこに硬質耐摩材9を充填
する方法がとられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、図12
に示す例のように、グリースを塗布したものでは、使用
環境や経年的な酸化により劣化し、これに起因して動作
特性を損なうだけでなく、動作不良をおこすこともあ
り、定期的なグリース補給という保守点検をしなければ
ならない等の問題がある。また、図13に示す例では、
摺接部材の製造が面倒でコストが高くなるだけでなく、
耐食性に乏しいため、経年的に劣化する等の問題があ
る。
【0005】この発明は、上記のような問題点を解消す
るためになされたもので、リンク機構等の摺接部材にグ
リースを塗布することなく、メンテナンスなしで長期間
に渡って動作特性を安定させ、製作が容易な耐食性の摺
接部材を得ることを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】請求項1に記載の発明に
係る耐食性摺接部材は、基材上に、NiもしくはNi
基、またはCrもしくはCr基よりなる金属中に、硬質
粒子が分散した耐食性被膜を形成すると共に、基材近傍
の硬質粒子の分散密度を、基材より離れた被膜内部の硬
質粒子の分散密度より大きくなるようにしたものであ
る。
【0007】請求項に記載の発明に係る耐食性摺接部
材は、PもしくはBあるいはWとNiの金属間化合物か
らなる微細粒子を、基材近傍の分散密度が被膜表面の分
散密度より大きくなるように密度勾配を設けた微細分散
粒子を含んだ構造を持つNi基合金からなる被膜を基材
に形成したものである。
【0008】請求項に記載の発明に係る耐食性摺接部
材は、基材に施された耐食性被膜内部の自己潤滑性粒子
の分散密度が基材近傍より被膜表面の方が多くなるよう
に、分散密度に勾配がある自己潤滑性粒子をもつ耐食性
被膜を形成したものである。
【0009】請求項に記載の発明に係る耐食性摺接部
材は、基材に施された耐食性被膜内部の硬質粒子の分散
密度が被膜表面より基材近傍の方が多くなるように、分
散密度に勾配がある硬質粒子をもち、かつ、基材に施さ
れた耐食性被膜内部の自己潤滑性粒子の分散密度が、基
材近傍より被膜表面の方が多くなるように、分散密度に
勾配がある自己潤滑性粒子をもつ耐食性被膜を形成した
ものである。
【0010】請求項に記載の発明に係る耐食性摺接部
材の製造方法は、基材にNi基析出硬化型合金を非晶質
状態のままで被膜形成した後、上記被膜に光照射し、非
晶質Niを残した状態で、これらのNi化合物を上記被
膜中に析出したものである。
【0011】請求項に記載の発明に係る耐食性摺接部
材の製造方法は、基材にNiを非晶質状態のままで被膜
形成した後、イオンを注入し、上記被膜中に非晶質Ni
を残した状態で、これらのNi化合物を上記被膜中に析
出したものである。
【0012】請求項に記載の発明に係る耐食性摺接部
材の製造方法は、硬質粒子を懸濁させためっき液中に基
材を浸漬し、被膜形成中にめっき液中の硬質粒子濃度を
減少させ、上記被膜中の硬質粒子に密度勾配を形成した
ものである。
【0013】請求項に記載の発明に係る耐食性摺接部
材の製造方法は、基材にNi基析出硬化型合金を被膜形
成する時にめっき液のNi化合物の濃度を変化させるこ
とにより、被膜表面になるにつれて、Ni化合物の含有
率を小さくなるように被膜形成した後、加熱処理を加え
ることにより、Ni化合物の微細粒子に密度勾配を持た
せて析出したものである。
【0014】請求項に記載の発明に係る耐食性摺接部
材の製造方法は、自己潤滑性粒子を懸濁させためっき液
中に基材を浸漬し、被膜形成中にめっき液中の自己潤滑
性粒子濃度を増加させ、上記被膜中の自己潤滑性粒子に
密度勾配を形成したものである。
【0015】請求項10に記載の発明に係る耐食性摺接
部材の製造方法は、硬質粒子と自己潤滑性粒子の各々が
懸濁しためっき液中に基材を浸漬し、被膜の形成に伴
い、めっき液中の硬質粒子濃度を減少させるとともに、
めっき液中の自己潤滑性粒子濃度を増加させたものであ
る。
【0016】請求項11に記載の発明に係る耐食性摺接
部材の製造方法は、金属を被覆した硬質粒子となにも被
覆していない自己潤滑性粒子を懸濁した電気めっき液中
に基材を浸漬し被膜を形成したものである。
【0017】
【作用】請求項1記載の発明における耐食性摺接部材
は、基材上に、NiもしくはNi基、またはCrもしく
はCr基よりなる金属中に、硬質粒子が分散した耐食性
被膜を形成することにより、摺動部の硬度が向上するの
で、耐摩耗性が向上し、その耐食性が長期間保たれる。
また、耐食性被膜の基板近傍に硬質粒子が多く存在して
いるため、摺接部材で負荷する力により作用する被膜内
部の応力が緩和され、リンク機構等が動作しても、耐食
性を長期間維持できる。
【0018】請求項記載の発明における耐食性摺接部
材は、P、B、W等のNi化合物が基板近傍に多く析出
しているため、摺接部材で負荷する力により作用する被
膜内部の応力が緩和され、リンク機構等が動作しても、
非晶質のNi被膜の耐食性を長期間維持できる。
【0019】請求項記載の発明における耐食性摺接部
材は、耐食性被膜の表面に自己潤滑性粒子が多く存在し
ているため、リンク機構等の動作が円滑に行われ、耐食
性の被膜が剥がれにくくなり、耐食性を長期間維持でき
る。
【0020】請求項記載の発明における耐食性摺接部
材は、耐食性被膜の基板近傍に硬質粒子が多く存在して
いるため、摺接部材で負荷する力により作用する被膜内
部の応力が緩和され、さらに、被膜の表面に自己潤滑性
粒子が多く存在しているため、リンク機構等の動作が円
滑に行われ、耐食性の被膜が剥がれにくくなり、耐食性
を長期間維持できる。
【0021】請求項記載の発明における耐食性摺接部
材の製造方法は、Ni−P、Ni−B、Ni−W等の析
出硬化型合金を被膜形成した後、YAG、CO2等のレ
ーザを上記被膜に照射するため、耐食性の非晶質Niが
存在した状態で、P、B、W等のNi化合物を上記被膜
中に析出形成するため被膜全体としての硬度が向上する
ので、簡単な被膜の製造で耐食性を長期間維持できる。
【0022】請求項記載の発明における耐食性摺接部
材の製造方法は、Ni基合金、もしくは、Niを被膜形
成した後、イオン注入装置により、P、B、W等のイオ
ンを上記被膜に注入することにより、耐食性の非晶質N
iが存在した状態で、P、B、W等のNi化合物を上記
被膜中に析出形成するため被膜全体としての硬度が向上
するので、簡単な被膜の製造で耐食性を長期間維持でき
る。
【0023】請求項記載の発明における耐食性摺接部
材の製造方法は、硬質粒子が懸濁した耐食性のめっき液
中に基材を浸漬し、被膜の形成の進行に伴って、めっき
液中の硬質粒子の濃度を減少させるているので、摺接部
材で負荷する力により作用する被膜内部の応力が緩和さ
れるので、簡単な製造で耐食性を長期間維持できる。
【0024】請求項記載の発明における耐食性摺接部
材の製造方法は、Ni−P、Ni−B,Ni−W等の析
出硬化型合金を基材近傍から被膜表面になるにつれて、
P、B、W等の含有率を小さくなるように被覆した後、
加熱処理により、P、B、W等のNi化合物を密度勾配
を設けて析出させているので、摺接部材で負荷する力に
より作用する被膜内部の応力が緩和されるので、簡単な
製造で耐食性を長期間維持できる。
【0025】請求項記載の発明における耐食性摺接部
材の製造方法は、自己潤滑性粒子が懸濁した耐食性のめ
っき液中に基材を浸漬し、被膜の形成の進行に伴って、
めっき液中の自己潤滑性粒子の濃度を増加させるている
ので、潤滑性がよくなり、リンク機構等の動作が円滑に
行われるので、被膜の損傷を防ぐことになり、簡単な製
造で耐食性を長期間維持できる。
【0026】請求項10記載の発明における耐食性摺接
部材の製造方法は、硬質粒子と自己潤滑性粒子の各々が
懸濁しためっき液中に基材を浸漬し、被膜形成中に、自
己潤滑性粒子を多く含むめっき液を追加することによ
り、硬質粒子が基材近傍に多く存在し、表面になるにつ
れて自己潤滑性粒子が多く存在するようになるため、潤
滑性がよくなり、リンク機構等の動作が円滑に行われ、
被膜の損傷を防ぎ、かつ、基材近傍の硬質粒子のため摺
接部材で負荷する力により作用する被膜内部の応力が緩
和されるので、簡単な製造で耐食性を長期間維持でき
る。
【0027】請求項11記載の発明における耐食性摺接
部材の製造方法は、粒子表面に金属が被覆されている硬
質粒子となにも被覆していない自己潤滑性粒子の各々が
懸濁した電気めっき液中に基材を浸漬し被膜を形成する
ため、導電性をもった金属を被覆した硬質粒子が基材近
傍に多く存在し、表面になるにつれて自己潤滑性粒子が
多く存在するようになるため、潤滑性がよくなり、リン
ク機構等の動作が円滑に行われ、被膜の損傷を防ぎ、か
つ、基材近傍の硬質粒子のため摺接部材で負荷する力に
より作用する被膜内部の応力が緩和されるので、簡単な
製造で耐食性を長期間維持できる。
【0028】
【実施例】以下、この発明の実施例を図について説明す
る。 実施例1.図1はこの発明の実施例1による耐食性摺接部材を示す
断面図である。 図において、1は摺接部基材でこの場合
は鉄鋼材料であり、2は耐食性被膜でこの場合はCr系
非晶質合金電気めっきであり、3は耐摩耗性被膜でこの
場合はTiNのイオンプレーティングである。
【0029】リンク機構等の動作が行われると機構内の
摺接部材が摺動するが、TiNの耐摩耗性被膜がある
ため、被膜は摩耗しにくくなる。また、経年的な耐食性
はCr系非晶質合金電気めっきで摺接基材1が保護さ
れている。さらに耐摩耗性被膜3が耐食性被膜2の表面
側にあるため、耐食性被膜2は損傷せず、耐食性を長期
間保つことができるようになる。
【0030】なお、Cr系非晶質合金電気めっきは膜厚
が5〜50ミクロン、TiNのイオンプレーティングの
膜厚は、1ミクロン以上あれば十分に効果がある。ま
た、摺接部基材は鉄鋼材料に限らないことはいうまでも
ない。
【0031】実施例2.実施例2は 耐食性摺接部材の他の実施例であり、前記実
施例1との相違点に限って説明する。
【0032】前記実施例1では、耐食性被膜2にはCr
系非晶質合金電気めっきとしたが、Cr系非晶質合金無
電解めっきでもよく、Ni系非晶質合金電気めっき、N
i系非晶質合金無電解めっき等であってもよく、また、
耐摩耗性被膜3としてTiNのイオンプレーティングだ
けでなく、TiCやTiNやダイヤモンドのような高硬
度の被膜であればよく、上記実施例1と同様の効果を奏
する。
【0033】実施例3.図2はこの発明の実施例3による耐食性摺接部材を示す
断面図である。 図において、1は摺接部基材でこの場合
は鉄鋼材料のSUS440C(JIS規格)であり、2
は耐食性被膜でこの場合は膜厚50ミクロンのNi−P
の非晶質合金無電解めっきであり、4はNi化合物でこ
の場合はNi3Pである。
【0034】リンク機構等の動作が行われると機構内の
摺接部材が摺動するが、Ni化合物4(Ni3P)が析
出しているため、耐食性被膜であるNi−Pの非晶質合
金無電解めっきの被膜全体としての硬度が向上し、例
えば41J/cm2のYAGレーザを照射しNi3Pを
析出させると、被膜全体のマイクロビッカース硬度は約
900Hv(実測値)になるため、被膜全体としての耐
摩耗性が向上し(Ni3Pが析出していない基の非晶質
合金の硬度は420Hv)、Ni−Pの非晶質合金無電
解めっき部分が摺動によっても損傷しにくくなり、その
耐食性が長期間保たれることになる。なお、摺接部基材
は鉄鋼材料に限らないことはいうまでもない。
【0035】実施例4.実施例4は 耐食性摺接部材の他の実施例であり、前記実
施例3との相違点に限って説明する。
【0036】前記実施例3では、NiーPの非晶質無電
解めっきの膜厚は50ミクロンであったが、5ミクロン
以上の膜厚であれば上記実施例3と同様の効果を奏す
る。
【0037】実施例5.実施例5は 耐食性摺接部材の他の実施例であり、前記実
施例3との相違点に限って説明する。
【0038】前記実施例3では、耐食性被膜2Ni−
Pの非晶質無電解めっきとしたが、Ni−Pの非晶質電
気めっきでもよく、Ni−Bの非晶質無電解めっき、N
i−Bの非晶質電気めっき、Ni−Wの非晶質無電解め
っき、Ni−Wの非晶質電気めっきであってもよい。ま
た、Ni−Pの無電解めっき及び電気めっきの場合に
は、Ni化合物4は、Ni3Pでなくても、Ni5P
2、Ni8P3等NiとPとの化合物であれば、何でも
よい。さらに、Ni−Bの無電解めっき及び電気めっき
の場合もNi化合物4は、NiとBとの化合物であれ
ば、何でもよく、Ni−Wの無電解めっき及び電気めっ
きの場合もNi化合物4は、NiとWとの化合物であれ
ば、何でもよい。また、それらの耐食性被膜の膜厚は実
施例4で記述したように5ミクロン以上であればよい。
何れの場合でも上記実施例3と同様の効果を奏する。
【0039】実施例6.図3はこの発明の実施例6による耐食性摺接部材を示す
断面図であり、請求項1に係わる実施例である。 図にお
いて、1は摺接部基材でこの場合は銅合金であり、2は
耐食性被膜でこの場合は膜厚40ミクロンの非晶質Ni
の無電解めっきであり、5は硬質粒子でこの場合は直径
5〜10ミクロンのSiC粒子である。SiC粒子5は
図3に示すように、被膜表面より基材近傍の方が多くな
るように分散密度に勾配がつけられている。
【0040】リンク機構等の動作が行われると機構内の
摺接部材が摺動するが、基材近傍に多く存在するSiC
粒子のため、摺接部材で負荷しなければならない力によ
り作用する被膜内部の応力が緩和され、耐食性を持った
非晶質Niの無電解めっきが摺動によってもあまり損傷
を受けずに長期間保たれるようになる。なお、摺接部基
材は銅合金に限らないことはいうまでもない。
【0041】実施例7.実施例7は 耐食性摺接部材の他の実施例であり、前記実
6との相違点に限って説明する。
【0042】前記実施例6では耐食性被膜として、膜厚
40ミクロンの非晶質Ni無電解めっきとしたが、膜厚
は15ミクロン以上であれば、上記実施例6と同様の効
果を奏する。
【0043】実施例8.実施例8は 耐食性摺接部材の他の実施例であり、前記実
施例6との相違点に限って説明する。
【0044】前記実施例6では、硬質粒子5には直径5
〜10ミクロンのSiCとしたが、同程度の直径であれ
ば、ダイヤモンドやSiO2、Al2O3、ZrO2、
TiO2、Cr3C2、WC、B4C等であってもよ
い。また、膜厚は実施例7で記述したように15ミクロ
ン以上であればよい。何れの場合でも上記実施例6と同
様の効果を奏する。
【0045】実施例9.実施例9は 耐食性摺接部材の他の実施例であり、前記実
6との相違点に限って説明する。
【0046】前記実施例6では耐食性被膜として、非晶
質Ni無電解めっきとしたが、Ni−PやNi−W等の
非晶質のNi基無電解めっきでもよく、非晶質のNi基
電気めっき、非晶質Cr基無電解めっき、非晶質Cr基
電気めっき等でも、膜厚が15ミクロン以上であればよ
い。また、実施例8で記述したように硬質粒子はSi
C、ダイヤモンド、SiO2、Al2O3、ZrO2、
TiO2、Cr3C2、WC、B4C等であってもよ
い。何れの場合でも上記実施例6と同様の効果を奏す
る。
【0047】実施例10.図4はこの発明の実施例10による耐食性摺接部材を示
す断面図であり、請求項2に係わる実施例である。 図に
おいて、1は摺接部基材でこの場合は銅合金であり、2
は耐食性被膜でこの場合は膜厚40ミクロンの非晶質N
i−P無電解めっきであり、6はNi化合物でこの場合
はNi3Pである。
【0048】リンク機構等の動作が行われると機構内の
摺接部材が摺動するが、析出したNi3Pのため耐食性
の被膜である非晶質Ni−P無電解めっきの硬度が被膜
全体として向上し、とりわけ、基材近傍にNi3Pの析
出物が多いため、基材近傍に近ずくにつれて被膜硬度が
上昇する。また、Ni3Pの析出のため被膜内部の応力
が緩和され、摺動に伴う被膜全体としての損傷が少なく
なり、耐食性が長く保たれるようになる。なお、摺接部
基材は銅合金に限らないのはいうまでもない。
【0049】実施例11.実施例11は 耐食性摺接部材の他の実施例であり、前記
実施10との相違点に限って説明する。
【0050】前記実施例10では、NiーPの非晶質無
電解めっきの膜厚は40ミクロンであったが、5ミクロ
ン以上の膜厚であれば上記実施例10と同様の効果を奏
する。
【0051】実施例12.実施例12は 耐食性摺接部材の他の実施例であり、前記
実施例10との相違点に限って説明する。
【0052】前記実施例10では、耐食性被膜2にはN
i−Pの非晶質無電解めっきとしたが、Ni−Pの非晶
質電気めっきでもよく、Ni−Bの非晶質無電解めっ
き、Ni−Bの非晶質電気めっき、Ni−Wの非晶質無
電解めっき、Ni−Wの非晶質電気めっきであってもよ
い。また、Ni−Pの無電解めっき及び電気めっきの場
合には、Ni化合物4は、Ni3Pでなくても、Ni5
P2、Ni8P3等NiとPとの化合物であれば、何で
もよい。さらにNi−Bの無電解めっき及び電気めっき
の場合もNi化合物4は、NiとBとの化合物であれば
何でもよく、Ni−Wの無電解めっき及び電気めっきの
場合もNi化合物6は、NiとWとの化合物であれば、
何でもよい。また、それらの膜厚は実施例11で記述し
たように5ミクロン以上であればよい。何れの場合でも
上記実施例10と同様の効果を奏する。
【0053】実施例13.図5はこの発明の実施例13による耐食性摺接部材を示
す断面図であり、請求項3に係わる実施例である。 図に
おいて1は摺接部基材で、この場合は銅合金であり、2
は耐食性被膜で、この場合は膜厚40ミクロンの非晶質
Ni無電解めっきであり、7は自己潤滑性粒子で、この
場合は5〜15ミクロンの4ふっ化エチレン重合体(P
TFE)粒子である。
【0054】リンク機構等の動作が行われると機構内の
摺接部材が摺動するが、被膜表面に多く存在する自己潤
滑性粒子のために、機構等の動作が円滑に行われるよう
になり、被膜内部に多く存在する耐食性の非晶質Ni無
電解めっきが剥がれにくくなり、その耐食性を長く保つ
ようになる。なお、摺接部基材は銅合金に限らないのは
いうまでもない。
【0055】実施例14.実施例14は 耐食性摺接部材の他の実施例であり、前記
実施13との相違点に限って説明する。
【0056】前記実施例13では耐食性被膜として、膜
厚40ミクロンの非晶質Ni無電解めっきとしたが、膜
厚は15ミクロン以上であれば、上記実施例13と同様
の効果を奏する。
【0057】実施例15.実施例15は 耐食性摺接部材の他の実施例であり、前記
実施例13との相違点に限って説明する。
【0058】前記実施例13では、自己潤滑性粒子7に
は直径5〜15ミクロンのPTFEとしたが、同程度の
直径であれば、グラファイトや(CF)x、MoS2、
BN等であってもよい。また、膜厚は15ミクロン以上
であればよい。何れの場合でも上記実施例13と同様の
効果を奏する。
【0059】実施例16.実施例16は 耐食性摺接部材の他の実施例であり、前記
実施13との相違点に限って説明する。
【0060】前記実施例13では耐食性被膜として、非
晶質Ni無電解めっきとしたが、Ni−PやNi−W等
の非晶質のNi基無電解めっきでもよく、非晶質のNi
基電気めっき、非晶質Cr基無電解めっき、非晶質Cr
基電気めっき等でも、膜厚が15ミクロン以上であれば
よい。また、自己潤滑性粒子はPTFE、グラファイト
や(CF)x、MoS2、BN等であってもよい。何れ
の場合でも上記実施例13と同様の効果を奏する。
【0061】実施例17.図6はこの発明の実施例17による耐食性摺接部材を示
す断面図であり、請求項4に係わる実施例である。 図に
おいて、1は摺接部基材でこの場合は銅合金であり、2
は耐食性被膜でこの場合は膜厚40ミクロンの非晶質N
iの無電解めっきであり、5は硬質粒子でこの場合は直
径5〜10ミクロンのSiC粒子であり、7は自己潤滑
性粒子で、この場合は直径5〜15ミクロンのポリテト
ラフルオエチレン(PTFE)である。
【0062】リンク機構等の動作が行われると機構内の
摺接部材が摺動するが、基材近傍に多く存在するSiC
粒子のため、摺接部材で負荷しなければならない力によ
り作用する被膜内部の応力が緩和され、また、被膜表面
に多く存在するPTFE粒子のため機構等の動作が円滑
に行われ、被膜の主成分である耐食性を持った非晶質N
iの無電解めっきが、摺動によってもあまり損傷を受け
ずに長期間保たれるようになる。なお、摺接部基材は銅
合金に限らないのはいうまでもない。
【0063】実施例18.実施例18は 耐食性摺接部材の他の実施例であり、前記
実施例17との相違点に限って説明する。
【0064】前記実施例17では耐食性被膜として、膜
厚40ミクロンの非晶質Ni無電解めっきとしたが、膜
厚は15ミクロン以上であれば、上記実施例17と同様
の効果を奏する。
【0065】実施例19.実施例19は 耐食性摺接部材の他の実施例であり、前記
実施例17との相違点に限って説明する。
【0066】前記実施例17では、硬質粒子5には直径
5〜10ミクロンのSiCとしたが、同程度の直径であ
れば、ダイヤモンドやSiO2、Al2O3、ZrO
2、TiO2、Cr3C2、WC、B4C等であって
も、さらに自己潤滑性粒子7には直径5〜15ミクロン
のPTFE粒子としたが、同程度の直径であれば、グラ
ファイトや(CF)x、MoS2、BN等であってもよ
い。また、膜厚は15ミクロン以上であればよい。何れ
の場合でも上記実施例17と同様の効果を奏する。
【0067】実施例20.実施例20は 耐食性摺接部材の他の実施例であり、前記
実施17との相違点に限って説明する。
【0068】前記実施例17では耐食性被膜として、非
晶質Ni無電解めっきとしたが、Ni−PやNi−W等
の非晶質のNi基無電解めっきでもよく、非晶質のNi
基電気めっき、非晶質Cr基無電解めっき、非晶質Cr
基電気めっき等でも、膜厚が15ミクロン以上であれば
よい。また、硬質粒子はSiC、ダイヤモンド、SiO
2、Al2O3、ZrO2、TiO2、Cr3C2、W
C、B4C等であってもよく、さらに自己潤滑性粒子は
PTFE、グラファイト、(CF)x、MoS2、BN
等であってもよい。何れの場合でも上記実施例17と同
様の効果を奏する。
【0069】実施例21.実施例21は 耐食性摺接部材の製造方法の一実施例であ
り、図1は実施例21の方法によって製造された耐食性
摺接部材を示す断面図である。図において、1は摺接部
基材でこの場合は銅合金であり、2は耐食性被膜でこの
場合は非晶質のW−Coの電気めっきであり、3は結晶
質のW−Coの電気めっきである。
【0070】図7は、Co−W合金電気めっきの電流密
度と浴濃度をパラメータにしためっき被膜の結晶状態を
示す図である。図中のAm.は非晶質状態を示し、Cr
y.は結晶質状態を示し、Mix.はこれらの混合状態
を示す。図7から明らかなように、70at%以上のW
濃度を持つCo−W合金の電気めっきでは、めっき製造
中の電流密度によって非晶質状態になったり、結晶質状
態なったりすることができる。
【0071】そこで、70at%以上のW濃度を持つC
o−W合金の電気めっき被膜形成中に、例えば、80a
t%のW濃度の場合に電流密度を60A/dm2から1
0A/dm2に減少すれば、基材の上には非晶質のCo
−W電気めっきが形成された上に結晶質のCo−W電気
めっきが形成される。非晶質のCo−W電気めっきは耐
食性があり、結晶質のCo−W電気めっきは耐摩耗性が
あるので、基材表面の上に耐食性被膜を形成した後、さ
らに、耐摩耗性被膜を形成することができる。その結
果、耐食性を長期間保つことができるようになる。な
お、摺接部基材は銅合金に限らないのはいうまでもな
い。
【0072】実施例22.実施例22は 耐食性摺接部材の製造方法の一実施例であ
り、請求項5に記載の発明に係わるものである。図2は
実施例22の方法によって製造された耐食性摺接部材を
示す断面図である。図において、1は摺接部基材でこの
場合は銅合金であり、2は耐食性被膜でこの場合は非晶
質のNi−Pの無電解めっきであり、4はNi化合物で
この場合はNi3Pの析出物である。
【0073】まず、摺接基材1に非晶質の無電解Ni−
Pめっきを50ミクロンだけ施し、その後、41J/c
m2の強度を持つYAGレーザを上記めっき表面に照射
する。図8はこの実施例による被膜層の結晶構造を示す
X線回折結果のグラフで、縦軸がX線強度、横軸はブラ
ッグ角の2倍を表している。この図から明らかなよう
に、被膜層には、Ni3Pが析出していることがわか
る。このNi3Pが図2中のNi化合物である。また、
図8からNiは十分に結晶化しておらず、非晶質のNi
が残存していることがわかる。そのため、Ni3Pが非
晶質Ni被膜中に析出し、被膜全体の硬度を向上させ、
耐摩耗性を向上させ、かつ、非晶質のNi被膜により耐
食性が保たれる効果がある。
【0074】なお、この実施例では、耐食性被膜として
非晶質Ni−P無電解めっきを一例として示したが、実
施例5で記述したように、耐食性被膜2にはNi−Pの
非晶質無電解めっき以外に、Ni−Pの非晶質電気めっ
きでもよく、Ni−Bの非晶質無電解めっき、Ni−B
の非晶質電気めっき、Ni−Wの非晶質無電解めっき、
Ni−Wの非晶質電気めっきであってもよい。また、摺
接部基材は銅合金に限らないのはいうまでもない。
【0075】実施例23.実施例23は 耐食性摺接部材の製造方法の他の実施例で
あり、前記実施例22との相違点に限って説明する。
【0076】前記実施例22では、耐食性被膜2の膜厚
は50ミクロンとしたが、5ミクロン以上でればよく、
また、YAGレーザの強度は41J/cm2としたが、
Ni3Pが析出するに十分なビームエネルギーであれ
ば、非晶質Niが残存した状態でNi3Pが析出するた
め、十分に効果がある。
【0077】実施例24.実施例24は 耐食性摺接部材の他の実施例であり、前記
実施例22との相違点に限って説明する。
【0078】前記実施例22では、Ni化合物を析出さ
せるために41J/cm2のYAGレーザを用いたが、
Ni3Pが析出するに十分なビームエネルギーを持つC
O2レーザであっても上記実施例22と同等の効果を奏
する。
【0079】実施例25.実施例25は 耐食性摺接部材の製造方法の一実施例であ
り、請求項6に記載の発明に係わるものである。図2
実施例25の方法によって製造された耐食性摺接部材を
示す断面図である。図において、1は摺接部基材でこの
場合は銅合金であり、2は耐食性被膜でこの場合は非晶
質のNi−Pの無電解めっきであり、4はNi化合物で
この場合はNi3Pの析出物である。
【0080】まず、摺接基材1に非晶質の無電解Niめ
っきを施し、その後、Pイオンをイオン注入装置によっ
て被膜に注入する。その結果、被膜内にNi化合物を形
成することができる。そのため、Ni3Pが非晶質Ni
被膜中に析出し、被膜全体の硬度を向上させ、耐摩耗性
を向上させ、かつ、非晶質のNi被膜により耐食性が保
たれる効果がある。なお、摺接部基材は銅合金に限らな
いのはいうまでもない。
【0081】実施例26.実施例26は 耐食性摺接部材の他の実施例であり、前記
実施例25との相違点に限って説明する。
【0082】前記実施例25では、イオン注入装置によ
り注入したイオンはPイオンであったが、BイオンやW
イオンであっても、BとNiとの化合物やWとNiとの
化合物が非晶質Ni被膜に形成されるだけであり、上記
実施例25と同等の効果を奏する。
【0083】実施例27.実施例27は 耐食性摺接部材の製造方法の一実施例であ
り、請求項7に記載の発明に係わるものである。図3は
実施例27の方法によって製造された耐食性摺接部材を
示す断面図である。図において、1は摺接部基材でこの
場合は銅合金であり、2は耐食性被膜でこの場合は非晶
質のNiの無電解めっきであり、5は硬質粒子でこの場
合はSiC粒子である。
【0084】図9はNiの無電解めっき液にSiCを分
散させた場合のめっき液中の粒子濃度と被膜の粒子含有
率との関係を示した図である。図9から明らかなよう
に、めっき液の濃度を減少させることにより、被膜中の
SiC含有率が小さくなることがわかる。
【0085】そこで、めっき形成中にめっき液中のSi
C濃度を200g/lから25g/lになるように変化
させると、具体的にはSiCを含まないめっき液をめっ
き被膜中にめっき液に多量に注ぐことにより、被膜内で
SiC粒子の含有率を変化させることができ、被膜表面
ではSiCの濃度を小さく形成することができる。その
結果、基材近傍にはSiCが多く存在することになり、
摺接部材で負荷する力により作用する被膜内部の応力が
緩和され、機構等が動作しても耐食性を長期間保つこと
ができるようになる。なお、摺接部基材は銅合金に限ら
ないのは言うまでもない。
【0086】また、この実施例では、硬質粒子としてS
iCを取り上げたが、ダイヤモンドやSiO2、Al2
O3、ZrO2、TiO2、Cr3C2、WC、B4C
等の他の硬質粒子であっても図9と同様の傾向をもつた
め、本実施例と同様の効果を奏する。
【0087】実施例28.実施例28は 耐食性摺接部材の製造方法の一実施例であ
り、請求項8に記載の発明に係わるものである。図4は
実施例28の方法によって製造された耐食性摺接部材を
示す断面図である。図において、1は摺接部基材でこの
場合は銅合金であり、2は耐食性被膜でこの場合は非晶
質のNiーPの無電解めっきであり、6はNi化合物で
ある。
【0088】図10は無電解のNiめっきにおいて、め
っき液のpHとP含有率との関係を示した図である。図
10から明かなように、pHの濃度が増加することによ
り、P含有率が減少していることがわかる。
【0089】そこで、めっき形成中にめっき液中のpH
を3.5wt%から5.5wt%に変化させると、被膜
内でPの含有率を変化させることができ、被膜表面では
Pの濃度を小さく形成することができる。その結果、め
っき被膜形成後、加熱処理を加えることにより析出する
NiとPとの化合物の被膜内部の分布が図11に示すよ
うな勾配を形成する。そのため、摺接部材で負荷する力
により作用する被膜内部の応力が緩和され、機構等が
しても、非晶質Ni被膜の耐食性を長期間保つことが
できるようになる。なお、摺接部基材は銅合金に限らな
いのはいうまでもない。
【0090】また、この実施例では耐食性被膜として、
非晶質のNi−Pの無電解めっきを示したが、非晶質の
Ni−Pの電気めっき、非晶質のNi−Bの無電解や電
気のめっき、非晶質のNi−Wの無電解や電気のめっき
でも図10のような傾向を示すため、本実施例と同様の
効果を奏する。
【0091】実施例29.実施例29は 耐食性摺接部材の製造方法の一実施例であ
り、請求項9に記載の発明に係わるものである。図5は
実施例29の方法によって製造された耐食性摺接部材を
示す断面図である。図において、1は摺接部基材でこの
場合は銅合金であり、2は耐食性被膜でこの場合は非晶
質のNiの無電解めっきであり、7は自己潤滑性粒子で
ある。
【0092】自己潤滑性粒子も図9に示した傾向、すな
わち、めっき液中の粒子濃度を上げると被膜に形成され
る粒子含有率が増大する傾向がある。
【0093】そこで、めっき形成中にめっき液中の自己
潤滑性粒子の濃度を増加させると、具体的には自己潤滑
性粒子だけをめっき被膜中のめっき液に多量に追加する
ことにより、被膜内で自己潤滑性粒子の含有率を変化さ
せることができ、被膜表面では自己潤滑性粒子の濃度を
大きく形成することができる。その結果、被膜表面に自
己潤滑性粒子を多く存在することになり、機構等の動作
が円滑に行われ、耐食性被膜が剥がれにくくなり、耐食
性を長期間保つことができるようになる。なお、摺接部
基材は銅合金に限らないのはいうまでもない。
【0094】また、この実施例では、耐食性被膜として
非晶質のNiの無電解めっきの場合を示したが、非晶質
のNi基の無電解や電気めっきであればよく、さらに、
非晶質のCr基の無電解や電気めっきでも、本実施例と
同様の効果を奏する。
【0095】実施例30.実施例30は 耐食性摺接部材の製造方法の一実施例であ
り、請求項10に記載の発明に係わるものである。図5
実施例30の方法によって製造された耐食性摺接部材
を示す断面図である。図において、1は摺接部基材でこ
の場合は銅合金であり、2は耐食性被膜でこの場合は非
晶質のNiの無電解めっきであり、5は硬質粒子であ
り、7は自己潤滑性粒子である。
【0096】硬質粒子も自己潤滑性粒子も図9に示した
傾向、すなわち、めっき液中の粒子濃度を上げると被膜
に形成される粒子含有率が増大する傾向がある。
【0097】そこで、硬質粒子と自己潤滑性粒子の各々
が懸濁しためっき液中に基材を浸漬し、被膜形成中に、
自己潤滑性粒子を多く含むめっき液を追加することによ
り、めっき形成中にめっき液中の硬質粒子の濃度を減少
させ、かつ、自己潤滑性粒子の濃度を増加させることが
でき、被膜内で硬質粒子と自己潤滑性粒子のそれぞれの
含有率を変化させることができ、基材近傍では硬質粒子
の濃度を大きくし、被膜表面では自己潤滑性粒子の濃度
を大きく形成することができる。その結果、潤滑性がよ
くなり、被膜の損傷を防ぎ、かつ、基材近傍の硬質粒子
にため被膜内部の応力が緩和され、耐食性を長期間保つ
ことができるようになる。
【0098】実施例31.実施例31は 耐食性摺接部材の製造方法の一実施例であ
り、請求項11に記載の発明に係わるものである。図6
実施例31の方法によって製造された耐食性摺接部材
を示す断面図である。図において、1は摺接部基材でこ
の場合は銅合金であり、2は耐食性被膜でこの場合は非
晶質のNiの電気めっきであり、5は金属が被覆された
硬質粒子であり、7は何も被覆されていない自己潤滑性
粒子である。
【0099】金属が被覆された硬質粒子と何も被覆され
ていない自己潤滑性粒子の各々が懸濁しためっき液中に
基材を浸漬し、電気メッキにより被膜を形成すると、め
っき形成中にめっき液中の硬質粒子のみが基材近傍に引
き寄せられて、基材近傍では硬質粒子の濃度が大きくな
り、被膜表面では自己潤滑性粒子の濃度が大きく形成さ
れ、被膜内で硬質粒子と自己潤滑性粒子のそれぞれの含
有率を変化させることができる。その結果、潤滑性がよ
くなり、被膜の損傷を防ぎ、かつ、基材近傍の硬質粒子
にため被膜内部の応力が緩和され、耐食性を長期間保つ
ことができるようになる。
【0100】
【発明の効果】以上のように、請求項1に記載の発明に
よれば、基材上に、NiもしくはNi基、またはCrも
しくはCr基よりなる金属中に、硬質粒子が分散した耐
食性被膜が形成されているので、摺動部の硬度が向上
し、耐摩耗性が向上するため、その耐食性が長期間保た
れる。また、基材近傍に多く存在する硬質粒子のため
に、摺接部で負荷する力の作用する被膜内部の応力が緩
和され、非晶質のNi被膜の耐食性を長期間保つことが
できる。
【0101】また、請求項に記載の発明によれば、密
度勾配をもたせて析出させたNi化合物のために、基材
近傍の硬度が被膜表面の硬度より大きくなり、非晶質の
Ni被膜の耐食性を長期間保つことができる。
【0102】また、請求項に記載の発明によれば、被
膜表面に多く存在する自己潤滑性粒子のために、摺動を
円滑に動作させることになり、非晶質のNi被膜の耐食
性を長期間保つことができる。
【0103】また、請求項に記載の発明によれば、基
材近傍に多く存在する硬質粒子と被膜表面に多く存在す
る自己潤滑性粒子のために、負荷力により作用する被膜
内部の応力が緩和され、かつ、摺動を円滑に動作させる
ことになり、非晶質のNi被膜の耐食性を長期間保つこ
とができる。
【0104】また、請求項に記載の発明によれば、非
晶質Ni被膜の中に簡単に、かつ、自由にNi化合物を
形成することができ、耐食性を長期間保つことができる
効果がある。
【0105】また、請求項に記載の発明によれば、非
晶質Ni被膜の中に簡単に、かつ、自由にNi化合物を
形成することができ、耐食性を長期間保つことができる
効果がある。
【0106】また、請求項に記載の発明によれば、め
っき被膜形成の一プロセスとして簡単に取り込むことが
でき、低コストで製造でき、耐食性を長期間保つことが
できる効果がある。
【0107】また、請求項に記載の発明によれば、め
っき被膜形成の一プロセスとして簡単に取り込むことが
でき、低コストで製造でき、耐食性を長期間保つことが
できる効果がある。
【0108】また、請求項に記載の発明によれば、め
っき被膜形成の一プロセスとして簡単に取り込むことが
でき、低コストで製造でき、耐食性を長期間保つことが
できる効果がある。
【0109】また、請求項10に記載の発明によれば、
めっき被膜形成の一プロセスとして簡単に取り込むこと
ができ、低コストで製造でき、耐食性を長期間保つこと
ができる効果がある。
【0110】また、請求項11に記載の発明によれば、
めっき被膜形成の一プロセスとして簡単に取り込むこと
ができ、低コストで製造でき、耐食性を長期間保つこと
ができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施例1における耐食性摺接部材を
示す断面図である。
【図2】この発明の実施例3における耐食性摺接部材を
示す断面図である。
【図3】この発明の実施例6における耐食性摺接部材を
示す断面図である。
【図4】この発明の実施例10における耐食性摺接部材
を示す断面図である。
【図5】この発明の実施例13における耐食性摺接部材
を示す断面図である。
【図6】この発明の実施例17における耐食性摺接部材
を示す断面図である。
【図7】この発明の実施例21におけるCo−W合金電
気めっきの電流密度と浴濃度をパラメータにしためっき
被膜の結晶状態を示す説明図である。
【図8】この発明の実施例22における被膜の結晶構造
を示すX線回折結果の説明図である。
【図9】この発明の実施例27におけるめっき液にSi
Cを分散させた場合のめっき液中の粒子濃度と被膜の粒
子含有率との関係を説明した説明図である。
【図10】この発明の実施例28におけるめっき液のp
HとP含有率との関係を説明した説明図である。
【図11】この発明の実施例28におけるNiとPとの
化合物の被膜内部の分布を説明した説明図である。
【図12】従来の摺接部材を示す断面図である。
【図13】他の従来の摺接部材を示す断面図である。
【符号の説明】
1 摺接部基材 2 耐食性被膜 3 耐摩耗性被膜 4 Ni化合物 5 硬質粒子 6 加熱により形成されたNi化合物 7 自己潤滑性粒子 8 グリース 9 硬質耐摩材 10 黒鉛
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 七田 浩一 丸亀市蓬莱町8番地 三菱電機株式会社 丸亀製作所内 (56)参考文献 特開 平5−106124(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C23C 28/00 C23C 18/52 C25D 15/00

Claims (11)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基材上に、NiもしくはNi基、または
    CrもしくはCr基よりなる金属中に、硬質粒子が分散
    した耐食性被膜を形成すると共に、基材近傍の硬質粒子
    の分散密度を、基材より離れた被膜内部の硬質粒子の分
    散密度より大きくなるようにしたことを特徴とする耐食
    性摺接部材。
  2. 【請求項2】 PもしくはBあるいはWとNiの金属間
    化合物からなる微細粒子を基材近傍の分散密度が、被膜
    表面の分散密度より大きくなるように密度勾配を設けた
    微細分散粒子を含んだ構造を持つNi基合金からなる被
    膜を、基材に形成したことを特徴とする耐食性摺接部
    材。
  3. 【請求項3】 被膜内部の自己潤滑性粒子の分散密度
    を、基材近傍より被膜表面の方が大きくなるように分散
    密度に勾配を設けた自己潤滑性粒子が分散した構造を持
    つ耐食性被膜を、基材に形成したことを特徴とする耐食
    性摺接部材。
  4. 【請求項4】 被膜内部の硬質粒子の分散密度を、被膜
    表面より基材近傍の方が大きくなるように分散密度に勾
    配を設けた硬質粒子が分散し、かつ、被膜内部の自己潤
    滑性粒子の分散密度を、基材近傍より被膜表面の方が大
    きくなるように分散密度に勾配を設けた自己潤滑性粒子
    が分散した構造を持つ耐食性被膜を、基材に形成したこ
    とを特徴とする耐食性摺接部材。
  5. 【請求項5】 基材にNi基析出硬化型合金を、非晶質
    状態で被膜形成した後、上記被膜に光照射し、非晶質N
    iを残した状態で、これらのNi化合物を上記被膜中に
    析出したことを特徴とする耐食性摺接部材の製造方法。
  6. 【請求項6】 基材にNi基合金、もしくはNiを非晶
    質状態で被膜形成した後、イオンを注入し、上記被膜に
    非晶質Niを残した状態で、これらのNi化合物を上記
    被膜中に析出したことを特徴とする耐食性摺接部材の製
    造方法。
  7. 【請求項7】 硬質粒子が懸濁しためっき液中に基材を
    浸漬し、被膜の形成に伴いめっき液中の硬質粒子濃度を
    減少させることを特徴とする耐食性摺接部材の製造方
    法。
  8. 【請求項8】 基材にNi基析出硬化型合金を、基材近
    傍から被膜表面になるにつれて、Ni化合物の含有率を
    小さくなるように被膜した後、加熱することにより上記
    Ni化合物の微細粒子を密度勾配を設けて析出させるこ
    とを特徴とする耐食性摺接部材の製造方法。
  9. 【請求項9】 自己潤滑性粒子が懸濁しためっき液中に
    基材を浸漬し、被膜の形成に伴い、めっき液中の自己潤
    滑性粒子濃度を増加させることを特徴とする耐食性摺接
    部材の製造方法。
  10. 【請求項10】 硬質粒子と自己潤滑性粒子の各々が懸
    濁しためっき液中に基材を浸漬し、被膜の形成に伴い、
    めっき液中の硬質粒子濃度を減少させるとともに、めっ
    き液中の自己潤滑性粒子濃度を増加させることを特徴と
    する耐食性摺接部材の製造方法。
  11. 【請求項11】 粒子表面に金属が被覆されている硬質
    粒子と、なにも被覆されていない自己潤滑性粒子の各々
    が懸濁した電気めっき液中に基材を浸漬し、被膜の形成
    を行うことを特徴とする耐食性摺接部材の製造方法。
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